説明

ゲル芳香剤

【課題】 界面活性剤を使わずに、残渣の量を少なくする。また、香り質と香りの強さが持続させる。
【解決手段】 界面活性剤を含まず水と水溶性ゲル化剤から成るゲル1と、比重1以上に比重調整されて前記ゲル中に分散された揮発性物質2とを含有するものである。このゲル芳香剤は、水と水溶性ゲル化剤とを溶解させて攪拌しゲルベースを調製し、該ゲルベースを攪拌しながら該ゲルベース中に揮発性物質を滴下し、より好ましくは揮発性物質をゲルベース中に添加する前に0℃以下に冷却して滴下し、揮発性物質をゲル中に液滴状で分散させてから固化させるようにして製造することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル芳香剤に関する。更に詳述すると、本発明は例えばジェランゲルのような水溶性ゲルに香料などの揮発性物質を分散させた芳香剤の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲル芳香剤としては、カラギーナンや寒天ゲルなどの天然高分子化合物をゲル化剤とした水溶性ゲル、脂肪酸石けんまたはジベンジリデンソルビトールをゲル化剤として使用した油溶性ゲルが一般に知られている。これら天然高分子化合物や合成高分子化合物をゲル化剤とするゲル芳香剤は、多くの場合には不透明であったりあるいは半透明である。
【0003】
また、近年の透明で美麗な外観を好む消費者指向に応えるべく、ジェランガムと呼ばれるゲル化剤を用いたジェランゲル(特開昭64−74239号)や、カラギーナンまたは寒天などのゲル化剤に特定の界面活性剤を特定の量だけ用いて透明ヒドロゲル芳香剤としたもの(特開昭60−135058号、特開昭62−41661号)などが提案されている。
【0004】
いずれのゲル芳香剤も、ゲルそのものに香料を乳化或いは可溶化したものであり、ゲル化する際に水と香料・オイルとが分離するのを防ぐため、界面活性剤の使用が必須である。一方、この界面活性剤は香料などの揮発蒸散を阻害すると共に蒸散せずに全量が残渣となる。そのためできる限り使用量を少なくするように必要最小限に抑える処方設計がなされているが、現状では商品の安定性を重視するためにやや過量に使用されていることが多い。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−74239号
【特許文献2】特開昭62−41661号
【特許文献3】特開昭60−135058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
更に、界面活性剤は蒸散しないことから全てが必ず残渣として大量に残るため、エンドポイントが不明瞭となる問題を有している。すなわち、芳香剤として全くあるいは十分に機能しなくなっているにもかかわらず、まだ使用できるものとの錯覚を消費者に与えてしまう問題がある。
【0007】
また、界面活性剤の使用は香料などの揮発性物質の揮発・蒸散を阻害するために匂い立ちが悪くかつナチュラルな良い香りが得られないという問題を伴う。しかも、界面活性剤が香料の放出を変化させるので、意図通りの香りとならず、創香時の香りとの間に大きなギャップが生じる。他方、界面活性剤の使用量を少なくして乳化させるタイプの場合には、透明タイプのヒドロゲル芳香剤よりも残渣の量を少なくはできるが、それでも界面活性剤の残渣や影響を無くすことはできず、初期の匂い立ちは強いが直ぐに香りが弱くなる問題を有している。また、界面活性剤によって揮発性物質そのものも完全に放出されずに残渣の一部となるため、蒸散後の残渣を多くしてしまう問題を有している。
【0008】
本発明は、界面活性剤を使用しないゲル状芳香剤並びにその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、香りの質と香りの強さが一定するゲル芳香剤並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明のゲル芳香剤は、界面活性剤を含まず水と水溶性ゲル化剤から成るゲルと、比重1以上に比重調整されて前記ゲル中に分散された揮発性物質とを含有するものである。このゲル芳香剤によると、界面活性剤がゲル中に一切含まれていないので、揮発性物質の揮発・蒸散が阻害されることがなく揮発性物質の放出が良好なものとなる。そして、ゲル表面に露出した揮発性物質の粒から、あるいはゲルに揮発性物質が染みこんでゲル表面から揮発性物質が順次揮発・蒸散するので、使い始めから終わりまで揮発性物質の揮発・蒸散が終止安定したものとなる。つまり、香料のような揮発性物質の場合には、香りの質と香りの強さが一定する。さらに、界面活性剤が含まれないため、揮発性物質の揮発・蒸散後の残渣が非常に少なくなる。
