説明

ゲル状物質への印刷方法

【課題】容易に良好な物性と印刷品質が得られる、冷却シートなどのゲル状物質への印刷方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、塗布工程は、基材フィルム1の片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤2を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層4を形成する工程であり、反応工程は、塗布工程後、前記基材フィルム1の画像層4形成面をゲル状物質3に被覆し、前記反応性薬剤2とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質3に文字・絵柄などの染着画像層5を形成する工程であることを特徴とするゲル状物質への印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱用冷却シートなどの印刷方法に関するものであり、さらに詳しくは、急な発熱の時や、顔面などの美容、或いはダイエット用具などに使用される冷却シートなどのゲル状物質への印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、急な発熱の時や、顔面などの美容、或いはダイエット用具などに使用される冷却シートなどのゲル状物質への印刷方法は、水転写法や転写箔、染料による直接染色などの方法が用いられている。水転写法は、プラスチック製品、陶器、ガラス、ホーロー、金属、木材、石材、紙、プラモデル用デカール、タトゥー(刺青)シールなどに使用される薄膜転写方法で、転写箔を使用する方法と基本的には変わらない。いずれの方法もゲルへの転写時に完全に箔が転写しない、あるいは転写後に箔が剥離してしまうなどの問題がある。また、転写箔そのものも非常に高コストであるという問題もあった。
【0003】
フィルムに染料を塗布してゲルに貼り付け、ゲルに直接染料(インキ)をのせるという方法もあるが、この方法では時間が経つとインキがゲル内に分散してしまい、文字や絵柄がぼやけてくるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、容易に良好な物性と印刷品質が得られる、冷却シートなどのゲル状物質への印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、塗布工程は、基材フィルム(1)の片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤(2)を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層(4)を形成する工程であり、反応工程は、塗布工程後、前記基材フィルム(1)の画像層(4)形成面をゲル状物質(3)に被覆し、前記反応性薬剤(2)とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質(3)に文字・絵柄などの染着画像層(5)を形成する工程であることを特徴とするゲル状物質への印刷方法である。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載のゲル状物質への印刷方法において、前記反応性薬剤(2)が反応性染料であることを特徴とするゲル状物質への印刷方法である。
【0007】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のゲル状物質への印刷方法において、前記ゲル状物質(4)が少なくとも、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマーなどの水溶性高分子とゼラチンなどのゲル化剤で構成されていることを特徴とするゲル状物質への印刷方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るゲル状物質への印刷方法は、少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、塗布工程は、基材フィルムの片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層を形成
する工程であり、反応工程は、塗布工程後、前記基材フィルムの画像層形成面をゲル状物質に被覆し、前記反応性薬剤とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質に文字・絵柄などの染着画像層を形成する工程であることにより、容易に良好な物性と印刷品質が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図1〜5に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、基材フィルム(1)に反応性薬剤(2)を塗布して、画像層(4)を形成した状態の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムをゲル状物質(3)に被覆した状態の1実施例を示す側断面図であり、図3は本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムの反応性薬剤とゲルの材質とが反応して染着画像層(5)が形成された状態の1実施例を示す側断面図であり、図4は本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムをゲル状物質(3)から切り離した状態の1実施例を示す側断面図であり、図5は本発明に係るゲル状物質への印刷方法によって得られた染着画像層(5)を有するゲル状物質(3)の1実施例を示す側断面図である。
