説明

ケーブル用モジュールおよびその組立方法

【課題】筐体と基板との接触部位の間に配線を挟み込むことなく容易にモジュールを組み立てることのできるケーブル用モジュールおよびその組立方法を提供する。
【解決手段】上側部品と下側部品とを含む筐体と、前記筐体の内部に取り付けられる基板と、前記筐体の内面から前記基板へ向けて突出し、前記基板と直接的または間接的に接触する突出部と、前記筐体の内部を通る配線と前記突出部とを隔てる隔壁と、を備えることを特徴とするケーブル用モジュールおよびその組立方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル用モジュールおよびその組立方法に関し、特に、複数の部品が組み合わされてなる筐体内に基板が配されているケーブル用モジュールおよびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルを伝送される信号に対して変換・増幅等を行うために当該ケーブルの途中あるいは末端部に取り付けられるモジュールが知られている。その一例としては、光ファイバを伝送される光信号を電気信号に変換するために当該光ファイバの末端部などに設けられて光電変換モジュールが挙げられる(例えば特許文献1参照)。このような光電変換モジュールを含む上記モジュールは、例えば、外部機器に接続されるコネクタや電子部品などが取り付けられた基板と、当該基板を収納するとともにケーブルが引き込まれる筐体とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−10254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなモジュールでは、基板に搭載された光電変換部品や電子部品から発生する熱の放熱効率の向上を目的として、筐体と基板とをスペーサなどを介して接触させているものがある。一方で、筐体の内部には信号伝送のためのバイパス線など何本もの配線が架け渡されているものがある。したがって、例えば配線が基板の表面近傍に配置されているモジュールでは、その組み立ての際に基板とスペーサとの間に配線を挟み込んだまま基板を筐体に取り付けてしまう虞があり、組立作業において特に注意を要していた。
【0005】
本発明の目的は、筐体と基板との接触部位の間に配線を挟み込むことなく容易にモジュールを組み立てることのできるケーブル用モジュールおよびその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、上側部品と下側部品とを含む筐体と、筐体の内部に取り付けられる基板と、筐体の内面から基板へ向けて突出し、基板と直接的または間接的に接触する突出部と、筐体の内部を通る配線と突出部とを隔てる隔壁と、を備えることを特徴とするケーブル用モジュールを提供する。
【0007】
また、上記ケーブル用モジュールにおいて、隔壁は、筐体または基板の少なくともいずれか一方に固定される固定部と、突出部と配線とを隔てる壁部と、を含むことがより好ましい。
【0008】
また、上記ケーブル用モジュールにおいて、壁部は、固定部から、突出部と離間する方向へ傾斜して固定部から延出していることがより好ましい。
【0009】
また、上記ケーブル用モジュールにおいて、固定部は、基板と突出部とに挟持されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記ケーブル用モジュールにおいて、固定部は、基板上に配される発熱体と突出部との間に挟持されていることがより好ましい。
【0011】
また、上記ケーブル用モジュールにおいて、固定部は、筐体に固定され、壁部は、基板を貫通して設けられていることがより好ましい。
【0012】
また、本発明の上記目的を達成するために、他の形態として、上側部品と下側部品とを含む筐体と、筐体の内部に取り付けられる基板と、筐体の内面から基板へ向けて突出し、基板と直接的または間接的に接触する突出部と、筐体の内部を通る配線と突出部とを隔てる隔壁と、を備えるケーブル用モジュールの組立方法であって、上側部品または下側部品の一方に基板および配線を通し、隔壁を、配線を突出部の配置位置から逃がすように固定位置まで移動させて固定し、上側部品または下側部品の他方を上側部品または下側部品の一方に取り付け、前記突出部を前記基板と直接的または間接的に接触させることを特徴とすることを特徴とするケーブル用モジュールの組立方法を提供する。
【0013】
