説明

ケーブル捻回機構および電子機器

【課題】回転駆動機構を有するセンサ、アンテナ等の電子機器におけるケーブルの収納方法として、安価で、かつ、小型軽量化が可能なケーブル捻回機構を提供する。
【解決手段】回転機構を形成する回転テーブル1からのケーブル11を巻き取るケーブル巻き取り機構5を回転ケーブル1の下面に備える。ケーブル巻き取り機構5は、中空の円筒形状からなり、ケーブル11を一方の端面の回転側ケーブル穴9から取り込み他方の端面のケーブル穴12から固定マウント2側に取り出す構造を有し、かつ、固定側シャフト6と第1歯車7、第2歯車8が噛合することにより、回転ケーブル1の回転角度に応じて、あらかじめ定めた減速比で、ケーブル巻き取り機構5の中心軸を中心にして回転することにより、ケーブル11を巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル捻回機構および電子機器に関し、特に、回転駆動機構を具備したセンサ、アンテナ等の搭載装置において、該センサ、アンテナ等を接続するケーブルの捻回機構および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動機構を有するセンサ、アンテナ等の搭載装置において、回転側に搭載した回路部と固定側に搭載した回路部との間で電気信号を伝達するために、ケーブルが使用されている。しかしながら、固定側の回路部と接続するケーブルの端部が固定されているために、回転部が回転することにより、当該ケーブルは捻られてしまう。したがって、特許文献1の特開2002−214451号公報「光ケーブル余長処理装置および光通信機器用収納架」にも記載のように、通常、当該ケーブルに余長をとって、回転部が回転する回転軸周りに、螺旋状に、当該ケーブルが装備されるように対策している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−214451号公報(第4−5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような従来技術のケーブル収納方法においては、特に、回転側が大きい角度範囲で回転する必要がある場合、ケーブルの余長のために、ケーブル収納部が大きくなり、また、高さも必要となるため、小型化に不利になる。または、スリップリングを使用することも可能であるが、高価である。つまり、従来のケーブル収納方法においては、次のような問題がある。
【0005】
第1の問題点は、自由な回転動作を可能とするために、余長ケーブルを自由状態にする必要があり、径方向および高さ方向に大きな収納スペースを必要とする。
【0006】
第2の問題点は、余長ケーブルが、回転動作により与えられたケーブル収納スペースを自由に動くために、ケーブル同士が絡まるという問題がある。
【0007】
第3の問題点は、回転動作によりケーブルと収納ケース、または、ケーブル同士の干渉により、回転を妨げる方向の摩擦が発生することがあり、かつ、かかる摩擦は、常に一定とはならないため、回転駆動力において、負荷のばらつきが発生する。
【0008】
第4の問題点は、スリップリングを採用する場合は、ケーブルを使用する場合と比較して高価になる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、回転駆動機構を有するセンサ、アンテナ等の搭載装置において、安価で、かつ、小型軽量化が可能なケーブル捻回機構および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明によるケーブル捻回機構および電子機器は、次のような特徴的な構成を採用している。下記の(1)なる番号は請求項の項番号に対応している。
【0011】
(1)回転機構を有する電子機器内においてケーブルを収納するためのケーブル捻回機構であって、回転機構を形成する回転テーブルからのケーブルを巻き取るケーブル巻き取り機構を前記回転テーブルに備えているケーブル捻回機構。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブル捻回機構および電子機器によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0013】
回転機構を形成する回転テーブルが回転すると、ケーブル巻き取り機構が、あらかじめ決められた減速比で回転して、ケーブルを巻き取って行くので、ケーブルの余長を短くすることができる。
【0014】
また、ケーブルはケーブル巻き取り機構により動きが拘束されるため、ケーブル同士が干渉したり、あばれたりすることがなく、スムーズにケーブルを処理することができる。
【0015】
また、円筒形状のケーブル巻き取り機構を備えることにより、ケーブルが必要とする空間を小さくすることができ、小型化を可能にしている。
【0016】
また、スリップリングを使用しないので、安価な電子機器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるケーブル捻回機構の全体構成を説明するための概念図である。
【図2】ケーブル巻き取り機構5の回転角度が0°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図である。
【図3】ケーブル巻き取り機構5の回転角度が180°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図である。
