ケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法
【課題】ケーブルの中間部において、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができるケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法を提供する。
【解決手段】ケーブル外被カッターは、本体11と、本体11に対して揺動可能に保持された保持部材12とを備え、保持部材12の一端部12Aは、金属パイプ111とケーブルコア102の間にもぐり込ませる先端部52と、先端部52付近に形成されてHSケーブル100の長手方向に対して傾斜角度を有し、本体11がHSケーブル100の長手方向Lに沿って移動する際に金属パイプ111を切断する刃部55とを有する。
【解決手段】ケーブル外被カッターは、本体11と、本体11に対して揺動可能に保持された保持部材12とを備え、保持部材12の一端部12Aは、金属パイプ111とケーブルコア102の間にもぐり込ませる先端部52と、先端部52付近に形成されてHSケーブル100の長手方向に対して傾斜角度を有し、本体11がHSケーブル100の長手方向Lに沿って移動する際に金属パイプ111を切断する刃部55とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法に関し、特にケーブルの中間部においてケーブルコアに損傷を与えずにケーブル外被を確実に除去するケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HSケーブルなどのケーブルの外被を除去してケーブルコアを露出させる場合には、ケーブルの長手方向に沿って溝を付け、さらにケーブルの円周方向に沿って溝を付ける工具が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、HSケーブルの外被を切断するカッターが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3717299号公報
【非特許文献1】住電ハイプレシジョン株式会社のホームページ(光通信用工具類・HSケーブル外被カッタ)http://www.shpc.co.jp/products/tool/10.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、HSケーブルの外被は、絶縁被覆と、この絶縁被覆の内側に補強のために配置された金属パイプを有しており、この金属パイプは非常に硬い。従って、従来の工具およびカッターを使用しても、ケーブルの中間部において、ケーブルコアを傷つけずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプを除去することが難しい。もし、無理に金属パイプを切断しようとすると、ケーブルコアに刃が及んでしまいケーブルコアを傷つけてしまうおそれある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、ケーブルの中間部において、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができるケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解消するために、本発明のケーブル外被カッターは、ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被カッターであって、
前記ケーブルに載置される本体と、
前記本体に揺動可能に設置された保持部材と、を備え、
前記保持部材の一端部は、
前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませる先端部と、
前記先端部付近に形成されて、前記ケーブルに設置したとき前記ケーブルの長手方向に対して傾斜角度を有し、前記本体を前記ケーブルの長手方向に沿って移動させることにより前記金属パイプを切断する刃部と、
を有することを特徴とする。
【0005】
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルに設置したとき、前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する前記傾斜角度は、 30度以上、80度以下であることを特徴とする。
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記本体は、前記ケーブル外被の外周面に当接されて前記ケーブル外被の前記外周面に沿って前記本体が傾くのを防止する傾き防止部と、
前記ケーブル外被の前記外周面に当接されて前記本体が前記ケーブル外被の前記外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、
を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記傾き防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記浮き上がり防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記ガイド部は、前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に予め形成されているガイド溝に沿って案内されるガイド部材であることを特徴とする。
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記保持部材の他端部には、打撃を受けて前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のケーブル外被の切断方法は、ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被の切断方法であって、
前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に直線状のガイド溝を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝の両端付近であり、かつ、前記直線状のガイド溝と交わる位置に前記絶縁被覆と前記金属パイプに対して円周方向に沿って円周傷を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝と前記円周傷の交点において、ケーブル外被カッターの先端部を前記ケーブル外被の前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませて、前記ガイド溝に沿って前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に移動させることにより、前記ケーブル外被カッターの刃部により前記金属パイプを切断する工程とを有することを特徴とする。
