説明

ケーブル挿通部の密閉構造及びそれを備えたクロージャ

【課題】良好なシール性を確保しつつケーブルを位置ずれなく確実にクランプすることが可能なケーブル挿通部の密閉構造及びそれを備えたクロージャを提供する。
【解決手段】クロージャ11は、ベースプレート12に形成された筒状部41の凹部42に嵌合されるシール部材51と、周方向へ間隔をあけて配置された複数の押圧爪部63を有し、シール部材51とともに凹部42に嵌合される爪部材61と、周方向へ間隔をあけて配置された複数のクランプ爪部78を有し、爪部材61を介してシール部材51を筒状部41の凹部42へ押圧させて密着させるとともに、押圧爪部63を径方向内方へ弾性変形させてシール部材51の内周面を光ケーブル23の外周面へ密着させるシールナット71と、クランプ爪部78を径方向内方へ弾性変形させて光ケーブル23の外周面へ係止させるクランプナット81と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルが挿通される挿通部における密閉構造及びそれを備えたクロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブル等のケーブルの接続部及び余長部を収容するクロージャは、屋外や地下配管内に配設されることがあるため、高い密閉性が要求される。このようなケーブルの挿通箇所における防水構造として、ケーブルをクランプ本体の軸線方向に挿通させるとともに、円筒状ゴムブッシングとクランプリングとに挿通させた後、クランプリングの外側からクランプナットをクランプ本体に螺合させることにより組み立てられる防水ケーブルクランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−340235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のケーブルクランプによれば、クランプ本体にクランプナットを螺合させる過程で、クランプリングとゴムブッシングの作用により、ケーブルとクランプとの密着を達成し、防水効果を高めることができる。しかし、ゴムブッシングの密着力によって保持されているケーブルに、引張力が生じると、ケーブルがゴムブッシングに対して摺動し、クランプ位置がずれてしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、良好なシール性を確保しつつケーブルを位置ずれなく確実にクランプすることが可能なケーブル挿通部の密閉構造及びそれを備えたクロージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明のケーブル挿通部の密閉構造は、ベースプレートに形成された挿通口に通されたケーブルをシールするケーブル挿通部の密閉構造であって、
前記ベースプレートの前記挿通口の縁部から軸方向へ延在された筒状部と、
前記筒状部の一端側に形成された凹部に嵌合される弾性材料からなる円筒状のシール部材と、
周方向へ間隔をあけて配置された複数の押圧爪部を有し、前記シール部材の外周に装着されて前記シール部材とともに前記凹部に嵌合される円筒状の爪部材と、
周方向へ間隔をあけて配置された複数のクランプ爪部を有し、前記筒状部へ螺合されることにより前記爪部材を介して前記シール部材を前記ベースプレートの前記筒状部の前記凹部へ押圧させて密着させるとともに、前記爪部材の前記押圧爪部を径方向内方へ弾性変形させて前記シール部材の内周面を前記ケーブルの外周面へ密着させるシールナットと、
前記シールナットへ螺合されることにより前記クランプ爪部を径方向内方へ弾性変形させて前記ケーブルの外周面へ係止させるクランプナットと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のクロージャは、内部が収容空間とされた開口部を有するケースと、前記ケースの前記開口部を閉鎖するように装着されるベースプレートとを有し、前記ベースプレートに設けられたケーブル挿通部から前記収容空間内にケーブルが引き込まれるクロージャであって、
前記ベースプレートの前記ケーブル挿通部が本発明の密閉構造によってシールされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シールナットの装着によって、シール部材をベースプレートの筒状部の凹部へ押圧させて密着させ、また、爪部材の押圧爪部を径方向内方へ弾性変形させてシール部材の内周面をケーブルの外周面へ均等に密着させる。これにより、ベースプレートとケーブルとの間を確実にシールさせることができる。また、クランプナットの装着によって、シールナットのクランプ爪部を径方向内方へ弾性変形させてケーブルの外周面へ均等に係止させる。これにより、ケーブルを確実に把持させることができる。
