説明

ゲル処理されたポリオレフィン組成物

低い多分散性係数(PDI)で特徴付けられる狭い分子量分布を有し、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーから選択される半結晶性ポリオレフィンが、低分子量の液状希釈剤と混合され、繊維及びフィルムのゲル組成物が作られる。これらのゲル組成物は、希釈剤が除去される前又は後にて、力学的又は熱力学的な処理を受けると、結果として、高引張強度と、高剛直性、破壊時の高歪み、及び/又は高弾性回復などの所定の他の物理的特性とを兼ね備えた繊維又はフィルムの組成物になる。これら所定の特性を兼ね備えているという性質は、構成及び分子量において実質的に同じであるが大きいPDIを有する、ゲル処理を受けた半結晶性ポリオレフィンから得られたものより優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照することにより本明細書に援用される、2008年9月5日に提出された仮特許出願No.61/191,175の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、高分子分野に関する。より詳しくは、本発明は、狭い分子量分布を有しホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、又はグラフトコポリマーの部類に属する半結晶性ポリオレフィンに関する。本発明が開示していることは、そのような小さい多分散性指数(PDI)の材料が、単独で又は一般的な半結晶性ポリオレフィン材料と混合されて用いられ、所定の“ゲル処理”手法を受けると、優れた引張強度と、高弾性、破断時の高歪み、及び/又は、高い弾性回復といった他の所定特性とを有する繊維やフィルムを製造するために利用され得ることである。当該技術分野において前記ゲル処理手法は、ゲル組成物から希釈剤が取り除かれる前又は後に、力学的又は熱力学的な処理を与えてゲル組成物を調製するため、低分子量の希釈剤を用いたポリマーの希釈物を要することが知られている。
【背景技術】
【0003】
様々な等級のポリエチレン及びポリプロピレンといったポリオレフィンは、プラスチック材料の市場において最も重要な区分範囲を占めている。モノマーの低コストの点(例えば、エチレン及びプロピレン)、多用途性の点、及び、重合によって得られるという工程の容易さの点により、ポリオレフィンは、包装用フィルム、容器、パイプ、裏地、自動車用プラスチック、金属線やケーブルの被覆材、射出又は中空成形品などの広範囲の用途に広く採用されている(非特許文献1)。
【0004】
ホモポリマーの態様においては、ポリエチレンは、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)のように高結晶性且つ剛直性であるか、又は、低密度ポリエチレン(LDPE)のように低結晶性であるが柔軟で切れにくく且つ丈夫である。前者は、大部分が直鎖状のポリエチレン(PE)で構成され、一方、後者のポリマーは、多くの分岐がある。メタロセンPEのようなポリエチレンの新たな等級は、従来のHDPE及びLDPEと比べて、分子量分布と分岐の程度及び種別とに関してより正確な制御を与える触媒及び処理法を用いて製造される。本発明に特に関連するものは、HDPEが高度に結晶化され高分子量化された形態の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。UHMWPE及びHDPEの商品化された等級の両方とも、広い分子量分布を有するという特性を備え、本明細書において多分散性指数(PDI)が2.0よりかなり大きいという点で特徴付けられる。PDIは、ポリマーにおける数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比として当業者に知られており、ゲル浸透クロマトグラフィーのような既に確立された方法によって測定される。
【0005】
同様に、様々な等級及び種別のポリプロピレンホモポリマー(PP)が市場に存在する。PP鎖の側鎖であるメチル基によってもたらされた立体化学により、ポリプロピレンの種別及び特性は、ポリエチレンの場合より多様である。例えば、アイソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、及びアタクチック(aPP)ポリプロピレンの全てが商業的に製造されている。iPP及びsPPに基づく材料は、より高結晶性で剛直な傾向である一方、aPP材料は、低結晶性又は非結晶性で柔軟である。PEと同様に、異なる方法によって製造されたポリプロピレンは、分子量分布、分岐の程度、工程中の挙動、及び物理的特性において異なり得る。商業上のポリプロピレンの大部分は、2.0より大きいPDIによって特徴付けられる。分子が長いという特性と、溶融及び溶解の両状態において分子が絡み合うという特徴とが完全な結晶化を妨げることから、PE及び(立体規則性)PPの両者は、“半結晶性”であると考えられる。半結晶性のポリオレフィンの固体状態における形態は、大きく変化し結晶が様々な型になる一方で、一般的には、2つの構造領域、即ち、ポリマー鎖が結合し機械的にかみ合った結晶領域と、該結晶領域を隔てるアモルファス領域とが存在する。
【0006】
オレフィンモノマーは、様々な化学的処理を経て共重合され、ランダムコポリマー又は統計コポリマーが調製され得る。例えば、エチレン及びプロピレンの共重合は、エチレン−プロピレンゴム(EPR)として知られるゴム状材料を作るために用いられる。1−ヘキセン又は1−オクテンのような比較的分子量の大きいアルファ−オレフィンは、少量がエチレン及びプロピレンと共重合され、広範囲の物理特性及び用途を有し、ゴム弾性、可塑性、及び半剛直性で半結晶性のポリオレフィン材料の一群が作られる。
【0007】
ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーは、高分子材料の他の群において商業化されている一方で、なかでも注目すべきは、スチレン、ブタジエン、及びイソプレンのリビングアニオン重合によって調製されたスチレンブロックコポリマー(SBCs)のみが、ポリオレフィンのブロック及びグラフトコポリマー調製する合成方法として、近年、台頭してきた。過去10年間、連鎖停止及び転移過程を抑える様々な“リビング”アルケン重合化学が確認され、分子量、分子構造、及び立体化学の正確な制御が実現されるようになった(非特許文献2)。これらの触媒体系及び手段によって、現在、2.0未満のPDIを有する様々な半結晶性のポリオレフィンホモポリマー、統計コポリマー、並びに、ブロック及びグラフトコポリマーを合成することが可能である。例えば、直線状のA−B−A構造を有するトリブロックコポリマーが調製され、該コポリマーにおいては、ガラス転移点が低く(即ち、EPR)、Aブロックが半結晶性でiPP又はsPPのいずれかであり、Bブロックがアモルファス(半結晶性)でエチレン及びプロピレンの統計コポリマーである。斯かる材料は、熱可塑性ポリオレフィンのなかでも独特の優れたゴム特性を有していることが示されている(非特許文献3)。
【0008】
1979年のSmith及び共同研究者らの報告(非特許文献4)によると、UHMWPEホモポリマーを、デカリンのような希釈剤を用いた希釈液中で処理することによりゲル繊維が作られ得る。続いて、希釈剤を取り除く前又は後に、ゲル繊維を力学的に伸長(延伸)させ且つ熱処理させることにより、超高強度及び高弾性率を有する高結晶性の繊維又はフィラメントを作ることができる。この工程は、Stanicarbon, B.V.又はDSM N.V.による特許文献1及び特許文献2に開示されている。より広い範囲の半結晶性ポリオレフィン“基材”及びより広い範囲の処理条件のための同様な開示は、Alliedによる特許文献3、特許文献4及び特許文献5において、Bridgestone/Firestoneによる特許文献6において、Akzo N.V.による特許文献7において、Mitsuiによる特許文献8において、そして、Honeywellによる特許文献9においてされている。しかしながら、これら開示のいずれにおいても、5.0未満のPDIを有する狭い分子量分布の半結晶性ポリオレフィンを含む組成物が記載されていない。
【0009】
特許文献10においては、Smith、Lemstra、及び共同研究者らが、400,000を超えるMwを有し5未満のPDIを有し、3〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルケンコモノマーを5%未満組み込んだポリエチレン統計コポリマー及びポリエチレンホモポリマーの基材から、高強度且つ高弾性率のフィラメントを得るための処理法を開示している。しかしながら、これらの発明者らは、1種以上のポリオレフィンブロック若しくはグラフトコポリマー、又は、ポリプロピレンポリマー及びコポリマーを含む基材を使用することを開示しておらず、また、5.0未満のPDIを有し側鎖単位(鎖異性化による)として組み込まれた20%までのエチレン単位を含むポリエチレンホモポリマーを使用することも開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4344908号明細書
【特許文献2】米国特許第4430383号明細書
【特許文献3】米国特許第4413110号明細書
【特許文献4】米国特許第4663101号明細書
【特許文献5】米国特許第5736244号明細書
【特許文献6】米国特許第5286435号明細書
【特許文献7】米国特許第5068073号明細書
【特許文献8】米国特許第5106563号明細書
【特許文献9】米国特許第7344668号明細書
【特許文献10】米国特許第4436189号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J. A. Brydson, Plastic Materials (6th Ed., Butterworth Heinemann, Oxford, 1995)
【非特許文献2】G. J. Domski, J. M. Rose, G. W. Coates, A. D. Bolig, M. S. Brookhart, Prog. Polym. Sci. 32, 30-92 (2007)
【非特許文献3】A. Hotta, E. Cochran, J. Ruokolainen, V. Khanna, G. H. Fredrickson, E. J. Kramer, Y.-W. Shin, F. Shimizu, A. E. Cherian, P. D. Hustad, J. M. Rose, and G. W. Coates, Proc. Natl. Acad. Set. 103, 15327 (2006)
【非特許文献4】P. Smith, P. J. Lemstra, B. KaIb, and A. J.Pennings, Polymer Bull. 1, 733 (1979); P. Smith and P. J. Lemstra, Makromol. Chem. 180, 2983 (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明において我々が報告することは以下の通りである。即ち、P. Smith、PJ. Lemstra及び共同研究者らによって開発され、従来、2.0を大きく超えるPDIを有するポリオレフィン基材を用いて剛直な超高強度の繊維やフィルムを作るためだけに利用されてきたゲル処理技術を、低いPDIの様々な半結晶性ポリオレフィンと関連させて用いることにより、優れた引張強度と、高弾性率、破壊時の高歪み、及び/又は高弾性回復に限らない所定の他の様々な物理的特性とを備えた優れた材料を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、低い多分散性係数(PDI)で特徴付けられる狭い分子量分布を有し、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選択された半結晶性ポリオレフィンが、低分子量の液状希釈剤と混合され、繊維及びフィルムのゲル組成物が作られる。これらのゲル組成物は、希釈剤が除去される前又は後にて、力学的又は熱力学的な処理を受けると、結果として、高引張強度と、高剛直性、破壊時の高歪み、及び/又は高弾性回復に限らない所定の他の物理的特性とを兼ね備えた繊維又はフィルムの組成物になる。これら所定の特性を兼ね備えているという性質は、構成及び分子量において実質的に同じであるがより大きいPDIを有する、ゲル処理を受けた半結晶性ポリオレフィンから得られたものより優れている。
【0014】