【0011】
本発明に係るゲル状物質への印刷方法は、少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、前記塗布工程は、図1に示すように、基材フィルム(1)の片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤(2)を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層(4)を形成する工程であり、前記反応工程は、図2に示すように、塗布工程後、前記基材フィルム(1)の画像層(4)形成面をゲル状物質(3)に被覆し、図3に示すように、前記反応性薬剤(2)とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質(3)に文字・絵柄などの染着画像層(5)を形成する工程とから構成されている。
【0012】
次に、図4に示すように、前述の方法で作製した画像層形成フィルムの反応性薬剤(2)とゲルの材質とが反応して染着画像層(5)が形成された後、該画像層形成フィルムをゲル状物質(3)から切り離し、図5に示すように、染着画像層(5)を有するゲル状物質(3)が得られる。
【0013】
次に、本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、各工程における使用材料、加工方法などについて詳細に説明する。
【0014】
先ず、基材フィルム(1)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムである。
【0015】
次に、反応性薬剤(2)は、ゲルの材質によって選択されるが、基本的には高分子結合部位を染色する薬剤ならば特に制約されるものではない。本発明においては、染色安定性、耐水性、耐摩擦性、耐光性、耐薬品性などの堅牢度が要求されるので反応性染料を使用し、印刷用にインキ化して使用する。
【0016】
前記反応性染料は、各種のタイプが使用可能であるが、例えばビニルスルホン系染料、モノクロルトリアジン系染料、ジクロルトリアジン系染料、トリクロルトリアジン系染料、及びクロロピリミジン系染料などの反応性染料が単独で、又は併用して用いることがで
きる。
【0017】
前記反応性染料を使用する場合、印刷インキは通常、ゲル状物質(3)に固着のための塩基性物質を含むものである。反応性染料を固着するために用いられる塩基性物質は、代表的には炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ホウ砂、アンモニウム水、又はトリクロロ酢酸ナトリウム、若しくはギ酸ナトリウムのようなアルカリ供与体である。ケイ酸ナトリウム及び25%炭酸ナトリウム水溶液の混合物もまた、アルカリとして用いることができる。アルカリを含む印刷インキは、通常、7.5〜13.2、好ましくは、8.5〜11.5の範囲のpH値を有している。
【0018】
この他に増粘剤、好ましくは天然の、特にアルギン酸ナトリウムを使用することが好ましい。所望ならば、該印刷インキは、更に、保存剤、金属イオン封鎖剤、乳化剤、水不溶性溶剤、酸化剤、及び脱気剤を含むことができる。
【0019】
次に、前記印刷インキを基材フィルム(1)に印刷する方法は、グラビア印刷方式、シルクスクリーン印刷方式など公知の印刷方式を用いることができる。インキ層の厚さは、必要な染着濃度、堅牢度などを考慮して適宜設定すれば良いが、通常0.1〜10μm(乾燥時)程度が好ましい。
【0020】
次に、図2に示すように、前記基材フィルム(1)の反応性薬剤(2)からなる画像層(4)形成面をゲル状物質(3)に被覆する。引き続いて、図3に示すように、該反応性薬剤(2)とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質(3)に文字・絵柄などの染着画像層(5)を形成する。
【0021】
該反応性薬剤(2)が反応性染料の場合、ゲルの材質との反応を促進し、染着画像層(5)を完全に固着させるために、熱処理を行なうことが好ましい。この熱処理の方法は、接触熱、周囲熱、又は輻射熱が考えられるが、被印刷物がゲル状物質(3)であることを考慮すると、該熱処理は、赤外線輻射、紫外線輻射、又はマイクロ波などの輻射エネルギーを用いることが好ましい。具体的には、連続式では加熱したトンネルの中で行い、バッチ式の場合は、密閉されたオーブン内で行なうことができる。固着温度は90〜150℃、好ましくは、100〜110℃の範囲である。このように熱処理を行なうことで発生する水蒸気により、反応性薬剤(2)である反応性染料のビニルスルホニル基、モノクロロトリアジニル基などの反応基とゲル状物質(3)が有する水酸基、カルボキシル基などとの反応を促進し、前記炭酸ナトリウムなどの塩基性物質がゲル状物質(3)への反応性染料の固着(染着)に寄与する。
【0022】