【図4】ケーブル巻き取り機構5の回転角度が360°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるケーブル捻回機構および電子機器の好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0019】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、回転駆動機構を有する電子機器においてケーブルを収納するためのケーブル捻回機構に関し、360度以上回転する回転駆動機構を有する場合でも適用することが可能である。
【0020】
具体的には、電子機器内に、回転機構を形成する回転テーブルから固定マウント側に向かうケーブルを内部に取り込む円筒形状のケーブル巻き取り機構を回転テーブル下面に備え、回転テーブルからのケーブルは、該回転テーブルの穴に密着したケーブル巻き取り機構の一方の端面例えば上面の回転側ケーブル穴からケーブル巻き取り機構の内部に入り、ケーブル巻き取り機構の中心部を通って、ケーブル巻き取り機構の他方の端面例えば下面あるいは側面のケーブル穴から固定側マウント内に出てくる。回転テーブルに装着されたケーブル巻き取り機構は、あらかじめ定めた減速比の歯車により、固定側シャフトと結合されている。したがって、該ケーブル巻き取り機構は、前記回転テーブルの回転に対して、該ケーブル巻き取り機構の中心軸を中心にして最適な減速比の歯車によって決められた角度で回転する。ケーブルは前記ケーブル巻き取り機構の中心部を緩通している。このため、前記ケーブル巻き取り機構のケーブル穴から固定マウント内に出ているケーブルは、前記回転テーブルの回転と合わせて、前記ケーブル巻き取り機構により巻き取られることになる。
【0021】
(本発明の実施形態の構成の説明)
次に、本発明によるケーブル捻回機構の実施形態について、その一例を、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明によるケーブル捻回機構の全体構成を説明するための概念図であり、図1(A)は、回転駆動機構を有する電子機器の側面図を示し、図1(B)は、回転駆動機構を有する電子機器の内部構造を示す断面図である。
【0022】
図1(A)に示すように、回転テーブル1は、軸受4を介して固定側マウント2と結合されており、回転軸3を軸として回転する。ケーブル巻き取り機構5は、内部にケーブル11を緩通させることが可能な中空の円筒形状であり、図1(B)に示すように、回転テーブル1の下面に、ケーブル巻き取り機構5の中心軸を中心にして回転自在な機構を有して配置されており、固定側シャフト6の第1歯車7とあらかじめ決められた減速比の第2歯車8を介して結合されている。
【0023】
ケーブル11は、ケーブル巻き取り機構5の中心部の回転側ケーブル穴9(図1(B)の回転テーブル1に密着しているケーブル巻き取り機構5の上側の穴)から、円筒形状のケーブル巻き取り機構5の中つまり固定側マウント2の中に取り込まれ、ケーブル巻き取り機構5のケーブル穴12((図1(B)の巻き取り機構5の下側の穴、巻き取り機構5の側面に設けても良い)から引き出されて、固定側ケーブル穴10を通って外部に導かれて外部機器に接続される。
【0024】
(本発明の実施形態のケーブル捻回状態の説明)
次に、図1に示す回転テーブル1が回転した際のケーブル11の捻回状態について、図1の回転テーブル1の回転に伴い、あらかじめ定めた減速比で回転(自転)する機構を有するケーブル巻き取り機構5の回転角度(すなわち回転テーブル1の回転角度)が0°,180°,360°となった場合のケーブル11の捻回状態を、それぞれ、図2、図3、図4を用いて説明する。なお、図3、図4に示すように、回転テーブル1の回転方向が、反時計方向の場合を示している。
【0025】
図2は、ケーブル巻き取り機構5の回転角度が0°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図であり、図1のA−A線から見た断面を示している。回転テーブル1が回転していない状態においては、ケーブル11は、ケーブル巻き取り機構5の下側のケーブル穴12から反時計方向に固定側シャフト6を回って、固定側ケーブル穴10から外部に引き出される。
【0026】
図3は、ケーブル巻き取り機構5の回転角度が180°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図であり、図2の同様、図1のA−A線から見た断面を示している。回転テーブル1が、反時計方向に回転して、ケーブル巻き取り機構5が180°回転した状態においては、ケーブル巻き取り機構5が回転テーブル1の回転角度に応じてあらかじめ定めた減速比で自転することにより、ケーブル11は、ケーブル巻き取り機構5の下側のケーブル穴12からケーブル巻き取り機構5の周りを時計方向にほぼ1周回って、固定側ケーブル穴10から外部に引き出される。
【0027】
図4は、ケーブル巻き取り機構5の回転角度が360°の場合のケーブル11の捻回状態を示す状態図であり、図2の同様、図1のA−A線から見た断面を示している。回転テーブル1が、反時計方向に回転して、ケーブル巻き取り機構5が360°回転した状態においては、ケーブル巻き取り機構5が回転テーブル1の回転角度に応じてあらかじめ定めた減速比で自転することにより、ケーブル11は、ケーブル巻き取り機構5の下側のケーブル穴12からケーブル巻き取り機構5の周りを時計方向にほぼ2周回って、固定側ケーブル穴10から外部に引き出される。
【0028】
このように、回転テーブル1の回転に合わせて、ケーブル巻き取り機構5は、第1歯車7および第2歯車8により与えられる最適な角度で、ケーブル11を巻き取るため、余長ケーブルがあばれたり、互いに干渉したりすることがなく、回転角度に応じて、スムーズに処理することができる。したがって、固定側マウント2を小型化することが可能となる。