また、上記組立方法において、隔壁は、筐体または基板の少なくともいずれかに固定される固定部と、配線と突出部とを隔てる壁部を含み、
配線を突出部の配置位置から逃がすように前記隔壁を固定位置まで移動させて固定する工程において、固定部から突出部と離間する方向へ壁部が傾斜するように配置することがより好ましい。
【0014】
また、本発明の上記目的を達成するために、さらに他の形態として、
上側部品と下側部品とを含む筐体と、筐体の内部に取り付けられる基板と、筐体の内面から基板へ向けて突出し、基板と直接的または間接的に接触する突出部と、筐体の内部を通る配線と突出部とを隔てる隔壁と、を備えるケーブル用モジュールの組立方法であって、上側部品または下側部品の一方に基板を取り付け、筐体の内部における配線を通す位置と前記突出部の配置位置との間に隔壁を配置した後、配線を突出部の配置位置と前記壁部を挟んで異なる側に通し、上側部品または下側部品の他方を上側部品または下側部品の一方に取り付けることを特徴とするケーブル用モジュールの組立方法を提供する。
【0015】
また、上記組立方法において、隔壁は、筐体または基板の少なくともいずれかに固定される固定部と、配線と突出部とを隔てる壁部を含み、壁部が突出部の配置位置の外縁に沿って延出するように隔壁を配置した後、配線を突出部の配置位置と前記壁部を挟んで異なる側に通すことがより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケーブル用モジュールおよびその組立方法は、上記の特徴を備えることにより、基板に搭載された光電変換部品や電子部品から発生する熱の放熱などのために基板と直接的または間接的に接触する突出部が設けられた筐体を組み立てる際に、突出部と基板との間に配線が入り込むのを確実に防ぐことができるので、ケーブル用モジュールの組み立てが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールから端部カバーを取り外して上側部品と下側部品を分解した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールを図1に示すA−A線を通る鉛直断面で切断した状態での斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールについて、図3の状態から上側部品と下側部品を分解したときの様子を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールについて、ケーブル用モジュールを図1に示すA−A線を通る鉛直断面で切断してA−A線に付した矢印の方向から見た図である。
【図6】本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュールの組立方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態の他の一例に係るケーブル用モジュールの図5に対応する断面図である。
【図8】本発明の実施形態の他の一例に係るケーブル用モジュールの組立方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態のさらに他の一例に係るケーブル用モジュールの図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のケーブル用モジュールおよびその組立方法の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
【0019】
<ケーブル用モジュール10の構成>
先ず、本発明の実施形態の一例に係るケーブル用モジュール10について、斜視図(図1)、端部カバー23,24を取り外して上側部品21と下側部品22を分解した状態を示す図(図2)、ケーブル用モジュール10を図1に示すA−A線を通る鉛直断面で切断した状態での斜視図(図3)、図3の状態から上側部品21と下側部品22を分解したときの様子を示す斜視図(図4)、およびケーブル用モジュール10を図1に示すA−A線を通る鉛直断面で切断してA−A線に付した矢印の方向から見た図(図5)の各図を参照して説明する。
【0020】
本例のケーブル用モジュール10は、図1〜図5に示すように、ケーブル101とケーブル102との間に設けられており、上側部品21、下側部品22、端部カバー23,24、およびケーブル保護部品25,26で構成される筐体と、基板40と、突出部51,52と、隔壁61,62とを備える。本例のケーブル用モジュール10は、ケーブル101を伝送される光信号を電気信号に変換してケーブル102へと出力することのできる光電変換モジュールであり、モジュールを構成する上記各部について以下に詳述する。