本発明のケーブル外被の切断方法は、好ましくは前記金属パイプを切断するときの前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する傾斜角度は、30度以上で、80度以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケーブルの中間部において、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1と図2は、本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図1は、ケーブル外被カッター10を一方向から示しており、図2は、ケーブル外被カッター10を別の方向から示している。図3は、図1のケーブル外被カッター10をH方向から見た正面図である。
図4(A)は、ケーブル外被カッター10の上面図であり、図4(B)は、ケーブル外被カッター10の底面図である。
図1と図2に示すケーブル外被カッター10は、例えばHSケーブル100のケーブル外被101を、HSケーブル100の長手方向Lに沿って直線移動することでケーブル外被101の金属パイプを切断することができる。
【0010】
図1に示すように、HSケーブル100は、ケーブル外被101と、ケーブル外被101により被覆されたケーブルコア102を有している。ケーブル外被101は、ケーブルコア102の外周面を覆う金属パイプ111と、金属パイプ111の外周面を覆う絶縁被覆110と、により構成されている。金属パイプ111は、動物によりかじられることでケーブルコア102が被害を受けるのを防ぐために設置され、例えば硬い金属であるコルゲート状のステンレスパイプである。
【0011】
まず、ケーブル外被カッター10の構造について説明する。
図1〜図3に示すように、ケーブル外被カッター10は、本体11と、保持部材12を備える。本体11は、金属製のほぼ直方体形状のブロック部材であり、保持部材12は、金属製の板状の部材である。保持部材12は、本体11に対して支持ピン13を中心にしてR方向に沿って揺動可能に保持されている。
【0012】
図1と図2に示すように、金属製の本体11は、突起状のガイド部材20と、操作ノブ21と、溝部22、23と、V溝部分28と、金属製の板状の延長部材25を有している。
ガイド部材20は、本体11の先端部26側においてL1方向に突出して設けられている。HSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110には、予め長手方向Lに沿って直線状のガイド溝120が形成されており、ガイド部材20は、このガイド溝120にはめ込まれることで、ケーブル外被カッター10の本体11をガイド溝120に沿って直線移動して案内できる機能を有する。
【0013】
図1と図4(B)に示すように、本体11の先端部26には、V溝部分28が形成されている。このV溝部分28は、左右一対のスカート部27,27から成る。スカート部27,27は、ほぼV字型のV溝部分28を形成しており、スカート部27,27はケーブル外被101の絶縁被覆11の外周面に対して当接される。
【0014】
図1と図4に示すように、延長部材25の一端部32は、本体11の側面に対してナット30、31を用いて固定されている。延長部材25の他端部33にはローラ40が回転可能に保持されている。このローラ40は、図1と図4に示すように、両側の太径部41,41と湾曲部42を有しており、湾曲部42はV溝部分28と所定の角度を持ってHSケーブル100を把持する。
【0015】
この延長部材25とローラ40と、前述したスカート部27,27により、本体11が絶縁被覆110の外周面に沿って回って傾いてしまうことを防止する傾き防止部を構成するとともに、本体11が絶縁被覆110から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部を構成している。
【0016】
また、図1と図4(A)に示すように、本体11はL1方向に沿って溝部23を有している。本体11の上面側には別の溝部22が設けられており、この溝部22内では、操作ノブ21がL1方向に沿って移動操作可能になっている。
【0017】
次に、保持部材12について説明する。
図1と図3に示すように、保持部材12の一端部12Aは、先端部52と、刃部55を有しており、保持部材12の他端部12Bには打撃受け部56が固定されている。打撃受け部56はほぼ直方体形状の金属製のブロックであり、例えば図1に示すようなハンマーのような打撃工具Tにより打撃受け部56を打撃することで、ケーブル外被カッター10を、HSケーブル100の長手方向Lに沿って進ませることができる。図1に示すように、板状の保持部材12は、本体11の溝部23内に配置されており、保持部材12の中間部12Cは、支持ピン13を介して本体11に対してR方向に回転可能に支持されている。
【0018】
図5は、保持部材12の先端部52と刃部55の形状例を示しており、先端部52は刃部55の一端部から突出して形成されている。刃部55は、先端部55の突出方向Gに対して傾斜角度θで傾けて形成されている。言い換えれば、刃部55は、図1に示すHSケーブル100の長手方向Lに対して傾斜角度θで傾けて形成されている。この傾斜角度θは、好ましくは30度以上で、80度以下である。
ここで、傾斜角度θが30度未満であると、工具が大きくなりケーブルへの取り付けが困難になるため 好ましくない。また、傾斜角度θが80度を超えると、切り裂き抵抗が大きく、切り裂きが困難になる。又同一位置に大きな力をかけて切り裂くため、著しく刃の寿命が短くなる。
【0019】
また、図5に示すように、刃部55の刃先角度αは、例えば60度である。
図3と図5に示すように、刃部55の上端部付近には、固定用の溝57が形成されている。この溝57には、図5の操作ノブ21の挿入片58が挿入されることにより、図3に示す保持部材12は、本体11に対して図1と図2に示す収納状態に固定することができる。この収納状態では、本体11のガイド部材20と保持部材12の先端部52が図4(B)に示すように上下に重なった状態になり、刃部55は、本体11内に収納される。
【0020】
これに対して、作業者が図5に示す操作ノブ21の挿入片58を、スプリング59の力に抗してC方向に移動することにより、挿入片58は溝57から離れるので、図3の破線と図5の破線で示すように、保持部材13は、本体11に対して支持ピン13を中心としてR方向に回転可能になる。
【0021】
次に、本発明のケーブル外被の切断方法の好ましい実施形態を、図8〜図19の動作図および図20のフロー図を参照して説明する。図20のフロー図は、ステップST1〜ST7を有している。
【0022】
図8は、切断対象の一例であるHSケーブル100を示している。図20のステップST1において、HSケーブル100には、任意のHSケーブル100の中間部において、マーキング用のテープ400a,400bが巻かれる。マーキング用のテープ400a,400bで示すHSケーブル100の領域内のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を切断して、その後この領域内のケーブル外被101を剥離することにより、ケーブルコアを露出させる作業を行う。