【0010】
また、本発明は、請求項1記載のゲル芳香剤において、揮発性物質は液滴状にして分散されているものである。この場合には、透明ゲルの中に揮発性物質が浮かんだ状態で分散するため、視覚的にも美麗な外観を呈することができる。香料成分はゲルそのものには含まれず、ゲル中に液滴状に分散させて混合されている。
【0011】
また、本発明は、請求項1又は2記載のゲル芳香剤において、揮発性物質の比重調整を行う比重調整剤としてそれ自体の比重が1以上である香料成分を用いたものであり、好ましくはベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエートを用いたものである。
【0012】
また、本発明のゲル芳香剤の製造方法は、水と水溶性ゲル化剤とを溶解させて攪拌しゲルベースを調製し、該ゲルベースを攪拌しながら該ゲルベース中に揮発性物質を滴下し、前記揮発性物質をゲル中に液滴状で分散させてから固化させるようにしている。したがって、比重1以上に比重調整された揮発性物質が攪拌によってゲルベース中において浮遊している状態でゲル化が進行して、ゲル中に揮発性物質が分散した状態でゲルベースが固化して揮発性物質をゲル内にとじ込めることができる。
【0013】
このとき、揮発性物質は添加される前に0℃以下に冷却されていることが好ましく、さらに好ましくは、−5〜−18℃であり、特に好ましくは−12〜−17℃に冷却されていることである。この場合には、揮発性物質がゲルベースに滴下されると同時に揮発性物質の周りのゲルベースが急冷されて部分的にゲルと成るため、(揮発性物質が小さな粒に砕けたり一部が揮散することがなく)揮発性物質の粒がゲルで覆われた状態でゲルベースの中で浮遊するので、分散がより良好に行われ、ゲルの透明性が確保される。
【発明の効果】
【0014】
しかして、本発明のゲル芳香剤によると、揮発性物質の揮発・蒸散が阻害されることがないので揮発性物質の放出・蒸散が良好である。しかも、ゲル表面に露出した揮発性物質の粒から、あるいはゲルに揮発性物質が染みこんでゲル表面から順に蒸散するので、使い始めから終わりまで終始揮発性物質の蒸散が安定する。したがって、香料のような揮発性物質の場合には、香りの質と強さを一定に保つことができ、香質(香りの質)と力価(匂いの強さ)を両立させた、持続性に優れたゲル芳香組成物を提供できる。即ち、使用開始と共に香りの強さが低下することを見越した工夫(意図的に香りの強い香料素材を追加する)をする必要ないので、香料の匂い立ちが良くナチュラルな良い香りが得られる。
【0015】
更に、本発明のゲル芳香剤によると、界面活性剤を一切使用していないので、揮発性物質・香料の揮発・蒸散後の残渣が非常に少なく、芳香剤としてのエンドポイント(寿命)が明瞭となり、芳香成分が残っていないにもかかわらずまだ使えると需用者に錯覚を与えることが少ない。
【0016】
また、本発明は、請求項2記載のゲル芳香剤によると、揮発性物質は液滴状にして分散されているので、透明ゲルの中に揮発性物質が浮かんだ状態で分散するため、視覚的にも美麗な外観を呈することができる。
【0017】
また、本発明のゲル芳香剤の製造方法によると、界面活性剤を一切使用しなくとも、ゲル中に揮発性物質が分散した状態でゲルベースを固化させて揮発性物質をゲル内にとじ込めることができるので、より透明で美しいゲル芳香剤を実現できる。
【0018】
更に、このゲル芳香剤の製造方法において、揮発性物質を添加する前に0℃以下に冷却した場合には、揮発性物質がゲルベースに滴下されると同時に揮発性物質の周りのゲルベースが急冷されて部分的にゲルと成るため、揮発性物質が小さな粒に砕けたり一部が揮発・揮散することがなく揮発性物質の粒がゲルで覆われた状態でゲルベースの中で浮遊するので、分散がより良好に行われ、より透明なゲル芳香剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のゲル芳香剤は、界面活性剤を一切使用しないゲル芳香剤であることを特徴とする。このようなゲル芳香剤は液滴としてゲル中に分散した状態で揮発性物質を共存させている。より具体的には、界面活性剤を含まず水と水溶性ゲル化剤から成るゲルと、比重1以上に比重調整されてゲル中に分散された揮発性物質とを含むゲル芳香剤である。
【0020】