【0021】
上側部品21および下側部品22は、互いに係合可能な形状に形成されており、互いに係合することにより中空の円筒体を構成する。また、上側部品21および下側部品22の外面には、基板40に搭載された光電変換部品や電子部品から発生する熱の放熱効率を上げるためのヒートシンクや放熱フィンとして機能する凹凸が設けられている。また、上側部品21と下側部品22との係合部は、電磁ノイズの遮蔽性能を高めるために、係合部が互いに隙間無く咬み合ったラビリンス構造となっている。なお、上側部品21および下側部品22の材質は、電磁ノイズの遮蔽性能および熱伝導性に優れた材料であれば特に限定されないが、これらの特性に優れた材料として例えばアルミニウム合金などが好ましく用いられる。
【0022】
ケーブル保護部品25は、ケーブル101におけるケーブル用モジュール10との接続端部の外側に取り付けられて当該接続端部を保護する。また、ケーブル保護部品26は、ケーブル保護部品25と同様に、ケーブル102におけるケーブル用モジュール10との接続端部の外側に取り付けられて当該接続端部を保護する。本例では、これらケーブル保護部品25,26は、端部にフランジが設けられており、このフランジを上側部品21または下側部品22の長手方向の端部に設けられた係合溝に嵌合させることで上側部品21および下側部品22に固定される。
【0023】
端部カバー23,24は、ケーブル保護部品25,26の外側を覆う部品であり、上側部品21および下側部品22の長手方向の端部に固定される。なお、端部カバー23,24およびケーブル保護部品25,26の材質は、一定の剛性を有する材料であれば特に限定されないが、剛性と軽量化の面から上側部品21および下側部品22と同じくアルミニウム合金などが好ましく用いられる。
【0024】
基板40は、上記筐体の内部に配されており、上記筐体を構成する下側部品22に固定された板状の回路基板と、当該回路基板に実装された光ファイバ接続部43および光電変換素子41,42、および当該光電変換素子41,42を駆動する駆動ICなどの電子部品で構成される。なお、以下の説明において、「基板40」とは、実質的に上記の回路基板を指すものとする。また、図示は省略するが、基板40の下面には、ケーブル102に含まれる信号線113が接続されるコネクタなどの電子部品が実装されている。
【0025】
光電変換素子41は基板40の上面に設けられており、光電変換素子42は基板40の下面に設けられている。また、光ファイバ接続部43は、光電変換素子41,42の各々に対応して設けられており、ケーブル101に含まれる複数の光ファイバ心線(不図示)を光電変換素子41,42と接続するためのフェルールおよびスリーブなどで構成されている。
【0026】
光電変換素子41,42は、複数の上記光ファイバ心線の各々に対応して設けられた複数のフォトダイオード(PD: Photo Diode)を含む。複数のフォトダイオードの各々は、上記光ファイバ心線を伝送される光信号を、その強度(振幅)に応じた電気信号に変換する。なお、上記光ファイバ心線を伝送される光信号が例えば波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplex)伝送方式に対応した複数種類の光信号を含む場合は、光電変換素子41,42は、さらに波長分割装置などを含む。また、光電変換素子41,42は、信号増幅回路などをさらに含んでもよい。
【0027】
ここで、光電変換素子41,42は、基板40上に配される発熱体の一例であり、光信号を電気信号に変換する際に熱を発生する。しかしながら、発生した熱は、後述のように、隔壁61,62および突出部51,52を介して上側部品21または下側部品22から外部へ効率よく放熱させることができる。
【0028】
突出部51,52は、図3から図5に示すように、上側部品21および下側部品22の内面から基板40へ向けて突出している。より具体的には、突出部51は、上記筐体を構成する上側部品21と一体に設けられており、上側部品21の内面から下方に向けて突出するボス51aと、ボス51aの先端部(下端部)に取り付けられた放熱シート51bとを有し、基板40の上面に実装された光電変換素子41の表面(上面)と対向している。そして、放熱シート51bの下面(ボス51aと反対側の面)は、光電変換素子41の上面に固定された隔壁61の一部と当接している。したがって、突出部51は、放熱シート51bおよび隔壁61を介して光電変換素子41と間接的に接触している。