つまり、ベースプレートのケーブルが通されるケーブル挿通部における良好なシール性を確保しつつケーブルを位置ずれなく確実にクランプすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るクロージャの外観を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るケーブル挿通部の密閉構造を備えた光ケーブル引き出し部の断面図である。
【図3】図2の光ケーブル引き出し部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るケーブル挿通部の密閉構造及びそれを備えたクロージャの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るクロージャ11は、例えば、合成樹脂から形成されたベースプレート12を有している。このベースプレート12は、下面側にケース13が水密的に取り付けられており、これにより、このベースプレート12の下面側はケース13によって覆われている。なお、この種のクロージャは通常、ケース13が上側となるように設置される場合が多いが、本明細書及び図面での上下方向は前記のように定める。
【0011】
ケース13は、内部が収容空間Sとされ、その開口部を閉鎖するように、ベースプレート12が装着されている。ケース13で覆われた収容空間S内には、余長収容部15が設けられている。この余長収容部15は、ベースプレート12に固定されたフレーム16と、このフレーム16に支持されて積層された複数の余長収容トレイ17とを備えている。これらの余長収容トレイ17には、光ファイバ心線の接続部及び光ファイバ心線の余長部が収容されている。
【0012】
ベースプレート12には、光ファイバコード21が引き出される光ファイバコード引き出し部22及び光ケーブル(ケーブル)23が引き込まれる光ケーブル引き込み部(ケーブル挿通部)24が設けられている。
【0013】
光ケーブル23は、複数本の光ファイバ心線を束ねて外被で覆ったもので、例えば外被の内側でスロットロッドの収容溝等に複数本の光ファイバ心線が収容されている。光ケーブル引き込み部(ケーブル挿通部)24から収容空間S内に引き込まれた光ケーブル23は、光ファイバ心線が引き出され、光ファイバコード21の光ファイバ心線と接続されている。光ファイバコード21は、1本または複数本の光ファイバ心線を束ねて外被で覆ったものである。そして、これらの光ファイバコード21の光ファイバ心線と光ケーブル23の光ファイバ心線との接続部及び余長部が余長収容部15の余長収容トレイ17に収容されている。
【0014】
次に、上記の光ケーブル23が引き込まれるベースプレート12における光ケーブル引き込み部24であるケーブル挿通部の密閉構造について詳述する。
【0015】
図2及び図3に示すように、光ケーブル引き込み部24は、ベースプレート12に形成された挿通口12aの縁部から軸方向へ延在されて上方へ突出する筒状部41を有している。この筒状部41には、シール部材51及び爪部材61が嵌め込まれ、さらに、シールナット71及びクランプナット81が装着される。
【0016】
筒状部41の上端側には、凹部42が形成されており、シール部材51及び爪部材61は、筒状部41の凹部42に嵌合されて筒状部41に装着される。これにより、シール部材51は、凹部42を構成する段部43に当接し、軸方向への移動が規制される。また、この筒状部41は、その外周に、雄ネジ44が形成されている。
【0017】
シール部材51は、合成ゴム等の弾性材料からなるもので、略円筒状に形成されている。このシール部材51には、その下端部に、周方向へわたって突出されたフランジ部52が形成されている。また、このシール部材51には、上端部に、外径を僅かに小さくした小径部53を形成することにより、段部54が形成されている。
【0018】
爪部材61は、合成樹脂材料または金属材料から形成されたもので、略円筒状に形成されている。この爪部材61には、その上端側に、周方向へ間隔をあけて複数のスリット62が形成されている。そして、これらのスリット62を形成することにより、爪部材61の上端側には、複数の押圧爪部63が周方向へ等間隔に形成されている。これらの押圧爪部63には、その先端における内周面側に、内方へ突出する爪部64が形成されている。
【0019】
