説明

ゲート指令装置、電動機指令機器及びターンオフ指令方法

【課題】 パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)インバーターへの使用における部品のターンオフプロセスを改良する。
【解決手段】 本発明は、IGBT型の電力用半導体部品11のゲート指令装置10に関する。ランプ波発生回路20は、基準ゲート電圧を出力で供給する。前記基準電圧の電流増幅段は、IGBT部品のゲート電流を送出し、この増幅段は、トリガー回路30と高速ターンオフ回路40を有する。低速ターンオフ回路50は、IGBT部品のゲートGと発生回路の出力との間に接続される。部品のコレクタ・エミッター間電圧検出回路60は、高速ターンオフ回路40と発生回路の出力22に作用する帰還信号71を供給する帰還回路70に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)インバーターへの使用における部品のターンオフプロセスを改良することを主な目的とした、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、又は、MOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)型の電力用の電子半導体部品の指令装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PWMインバーターは、非同期電動機用の周波数変換器型の変速機、無停電電源等の応用に頻繁に用いられている。三相周波数変換器において、整流器は、三相電気網から、例えば250〜400V、又は500〜800Vといった直流母線電圧電源を供給する。インバーターは、次にこの直流母線から、電動機の制御を可能にする可変周波数振幅電圧を生成する。周知のように、このようなインバーターは、それぞれが一つの転流ダイオード(Free Wheeling Diode、FWD)に並列な6つの高電力IGBT部品を有してもよい。例えば、250〜400V、又は500〜800Vの直流母線電源用ならば、コレクタ電圧がそれぞれ600V、又は、1200VのIGBTが使用され得る。
【0003】
IGBTは、簡単に言えば、電界効果トランジスタ(MOSFET)とバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の連結部品のように動作するよく知られた電力部品である。入力で、IGBTは、MOSFETのようなゲート電極によって電圧制御されるが、出力電流の特性はバイポーラトランジスタBJTのそれに近い。耐短絡性は、IGBTの優れた長所の一つである。しばしばゲート電圧と呼ばれるゲート・エミッター間電圧値は、導通損失を低減させるために、一般的にオン状態で15から17V程度である。オフ状態のゲート電圧値は、直流母線電圧、ゲート・エミッター間容量、コレクタ電圧の好ましい傾き等の様々な要素に依る。一般的には、トランジスタの切換時、反対側の装置の寄生ターンオンを避けるため、0から15V程度である。
【0004】
IGBTのターンオフ時(つまり、導体のオン状態から非導体のオフ状態への遷移過程)に、IGBT内の寄生インダクタンスにおける電流の急激な変化によりコレクタとエミッターの間に高過電圧が発生しうる。これらの過電圧は、直接、IGBTのコレクタ電流の変化速度(切換速度)に比例する。高電流により切換速度が上がり、それにより、ターンオフ時にきわめて大きな過電圧を引き起こす。切換電流が公称電流の6〜8倍に上る可能性のある時の短絡中が特にそのケースであり、このようにして引き起こされた過電圧によりIGBTが損壊する可能性もある。
【0005】
ターンオフ中、IGBTはその線形動作範囲で動作せず、コレクタ電流の傾きは制御不可能である。コレクタ電流の傾きは、高いゲート抵抗が使用されている場合には、それ独自に制御が可能である。しかしながら、その場合、ターンオフ電力損失と全ターンオフ時間が増大する。ターンオフ時間増大により、所定のデッドタイムを延長しなければならなくなり、特に低速において電動機電流及びトルクの振動の問題を引き起こすことになりかねない。
【0006】
