説明

ゲノム型を判定するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびマイクロアレイ

【課題】被検者に感染したJCウイルス(JCV)のゲノム型を迅速・簡便に判定し、被検者の出身地を推定するための手段を提供する。
【解決手段】JCVのゲノムの特定部位の塩基配列を持ち、その変異部位に対応して一部配列が異なるオリゴヌクレオチドのセット12種類からなる、JCVのゲノム型を判定するためのオリゴヌクレオチドプローブのセット、およびそれらを固定したマイクロアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびマイクロアレイ、ならびにこれらを用いた被検者に感染したJCウイルスのゲノム型の判定方法および被検者の出身地の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界各地で行われた血清学的な調査によって、パポーバウイルスの一種であるJCウイルス(JCV)がヒト集団に蔓延していること、大部分のヒトは子供の時にJCVに無症候性感染することが明らかにされた。体内に入ったJCVは免疫反応によって完全に排除されず、一部のウイルスは腎組織、末梢血リンパ球、リンパ組織に行き、そこに生涯、持続感染する。成人においては、腎組織内のJCVは活発に増殖し、増えたウイルスは尿に排泄される。尿に排泄されたJCVは未だ感染していない子供に侵入し、新たな感染を惹起すると考えられる。ヒトが誕生した太古から、JCVはこのような感染サイクルを繰り返して、ヒトと共に生きてきたウイルスである。
【0003】
JCVの起源を解明する目的で、世界各地の人種からクローニングされたJCV ゲノムDNAの解析が実施され、その過程でJCVのゲノム型が人種と関係があることが明かとなった。それ以来世界各地で収集された尿からJCV ゲノムDNAのIG領域(610塩基対)の塩基配列が決定され、得られた塩基配列から近隣結合法(Neighbor-Joining法、NJ法)により分子系統樹が作成された。その系統樹から世界中のJCVは12のタイプ(ゲノム型)に分けられることが明らかとなった。各ゲノム型はそれぞれ特有の分布域を持ち、例えば、EUというゲノム型はヨーロッパ全土と地中海沿岸域に分布した。また、Af2というゲノム型はアフリカ全土と西アジア(インドを含む)に分布した。これらの知見からJCVゲノム型がヒト集団と密接な関係があることが示され、JCVゲノム型はヒト集団の新規な指標として注目されるに至った。そして、身元不明死体の出身地域の推定法としてヒトの尿や腎臓から検出されるJCVのゲノム型を用いることが報告されている。
【0004】
これまでJCVゲノム型を正確に判定するためには、その塩基配列を明らかにし分子系統解析する方法が採用されていた(例えば、非特許文献1)。しかし、このような従来の方法は、解析に専門的な技術が必要であるとともに時間がかかるという問題があった。また、試料が非常に少ない場合などには対応できない場合もあった。
【非特許文献1】JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY、 June 1995、 p. 1448-1451
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を迅速・簡便に判定し、被検者の出身地を推定するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、JCウイルスのゲノムDNAの塩基配列から、JCウイルスのゲノム型を判定するために有用なオリゴヌクレオチドプローブのセットを設計することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)オリゴヌクレオチドプローブ(a-1)および(a-2);オリゴヌクレオチドプローブ(b-1)および(b-2);オリゴヌクレオチドプローブ(c-1)および(c-2);オリゴヌクレオチドプローブ(d-1)、(d-2)、(d-3)および(d-4);オリゴヌクレオチドプローブ(e-1)、(e-2)および(e-3);オリゴヌクレオチドプローブ(f-1)、(f-2)および(f-3);オリゴヌクレオチドプローブ(g-1)、(g-2)および(g-3);オリゴヌクレオチドプローブ(h-1)、(h-2)、(h-3)および(h-4);オリゴヌクレオチドプローブ(i-1)および(i-2);オリゴヌクレオチドプローブ(j-1)、(j-2)および(j-3);オリゴヌクレオチドプローブ(k-1)、(k-2)および(k-3);オリゴヌクレオチドプローブ(l-1)および(l-2)を含む、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定するためのオリゴヌクレオチドプローブのセット。
(2)(1)記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットが担体上に固定化されてなる、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定するためのマイクロアレイ。
(3)(1)記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットが担体上に固定化されてなる、被検者の出身地を推定するためのマイクロアレイ。
(4)担体が、表面にカーボン層と化学修飾基とを有するものである、(2)または(3)記載のマイクロアレイ。
(5)被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定する方法であって、
被検者由来の試料からDNAを抽出する工程と、
抽出したDNAを鋳型とし、JCウイルスゲノムのIG領域をコードする核酸を増幅する工程と、
(1)記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットまたは(2)〜(4)のいずれかに記載のマイクロアレイを用いて増幅された核酸を検出する工程と
を含む、前記方法。
(6)(5)記載の方法によって判定されたJCウイルスのゲノム型に基づいて被検者の出身地を推定する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を、少量の試料を用いて、迅速・簡便に判定することが可能になる。また、本発明により、高度な専門的知識を持たない人でもJCウイルスのゲノム型を判定できる手段が提供される。さらに、JCウイルスのゲノム型に基づいて、被検者の出身地を推定することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
JCウイルスは、ポリオーマウイルス科に属するウイルスのうちヒトを宿主とするウイルスである。JCウイルスのゲノムは約5100塩基対の長さの環状、2本鎖DNAである。本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、被検者に感染したJCウイルスのゲノムのIG領域を検出するものである。IG領域は、JCウイルスのゲノムのうち変異が多い、610塩基対の領域であり(J Gen Virol, 73:2669-2678, 1992)、12のタイプのゲノム型として分類できる領域として報告されている(Proc Natl Acad Sci USA, 94: 9191-9196, 1997; J Gen Virol, 79:2499-2505, 1998)。IG領域におけるゲノム型は、EU-a型、EU-b型、Af1型、Af2型、SC型、CY型、MY型、B1-a型、B1-b型、B1-c型、B1-d型、B2型に分類される。
【0010】
本発明において、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定することには、被検試料の起源となる被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定することが含まれ、被検者の出身地を推定することには、被検試料の起源となる被検者の出身地を推定することが含まれる。
【0011】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブ群(a)〜(l)を少なくとも含む。
【0012】
オリゴヌクレオチドプローブ群(a)はオリゴヌクレオチドプローブ(a-1)および(a-2)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(b)はオリゴヌクレオチドプローブ(b-1)および(b-2)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(c)はオリゴヌクレオチドプローブ(c-1)および(c-2)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(d)はオリゴヌクレオチドプローブ(d-1)、(d-2)、(d-3)および(d-4)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(e)はオリゴヌクレオチドプローブ(e-1)、(e-2)および(e-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(f)はオリゴヌクレオチドプローブ(f-1)、(f-2)および(f-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(g)はオリゴヌクレオチドプローブ(g-1)、(g-2)および(g-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(h)はオリゴヌクレオチドプローブ(h-1)、(h-2)、(h-3)および(h-4)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(i)はオリゴヌクレオチドプローブ(i-1)および(i-2)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(j)はオリゴヌクレオチドプローブ(j-1)、(j-2)および(j-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(k)はオリゴヌクレオチドプローブ(k-1)、(k-2)および(k-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(l)はオリゴヌクレオチドプローブ(l-1)および(l-2)からなる。