この熱処理をする際、ゲル状物質(3)を水で湿潤し、水蒸気バリア性、耐水性を有し、且つ反応性染料と化学的に反応しないプラスチック積層フィルムなどで密封して、外部に蒸気が揮発しないようにして、加熱処理し、反応性染料をゲル状物質(3)に固着(染着)する方法でも構わない。尚、湿潤のために用いられる水は、イオン交換樹脂又は蒸留によって精製することができる。また、所望により、湿潤剤又は増粘剤を該水に加えることができる。さらに、該水はアルカリを含むこともできる。アルカリを含む水は、印刷に使用する印刷インキがアルカリを含まず、アルカリが染料を固着するために必要とされる場合に特に用いられる。
【0023】
一般的に、「ゲル」とは、液体の中に固体が分散し、流動性を失った状態のこといい、保水性、薬品保持性、徐放性などの特性を生かした商品が開発されている。前記ゲル状物質(3)は、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマーなどの水溶性高分子とゼラチンなどのゲル化剤で構成されている場合が多い。例えば、風邪などの急な発熱のときにぬれタオルの代用としての発熱用冷却シートや脚の疲れ、打撲や捻挫、歯痛の時などに、そ
の患部に貼り、冷却効果を期待する冷却シートなどは、綿、麻などの天然繊維、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリルなどの合成繊維からなる織布や不織布にゲル状の冷却剤が塗布されているものや、織布や不織布を使用しない粘着タイプのシートなどがあるが、そのゲル状の冷却剤成分は、主に水、グリセリン、ソルビトール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウムなどと防腐剤、清涼剤(メントールなど)などである。このような冷却シートは、ゲル状でたっぷりと含まれた水分が蒸発するときに奪う気化熱で冷却する原理が用いられている。
【0024】
ゲル状物質(3)を構成する水溶性高分子には、天然由来のデンプン、ゼラチン、半合成のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体から、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)などの合成系のものまで多くの種類がある。
【0025】
このように数ある水溶性高分子の中でも、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)は、最もポピュラーで、様々な産業分野で用いられている。天然パルプを原料として、セルロースとカセイソーダ(NaOH)、モノクロル酢酸(ClCH2COOH)を反応させ、セルロースの水酸基(OH基)を部分的にカルボキシメチル基で置換(エーテル化)して得られる、白色〜類白色のアニオン系水溶性高分子粉末である。温水だけでなく冷水にも溶解し、透明無臭な粘稠液になる。安全性が高く、環境や人体への安全性が問われる幅広い用途で使用されている。
【0026】
前記カルボキシメチルセルロース(CMC)の機能としては、増粘性、分散安定性、保水性、乳化安定性、保護コロイド性、接着性、フィルム形成性、ゲル化機能などを有している。
【0027】
次に、ポリアクリル酸系ポリマーは、分子内に多量のカルボキシル基(COOH基)を含むアニオン系高分子で、直鎖状のポリアクリル酸(ナトリウム)の水溶液は、粘稠で粘着力のある曳糸性を有し、架橋型ポリアクリル酸(ナトリウム)の水溶液は、中性域においてチキソトロピック性で曳糸性のないゲルを形成する。各種ポリアクリル酸(ナトリウム)の組合せ、更に架橋剤を併用することで、ゲル強度と粘着力を加味した耐水性のゲルを設計することが可能となる。これらの技術は、医薬品のパップ剤をはじめ、冷却シートやパック剤などの医薬部外品および化粧品の分野で幅広く応用されている。
【0028】
以上のように、ゲル状物質(3)を構成する水溶性高分子には、水酸基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)を有するので前述の反応性薬剤(2)である反応性染料のビニルスルホニル基、モノクロロトリアジニル基などの反応基と化学反応を起こして共有結合のかたちで染色するので染色安定性、耐水性、耐摩擦性、耐光性、耐薬品性などの堅牢度が良好である。
【0029】
次に、前述したゲル状物質(3)を水で湿潤し、水蒸気バリア性、耐水性を有し、且つ反応性染料と化学的に反応しないプラスチック積層フィルムなどで密封して、外部に蒸気が揮発しないようにして、加熱処理し、反応性染料をゲル状物質(3)に固着(染着)する方法において用いられる前記プラスチック積層フィルムについて詳しく説明する。
【0030】
該プラスチック積層フィルムは、基材フィルムとシーラントフィルムから構成される。先ず、基材フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロ
ン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムが使用できる。
【0031】
次に、シーラントフィルムには、シール性のあるフィルムならば、特に制約されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、環状ポリオレフィンなどを使用することができる。