従来型の指令では、特に400Vを上回る最大実用電圧を有する600VのIGBTモジュールの場合、大幅なターンオフ損失を負うことなく、ターンオフ速度を効率的に制御することができない。過電圧時のIGBTの破損を避けるため、一般的なゲート指令回路は、短絡が検出されると(不飽和化防止装置と呼ばれる)低速ターンオフを動作させる。しかしながら、問題は、低速ターンオフが不飽和化防止装置によって終了される前に、高速IGBTターンオフが始動してしまう可能性があることである。この場合、IGBTのゲート容量が急速に放電され、コレクタ電流の急速な変化を招き、従って、大きなターンオフ過電圧を生じる。
【0007】
この場合、クリッパーと呼ばれるクリッピングコンデンサを使用することが知られている。しかしながら、この解決方法は高価であり、かさばる上、過電圧を制限するのにすべてのケースに効果的なわけではなく、好ましくない共振を引き起こす可能性もある。
【0008】
解決方法は他にも提案されている。これら様々な解決策では、IGBTの状態についての情報を検出し、この情報への返答としてIGBTのゲート指令回路における動作を起こす(feedback action)必要がある。例えば、特許US5,926,012号は、IGBTの電力エミッターと補助エミッターの間の漏れインダクタンスと臨界オン電流上昇率di/dt検出に基づくゲート指令能動回路を提案している。特許US6,208,185号は、臨界オン電流上昇率di/dt及び臨界オフ電流上昇率dv/dt指令用3段構成回路に基づくゲート指令能動回路を提案している。特許US6,459,324号は、IGBTのトリガー、ターンオフ中のゲート抵抗指令のためのゲート・エミッター間電圧の帰還に基づくゲート指令能動回路を提案している。
【0009】
IGBTの状態情報のフィードッバックに基づく方法の主な問題は、特に高速切換低電圧IGBTといった新世代部品では、保護回路の持つ対応時間がきわめて短く、特にIGBTがその能動領域で機能しているときに他の短絡が生じた際、又は、アーム短絡(arm short circuit)が生じた際に、これらの方法では遅すぎるという可能性があることである。こうした時、最大実用母線電圧で短絡電流が安全にターンオフされることは確かではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらのことから、本発明は、ターンオフ時におけるコレクタ・エミッター間過電圧VCEを効果的に制御できるよう、IGBT等の電力部品のゲート電圧のダイナミックフィードバック(フィードフォワード、先行反応)と帰還情報(フィードバック)とを有するゲート指令装置を記載する。本発明により、あらゆる実用的な条件下でターンオフ電流の傾きを簡易に効率的に制御することが可能となる。
【0011】
IGBTターンオフ中のIGBT内部のインダクタンスと直流母線の寄生インダクタンスとによって生じた過電圧は制御される。これにより、高価でかさばる高周波クリッピングコンデンサの必要性がなくなり、低インダクタンスの直流母線構造が必要でなくなる。提案ゲート指令は、特に動的制動時といった最大母線電圧下の短絡、過負荷時を含むあらゆる一般的な使用条件下で、効果的に過電圧を制御することができる。
【0012】
公称条件における全切換時間、及び切換に関わる損失が増大することはない。IGBT技術(NPT、SPT、TRENCH)によっては、本発明が提案するゲート指令による切換損失が、従来ゲート指令による切換損失を下回ることも可能である。
【0013】
このために、本発明は、IGBT部品の指令コマンドから基準ゲート電圧を出力に供給する入力回路、トリガー回路と高速ターンオフ回路を有する増幅段で、IGBT部品のゲート電流を送出するための前記基準電圧の電流増幅段、IGBT部品のゲートと入力回路の出力との間に接続される低速ターンオフ回路、IGBT部品のコレクタ・エミッター間電圧の検出回路を有するIGBT型の電力用半導体部品のゲート指令装置を記載する。入力回路は、ランプ波発生回路であり、装置は、検出回路の出力に接続された、高速ターンオフ回路と発生回路の出力に作用する帰還信号を供給する帰還回路を有する。
【0014】
一つの態様では、ランプ波発生回路は、IGBT部品のターンオン指令コマンドに従い、上昇ランプ波で、又、IGBT部品のターンオフ指令コマンドに従い、上昇ランプ波とは異なる下降ランプ波で基準電圧を供給する。
【0015】
他の態様では他の態様では、IGBT部品のターンオフ時に、検出回路は、IGBT部品のコレクタ・エミッター間電圧の閾値超過とIGBT部品のコレクタ・エミッター間電圧の変動閾値超過を検出する。
【0016】
