説明

ゲート駆動回路

【課題】スイッチングにおけるターンオン、ターンオフ時間を制御し、常にスイッチング時間が最少となるスイッチング素子ゲート駆動回路の創出を目的とする。
【解決手段】ゲート駆動回路のゲート抵抗に相当する部分をバイポーラトランジスタ等の能動素子とし、その能動領域を使ってゲート電流を制御する。能動素子の駆動回路の制御装置はスイッチング時間に関するデータを持ち、常にスイッチング時間が最少となる、すなわちスイッチング損失が最少となる状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に用いられるスイッチング素子の駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、モータなどの負荷を駆動する電力変換装置に用いられる電圧駆動型スイッチング素子であるIGBTやMOSFETの駆動回路には次のようなものが用いられる。
【0003】
たとえば図2に示すようなスイッチング素子のドライブ回路にゲート抵抗Rgが接続され、スイッチング素子のゲート駆動回路へ接続されている。このゲート抵抗Rgは、スイッチング素子の使用条件により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−235722号公報
【特許文献2】特開2008−92663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Rgは素子の使用条件で最も厳しい点(過電圧、ノイズ等)で決定されるため、常に最少スイッチング損失でスイッチング素子を動作させることができない。
【0006】
この課題に対し、特許文献1では負荷電流を計測し、かつ切り替え式のゲート抵抗を用いることでターンオン時間、ターンオフ時間を短くし、かつ過電圧を抑えることを提案している。
【0007】
特許文献2では負荷電流を計測し、かつゲート駆動回路の駆動電圧を可変することでゲート駆動電圧、電流を制御し、ターンオン時間、ターンオフ時間を短くし、かつ過電圧を抑えることを提案している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明によれば、スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路において、ゲート電圧、ゲート電流とドレイン電流、ターンオン時間、ターンオフ時間の関係のデータを制御回路が持ち、その特性に従ってターンオン時間、ターンオフ時間の和が最短であり、スイッチング損失最少となる値にゲート抵抗の値を制御することを特徴とするゲート駆動回路。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1のゲート駆動回路において、スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路において、コレクタ-エミッタ間又はドレインソース間等の電流を検知する装置を持ち、その電流により適切なゲート電圧、ゲート電流を選択するテーブルを制御回路が持ち、検知した電流に基づきゲート電圧とゲート電流を可変させることを特徴とするゲート駆動回路。
【0010】
請求項3の発明によれば、請求項1のゲート駆動回路において、ゲート電圧およびゲート電流を可変させる装置がバイポーラトランジスタ等の能動素子であり、バイポーラトランジスタの能動領域を使ってゲート電圧と電流を制御することを特徴とするゲート駆動回路。
【0011】
請求項4の発明によれば、請求項1のゲート駆動回路において、ゲート電圧およびゲート電流を可変させる装置がトランジスタ等のスイッチング素子であり、スイッチングによりゲート電圧、ゲート電流を制御することを特徴とするゲート駆動回路。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲート駆動回路は、常に最少スイッチング損失でスイッチング素子が動作可能である。また、従来技術におけるゲート抵抗に相当する回路が無接点かつ無段階で制御可能であることが特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明におけるゲート駆動回路の一例である。
【図2】従来技術におけるゲート駆動回路の一例である。
【図3】実施例2における本発明のゲート駆動回路の一例である。
【図4】実施例3における本発明のゲート駆動回路の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施態様を以下の実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1を用いて本発明の実施例1を説明する
【0016】
