説明

ゲート式シフトレバー装置

【課題】シフト操作時の打音を低減し、かつ緩衝部材のワックスの付着を自動的に除去することができるゲート式シフトレバー装置を提供する。
【解決手段】前記シフトレバー支持部2に、ワックスを含有し、第1ゲート穴3bに対応する形状で前記シフトレバー5が挿通する第2ゲート穴7を有する緩衝部材4を配設し、
前記アッパーハウジング3と緩衝部材4と間に前記シフトレバー5が挿通する長孔11bを有し、シフトレバー5のシフト操作に連動して移動するスライドカバー6を配設し、該スライドカバー6の前記長孔11bに、前記シフトレバー5の突き出し寸法Tの変化に伴って前記シフトレバー5の外周面5bに摺接するブッシュ8を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーをジグザグ状に形成されたゲート穴に沿って車両前後方向及び車幅方向に揺動可能に支持したゲート式シフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート式シフトレバー装置は、前記ゲート穴を有するシフトレバー支持部の外面を意匠部材で覆うとともに、シフトレバー支持部でシフトレバーを揺動可能に支持し、該シフトレバーを車室側に突出させた構造となっている。
【0003】
ゲート式シフトレバー装置においては、シフトレバーを操作する際、該シフトレバーがゲート穴の縁部に衝突することにより打音が生じるという問題がある。
【0004】
前記打音の軽減方法として、例えば、特許文献1には、ワックスを含有する緩衝部材に前記ゲート穴を形成した点が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、シフトレバーにベアリング及び弾性体を装着し、該弾性体をゲート穴に当接させるようにした点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−237811号公報
【特許文献2】特開2006−182112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記ゲート式シフトレバー装置の場合、シフトレバーの意匠部材から車室側への突出量がシフト位置によって異なる。そのため前記特許文献1に記載のように、ワックスを含有する緩衝部材にゲート穴を形成する構造を採用した場合、シフトレバーに緩衝部材のワックスが付着し、該付着部分がシフト位置の如何によって車室側に突出する場合があり、見栄えが悪くなるという問題がある。
【0008】
なお、緩衝部材と意匠部材との間隔を空けることにより、シフトレバーのワックス付着部分が前記意匠部材から車室側に突出しないように構成することも考えられるが、このようにするとシフトレバー装置が大型化し、特にインパネタイプのシフトレバー装置には採用できない。
【0009】
また、前記特許文献2に記載の装置では、ワックスがシフトレバーに付着することはないので、見栄えが悪くなるといった問題は生じないが、シフトレバーにベアリング及び弾性体を装着するものであり、構造が複雑であり、コスト高となる問題がある。
【0010】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、シフト操作時の打音を低減し、かつシフトレバーにワックスが付着するのを回避できるゲート式シフトレバー装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両に固定されるシフトレバー支持部と、該シフトレバー支持部の外面に配設され、車両前後方向及び車幅方向にジグザグ状に延びる第1ゲート穴を有する意匠部材と、前記シフトレバー支持部に車両前後方向及び車幅方向に揺動可能に支持され、前記第1ゲート穴を通って前記意匠部材から車室側に突出するシフトレバーとを備え、該シフトレバーの前記意匠部材からの突き出し寸法がシフト位置により異なるゲート式シフトレバー装置であって、前記シフトレバー支持部に、ワックスを含有し、前記第1ゲート穴に対応する形状で前記シフトレバーが挿通する第2ゲート穴を有する緩衝部材を配設し、前記意匠部材と緩衝部材との間に、前記シフトレバーが挿通する挿通孔を有し、シフトレバーのシフト操作に連動して移動するスライドカバーを配設し、該スライドカバーの前記挿通孔に、前記シフトレバーの突き出し寸法の変化に伴って前記シフトレバーの外周面に摺接するブッシュを装着したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シフトレバーのシフト操作と連動して移動するスライドカバーの挿通孔にブッシュを装着したので、シフト位置によってシフトレバーの突き出し寸法が変化するのに伴って前記ブッシュが前記シフトレバーの外周面に摺接する。即ち、ブッシュのワイパ作用による自浄作用で前記シフトレバーの外周面に付着したワックスを除去することができ、シフトレバーに付着したワックスが車室側に露出して見栄えが悪化するのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係るゲート式シフトレバー装置の分解斜視図である。
