説明

ケーブル引出し台

【課題】 ケーブル引出し操作を停止しても、ケーブルの引出し力による慣性によってケーブルドラムが慣性回転することなく速やかに回転停止し、ケーブルの逆巻き現象を防止することができるケーブル引出し台の提供。
【解決手段】 基台1と、該基台1から立ち上げられた縦枠2と、該縦枠2の上部と高さ方向中間部とから水平方向に突出された略平行な横軸3,4と、上部横軸3に揺動自在に垂下された揺動枠5とからなり、前記中間部横軸4は、ケーブル巻回ドラムDを回転自在に軸支可能な高さ位置に設定され、前記揺動枠5は、ケーブル巻回ドラムDにおける側板d,dの外周面f,fに接当する制動部6,6を備えた横杆52と、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルcと接触して前記制動部6,6をドラム側板d,dの外周面f,fから離脱させるケーブル接触部53とを備えているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーケーブル、電話ケーブル、集合アンテナケーブル、電線その他各種のケーブル類をドラム巻きしてあるケーブルドラムを、その中心穴を利用して横軸に差し込み回転自在に軸支させ、ケーブル配線工事等においてケーブル端を引き出して配線する作業時に使用するケーブル引出し台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知のケーブル引出し台は、例えばドラム状に巻回形成したケーブル束の中心空洞部を利用して、ターンテーブル状とした回転台の回転枠に嵌め込んで回転台上に載置し、載置したケーブル束を上面から押さえるようにして安定させ、回転台に設けたガイドを介してケーブル束の外側からほぐすようにしてケーブル端を横方向外側に引き出す構造としたもの(特許文献1)や、同様に、ケーブル束の中心空洞部を利用して、ターンテーブル状とした回転台の回転枠内に嵌め込んで載置し、ケーブル束の内側からほぐすようにしてケーブル端を基体の穴を介して横方向外側に引き出す構造としたもの(特許文献2)等が知られている。
【特許文献1】特開2000−191242号公報
【特許文献2】実開昭55−163731号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来のケーブル引出し台は、ケーブル束の中心空洞部を利用して回転台のケーブル保持枠に嵌め込んで回転台上に載置して使用するようにしたものであり、ケーブルをケーブル束の外側から引き出すタイプのものも、内側から引き出すタイプのものもケーブルの引出し力によってケーブル台全体を水平面で回転させるものであるから、ベアリング等を利用して回転台全体を軽く回転できるようにする装置を必要とする。他方、ケーブルの引出し操作を停止したときには、引出し力による慣性によってケーブルが逆巻き現象を生じないように、速やかに回転停止させる装置を必要とする。この逆巻き現象を防止するために慣性回転を生じにくくするとケーブルの引出しに力を要することとなる。
【0004】
また、このようにケーブル束を回転台上に載置して使用するものにあっては、ケーブル束が自然にほぐれて形崩れし易くなり、ケーブル端を外側から引き出すものにあっては、引出しのための引っ張り力がケーブル束の中心方向への締め付け力に変化し、ケーブル束内に食い込んでケーブルの円滑な引出しが困難になり易いという課題を有しているものであった。
【0005】
そこで、本発明者は、ケーブルをドラム巻きしたものを対象とし、ドラム巻きした状態のまま、ドラムの中心穴を横軸に挿通して横軸の回りに回転させるようにし、ケーブルの引出し操作が楽に行えるものでありながら、引出し力を利用して、ドラムの制動解除と慣性回転の制動とを自然に且つ確実に行え、ケーブルの引出し方向についても自由な方向に行うことができ、また、ケーブルの絡み合い現象の殆ど生じないケーブル引出し台の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために講じた本発明にいうケーブル引出し台の構成を、実施例を示す図面に使用した符号を用いて説明すると、基台1と、該基台1から立ち上げられた縦枠2と、該縦枠2の上部と高さ方向中間部とから水平方向に突出された略平行な横軸3,4と、上部横軸3に揺動自在に垂下された揺動枠5とからなり、前記中間部横軸4は、ケーブル巻回ドラムDを回転自在に軸支可能な高さ位置に設定され、前記揺動枠5は、ケーブル巻回ドラムDにおける側板d,dの外周面f,fに接当する制動部6,6を備えた横杆52と、