【0029】
一方、突出部52は、上記筐体を構成する下側部品22と一体に設けられており、下側部品22の内面から上方に向けて突出するボス52aと、ボス52aの先端部(上端部)に取り付けられた放熱シート52bとを有し、基板40の下面に実装された光電変換素子42の表面(下面)と対向している。そして、放熱シート52bの上面(ボス52aと反対側の面)は、光電変換素子42の下面に固定された隔壁62の一部と当接している。したがって、突出部52は、放熱シート52bおよび隔壁62を介して光電変換素子42と間接的に接触している。
【0030】
ここで、ボス51a,52aの材質は、熱伝導性に優れた材料であれば特に限定されないが、ボス51aは上側部品21と、ボス52aは下側部品22と、それぞれ同じ材料により一体成形されていることが好ましい。また、放熱シート51b,52bには、例えばシリコーンゴムなど、ボス51a,52aや隔壁61,62との密着性や熱伝導性に優れた材料が好ましく用いられるが、上記の各特性に優れる材料であればこれに限られない。放熱シート51b,52bに替えて、シリコーングリースなどを用いてもよい。
【0031】
このように、突出部51,52が放熱シート51b,52bや隔壁61,62といった他の部材を介して基板40と間接的に接触しているので、本例のケーブル用モジュール10は、放熱性に優れる。一方、突出部51,52を他の部材を介さず基板40と直接接触させても良く、モジュールの設計に応じて適宜変更できる。
【0032】
ところで、ケーブル用モジュール10は、上記のように、ケーブル101に含まれる複数の上記光ファイバ心線を伝送される光信号を基板40で受けて電気信号に変換した後、ケーブル102に含まれる信号線113へと出力するために設けられている。しかしながら、ケーブル101には、信号伝送以外の目的で設けられた配線や、ケーブル用モジュール10では光電変換を行わないチャネルに対応する信号を伝送する光ファイバなどの信号線も含まれている。そして、このような配線や信号線は、ケーブル用モジュール10の筐体の内部を通ってそのままケーブル102に含まれる。本例では、給電線111,112がこれに相当し、基板40に実装された光電変換素子41,42などの電子部品を避けるように、基板40上をケーブル101とケーブル用モジュール10との接続部からケーブル102とケーブル用モジュール10との接続部まで通されている。
【0033】
そして、ケーブル用モジュール10では、基板40上における給電線111,112が通る位置と突出部51との間を隔てるように隔壁61が設けられている。この隔壁61は、図4および図5に示すように、固定部61aと、固定部61aの両端から延出する壁部61bとを含み、金属などの熱伝導性に優れた材料で形成されている。
【0034】
固定部61aは、図2から図5に示すように、光電変換素子41に固定されるとともに上面は突出部51の先端の放熱シート51bと密着している。すなわち、固定部61aは、光電変換素子41と突出部51とに挟持されている。
【0035】
壁部61bは、固定部61aの両端から突出部51と離間する方向(斜め上方)に延出している。すなわち、壁部61bは、突出部51に対して外側に傾斜するように配置されている。そして、突出部51は、図5に示すように、隔壁61を構成する二枚の壁部61bにおける略向かい合う内面の間のスペースに配され、給電線111,112は、それぞれの壁部61bの外面と基板40の上面との間のスペースに配される。したがって、壁部61bは、突出部51の取付方向を含む突出部51の配置スペースと給電線111,112を通すスペースとを隔てている。このように、本例のケーブル用モジュール10では、壁部61bが固定部61aの両端から突出部51と離間する方向に延出しているので、例えば、次のような手順による組立方法で組み立てることにより、突出部51と基板40との間に配線が入り込むのを確実に防ぐことができる。
【0036】
<ケーブル用モジュール10の組立方法>
次に、本例のケーブル用モジュール10の組立方法を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0037】