【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットはさらに、オリゴヌクレオチドプローブ群(m)〜(s)を含んでもよい。
【0014】
オリゴヌクレオチドプローブ群(m)はオリゴヌクレオチドプローブ(m-1)、(m-2)および(m-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(n)はオリゴヌクレオチドプローブ(n-1)、(n-2)および(n-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(o)はオリゴヌクレオチドプローブ(o-1)、(o-2)および(o-3)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(p)はオリゴヌクレオチドプローブ(p-1)、(p-2)、(p-3)および(p-4)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(q)はオリゴヌクレオチドプローブ(q-1)および(q-2)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(r)はオリゴヌクレオチドプローブ(r-1)、(r-2)、(r-3)および(r-4)からなり;オリゴヌクレオチドプローブ群(s)はオリゴヌクレオチドプローブ(s-1)および(s-2)からなる。
【0015】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットにおいては、オリゴヌクレオチドプローブ群(a)などの各オリゴヌクレオチドプローブ群として、1種類のオリゴヌクレオチドプローブ群が含まれていてもよいし、条件を満たす限り複数種のオリゴヌクレオチドプローブ群が含まれていてもよい。同様に、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットにおいて、各オリゴヌクレオチドプローブ群には、オリゴヌクレオチドプローブ(a-1)などの各オリゴヌクレオチドプローブとして、1種類のオリゴヌクレオチドプローブが含まれていてもよいし、条件を満たす限り複数種のオリゴヌクレオチドプローブが含まれていてもよい。
【0016】
以下、各オリゴヌクレオチドプローブ群に含まれる各オリゴヌクレオチドプローブについて説明する。
【0017】
オリゴヌクレオチドプローブ群(a):
オリゴヌクレオチドプローブ(a-1)は、配列番号2、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または16の100〜119番目の塩基(好ましくは配列番号23の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号23の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(a-2)は、配列番号3の100〜119番目の塩基(好ましくは配列番号24の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号24の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0018】
オリゴヌクレオチドプローブ群(b):
オリゴヌクレオチドプローブ(b-1)は、配列番号11、12、14または15の222〜241番目の塩基(好ましくは配列番号32の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号32の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(b-2)は、配列番号16の222〜241番目の塩基(好ましくは配列番号33の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号33の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0019】
オリゴヌクレオチドプローブ群(c):
オリゴヌクレオチドプローブ(c-1)は、配列番号1、3、4、6、9、12、13、14または15の261〜280番目の塩基(好ましくは配列番号40の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号40の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(c-2)は、配列番号11の261〜280番目の塩基(好ましくは配列番号41の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号41の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0020】
オリゴヌクレオチドプローブ群(d):
オリゴヌクレオチドプローブ(d-1)は、配列番号1、3、6、12、13または14の276〜295番目の塩基(好ましくは配列番号42の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号42の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(d-2)は、配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基(好ましくは配列番号43の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号43の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(d-3)は、配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基において292番目のTがCと置換された塩基(好ましくは配列番号44の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号44の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(d-4)は、配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基において283番目のTがCと置換された塩基(好ましくは配列番号45の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号45の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0021】
オリゴヌクレオチドプローブ群(e):
オリゴヌクレオチドプローブ(e-1)は、配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基(好ましくは配列番号46の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号46の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(e-2)は、配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基において298番目と299番目のGがAと置換された塩基(好ましくは配列番号47の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号47の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(e-3)は、配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基において299番目のGがAと置換された塩基(好ましくは配列番号48の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号48の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0022】
オリゴヌクレオチドプローブ群(f):
オリゴヌクレオチドプローブ(f-1)は、配列番号3、4、5、8、9、10、11、12、13、15または16の318〜337番目の塩基(好ましくは配列番号49の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号49の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(f-2)は、配列番号1の318〜337番目の塩基(好ましくは配列番号50の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号50の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(f-3)は、配列番号2の318〜337番目の塩基(好ましくは配列番号51の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号51の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0023】