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルcと接触して前記制動部6,6をドラム側板d,dの外周面f,fから離脱させるケーブル接触部53とを備えている構成としたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成した本発明にいうところのケーブル引出し台は、ケーブル巻回ドラムにおける左右の側板の外周面に接当する制動部を、上部横軸に揺動自在に垂下させた揺動枠に設けて常時は接当状態とし、この揺動枠に、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルと接触して揺動枠を上昇傾斜させるケーブル接触部を備えた構成としたものであるから、ケーブル引出し操作時には揺動枠の上昇傾斜に伴って前記制動部をドラム側板の外周面から自動的に離脱させることができ、ケーブルのドラムからの引出しが容易にできるものであり、ケーブルの引出しを停止するとケーブルの引出し張力の減少に伴って揺動枠は自重で自動的に下降傾斜し、制動部がドラム側板の外周面に自動的に接当し揺動枠の重力を制動部に集中させた状態でそれ以上の下降傾斜を停止する。この揺動枠の重力を支える制動部のドラム側板外周面への接当によって、ケーブル巻きドラムは慣性回転を殆ど生じることなく、生じたとしても極めて少ない状態で停止させることができるので、ケーブル引出しの使用頻度に関係なく、ケーブル逆巻き現象の発生を常に防止することができるという顕著な効果を有するものである。
【0008】
殊に、近来急速な普及を遂げている光ケーブルのように、屈折によって容易に断線し、線どうしの接続に手数と時間を要し接続部が異常に嵩張るようなケーブルにあっては、ケーブルドラムの慣性回転による逆巻き現象の発生を全幅的に阻止し、ケーブルの再引出し時に屈折による断線の発生を絶対的に避けなければならない性質のケーブルの引出し作業に使用するのに本発明のケーブル引出し台は最適である。
【0009】
更に、本発明にいうケーブル引出し台は、前記のように、揺動枠に、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルと接触して揺動枠を上昇傾斜させるケーブル接触部を備えた構成としてあるので、ケーブル引出し方向が当該接触部位置よりも上方向である限りにおいて引出し方向に制限を受けることなく使用することができ、地上での立ち姿勢のみならず、ケーブル引出し台を地上に置いたまま、例えば、脚立の上方や梯子上でのケーブル張り作業にも自由に引き出して作業することができる利点も備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するに当たっては、前記揺動枠5を、概略U字形に形成されているものとし、その下枠54の上部にケーブル通過用空間sを隔ててケーブル接触部53を有する横棒55を備えたものとしておくと、U字枠に横棒55を固着するだけでよいので製造が容易である点で好ましい。また、前記ケーブル巻回ドラムDの側板d,dの外周面f,fに接当させる制動部6,6の制動効果を高める手段として、横棒55を重量のある太い金属棒や重りを兼ねた重量体で形成したり、揺動枠5自体を重量のあるものとしておくことが好ましい。
【実施例】
【0011】
以下本発明を図に示した実施例に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施例の使用状態を示す斜視図、図2及び図3は同使用状態を説明する正面図、図4は図1及び図2の側面図、図5は非使用状態を示す斜視図、図6は同正面図、図7は同側面図である。また、図8は分解可能各部を分解して示した斜視図である。
【0012】
本発明にいうところのケーブル引出し台は、図1〜4に示したように、2本の金属パイプを平面視においてそれぞれL字形に折り曲げてコの字状となるように突き合わせて基台1を形成し、突き合わせ端をコの字形の中間部から隣接平行に立ち上げて2本の縦枠2を長短に形成し、その1本(図1、5では右側のパイプ)を縦枠2における上端部分から、他の1本(図1、5では左側のパイプ)を縦枠2における上下方向の略中間部から、それぞれ水平方向に突出させて上下2本の略平行な横軸3,4を形成してあるものとする。ここにいう基台1、縦枠2及び上下2本の横軸3,4は、図示のもののみに限られるものではなく、例えば円形基台の一側部分から立ち上げた1本の縦杆から上下の横軸3,4を突出させる等、その他適宜の手段によって形成することができる。
【0013】