他の態様では、高速ターンオフ回路は、ベースが発生回路の出力と帰還信号によって操作され、エミッターがターンオフ抵抗を介してIGBT部品のゲートにつながれている主バイポーラトランジスタを有する。低速ターンオフ回路は、ターンオフ抵抗を上回る放電抵抗を有する。
【0017】
他の態様では、帰還回路は、所定のホールドタイム中、帰還信号を維持するように、エミッターが帰還信号につながれ、コレクタが正電源電圧につながれ、ベースが検出回路の第一出力につながれている補助バイポーラトランジスタを有する。検出回路の第二出力は、直接帰還信号につながれている。
【0018】
本発明は、機器の各電力部品がこのような指令装置によって制御される、前記電動機の各位相用にIGBT型の二つの電力部品を有する電動機の指令機器も記載する。
【0019】
本発明は、また、IGBT型の電力用半導体部品のターンオフのための3工程構成の指令方法を記載する。第一工程では、IGBT部品のゲート・エミッター間容量が主に高速ターンオフ回路のターンオフ抵抗を通して放電される。第二工程では、ゲート・エミッター間容量がホールドタイム中にターンオフ抵抗を上回る放電抵抗を通してのみ放電するように、IGBT部品のコレクタ・エミッター間電圧の検出回路の出力に接続された帰還回路が、高速ターンオフ回路に作用する帰還信号を供給する。第三工程では、ゲート・エミッター間容量が主にターンオフ抵抗を通して放電される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
その他の特性や利点は、例として示し、添付図面に図示した実施の態様を参照しながら以下の詳細な説明から明らかになる。
【0021】
図1を参照すると、IGBTトランジスタ型の電力用半導体部品(IGBT)11は、ゲートG(又はGATE)、コレクタC(又はCOLLECTOR)、及び、エミッターE(又はEMETTOR)を有する。IGBT11のゲートの指令装置10は、入力21に届く、例えば上流の処理ユニットから送られてくる指令コマンドとも呼ばれる信号によりゲートG上に指令電流を供給する役目を担う。記載の実施態様では、入力21の電圧は、IGBT11をオン状態にする指令を送るために正電源電圧VCCと呼ばれる約+16Vの値を、又、IGBT11をオフ状態にする指令を送るために負電源電圧VEEと呼ばれる約−10Vの値をとる。
【0022】
指令装置10は、ランプ波発生回路20、トリガー回路30と高速ターンオフ回路40で構成された電流増幅段、低速ターンオフ回路50、コレクタ・エミッター間電圧VCE検出回路60、及び、高速ターンオフ回路40に作用する帰還回路70を有する。
【0023】
図2の電気構造を参照すると、ランプ波発生回路20は、入力21で指令コマンドを受け取り、出力として基準ゲート電圧をノード22に供給する。このランプ波発生回路20は、部品11のターンオン命令(オフ状態からオン状態への遷移、つまり入力21のポジティブエッジ)に従い基準電圧用の上昇ランプ波を、又、部品11のターンオフ命令(オン状態からオフ状態への遷移、つまり入力21のネガティブエッジ)に従い基準電圧用の下降ランプ波を生じさせるインダクタンスL1、L2、及び、容量C9、抵抗R7A、R7B、R7Cを有する。これらのランプ波により、基準電圧の変動を制御することが可能となり、従ってIGBTのコレクタ電流の変動を制御することを可能にする。
【0024】
好ましくは、部品11のターンオン時の上昇ランプ波は、部品11のターンオフ時の下降ランプ波とは異なり、それにより、指令装置の調整に、より多くの柔軟性を与える。そのために、発生回路20は、例えばR7B、R7C、L2に並列なダイオードD7を有する。入力21のポジティブエッジ時には、ダイオードD7は電導性を有し、ターンオンランプ波は単に抵抗R7A、インダクタンスL1及び容量C9によって決定される。それに対し、入力21のネガティブエッジ時には、ダイオードD7は、電導性を失い、ターンオフランプ波は抵抗R7A、R7B、R7C、インダクタンスL1、L2及び容量C9によって決定される。この組み合わせにより、IGBTのターンオフ用がターンオン用よりも小さい基準電圧の傾きを得ることが可能となる。各要素R7A、R7B、R7C、C9、L1及び、L2の調整は、所望の性能と指令対象のIGBTの特徴に依る。容量C9に並列なツェナーダイオードZD1とダイオードD8とで構成された吸収回路により、例えば+16.5Vに近い値のオーバーシュートと言われる超過電圧を制限することが可能となる。
【0025】