オリゴヌクレオチドプローブ群(g):
オリゴヌクレオチドプローブ(g-1)は、配列番号12、13または14の381〜400番目の塩基(好ましくは配列番号54の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号54の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(g-2)は、配列番号4、5、9または10の381〜400番目の塩基(好ましくは配列番号55の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号55の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(g-3)は、配列番号15の381〜400番目の塩基(配列番号56の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号56の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0024】
オリゴヌクレオチドプローブ群(h):
オリゴヌクレオチドプローブ(h-1)は、配列番号5、9、11または12の397〜416番目の塩基(好ましくは配列番号57)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号57の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(h-2)は、配列番号14の397〜416番目の塩基(好ましくは配列番号58の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号58の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(h-3)は、配列番号13の397〜416番目の塩基(好ましくは配列番号59の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号59の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(h-4)は、配列番号16の397〜416番目の塩基(好ましくは配列番号60の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号60の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0025】
オリゴヌクレオチドプローブ群(i):
オリゴヌクレオチドプローブ(i-1)は、配列番号5、11、13、15または16の438〜457番目の塩基(好ましくは配列番号61の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号61の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(i-2)は、配列番号12の438〜457番目の塩基(好ましくは配列番号62の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号62の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0026】
オリゴヌクレオチドプローブ群(j):
オリゴヌクレオチドプローブ(j-1)は、配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基(好ましくは配列番号63の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号63の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(j-2)は、配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基において456番目のTがGと置換され462番目のTがAと置換された塩基(好ましくは配列番号64の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号64の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(j-3)は、配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基において446番目のAがTと置換され456番目のTがGと置換され462番目のTがAと置換された塩基(好ましくは配列番号65の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号65の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0027】
オリゴヌクレオチドプローブ群(k):
オリゴヌクレオチドプローブ(k-1)は、配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基(好ましくは配列番号66の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号66の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(k-2)は、配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基において457番目のTがCと置換され462番目のTがGと置換された塩基(好ましくは配列番号67の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号67の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(k-3)は、配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基において462番目のTがGと置換された塩基(好ましくは配列番号68の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0028】
オリゴヌクレオチドプローブ群(l):
オリゴヌクレオチドプローブ(l-1)は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の503〜522番目の塩基(好ましくは配列番号69の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号69の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(l-2)は、配列番号11の503〜522番目の塩基(好ましくは配列番号70の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号70の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0029】
オリゴヌクレオチドプローブ群(m):
オリゴヌクレオチドプローブ(m-1)は、配列番号2、3、5、6、9、10、11、13、14または15の38-57番目の塩基(好ましくは配列番号17の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(m-2)は、配列番号12の38-57番目の塩基(好ましくは配列番号18の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号18の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(m-3)は、配列番号12の38-57番目の塩基において52番目のTがCと置換された塩基(好ましくは配列番号19の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号19の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0030】
オリゴヌクレオチドプローブ群(n):
オリゴヌクレオチドプローブ(n-1)は、配列番号3、6、9、11、12、13または16の57-76番目の塩基(好ましくは配列番号20の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号20の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(n-2)は、配列番号15の57-76番目の塩基(好ましくは配列番号21の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号21の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(n-3)は、配列番号4または5の57-76番目の塩基(好ましくは配列番号22の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号22の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0031】