このようにした上下2本の略平行な横軸3,4のうち、上部横軸3は、芯軸に対して外管体を軸周方向に回転自在に鞘状に外嵌させた二重軸としてあり、外管体に対して図4,7に見られるように、概形を略U字形とした揺動枠5の上端を固着させて垂下状としてある。この揺動枠5は、金属パイプを利用して略U字形に曲げ形成したものである。
【0014】
而して、この揺動枠5の上端近く部分に筒状の外軸51を固着し、この外軸51に対して左右から出退及び周方向角度変更自在に横杆52,52を挿入し、図1に示したように固定ネジ7,7で固定させるようにするとともに、それぞれの外端近く部分に、平板状の制動部6,6を備え、その角度姿勢を蝶ねじのような固定ネジ7,7で固定させるようになっている。この制動部6,6は、使用するケーブル巻回ドラムDを構成する左右の側板d,dの外周面f,fにそれぞれ接当するように形成してある。
【0015】
また、該揺動枠5における下枠54近くの上部箇所には、ケーブル通過用空間sを隔てて横棒55を固着させ、その下面部分をケーブル接触部53とし、図3に示したように、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルcと接触してケーブルcに抵抗と張力を与えるようにしてある。この横棒55は太い棒材で形成され、その重力によってケーブル巻回ドラムDに対する前記制動部6,6の制動効果を高め、ドラムDの無用な慣性回転を制御することができるように配慮してある。
【0016】
前記中間部横軸4は、ケーブル巻回ドラムDを回転自在に軸支可能な高さ位置に設定され、その基部側(図5,7、8において右側)に、ドラムの一方の側板dの中心部に形成された穴と嵌合しドラムの片側を支持する筒部44と同側板dの外面に接触しドラムの奥側位置を規制するフランジ43とを備えた第1ストッパー41が嵌合され、ドラムDを該横軸4に軸支させたとき、ドラムの他方の側板dの中心部に形成された穴と嵌合しドラムの他方を支持する筒部44aと同側板dの外面に接触しドラムの挿入手前側位置を規制するフランジ43と、該フランジ43の外側に突出する別の筒部44bと前記筒部44aの中心部から更に所定長さ突出する小径筒部45とを備えた第2ストッパー42が該横軸4のドラム挿入側に嵌合され、座金46を介して締め付けハンドル47のネジと軸端のネジ穴48との螺合によって固定される。
【0017】
通常は図5乃至7に示したように、前記揺動枠5は上部横枠3から垂下された状態となっている。
【0018】
而して、ケーブル巻回ドラムDを前記横軸4に軸支させて使用可能状態とするには、即ち、図1、2及び4の状態とするには、締め付けハンドル47(座金46を含む)と第2ストッパー42とを外し、第1ストッパー41が横軸4上に存在する状態で、ドラムDを横軸4上に挿入し、外側から第2ストッパー42の筒部44aをドラム穴に挿入し、前記のように、座金46を介して締め付けハンドル47のネジと軸端のネジ穴48とを螺合させて締め付け固定すればよい。
【0019】
このようにした状態で、ケーブルcを使用するには、前記のように、ケーブル端を揺動枠5の下枠54と横棒55との間に形成されたケーブル通過用空間s通して外部に引出し(図2の状態)、その端部を任意の使用方向に引き出す(図3の状態)。この引出し方向は作業者の手の位置が通常はケーブル通過用空間sの位置よりも高いし、ケーブルcの使用場所は更に高い位置であることが普通であるので、ケーブル引出し作業時に引き出されるケーブルcに対して横棒55の下面側が接触し、横棒55自体の重力と揺動枠5全体の荷重がケーブルcに伝えられ、ケーブルcに抵抗と張力とを与え、図3に示したように、揺動枠5の下端側を上方に移行させ、前記制動部6,6をドラムDの側板d,dから引き離しケーブルの引出し操作を容易とする。
【0020】
ケーブルの引出し操作が中断されると、ケーブルcの張力が減少するので揺動枠5は自重で降下し、制動部6,6がドラムDの左右の側板d,dの外周面f,fにそれぞれ接当して揺動枠5の重力によってドラムDの慣性回転を制動し速やかに回転停止させることができるようになっている。
【0021】
図9及び図10は別の使用例を説明する図である。図9は、ケーブル巻回ドラムDの左右の側板d,dの径が、前記実施例に示したドラムDに比して小径のものを示したものである。このようにドラムDの側板d,dの径が小径であっても、揺動枠5に設けた制動部6,6は、揺動枠5が自重により前記実施例に比し降下傾斜することによって、ドラム側板d,dの外周面f,fと確実に接触する。この場合、制動部6,6が外軸51に対して軸周方向に回転自在としてある場合は、ドラム側板d,dの外周面f,fに対し最も適した姿勢に自動的に従属することとなり、前記実施例に示した固定ネジ7,7で固定する形式の場合は個々に角度調整すればよい。