この爪部材61は、シール部材51に対して、その外周を覆うように装着される。すると、この爪部材61の下端部がシール部材51のフランジ部52に当接し、また、各押圧爪部63の爪部64が、シール部材51の小径部53の外周に配置される。
【0020】
シールナット71は、合成樹脂材料または金属材料から形成されたもので、筒状に形成されている。このシールナット71は、平面視六角形状の外形を有するナット部72と、このナット部72の上端に形成されたクランプ部73と、これらのナット部72とクランプ部73との間に形成された押圧部74とを有している。
【0021】
シールナット71のナット部72には、その内周に、筒状部41の雄ネジ44に螺合可能な雌ネジ75が形成されており、シールナット71は、筒状部41の雄ネジ44にナット部72の雌ネジ75を螺合させることにより、筒状部41に装着される。
【0022】
押圧部74は、その内周側に、筒状部41への装着方向へ向かって次第に拡径するテーパ面76を有しており、このテーパ面76が、爪部材61の押圧爪部63の上端外周部に当接される。
【0023】
シールナット71のクランプ部73には、その上端側に、周方向へ間隔をあけて複数のスリット77が形成されている。そして、これらのスリット77を形成することにより、クランプ部73の上端側には、複数のクランプ爪部78が周方向へ等間隔に形成されている。これらのクランプ爪部78には、その先端における内周面側に、内方へ突出する爪部79が形成されている。また、シールナット71のクランプ部73には、クランプ爪部78よりも下端側における外周に、雄ネジ80が形成されている。
【0024】
クランプナット81は、合成樹脂材料または金属材料から形成されたもので、筒状に形成されている。このクランプナット81は、平面視六角形状の外形を有しており、その内周には、シールナット71のクランプ部73に形成された雄ネジ80へ螺合可能な雌ネジ82が形成されている。クランプナット81は、シールナット71のクランプ部73の雄ネジ80に雌ネジ82を螺合させることにより、シールナット71のクランプ部73に装着される。クランプナット81は、その上端部における内周側に、シールナット71のクランプ部73への装着方向へ向かって次第に拡径するテーパ面83を有しており、このテーパ面83が、シールナット71のクランプ部73に形成されたクランプ爪部78の上端外周部に当接される。
【0025】
上記構造の光ケーブル引き込み部24に光ケーブル23を通して保持させるには、まず、クランプナット81、シールナット71、爪部材61及びシール部材51へ光ケーブル23を挿通させ、さらに、光ケーブル23を、筒状部41へ挿通させる。
【0026】
シール部材51に爪部材61を被せ、これらのシール部材51及び爪部材61を、筒状部41の凹部42へ、シール部材51の下端部が凹部42の段部43に当接するまで嵌合させる。
【0027】
光ケーブル23を収容空間S側へ必要な導入長さだけ引き込んだら、筒状部41にシールナット71のナット部72を被せ、ナット部72の雌ネジ75を、筒状部41の雄ネジ44に螺合させ、ナット部72をねじ込む。
【0028】
このようにすると、シールナット71の押圧部74のテーパ面76が爪部材61の押圧爪部63の先端外周部に当接し、これにより、押圧爪部63がテーパ面76によって押圧される。すると、爪部材61には、ねじ込み方向(図中下向き)へ向かう力が作用し、爪部材61の下端部によってシール部材51のフランジ部52が筒状部41の段部43へ押圧され、シール部材51の下端部が段部43に密着される。これにより、ベースプレート12とシール部材51との間が確実にシールされる。
【0029】
また、爪部材61の押圧爪部63は、シールナット71の押圧部74のテーパ面76によって径方向内方へ向かって押圧されて弾性変形する。すると、これらの押圧爪部63の内周面側に形成された爪部64によってシール部材51が外周面側から押圧され、シール部材51の内周面が光ケーブル23の外周面に密着される。これにより、光ケーブル23とシール部材51との間が確実にシールされる。このとき、シール部材51は、周方向へ等間隔に複数配置された押圧爪部63によって押圧されるので、光ケーブル23の外周面へ均等に密着される。
【0030】
次に、シールナット71のクランプ部73にクランプナット81を被せ、クランプナット81の雌ネジ82を、クランプ部73の雄ネジ80に螺合させ、クランプナット81をねじ込む。
【0031】