【0023】
図20のステップST2では、図9に示すようにして、ガイド溝120を、図6のガイド溝形成器具200等を用いてケーブル外被(シース)101の絶縁被覆110だけに対して長手方向L(HSケーブル100の軸方向)に沿って形成する。
ガイド溝形成器具200は、基部201と、移動体202と、位置調整ダイヤル203と、案内部204を有しており、移動体202には刃205が設けられている。位置調整ダイヤル203を緩めると、移動体202は基部201に対して案内部204の溝206に沿って移動でき、位置調整ダイヤル203を締めると、移動体202はHSケーブル100の外径に合わせて案内部204に対して固定することができる。
【0024】
図9に示すように、ガイド溝形成器具200をHSケーブル100の外径に合わせて固定した状態で、作業者がガイド溝形成器具200を長手方向Lに沿って移動させることで、刃205が絶縁被覆110だけを切断してガイド溝120が形成される。このようにして、図10に示すように、ガイド溝120が、マーキング用のテープ400a,400bの間に予め形成される。
【0025】
次に、図20のステップST3では、図7に示すパイプカッター300等でケーブル外被をカットする。
図7に示すパイプカッター300は、図1に示すHSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を円周方向に沿って輪切り状に切断する器具である。
【0026】
パイプカッター300は、アーム部301と、把持部302と、2つのローラ部303と、ディスク刃304を有している。2つのローラ部303とディスク刃304の間にHSケーブル100を入れて、作業者が把持部302を持ってHSケーブル100を回転中心として回転することで、ディスク刃304がHSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を輪切り状に切断でき、ケーブルコア102には損傷を与えない。
【0027】
図11に示すようにパイプカッター300は、HSケーブル100のケーブル外被101に取り付けられる。その際に、パイプカッター300は、マーキング用のテープ400から所定間隔W離れた位置に取り付けられる。作業者がパイプカッター300を、HSケーブル100を中心としてCD方向に回転することにより、ディスクは304が図12に示すようにケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を円周方向に沿ってカットする。これにより、図12と図13に示すように、ガイド溝120の両端付近であり、かつ、ガイド溝120と交わる位置に絶縁被覆110と前記金属パイプ111に対して円周方向に沿って円周傷121a,121bが形成される。なお、パイプカッター300は、ケーブルコア102に損傷を与えることなく、絶縁被覆110と金属パイプ111だけを円周方向に沿ってカットして円周傷121a,121bを形成する。
【0028】
以上のようにして、図12に示すガイド溝120と、このガイド溝120に直交する左右2箇所の円周傷121a,121bが形成された後に、ステップST4〜ステップST7に示すように、ケーブル外被カッター10を長手方向Lに沿って移動することで、金属パイプ11を切断してケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111だけをケーブルコア102に損傷を与えずに剥離する。以下に、この切断と剥離を説明する。
【0029】
図20のステップST4では、図14に示すようにケーブル外被101からマーキング用のテープ400を剥がす。作業者は、図5に示す操作ノブ21をC方向に移動することで、刃部55を本体11に対してピン13を中心として回転自由状態とする。
【0030】
図14〜図15(A)に示すように、作業者はガイド溝120と円周傷121bの交点において保持部材12の先端部52を、金属パイプ111の内面とケーブルコア102の外周面102Dの間に挿入する。このとき、先端部52により円周傷121bを広げ、ケーブル外被101を持ち上げるようにして先端部52を挿入する。
【0031】
次に、図5に示す操作ノブ21を元に戻して操作ノブ21の挿入片58を溝57にはめ込み、保持部材12を本体11に対して収納状態で固定する。
この状態では、図16と図2および図3に示すように、図20のステップST5では、スカート部27,27は、ケーブル外被101の絶縁被覆11の外周面のガイド溝120の付近に対して当接されるとともに、ローラ40がケーブル外被101の下側に当接される。すなわち、スカート部27,27とローラ40により、ケーブル外被101を挟んだ状態で保持する。
【0032】
このようにして、ケーブル外被カッター10の本体11が、ケーブル外被101に保持された状態では、ガイド部材20はガイド溝120内に位置されている。
図20のステップST6では、作業者が図1に示すように、打撃工具Tを用いて打撃受け部56に対して打撃を行うと、ケーブル外被カッター10はガイド溝120に案内されるようにして進んで、図15(B)に示すように刃部55は、金属パイプ111をG方向に持ち上げるようにして切断(縦裂き)していくことができる。このように金属パイプ111をG方向に持ち上げるようにして切断することで、刃部55の1点に力が集中することを避けることができ、刃部55の寿命を延ばすことができる。
この金属パイプ111の切断作業は、図19(A)に示すように、一方の円周傷121から他方の円周傷121まで長手方向Lに沿って行う。
【0033】
その後、図20のステップST7では、図19(B)に示すように作業者は、ケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を、図示しない工具を用いてケーブルコア102から剥がして除去することで、図19(C)に示すようにHSケーブル100の中間部において、任意の距離Bだけケーブルコア102を露出させることができる。
【0034】
本発明の実施形態では、ケーブル外被カッターは、本体11と、本体11に対して揺動可能に保持された保持部材12とを備えている。
保持部材12の一端部12Aは、金属パイプ111とケーブルコア102の間にもぐり込ませる先端部52と、先端部52付近に形成されてHSケーブル100の長手方向に対して傾斜角度を有し、本体11がHSケーブル100の長手方向Lに沿って移動する際に金属パイプ111を切断する刃部55とを有する。
【0035】
これにより、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができる。
また、刃部55の傾斜角度は、30度以上で、80度以下である。これにより、金属パイプ11は確実に切断することができる。
【0036】
本体11は、前記ケーブル外被101の外周面に当接されてケーブル外被101の外周面に沿って本体11が傾くのを防止する傾き防止部と、ケーブル外被101の外周面に当接されて本体11がケーブル外被101の外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、ケーブル外被カッターをケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、を有している。これにより、本体がケーブルに対して回転せずしかも浮き上がらないので、金属パイプは、ガイド溝に沿って確実に切断することができ、切断作業性が向上する。