1A.一実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含む、フィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0015】
1Aの実施形態の詳細においては、フィルム又は繊維の組成物が、高引張強度、破壊時の低歪み、及び高弾性率を有している。
【0016】
1Aの実施形態の別の詳細においては、フィルム又は繊維の組成物が、高引張強度、破壊時の高歪み、及び高弾性回復性を有している。
【0017】
1Aの実施形態のさらに別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、半結晶性Aブロック及びアモルファスBブロックを有するA−B型ブロックコポリマー、ABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、高次直鎖状(AB)nマルチブロックコポリマー、又は、(AB)n放射状ブロックコポリマーである。
【0018】
1Aの実施形態の別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロック又はグラフトが使用温度より低いガラス転移温度を有し、Aポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度より高い温度で溶融する。
【0019】
1Aの実施形態のさらに別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、側鎖として20%までのエチレン単位が組み込まれたポリエチレン、アイソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)若しくはポリ(1−オクテン)を含めたアイソタクチック又はシンジオタクチックの高アルファ−オレフィン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)、若しくはポリ(ビニルシクロヘキセン)のアイソタクチック又はシンジオタクチック変異体、からなる群より選択されたホモポリマーである。
【0020】
1Aの実施形態の別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)若しくはポリ(1−オクテン)を含めたアイソタクチック又はシンジオタクチックの高アルファ−オレフィン、ポリ(4−メチルー1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)、若しくはポリ(ビニルシクロヘキセン)のアイソタクチック又はシンジオタクチック変異体、からなる群より選択される。
【0021】
1Aの実施形態のさらに別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリマーブロック又はグラフトが、アタクチック又は位置変則性のポリプロピレンからなる群より選択されるポリオレフィン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含めたアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選択されるポリオレフィンのランダム又は統計コポリマー;又は、
1種以上の高アルファ−オレフィン及びエチレン(又はエチレンなし)をプロピレンと共重合することにより得られたアタクチック若しくは位置変則性のランダム若しくは統計コポリマーである。
【0022】
1Aの実施形態の別の詳細においては、低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られたポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック若しくはグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られたポリオレフィン化合物である。
【0023】
1Aの実施形態のさらに別の詳細においては、低分子量の液状希釈剤が、鉱油、灯油、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤などの低揮発性を有する低分子量の液状有機化合物;又は、デカリンなどの高揮発性を有する低分子量有機化合物である。
【0024】
1Aの実施形態の別の詳細においては、低分子量の液状希釈剤が、液状、気体状、又は超臨界状態の二酸化炭素である。
【0025】
2A.他の実施形態においては、
2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーの部類に属する少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合すること、
混合物を加熱すること、
混合物をアニーリングすること、
アニーリングステップの前又は後のいずれかに混合物を成形すること、
混合物を冷却すること、
を含む、フィルム又は繊維のポリマーゲル組成物の製造方法が提供される。
【0026】
2B.2Aの実施形態の詳細においては、高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップが、低分子量の液状希釈剤を取り除くときにさらに含まれる。
【0027】
2C.2A又は2Bの実施形態のさらに別の詳細においては、力学的又は熱力学的ステップが、引張によって単純伸長すること、伸長及び緩和の各サイクルにおいてより大きな最大変形となるように引張による純伸長と0応力への緩和とを繰り返すこと、2軸伸長すること、徐々に増加する2軸伸長をすること及び単純伸長のときのような緩和をすること、所定形状のダイ又は所定形状の空洞を通して材料を押出成形すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向に沿った延伸を利用すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向及びそれに垂直な方向の両方に沿った延伸を利用すること、1対のローラ又は連続対のローラの間にて押しつぶすことによって、厚みの減少、緩和、厚みのさらなる減少、緩和など、材料の厚みの減少をもたらす変形を行うこと、からなる群より選択される。
【0028】
2Cの実施形態の他の詳細においては、温度変化が、処理の各ステップの最中又は間に与えられる。
【0029】