指令装置10の電流増幅段は、ノード22の基準電圧に応じてIGBT部品にゲート電流を供給する。この増幅段は、ノード22とIGBT11のゲートGに直接接続されたノード23の間で双方がつながれている高速ターンオフ回路40とトリガー回路30を有する。好ましい実施態様によれば、この増幅段は、プッシュプル型である。
【0026】
図5は、増幅段のトリガー回路30を示す。トリガー回路30は、ノード22とノード23の間でつながれている。このトリガー回路は、コレクタが(+16Vにほぼ等しい)正電源電圧VCCにつながれ、エミッターがトリガー抵抗R6につながれ、ベースがダイオードD3のカソードにつながれているNPN型バイポーラトランジスタTR1を有する。トリガー抵抗R6のもう一端部は、ノード23につながれている。ダイオードD3のアノードは、ノード22につながれている。IGBT11のゲート・エミッター間容量は、ダイオードD3、トランジスタTR1、及び抵抗R6を通して充電される。TR1のベース・エミッター間電圧が10Vを上回る可能性があり、TR1内の電力損失を増大させる可能性のある場合、ダイオードD3は、ターンオフ時のTR1の破壊を避けるために使用されている。トリガー抵抗R6は、ゲートGの充電電流Igonを制限し、IGBT上のゲート接続端子と指令装置との間の漏れインダクタンス及びゲート・エミッター間容量により引き起こされるゲート・エミッター間電圧の寄生振動を回避する。トリガー抵抗R6の最小値は、IGBTのオフ状態のゲート・エミッター間容量とゲートインダクタンスによる。
【0027】
IGBTのターンオン時には、コレクタ・エミッター間電圧VCEは、ゲート・エミッター間電圧がミラー平坦部分と呼ばれる領域にとどまるように減少し始める。ランプ波発生器20から送出された電圧は、ターンオンランプ波に応じて増加し続け、ゲートの充電電流は増加を始める。ゲートの高充電電流は、ミラー容量の充電を速め、ターンオン時の電力損失と残留電圧を低減させる。この効果は、基準ゲート電圧のランプ波とゲート抵抗による。
【0028】
図3は、増幅段の高速ターンオフ回路40を示す。回路40は、ノード22とノード23に接続される。この回路は、エミッターがターンオフ抵抗R10を介してノード23につながれ、コレクタが(ほぼ−10Vに等しい)負電源電圧VEEにつながれるPNP型主バイポーラトランジスタ(主トランジスタ)TR3を有する。TR3のベースは、コンデンサC8と並列なダイオードD5を通ってノード45に接続されている。容量C8により、トランジスタTR3の遮断を速めることが可能となる。ノード45は、抵抗R12を介してノード22に接続され、帰還回路70から送られる帰還信号71に接続されている。
【0029】
本発明によれば、指令回路は直接ノード22とノード23の間につながれ、放電抵抗R9を有する低速ターンオフ回路50をも有する。放電抵抗R9の値は、部品11のターンオンが優先的にトリガー回路30を通して実行されるように、トリガー抵抗R6をかなり上回る。その上、R9の値は、主トランジスタTR3が導通状態である時、部品11のターンオフが優先的に高速ターンオフ回路40を通して実行されるように、ターンオフ抵抗R10をかなり上回る。
【0030】
図4は、検出回路60、及び帰還回路70を示す。
【0031】
検出回路60は、IGBT11のコレクタ・エミッター間電圧VCEの増加を迅速に検出する役目を担う。この検出回路は、カソードがIGBT11のコレクタCにつながれ、アノードが、反対側の端部がノード65につながれたコンデンサC2につながれており、ツェナーダイオードよりも高速なトランジェント電圧サプレッサ型のクリッピングツェナーダイオードTS1を有する。電圧VCEが増加を始めると、コンデンサC2はダイオードTS1の接合容量を通して充電を始める。このダイオードTS1の接合容量は、電圧VCEと電圧VCEの時間的変動に依存する。これらの関数は、特にターンオフ開始時においては、線形ではない。ダイオードTS1のツェナー電圧が正電源電圧VCCをはるかに上回るとするならば、TS1の電圧がツェナー電圧に近い時、TS1の接合容量はコンデンサC2の容量を大きく下回る。電圧VCEがTS1のツェナー電圧を上回る時、ダイオードTS1は、電導性を有し、コンデンサC2は電流Ic2により充電される。コンデンサC2の電流Ic2は、検出回路60の二つの出力それぞれ62、61を得るためにノード65に接続された抵抗R3、R4に応じて調整可能な電流Ir3とIr4に分かれる。
【0032】
