説明

ゲージの異なる針カニューレを備えるペンニードルアセンブリ

【課題】患者の体内に注射する細いゲージの針カニューレと、薬物カートリッジまたは他の容器に到達するように提供されたより太いゲージの針カニューレとを使用する。
【解決手段】横断壁を含む本体部分を有するハブと、ハブを注射器に取り付けるためハブの横断壁の近位側に配置された装置と、横断壁から遠位方向へ延び、患者の体内に挿入されるように形成された遠位端で終わり、第1のルーメンが遠位端から近位方向へ延び、第1のゲージを有する第1の針カニューレと、横断壁から近位方向へ延び、遠位端から延び、近位端で終わり、第2のルーメンが近位端から遠位方向へ延びる第2の針カニューレとを備えるペンニードルアセンブリがここに提供される。第1のルーメンと第2のルーメンとは連通し、第2の針カニューレの第2のゲージは、第1のゲージよりも大きな外断面を画定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンニードル(pen needle)アセンブリに関し、より具体的には、注射(injection)用の細いゲージ(gauge)の針を有するペンニードルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ペンニードルアセンブリは先行技術において知られている。ペンニードルアセンブリの一般的な構造は、特定のゲージの1本の針カニューレ(needle cannula)が固定されたハブ(hub)を含む。針カニューレは、ハブから延びる一方の端部であって、注射のために患者の体内に挿入されるように形成された端部を含む。この端部は針カニューレの遠位端を構成する。針カニューレの第2の端部も露出しており、この第2の端部は、注射のあいだ薬物カートリッジまたは他の容器(reservoir)の内容物と連通するために利用される。この端部は針カニューレの近位端を構成する。近位端と遠位端の間には、針カニューレの内部を薬剤が通過するための流路を提供するルーメン(管孔;lumen)が延びている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
針カニューレはさまざまなゲージを有することがあり、そのため外断面(external cross−section)のサイズが異なることがある。ペンニードルアセンブリは一般に、25〜32ゲージの範囲の針カニューレを備える。ゲージ番号は、番号が小さいほど、より横断面が大きい針カニューレを表す。例えば、25ゲージの針カニューレの外断面は、30ゲージの針カニューレの外断面よりも大きい。ゲージの異なる針は、異なる特性(例えばより大きな座屈抵抗性(buckle resistance)、より細い輪郭など)を提供する。針カニューレは一般に、近位端から遠位端まで、全体が単一のゲージを有するように形成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
横断壁を含む本体部分を有するハブと、ハブを注射器に取り付けるための装置であり、ハブの横断壁の近位側に配置された装置と、横断壁から遠位方向へ延びる第1の針カニューレであり、患者の体内に挿入されるように形成された遠位端で終わり、第1のルーメンが遠位端から近位方向へ延び、第1のゲージを有する第1の針カニューレと、横断壁から近位方向へ延びる第2の針カニューレであり、遠位端から延び、近位端で終わり、第2のルーメンが近位端から遠位方向へ延びる第2の針カニューレとを備えるペンニードルアセンブリがここに提供される。第1のルーメンと第2のルーメンとは連通している。さらに、第2の針カニューレは第2のゲージを有し、第2のゲージは、第1のゲージよりも大きな外断面を画定する。有利には、本発明では、ゲージの異なる2本の針カニューレを直列に配置することができる。これによって、患者の体内に注射するより細いゲージの針カニューレと、薬物カートリッジまたは他の容器に到達するように提供されたより太いゲージのより堅い針カニューレとを使用することができる。
【0005】
本明細書で使用されるとき、用語「遠位」およびその派生語は、使用している患者に近づく方向を指す。用語「近位」およびその派生語は、使用している患者から遠ざかる方向を指す。
【0006】
本発明のこれら特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明および添付図面を詳細に検討することによってより完全に理解される。
【発明の効果】
【0007】