本発明において、水溶性ゲル化剤としては、ゲル状組成物で一般的に使用されるものの中で透明で、しかも経時的に着色しないゲルとなるものすべてが用いられる。例えば、ジェランガムやカラギーナン、寒天などが用いられ、中でもジェランガムのような熱可逆性のゲル化剤の使用が揮発性物質の良好な分散を得る上で好ましい。ここで、ゲル化剤の使用量としては特に制限はないが、0.1〜1.5%、好ましくは0.3〜0.8重量%である。少ないと安定性(熱、光虐待下)に問題(ゲル破壊)があり、多すぎると仕上がり(離水が多い、透明度が低下、香りが弱くなる、残渣が増える)が悪くなる。
【0021】
また、塩類との組み合わせでゲル強度を調整することができる。特にカルシウム塩水溶液はジェランゲルを非可逆性にするために添加するもので、その量はジェランゲル0.3〜0.8重量%の時に1%塩化カルシウム水溶液として2〜4%添加することが好ましい。他のカルシウム塩(乳酸カルシウム)を使用することも可能である。
【0022】
尚、このゲルベースには、界面活性剤を除いて、必要に応じて添加される物質、例えば防腐剤や着色剤などが使用されることに制限はない。ゲルを着色するには水溶性染料の使用がこのましい。更に、他に消臭剤、抗酸化剤などの機能性原料の添加が必要に応じて行われる。
【0023】
揮発性物質としては、各種の香料、精油及びこれらの組成物を構成する各成分のほか、揮発して芳香を発するもの、消臭作用のあるもの、抗菌・抗カビ作用のあるものなどが添加可能であり、特に制限はない。尚、揮発性物質の素材としての制限はないが、水に溶け易い素材(例えば軽いエステル、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、軽いアルデヒド)の添加は、液滴状にしてゲル中に分散させるにはあまり入れない方が好ましい。また、シトラスの主成分であるテルペン類は比重が比較的軽いので比重を1以上にすることは難しいが、大量の比重調整剤で比重を調整し、製法時の攪拌条件を工夫することにより対応が可能である。これら揮発性物質は、ゲル中に分散された状態で保たれ、時間の経過と共にゲルの表面に露出しあるいはゲル中に浸出してゲル表面から徐々に揮発・蒸散される。また、ゲルは揮発性物質並びに水分の揮発・蒸散により、その体積は徐々に小さくなる。
【0024】
揮発性物質としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、リモネン、1、8−シネオールなどのテルペン系炭化水素、アミルアセテート、アミルプロピオネート、プレニルアセテート、ヘキシルアセテート、シス−3−ヘキシルアセテート、アリルカプロエート、テトラヒドロリナリルアセテート、エチルカプロエート、エチルブチレート、エチルアセトアセテート、アリルイソアミルオキシアセテートなどのエステル類、炭素数6〜13の脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、2、4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒドのようなアルデヒド類、レモン油、オレンジ油、ライム油、ユーカリ油、ヒノキ油、ヒバ油、パイン油、ベルガモット油、ペパーミント油、テレピン油、ホー油、ラベンダー油、ジャスミン油、バニラなどの精油を挙げることができる。また、ローズ、スイトピー、キンモクセイ、レモン、ライム、ジャスミン、ハーブ、アップル、ミント、森の香り、こちょうらんなどの香料を挙げることができる。また、ペパーミント白油、ベルガモット油、レモン油、ジャスミン油、オレンジ油などの精油や香料とこれらの構成成分を挙げることができる。ここで、揮発性物質の素材の選択は必要とする香りの種類や質、用途などで適宜選択されるものであるが、好ましくは比重が1により近いものの使用である。比重が1近くの揮発性物質であれば、比重調整剤の使用量が少なくて済み、添加しようとする香料成分などの揮発性物質の添加割合を少なくすることがない。
【0025】
揮発性物質の配合量は、必要に応じて適宜選定されるが、ゲル組成物の0.1〜10重量%、好ましくは2.0〜6.0重量%である。0.1重量%未満では、揮発性物質の揮発が十分に行われず、満足する結果を得ることができない。また、10重量%を越えると、ゲル強度低下の原因となるので、好ましくない。
【0026】
尚、これら揮発性物質の着色には染料や顔料などが使用される。例えば、香料を着色するには油性染料及び顔料の使用が好ましい。また、香料の着色防止、色素の退色防止に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
【0027】