【0032】
次に、基材フィルムとシーラントフィルムを積層するラミネーション方法は、例えばドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、ホットメルトラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を適宜使用することができる。
【0033】
先ず、前記ドライラミネーション方法は、接着剤を介して、一方の基材フィルムと、他方のシーラントフィルムとをラミネーションする方法で、コーティング部、乾燥装置、ニップローラー部の3つのセクションと、巻き出し、巻き取り、及びテンションコントロールシステムから構成されている。
【0034】
該コーティング部は、一般的にグラビアロールコーティング方式、又はリバースロールコーティング方式を採用している。
【0035】
該ドライラミネーション方法に使用する接着剤は、一般的に、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのラミネート用接着剤を使用することができる。
【0036】
前記ラミネーション用接着剤は、溶剤型接着剤、或いは無溶剤型接着剤が使用されるが、無溶剤型接着剤を使用する場合は、乾燥装置は不要であり、特に、ノンソルベントドライラミネーション方法と呼んでいる。
【0037】
前記ホットメルトラミネーション方法は、加熱溶融したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ワックス、粘着付与剤などからなるホットメルト接着剤を介して、一方の基材フィルムと、他方のシーラントフィルムとを、直ちにラミネーションする方法である。
【0038】
前記エクストルージョンラミネーション方法は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)などの熱可塑性樹脂を加熱し、シリンダーと呼ばれる筒の中で溶解し、スクリューで圧力をかけて押し出し、該シリンダーの先端部にあるTダイスと呼ばれる、細いスリットからカーテン状に溶解した該熱可塑性樹脂を押し出してフィルム状にした後、基材フィルムにダイレクトにラミネーションする方法である。
【0039】
この際、該エクストルージョンラミネーション方法を利用して、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)などの熱可塑性樹脂を接着剤にして、一方の基材フィルムと他方のシーラントフィルムとをラミネーションするサンドイッチラミネーション方法を使用することもできる。
【0040】
尚、より一層の水蒸気バリア性が必要な場合は、前記プラスチック積層フィルムを構成する基材フィルムが、支持体フィルムに塩化ビニリデンをコーティングしたKコートフィルム(例えば、KOP、KPET、KNy、K−セロハンなど)、またはアルミニウム箔積層フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、及び無機酸化物蒸着フィルムなどのようなバ
リアフィルムで構成されていることが好ましい。
【0041】
これらの中でも、使用後の廃棄処分も容易な酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物を蒸着した無機酸化物蒸着フィルムを用いることがより好ましい。
【0042】
前記無機酸化物蒸着フィルムの支持体フィルムは、特に制約はされないが、加工適性などを考慮して、単体フィルム及び各種の積層フィルムを使用することができる。
【0043】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムである。
【0044】
これらの中でも、特に、強度、コストなどの面から、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を使用することが好ましい。
【0045】
次に、該無機酸化物の蒸着薄膜としては、基本的には金属の酸化物を使用することが可能であり、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物またはそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
一般的には、透明性、物性面、生産性などから、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムを使用することが好ましい。
【0047】
このような無機酸化物の蒸着薄膜を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法などを使用することができるが、生産性、生産コスト面などを考慮すると、真空蒸着法が好ましい。
【0048】
前記真空蒸着法は、被蒸着体の形態から、大別して3つの方式があり、1)バッチ方式:成形品の蒸着方式、2)巻き取り式半連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象で真空系の中で巻き出し・蒸着・巻き取り後、大気系に再度戻し、蒸着製品を取り出す方式、3)巻き取り式完全連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象でアンワインダー(巻き出し装置)とリワインダー(巻き取り装置)を大気系に配置し、蒸着ドラムや蒸発源を真空系に配置してロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する方式であって、一般的にair−to−air方式と呼ばれる完全連続方式で生産性が高い特徴がある方式である。