2D.2Aの実施形態の他の詳細においては、高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップを、低分子量の液状希釈剤の除去の後にさらに含む。
【0030】
他の実施形態においては、上記2Bにて開示された方法により製造されたポリマー組成物が提供される。
【0031】
他の実施形態においては、上記2Dにて開示された方法により製造されたポリマー組成物が提供される。
【0032】
3A.一実施形態においては、
2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーの部類に属する少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを、調合機、混合機、又は押出成形機などの一般的なポリマー処理装置を用いて昇温しつつ1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合すること、
所定の形へ成形すること、及び、
混合物を冷却すること、
を含む、フィルム又は繊維のポリマーゲル組成物の製造方法が提供される。
【0033】
3B.3Aの実施形態の詳細においては、高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップが、低分子量の液状希釈剤を取り除くときにさらに含まれる。
【0034】
3C.3Bの実施形態の詳細においては、力学的又は熱力学的ステップが、引張によって単純伸長すること、伸長及び緩和の各サイクルにおいてより大きな最大変形となるように引張による純伸長と0応力への緩和とを繰り返すこと、2軸伸長すること、徐々に増加する2軸伸長をすること及び単純伸長のときのような緩和をすること、所定形状のダイ又は所定形状の空洞を通して材料を押出成形すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向に沿った延伸を利用すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向及びそれに垂直な方向の両方に沿った延伸を利用すること、1対のローラ又は連続対のローラの間にて押しつぶすことによって、厚みの減少、緩和、厚みのさらなる減少、緩和など、材料の厚みの減少をもたらす変形を行うこと、からなる群より選択される。
【0035】
3Cの実施形態の詳細においては、温度変化が、処理の各ステップの最中又は間に与えられる。
【0036】
3D.3Aの実施形態のさらに別の詳細においては、高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップが、低分子量の液状希釈剤の除去の後にさらに含まれる。
【0037】
上記3Bにて開示された方法により製造されたポリマー組成物が提供される。
【0038】
上記3Dにて開示された方法により製造されたポリマー組成物が提供される。
【0039】
別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、3.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマー、又は、3〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルケンコモノマーが5%を超えて組み込まれたエチレンコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが3.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0040】
さらに別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、5.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマー、又は、3〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルケンコモノマーが5%を超えて組み込まれたエチレンコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが5.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0041】
さらに別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、又はグラフトコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0042】
別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ポリエチレン以外のホモポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0043】
さらに別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【0044】
さらに別の実施形態においては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物が提供され、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明においては、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、若しくは統計ポリマー、又は、側鎖として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンのホモポリマーのいずれかであり、狭い分子量分布(低いPDI)を有する少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを、必要に応じて他の半結晶性ポリオレフィンと組み合わせて、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合し、ゲル組成物を作ることができる。前記ゲル組成物は、ゲル組成物から希釈剤が取り除かれる前又は後に、力学的又は熱力学的な延伸処理を受けて繊維(フィラメント)又はフィルムへと成形される。そのようなゲル処理から得られるフィルム又は繊維の組成物は、高い引張強度と他の所定特性を兼ね備えた優れた複合的な物理特性を示し得る。