コントローラからのオンオフ指令をゲート駆動回路CPU6が受信しオン信号をオン状態制御回路7に、オフ信号をオフ状態制御回路9に指令する。各制御回路はオン状態、オフ状態をコントロールするターンオン制御能動素子8、ターンオフ制御能動素子10にそれぞれ指令を送りスイッチング素子1のゲートに電圧を印加する。なお、この時ターンオン制御能動素子8はターンオフも可能だが主にターンオンを行うもの、ターンオフ制御能動素子10は同様にターンオンも可能だが主にターンオフを行うものである。スイッチング素子1はスイッチング動作を行い、主回路(主回路負荷4、主回路電源3)を制御する。この時にスイッチング素子を流れる主回路電流を主回路電流検知装置5が検知し、検知信号をゲート駆動回路CPU6にフィードバックを行う。ゲート駆動回路CPU6はターンオン制御能動素子8、ターンオフ制御能動素子10の出力特性及びスイッチング特性とスイッチング素子1のスイッチング特性のデータを持っており、スイッチング素子1のターンオン時間とターンオフ時間の和、すなわちスイッチング時間が常に最短となるような命令を各制御回路7、9に行う。ターンオン制御能動素子8、ターンオフ制御能動素子10は制御回路からの指令を受け、スイッチング素子のゲートに流れる電流と電圧を制御する。この動作により常にスイッチング素子1のスイッチング時間が最少となるようにゲート電圧、電流が制御される。
【0017】
スイッチング時間最小値Tswminが次の式となるゲート電圧、電流でターンオン時間、ターンオフ時間を制御する。この時のスイッチング時間Tswminは次の式で決定される。
【0018】
Tswmin=Tonmin+Toffmin (式1)
【0019】
ただし、Tonminはあるスイッチング素子を流れる主回路電流においてターンオン時間Tonが最少となる時間を指す。また、Toffminはスイッチング素子を流れる主回路電流においてターンオフ時間Toffが最少となる時間を指す。
【実施例2】
【0020】
図3を用いて本発明の実施例2を説明する。
【0021】
コントローラからのオンオフ指令をゲート駆動回路CPU6が受信しオンオフ指令をオンオフ制御回路13に指令する。オンオフ制御回路13はオンオフ制御能動素子14を駆動し、オンオフ制御能動素子14は、スイッチング素子1のゲート端子へ流れ込む電圧、電流を制御する。スイッチング時間の計算方法は実施例1と同じである。
【実施例3】
【0022】
図4を用いて本発明の実施例3を説明する。
【0023】
コントローラからのオンオフ指令をゲート駆動回路CPU6が受信しオン信号をオン状態制御回路7に、オフ信号をオフ状態制御回路9に指令する。各制御回路はPWM変調を行い、オン状態、オフ状態をコントロールするターンオン制御能動素子8、ターンオフ制御能動素子10をスイッチングする。ターンオン制御能動素子8、ターンオフ制御能動素子10から出力されたパルスは平滑リアクトル11、平滑コンデンサ12により平滑され、スイッチング素子1のゲートに入力される。
【0024】
スイッチング時間の計算方法は実施例1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は電力用スイッチング半導体素子を用いた電力変換回路に有効である。また、スイッチング素子のスイッチング損失が減少するため、冷却構造を小さくできる可能性がある。
【符号の説明】
【0026】
1 スイッチング素子
2 ゲート駆動回路
3 主回路電源
4 主回路負荷
5 主回路電流検知装置
6 ゲート駆動回路CPU
7 オン状態制御回路
8 ターンオン制御能動素子
9 オフ状態制御回路
10 ターンオフ制御能動素子
11 平滑リアクトル
12 平滑コンデンサ
13 オンオフ制御回路
14 オンオフ制御能動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路において、ゲート電圧、ゲート電流とドレイン電流、ターンオン時間、ターンオフ時間の関係のデータを制御回路が持ち、その特性に従ってターンオン時間、ターンオフ時間の和が最短であり、スイッチング損失最少となる値にゲート抵抗の値を制御することを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
請求項1のゲート駆動回路において、スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路において、コレクタ-エミッタ間又はドレインソース間等の電流を検知する装置を持ち、その電流により適切なゲート電圧、ゲート電流を選択するテーブルを制御回路が持ち、検知した電流に基づきゲート電圧とゲート電流を可変させることを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項3】
請求項1のゲート駆動回路において、ゲート電圧およびゲート電流を可変させる装置がバイポーラトランジスタ等の能動素子であり、バイポーラトランジスタの能動領域を使ってゲート電圧と電流を制御することを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項4】
請求項1のゲート駆動回路において、ゲート電圧およびゲート電流を可変させる装置がトランジスタ等のスイッチング素子であり、スイッチングによりゲート電圧、ゲート電流を制御することを特徴とするゲート駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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