説明

ケーブル支持具

【課題】ケーブルへの負荷を低減して、センサとの接続部分におけるケーブルの断線の可能性を軽減することが可能なケーブル支持具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るケーブル支持具1は、センサを保持するとともに設置面10に設けられたセンサホルダ20から導出されたケーブル21を前記設置面10側で支持する支持部材を備えたケーブル支持具1であって、前記支持部材は、前記ケーブル21の導出位置21a側における前記ケーブル21の屈曲角が、該支持部材によって支持されない状態に比べて小さくなるように前記ケーブル21を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の装置に設置されたセンサから導出されたケーブルを支持するケーブル支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン、ガスタービン等の製品出荷後の試運転時などに、加速度計、圧力計、振動計などのセンサを取り付けて、各種計測を実施することがある。このとき、センサに接続されたケーブルが装置の表面に沿って配線される。
【0003】
特許文献1では、ガスタービン等の回転機械において回転体となる動翼に発生する振動応力を計測する際に用いられるケーブルを敷設するための配線装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、装置に沿って配線されたケーブルは、高温度の環境において、熱伸びや製品の振動、流体による力などの影響を受けて、断線する可能性がある。
【0006】
また、センサに接続されたケーブルは、センサから導出された後、装置の表面まで降ろすように曲げられて配線される。そのため、特に、断線は、ケーブルがセンサから導出する部分であるケーブルの根元で起こることが多い。
【0007】
さらに、ケーブルを装置に固定するため、治具を装置に直接取り付けることがあるが、治具のサイズが大きいと、遠心力や流体力の影響を受けやすくなる。そのため、治具が飛散して事故につながる恐れもあるため、最小限のサイズの治具を用いることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ケーブルへの負荷を低減して、センサとの接続部分におけるケーブルの断線の可能性を軽減することが可能なケーブル支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のケーブル支持具は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るケーブル支持具は、センサを保持するとともに設置面に設けられたセンサホルダから導出されたケーブルを前記設置面側で支持する支持部材を備えたケーブル支持具であって、前記支持部材は、前記ケーブルの導出位置側における前記ケーブルの屈曲角が、該支持部材によって支持されない状態に比べて小さくなるように前記ケーブルを支持する。
【0010】
この発明によれば、センサを保持するセンサホルダが設置面に設けられるとき、支持部材がセンサホルダから導出されたケーブルを設置面側で支持する。このとき、支持部材は、ケーブルの導出位置側におけるケーブルの屈曲角が、支持部材によって支持されない状態に比べて小さくなるようにケーブルを支持する。これにより、センサホルダからのケーブルの導出位置においてケーブルが設置面側に屈曲しないような位置でケーブルを支持することができ、ケーブルの導出位置においてケーブルに負荷がかかりにくくなる。そのため、熱伸びや設置面から受ける製品の振動、流体による力などの負荷を受けても、ケーブルが断線するおそれがなくなる。
【0011】
ここで設置面は、例えばセンサの測定対象の表面、蒸気タービン、ガスタービンといった製品などの性能試験のための供試体の表面である。また、ケーブルの屈曲角が小さくなるような角度とは、ケーブルの導出位置においてケーブルが断線する可能性があるような例えば約90°の角度を有する曲がりを回避するような角度である。
【0012】
上記発明において、前記支持部材は、前記センサホルダに結合してもよい。
この発明によれば、支持部材がセンサホルダに結合していることで、ケーブルの導出位置近傍においてケーブルを設置面側で確実に支持できる。また、ケーブルが力を受けてもケーブルの導出位置おいてケーブルに負荷がかかりにくい。さらに、センサホルダに予め支持部材を結合しておけば、センサホルダを設置面に設置したとき、ケーブル支持具を同時に設置面に設置することになるため、ケーブル支持具の設置面への取り付けが容易になる。
【0013】
上記発明において、前記支持部材は、前記設置面に固定されてもよい。
この発明によれば、支持部材が設置面に固定されるため、センサホルダから導出されたケーブルを設置面側で確実に支持できる。また、ケーブルが力を受けてもケーブルの導出位置おいてケーブルに負荷がかかりにくくなる。