これら他の所定特性は、構造、分子量、及び低いPDIの半結晶性ポリマー基材の組成を制御することにより調整できる。例えば、高弾性率及び破壊時の低歪みと高引張強度とを兼ね備えた剛直なフィルム及び繊維は、高融点を有し2.0未満のPDIを有する半結晶性のsPP又はiPPホモポリマーをゲル処理することにより得ることができる。これに対し、低伸長における低弾性率、高伸長における高弾性率、高引張強度、及び高弾性回復を兼ね備えたゴム弾性のあるフィルム及び繊維は、2.0未満のPDIを有しPE−EPR−PE、sPP−EPR−sPP、又はiPP−EPR−iPPのようなトリブロック構造を有する半結晶性ブロックコポリマーをゲル処理することにより得ることができる。なお、EPR(エチレン−プロピレンゴム)は、エチレン及びプロピレンの統計コポリマーであり、実質的にアモルファスであり低ガラス転移温度を有する。他の例としては、低いPDIのsPPホモポリマーと低いPDIのsPP−EPR―sPPトリブロックコポリマーとの間に破壊時の歪みがある繊維又はフィルムが、ゲル処理の前に2種のポリマーを混合すること、又は、より高いsPPの分子量画分を有するsPP−EPR―sPPトリブロックコポリマーを用いることにより得られるものがある。これらの例は、実例であるが包括的なものではない。全ての場合において、本発明にて開示された所定の物理的特性を兼ね備えていることは、1種以上の低いPDIの半結晶性ポリオレフィンを含む基材をゲル処理することにより可能になると理解すべきである。
【0046】
一実施形態においては、ポリマー組成物は、1種又は2種以上の半結晶性ポリオレフィンの混合物を含み、
(i)それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
(ii)前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーであり、
(iii)1種又は2種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種又は2種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
(iv)構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている。
半結晶性ポリオレフィンの混合物が1種又は2種以上の低いPDIのブロック又はグラフトコポリマーを含む場合、それぞれのブロック又はグラフトコポリマーは、限定されないが、ABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、n>1の高次直鎖状(AB)nマルチブロックコポリマー、n>1の(AB)n放射状ブロックコポリマー;又は、コポリマーあたりのブロックサイズ及びブロック数が統計的処理によって決定されA半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルでありBアモルファスブロックの数平均分子量が小さくとも1000g/モルである...ABABAB...構造を備えたマルチブロックコポリマー;又は、数平均分子量が1000g/モルを超えるアモルファスB主鎖を含みそれぞれ500g/モルの又はそれより大きい数平均分子量の、2以上の半結晶性ポリオレフィンAのグラフト(分岐)が結合し、該グラフトがB主鎖に沿って規則的又はランダムに配されたグラフトコポリマー、などの半結晶性A及びアモルファスBブロックを有するコポリマーであり得る。
【0047】
本発明において、低いPDIの半結晶性ブロック又はグラフトコポリマーにおける半結晶性のAポリマーブロックは、限定されないが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、又は、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)、又はポリ(ビニルシクロヘキセン)のアイソタクチック若しくはシンジオタクチック変異体であり得る。
【0048】
本発明において、低いPDIの半結晶性ブロック又はグラフトコポリマーにおけるアモルファスBポリオレフィンブロックは、限定されないが、アタクチック又は位置変則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)若しくはポリ(1−オクテン)を含めたアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選択されるポリオレフィンのランダム又は統計コポリマー;1種又は2種以上の高アルファ−オレフィン及びエチレン(又はエチレンなし)をプロピレンと共重合することにより得られたアタクチック若しくは位置変則性のランダム若しくは統計コポリマー;又は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、若しくはそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られたポリオレフィン化合物であり得る。
【0049】
上記の低いPDIの半結晶性ポリオレフィンは、本明細書において、好ましくは50,000〜2,000,000g/モル、より好ましくは200,000〜1,000,000g/モルの数平均分子量を有する半結晶性ポリオレフィンである。それぞれの低いPDIの半結晶性成分における、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比として規定される多分散性指数又はPDIは、1.01以上5.0未満が好ましく、1.01以上3.0未満がより好ましく、1.01以上2.0未満がさらに好ましく、1.01以上1.5未満が最も好ましい。
【0050】
本発明の実施形態において用いられる低分子量の液状希釈剤は、限定されないが、鉱油、灯油、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤などの低揮発性を有する低分子量の有機化合物;デカリンなどの高揮発性を有する低分子量の有機化合物;又は、液状、気体状、若しくは超臨界状態の二酸化炭素であり得る。これらの低分子量の液状希釈剤は、10〜5000g/モル範囲、好ましくは10〜1000g/モル範囲の分子量を有し得る。本発明のゲル組成物において用いられる低分子量の液状希釈剤の重量百分率は、15%〜99.9%の範囲、好ましくは50%〜99.9%の範囲、最も好ましくは80%〜99.9%の範囲であり得る。