【0037】
傾き防止部と浮き上がり防止部は、ケーブル外被101の外周面に当接されるV溝部分と、延長部材25の端部に回転可能に保持されたローラ40 で構成されている。これにより、簡単な構成でありながら、本体がケーブルに対して回転せずしかも浮き上がらないようにすることができる。なお、ローラ40をこのように回転可能とするとで、ケーブル外被カッターをよりスムーズに移動させることができるが、ローラ40は、回転可能でなくてもよい。
【0038】
本体11は、HSケーブル100の長手方向Lに沿って絶縁被覆110に予め形成されているガイド溝120に沿って案内されるガイド部材20を有する。これにより、本体11は金属パイプを切断する際にガイド溝120に沿って確実に移動させることができ、金属パイプの切断作業性が向上する。
【0039】
保持部材12の他端部12Bには、工具により打撃を与えてケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部56が設けられている。これにより、打撃受け部56を打撃することにより、金属パイプは切断できる。
本発明は、特にケーブルの中間部において、ケーブル外被の切断を行う場合に、好適に用いることができる。
【0040】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
また、ケーブルコアは、光ファイバケーブルであっても、光ファイバケーブルと電力ケーブルを組み合わせたもの、あるいは電力ケーブルであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を別の方向から見た斜視図である。
【図3】ケーブル外被カッターを示す正面図である。
【図4】ケーブル外被カッターの平面と底面を示す図である。
【図5】刃部と先端部付近を示す図である。
【図6】ガイド溝形成器具を示す斜視図である。
【図7】パイプカッターを示す斜視図である。
【図8】HSケーブルの一例を示す斜視図である。
【図9】ガイド溝形成器具をHSケーブルに装着した状態を示す斜視図である。
【図10】ガイド溝が形成された状態を示す斜視図である。
【図11】パイプカッターをHSケーブルに装着した状態を示す斜視図である。
【図12】円周傷が形成されたHSケーブルを示す図である。
【図13】図12のHSケーブルの断面図である。
【図14】先端部と刃部を挿入しようとする様子を示す図である。
【図15】先端部と刃部を挿入しようとする様子を示す拡大図である。
【図16】刃部が金属パイプを切断している状態を示す正面図である。
【図17】刃部が金属パイプを切断している状態を示す平面図である。
【図18】刃部が金属パイプを切断している状態を示す断面図である。
【図19】金属パイプが切断されてケーブル外被を剥離している様子を示す図である。
【図20】本発明のケーブル外被の切断方法の好ましい実施形態を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ケーブル外被カッター
11 本体
12 保持部材
20 ガイド部材
40 ローラ
52 先端部
55 刃部
56 打撃受け部
100 HSケーブル
101 ケーブル外被
102 ケーブルコア
110 絶縁被覆
111 金属パイプ
120 ガイド溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法に関し、特にケーブルの中間部においてケーブルコアに損傷を与えずにケーブル外被を確実に除去するケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HSケーブルなどのケーブルの外被を除去してケーブルコアを露出させる場合には、ケーブルの長手方向に沿って溝を付け、さらにケーブルの円周方向に沿って溝を付ける工具が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、HSケーブルの外被を切断するカッターが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3717299号公報
【非特許文献1】住電ハイプレシジョン株式会社のホームページ(光通信用工具類・HSケーブル外被カッタ)http://www.shpc.co.jp/products/tool/10.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、HSケーブルの外被は、絶縁被覆と、この絶縁被覆の内側に補強のために配置された金属パイプを有しており、この金属パイプは非常に硬い。従って、従来の工具およびカッターを使用しても、ケーブルの中間部において、ケーブルコアを傷つけずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプを除去することが難しい。もし、無理に金属パイプを切断しようとすると、ケーブルコアに刃が及んでしまいケーブルコアを傷つけてしまうおそれある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、ケーブルの中間部において、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができるケーブル外被カッターおよびケーブル外被の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解消するために、本発明のケーブル外被カッターは、ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被カッターであって、
前記ケーブルに載置される本体と、
前記本体に揺動可能に設置された保持部材と、を備え、
前記保持部材の一端部は、
前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませる先端部と、
前記先端部付近に形成されて、前記ケーブルに設置したとき前記ケーブルの長手方向に対して傾斜角度を有し、前記本体を前記ケーブルの長手方向に沿って移動させることにより前記金属パイプを切断する刃部と、
を有することを特徴とする。
【0005】
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルに設置したとき、前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する前記傾斜角度は、 30度以上、80度以下であることを特徴とする。
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記本体は、前記ケーブル外被の外周面に当接されて前記ケーブル外被の前記外周面に沿って前記本体が傾くのを防止する傾き防止部と、