オリゴヌクレオチドプローブ群(o):
オリゴヌクレオチドプローブ(o-1)は、配列番号4、6、12、13または14の182-201番目の塩基(好ましくは配列番号25の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号25の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(o-2)は、配列番号15の182-201番目の塩基(好ましくは配列番号26の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号26の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(o-3)は、配列番号5または10の182-201番目の塩基(好ましくは配列番号27の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号27の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0032】
オリゴヌクレオチドプローブ群(p):
オリゴヌクレオチドプローブ(p-1)は、配列番号5、6、10、13、14または15の192-211番目の塩基(好ましくは配列番号28の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号28の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(p-2)は、配列番号12の192-211番目の塩基(好ましくは配列番号29の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号29の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(p-3)は、配列番号12の192-211番目の塩基において102番目のGがCと置換され105番目のAがGと置換された塩基(好ましくは配列番号30の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号30の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(p-4)は、配列番号12の192-211番目の塩基において102番目のGがTと置換され105番目のAがGと置換された塩基(好ましくは配列番号31の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号31の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0033】
オリゴヌクレオチドプローブ群(q):
オリゴヌクレオチドプローブ(q-1)は、配列番号6、11、12、13、14または15の230-249番目の塩基(好ましくは配列番号34の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号34の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(q-2)は、配列番号4、5または9の230-249番目の塩基(好ましくは配列番号35の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号35の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0034】
オリゴヌクレオチドプローブ群(r):
オリゴヌクレオチドプローブ(r-1)は、配列番号2、4、5、6、9、10、11、12、13または14の248-267番目の塩基(好ましくは配列番号36の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号36の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(r-2)は、配列番号15の248-267番目の塩基(好ましくは配列番号37の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号37の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(r-3)は、配列番号2、4、5、6、9、10、11、12、13または14の248-267番目の塩基において256番目のCがTと置換され265番目のTがAと置換された塩基(好ましくは配列番号38の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号38の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(r-4)は、配列番号2、4、5、6、9、10、11、12、13または14の248-267番目の塩基において256番目のCがTと置換された塩基(好ましくは配列番号39の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号39の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0035】
オリゴヌクレオチドプローブ群(s):
オリゴヌクレオチドプローブ(s-1)は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の342-361番目の塩基(好ましくは配列番号52の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号52の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブ(s-2)は、配列番号2または4の342-361番目の塩基(好ましくは配列番号53の塩基配列)を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは配列番号53の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0036】
上記記載において、配列番号XのY〜Z番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブとは、換言すれば、配列番号Xで表される塩基配列における連続した10〜30塩基の部分配列であって、該配列番号のY〜Z番目の塩基を含むオリゴヌクレオチドプローブをさす。
【0037】
また、上記記載において、配列番号XのY〜Z番目の塩基においてn番目のv(塩基)がw(塩基)と置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブとは、換言すれば、配列番号Xのn番目のvがwと置換された塩基配列における連続した10〜30塩基の部分配列であって、該配列番号におけるY〜Z番目の塩基を含むオリゴヌクレオチドプローブをさす。
【0038】
上記本発明のオリゴヌクレオチドプローブの長さは、通常10〜30塩基であり、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは17〜23塩基である。
【0039】
オリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは核酸であり、より好ましくはDNAである。DNAには二本鎖も一本鎖も含まれるが、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは好ましくは一本鎖DNAである。
【0040】
配列番号1はEU型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号2はAf2型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号3はCY型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号4はMY-a型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号5はMY-c型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号6はB1-c型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号7はSC型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号8はMY-e型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号9はMY-d型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号10はMY-b型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号11はB2型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号12はB1-d型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号13はB1-b型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号14はB1-a型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号15はAf3型のIG領域の塩基配列を表し、配列番号16はAf1型のIG領域の塩基配列を表す。なお、IG領域の各ゲノム型の塩基配列は、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)の遺伝子データベースGenBankから取得できる。