この組立方法では、まず、下側部品22の突出部52上端の放熱シート52bと固定部62aが接触するように隔壁62を配置する(ステップS100)。次に、下側部品22の上端部両側に設けられた係合凹部に基板40を取り付ける(ステップS110)。そして、下側部品22の内部に給電線111,112を通す(ステップS120)。本例では、下側部品22の内部に取り付けられた基板40上における光電変換素子41の両側に、下側部品22の長手方向に沿って給電線111,112を通す。
【0038】
次に、突出部51の配置スペースに給電線111,112が入り込まないように(突出部51の配置スペースから給電線111,112を押し出すように)隔壁61を図5に示す位置(固定位置)まで移動させて当該固定位置に配置する(ステップS130)。より具体的には、固定部61aを下にした隔壁61を、光電変換素子41の上側から、固定部61aの下面が光電変換素子41の上面と当接するまで下方に移動させる。また、このとき、壁部61bは、突出部51と離間する方向へ(突出部51に対して外側に)傾斜するように配置される。そして、最後に上側部品21を取り付けて上側部品21の突出部51で隔壁61の固定部61aを上から押さえることにより、突出部51を基板40に間接的に接触させる(ステップS140)。以上により、ケーブル用モジュール10が組み立てられる。
【0039】
ケーブル用モジュール10を上記の組立方法で組み立てることで、給電線111,112を通した際に給電線111,112の一部が光電変換素子41寄りの位置で基板40から浮き上がって突出部51の配置スペース内に入り込んでいる場合でも、隔壁61を取り付ける際に、固定部61aから斜め上方(外側)へ延びる壁部61bによって給電線111,112が突出部51の配置スペース外(光電変換素子41の両側)に逃がされる。
【0040】
したがって、組立時に壁部61bの間の突出部51の配置スペースに給電線111,112が入り込むのを確実かつ容易に防ぐことができるので、下側部品22に上側部品21を取り付ける際に特段の注意を払わなくても突出部51と光電変換素子41との間に給電線111,112を挟んでしまう虞がない。ゆえに、ケーブル用モジュール10の組み立てが容易となる。
【0041】
なお、本例のケーブル用モジュール10において、隔壁61における壁部61bの形状や隔壁61の固定位置は上記の例に限られない。例えば、突出部51の側面に対応する形状の壁部61bが突出部51の幅(図5における水平方向の長さ)と略等しい間隔で配置された隔壁61を、壁部61bが突出部51の配置スペースの外縁に沿って延出するように光電変換素子41に固定してもよい。すなわち、本例では、突出部51の幅と略等しい間隔で互いに平行に対向配置された一対の壁部61bと、壁部61bに対して垂直に延びる固定部61aとで構成される略コの字の形状の隔壁61を、壁部61bが突出部51の配置スペースを囲んで配置されるように光電変換素子41に固定してもよい。
【0042】
これにより、突出部51の取り付けの妨げにならない最小限の間隔で壁部61bを配置することができるので、例えば、隔壁61を上記のように取り付けてからケーブル用モジュール10の筐体内における光電変換素子41の両側に給電線111,112を通す手順でケーブル用モジュール10を組み立てる場合に、次のような効果を奏する。すなわち、壁部61bが上記のように最小限の間隔となっていることにより、給電線111,112を取り付ける際に壁部61bの間の突出部51の配置スペースに給電線111,112が入り込むのをより確実に防ぐことができる。したがって、その後の下側部品22に上側部品21を取り付ける作業の際に特段の注意を払わなくても突出部51と光電変換素子41との間に給電線111,112を挟んでしまう虞がない。ゆえに、モジュールの組み立てが容易となる。
【0043】
なお、ケーブル用モジュール10では、基板40の下側にも、固定部62aと固定部62aの両端から斜め下方に延出する壁部62bとを含み、隔壁61と同様に熱伝導性に優れた材料で形成された隔壁62が設けられている。そして、図5に示すように、突出部52は、隔壁62を構成する二枚の壁部62bにおける略向かい合う内面の間のスペースに配されている。したがって、それぞれの壁部62bの外面と基板40の下面との間のスペースにも給電線などの配線を通すことができるとともに、上記と同様に、このスペースへ配線を通す作業を行う際にも当該配線が突出部52の配置スペースに誤って入り込むのを確実かつ容易に防ぐことができる。
【0044】
また、ケーブル用モジュール10では、光電変換素子41,42は、上記のように、いずれも熱伝導性に優れた材料で形成されている隔壁61,62、突出部51,52を介して上側部品21または下側部品22と間接的に接触している。したがって、光電変換素子41,42から発生した熱を上側部品21または下側部品22から外部へ効率よく放熱させることができる。