こうして、検出回路60により、電圧VCEの変動にほぼ比例した電流Ir3、Ir4を迅速に生成できるよう、電圧VCEの変動値の閾値超過(例えば、毎マイクロ秒数キロボルト程度)を、及び、電圧VCEの値の閾値超過(例えば、直流母線電圧の25%から60%程度)を簡易に、又、迅速に、検出することが可能となる。これにより、ターンオフ時のコレクタ・エミッター間電圧VCEの過電圧を効率的に制御することが可能となる。これらの超過閾値は、IGBT部品に使用される技術による。
【0033】
図4に示される帰還回路70は、検出回路60の第1出力61(電流Ir4)、第2出力62(電流Ir3)を受け取り、高速ターンオフ回路40のノード45に接続された帰還信号71を出力として放出する役割を担う。
【0034】
R3から送出された電流Ir3を送電する検出回路60の第2出力62は、直接、ダイオードD4を通り帰還信号71に接続される。帰還回路70は、NPN型の補助バイポーラトランジスタTR2を有する。補助トランジスタTR2のコレクタは、正電源電圧VCCにつながれており、TR2のベースは、R4から送出された電流Ir4を送電する第1出力61につながれ、TR2のエミッターは、ノード75につながれている。ダイオードD9は、TR2のベースとコレクタをつなぐ。ノード75は、ダイオードD4と抵抗R14を介して、帰還信号71に接続される。また、ダイオードD6、抵抗R13、及びコンデンサC4は、IGBT部品11のターンオン時に容量C2の放電が可能となるように、ノード75と負電源電圧VEEの間に並列に接続されている。
【0035】
従って、IGBT部品11のターンオフ過程は、3つの段階を有する。
【0036】
1)第一段階では、主トランジスタTR3は、導通状態であり、補助トランジスタTR2は、遮断されている。IGBT11のゲート・エミッター間容量は、高放電電流Igoff1で少ないミラー平坦部分時間で、主にターンオフ抵抗R10(R10がR9をはるかに下回るため)と主トランジスタTR3を通して放電する。第1段階終了時には、ゲート・エミッター間電圧は、ミラー平坦部分よりも下に位置し、IGBT部品11内部のMOSFETトランジスタはオフ状態に近くなっている。この場合、コレクタの電流の大部分は、部品11内部のBJTトランジスタの電流である。ゲート・エミッター間電圧の最終値は、IGBT部品の技術により、およそ0にもなりうる。この第1段階は、検出回路60によって検出される電圧VCEの増大を生じさせる。
【0037】
2)検出回路60が、電流Ir3、Ir4を生じさせる(コンデンサC2により)部品11の電圧VCEの変動閾値超過と(ダイオードTS1により)部品11の電圧VCEの閾値超過を検出したとき、第2段階が開始する。こうして、これらの閾値の超過時には、帰還回路70が迅速に、帰還信号71を通し、電流Ir3を介して、主トランジスタTR3を遮断する。その結果、IGBT11のゲート・エミッター間容量は、これ以降、Igoff1を下回る低放電電流Igoff2で放電抵抗R9を通してのみ放電する。また、電流Ir4の大部分は、トランジスタTR2のベースを縦断し、これにより、このトランジスタTR2は導通状態となる。
【0038】
この段階では、ゲート・エミッター間電圧は、ミラー平坦部分の下に位置する。しかしながら、内部MOSFETトランジスタがオフ状態であり、電圧VCEが急速に増大することから、ゲート・エミッター間容量は、IGBT11のミラー容量により、(放電電流よりも高い)付加電流によって充電する。こうして、ゲート・エミッター間電圧は再びミラー平坦部分を上回り、従って、MOSFETトランジスタは、コレクタの電流が新たに制御可能となるよう、再びオン状態に遷移する。ゲート・エミッター間容量は、ミラー容量によって再び充電される。
【0039】
補助トランジスタTR2が第1段階で遮断されている間は、ノード75の電圧はおよそ電源電圧VEEに等しく、ダイオードD9は、電導性を有さない。第2段階では、トランジスタTR2は、導通状態となり、これにより、ノード75の電圧が正電源電圧VCCに近い値へと増大する。ダイオードD9は導通状態となり、これにより、トランジスタTR2を大きく飽和し、容量C4の充電に必要な時間が経過すると、帰還信号71内に抵抗R14とダイオードD4を介して電流が流れる。この構造により、トランジスタTR2は、第1出力61がオフになった後、所定のホールドタイム(蓄積時間)中、導通状態が維持される。
【0040】