【図2】前記シフトレバー装置の側面図である。
【図3】前記シフトレバー装置の平面図である。
【図4】前記シフトレバー装置の第1,第2スライドカバーを示す平面図である。
【図5】前記シフトレバー装置のブッシュ装着状態を示す断面側面図(図4のV-V線断面図)である。
【図6】本発明の実施例2に係るゲート式シフトレバー装置の分解斜視図である。
【図7】前記シフトレバー装置のブッシュ配設状態を示す平面図である。
【図8】前記実施例2のブッシュ装着状態を示す断面側面図(図7のVIII-VIII線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1ないし図5は、本発明の実施例1によるゲート式シフトレバー装置を説明するための図である。なお、本実施例で前,後,左,右とは、特記なき限り車室内のシートに着座した状態で見た場合の前,後,左,右を意味する。
【0015】
図において、1はインパネタイプのゲート式シフトレバー装置を示している。このゲート式シフトレバー装置1は、インスツルメントパネルPa内に固定されるシフトレバー支持部2と、該シフトレバー支持部2の上面に着脱可能に装着されるアッパーハウジング(意匠部材)3と、前記シフトレバー支持部2に揺動可能に支持されたシフトレバー5とを有する。
【0016】
前記アッパーハウジング3は、例えは樹脂製のものであり、上面は意匠面3aとなっている。そしてこの意匠面3aには、前記シフトレバー5が挿通可能であり、かつ車両前後方向及び車幅方向にジグザグ状に延びる第1ゲート穴3bが形成されている。また前記意匠面3aには、前記第1ゲート穴3bに沿って「P(パーキング)」,「R(リバース)」,「N(ニュートラル)」,「D(ドライブ)」,「+(プラス)」,「−(マイナス)」のシフト位置が明示されている。
【0017】
前記シフトレバー支持部2には、前記アッパーハウジング3の下方に位置するように緩衝部材4が配設されている。この緩衝部材4には、前記アッパーハウジング3の第1ゲート穴3bに対応する形状、具体的には第1ゲート穴3bと略同一形状の第2ゲート穴7が形成されている。より詳細には、第2ゲート穴7はシフト操作におけるシフトレバー5の移動を規制するように形成されており、第1ゲート穴3bは、シフト操作においてシフトレバー5が当接しないように第2ゲート穴7より少し大きく形成されている。
【0018】
ここで前記緩衝部材4は、前記シフトレバー5と前記第2ゲート穴7とが当接する際の打音を軽減するために、ワックス、例えば熱可塑性ポリエステルエラストマを含有した樹脂組成物で構成されている。
【0019】
前記シフトレバー5は、前記シフトレバー支持部2に、車両前後方向及び車幅方向に揺動可能に支持され、前記第2ゲート穴7,第1ゲート穴3bを通って車室側に突出している。ここで前記シフトレバー5は、前記第1,第2ゲート穴3b,7を挿通するシャフト5aと、該シャフト5aの上端に装着されたシフトノブ5cと、シャフト5aの下端部に接続され、車両後方に延びるリンク部材9aとを有する。
【0020】
そして前記リンク部材9aの後端部9cは、前記シフトレバー支持部2の後部に車幅方向に向けて配置された回転軸9により軸支されている。このように回転軸9が後部に配置されていることから、前記シフトレバー5のアッパーハウジング3からの突き出し寸法は、シフト位置によって異なることとなる。具体的には、シフトレバー5が「P」位置にあるときの前記シャフト5aの前記アッパーハウジング3からの突き出し寸法より、「D」位置にあるときの突き出し寸法がTだけ大きくなる。
【0021】
そして前記アッパーハウジング3と前記緩衝部材4との間にはスライドカバー6が配置されている。このスライドカバー6は、アッパーハウジング3の下側に配置された第1スライドカバー10と、該第1スライドカバー10の下面に配置された第2スライドカバー11とで構成されている。
【0022】
前記第1スライドカバー10は、例えば軟質樹脂製であり、長方形の板状に形成され、上面は意匠面10bとなっている。前記第1スライドカバー10の前後方向中央部には、前記シャフト5aが挿通可能で、車幅方向に延びる第1長孔(挿通孔)10aが形成されている。
【0023】