【0022】
図10は、ケーブル巻回ドラムDの左右の側板d,d間の間隔が、前記実施例に示したドラムDに比して小間隔の形態のものの場合について示したものである。このドラム側板d,dの間隔が小さい形態のものの場合には、ドラムDの外側に使用する前記第2ストッパー42を、図8において示したように内外逆方向とし、前記実施例ではドラムDの外側に位置させた別の筒部44bをドラムDに挿入し、筒部44aと小径筒部45とがドラムDの外側に位置するようにして使用する。このとき、座金46を介して締め付けハンドル47のネジを軸端のネジ穴48に螺合させて固定することは言うまでもない。
【0023】
図11は、制動部6,6の別実施例について示したもので、前記第1実施例において揺動枠5の上部近くに形成した横軸(同実施例では外軸)51に対して、これに外嵌する筒部52を備えた長方形板状の制動部6を軸線方向移動と軸周方向角度変更とを自在として任意姿勢に固定レバー7で固定するようにしたものである。
【0024】
図12は、制動部6,6の更なる別実施例について示したもので、ここに示した制動部6,6は、前記第1実施例において示した揺動枠5の上部近くに形成した横軸(同実施例では外軸)51の両端部そのものをドラムDの側板d,dに対して、直接接当させるようにしたものである。このようにした場合には、横軸51の全長を制動部として作用させることができるので、前記図10のドラムDのように、側板d,d間の間隔の狭いドラムDに対しても制動部6,6の調整を一切必要としない点で利点がある。図では、この横軸51を丸棒として示したが、六角棒や四角棒のような多角形棒や板状のものとしてもよいことは容易に理解できることである。
【0025】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう構成要件を備え、本発明にいう目的を達成し、効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。また、本発明にいうところのケーブル引出し台は、ケーブル以外のワイヤー等のドラム巻き線材の引出しにも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施例の使用状態を示す斜視図。
【図2】同使用直前状態の正面図。
【図3】同使用状態の正面図。
【図4】同側面図。
【図5】同非使用状態の斜視図。
【図6】同正面図。
【図7】同側面図。
【図8】各部の分解斜視図。
【図9】第2使用例を示す正面図。
【図10】第2使用例を示す側面図。
【図11】第2実施例を説明する部分斜視図。
【図12】第3実施例を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
2 縦枠
3 上部横軸
4 中間部横軸
5 揺動枠
52 横杆
53 ケーブル接触部
54 下枠
55 横棒
6 制動部
c ケーブル
D ケーブル巻回ドラム
d ドラム側板
f 外周面
s ケーブル通過用空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台1と、該基台1から立ち上げられた縦枠2と、該縦枠2の上部と高さ方向中間部とから水平方向に突出された略平行な横軸3,4と、上部横軸3に揺動自在に垂下された揺動枠5とからなり、前記中間部横軸4は、ケーブル巻回ドラムDを回転自在に軸支可能な高さ位置に設定され、前記揺動枠5は、ケーブル巻回ドラムDにおける側板d,dの外周面f,fに接当する制動部6,6を備えた横杆52と、ケーブル引出し操作時に引き出されるケーブルcと接触して前記制動部6,6をドラム側板d,dの外周面f,fから離脱させるケーブル接触部53とを備えているケーブル引出し台。
【請求項2】
揺動枠5が、概略U字形に形成され、その下枠54の上部にケーブル通過用空間sを隔ててケーブル接触部53を有する横棒55を備えたものである請求項1に記載のケーブル引出し台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−160465(P2006−160465A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355444(P2004−355444)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(391024009)ミノル工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】