同時に、電流Ir3は、ダイオードD4を縦断し、ノード45の電圧は即時に増大を開始する。ノード45では、帰還信号71から送られた電流は、ノード22の基準電圧に作用するため抵抗R12を縦断するフィードバック電流と主トランジスタTR3を遮断することを可能にするコンデンサC8の充電電流とに分かれる。ノード45の電圧は、およそ正電源電圧VCCに等しく、ダイオードD5とトランジスタTR3を遮断状態に維持する。
【0041】
こうして、IGBTの内部MOSFETトランジスタはオフ状態に近くなる。そして、IGBTの電圧VCEの値と傾きは、IGBT内部のBJTトランジスタの動的特性によって決定される。電圧VCEの急速な増大は、ゲート・エミッター間電圧がミラー平坦部分まで増大し始め内部MOSFETトランジスタを再びオン状態にするように、ゲート容量内にミラー容量を介して電流を再び送出し、主トランジスタTR3をターンオフする帰還信号71を生成する。IGBTは、線形動作の領域に戻り、そのため、ゲート・エミッター間電圧のランプ波は新たにコレクタの電流の傾きを制御できるようになる。
【0042】
望ましくは、主トランジスタTR3が遮断されている時、ゲート・エミッター間容量は、回路20から送出された基準電圧のターンオフランプ波に応じて、低速ターンオフ回路50の放電抵抗R9により低電流Igoff2で放電し続ける。
【0043】
第2段階の間、IGBTの電圧VCEは増大を止め、電圧VCEの変動は再び超過閾値以下に遷移し、これにより、出力61、62がオフになる。しかしながら、補助トランジスタTR2が飽和に関わるホールドタイムの間(つまり、TR2のベースの0への遷移とTR2のコレクタ内の電流増加開始の間に流れる時間)、つまり約0.5から1マイクロ秒程度の期間、導通状態のままとどまるので、この第2段階は延長される。
【0044】
この所定のホールドタイム中、主トランジスタTR3は、望ましくは、帰還信号71により遮断状態が維持される。あらゆる状況下で、IGBTが完全にターンオフされるために主トランジスタTR3が十分な時間遮断されたままでいなければならないので、このホールドタイムは重要である。このホールドタイム終了時に、補助トランジスタTR2は再び遮断状態に遷移し、ノード75の電圧は負電源電圧VEEまで徐々に減少する。ダイオードD4は遮断され、主トランジスタTR3は導通状態に戻り、これにより、第3段階が開始される。
【0045】
3)最終第3段階により、IGBT11のゲート・エミッター間容量の放電を迅速に終了することが可能となり、結果として、IGBTのターンオフ時間全体を短縮する。この段階では、主トランジスタTR3が再び導通状態になるのであるから、ゲート・エミッター間容量は高電流でターンオフ抵抗R10を介し放電する。これは、従って、ターンオフを迅速に終了することを可能にする。
【0046】
コレクタの電流は、こうして、動的相互コンダクタンスgmと基準電圧のランプ波によって決定された傾きで減少する。電圧VCEは、全切換インダクタンスとコレクタの電流の傾きにより決定されたピーク値にとどまる。コレクタの電流が残留電流(テール電流)に達すると、電圧VCEはおよそ直流母線電圧まで減少する。
【0047】
コンデンサC2は、電圧VCEが減少し始めた時、IGBT部品の次のターンオン中に、回路70のダイオードD6と抵抗R11、R4により放電される。
【0048】
図6は、周波数変換機型三相非同期電動機Mの指令機器における本発明の使用例を示す。指令機器は電動機Mの各位相U、V、WWの指令用に2つの部品、つまり三相電動機の例においては6つの電力部品11、12、13、14、15、16を有する。部品11、12、13、14、15、16は、可変周波数および振幅の電圧を電動機に直流母線電圧18から供給する役割を担い、それにより、電動機が可変速度を供給することが可能となる。それぞれのIGBT電力部品は、本発明にかなった指令装置10から制御される。
【0049】
本発明の範囲を逸脱することなく、他の様態や細部改良の発想、均等手段の利用も考案可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に適った指令装置の一実施態様の簡易化された一般原理を示す。
【図2】ランプ波発生回路の構造図一例を示す。
【図3】高速ターンオフ回路、低速ターンオフ回路の構造図一例を示す。
【図4】検出回路、帰還回路の構造図一例を示す。
【図5】トリガー回路の構造図一例を示す。
【図6】三相電動機指令への本発明の記載する指令装置の使用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT部品(11)の指令コマンド(21)から基準ゲート電圧を出力(22)で供給する入力回路(20)、