【0051】
本発明におけるフィルム又は繊維のポリマーゲルは、1種又は2種以上の半結晶性ポリオレフィンと1種又は2種以上の低分子量の液状希釈剤とを混合すること、加熱すること、アニーリングすること、成形する又は押し出すこと、そして混合物を冷却することにより作ることができる。別の製造方法としては、1種又は2種以上の半結晶性ポリオレフィンと1種又は2種以上の低分子量の液状希釈剤とを、調合機、混合機、又は押出成形機などの一般的なポリマー処理装置を用いて昇温しつつ物理的に混合するものがある。
【0052】
力学的又は熱力学的処理は、上記の方法によって作られた繊維又はフィルムのポリマーゲル組成物、又は、ポリマーゲル組成物から希釈剤を取り除くことにより調製された組成物を、優れた引張強度と所定の他の物理的特性とを有する繊維又はフィルムへと変化させることができる。所定の力学的処理としては、限定されないが、引張によって単純伸長すること、伸長及び緩和の各サイクルにおいてより大きな最大変形となるように引張による純伸長と0応力への緩和とを繰り返すこと、2軸伸長すること、徐々に増加する2軸伸長をすること及び単純伸長のときのような緩和をすること、所定形状のダイ又は所定形状の空洞を通して材料を押出成形すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向に沿った延伸を利用すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向及びそれに垂直な方向の両方に沿った延伸を利用すること、1対のローラ又は連続対のローラの間にて押しつぶすことによって、厚みの減少、緩和、厚みのさらなる減少、緩和など、材料の厚みの減少をもたらす変形を行うこと、が挙げられる。所定の熱力学的処理としては、上述した力学的処理の各ステップの最中又は間にて温度変化を与えるものがある。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
シンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー(sPP)は、J. Tian, P.D. Hustad, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc. 123, 5134-5135 (2001)に記載された方法及び触媒を利用して合成することができる。当該sPPホモポリマーは、500,000g/モルの重量平均分子量及び2.0未満のPDIを有する。ポリマーを鉱油の希釈剤に5重量%にて昇温しながら溶解させて透明な液体を作り、室温に冷却してゲルを作ることができる。引張試験に適した狭幅片をゲルから切り出す。当該片を大きな伸長比にて引っ張ることにより伸ばしてゲル繊維を作り、そしてヘキサン溶液にて鉱油を抽出して剛直なsPP繊維を作ることができる。このようにして得られた繊維は、高引張弾性率、高引張強度、及び破壊時の低歪みを有する。
【0054】
(実施例2)
末端のsPPブロックがシンジオタクチックポリプロピレンであり中間にあるEPRブロックがアモルファスエチレン−プロピレンランダムコポリマーである、sPP−EPR−sPPトリブロックコポリマーは、J. Tian, P.D. Hustad, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc. 123, 5134-5135 (2001)に記載された方法及び触媒を利用して合成することができる。トリブロックコポリマーは、350,000g/モルの重量平均分子量及び2.0未満のPDIを有する。ポリマーを鉱油の希釈剤に5重量%にて昇温しながら溶解させて透明な液体を作り、室温に冷却してゲルを作ることができる。引張試験に適した狭幅片をゲルから切り出す。当該片を大きな伸長比にて引っ張ることにより伸ばしてゲル繊維を作り、そしてヘキサン溶液にて鉱油を抽出してゴム弾性を有するsPP−EPR−sPP繊維を作ることができる。このようにして得られた繊維は、低伸長にて低い引張弾性率、高伸長にて高い引張弾性率、高引張強度、破壊時の高歪み、及び高い弾性歪み回復性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含む、フィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えているポリマー組成物。
【請求項2】
フィルム又は繊維の前記組成物が、高引張強度、破壊時の低歪み、及び高弾性率を有している請求項1記載の組成物。
【請求項3】
フィルム又は繊維の前記組成物が、高引張強度、破壊時の高歪み、及び高弾性回復を有している請求項1記載の組成物。
【請求項4】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、半結晶性AブロックとアモルファスBブロックとを有するA−B型ブロックコポリマー、ABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、高次直鎖状(AB)nマルチブロックコポリマー、又は、(AB)n放射状ブロックコポリマーである請求項1記載の組成物。
【請求項5】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロック又はグラフトが使用温度より低いガラス転移温度を有し、該コポリマーのAポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度より高い温度で溶融する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、側鎖として20%までのエチレン単位が組み込まれたポリエチレン、アイソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン);ポリ(1−ヘキセン)若しくはポリ(1−オクテン)を含めたアイソタクチック又はシンジオタクチックの高アルファ−オレフィン;又は、ポリ(4−メチルー1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)、若しくはポリ(ビニルシクロヘキセン)のアイソタクチック又はシンジオタクチック変異体、からなる群より選択されたホモポリマーである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン);ポリ(1−ヘキセン)若しくはポリ(1−オクテン)を含めたアイソタクチック又はシンジオタクチックの高アルファ−オレフィン;又は、ポリ(4−メチルー1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)、若しくはポリ(ビニルシクロヘキセン)のアイソタクチック又はシンジオタクチック変異体からなる群より選択される請求項1記載の組成物。