患者の体内に注射するより細いゲージの針カニューレと、薬物カートリッジまたは他の容器に到達するように提供されたより太いゲージのより堅い針カニューレとを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に従って形成されたペンニードルアセンブリの透視図である。
【図2】図1の線2−2に沿って切った断面図である。
【図3】図2の部分3の拡大図である。
【図4】本発明の代替実施形態の断面図である。
【図5】図4の実施形態の分解図である。
【図6】注射力(injection force)の比較を示すグラフである。
【図7】非患者側針カニューレの限界座屈力(critical buckling force)の比の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図を参照すると、ペンニードルアセンブリが示されており、そのペンニードルアセンブリは全体が参照符号10で示されている。ペンニードルアセンブリ10は一般に、ハブ12、第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16を含む。ペンニードルアセンブリ10は、医療用注射器と一緒に使用するためのものであり、ペン形注射器と一緒に使用するのに特によく適している。
【0010】
ハブ12は、横断壁20を有する本体部分18を含み、横断壁20からは、スカート(skirt)22が近位方向へ延びている。好ましい一実施形態では、ペンニードルアセンブリ10が、医療用注射器に取外し可能に取り付けられるように形成される。そのために、注射器に取り付けるための要素(feature)24を、ハブ12上、好ましくはスカート22上に配置することができる。要素24は、ねじ山、デテント(detent)、バヨネット型(差し込み型;bayonet−type)ロック要素などの協働機械要素、および/または摩擦係合用のテーパの付いたルアー(Luer)表面などの表面形状を含むことができる。ハブ12は、熱可塑性材料などのポリマー材料から形成することができる。
【0011】
第1の針カニューレ14は、横断壁20から遠位方向へ延び、患者の体内に挿入されるように形成された遠位端26で終わる。第1の針カニューレ14内には、遠位端26から近位方向へ延びる第1のルーメン28が画定されている。
【0012】
第2の針カニューレ16は横断壁20から近位方向へ延び、近位端30で終わる。第2の針カニューレ16内には、近位端30から遠位方向へ延びる第2のルーメン32が画定されている。
【0013】
第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16は、ハブ12に対して、第1のルーメン28と第2のルーメン30とが連通するように固定される。このようにすると、近位端30から遠位端26まで、連続する流路が画定される。第1の針カニューレ14は、患者の体内の所望の深さまで第1の針カニューレ14を注射することを可能にする十分な距離にわたって横断壁20から延びる。第2の針カニューレ16は、ペンニードルアセンブリ10が注射器に取り付けられているときに、近位端30が、容器または薬物カートリッジの内容物と連通することを保証する十分な距離にわたって横断壁20から延びる。ペンニードルアセンブリ10を注射器に取り付けると、それによって、第2の針カニューレ16が、薬物カートリッジまたは容器の密封隔壁(septum)または密封栓に穴をあける。第2の針カニューレ16は、密封隔壁または密封栓を貫通し、近位端30が、薬物カートリッジまたは容器の内容物に到達する十分な長さを有するべきである。
【0014】
第1の針カニューレ14は、第2の針カニューレ16よりも小さな外断面を有するように形成される。そのために、第1の針カニューレ14は、第2の針カニューレ16の第2のゲージとは異なる第1のゲージを有するように形成される。第2のゲージは、第1のゲージよりも大きな外断面を提供するように選択される。この配置では、患者の体内に注射することを意図された第1の針カニューレ14が、第2の針カニューレ16よりも小さな輪郭を有する。同時に、薬物カートリッジまたは容器に到達することが意図された第2の針カニューレ16は、密封栓または密封隔壁によって加えられた力を受けたときに、座屈に対する抵抗性が第1の針カニューレ14よりも大きい、より堅い針構造を提供する。
【0015】