【0049】
ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する場合は、特に巻き取り式半連続方式が普及しており、その巻き取り式真空蒸着装置の構成要素と作業工程の概略、更に真空蒸着装置の内部構造について記述する。
【0050】
先ず、構成要素は、ロール状フィルム(ウェブ)、蒸発源、蒸発物質、蒸着ドラム、真空系統、アンワインダー(巻き出し装置)、リワインダー(巻き取り装置)、ガイドロール等である。
【0051】
次に作業工程の概略について記述すると、先ず前準備として真空蒸着装置の扉を開け、ロール状フィルム(ウェブ)をアンワインダー(巻き出し装置)にセットし、アンワインダーと蒸着ドラム間に配置されているガイドロールを介して、前記ロール状フィルム(ウェブ)を蒸着ドラムまで走行させ、更にリワインダー(巻き取り装置)との間に配置され
ているガイドロールを介して、リワインダー(巻き取り装置)に巻き取り、前記ロール状フィルム(ウェブ)への蒸発物質の蒸着準備が終了する。
【0052】
次に、真空蒸着装置の扉を閉じて、真空ポンプにより、真空蒸着装置内の真空吸引定圧室と隔壁により分割された真空蒸着室を所定の真空環境にして、アンワインダー(巻き出し装置)から前記ロール状フィルム(ウェブ)を繰り出し、ガイドロールを介して走行させた前記ロール状フィルム(ウェブ)に、蒸着ドラムの下部に配置されている蒸発源から蒸発物質を加熱蒸発させて前記ロール状フィルム(ウェブ)に蒸着させる。
【0053】
前記蒸着ドラムは冷却されているので前記ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を再結晶化させて固着させ、更にリワインダー側のガイドロールを介して蒸着された前記ロール状フィルム(ウェブ)はリワインダーに巻き取られる。
【0054】
真空蒸着装置の内部構造は、真空吸引定圧室と真空蒸着室に隔壁で分割されており、真空吸引定圧室はアンワインダー、ガイドロール、張力制御装置、速度制御装置、位置制御装置、蒸着ドラムの一部、リワインダー等が配置されている。
【0055】
真空蒸着室は蒸着ドラムの一部と蒸発源とその加熱装置等が配置されており、真空蒸着装置本体の周辺に付属して配置されている真空ポンプにより、真空吸引定圧室は真空度が1×100MPa程度、隔壁を介して設けた真空蒸着室は1×10-2MPa(SI単位)程度にセットされる。
【0056】
2つに室が隔壁で分割されているので、真空吸引定圧室で前記ロール状フィルム(ウェブ)から発生したガスなどの不純物(ダスト)は、真空蒸着室での蒸着時に悪い影響を与えることは少ない。
【0057】
また、逆に真空蒸着室に配置されている蒸発源からの放射熱は、真空吸引定圧室への影響は少ないので前記ロール状フィルム(ウェブ)への熱の影響は少ない。
【0058】
真空蒸着法も、加熱方法により、1)間接抵抗法、2)直接抵抗加熱法(ワイヤフィード法)、3)高周波誘導加熱法、4)電子ビーム法(Electoron Beam、略してEB法)の4つの方法があるが、蒸発物質が酸化珪素や酸化アルミニウム等の絶縁性金属酸化物を使用する場合は、エネルギー変換効率の良い電子ビーム法が最適である。
【0059】
巻き取り式電子ビーム真空蒸着法は、酸化珪素や酸化アルミニウム等の蒸発物質に直接、電子ビームを照射し、該蒸発物質表面上をスキャンすることで、該蒸発物質表面を加熱する方法で、電子ビームがあたった部分でエネルギーを変換し、該蒸発物質を蒸発させる方法である。
【0060】
該蒸着薄膜の厚さは、蒸着フィルムの最終用途によって、適宜選択されるが、5〜400nmの範囲内であることが好ましい。
【0061】
該蒸着薄膜の膜厚が5nm未満では均一な膜が設けられないので、十分な水蒸気バリア性が得られず、膜厚が400nmを越えると、柔軟性がなくなり、折り曲げ、引張りなどの外的要因により、蒸着薄膜に亀裂や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。
【0062】
以上のように、本発明に係るゲル状物質への印刷方法は、少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、塗布工程は、基材フィルム(1)の片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤(2)を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層(4)を形成する工程であり、反応工程は、塗布工程後、前記基材
フィルム(1)の画像層(4)形成面をゲル状物質(3)に被覆し、前記反応性薬剤(2)とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質(3)に文字・絵柄などの染着画像層(5)を形成する工程であり、前記反応性薬剤(2)が反応性染料であること、及び前記ゲル状物質(3)が少なくとも、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマーなどの水溶性高分子とゼラチンなどのゲル化剤で構成されていることにより、容易に良好な物性と印刷品質が得られるものである。
