説明

ゲームシステム、読取機器およびゲーム用操作コマンドの生成方法

【課題】ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトの動きなどがユーザにとって単調になりにくいこと。
【解決手段】ゲームシステム1の印刷媒体2には、ゲームあるいはそのゲーム中のオブジェクトに関する図案11とともに、紙面中の位置を示す座標値へ変換可能なパターン12が印刷される。読取部22は、パターン12を読み取る。変換テーブル53には、印刷媒体2の読取軌跡と比較される複数の軌跡パターンと対応付けて、複数の操作コマンドが登録される。判定手段62は、読取部22による印刷媒体2の読み取りに基づいて生成されて複数の読取座標値からなる軌跡データ5と複数の軌跡パターンとの一致を判定する。選択手段62は、変換テーブル53において一致が判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドを、ゲームあるいはオブジェクトを制御するものとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームシステム、読取機器およびゲーム用操作コマンドの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バーコードによりカードの持つデータを読み取り、そのデータに従ってカードとカードを対戦させて勝敗判定を行うことが記載されている。
【0003】
特許文献2には、極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットからなるパターン、そのドットパターンをゲームカードなどの媒体に形成すること、このゲームカードを読み取って、そのドットパターンにコード化したコード情報やXY座標情報に予め対応付けられた音声をスピーカから出力させること、が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−30475号公報(発明の詳細な説明など)
【特許文献2】特開2006−190270号公報(要約、段落0040、発明の詳細な説明など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の収集カードには一定のデータが記録されているだけであり、特許文献2のドットパターンが印刷されたゲームカードには紙面上の位置毎に一定の処理が割り付けられているだけである。そのため、これらのカードを用いたゲームでは、ゲームを繰り返し遊んでいるうちにユーザは慣れ易く、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトの動きなどがユーザにとって単調となり易い。
【0006】
本発明は、電子ペンなどの読取機器により読取可能なゲームカードなどの印刷媒体を好適に用いることにより、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトの動きなどがユーザにとって単調になりにくいゲームシステム、読取機器およびゲーム用操作コマンドの生成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゲームシステムは、ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体と、パターンを読み取る読取部と、複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと軌跡パターンとの一致を判定する判定手段と、変換テーブルにおいて一致が判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択する選択手段と、を有するものである。
【0008】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、判定手段は、複数の軌跡パターンと読取部により読み取られた軌跡との尤度が最も高いものを一致として判定する。
【0009】
本発明に係る他のゲームシステムは、ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体と、パターンを読み取る読取部と、所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、所定の軌跡パターンと読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出する算出手段と、算出手段により算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択する選択手段と、を有するものである。
【0010】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、軌跡データ中の複数の読取座標値に基づいて、選択された操作コマンドのパラメータ値を生成する生成手段を有する。