比重調整剤は、揮発性物質あるいは該揮発性物質を含む添加剤をゲルベースに添加して固める際に、ゲルベース中に浮遊する状態で分散しうるように、比重を1以上、好ましくはほぼ1となるように調整するものである。この比重調整剤の素材としての制限はないが、使用しようとする揮発性物質に化学的に影響を与えないものの使用が好ましい。また、例えば多価アルコール類などに代表されるような水に馴染み易い素材はゲル中に移行しやすく、揮発性物質の乳化・可溶化に補助的に働くことがあるので例えば、香料の比重調整を行う比重調整剤としては、香料成分を用いたものであることが好ましい。一般的に使用されている香料の場合には、比重が1以下のものがほとんどであるので、比重調整剤としては比重1以上の香料成分、例えばベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエートなどの使用が好ましい。これら香料成分は殆ど匂いがないことから、比重調整以外の機能はなく香りの質に影響を与えることはない。また、揮発性物質が揮発して芳香を発することを目的としないものの場合、例えば消臭作用のあるもの、抗菌・抗カビ作用のあるものなどの場合には、比重調整剤そのものに殆ど匂いがない素材が好ましい。
【0028】
本発明の透明ゲル状芳香剤組成物には、上記成分以外にも消臭剤、抗カビ剤、抗菌剤、香料揮散助剤などを添加することができる。この他にも酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、消臭成分なども透明性を阻害しない程度使用することができる。具体例としては酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、防腐剤としてメチルパラベンゾール、塩化ベンザルコニウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、キレート剤としてEDTA、クエン酸、増粘安定剤として消臭成分としてリンゴ酸、植物抽出物などをあげることができる。
【0029】
本発明の透明ゲル状芳香剤組成物を製造するには、上述のゲル化剤および必要により所要の添加成分を水に均一に加熱溶解させてゲルベースを調製したあと、このゲルベースを攪拌しながら香料などの揮発性物質を滴下し、揮発性物質をゲル中に粒状で分散させながら放冷することによって固め、ゲル化が行われる。このとき、比重1以上好ましくはほぼ1に比重調整された揮発性物質は、攪拌によってゲルベース中において浮遊している状態を保つことができるので、ゲル中に揮発性物質が分散した状態でゲルベースのゲル化が進行して固まる。したがって、界面活性剤を使用しなくとも、水とゲル化剤とで形成されたゲル中に揮発性物質たる香料成分はゲルそのものには含まれず、ゲル中に液滴状に分散された状態で透明ゲル芳香剤が製造される。
【0030】
ここで、揮発成分をゲルベースに添加する前に十分低温に例えばゲルベース固化温度以下に冷却しておくことが好ましい。このように、揮発性物質例えば香料を0℃以下に冷却しておれば、揮発性物質の周りだけが急冷されてゲル化が進行し、揮発性物質がゲルで覆われることになるため、揮発性物質たる香料が液滴状を保持したままゲルベース中に分散される。そこで、ゲルベースが攪拌されながら放置・冷却される間も、揮発性物質がゲルに保護されて小さな粒に砕けたり一部が揮散することがなく、分散がより良好に行われるのでゲルの透明性が確保される。
【0031】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施が可能である。例えば、本実施形態では、ジェランガムをゲル化剤として使用する透明ゲル芳香剤の例を最も好適な例に挙げて主に説明しているが、その他のゲル化剤を使用しても界面活性剤を用いずにゲル芳香剤を調製することはできる。例えば、カラギーナンゲルは熱可逆性ゲルであるが、製造時の温度コントロール(すなわち液滴が均一分散している状態を保つ状態を維持)できれば本発明のゲル芳香剤の製剤は可能である。また、カラギーナンゲルを使用する場合には、その粘度の調整はローカストビーンガムの添加により行われるが、これは入れても入れなくても良い。
【0032】
また、本実施形態では、香料や精油成分等の揮発性物質はゲル中に直接添加して液滴状にして分散させているが、場合によっては一部の成分あるいは1種及び/又は2種以上の物質をマイクロカプセル化して分散させるようにしても良い。マイクロカプセル化した状態で香料や精油等を配合すると、液滴状に分散されている揮発性物質よりも遅れて芳香を発するようになるため香りの持続性を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0033】
(ジェランゲルベースの調製)