好ましい一実施形態では、第1の針カニューレ14が、31ゲージまたは32ゲージの針である。第1の針カニューレ14が32ゲージの針であるときには、第2の針カニューレ16が25〜31ゲージの範囲にあることが好ましい。あるいは、第1の針カニューレ14が31ゲージの針であるときには、第2の針カニューレ16が25〜30ゲージの範囲にあることが好ましい。通常の壁厚のゲージまたはそれよりも薄い壁厚のゲージ(例えばシンウォール(thin wall)、エクストラシンウォール(extra thin wall)、ウルトラシンウォール(ultra thin wall)、マイクロシンウォール(micro thin wall))を利用することができることに留意されたい。下表は、さまざまな針ゲージの内径および外径を、公称壁厚とともに示した表である。
【0016】
【表1】

【0017】
図6を参照すると、注射力の比較を表すグラフが示されている。このグラフは2本の曲線を含み、一方の曲線は31ゲージのシンウォール針を表し、第2の曲線は32ゲージのシンウォール針を表す。このグラフに示されているように、これらの針サイズは、より太い針ゲージに比べて、大幅に小さな注射力を必要とする。例えば、31ゲージのシンウォール針は、25ゲージのシンウォール針の注射力の53.39%を要し、32ゲージのシンウォール針は、25ゲージのシンウォール針の52.03%を要する。
【0018】
図7を参照すると、限界座屈力の比を示すグラフが示されている。このグラフは2本の曲線を含み、一方の曲線は31ゲージのシンウォール針を表し、第2の曲線は、32ゲージのシンウォール針を表す。このグラフに示されているように、より太いゲージの針は、より細いゲージの針よりも大幅に大きな座屈抵抗性を提供する。例えば、25ゲージのシンウォール針は、32ゲージのシンウォール針の22.7倍の座屈に対する抵抗性を提供し、25ゲージのシンウォール針は、31ゲージのシンウォール針の15.3倍の座屈に対する抵抗性を提供する。
【0019】
本発明により、注射するように意図された針部分と薬物容器またはカートリッジの内容物に到達するように意図された針部分の両方に良好な特性を有利に提供するペンニードルアセンブリ10を提供することができる。第1の針カニューレ14に対してより細いゲージを使用すると、注射力を最小化することができる。また、第2の針カニューレ16に対してより太いゲージを使用すると、より大きな座屈抵抗性を提供することができる。
【0020】
第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16は、知られている任意の方法でハブ12に固定することができる。好ましい一実施形態では、図2および3に示されているように、第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16を横断壁20に直接に固定することができる。このような固定を容易にするため、横断壁20から縦方向に延び、内部にチャネル(channel)36が画定されたカラー(collar)34を設けることができる。このチャネル36の中に、第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16を、好ましくは接着剤38によって固定することができる。インサート成形(insert molding)を含む他の固定方法を使用してもよい。
【0021】
第2の針カニューレ16が第1の針カニューレ14よりも太いゲージを有するときには、第2のルーメン32が第1のルーメン28よりも大きいことがある。第1のルーメン28と第2のルーメン32とが連通しているときには、第2のルーメン32の部分40が、第1の針カニューレ14から半径方向外側へ広がっていることがある。この部分40からの漏れを防ぐために、この部分40を、例えばチャネル36内に接着剤38を使用することによって、または別の密封材料を含めることによって密封することができる。
【0022】
図3に示されているように、第2の針カニューレ16の遠位端42に隣接して、横断壁20の一部分が位置することが好ましい。横断壁20は、第2の針カニューレ16がハブ12に対して遠位方向へ移動することを制限する。さらに、この配置の横断壁20は、第1の針カニューレ14を超えて半径方向へ広がる第2のルーメン32の部分40と重なる。これは、密封効果および/または接着剤38または別の密封材によって提供される密封効果を超える追加の密封効果を提供する。
【0023】
別の技術を使用して、第1の針カニューレ14および第2の針カニューレ16をハブ12に固定することもできる。例えば、図4および5を参照すると、第2の針カニューレ16を取付けカラー44に、好ましくは接着剤46を使用して予め取り付けることによって、上述の方式と同じ方式で、第1の針カニューレ14を横断壁20に固定することができる。取付けカラー44は、接着および/または融着を含む、知られている任意の技術を使用して横断壁20に固定される。固定を強化するため、対応する取付け開口50内に着座するように形成された、取付けカラー44上および/または横断壁20上の協働取付けピン48を利用することができる。