【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、核酸合成装置によって化学的に合成することで取得することができる。核酸合成装置としては、DNAシンセサイザー、全自動核酸合成装置、核酸自動合成装置等と呼ばれる装置を使用することができる。
【0042】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、担体上に固定化することにより、マイクロアレイの形態で用いるのが好ましい。担体の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されない。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステンおよびそれらの化合物などの貴金属、およびグラファイト、カ−ボンファイバ−に代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイドおよびポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。担体の形状も特に制限されないが、好ましくは平板状である。
【0043】
本発明においては、担体として、好ましくは表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体を用いる。表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体には、基板の表面にカーボン層と化学修飾基とを有するもの、およびカーボン層からなる基板の表面に化学修飾基を有するものが包含される。基板の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されず、上述の担体材料として挙げたものと同様のものを使用できる。
【0044】
本発明のマイクロアレイにおいては、微細な平板状の構造を有する担体が好適に用いられる。形状は、長方形、正方形および丸形など限定されないが、通常、1〜75mm四方のもの、好ましくは1〜10mm四方のもの、より好ましくは3〜5mm四方のものを用いる。微細な平板状の構造の担体を製造しやすいことから、シリコン材料や樹脂材料からなる基板を用いるのが好ましく、特に単結晶シリコンからなる基板の表面にカーボン層および化学修飾基を有する担体がより好ましい。単結晶シリコンには、部分部分でごくわずかに結晶軸の向きが変わっているものや(モザイク結晶と称される場合もある)、原子的尺度での乱れ(格子欠陥)が含まれているものも包含される。
【0045】
本発明において基板上に形成させるカーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の化学修飾基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、分析対象物質と静電結合によって結合するためその結合が柔軟性を持っている点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点、およびエレクトロブロッティングの際に通電可能な点において有利である。また、分析対象物質との結合反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。前記のとおり基板自体がカーボン層からなる担体を用いてもよい。
【0046】
本発明においてカーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザ蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
【0047】
高周波プラズマCVD法では、高周波によって電極間に生じるグロー放電により原料ガス(メタン)を分解し、基板上にカーボン層を合成する。イオン化蒸着法では、タングステンフィラメントで生成される熱電子を利用して、原料ガス(ベンゼン)を分解・イオン化し、バイアス電圧によって基板上にカーボン層を形成する。水素ガス1〜99体積%と残りメタンガス99〜1体積%からなる混合ガス中で、イオン化蒸着法によりカーボン層を形成してもよい。
【0048】
アーク式蒸着法では、固体のグラファイト材料(陰極蒸発源)と真空容器(陽極)の間に直流電圧を印加することにより真空中でアーク放電を起こして陰極から炭素原子のプラズマを発生させ蒸発源よりもさらに負のバイアス電圧を基板に印加することにより基板に向かってプラズマ中の炭素イオンを加速しカーボン層を形成することができる。
【0049】
レーザ蒸着法では、例えばNd:YAGレーザ(パルス発振)光をグラファイトのターゲット板に照射して溶融させ、ガラス基板上に炭素原子を堆積させることによりカーボン層を形成することができる。
【0050】
基板の表面にカーボン層を形成する場合、カーボン層の厚さは、通常、単分子層〜100μm程度であり、薄すぎると下地基板の表面が局部的に露出する可能性があり、逆に厚くなると生産性が悪くなるので、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0051】
カーボン層が形成された基板の表面に化学修飾基を導入することにより、オリゴヌクレオチドプローブを担体に強固に固定化できる。導入する化学修飾基は、当業者であれば適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ホルミル基、ヒドロキシル基および活性エステル基が挙げられる。
【0052】
アミノ基の導入は、例えば、カーボン層をアンモニアガス中で紫外線照射することによりまたはプラズマ処理することにより実施できる。または、カーボン層を塩素ガス中で紫外線を照射して塩素化し、さらにアンモニアガス中で紫外線照射することにより実施できる。または、メチレンジアミン、エチレンジアミンで等の多価アミン類ガス中を、塩素化したカーボン層と反応させることによって実施することもできる。
【0053】
カルボキシル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な化合物を反応させることにより実施できる。カルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-R1-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R1は炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、3-クロロアクリル酸、4-クロロ安息香酸;式:HOOC-R2-COOH(式中、R2は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R3-CO-R4-COOH(式中、R3は水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R4は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X-OC-R5-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R5は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
【0054】
エポキシ基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な多価エポキシ化合物を反応させることによって実施できる。あるいは、カーボン層が含有する炭素=炭素2重結合に有機過酸を反応させることにより得ることができる。有機過酸としては、過酢酸、過安息香酸、ジペルオキシフタル酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
【0055】
ホルミル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に、グルタルアルデヒドを反応させることにより実施できる。
【0056】
ヒドロキシル基の導入は、例えば、前記のように塩素化したカーボン層に、水を反応させることにより実施できる。
【0057】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基としては、たとえばp-ニトロフェニル基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N-ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
【0058】
活性エステル基の導入は、例えば、前記のように導入したカルボキシル基を、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001-139532)。
【0059】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを、スポッティング用バッファーに溶解してスポッティング用溶液を調製し、これを96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポッター装置等によって担体上にスポッティングすることにより、オリゴヌクレオチドプローブが担体に固定化されたマイクロアレイを製造することができる。または、スポッティング溶液をマイクロピペッターにて手動でスポッティングしてもよい。