メチルパラベン0.1重量部、ジェランゲル(ケルコゲル:ケルコ社製)0.6重量部を85.3重量部の精製水に分散させて、95℃の温浴槽にて攪拌しながら完全に溶解させる。完全に溶解したことを確認したら攪拌状態のまま温度を60〜65℃に下げ、予め調製したおいた1w/w%塩化カルシウム水溶液4重量部を少しずつ添加して均一に混合したものをジェランゲルベースとした。(処方トータル:90.0重量部)
【0034】
(カラギーナンゲルベースの調整)
メチルパラベン0.1重量部、カラギーナンFR-6215(新田ゼラチン社製)1.5重量部、ローカストビーンガム(粘度調製剤)0.3重量部をプロピレングリコール3重量部に分散させる。次いで83.1重量部の精製水を加えて分散させて、80〜90℃の温浴槽にて攪拌しながら完全に溶解させる。完全に溶解したことを確認したら攪拌状態のまま温度を60〜65℃に下げカラギーナンベースとした。(処方トータル:88.0重量部)
【0035】
(香料製剤ベースの調製)
香料(フローラル調合香料:小川香料社製)2重量部、ベンジルサリシレート0.698重量部(比重調整剤)、油性染料0.002重量部、紫外線吸収剤0.2重量部を混合し均一に溶解して比重が1.004以上の香料製剤ベースとした。(処方トータル:2.9重量部)
香料(フローラルベース)処方
ジャスミンベース 50
ガラクソライド 50 BB 100
ヘディオン(フィルメニッヒ社製) 100
リナロール 100
リリアル(ジボダン社製) 50
フェニルエチルアルコール 50
α−ダマスコン 1
シトロネロール 20
ジヒドロミルセノール 100
ミュゲベース 80
ラベンダーオイル 30
レモンオイル 20
ベンジルサリシレート 349

トータル 1000
【0036】
(マイクロカプセルの調整)
上記フローラル調合香料を用いてコアセルベーション法にて直径1〜1.5mmのゼラチンマイクロカプセルを調整した。
【0037】
以下の表1並びに表2にゲルベースの処方並びに香料製剤ベースの処方を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
実施例1
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しながら精製水7.1重量部を部分的にゲル化しないように少しずつ添加する。次いで香料製剤ベースをジェランゲルベース中に少しずつ添加して、直径1〜3mm程度の液滴が均一分散する程度の回転速度にスターラーを調製する。デジタル温度計をセットしゲルの温度が30℃±2℃になるまでそのまま攪拌しながら放置する。温度が30℃±2℃になったら一旦攪拌を止め液滴の沈降状態を確認し、液滴全体が浮遊するまでその攪拌操作を続ける。
完全に油滴が浮遊したら直ちに容器に充填し香料(液滴)が均一浮遊した透明ゲル状芳香組成物1を得た。
【0041】
実施例2
1w/w%塩化カルシウム水溶液を1w/w%乳酸カルシウム水溶液に変更したジェランゲルベースとベンジルサリシレートをベンジルベンゾエートに変更した香料製剤ベースを使用して実施例1と同様の操作により香料(液滴)が均一浮遊した透明ゲル状組成物2を得た。
【0042】
実施例3
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しながら精製水7.1重量部を部分的にゲル化しないように少しずつ添加する。次いで予め−15℃±2℃以下に冷却した香料製剤ベースをジェランゲルベース中に少しずつ添加して、液滴が均一分散する程度の回転速度にスターラーを調製する。デジタル温度計をセットしゲルの温度が30℃±2℃になるまでそのまま攪拌しながら放置する。温度が30℃±2℃になったら一旦攪拌を止め液滴の沈降状態を確認し、液滴全体が浮遊するまでその攪拌操作を続ける。
完全に油滴が浮遊したら直ちに容器に充填し実施例1よりも香料(液滴)が大きく均一浮遊した透明ゲル状芳香組成物3を得た。
【0043】
比較例1
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しておく。予め香料製剤ベース2.9重量部にニッコールHCO−60(日光ケミカルズ社製界面活性剤)4.0重量部及びニッコールTL−10(日光ケミカルズ社製界面活性剤)1.0重量部、エタノール2.1重量部を加えてよく攪拌して完全に可溶化させ、先のジェランゲルベース中に少しずつ添加して、均一に攪拌した後容器に充填し透明のゲル状芳香組成物4を得た。
【0044】
比較例2