【請求項8】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリマーブロック又はグラフトが、アタクチック又は位置変則性ポリプロピレンからなる群より選択されるポリオレフィン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含めたアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選択されるポリオレフィンのランダム又は統計コポリマー;又は、
1種以上の高アルファ−オレフィンとエチレン若しくはエチレンなしとプロピレンとを共重合することにより得られたアタクチック若しくは位置変則性のランダム若しくは統計コポリマー、である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
低いPDIの半結晶性ポリオレフィンが、A−B型ブロック又はグラフトコポリマーであり、該コポリマーのアモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られたポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック若しくはグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られたポリオレフィン化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
低分子量の液状希釈剤が、鉱油、灯油、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤などの低揮発性を有する低分子量の液状有機化合物;又は、デカリンなどの高揮発性を有する低分子量の有機化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
低分子量の液状希釈剤が、液状、気体状、又は超臨界状態の二酸化炭素である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーの部類に属する少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合すること、
混合物を加熱すること、
混合物をアニーリングすること、
アニーリングステップの前又は後のいずれかに混合物を成形すること、及び、
混合物を冷却すること、
を含む繊維又はフィルムのポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項13】
高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップを、低分子量の液状希釈剤を取り除くときにさらに含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
力学的又は熱力学的ステップが、引張によって単純伸長すること、伸長及び緩和の各サイクルにおいてより大きな最大変形となるように引張による純伸長と0応力への緩和とを繰り返すこと、2軸伸長すること、徐々に増加する2軸伸長をすること及び単純伸長のときのような緩和をすること、所定形状のダイ又は所定形状の空洞を通して材料を押出成形すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向に沿った延伸を利用すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向及びそれに垂直な方向の両方に沿った延伸を利用すること;及び、1対のローラ又は連続対のローラの間にて押しつぶすことによって、厚みの減少、緩和、厚みのさらなる減少、緩和など、材料の厚みの減少をもたらす変形を行うこと、からなる群より選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
温度変化が、処理の各ステップの最中又は間に与えられる請求項14記載の方法。
【請求項16】
高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップを、低分子量の液状希釈剤の除去の後にさらに含む請求項12記載の方法。
【請求項17】
請求項13記載の方法により製造されたポリマー組成物。
【請求項18】
請求項16記載の方法により製造されたポリマー組成物。
【請求項19】
2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーの部類に属する少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを、調合機、混合機、又は押出成形機などの一般的なポリマー処理装置を用いて昇温しつつ1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合すること、
所定の形へ成形すること、及び、
混合物を冷却すること、
を含む繊維又はフィルムのポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項20】
高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップを、低分子量の液状希釈剤を取り除くときにさらに含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