【0011】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、読取部による軌跡を入力する際の時間を計測する計時手段と、軌跡を入力する際に読取部を有する読取機器の先に加わる圧力を検出する検出手段と、軌跡データ中の複数の読取座標値、計時手段により計時される軌跡の入力時間、検出手段により検出される圧力、および軌跡データと所定の軌跡パターンとの尤度の中の少なくとも1つの情報を用いて、選択された操作コマンドのパラメータ値を生成する生成手段と、を有するものである。
【0012】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、印刷媒体および読取部を2組以上有する対戦型のゲームシステムである。そして、生成手段は、1組の印刷媒体および読取機器の操作から得られる操作コマンドのパラメータ値を、他の少なくとも1つの組の印刷媒体および読取機器の操作から得られる操作コマンドのパラメータ値により増減させて、選択した操作コマンドの最終的なパラメータ値を生成する。
【0013】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、複数の印刷媒体のそれぞれには、互いに異なる図案とともに、互いに異なる座標値範囲へ変換可能なパターンが印刷される。変換テーブルにおいて、軌跡パターンおよび操作コマンドは各印刷媒体の座標値範囲と対応付けられている。さらに、判定手段は、座標値範囲に対応付けられている軌跡パターンを用いて一致を判定する。
【0014】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、変換テーブルにおいて、軌跡パターンおよび操作コマンドは、印刷媒体上を複数の区画に分ける座標値範囲と対応付けられている。また、判定手段は、軌跡パターンを用いて一致を判定する。
【0015】
本発明に係るゲームシステムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、変換テーブルは、軌跡パターンと対応付けられていない操作コマンドを有する。また、選択手段は、判定手段が変換テーブル中で一致する軌跡パターンを判定しない場合、所定の操作コマンドを選択する。
【0016】
本発明に係る読取機器は、印刷媒体にゲームに関する図案とともに印刷された、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンを読み取る読取部と、複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと軌跡パターンとの一致を判定する判定手段と、変換テーブルにおいて一致が判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択する選択手段と、を有するものである。
【0017】
本発明に係る他の読取機器は、印刷媒体にゲームに関する図案とともに印刷された、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンを読み取る読取部と、所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、所定の軌跡パターンと読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出する算出手段と、算出手段により算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられた操作コマンドをゲームを制御するものとして選択する選択手段と、を有するものである。
【0018】
本発明に係るゲーム用操作コマンドの生成方法は、ゲームに関する図案とともに、該印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体を読み取るステップと、複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルを用いて、読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと軌跡パターンとの一致を判定するステップと、変換テーブルにおいて一致が判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択するステップと、を有するものである。
【0019】
本発明に係る他のゲーム用操作コマンドの生成方法は、ゲームに関する図案とともに、該印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体を読み取るステップと、所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルを用いて、所定の軌跡パターンと読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出するステップと、変換テーブルにおいて算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトの動きなどがユーザにとって単調になりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームシステム、読取機器およびゲーム用操作コマンドの生成方法を、図面に基づいて説明する。読取機器は、ゲームシステムで用いる電子ペンを例として説明する。ゲーム用操作コマンドの生成方法は、ゲームシステムの動作の一部として説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るゲームシステム1を示すシステム構成図である。このゲームシステム1は、ゲーム中に登場するロボットA(オブジェクト)の動きをカード2および電子ペン3を用いて制御するゲーム用のものであり、ロボットAの図案11が印刷された印刷媒体としてのカード2と、読取機器としての電子ペン3と、変換装置4と、変換装置4が接続される表示装置5と、を有する。なお、カード2には、ロボットAの代わりに、ゴルファーなどの図案11が印刷されていてもよい。