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しておく。予め香料製剤ベース2.9重量部にニッコールHCO−60(日光ケミカルズ社製界面活性剤)を0.1重量部、5%の濃度に調整したPVA205(クラレ社製)水溶液7.0重量部を加えてよく攪拌して完全に乳化させ、先のジェランゲルベース中に少しずつ添加して、均一に攪拌した後容器に充填し乳白のゲル状芳香組成物5を得た。
【0045】
比較例3
先に調製したカラギーナンゲルベース88.0重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しておく。予め香料製剤ベース2.9重量部にニッコールHCO−60(日光ケミカルズ社製界面活性剤)を0.1重量部、5%の濃度に調整したPVA205(クラレ社製)水溶液9.0重量部を加えてよく攪拌して完全に乳化させ、先のカラギーナンゲルベース中に少しずつ添加して、均一に攪拌した後容器に充填し乳白のゲル状芳香組成物6を得た。
【0046】
比較例4
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しておく。予め香料製剤ベース2.9重量部にニッコールHCO−60(日光ケミカルズ社製界面活性剤)4.0重量部及びニッコールTL−10(日光ケミカルズ社製界面活性剤)1.0重量部、エタノール2.1重量部を加えてよく攪拌して完全に可溶化させ、先のジェランゲルベース中に少しずつ添加する。更にフローラル調合香料を含んだマイクロカプセル1.0gを加えて攪拌デジタル温度計をセットしゲルの温度が30℃±2℃になるまでそのまま攪拌しながら放置する。
温度が30℃±2℃になったら一旦攪拌を止めマイクロカプセルの沈降状態を確認し、油滴全体が浮遊するまでその操作を続ける。
完全にマイクロカプセルが浮遊したら直ちに60℃の温浴で加温しながら攪拌を続けゲル化進行を停止させ、容器に充填しマイクロカプセルが均一浮遊した透明ゲル状芳香組成物7を得た。
【0047】
比較例5
先に調製したジェランゲルベース90重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しながら精製水7.1重量部を部分的にゲル化しないように少しずつ添加する。次いでフローラル調合香料を含んだマイクロカプセル1.0gを加えて比較例4と同様の操作によりマイクロカプセルが均一浮遊した透明ゲル状芳香組成物8を得た。
【0048】
比較例6
先に調製したカラギーナンゲルベース88.0重量部をガラスビーカーに入れマグネティックスターラーで攪拌しておく。予め香料製剤ベース2.9重量部にニッコールHCO−60(日光ケミカルズ社製界面活性剤)を5.1重量部及びニッコールTL−10(日光ケミカルズ社製界面活性剤)1.0、エタノール3.0重量部を加えてよく攪拌して完全に可溶化させ、先のカラギーナンゲルベース中に少しずつ添加して、均一に攪拌した後容器に充填し透明のゲル状芳香組成物9を得た。
【0049】
1.官能評価
官能評価ボックス(90cm×90cm×200cm)における空間での香りを評価した。
(評価項目)
官能評価による7段階力価評価
非常に強い(7)〜非常に弱い(1)
(評価者)
小川香料株式会社所属の専門パネラー 6名
(評価サンプル)
実施例1〜3並びに比較例1〜5のゲル状芳香組成物を直径(開口部)10cm、容積100mlのPP製カップに80g充填したもの
(評価方法)
評価サンプルを官能評価ボックスに設置して15分間放置する。その後評価者による7段階力価評価を行った。
【0050】
【表3】

この官能評価結果から、実施例1〜3については、イニシャル時から21日経過時までの間に力価(匂いの強さ)に大きな変化がなく、当初から匂い立ちが強くそれが持続されていることが判明した。これに対し、比較例1並びに2の乳化ゲルについては、初日の力価はむしろ本発明の実施例1並びに2の油滴ゲルよりも強いぐらいであるが、その後力価が弱まり、21日経過時にはほぼ半減している。また、14日経過時には、実施例1並びに2の油滴ゲルに比べて大きく力価の低下が認められる。比較例3の乳化ゲルは14日経過後から急激に力価の低下が見られる。比較例4の透明ゲルに香料とマイクロカプセルを併用したゲルについては、当初の匂い立ちは悪いが(力価が弱い)時間が経過してもその力価は持続することが認められる。またマイクロカプセルにのみ香料を封入した比較例5のゲルの場合には、初日の匂い立ちは非常に悪が、時間の経過とともに、徐々に匂い立ちが悪いながらも、イニシャル時よりは良くなることが認められる。香料をマイクロカプセルに封入するゲルの場合、界面活性剤を使用しなくとも透明ゲルを得ることができるが、マイクロカプセルからの香料揮発・蒸散が比較的遅い事から芳香剤としてはやや不向きである。
【0051】
2.安定性評価
(評価条件)