前記第2スライドカバー11は、例えば軟質樹脂製のものであり、略円盤形状に形成され、上面は意匠面11cとなっている。そして前記第2スライドカバー11は、その中心部11aが第1スライドカバー10の前記第1長孔10aより前側部分に回転可能に連結されている。また第2スライドカバー11には、前記シャフト5aが挿通可能で、径方向に延びる第2長孔(挿通孔)11bが形成されている。
【0024】
前記第1スライドカバー10は、前記シフトレバー5の車両前後方向への揺動と連動して前後方向に摺動可能となっており、また第2スライドカバー11は前記シフトレバー5の車幅方向への揺動と連動して前記中心部11aを中心に回動するようになっている。
【0025】
詳細には、前記アッパーハウジング3の左,右縁に形成されたガイド壁3dの内面にはガイド溝3e,3eが形成されている。このガイド溝3e,3eに前記第1スライドカバー10の左,右の縁部10c,10cがスライド可能に挿入されており、これにより第1スライドカバー10はシフトレバー5と共に車両前後方向にスライドする。
【0026】
このようにして前記アッパーハウジング3の第1ゲート穴3bは前記第1スライドカバー10の意匠面10bにより下側から覆われており、また第1スライドカバー10の第1長孔10aは前記第2スライドカバー11の意匠面11cによって下側から覆われている。そのため、前記シフトレバー5を前,後,左,右に揺動させても前記シフトレバー支持部2の内部が見えることはない。
【0027】
そして前記第2スライドカバー11の第2長孔11bにはブッシュ8が装着されており、前記シフトレバー5のシャフト5aはこのブッシュ8内を挿通している。このブッシュ8は、例えばラバー製であり、略円筒形状に形成された胴部8aと、上端部に形成されたフランジ部8bとを有し、該フランジ部8bは前記第1スライドカバー10,第2スライドカバー11により挟持されている。
【0028】
また、前記ブッシュ8の中心部を上下方向に貫通する貫通孔8cの内面には、上,下一対の爪部8d,8dが内方に突出するリング状に形成されている。この上,下の爪部8d,8dは、断面側面視で略直角三角形状を成している。詳細には、軸線Cに対して略直角の底辺8fと、軸線Cに対して鋭角をなす斜辺8eを有する。このようにして、前記上,下の爪部8d,8dは、前記シャフト5aの外周面5bに当接しており、シャフト5aの突き出し寸法の変化に応じて外周面5bに摺接してワイパ作用を行う。
【0029】
本実施例1に係るゲート式シフトレバー装置1のシフトレバー5の操作では、シャフト5aの移動範囲が緩衝部材4の第2ゲート穴7によって規制されるため、シャフト5aが第2ゲート穴7の内面に当接することとなるが、緩衝部材4はワックスを含有しており、該ワックスが当接面に滲み出していることから前記当接による打音を抑制できる。
【0030】
一方、前記シャフト5aにワックスが付着し、またシフトレバー5を「P」位置から「N」位置まで操作すると、前記シャフト5aの前記アッパーハウジング3からの突き出し寸法がTだけ長くなる。従って、前記シャフト5aの前記寸法T部分に付着したワックスは車室内側に露出する可能性がある。
【0031】
しかし本実施例では、第2スライドカバー11の第2長孔11bにブッシュ8を装着し、該ブッシュ8の爪部8dをシャフト5aの外周面5b当接させている。前記突き出し寸法が長くなるにつれて、前記爪部8dが前記外周面5bに摺接することとなり、これにより前記シャフト5aに付着しているワックスは前記爪部8dにより掻き落とされる。即ち、前記ブッシュ8のワイパ作用により、前記ワックスが車室内側に露出するのを回避して見栄えの悪化を回避できる。
【0032】
また、本実施例装置では、アッパーハウジング3の第1ゲート穴3bを第1スライドカバー10により下側から覆うとともに、該第1スライドカバー10の第1長孔10aを第2スライドカバー11により下側から覆い、第1長孔10aと第2長孔11bとの交差部にシフトレバー5のシャフト5aを挿通させたので、第1ゲート穴3bから内部が見えることはなく、この点からも外観の悪化を回避できる。
【0033】
また前記シフトレバー5の車両前後方向の操作では、第1スライドカバー10,第2スライドカバー11がそのまま前後方向に移動する。そしてシフトレバー5の車幅方向の操作では、第1スライドカバー10は移動せず、一方、第2スライドカバー11は前記中心部11aを中心に回動し、シャフト5aは常に第1長孔10aと第2長孔11bとの交差部に位置し、車幅方向に移動する。そのためシフトレバー5を車両前後方向及び車幅方向に揺動させても常に前記第1ゲート穴3bは第1,第2スライドカバー10,11で覆われており、内部が見えることはない。
【実施例2】
【0034】
図6〜図8は、本発明の実施例2によるゲート式シフトレバー装置を説明するための図である。図中、図1〜図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0035】