【0045】
なお、突出部51,52に替えて、あるいは突出部51,52に加えて、基板40の上面および下面と直接当接する突出部を上側部品21および下側部品22の内面に設けてもよい。これにより、基板40で発生した熱や光電変換素子41,42から基板40へと伝わった熱を上側部品21または下側部品22から外部へ効率よく放熱させることができる。
【0046】
<ケーブル用モジュール11の構成>
図7は、本発明の実施形態の他の例に係るケーブル用モジュール11の図5に対応する断面図である。ケーブル用モジュール11の説明において、図1から図6を参照して説明したケーブル用モジュール10と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
ケーブル用モジュール11は、ケーブル用モジュール10において光電変換素子41,42と突出部51,52との間に配されていた隔壁61,62に替えて、隔壁63,64を有する。すなわち、ケーブル用モジュール11では、光電変換素子41,42と突出部51,52とが互いに隔壁を介することなく接触している。
【0048】
隔壁63は、基板40の上面における光電変換素子41および突出部51を挟む一方の側に固定される固定部63aと、固定部63aの一端から斜め上方に延出する壁部63bとを含む。また、隔壁64は、基板40の上面における光電変換素子41および突出部51を挟む他方の側に固定される固定部64aと、固定部64aの一端から斜め上方に延出する壁部64bとを含む。
【0049】
壁部63b,64bは、図7に示すように、固定部63a,64aの突出部51寄りの端部から突出部51に対して離れる方向(斜め上方)に延出している。そして、突出部51は、壁部63bと壁部64bの間のスペースに配される。また、給電線111,112は、壁部63b,64bから見て突出部51と反対側のスペースに通される。
【0050】
<ケーブル用モジュール11の組立方法>
次に、本例のケーブル用モジュール11の組立方法を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0051】
この組立方法では、まず、下側部品22の上端部両側に設けられた係合凹部に基板40を取り付ける(ステップS200)。次に、基板40上の給電線111,112を通すスペースと突出部51の配置スペースとが壁部63b,64bによって隔てられるように隔壁63,64を配置する(ステップS210)。また、このとき、壁部63b,64bは、突出部51と離間する方向へ(突出部51に対して外側に)傾斜するように配置される。
【0052】
次に、下側部品22の内部に給電線111,112を通す(ステップS220)。本例では、下側部品22の内部に取り付けられた基板40上における突出部51の配置スペースと壁部63b,64bを挟んで異なる側(反対側)すなわち壁部63b,64bの外側に、下側部品22の長手方向に沿って給電線111,112を通す。そして、最後に上側部品21を取り付けて上側部品21の突出部51を基板40に直接的に接触させる(ステップS230)。以上により、ケーブル用モジュール11が組み立てられる。
【0053】
ケーブル用モジュール11を上記の組立方法で組み立てることで、給電線111,112を通した際に給電線111,112の一部が基板40から浮き上がった場合でも、浮き上がった給電線111,112が突出部51の配置スペース内に入り込みにくい。また、基板40の上面に隔壁63,64を取り付けた後で給電線111,112を通す作業を行うので、給電線111,112を誤って突出部51の配置スペース内を跨いで通してしまうミスが起こりにくい。
【0054】
したがって、その後の下側部品22に上側部品21を取り付ける作業の際に特段の注意を払わなくても突出部51と光電変換素子41との間に給電線111,112を挟んでしまう虞がなく、モジュールの組み立てが容易となる。
【0055】
なお、本例のケーブル用モジュール11において、隔壁63,64は、ケーブル用モジュール10の隔壁61,62と同様に、熱伝導性に優れた材料で形成されている。したがって、隔壁63,64は、基板40で発生した熱や光電変換素子41,42から基板40へと伝わった熱を放熱する放熱フィンとしても機能する。
【0056】