A.温度安定性:70℃、−15℃恒温槽に7日間静置
B.光安定性:蛍光灯照射下(*1)で21日間静置、
キセノン照射した(*2)で7日間静置
*1 蛍光灯照射条件 3面照射(蛍光灯計15個)下に静置
*2 キセノン照射条件 60,000〜80,000ルクスの光源から10〜20cm離した所に静置
(評価項目)
室温保管品、暗所保管品をスタンダードとした時の外観評価(目視)
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

この安定性評価では、代表的なゲル、即ち実施例1の油滴ゲル、比較例2の乳化ゲル(ジェラン)及び比較例3の乳化ゲル(カラギーナン)について行った。温度虐待評価結果は、本発明の油滴ゲルは70℃並びに−15℃の双方において良好な結果が得られたが、比較例2並びに3の乳化ゲルはいずれか一方の温度条件においてゲル化不良や香料成分の沈殿が起きた。また、光虐待評価については、本発明の油滴ゲルはキセノン照射並びに蛍光灯照射の双方においてほぼ透明度が維持できる良好な結果が得られたが、比較例2並びに3の乳化ゲルはいずれか一方の照射条件において退色と着色が認められた。尚、比較例3〜5の安定性試験は油滴ゲルとほぼ同様の挙動を示した。
【0055】
3.残渣試験
実施例1の油滴ゲル(ゲル状芳香組成物1)、比較例6の透明カラギーナンゲル(非可逆性ゲル:ゲル状芳香組成物9)、比較例1の透明ジェランゲル(可逆性ゲル:ゲル状芳香組成物4)の3点による1ヶ月蒸散時の残渣を比較した。試験は、上記サンプル3点80gを容器に入れて室温、1ヶ月蒸散させた後の残渣を測定した。その結果を表7に示す。この試験結果から、本発明の実施例1にかかるゲル状芳香組成物1が最も残渣が少ないことが明らかとなった。この試験結果は、界面活性剤の使用量が多いほど残渣の量が多いことを示している。また、実施例1の油滴ゲル(ゲル状芳香組成物1)、比較例2の乳化ゲル(ジェラン)及び比較例3の乳化ゲル(カラギーナン)についての香料の総蒸散量とその蒸散量の変化を図2に示す。このことから、油滴ゲルの残渣量が著しく少ないのは界面活性剤の有無が大きく起因していることが明らかであるが乳化安定に使用している原料(PVA205)などの影響も少なからずあることが認められる。
【0056】
【表7】

4.ゲル透明性
実施例1〜3の油滴ゲルにおいては、界面活性剤を使用しなくとも透明ゲルが得られた。一方、比較例1,4及び6のゲルのように大量の界面活性剤を添加したり比較例5のように香料をゲルに入れずにマイクロカプセルに封入して添加する場合には透明ゲルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明にかかるゲル芳香剤の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】ゲル芳香剤の内容物蒸散量変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 ゲル
2 揮発性物質の粒
3 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含まず水と水溶性ゲル化剤から成るゲルと、比重1以上に比重調整されて前記ゲル中に分散された揮発性物質とを含むゲル芳香剤。
【請求項2】
前記揮発性物質は液滴状にして分散されているものである請求項1記載のゲル芳香剤。
【請求項3】
前記揮発性物質の比重調整を行う比重調整剤としてそれ自体の比重が1以上である香料成分を用いたものである請求項1又は2記載のゲル芳香剤。
【請求項4】
前記比重調整剤としての香料成分がベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエートである請求項1又は2記載のゲル芳香剤。
【請求項5】
水と水溶性ゲル化剤とを溶解させて攪拌しゲルベースを調製し、該ゲルベースを攪拌しながら該ゲルベース中に揮発性物質を滴下し、前記揮発性物質をゲル中に液滴状で分散させてから固化させることを特徴とするゲル芳香剤の製造方法。
【請求項6】
前記揮発性物質は前記ゲルベース中に添加される前に0℃以下に冷却されている請求項5記載のゲル芳香剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−14933(P2006−14933A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195558(P2004−195558)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】