【0023】
ロボットAの図案11が印刷されたカード2には、その図案11と重ねて複数のドットが印刷されている。この複数のドットは、所定数のドットの組合せによりそれぞれのカード2上の位置を示す座標値へ変換(デコード)可能なドットパターン12を構成する。なお、ドットパターン12が印刷される紙面の範囲がコマンドエリアとなる。
【0024】
ドットパターン12にコード化される座標値は、たとえばカード2の左上角を基準とした(x,y)による二次元の座標値である。たとえば複数のドットを3ミリメートル間隔で印刷したとき、電子ペン3は、カード2中の位置を3ミリメートル間隔毎に区分けする座標値へ変換することができる。この座標値の組合せにより、カード2には、多種多様な複数の操作コマンドや情報を対応付けることができる。
【0025】
なお、このドットパターン12は、たとえば赤外線を吸収し且つカード2と同系色のインクにより、図案11より先にカード2に印刷すればよい。このようにすることで、カード2に多数のドットを印刷したとしてもその多数のドットが目立たなくなり、カード2に印刷する図案11の美観を損ね難くなる。このドットパターン12が印刷されたカード2の美観は、ドットパターン12が印刷されていない他のカード2と同等となり、そのようなカード2と比べてカード2の収集意欲が低下してしまうことはない。むしろ、多種多様な操作コマンドを生成するためのカード2としての付加価値により、カード2の収集意欲は向上する。
【0026】
図2は、図1のゲームシステム1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0027】
電子ペン3は、赤外線LED(Light Emitting Diode)21、読取部としての赤外線カメラ22、検出手段としての圧力センサ23、無線通信I/F(Inter Face)24、これらが接続されるマイクロコンピュータ25、これらに給電する図示外のバッテリなどを有する。
【0028】
赤外線カメラ22は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサであり、受光した赤外線のパターンデータをマイクロコンピュータ25へ周期的に出力する。そして、赤外線LED21および赤外線カメラ22は、電子ペン3のペン先方向へ向けて配設される。これにより、電子ペン3の赤外線カメラ22は、そのペン先付近のドットパターン12を周期的に読み取ることができる。なお、赤外線カメラ22の替わりに、可視光を検出するカメラを使用してもよい。
【0029】
圧力センサ23は、電子ペン3のペン先に作用する筆圧を検出する。圧力センサ23は、たとえば可動可能に設けられたペン先に作用する圧力を歪みゲージなどの抵抗体で検出し、その検出値をマイクロコンピュータ25へ出力する。
【0030】
無線通信I/F24は、たとえば所謂ブルートゥース、無線LAN(Local Area Network)などの無線通信プロトコルに基づいて、他の無線通信I/F(ここでは変換装置4の無線通信I/F41)との間でデータを送受信するものである。なお、電子ペン3と変換装置4とは、通信ケーブルにより接続され、USB(Universal Serial Bus)プロトコル、E/N(Ethernet(登録商標))プロトコルなどの規格に基づいてデータを送受信するものであってもよい。
【0031】
電子ペン3のマイクロコンピュータ25は、時刻や経過時間などを計測する計時手段としてのタイマ31、メモリ32、図示外のCPU(Central Processing Unit)などを有する。メモリ32は、軌跡情報としての読取データ35などを記憶する。CPUは、メモリ32に記憶される図示外のプログラムを読み込んで実行する。これにより、電子ペン3のマイクロコンピュータ25には、座標読取部33、送信部34などの機能が実現される。
【0032】
座標読取部33は、赤外線カメラ22から周期的に供給される各パターンデータを解析し、各パターンデータに応じた読取座標値を生成する。座標読取部33は、生成した読取座標値に、タイマ31で計測される現在時刻と、圧力センサ23が検出している筆圧値とを対応付けて、メモリ32に記憶させる。これにより、メモリ32には、読取データ35が記憶される。
【0033】
図3は、図2中の読取データ35の一例を示す説明図である。読取データ35は、複数の読取座標値からなる軌跡情報を有する。また、各読取座標値には、それが生成されたときの時刻を示す時刻情報と、それが生成されたときの筆圧を示す筆圧情報とが対応付けられている。