【0014】
上記発明において、前記支持部材は、門型形状であり、前記設置面に二つの脚部で固定されてもよい。
この発明によれば、支持部材が軽量化されるため、支持部材が設置面に与える影響を低減できる。設置面が供試体である場合は、供試体に対する負担が少なくなる。
【発明の効果】
【0015】
ケーブルへの負荷を低減して、センサとの接続部分におけるケーブルの断線の可能性を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るケーブル支持具を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るケーブル支持具を示す上面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るケーブル支持具を示す側面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るケーブル支持具を示す側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るケーブル支持具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るケーブル支持具1を示す側面図である。図1は、センサホルダ20が設置面10上に設けられている状態を示している。図2は、本発明の第1実施形態に係るケーブル支持具1を示す上面図であり、図1を上から見た図である。
【0018】
センサホルダ20は、加速度計、圧力計、振動計などのセンサを内部に保持する部材である。センサは、蒸気タービン、ガスタービン等の製品出荷後の試運転時などに各種計測を実施するために設置される。センサホルダ20は軸方向が設置面10に対して平行になるように設けられる。図1では、センサホルダ20は設置面10上の台座11を介して設置面10上に設けられている。ここで、設置面10とは、例えばセンサの測定対象の表面、蒸気タービン、ガスタービンといった製品などの性能試験のための供試体の表面である。
【0019】
センサホルダ20の一端部20aからはセンサに接続されたケーブル21が、装置の表面であるセンサホルダ20の設置面10に沿って配線される。ケーブル21はセンサで検出された信号をコンピュータなどの処理装置に送る。センサホルダ20の他端部は、設置面10に接続されたチューブ22が結合している。チューブ22にはセンサ先端部と接続されたケーブルなどが内蔵される。
【0020】
本発明の第1実施形態に係るケーブル支持具1は、板状部材であり、図1および図2に示すように、ケーブル支持具1の一端部1aでセンサホルダ20の一端部20aに結合している。ケーブル支持具1は、センサホルダ20から導出されたケーブル21を設置面10側で支持する。ケーブル支持具1は、広い面がセンサホルダ20の軸のほぼ延長上に位置するようにセンサホルダ20に取り付けられている。
【0021】
また、ケーブル支持具1は、センサホルダ20から導出されるケーブル21の導出位置21aよりも、設置面10側に位置するように取り付けられる。このとき、ケーブル21の導出位置21a側におけるケーブル21の屈曲角が、ケーブル支持具1によって支持されない状態に比べて小さくなるように、ケーブル支持具1はケーブル21を支持する。
【0022】
すなわち、センサホルダ20において、ケーブル21の導出位置21aはセンサホルダ20の軸上または軸近傍に位置することが多い。そのため、センサホルダ20が設置面10に設けられると、導出位置21aと設置面10の間に所定の間隔(高さ)が生ずる。したがって、従来のように本発明のケーブル支持具1がない場合、ケーブル21が設置面10に沿って配線されるとき、導出位置21aから設置面10までの間において、ケーブル21に余裕を持たせて緩やかに配線することもできる。
【0023】
しかし、ケーブル21の確実な固定を優先するなどの理由によって、ケーブル21の根元である導出位置21aにおいてケーブル21が急に曲げられて配線される場合もある。その結果、従来のように、ケーブル支持具1によってケーブル21が支持されない場合、ケーブル21は導出位置21aから設置面10まで最短距離で配置され、ケーブル21は、センサホルダ20の軸方向に対して例えば約90°の角度に曲げられて設置面10に到達するように配置される可能性がある。ケーブル21がこのような角度で配線されると、ケーブル21の導出位置21aにおいて、ケーブル21に負荷がかかりやすくなり、ケーブル21が断線する可能性がある。
【0024】
一方、本発明のケーブル支持具1をセンサホルダ20に設置することで、ケーブル21の導出位置21aから導出されたケーブル21は、まずケーブル支持具1上に配線される。ケーブル支持具1は、設置面10より導出位置21aに近く、かつセンサホルダ20の軸方向に長い形状を有するため、ケーブル21が設置面10側に急に屈曲しないような位置でケーブル21を支持することができる。すなわち、ケーブル21は設置面10へ向けて、ケーブル支持具1を介して緩やかな角度で配線される。