また、ケーブル用モジュール11では、基板40の上面側にのみ隔壁63,64が設けられているが、これはケーブル用モジュール11では基板40の上面側にのみ給電線111,112が通されているためであり、基板40の下面側に給電線などの配線を通す場合には、基板40の下面側にも隔壁63,64と同様の隔壁が突出部52を挟むように設けられる。
【0057】
<ケーブル用モジュール12の構成>
図9は、本発明の実施形態のさらに他の例に係るケーブル用モジュール12の図5に対応する断面図である。ケーブル用モジュール12の説明において、図1から図8を参照して説明したケーブル用モジュール10,11と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0058】
ケーブル用モジュール12は、下側部品22と一体に設けられた隔壁65を有する。この隔壁65は、固定部65aと、固定部65aの両端から上方へ延出する壁部65bとを含む。
【0059】
固定部65aは、図1から図8を参照して説明したケーブル用モジュール10,11ではボス52aが設けられていた位置に下側部品22と一体に形成されており、ボス52aと同様に、下側部品22の内面から基板40の下面へ向けて突出する。その端面(上面)に配された放熱シート52bを介して基板40の下面に実装された光電変換素子42と当接している。
【0060】
壁部65bは、図9に示すように、固定部65aの両端から基板40に設けられた貫通穴を貫通して反対側まで延出しており、基板40を挟んで反対側に設けられている突出部51の両側面に沿って延出している。すなわち、本例では、基板40を貫通して延びる二枚の壁部65bの間に突出部51の配置スペースが形成され、それぞれの壁部65bの外側に給電線111,112が通される。
【0061】
なお、組立方法のフローチャートは省略するが、ケーブル用モジュール12は、例えば次のように組み立てられる。すなわち、まず、壁部65bが突出部51の配置スペースの両側面(外縁)に沿って延出するように隔壁65の壁部65bを基板40の上記貫通穴に挿し込んで下側部品22に固定する。次に、給電線111,112を突出部51の配置スペースと壁部65bを挟んで異なる側に通す。
【0062】
ケーブル用モジュール12をこのような方法で組み立てることにより、突出部51の両側面と壁部65bとの間の隙間が非常に狭いので、給電線111,112を通す際に給電線111,112が上記の隙間から突出部51の配置スペース内に入り込むのを確実に防ぐことができる。したがって、その後の下側部品22に上側部品21を取り付ける作業の際に特段の注意を払わなくても突出部51と光電変換素子41との間に給電線111,112を挟んでしまう虞がなく、モジュールの組み立てが容易となる。
【0063】
また、隔壁65は、熱伝導性に優れた材料で形成されているので、基板40および光電変換素子42から発生した熱を下側部品22から外部へ効率よく放熱させることができる。また、隔壁65は、下側部品22の別個に設けて下側部品22に取り付けても良いが、本例のように下側部品22と一体に形成することで部品点数を削減することができる。
【0064】
以上において、本発明のケーブル用モジュールおよびその組立方法の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の各例に限定されず、当該実施形態の各例に基づいて当業者が想到できるいずれの形態をも当然に含むものである。
【0065】
例えば、上記実施形態の各例に係るケーブル用モジュール10,11,12は、何れもケーブル101を伝送される光信号を電気信号に変換してケーブル102へと出力する光電変換モジュールであるが、本発明は、電気信号を光信号に変換するケーブル用モジュールにも適用することができる。また、電気信号を光信号に変換するケーブル用モジュールに本発明を適用する場合は、基板40には、上記の光電変換素子41,42に替えて、VCSEL( Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を光源とする電気光変換素子が配される。
【符号の説明】
【0066】
10,11,12・・・ケーブル用モジュール、21・・・上側部品(筐体)、22・・・下側部品(筐体)、23,24・・・端部カバー(筐体)、25,26・・・ケーブル保護部品(筐体)、40・・・基板、41,42・・・光電変換素子(発熱体)、43・・・光ファイバ接続部、51,52・・・突出部、51a,52a・・・ボス、51b,52b・・・放熱シート、61,62,63,64,65・・・隔壁、61a,62a,63a,64a,65a・・・固定部、61b,62b,63b,64b,65b,65c・・・壁部、101,102・・・ケーブル、111,112・・・給電線(配線)、113・・・信号線(配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側部品と下側部品とを含む筐体と、