【0034】
送信部34は、電子ペン3の無線通信I/F24による通信を管理する。送信部34は、メモリ32に記憶させる読取データ35を、送信のために電子ペン3の無線通信I/F24へ供給する。
【0035】
図2に示すように、変換装置4は、無線通信I/F41、これなどが接続されるマイクロコンピュータ42などを有する。変換装置4のマイクロコンピュータ42は、メモリ51、図示外のCPU(Central Processing Unit)などを有する。メモリ51は、受信データ52、変換テーブル53、操作コマンドデータ54などを記憶する。CPUは、メモリ51に記憶される図示外のプログラムを読み込んで実行する。これにより、変換装置4には、受信部61、操作コマンド生成部62、ゲーム処理部63などの機能が実現される。
【0036】
受信部61は、変換装置4の無線通信I/F41による通信を管理する。受信部61は、変換装置4の無線通信I/F41が電子ペン3の無線通信I/F24からデータを受信すると、そのデータをメモリ51に保存する。これにより、メモリ51には、受信データ52が記憶される。なお、変換装置4の無線通信I/F41が電子ペン3の無線通信I/F24から読取データ35を受信した場合、メモリ51には、読取データ35と同一内容の受信データ52が記憶されることになる。
【0037】
判定手段、選択手段および生成手段としての操作コマンド生成部62は、メモリ51に読取データ35が記憶されている場合、この受信した読取データ35および変換テーブル53を用いて、電子ペン3およびカード2により指定された操作コマンドおよびそのパラメータ値を生成する。操作コマンド生成部62は、生成した操作コマンドおよびそのパラメータ値をメモリ51に記憶させる。これにより、メモリ51には、操作コマンドデータ54が記憶される。
【0038】
図4は、図2中の変換テーブル53の一例を示す説明図である。変換テーブル53は、カード2の読取軌跡と比較される複数の軌跡パターンと、複数の操作コマンドとが1対1に対応付けて登録されている。変換テーブル53に登録される軌跡パターンとしては、たとえば上向きの線分による軌跡パターン(図4中の上から1番目)、右回りの略円形の線分による軌跡パターン(図4中の上から二番目)、途中で右に折れた上向きの線分による軌跡パターン(図4中の上から5番目)などがある。また、変換テーブル53に登録される操作コマンドとしては、上向きの線分による軌跡パターンと対応付けて「mov−f(x)」(xはパラメータ値)という前進の操作コマンド、右回りの略円形の線分による軌跡パターンと対応付けて「r−rot(x)」という右回転の操作コマンド、途中で右に折れた上向きの線分による軌跡パターンと対応付けて「r−punck(x)」という右パンチの操作コマンドなどがある。
【0039】
ゲーム処理部63は、表示装置5に表示させる画像を生成して表示装置5へ供給したり、音声信号を生成して図示外のスピーカへ供給したりする。また、ゲーム処理部63は、メモリ51に記憶される操作コマンドデータ54を用いて、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトであるロボットAの動きなどを制御する。
【0040】
なお、上述した電子ペン3のメモリ32に記憶されるプログラムおよび変換装置4のメモリ51に記憶されるプログラムは、これらの機器の出荷前にメモリ32,51に記憶されたものであっても、これらの機器の出荷後にメモリ32,51に記憶されたものであってもよい。また、メモリ32,51に記憶されるプログラムの一部が、これらの機器の出荷後に記憶されたものであってもよい。このように出荷後にメモリ32,51に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)や半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してサーバ装置などからダウンロードしたものであってもよい。
【0041】
また、上述した変換テーブル53やゲーム処理部63が操作コマンドに応じて実行する処理のためのデータは、変換装置4の出荷前にメモリ51に記憶されたものであっても、変換装置4の出荷後にメモリ51に記憶されたものであってもよい。特に、これら変換テーブル53などのデータは、カード2とともにユーザへ提供され、変換装置4に記憶される変換テーブル53はこの提供データにより適宜交信可能であるようにしてもよい。
【0042】
次に、以上の構成を有するゲームシステム1の動作を説明する。以下の説明では、電子ペン3とカード2とを用いたユーザの軌跡の入力操作と、それに応じた操作コマンドの生成処理とを中心に説明する。
【0043】
なお、ユーザが電子ペン3およびカード2を用いて筆跡を入力する前に、電子ペン3の無線通信I/F24と変換装置4の無線通信I/F41とは互いに通信可能な状態にあるものとする。
【0044】