本実施例2のゲート式シフトレバー装置1は、シフトレバー支持部2と、アッパーハウジング3と、シフトレバー5と、第1スライドカバー10とを備えている。
【0036】
本実施例2では、前記実施例1における第2スライドカバーは備えておらず、ブッシュ13が第2スライドカバーを兼ねている。
【0037】
前記ブッシュ13は、例えばラバー製であり、略円筒形状に形成された胴部13aと、該胴部13aの上,下端部に一体形成された円盤状の上,下フランジ部13b,13bとを有する。この上,下フランジ部の13b,13bは、前記第1スライドカバー10の第1長孔10aを、シフトレバー5を車幅方向に移動させた場合にも覆う大きさに形成されている(図7参照)。また前記胴部13aは前記第1長孔10a内に、長手方向にスライド可能に嵌合している。また、前記ブッシュ13の中心部には、前記シャフト5aが挿通可能な貫通孔13cが軸方向に貫通形成されている。
【0038】
また、前記貫通孔13cの内周面には、爪部13eが形成されている。この爪部13eは前記実施例1の爪部8dと同様に、断面側面視で略直角三角形状を成しており、底辺13fと斜辺13gを有する。前記爪部13eは、前記シャフト5aの外周面5bに当接しており、シャフト5aの突き出し寸法の変化に応じて外周面5bに摺接し、ワイパ作用を行う。
【0039】
本実施例2におけるゲート式シフトレバー装置1では、シフトレバー5を車両前後方向に移動させると、第1スライドカバー10及びブッシュ13が共に車両前後方向に移動する。従って、第1長孔10aから内部が見えることはない。
【0040】
そしてシフトレバー5を車幅方向に移動させると、第1スライドカバー10は移動せず、ブッシュ13がスライドカバー10の第1長孔10aに沿って移動する。
【0041】
本実施例2では、ブッシュ13の外径は前記第1長孔10aを覆う大きさに設定されているので、シフトレバー5を車幅方向に移動させた場合も第1長孔10aの内部が見えることはなく、見栄えの悪化を回避できる。
【0042】
また本実施例2においても、緩衝部材4からワックスが滲み出るので、シャフト5aが緩衝部材4に当たることによる打音を抑制できる。
【0043】
また前記シャフト5aに付着したワックスについては、シフトレバー5の突き出し寸法が長くなるにつれて、前記爪部13eが前記外周面5bに摺接することとなり、これにより前記シャフト5aに付着しているワックスを前記ブッシュ13のワイパ作用により、掻き落とすことができ、見栄えの悪化を回避できる。
【0044】
本第実施例2では、ブッシュ13が第2スライドカバーを兼用しているので、部品点数を削減でき、コスト低減できる。
【0045】
なお、前記実施例2においては、上,下フランジ部13b,13bの両方を前記第1長孔10aの長さより大きく設定したが、本発明では、何れか一方のフランジ部を大きく設定すれば良く、他方はこれより小径で構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 ゲート式シフトレバー装置
2 シフトレバー支持部
3 アッパーハウジング(意匠部材)
3b 第1ゲート穴
4 緩衝部材
5 シフトレバー
5b 外周面
6 スライドカバー
7 第2ゲート穴
8,13 ブッシュ
10a 長孔(挿通孔)
T 突き出し寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定されるシフトレバー支持部と、該シフトレバー支持部の外面に配設され、車両前後方向及び車幅方向にジグザグ状に延びる第1ゲート穴を有する意匠部材と、前記シフトレバー支持部に車両前後方向及び車幅方向に揺動可能に支持され、前記第1ゲート穴を通って前記意匠部材から車室側に突出するシフトレバーとを備え、該シフトレバーの前記意匠部材からの突き出し寸法がシフト位置により異なるゲート式シフトレバー装置であって、
前記シフトレバー支持部に、ワックスを含有し、前記第1ゲート穴に対応する形状で前記シフトレバーが挿通する第2ゲート穴を有する緩衝部材を配設し、
前記意匠部材と緩衝部材との間に、前記シフトレバーが挿通する挿通孔を有し、シフトレバーのシフト操作に連動して移動するスライドカバーを配設し、
該スライドカバーの前記挿通孔に、前記シフトレバーの突き出し寸法の変化に伴って前記シフトレバーの外周面に摺接するブッシュを装着した
ことを特徴とするゲート式シフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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