【0060】
スポッティング後、オリゴヌクレオチドプローブが担体に結合する反応を進行させるため、インキュベーションを行うことが好ましい。インキュベーションは、通常−20〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、通常0.5〜16時間、好ましくは1〜2時間にわたって行う。インキュベーションは、高湿度の雰囲気下、例えば、湿度50〜90%の条件で行うのが望ましい。インキュベーションに続き、担体に結合していないDNAを除去するため、洗浄液(例えば、50mM TBS/0.05% Tween20、2×SSC/0.2%SDS溶液、超純水など)を用いて洗浄を行うことが好ましい。
【0061】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、同一の担体に固定化されていてもよいし、異なる担体に固定化されていてもよいが、少なくとも同じオリゴヌクレオチドプローブ群に含まれるオリゴヌクレオチドプローブは、同一の担体に固定化されていることが好ましい。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、それぞれの条件を満たす限り、複数種のものが担体上に固定化されていてもよい。
【0062】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドプローブのセットまたはマイクロアレイを用いて被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定する方法に関する。本発明の判定方法は、被検者由来の試料からDNAを抽出する工程と、抽出したDNAを鋳型とし、JCウイルスゲノムのIG領域をコードする核酸を増幅する工程と、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットまたはマイクロアレイを用いて、増幅された核酸を検出する工程とを含む。
【0063】
被検者は通常ヒトであり、被検者由来の試料は、JCウイルスが含まれうる試料であれば特に制限されない。例えば、血液関連試料(血液、血清および血漿など)、リンパ液、汗、涙、唾液、尿、糞便、腹水および髄液等の体液、ならびに細胞、組織または臓器(例えば、心臓、膵臓、肝臓、卵巣、肺、脳、骨髄、リンパ節および腎臓など)の破砕物および抽出液などが挙げられる。好ましくは、尿および血液関連試料が用いられる。被検者由来の試料は、人体から直接採取したものでなくてもよく、例えば、尿斑や血痕から採取した試料でもよい。
【0064】
まず、被検者から採取した試料からDNAを抽出する。抽出手段としては、特に限定されない。例えばフェノール/クロロホルム、エタノール、水酸化ナトリウム、CTABなどを用いたDNA抽出法を用いることができる。
【0065】
次に、得られたDNAを鋳型として用いて増幅反応を行い、JCウイルスのIG領域をコードする核酸、好ましくはDNAを増幅させる。増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法等を適用することができる。増幅反応においては、増幅後の領域を識別できるように標識を付加することが望ましい。このとき、増幅された核酸を標識する方法としては、特に限定されないが、例えば増幅反応に使用するプライマーをあらかじめ標識しておく方法を使用してもよいし、増幅反応に標識ヌクレオチドを基質として使用する方法を使用してもよい。標識物質としては、特に限定されないが、放射性同位元素や蛍光色素、あるいはジゴキシゲニン(DIG)やビオチンなどの有機化合物などを使用することができる。
【0066】
またこの反応系は、核酸増幅・標識に必要な緩衝剤、耐熱性DNAポリメラーゼ、JCウイルスのIG領域に特異的なプライマー、標識ヌクレオチド三リン酸(具体的には蛍光標識等を付加したヌクレオチド三リン酸)、ヌクレオチド三リン酸および塩化マグネシウム等を含む反応系である。
【0067】
増幅反応に用いるプライマーは、JCウイルスのIG領域を特異的に増幅できるものであれば特に制限されず、当業者であれば適宜設計できる。例えば、
プライマー1:5'-CACAAGCTTTTTTGGACACTAACAGGAGG-3'(配列番号71)および
プライマー2:5'-GATTCTGCAGAAGACTCTGGACATGG-3'(配列番号72)
からなるプライマーのセットが挙げられる。
【0068】
上記のようにして得られた増幅核酸と本発明のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション反応を行い、各オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズした核酸の量を、例えば標識を検出することにより測定できる。標識からのシグナルは、例えば、蛍光標識を用いた場合は、蛍光スキャナを用いて蛍光シグナル検出し、これを画像解析ソフトによって解析することによりシグナル強度を数値化することができる。また、オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズした増幅核酸は、例えば、既知量のDNAを含む試料を用いて検量線を作成することにより、定量することもできる。ハイブリダイゼーション反応は、好ましくはストリンジェントな条件下で実施する。ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、50℃で16時間ハイブリダイズ反応させた後、2×SSC/0.2% SDS、25℃、10分および2×SSC、25℃、5分の条件で洗浄する条件をさす。
【0069】
上記ハイブリダイゼーション反応においては、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットが担体上に固定化されたマイクロアレイを用い、該マイクロアレイに増幅核酸を適用することが好ましい。
【0070】
本発明のJCウイルスのゲノム型の判定方法は、各オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズした上記増幅核酸の量を、各オリゴヌクレオチドプローブ群内で比較することにより実施する。具体的には、オリゴヌクレオチドプローブ群内で、各オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズした増幅核酸の量(例えば標識由来のシグナル強度に対応する)の順位づけを行う。各オリゴヌクレオチドプローブ群におけるその順位が、特定のゲノム型に特徴的なものである場合とそうでない場合があるので、被検者由来の試料について、どのゲノム型に特徴的なシグナルを有するかを判定することにより、その被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定することができる。
【0071】
現在明らかとなっているJCウイルスのゲノム型について、IG領域を増幅し、増幅核酸を本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットにハイブリダイズさせた場合、各オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズする増幅核酸の量は、プローブ群ごとに以下のような特徴を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
例えば、オリゴヌクレオチドプローブ群(f)について見たときに、オリゴヌクレオチドプローブ(f-2)にハイブリダイズした増幅核酸の量が、オリゴヌクレオチドプローブ(f-1)および(f-3)にハイブリダイズした増幅核酸の量より多かった場合は、その被検者に感染したJCウイルスはEU型であると判定できる。
【0074】
また、オリゴヌクレオチドプローブ群(b)について見たときに、オリゴヌクレオチドプローブ(b-2)にハイブリダイズした増幅核酸の量がオリゴヌクレオチドプローブ(b-1)にハイブリダイズした増幅核酸の量より多かった場合は、その被検者に感染したJCウイルスはAf1型であると判定できる。
【0075】
また、オリゴヌクレオチドプローブ群(h)について見たときに、オリゴヌクレオチドプローブ(h-2)にハイブリダイズした増幅核酸の量がオリゴヌクレオチドプローブ(h-1)、(h-3)および(h-4)にハイブリダイズした増幅核酸の量より多く、かつオリゴヌクレオチドプローブ(j-2)にハイブリダイズした増幅核酸の量>オリゴヌクレオチドプローブ(j-3)にハイブリダイズした増幅核酸の量>オリゴヌクレオチドプローブ(j-1)にハイブリダイズした増幅核酸の量であった場合は、その被検者に感染したJCウイルスはB1-a型であると判定できる。
【0076】
JCウイルスは、ヒト集団に蔓延しており、世界中において各ゲノム型がそれぞれ特有の分布域を持つことから、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定することにより、被検者の出身地を推定することができる。従って、本発明はまた、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットまたはマイクロアレイを用いる上記方法によって判定されたJCウイルスのゲノム型に基づいて被検者の出身地を推定する方法に関する。
【0077】