ユーザは、電子ペン3を用いてカード2へ書き込みをする。このとき、電子ペン3の赤外線カメラ22は、電子ペン3のペン先の接触箇所による反射光を受光し、赤外線の受光パターンデータを周期的に出力する。座標読取部33は、各受光パターンデータが供給される度に、供給された受光パターンデータを解析し、そのパターンが印刷されたカード2中の位置を示す読取座標値を生成する。また、座標読取部33は、タイマ31からそのときの現在時刻を取得するとともに、圧力センサ23からそのときの筆圧値を取得し、これらと生成した読取座標値とを対応付けてメモリ32に記憶させる。これにより、メモリ32には、図3に示すように、ユーザが電子ペン3を用いてカード2へ書き込みをする際に赤外線カメラ22が読み取った軌跡を示す軌跡情報と、時刻情報と、筆圧情報とが対応付けて記憶される。
【0045】
電子ペン3のメモリ32に新たな読取データ35が記憶されると、送信部34は、この読取データ35を読み込んで、電子ペン3の無線通信I/F24へ供給する。電子ペン3の無線通信I/F24は、供給された読取データ35を、変換装置4の無線通信I/F41へ送信する。変換装置4の受信部61は、変換装置4の無線通信I/F41が受信したデータを変換装置4のメモリ51に記憶させる。これにより、変換装置4のメモリ51には、図3の読取データ35と同じデータを有する受信データ52が記憶される。
【0046】
図5は、図2中の操作コマンド生成部62による操作コマンドの生成処理を示すフローチャートである。変換装置4のメモリ51に新たな読取データ35が受信データ52として記憶されると(ステップST1でYesと判断すると)、操作コマンド生成部62は、操作コマンドの生成処理を開始する。
【0047】
操作コマンド生成部62は、まず、メモリ51に記憶される受信データ52から筆跡情報を読み込み、その筆跡を仮想的な二次元平面上に再現する(ステップST2)。操作コマンド生成部62は、たとえば筆跡情報を構成する複数の読取座標値を仮想的な二次元平面上にマッピングすることにより、ユーザの筆跡(軌跡)を再現する。
【0048】
ユーザの筆跡を再現した後、操作コマンド生成部62は、変換テーブル53中の複数の軌跡パターンと再現した筆跡とを比較する(ステップST3)。そして、操作コマンド生成部62は、再現した筆跡と外形が一致し、且つ、軌跡情報における複数の読取座標値の読取方向が一致する1つの軌跡パターンを特定する。
【0049】
なお、再現した筆跡と軌跡パターンとの外形の一致は、たとえば、各軌跡パターンが所定の太さの線によるものであると仮定し、その太線による各軌跡パターンの外形内に収まる再現筆跡の最大の倍率(サイズ)を算出し、その中で倍率値が最大となる軌跡パターンを選択するようにすればよい。この他にもたとえば、操作コマンド生成部62は、再現筆跡を太くして、その太線による再現筆跡の外形内に収まる各軌跡パターンの最大の倍率(サイズ)を算出し、その中で倍率値が最大となる軌跡パターンを選択するようにしてもよい。なお、操作コマンド生成部62は、変換テーブル53の先頭の軌跡パターンから順番に判定し、倍率値が所定の閾値以上となった最初のものを一致する軌跡パターンを選択するようにしてもよい。
【0050】
この閾値判定により最初に一致する軌跡パターンを選択する場合において、変換テーブル53内の複数の筆跡パターンを、たとえばロボットAに対する設定などに応じた条件でソーティングする機能を持たせてもよい。これにより、ロボットAの操作において優先的に選択される軌跡パターン(ひいては制御コマンド)を設定することが可能となる。たとえば、図4の状態においては、カード2面上を上向きに読み取る読取軌跡があったとき、上から1番目にある「mov−f(x)」という移動用の操作コマンドが選択され易いが、ソーティング処理によって、図4中の上から5番目の「r−punch(x)」という攻撃用の操作コマンドが変換テーブル53の先頭となると、この攻撃用の操作コマンドが選択され易くなる。変換テーブル53のソーティング機能により、ロボットAの動きとして、俊敏な動きを優先したり、攻撃を優先したり設定することができる。
【0051】
再現筆跡と一致する1つの軌跡パターンを特定した後、操作コマンド生成部62は、変換テーブル53において、その特定した軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドを選択する(ステップST4)。たとえば、図4において上から1番目の軌跡パターンを特定した場合、操作コマンド生成部62は、上から1番目にある「mov−f(x)」という移動用の操作コマンドを選択する。
【0052】
変換テーブル53において操作コマンドを選択した後、操作コマンド生成部62は、その選択した操作コマンドのパラメータ値を生成する(ステップST5)。操作コマンド生成部62は、たとえば受信した軌跡情報中の複数の読取座標値が示す位置間の最大距離(動かす長さ)などを、選択した操作コマンドのパラメータ値として算出する。この他にもたとえば、操作コマンド生成部62は、選択した操作コマンドに対して予め設定されている基本パラメータ値に、先の一致判定において算出した最大の倍率(サイズ)を乗算して、選択した操作コマンドのパラメータ値を算出するようにしてもよい。
【0053】
選択した操作コマンドのパラメータ値を生成すると、操作コマンド生成部62は、選択した操作コマンドおよびそのパラメータ値を、ゲーム処理へ供給するためにメモリ51に記憶させる(ステップST6)。これにより、メモリ51には、新たな操作に基づく操作コマンドデータ54が記憶される。