【0029】
(実施形態の発明の効果)
第1の効果は、回転テーブル1が回転すると、ケーブル巻き取り機構5が、あらかじめ決められた減速比で回転して、ケーブル11を巻き取って行くので、ケーブル11の余長を短くすることができることにある。
【0030】
第2の効果は、回転テーブル1の回転動作に合わせて、ケーブル11はケーブル巻き取り機構5により巻き取られ、ケーブル11の動きを拘束するので、ケーブル11は、自由状態にならなく、互いに絡まったりすることもなく、スムーズに収納することができることにある。
【0031】
第3の効果は、ケーブル巻き取り機構5によりケーブル11の収納スペースを小さくすることが可能であり、回転駆動機構を有する電子機器の小型軽量化が可能となることにある。
【0032】
第4の効果は、回転テーブル1の回転動作に伴うケーブル11の動きがあらかじめ決められていることから、ケーブル11の捻回による摩擦等の負荷による回転駆動力への影響を把握することができることにある。
【0033】
第5の効果は、スリップリングを使用しないので、安価になることにある。
【0034】
以上のように、本発明によるケーブル捻回機構は、回転駆動を必要とするアンテナ装置やセンサ装置をはじめ、物理的な回転駆動機構を備えた電子機器であれば、如何なる装置についても効果的に適用することができる。
【0035】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加え、次のような構成として表現できる。下記(2)−(7)なる番号は、請求項の項番号にそれぞれ対応している。
(2)前記ケーブル巻き取り機構は、中空の円筒形状からなり、前記回転テーブルからのケーブルを一方の端面の回転側ケーブル穴から取り込み、中心軸に沿って内部を緩通させて他方の端面のケーブル穴から固定マウント側に取り出す構造を有している上記(1)のケーブル捻回機構。
(3)前記ケーブル巻き取り機構の前記ケーブル穴が、円筒形状の他方の端面ではなく、前記ケーブル巻き取り機構の側面に設けられている上記(2)のケーブル捻回機構。
(4)前記ケーブル巻き取り機構は、前記回転ケーブルの回転に応じて、当該ケーブル巻き取り機構の中心軸を中心にして回転する構造を有している上記(1)ないし(3)のいずれかのケーブル捻回機構。
(5)前記ケーブル巻き取り機構は、前記回転テーブルの回転に対して、あらかじめ定めた減速比で、当該ケーブル巻き取り機構の中心軸を中心にして回転する上記(4)のケーブル捻回機構。
(6)前記ケーブル巻き取り機構は、歯車機構により、前記回転テーブルの回転に対してあらかじめ定めた前記減速比で回転する上記(5)のケーブル捻回機構。
(7)回転機構を有する電子機器において、前記回転機構からのケーブルを収納するケーブル捻回機構として、上記(1)ないし(6)のいずれかのケーブル捻回機構を用いる電子機器。
【符号の説明】
【0036】
1 回転テーブル
2 固定側マウント
3 回転軸
4 軸受
5 ケーブル巻き取り機構
6 固定側シャフト
7 第1歯車
8 第2歯車
9 回転側ケーブル穴
10 固定側ケーブル穴
11 ケーブル
12 ケーブル穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構を有する電子機器内においてケーブルを収納するためのケーブル捻回機構であって、回転機構を形成する回転テーブルからのケーブルを巻き取るケーブル巻き取り機構を前記回転テーブルに備えていることを特徴とするケーブル捻回機構。
【請求項2】
前記ケーブル巻き取り機構は、中空の円筒形状からなり、前記回転テーブルからのケーブルを一方の端面の回転側ケーブル穴から取り込み、中心軸に沿って内部を緩通させて他方の端面のケーブル穴から固定マウント側に取り出す構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のケーブル捻回機構。
【請求項3】
前記ケーブル巻き取り機構の前記ケーブル穴が、円筒形状の他方の端面ではなく、前記ケーブル巻き取り機構の側面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のケーブル捻回機構。
【請求項4】
前記ケーブル巻き取り機構は、前記回転ケーブルの回転に応じて、当該ケーブル巻き取り機構の中心軸を中心にして回転する構造を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のケーブル捻回機構。
【請求項5】
前記ケーブル巻き取り機構は、前記回転テーブルの回転に対して、あらかじめ定めた減速比で、当該ケーブル巻き取り機構の中心軸を中心にして回転することを特徴とする請求項4に記載のケーブル捻回機構。
【請求項6】
前記ケーブル巻き取り機構は、歯車機構により、前記回転テーブルの回転に対してあらかじめ定めた前記減速比で回転することを特徴とする請求項5に記載のケーブル捻回機構。
【請求項7】
回転機構を有する電子機器において、前記回転機構からのケーブルを収納するケーブル捻回機構として、請求項1ないし6のいずれかに記載のケーブル捻回機構を用いることを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−239742(P2010−239742A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84269(P2009−84269)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】