【0024】
第1のルーメン28と第2のルーメン32の間の連通を保証するため、対応するサイズが許す場合には、第2の針カニューレ16内に部分的に挿入されるように、第1の針カニューレ14を配置することができる。第1の針カニューレ14を第2の針カニューレ16にはめ込むことができない場合、例えば、第2のルーメン32が、第1の針カニューレ14の外断面よりも小さい場合には、第1の針カニューレ14の端と第2の針カニューレ16の端とが直列に整列することが好ましい。適正な配列を得るため、例えば図2および3に示されているように横断壁20と相互に係合させることによって、または取付けカラー44の遠位面52と概ね共面に配置することによって、第2の針カニューレ16の遠位端42をハブ12に対して配置することができる。それに対応して、チャネル36内において軸方向に適正に配置されることによって第2の針カニューレ16の遠位端42との境界面を画定するように、第1の針カニューレ14の近位端54を配置することができる。好ましくは、第1の針カニューレ14は、第2の針カニューレ16を組み付ける前に、チャネル36内に配置され、このときスペーサまたはピンが近位端54に係合し、チャネル36内への挿入度合いを制限し、近位端54が所望の位置に配置されるようにする。その後、第2の針カニューレ16が、チャネル36への挿入または取付けカラー44の取り付けにより、ハブ12に固定される。第2の針カニューレ16をハブ12に取り付けるとき、第2の針カニューレ16の遠位端42は、第1の針カニューレ14の近位端54とともに境界を画定するよう、配置されることができる。
【符号の説明】
【0025】
12 ハブ
14 第1の針カニューレ
16 第2の針カニューレ
18 本体部分
20 横断壁
22 スカート
26 遠位端
28 第1のルーメン
30 近位端
32 第2のルーメン
42 遠位端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断壁を含む本体部分を有するハブと、
前記ハブを注射器に取り付けるための手段であり、前記ハブの前記横断壁の近位側に配置された手段と、
前記横断壁から遠位方向へ延びる第1の針カニューレであり、患者の体内に挿入されるように形成された遠位端で終わり、第1のルーメンが前記遠位端から近位方向へ延び、第1のゲージを有する第1の針カニューレと、
前記横断壁から近位方向へ延びる第2の針カニューレであり、近位端で終わり、第2のルーメンが前記近位端から遠位方向へ延びる第2の針カニューレと
を備え、
前記第1のルーメンと前記第2のルーメンとは連通しており、
前記第2の針カニューレは第2のゲージを有し、前記第2のゲージは、前記第1のゲージよりも大きな外断面を画定する
ことを特徴とするペンニードルアセンブリ。
【請求項2】
前記第2の針カニューレは遠位端を含み、前記第2の針カニューレが前記ハブに対して遠位方向へ移動することを制限するために、前記横断壁の一部分が、前記第2の針カニューレの前記遠位端の遠位側に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のペンニードルアセンブリ。
【請求項3】
前記ハブは、前記横断壁から近位方向へ延びるスカートを含むことを特徴とする請求項1に記載のペンニードルアセンブリ。
【請求項4】
前記ハブを注射器に取り付けるための前記手段は前記スカート上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のペンニードルアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の針カニューレは、前記横断壁と密封式に接触した遠位端を含むことを特徴とする請求項1に記載のペンニードルアセンブリ。
【請求項6】
前記横断壁は、前記横断壁に隣接し且つ前記第1の針カニューレを超えて半径方向へ広がる前記第2のルーメンの部分と重なることを特徴とする請求項5に記載のペンニードルアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−120844(P2012−120844A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268871(P2011−268871)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】