【0025】
SUS箔2は、図2に示すように、ケーブル支持具1上でスポット溶接されて固定され、ケーブル支持具1上にケーブル21を固定する。これにより、ケーブル21は、ケーブル支持具1上にSUS箔2によって固定される。
【0026】
以上より、本発明のケーブル支持具1を用いてケーブル21を配線することによって、ケーブル21の導出位置21aにおいて、緩やかな角度でケーブル21が配線されるため、ケーブル21に負荷がかかりにくくなる。そのため、熱伸びや設置面から受ける製品の振動、流体による力などの負荷を受けても、ケーブル21が断線するおそれがなくなる。ここで、緩やかな角度とは、ケーブル21の屈曲角が小さくなるような角度であり、ケーブル21の導出位置21aにおいてケーブル21が断線する可能性があるような角度を回避するような角度である。
【0027】
また、ケーブル支持具1がセンサホルダ20に直接結合していることで、ケーブル21の導出位置近傍においてケーブル21を確実に支持できる。
【0028】
さらに、ケーブル支持具1が予めセンサホルダ20に結合されていれば、センサホルダ20が設置面10に設置されるとき、ケーブル支持具1が設置面10に同時に固定されることになるため、ケーブル支持具1の設置面10への取り付けが容易になる。
【0029】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るケーブル支持具41を示す側面図である。図3は、センサホルダ20が設置面30上に設けられている状態を示している。
【0030】
第1実施形態では、ケーブル支持具41が直接センサホルダ20に結合しているとしたが、本発明はこの例に限定されない。第2の実施形態のケーブル支持具41は、センサホルダ20に結合せず、設置面30に固定される。設置面30は、センサホルダ20やケーブル支持具41から負荷を受けるため板厚が厚い部材の表面であることが望ましい。
【0031】
台座31は、センサホルダ20を固定する部材であり、台座31は溶接によって設置面30に固定されつつ、溶接によってセンサホルダ20と連結される。図3上の符号32は、溶接部分を示す。ケーブル支持具41も溶接によって設置面30に固定される。図3上の符号42は、溶接部分を示す。なお、台座31、ケーブル支持具41とも仮設される部材でもよく、所定の測定が終了したとき設置面30から除去される。
【0032】
ケーブル支持具41は、第1実施形態と同様に、センサホルダ20から導出されたケーブル21を設置面30側で支持する。ケーブル支持具41は、ケーブル21を支持する面が設けられており、その支持面がケーブルホルダ20の軸の延長上に近く、かつケーブルホルダ20の軸に対してほぼ平行な位置になるように、設置面30に固定されている。
【0033】
また、支持面の設置面30からの高さは、支持面上にケーブル21が配線されるとき、ケーブル21の導出位置21a側におけるケーブル21の屈曲角が、ケーブル支持具41によって支持されない状態に比べて小さくなるように決定されている。
【0034】
図3では、ケーブル支持具41は、センサホルダ20と接するように、設置面30に固定されている。一方、本発明はこの例に限定されない。例えば、ケーブル支持具41は、ケーブル21が急な角度で屈曲しない程度に、センサホルダ20から離れた位置で設置面30に固定されてもよい。
【0035】
図3では図示しないがSUS箔が、ケーブル支持具41上でスポット溶接されて固定され、ケーブル支持具41上にケーブル21を固定する。これにより、ケーブル21は、ケーブル支持具41上でSUS箔によって固定される。
【0036】
以上より、本発明のケーブル支持具41を用いてケーブル21を配線することによって、ケーブル21の導出位置21aにおいて、緩やかな角度でケーブル21が配線されるため、ケーブル21に負荷がかかりにくくなる。そのため、熱伸びや設置面から受ける製品の振動、流体による力などの負荷を受けても、ケーブル21が断線するおそれがなくなる。
【0037】
そして、ケーブル支持具41が設置面30に固定されるため、センサホルダ20から導出されたケーブル21を設置面30側で確実に支持できる。また、ケーブル21が力を受けてもケーブル21の導出位置21aおいてケーブル21に負荷がかかりにくくなる。
【0038】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図4および図5を用いて説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係るケーブル支持具50を示す側面図である。図4は、センサホルダ20が設置面10上に設けられている状態を示している。図5は、本発明の第3実施形態に係るケーブル支持具50を示す断面図である。
【0039】