各ゲノム型の分布域については、Proc Natl Acad Sci USA, 94: 9191-9196, 1997; J Gen Virol, 79:2499-2505, 1998または総説のJC virus genotyping offers a new paradigm in the study of human populations. Rev Med Virol; 14(3):179-91 2004に詳細に記載されている。12の主なゲノム型の具体的な分布は、EU型は、ヨーロッパに分布しており、Af1型は、西アフリカに分布しており、Af2型は、アフリカと西アジアに分布しており、Af3型は、中央アフリカに分布しており、SC型は、中国南部〜東南アジアに分布しており、CY型は、中国東北部、朝鮮半島、日本に分布しており、MY型は、韓国、日本、アメリカに分布しており、B1-a型は、中国、フィリピンに分布しており、B1-b型は、中央アジアと西アジア周辺に分布しており、B1-c型は、南ヨーロッパに分布しており、B1-d型は、中東〜ギリシア周辺に分布しており、B2型はインドとその周辺に分布している(J Mol Evol 54:285-297, 2002中の表に記載)。
【0078】
東アジア地域においては、EU型は、シベリアに分布しており、SC型は、南中国〜東南アジアに分布しており、CY型は、西日本、中国東北部および韓国に分布しており、MY型は、東北日本に分布しており、B1-a型は、フィリピンに分布しており、B1-b型は、中国西部に分布している。
【実施例】
【0079】
実施例1 担体の作製
3mm角のシリコン基板にイオン化蒸着法を用いて、下記の条件で2層のDLC層の製膜を行った。
【0080】
【表2】

【0081】
得られた表面にDLC層を有するシリコン基板上に、下記の条件でアンモニアプラズマを用いて、アミノ基を導入した。
【0082】
【表3】

【0083】
140mM 無水コハク酸及び0.1M ホウ酸ナトリウムを含む1-メチル-2-ピロリドン溶液に30分間浸漬し、カルボキシル基を導入した。0.1M リン酸カリウムバッファー、0.1M 1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、20mM N-ヒドロキシスクシイミドを含む溶液に30分間浸漬し、活性化を行い、シリコン基板表面にDLC層及び化学修飾基としてのN-ヒドロキシスクシイミド基を有する担体を得た。
【0084】
実施例2 マイクロアレイの作製
JCウイルスの16種類のゲノム型の塩基配列(配列番号1〜16)に基づき、20塩基の塩基配列からなり5'末端をアミノ基で修飾した54種のオリゴヌクレオチドプローブを合成した。各オリゴヌクレオチドプローブ(以下プローブと記載する)の配列を図1に示す。図1に記載したプローブについて、対応する本発明のオリゴヌクレオチドプローブ群および各オリゴヌクレオチドプローブをかっこ内に記載した。
【0085】
図1に示した54種のプローブを10pmol/μlとなるようにスポットソリューション(Sol.6)に溶解し、SPBIO(日立ソフト社製)を用いて実施例1で作製した担体上にスポットした。80℃で1時間ベーキング後、2×SSC/0.2%SDS溶液(室温)で15分間洗浄し、さらに2×SSC/0.2%SDS溶液(95℃)で5分間洗浄した。超純水で3回リンスし、遠心機で水分を飛ばし乾燥させることにより54種のプローブが担体上に固定化されたマイクロアレイを得た。
【0086】
実施例3 JCウイルスのゲノム型に特徴的なシグナルの解析
その被検者が有するJCウイルスのゲノム型(EU、Af1、Af2、SC、CY、MY、B1-a、B1-b、B1-c、B1-d、B2)がすでに特定されている被検者由来の試料(尿から抽出したDNAを鋳型としてIG領域をPCRで増幅し、プラスミドベクターにクローニングしたものを用いた)について、実施例2で作製したマイクロアレイを用いて検出を行った。
【0087】
試料から、QiaAmp DNA(QIAGEN社製)を用いてDNAの抽出を行った。このDNAを鋳型DNAとして以下の組成でPCR反応液を調製した。
【0088】
【表4】

【0089】
用いたプライマーの配列は以下のとおりである。
プライマー1:5'-CACAAGCTTTTTTGGACACTAACAGGAGG-3'(配列番号71)
プライマー2:5'-GATTCTGCAGAAGACTCTGGACATGG-3'(配列番号72)
【0090】
調製したPCR反応液に対し、GeneAmp PCR system 9700 (ABI)を用い、下記温度サイクルでPCR反応を行い、それぞれの試料についてJCウイルスのIG領域を増幅した。
95℃(0秒)→55℃(0秒)→72℃(10秒)→→72℃(1分)→4℃
必要に応じて、PCR反応後のサンプルに1μLの3×SSC/0.3%SDS溶液を加え、蛍光標識したターゲットDNAを含むターゲット溶液を調製した。
【0091】
ターゲット溶液を実施例2で作製したマイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイズカバーを被せた。50℃で30分間静置後、湿箱に入れて反応を行った。カバーを洗浄液中で外し、2×SSC/0.2%SDSでリンスを行った。さらに2×SSCでリンスを行った。そして1500rpmで、1分間、遠心乾燥を行った。蛍光スキャナFLA8000(富士写真フイルム)でスキャンを行った。スキャン画像より解析ソフトGenePixProを用いてシグナル強度を数値化した。
【0092】
シグナルの解析はプローブの群ごとにシグナル強度を比較し、グループ内でシグナル強度の大小を判定することにより行った。その結果、各ゲノム型について以下に示す特徴的なシグナルが検出された。この特徴的なシグナルの有無を判定することにより、未知の試料におけるJCウイルスのゲノム型を判定できることが明かとなった。
【0093】
【表5】

【0094】
例えば、ゲノム型B1-aについては、プローブ群15においてシグナル強度を比較したときに15-2>15-1、15-3、15-4(すなわち15-2のシグナル強度が一番大きい)であり、かつ、プローブ群17においてシグナル強度を比較したときに17-2>17-3>17-1である場合に、ゲノム型B1-aと判定できる。
【0095】
また、同じ試料について5回試験し、任意の2つの試験の蛍光強度をXYにプロットした結果を図2に示す。全ての試験の間でR2(相関係数)が0.99以上であることが示され、この試験方法は再現性が非常に高いことが示された。
【0096】
実施例4 未知試料におけるJCウイルスのゲノム型の検出
出身地が特定されている被検者由来のサンプル(腎臓片20mg、尿100μL(尿斑で約φ2cm)または血液100μL(血痕で約φ2cm))から、QiaAmp DNA(QIAGEN社製)を用いてDNAの抽出を行った。このDNAを鋳型DNAとしてPCR反応液を調製した。
【0097】
【表6】

【0098】
プライマーとしては実施例3と同じものを用いた。調製したPCR反応液に対し、GeneAmp PCR system 9700 (ABI)を用い、下記温度サイクルでPCR反応を行い、それぞれの試料についてJCウイルスのIG領域を増幅した。
95℃(1分)→95℃(10秒)→55℃(10秒)→72℃(30秒)→72℃(2分)
【0099】
PCR反応後のサンプル2μLに1μLの3×SSC/0.3%SDS溶液を加え、蛍光標識したターゲットDNAを含むターゲット溶液を調製した。
【0100】
ターゲット溶液を実施例2で作製したマイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイズカバーを被せた。50℃で30分間静置後、湿箱に入れて反応を行った。カバーを洗浄液中で外し、2×SSC/0.2%SDS溶液で2回洗浄し、さらに2×SSC溶液で2回洗浄した。遠心機で水分を飛ばし乾燥させた。蛍光スキャナFLA8000(富士写真フイルム)でスキャンを行った。スキャン画像より解析ソフトGenePixProを用いてシグナル強度を数値化した。
【0101】
各試料について得られたシグナル強度の値を図3に示す。各プローブ群において一番強いシグナルが得られたプローブにおけるシグナルに対応する数値を太字で記載し、いずれかのゲノム型に特徴的なシグナルに該当する数値に網掛けを付した。最下行に判定結果を記載した。
【0102】
サンプル1の結果を見ると、プローブ群11においてシグナル強度が3-2>3-1であることからCY型と判定できる。その他のいずれのプローブ群におけるシグナルも、他のゲノム型の特徴を有するものはない。また、サンプル2の結果を見るとプローブ群11においてシグナル強度が11-2>11-1、11-3>11-1であることからSC型と判定できる。その他のいずれのプローブ群におけるシグナルも、他のゲノム型の特徴を有するものはない。
【0103】
同じ試料について、従来法(増幅したIG領域の塩基配列を決定し、系統解析によりゲノム型を判定する方法、NJ法、JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY、 June 1995、 p. 1448-1451)でも同様にJCウイルスのゲノム型を判定した。
ゲノム型の判定結果をまとめて以下の表7に示す。
【0104】
【表7】

【0105】
以上の結果から、本発明の方法により、被検者由来の試料から被検者が有するJCウイルスのゲノム型を簡便かつ正確に判定することができ、当該被検者の出身地を推定できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1−1】JCウイルスの16種類のゲノム型の塩基配列(配列番号1〜16)に基づいて設計された54種のオリゴヌクレオチドプローブを示す。
【図1−2】JCウイルスの16種類のゲノム型の塩基配列(配列番号1〜16)に基づいて設計された54種のオリゴヌクレオチドプローブを示す。