前記ケーブル外被の前記外周面に当接されて前記本体が前記ケーブル外被の前記外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、
を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記傾き防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記浮き上がり防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記ガイド部は、前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に予め形成されているガイド溝に沿って案内されるガイド部材であることを特徴とする。
本発明のケーブル外被カッターは、好ましくは前記保持部材の他端部には、打撃を受けて前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のケーブル外被の切断方法は、ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被の切断方法であって、
前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に直線状のガイド溝を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝の両端付近であり、かつ、前記直線状のガイド溝と交わる位置に前記絶縁被覆と前記金属パイプに対して円周方向に沿って円周傷を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝と前記円周傷の交点において、ケーブル外被カッターの先端部を前記ケーブル外被の前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませて、前記ガイド溝に沿って前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に移動させることにより、前記ケーブル外被カッターの刃部により前記金属パイプを切断する工程とを有することを特徴とする。
本発明のケーブル外被の切断方法は、好ましくは前記金属パイプを切断するときの前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する傾斜角度は、30度以上で、80度以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケーブルの中間部において、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1と図2は、本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図1は、ケーブル外被カッター10を一方向から示しており、図2は、ケーブル外被カッター10を別の方向から示している。図3は、図1のケーブル外被カッター10をH方向から見た正面図である。
図4(A)は、ケーブル外被カッター10の上面図であり、図4(B)は、ケーブル外被カッター10の底面図である。
図1と図2に示すケーブル外被カッター10は、例えばHSケーブル100のケーブル外被101を、HSケーブル100の長手方向Lに沿って直線移動することでケーブル外被101の金属パイプを切断することができる。
【0010】
図1に示すように、HSケーブル100は、ケーブル外被101と、ケーブル外被101により被覆されたケーブルコア102を有している。ケーブル外被101は、ケーブルコア102の外周面を覆う金属パイプ111と、金属パイプ111の外周面を覆う絶縁被覆110と、により構成されている。金属パイプ111は、動物によりかじられることでケーブルコア102が被害を受けるのを防ぐために設置され、例えば硬い金属であるコルゲート状のステンレスパイプである。
【0011】
まず、ケーブル外被カッター10の構造について説明する。
図1〜図3に示すように、ケーブル外被カッター10は、本体11と、保持部材12を備える。本体11は、金属製のほぼ直方体形状のブロック部材であり、保持部材12は、金属製の板状の部材である。保持部材12は、本体11に対して支持ピン13を中心にしてR方向に沿って揺動可能に保持されている。
【0012】
図1と図2に示すように、金属製の本体11は、突起状のガイド部材20と、操作ノブ21と、溝部22、23と、V溝部分28と、金属製の板状の延長部材25を有している。
ガイド部材20は、本体11の先端部26側においてL1方向に突出して設けられている。HSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110には、予め長手方向Lに沿って直線状のガイド溝120が形成されており、ガイド部材20は、このガイド溝120にはめ込まれることで、ケーブル外被カッター10の本体11をガイド溝120に沿って直線移動して案内できる機能を有する。
【0013】
図1と図4(B)に示すように、本体11の先端部26には、V溝部分28が形成されている。このV溝部分28は、左右一対のスカート部27,27から成る。スカート部27,27は、ほぼV字型のV溝部分28を形成しており、スカート部27,27はケーブル外被101の絶縁被覆11の外周面に対して当接される。
【0014】
図1と図4に示すように、延長部材25の一端部32は、本体11の側面に対してナット30、31を用いて固定されている。延長部材25の他端部33にはローラ40が回転可能に保持されている。このローラ40は、図1と図4に示すように、両側の太径部41,41と湾曲部42を有しており、湾曲部42はV溝部分28と所定の角度を持ってHSケーブル100を把持する。
【0015】
この延長部材25とローラ40と、前述したスカート部27,27により、本体11が絶縁被覆110の外周面に沿って回って傾いてしまうことを防止する傾き防止部を構成するとともに、本体11が絶縁被覆110から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部を構成している。
【0016】
また、図1と図4(A)に示すように、本体11はL1方向に沿って溝部23を有している。本体11の上面側には別の溝部22が設けられており、この溝部22内では、操作ノブ21がL1方向に沿って移動操作可能になっている。
【0017】
次に、保持部材12について説明する。
図1と図3に示すように、保持部材12の一端部12Aは、先端部52と、刃部55を有しており、保持部材12の他端部12Bには打撃受け部56が固定されている。打撃受け部56はほぼ直方体形状の金属製のブロックであり、例えば図1に示すようなハンマーのような打撃工具Tにより打撃受け部56を打撃することで、ケーブル外被カッター10を、HSケーブル100の長手方向Lに沿って進ませることができる。図1に示すように、板状の保持部材12は、本体11の溝部23内に配置されており、保持部材12の中間部12Cは、支持ピン13を介して本体11に対してR方向に回転可能に支持されている。
【0018】