前記筐体の内部に取り付けられる基板と、
前記筐体の内面から前記基板へ向けて突出し、前記基板と直接的または間接的に接触する突出部と、
前記筐体の内部を通る配線と前記突出部とを隔てる隔壁と、
を備えることを特徴とするケーブル用モジュール。
【請求項2】
前記隔壁は、
前記筐体または前記基板の少なくともいずれかに固定される固定部と、
前記配線と前記突出部とを隔てる壁部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のケーブル用モジュール。
【請求項3】
前記壁部は、前記固定部から、前記突出部と離間する方向へ傾斜して延出していることを特徴とする請求項2に記載のケーブル用モジュール。
【請求項4】
前記固定部は、前記基板と前記突出部とに挟持されていることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル用モジュール。
【請求項5】
前記固定部は、前記基板上に配される発熱体と前記突出部との間に挟持されていることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル用モジュール。
【請求項6】
前記固定部は、前記筐体に固定され、
前記壁部は、前記基板を貫通して設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル用モジュール。
【請求項7】
上側部品と下側部品とを含む筐体と、
前記筐体の内部に取り付けられる基板と、
前記筐体の内面から前記基板へ向けて突出し、前記基板と直接的または間接的に接触する突出部と、
前記筐体の内部を通る配線と前記突出部とを隔てる隔壁と、
を備えるケーブル用モジュールの組立方法であって、
前記上側部品または前記下側部品の一方に前記基板を取り付けて前記配線を通し、
前記隔壁を、前記配線を前記突出部の配置位置から逃がすように固定位置まで移動させて固定し、
前記上側部品または前記下側部品の他方を前記上側部品または前記下側部品の一方に取り付け、前記突出部を前記基板と直接的または間接的に接触させることを特徴とするケーブル用モジュールの組立方法。
【請求項8】
前記隔壁は、前記筐体または前記基板の少なくともいずれかに固定される固定部と、前記配線と前記突出部とを隔てる壁部を含み、
前記配線を前記突出部の配置位置から逃がすように前記隔壁を固定位置まで移動させて固定する工程において、前記壁部が前記固定部から前記突出部と離間する方向へ傾斜して配置されるように前記隔壁を固定することを特徴とする請求項7に記載のケーブル用モジュールの組立方法。
【請求項9】
上側部品と下側部品とを含む筐体と、
前記筐体の内部に取り付けられる基板と、
前記筐体の内面から前記基板へ向けて突出し、前記基板と直接的または間接的に接触する突出部と、
前記筐体の内部を通る配線と前記突出部とを隔てる隔壁と、を備えるケーブル用モジュールの組立方法であって、
前記上側部品または前記下側部品の一方に前記基板を取り付け、前記筐体の内部における配線を通す位置と前記突出部の配置位置との間に隔壁を配置した後、前記配線を前記突出部の配置位置と前記壁部を挟んで異なる側に通し、
前記上側部品または前記下側部品の他方を前記上側部品または前記下側部品の一方に取り付け、前記突出部を前記基板と直接的または間接的に接触することを特徴とするケーブル用モジュールの組立方法。
【請求項10】
前記隔壁は、前記筐体または前記基板の少なくともいずれかに固定される固定部と、前記配線と前記突出部とを隔てる壁部を含み、
前記壁部が前記突出部の配置位置の外縁に沿って延出するように前記隔壁を配置した後、前記配線を前記突出部の配置位置と前記壁部を挟んで異なる側に通すことを特徴とする請求項9に記載のケーブル用モジュールの組立方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97348(P2013−97348A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243014(P2011−243014)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】