力学的又は熱力学的ステップが、引張によって単純伸長すること、伸長及び緩和の各サイクルにおいてより大きな最大変形となるように引張による純伸長と0応力への緩和とを繰り返すこと、2軸伸長すること、徐々に増加する2軸伸長をすること及び単純伸長のときのような緩和をすること、所定形状のダイ又は所定形状の空洞を通して材料を押出成形すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向に沿った延伸を利用すること、材料をダイに通す押出成形のあとに押出方向及びそれに垂直な方向の両方に沿った延伸を利用すること、1対のローラ又は連続対のローラの間にて押しつぶすことによって、厚みの減少、緩和、厚みのさらなる減少、緩和など、材料の厚みの減少をもたらす変形を行うこと、からなる群より選択される請求項20記載の方法。
【請求項22】
温度変化が、処理の各ステップの最中又は間に与えられる請求項21記載の方法。
【請求項23】
高引張強度及び/又は所定の他の物理的特性を有する繊維又はフィルムを製造するため、結晶が適した構造になる形へ半結晶性のゲル組成物を変換する力学的又は熱力学的ステップを、低分子量の液状希釈剤の除去の後にさらに含む請求項19記載の方法。
【請求項24】
請求項20記載の方法により製造されたポリマー組成物。
【請求項25】
請求項23記載の方法により製造されたポリマー組成物。
【請求項26】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、3.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマー、又は、3〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルケンコモノマーが5%を超えて組み込まれたエチレンコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが3.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている、フィルム又は繊維のポリマー組成物。
【請求項27】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、5.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ポリエチレン以外のホモポリマー、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマー、又は、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマー、又は、3〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルケンコモノマーが5%を超えて組み込まれたエチレンコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが5.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えている、フィルム又は繊維のポリマー組成物。
【請求項28】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ブロックコポリマー、又はグラフトコポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えているフィルム又は繊維のポリマー組成物。
【請求項29】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、ポリエチレン以外のホモポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えているフィルム又は繊維のポリマー組成物。
【請求項30】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、側鎖単位として組み込まれた20%までのエチレン単位を有するポリエチレンホモポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えているフィルム又は繊維のポリマー組成物。
【請求項31】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンポリマーの混合物を含むフィルム又は繊維のポリマー組成物であって、
それぞれの半結晶性ポリオレフィンポリマーが、ホモポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーからなる群より選ばれ、
前記混合物中の少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンが、2.0未満の低いPDIを有し、且つ、エチレン以外のモノマーを過半数有する統計ポリマーであり、
1種以上の低分子量の液状希釈剤が前記組成物から取り除かれる前又は後に、力学的及び/又は熱力学的な変形処理を与えて繊維又はフィルムのゲルを作るべく、前記ポリオレフィン混合物が、1種以上の低分子量の液状希釈剤と混合されており、
構成及び重量平均分子量が実質的に同じであるがポリマー成分全てのPDIが2.0を超える半結晶性ポリオレフィンを用いて同様なゲル処理ステップにより作られたフィルム又は繊維と比較して、得られたフィルム又は繊維のポリマー組成物が、高引張強度と、所定の他の物理的特性とを兼ね備えているフィルム又は繊維のポリマー組成物。

【公表番号】特表2012−507583(P2012−507583A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526220(P2011−526220)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056001
【国際公開番号】WO2010/028223
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(304056899)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, Oakland, CA 94607−5200, United States of America
【出願人】(511059313)コーネル ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Ithaca,NY 14853−1301(US)
【Fターム(参考)】