トリガー回路(30)と高速ターンオフ回路(40)を有する増幅段で、IGBT部品(11)のゲート電流を送出するための前記基準電圧の電流増幅段、
IGBT部品(11)のゲート(G)と入力回路(20)の出力(22)との間に接続される低速ターンオフ回路(50)、
IGBT部品(11)のコレクタ・エミッター間電圧検出回路(60)
を有するIGBT型の電力用半導体部品(11)のゲート指令装置(10)であって、
入力回路がランプ波発生回路(20)であることと、装置は高速ターンオフ回路(40)と発生回路(20)の出力(22)に作用する帰還信号(71)を供給し、検出回路(60)の出力に接続された帰還回路(70)を有することを特徴とするゲート指令装置(10)。
【請求項2】
ランプ波発生回路(20)は、IGBT部品(11)のターンオン指令コマンドに従い、上昇ランプ波に応じた、又、IGBT部品(11)のターンオフ指令コマンドに従い、上昇ランプ波とは異なる下降ランプ波に応じた基準電圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のゲート指令装置。
【請求項3】
検出回路(60)は、IGBT部品(11)のコレクタ・エミッター間電圧の閾値超過とIGBT部品(11)のコレクタ・エミッター間電圧の変動閾値超過を検出することを特徴とする請求項1に記載のゲート指令装置。
【請求項4】
高速ターンオフ回路(40)は、ベースが発生回路(20)の出力と帰還信号(71)によって操作され、エミッターがターンオフ抵抗(R10)を介しIGBT部品(11)のゲートにつながれている主バイポーラトランジスタ(TR3)を有することを特徴とする請求項1に記載のゲート指令装置。
【請求項5】
低速ターンオフ回路(50)は、ターンオフ抵抗(R10)を上回る放電抵抗(R9)を有することを特徴とする請求項4に記載のゲート指令装置。
【請求項6】
増幅段は、プッシュプル型であることを特徴とする請求項1に記載のゲート指令装置。
【請求項7】
帰還回路(70)は、所定のホールドタイム中、帰還信号(71)を維持するように、エミッターが帰還信号(71)につながれ、コレクタが正電源電圧につながれ、ベースが検出回路(60)の第一出力(61)につながれている補助バイポーラバイポーラトランジスタ(TR2)を有することを特徴とする請求項1に記載のゲート指令装置。
【請求項8】
検出回路(60)の第二出力(62)が直接帰還信号(71)につながれていることを特徴とする請求項7に記載のゲート指令装置。
【請求項9】
電動機の各位相(U、V、W)用にIGBT型の二つの電力部品を有する電動機(M)指令機器であって、機器の各電力部品(11、12、13、14、15、16)が上記の請求項のいずれか一つに記載のゲート指令装置(10)によって制御されることを特徴とする電動機(M)指令機器。
【請求項10】
IGBT型の電力用半導体部品(11)のターンオフ指令方法であって、
IGBT部品(11)のゲート・エミッター間容量が主に高速ターンオフ回路(40)のターンオフ抵抗(R10)を通して放電される第一工程、
ゲート・エミッター間容量がホールドタイム中にターンオフ抵抗(R10)を上回る放電抵抗(R9)を通してのみ放電するように、IGBT部品(11)コレクタ・エミッター間電圧の検出回路(60)の出力に接続された帰還回路(70)が高速ターンオフ回路(40)に作用する帰還信号(71)を供給する第二工程、および
ゲート・エミッター間容量が主にターンオフ抵抗(R10)を通して放電される第三工程
を有するターンオフ指令方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−67795(P2006−67795A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248326(P2005−248326)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(502363191)シュネーデル、トウシバ、インベーター、ヨーロッパ、ソシエテ、パル、アクション、セプリフエ (42)
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER TOSHIBA INVERTER EUROPE SAS
【Fターム(参考)】