図5は、保持部材12の先端部52と刃部55の形状例を示しており、先端部52は刃部55の一端部から突出して形成されている。刃部55は、先端部55の突出方向Gに対して傾斜角度θで傾けて形成されている。言い換えれば、刃部55は、図1に示すHSケーブル100の長手方向Lに対して傾斜角度θで傾けて形成されている。この傾斜角度θは、好ましくは30度以上で、80度以下である。
ここで、傾斜角度θが30度未満であると、工具が大きくなりケーブルへの取り付けが困難になるため 好ましくない。また、傾斜角度θが80度を超えると、切り裂き抵抗が大きく、切り裂きが困難になる。又同一位置に大きな力をかけて切り裂くため、著しく刃の寿命が短くなる。
【0019】
また、図5に示すように、刃部55の刃先角度αは、例えば60度である。
図3と図5に示すように、刃部55の上端部付近には、固定用の溝57が形成されている。この溝57には、図5の操作ノブ21の挿入片58が挿入されることにより、図3に示す保持部材12は、本体11に対して図1と図2に示す収納状態に固定することができる。この収納状態では、本体11のガイド部材20と保持部材12の先端部52が図4(B)に示すように上下に重なった状態になり、刃部55は、本体11内に収納される。
【0020】
これに対して、作業者が図5に示す操作ノブ21の挿入片58を、スプリング59の力に抗してC方向に移動することにより、挿入片58は溝57から離れるので、図3の破線と図5の破線で示すように、保持部材13は、本体11に対して支持ピン13を中心としてR方向に回転可能になる。
【0021】
次に、本発明のケーブル外被の切断方法の好ましい実施形態を、図8〜図19の動作図および図20のフロー図を参照して説明する。図20のフロー図は、ステップST1〜ST7を有している。
【0022】
図8は、切断対象の一例であるHSケーブル100を示している。図20のステップST1において、HSケーブル100には、任意のHSケーブル100の中間部において、マーキング用のテープ400a,400bが巻かれる。マーキング用のテープ400a,400bで示すHSケーブル100の領域内のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を切断して、その後この領域内のケーブル外被101を剥離することにより、ケーブルコアを露出させる作業を行う。
【0023】
図20のステップST2では、図9に示すようにして、ガイド溝120を、図6のガイド溝形成器具200等を用いてケーブル外被(シース)101の絶縁被覆110だけに対して長手方向L(HSケーブル100の軸方向)に沿って形成する。
ガイド溝形成器具200は、基部201と、移動体202と、位置調整ダイヤル203と、案内部204を有しており、移動体202には刃205が設けられている。位置調整ダイヤル203を緩めると、移動体202は基部201に対して案内部204の溝206に沿って移動でき、位置調整ダイヤル203を締めると、移動体202はHSケーブル100の外径に合わせて案内部204に対して固定することができる。
【0024】
図9に示すように、ガイド溝形成器具200をHSケーブル100の外径に合わせて固定した状態で、作業者がガイド溝形成器具200を長手方向Lに沿って移動させることで、刃205が絶縁被覆110だけを切断してガイド溝120が形成される。このようにして、図10に示すように、ガイド溝120が、マーキング用のテープ400a,400bの間に予め形成される。
【0025】
次に、図20のステップST3では、図7に示すパイプカッター300等でケーブル外被をカットする。
図7に示すパイプカッター300は、図1に示すHSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を円周方向に沿って輪切り状に切断する器具である。
【0026】
パイプカッター300は、アーム部301と、把持部302と、2つのローラ部303と、ディスク刃304を有している。2つのローラ部303とディスク刃304の間にHSケーブル100を入れて、作業者が把持部302を持ってHSケーブル100を回転中心として回転することで、ディスク刃304がHSケーブル100のケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を輪切り状に切断でき、ケーブルコア102には損傷を与えない。
【0027】
図11に示すようにパイプカッター300は、HSケーブル100のケーブル外被101に取り付けられる。その際に、パイプカッター300は、マーキング用のテープ400から所定間隔W離れた位置に取り付けられる。作業者がパイプカッター300を、HSケーブル100を中心としてCD方向に回転することにより、ディスクは304が図12に示すようにケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を円周方向に沿ってカットする。これにより、図12と図13に示すように、ガイド溝120の両端付近であり、かつ、ガイド溝120と交わる位置に絶縁被覆110と前記金属パイプ111に対して円周方向に沿って円周傷121a,121bが形成される。なお、パイプカッター300は、ケーブルコア102に損傷を与えることなく、絶縁被覆110と金属パイプ111だけを円周方向に沿ってカットして円周傷121a,121bを形成する。
【0028】
以上のようにして、図12に示すガイド溝120と、このガイド溝120に直交する左右2箇所の円周傷121a,121bが形成された後に、ステップST4〜ステップST7に示すように、ケーブル外被カッター10を長手方向Lに沿って移動することで、金属パイプ11を切断してケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111だけをケーブルコア102に損傷を与えずに剥離する。以下に、この切断と剥離を説明する。
【0029】
図20のステップST4では、図14に示すようにケーブル外被101からマーキング用のテープ400を剥がす。作業者は、図5に示す操作ノブ21をC方向に移動することで、刃部55を本体11に対してピン13を中心として回転自由状態とする。
【0030】
図14〜図15(A)に示すように、作業者はガイド溝120と円周傷121bの交点において保持部材12の先端部52を、金属パイプ111の内面とケーブルコア102の外周面102Dの間に挿入する。このとき、先端部52により円周傷121bを広げ、ケーブル外被101を持ち上げるようにして先端部52を挿入する。
【0031】
次に、図5に示す操作ノブ21を元に戻して操作ノブ21の挿入片58を溝57にはめ込み、保持部材12を本体11に対して収納状態で固定する。
この状態では、図16と図2および図3に示すように、図20のステップST5では、スカート部27,27は、ケーブル外被101の絶縁被覆11の外周面のガイド溝120の付近に対して当接されるとともに、ローラ40がケーブル外被101の下側に当接される。すなわち、スカート部27,27とローラ40により、ケーブル外被101を挟んだ状態で保持する。
【0032】
このようにして、ケーブル外被カッター10の本体11が、ケーブル外被101に保持された状態では、ガイド部材20はガイド溝120内に位置されている。