【実施例】
【0063】
以下に、本発明に係るゲル状物質への印刷方法について、具体的に実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではなくもっと広範囲に適用されるものである。
【0064】
<実施例1>
先ず、基材フィルム(1)として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を使用し、該PET面にビニルスルホン系反応性染料と25%炭酸ナトリウム及び6%アルギン酸ナトリウム溶液を調合してなる印刷インキを用いて花柄の画像層(4)をフラットベット型シルクスクリーン印刷方式で印刷し、20×20cm角の枚葉状の印刷物を作製した。
【0065】
引き続いて、得られた前記印刷物の画像層(4)面をポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布に水、グリセリン、ソルビトール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム、防腐剤、清涼剤からなるゲル状の冷却剤が塗布された冷却シートに被覆した状態のまま、105℃の熱風オーブンの中で8分間、熱処理を行なった後、該オーブンから取り出して、印刷物と冷却シートを剥離したところ、該印刷物の画像層(4)である花柄が綺麗に冷却シートに染着していた。印刷濃度、印刷堅牢度共、良好であった。
【0066】
<実施例2>
実施例1において、印刷物を冷却シートに被覆した状態のまま、さらに厚さ12μmのPETフィルムと厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムを積層してなる積層フィルムの包装袋に密封してから電子レンジ内で熱処理した以外は、実施例1と同様にして冷却シートに該印刷物の画像層(4)である花柄を染着したところ、印刷濃度、印刷堅牢度共、非常に良好であった。
【0067】
<実施例3>
実施例1において、印刷物を冷却シートに被覆した状態のまま、さらに厚さ12μmのPETフィルムに膜厚30nmの酸化アルミニウム蒸着薄膜を積層したフィルムと厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムを積層してなる積層フィルムの包装袋に密封してから電子レンジ内で熱処理した以外は、実施例1と同様にして冷却シートに該印刷物の画像層(4)である花柄を染着したところ、印刷濃度、印刷堅牢度共、非常に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、基材フィルムに反応性薬剤を塗布して、画像層を形成した状態の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムをゲル状物質に被覆した状態の1実施例を示す側断面図である。
【図3】本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムの反応性薬剤とゲルの材質とが反応して染着画像層が形成された状態の1実施例を示す側断面図である。
【図4】本発明に係るゲル状物質への印刷方法において、画像層形成フィルムをゲル状物質から切り離した状態の1実施例を示す側断面図である。
【図5】本発明に係るゲル状物質への印刷方法によって得られた染着画像層を有するゲル状物質の1実施例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・基材フィルム
2・・・反応性薬剤
3・・・ゲル状物質
4・・・画像層
5・・・染着画像層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、塗布工程と、反応工程とを有するゲル状物質への印刷方法であって、塗布工程は、基材フィルムの片面にゲルの材質と反応して発色する反応性薬剤を用いて、印刷機などにより、文字・絵柄などの画像層を形成する工程であり、反応工程は、塗布工程後、前記基材フィルムの画像層形成面をゲル状物質に被覆し、前記反応性薬剤とゲルの材質とを反応させ、該ゲル状物質に文字・絵柄などの染着画像層を形成する工程であることを特徴とするゲル状物質への印刷方法。
【請求項2】
前記反応性薬剤が反応性染料であることを特徴とする請求項1記載のゲル状物質への印刷方法。
【請求項3】
前記ゲル状物質が少なくとも、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマーなどの水溶性高分子とゼラチンなどのゲル化剤で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のゲル状物質への印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−341431(P2006−341431A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167933(P2005−167933)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】