第1実施形態、第2実施形態では、それぞれケーブル支持具1またはケーブル支持具41上でケーブル21がSUS箔2によって固定されるとしたが、ケーブル21は他の方法で固定されてもよい。
【0040】
第3実施形態では、半割れの部材を用いてケーブル21を設置面10に対して固定する。第3実施形態のケーブル支持具50は、接地部51とケーブル固定部52からなる。
【0041】
接地部51は、二つの脚部と一つの支持面を有し、断面が門型形状の部材である。二つの脚部は、設置面10に固定される。支持面は、脚部の上側に設けられ、ケーブル21を支持する。その支持面は、センサホルダ20の軸のほぼ延長上に位置するように、設置面10に固定されている。また、支持面の設置面10からの高さは、支持面上にケーブル21が配線されるとき、ケーブル21の導出位置21a側におけるケーブル21の屈曲角が、ケーブル支持具50によって支持されない状態に比べて小さくなるように決定されている。支持面上には溝53がケーブル21の配線方向に沿って設けられる。
【0042】
ケーブル固定部52は、例えば板状部材であり、接地部51の支持面上に設置される。ケーブル固定部52の一面側には、溝54がケーブル21の配線方向に沿って設けられる。接地部51の溝53とケーブル固定部52の溝54を組み合わせてできる穴の形状が、ケーブル21の断面形状に合うようにしておくことで、ケーブル支持具50は、ケーブル21を確実に固定できる。また、ケーブル固定部52は、ボルト55とナット56によって接地部51とボルト結合されて、ケーブル21を固定する。第1実施形態や第2実施形態のようにSUS箔を用いないため、第3実施形態では第1実施形態や第2実施形態より容易にケーブル21を配線できる。
【0043】
ケーブル支持具50の接地部51は、溶接によって設置面10に固定される。図5上の符号57は、溶接部分を示す。
【0044】
図4では、ケーブル支持具50はケーブル21の配線方向に沿って複数個が設置面10上に固定される。これにより、ケーブル21が設置面10と接触しないように配線方向に沿って長く配線できる。なお、図示しないが、ケーブル支持具50の高さを徐々に変化させることで、ケーブル21を緩やかな傾斜で設置面10に向けて配線することもできる。
【0045】
また、図4では、ケーブル支持具50は、センサホルダ20から離れた位置で、設置面10に固定されている。一方、本発明はこの例に限定されない。例えば、ケーブル支持具50は、図3で示した第2実施形態のケーブル支持具41と同様に、センサホルダ20に接触する位置で設置面10に固定されてもよい。
【0046】
以上より、本発明のケーブル支持具50を用いてケーブル21を配線することによって、ケーブル21の導出位置21aにおいて、緩やかな角度でケーブル21が配線されるため、ケーブル21に負荷がかかりにくくなる。そのため、熱伸びや設置面から受ける製品の振動、流体による力などの負荷を受けても、ケーブル21が断線するおそれがなくなる。
【0047】
そして、ケーブル支持具50が軽量化された形状を有するため、ケーブル支持具50が設置面10に与える影響を低減できる。設置面10が供試体である場合は、供試体に対する負担が少なくなる。
【符号の説明】
【0048】
1,41,50 ケーブル支持具
2 SUS箔
10 設置面
11,31 台座
20 センサホルダ
21 ケーブル
22 チューブ
51 接地部
52 ケーブル固定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを保持するとともに設置面に設けられたセンサホルダから導出されたケーブルを前記設置面側で支持する支持部材を備えたケーブル支持具であって、
前記支持部材は、前記ケーブルの導出位置側における前記ケーブルの屈曲角が、該支持部材によって支持されない状態に比べて小さくなるように前記ケーブルを支持することを特徴とするケーブル支持具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記センサホルダに結合していることを特徴とする請求項1に記載のケーブル支持具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記設置面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル支持具。
【請求項4】
前記支持部材は、門型形状であり、前記設置面に二つの脚部で固定されることを特徴とする請求項3に記載のケーブル支持具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−143079(P2012−143079A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294242(P2010−294242)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】