図20のステップST6では、作業者が図1に示すように、打撃工具Tを用いて打撃受け部56に対して打撃を行うと、ケーブル外被カッター10はガイド溝120に案内されるようにして進んで、図15(B)に示すように刃部55は、金属パイプ111をG方向に持ち上げるようにして切断(縦裂き)していくことができる。このように金属パイプ111をG方向に持ち上げるようにして切断することで、刃部55の1点に力が集中することを避けることができ、刃部55の寿命を延ばすことができる。
この金属パイプ111の切断作業は、図19(A)に示すように、一方の円周傷121から他方の円周傷121まで長手方向Lに沿って行う。
【0033】
その後、図20のステップST7では、図19(B)に示すように作業者は、ケーブル外被101の絶縁被覆110と金属パイプ111を、図示しない工具を用いてケーブルコア102から剥がして除去することで、図19(C)に示すようにHSケーブル100の中間部において、任意の距離Bだけケーブルコア102を露出させることができる。
【0034】
本発明の実施形態では、ケーブル外被カッターは、本体11と、本体11に対して揺動可能に保持された保持部材12とを備えている。
保持部材12の一端部12Aは、金属パイプ111とケーブルコア102の間にもぐり込ませる先端部52と、先端部52付近に形成されてHSケーブル100の長手方向に対して傾斜角度を有し、本体11がHSケーブル100の長手方向Lに沿って移動する際に金属パイプ111を切断する刃部55とを有する。
【0035】
これにより、ケーブルコアに損傷を与えずに金属パイプを切断して絶縁被覆と金属パイプから成るケーブル外被を確実に除去することができる。
また、刃部55の傾斜角度は、30度以上で、80度以下である。これにより、金属パイプ11は確実に切断することができる。
【0036】
本体11は、前記ケーブル外被101の外周面に当接されてケーブル外被101の外周面に沿って本体11が傾くのを防止する傾き防止部と、ケーブル外被101の外周面に当接されて本体11がケーブル外被101の外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、ケーブル外被カッターをケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、を有している。これにより、本体がケーブルに対して回転せずしかも浮き上がらないので、金属パイプは、ガイド溝に沿って確実に切断することができ、切断作業性が向上する。
【0037】
傾き防止部と浮き上がり防止部は、ケーブル外被101の外周面に当接されるV溝部分と、延長部材25の端部に回転可能に保持されたローラ40 で構成されている。これにより、簡単な構成でありながら、本体がケーブルに対して回転せずしかも浮き上がらないようにすることができる。なお、ローラ40をこのように回転可能とするとで、ケーブル外被カッターをよりスムーズに移動させることができるが、ローラ40は、回転可能でなくてもよい。
【0038】
本体11は、HSケーブル100の長手方向Lに沿って絶縁被覆110に予め形成されているガイド溝120に沿って案内されるガイド部材20を有する。これにより、本体11は金属パイプを切断する際にガイド溝120に沿って確実に移動させることができ、金属パイプの切断作業性が向上する。
【0039】
保持部材12の他端部12Bには、工具により打撃を与えてケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部56が設けられている。これにより、打撃受け部56を打撃することにより、金属パイプは切断できる。
本発明は、特にケーブルの中間部において、ケーブル外被の切断を行う場合に、好適に用いることができる。
【0040】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
また、ケーブルコアは、光ファイバケーブルであっても、光ファイバケーブルと電力ケーブルを組み合わせたもの、あるいは電力ケーブルであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のケーブル外被カッターの好ましい実施形態を別の方向から見た斜視図である。
【図3】ケーブル外被カッターを示す正面図である。
【図4】ケーブル外被カッターの平面と底面を示す図である。
【図5】刃部と先端部付近を示す図である。
【図6】ガイド溝形成器具を示す斜視図である。
【図7】パイプカッターを示す斜視図である。
【図8】HSケーブルの一例を示す斜視図である。
【図9】ガイド溝形成器具をHSケーブルに装着した状態を示す斜視図である。
【図10】ガイド溝が形成された状態を示す斜視図である。
【図11】パイプカッターをHSケーブルに装着した状態を示す斜視図である。
【図12】円周傷が形成されたHSケーブルを示す図である。
【図13】図12のHSケーブルの断面図である。
【図14】先端部と刃部を挿入しようとする様子を示す図である。
【図15】先端部と刃部を挿入しようとする様子を示す拡大図である。
【図16】刃部が金属パイプを切断している状態を示す正面図である。
【図17】刃部が金属パイプを切断している状態を示す平面図である。
【図18】刃部が金属パイプを切断している状態を示す断面図である。
【図19】金属パイプが切断されてケーブル外被を剥離している様子を示す図である。
【図20】本発明のケーブル外被の切断方法の好ましい実施形態を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ケーブル外被カッター
11 本体
12 保持部材
20 ガイド部材
40 ローラ
52 先端部
55 刃部
56 打撃受け部
100 HSケーブル
101 ケーブル外被
102 ケーブルコア
110 絶縁被覆
111 金属パイプ
120 ガイド溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被カッターであって、
前記ケーブルに載置される本体と、
前記本体に揺動可能に設置された保持部材と、を備え、
前記保持部材の一端部は、
前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませる先端部と、
前記先端部付近に形成されて、前記ケーブルに設置したとき前記ケーブルの長手方向に対して傾斜角度を有し、前記本体を前記ケーブルの長手方向に沿って移動させることにより前記金属パイプを切断する刃部と、
を有することを特徴とするケーブル外被カッター。
【請求項2】
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルに設置したとき、前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する前記傾斜角度は 、30度以上、80度以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル外被カッター。
【請求項3】
前記本体は、前記ケーブル外被の外周面に当接されて前記ケーブル外被の前記外周面に沿って前記本体が傾くのを防止する傾き防止部と、