このようにすると、クランプナット81のテーパ面83がシールナット71のクランプ部73に形成されたクランプ爪部78の先端外周部に当接し、これにより、クランプ爪部78がテーパ面83によって押圧される。すると、クランプ部73のクランプ爪部78は、クランプナット81のテーパ面83によって径方向内方へ向かって押圧されて弾性変形する。これにより、これらのクランプ爪部78の内周面側に形成された爪部79が光ケーブル23の外周面に押圧されて光ケーブル23の外被に食い込まされて係止される。よって、光ケーブル23は、シールナット71のクランプ部73にクランプされて確実に把持される。このとき、クランプ爪部78は、周方向へ等間隔に複数配置されているので、光ケーブル23の外周面の周方向に亘ってそれぞれ偏りなく均等に押し付けられる。したがって、光ケーブル23は、偏って加圧されることによる不具合なく、シールナット71のクランプ部73に把持される。
【0032】
このように、上記実施形態によれば、シールナット71の装着によって、シール部材51をベースプレート12の筒状部41の凹部42へ押圧させて密着させ、爪部材61の押圧爪部63を径方向内方へ弾性変形させてシール部材51の内周面を光ケーブル23の外周面へ均等に密着させる。よって、ベースプレート12と光ケーブル23との間を確実にシールさせることができる。さらに、クランプナット81の装着によって、シールナット71のクランプ爪部78を径方向内方へ弾性変形させて光ケーブル23の外周面へ均等に係止させ、光ケーブル23を確実に把持させることができる。
【0033】
このように、ベースプレート12の光ケーブル23が通される光ケーブル引き込み部24における良好なシール性を確保しつつ光ケーブルを位置ずれなく確実にクランプすることができる。
【0034】
この密閉構造を備えたベースプレート12を有するクロージャ11によれば、光ケーブル引き込み部24における密閉性を大幅に向上させることができ、屋外や地下配管内に配置しても水の浸入を確実に防止することができ、高い信頼性を確保することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、ベースプレート12の挿通口12aに、光ケーブル23からなるケーブルを挿通させる構造について説明したが、ベースプレート12の挿通口12aに挿通させるケーブルとしては、光ケーブルに限定されない。
【符号の説明】
【0036】
11:クロージャ、12:ベースプレート、12a:挿通口、13:ケース、23:光ケーブル(ケーブル)、24:光ケーブル引き込み部(ケーブル挿通部)、41:筒状部、42:凹部、51:シール部材、61:爪部材、63:押圧爪部、71:シールナット、78:クランプ爪部、81:クランプナット、S:収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートに形成された挿通口に通されたケーブルをシールするケーブル挿通部の密閉構造であって、
前記ベースプレートの前記挿通口の縁部から軸方向へ延在された筒状部と、
前記筒状部の一端側に形成された凹部に嵌合される弾性材料からなる円筒状のシール部材と、
周方向へ間隔をあけて配置された複数の押圧爪部を有し、前記シール部材の外周に装着されて前記シール部材とともに前記凹部に嵌合される円筒状の爪部材と、
周方向へ間隔をあけて配置された複数のクランプ爪部を有し、前記筒状部へ螺合されることにより前記爪部材を介して前記シール部材を前記ベースプレートの前記筒状部の前記凹部へ押圧させて密着させるとともに、前記爪部材の前記押圧爪部を径方向内方へ弾性変形させて前記シール部材の内周面を前記ケーブルの外周面へ密着させるシールナットと、
前記シールナットへ螺合されることにより前記クランプ爪部を径方向内方へ弾性変形させて前記ケーブルの外周面へ係止させるクランプナットと、を備えていることを特徴とするケーブル挿通部の密閉構造。
【請求項2】
内部が収容空間とされた開口部を有するケースと、前記ケースの前記開口部を閉鎖するように装着されるベースプレートとを有し、前記ベースプレートに設けられたケーブル挿通部から前記収容空間内にケーブルが引き込まれるクロージャであって、
前記ベースプレートの前記ケーブル挿通部が請求項1に記載の密閉構造によってシールされていることを特徴とするクロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−89640(P2012−89640A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234295(P2010−234295)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【Fターム(参考)】