【図1−3】JCウイルスの16種類のゲノム型の塩基配列(配列番号1〜16)に基づいて設計された54種のオリゴヌクレオチドプローブを示す。
【図2】実施例3において同じ試料について5回試験し、任意の2つの試験の蛍光強度をXYにプロットした結果を示す。
【図3】実施例4においてサンプル1〜11について得られたシグナル強度をプローブごとに示す。各プローブ群において一番強いシグナルが得られたプローブにおけるシグナルに対応する数値を太字で記載し、いずれかのゲノム型に特徴的なシグナルに該当する数値に網掛けを付した。最下行に判定結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のオリゴヌクレオチドプローブを含む、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定するためのオリゴヌクレオチドプローブのセット:
(a-1)配列番号2、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または16の100〜119番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(a-2)配列番号3の100〜119番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(b-1)配列番号11、12、14または15の222〜241番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(b-2)配列番号16の222〜241番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(c-1)配列番号1、3、4、6、9、12、13、14または15の261〜280番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(c-2)配列番号11の261〜280番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(d-1)配列番号1、3、6、12、13または14の276〜295番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(d-2)配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(d-3)配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基において292番目のTがCと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(d-4)配列番号4、7、9、10、15または16の276〜295番目の塩基において283番目のTがCと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(e-1)配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(e-2)配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基において298番目と299番目のGがAと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(e-3)配列番号3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14または15の288〜307番目の塩基において299番目のGがAと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(f-1)配列番号3、4、5、8、9、10、11、12、13、15または16の318〜337番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(f-2)配列番号1の318〜337番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(f-3)配列番号2の318〜337番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(g-1)配列番号12、13または14の381〜400番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(g-2)配列番号4、5、9または10の381〜400番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(g-3)配列番号15の381〜400番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(h-1)配列番号5、9、11または12の397〜416番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(h-2)配列番号14の397〜416番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(h-3)配列番号13の397〜416番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(h-4)配列番号16の397〜416番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(i-1)配列番号5、11、13、15または16の438〜457番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(i-2)配列番号12の438〜457番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(j-1)配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(j-2)配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基において456番目のTがGと置換され462番目のTがAと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(j-3)配列番号5、11または15の446〜465番目の塩基において446番目のAがTと置換され456番目のTがGと置換され462番目のTがAと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(k-1)配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(k-2)配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基において457番目のTがCと置換され462番目のTがGと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(k-3)配列番号5、9、11または15の451〜470番目の塩基において462番目のTがGと置換された塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(l-1)配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の503〜522番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ
(l-2)配列番号11の503〜522番目の塩基を含む連続した10〜30塩基の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項2】
請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットが担体上に固定化されてなる、被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定するためのマイクロアレイ。
【請求項3】
請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットが担体上に固定化されてなる、被検者の出身地を推定するためのマイクロアレイ。
【請求項4】
担体が、表面にカーボン層と化学修飾基とを有するものである、請求項2または3記載のマイクロアレイ。
【請求項5】
被検者に感染したJCウイルスのゲノム型を判定する方法であって、
被検者由来の試料からDNAを抽出する工程と、
抽出したDNAを鋳型とし、JCウイルスゲノムのIG領域をコードする核酸を増幅する工程と、
請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットまたは請求項2〜4のいずれか1項記載のマイクロアレイを用いて増幅された核酸を検出する工程と
を含む、前記方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法によって判定されたJCウイルスのゲノム型に基づいて被検者の出身地を推定する方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−141969(P2008−141969A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329735(P2006−329735)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【出願人】(592083915)警察庁科学警察研究所長 (23)
【Fターム(参考)】