前記ケーブル外被の前記外周面に当接されて前記本体が前記ケーブル外被の前記外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、
を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル外被カッター。
【請求項4】
前記傾き防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記浮き上がり防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記ガイド部は、前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に予め形成されているガイド溝に沿って案内されるガイド部材であることを特徴とする請求項3に記載のケーブル外被カッター。
【請求項5】
前記保持部材の他端部には、打撃を受けて前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のケーブル外被カッター。
【請求項6】
ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被の切断方法であって、
前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に直線状のガイド溝を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝の両端付近であり、かつ、前記直線状のガイド溝と交わる位置に前記絶縁被覆と前記金属パイプに対して円周方向に沿って円周傷を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝と前記円周傷の交点において、ケーブル外被カッターの先端部を前記ケーブル外被の前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませて、前記ガイド溝に沿って前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に移動させることにより、前記ケーブル外被カッターの刃部により前記金属パイプを切断する工程とを有することを特徴とするケーブル外被の切断方法。
【請求項7】
前記金属パイプを切断するときの前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する傾斜角度は、30度以上で、80度以下であることを特徴とする請求項6に記載のケーブル外被の切断方法。
【請求項1】
ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被カッターであって、
前記ケーブルに載置される本体と、
前記本体に揺動可能に設置された保持部材と、を備え、
前記保持部材の一端部は、
前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませる先端部と、
前記先端部付近に形成されて、前記ケーブルに設置したとき前記ケーブルの長手方向に対して傾斜角度を有し、前記本体を前記ケーブルの長手方向に沿って移動させることにより前記金属パイプを切断する刃部と、
を有することを特徴とするケーブル外被カッター。
【請求項2】
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルに設置したとき、前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する前記傾斜角度は 、30度以上、80度以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル外被カッター。
【請求項3】
前記本体は、前記ケーブル外被の外周面に当接されて前記ケーブル外被の前記外周面に沿って前記本体が傾くのを防止する傾き防止部と、
前記ケーブル外被の前記外周面に当接されて前記本体が前記ケーブル外被の前記外周面から浮き上がるのを防止する浮き上がり防止部と、
前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って直進移動させるガイド部と、
を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル外被カッター。
【請求項4】
前記傾き防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記浮き上がり防止部は、前記ケーブル外被の前記外周面に当接されるV溝部分と、前記ケーブルの前記V溝部分と所定の角度を持って前記ケーブルを把持するローラであり、
前記ガイド部は、前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に予め形成されているガイド溝に沿って案内されるガイド部材であることを特徴とする請求項3に記載のケーブル外被カッター。
【請求項5】
前記保持部材の他端部には、打撃を受けて前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に沿って移動させる打撃受け部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のケーブル外被カッター。
【請求項6】
ケーブルコアと前記ケーブルコアを覆うケーブル外被とを有し、前記ケーブル外被が、金属パイプと前記金属パイプを覆う絶縁被覆とを有するケーブルのケーブル外被の切断方法であって、
前記ケーブルの長手方向に沿って前記絶縁被覆に直線状のガイド溝を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝の両端付近であり、かつ、前記直線状のガイド溝と交わる位置に前記絶縁被覆と前記金属パイプに対して円周方向に沿って円周傷を形成する工程と、
前記直線状のガイド溝と前記円周傷の交点において、ケーブル外被カッターの先端部を前記ケーブル外被の前記金属パイプと前記ケーブルコアの間にもぐり込ませて、前記ガイド溝に沿って前記ケーブル外被カッターを前記ケーブルの長手方向に移動させることにより、前記ケーブル外被カッターの刃部により前記金属パイプを切断する工程とを有することを特徴とするケーブル外被の切断方法。
【請求項7】
前記金属パイプを切断するときの前記刃部の前記ケーブルの長手方向に対する傾斜角度は、30度以上で、80度以下であることを特徴とする請求項6に記載のケーブル外被の切断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−11139(P2009−11139A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172751(P2007−172751)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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