【0054】
メモリ51に新たなコマンドデータが記憶されると、ゲーム処理部63は、メモリ51からこの操作コマンドデータ54を読み込み、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトであるロボットAの動きなどを制御する。ゲーム処理部63は、たとえばメモリ51に「mov−f(x)」の操作コマンドが記憶されると、表示装置5に表示させている画像中のロボットAの位置を、操作コマンドのパラメータ値xの大きさに応じた距離で前へ移動させる。ゲーム処理部63は、この移動後の表示画面を生成し、表示装置5に表示させる。
【0055】
以上のように、この実施の形態のゲームシステム1では、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトを制御するための操作コマンドとして、電子ペン3の赤外線カメラ22によるカード2に印刷されたドットパターン12の読取軌跡に応じて異なる操作コマンドが選択される。したがって、たとえば1枚のカード2から異なる複数の操作コマンドを生成することができる。ユーザは、カード2と電子ペン3とを用いて、様々な操作コマンドを生成させることができる。
【0056】
しかも、操作コマンド生成部62により生成される操作コマンドは、ユーザが電子ペン3を用いて描いた軌跡の一致判定により、その複数の操作コマンドの中から選択される。各操作コマンドは、カード2の紙面上の位置に対応付けられていない。しかも、ユーザがカード2に対してたとえば前回と同じ操作コマンドを意図して軌跡を描いたとしても、その軌跡は一般的に前回の軌跡と完全に一致するものとはならない。つまり、ユーザの操作に基づいて選択される操作コマンドは、ユーザが意図したものとは異なるものとなる可能性がある。これに対して、たとえばカード2の紙面上の位置に複数の操作コマンドを対応付けた場合には、ユーザの一定の意図に基づく操作により、毎回同じ操作コマンドを選択することができる。
【0057】
このようにユーザの入力軌跡に対する一致判定により操作コマンドを選択することにより、ユーザが一定の意図の意図に基づいてした一定の入力操作(軌跡入力)に対応して一定の操作コマンドが選択されることが保証されなくなるので、ゲームを繰り返し遊んだとしてもユーザはその操作に慣れにくく、しかも、慣れた状態においても意図しない操作コマンドが生成されしまう可能性が残存し、その不確実性により、このゲームシステム1でのゲームの進行やゲーム中のオブジェクトの動きなどがユーザにとって単調なものとなりにくくなる。
【0058】
また、この実施の形態の操作コマンド生成部62は、軌跡情報中の複数の読取座標値に基づいて、選択された操作コマンドのパラメータ値を生成する。したがって、カード2においてユーザが入力した軌跡の大きさや位置に応じて、操作コマンドのパラメータ値を設定することができる。その結果、たとえばユーザは軌跡を大きく描いたり小さく描いたりすることにより、操作コマンドの強弱などをコントロールすることができる。入力する軌跡の大きさや位置により、ゲームの進行やオブジェクトの動きなどを調整することができる。
【0059】
なお、この実施の形態の操作コマンド生成部62は、受信した軌跡情報中の複数の読取座標値同士の最大距離などにより、選択した操作コマンドのパラメータ値を算出している。この他にもたとえば、操作コマンド生成部62は、受信した読取データ35中の軌跡情報、時刻情報および筆圧情報、および軌跡データと所定の軌跡パターンとの尤度(なお、尤度については後述する)の中の少なくとも1つの情報を用いて、選択した操作コマンドのパラメータ値を生成するようにしてもよい。さらに他にもたとえば、読取データ35に読取時の電子ペン3の傾きを示すデータを追加し、操作コマンド生成部62は、この読取時の電子ペン3の傾きの情報を用いて、選択した操作コマンドのパラメータ値を生成するようにしてもよい。
【0060】
たとえば時刻情報の先頭と最後との時間差などに応じてパラメータ値を調整したり、筆圧情報の最大値の大きさなどに応じてパラメータ値を調整したり、さらにはこれらを組合せてパラメータ値を調整したりしてもよい。このように、たとえばなぞる速度(筆速)、なぞる圧力(筆圧)、なぞる形状(読取座標)などによりパラメータ値を調整することにより、ユーザは軌跡の入力の仕方によってゲームの進行やオブジェクトの動きなどを調整することができる。また、電子ペン3に加速度センサなどを設け、操作コマンド生成部62は、この加速度センサにより検出される速度により、パラメータ値を調整するようにしてもよい。
【0061】
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
【0062】
上記実施の形態では、読取位置の座標値へ変換されるドットパターン12は、カード2に印刷されている。この他にもたとえば、読取位置の座標値へ変換されるドットパターン12は、冊子に印刷されていてもよい。また、1つのカード2にたとえば2つのキャラクタなどの複数の図案11が印刷されていてもよい。
【0063】
上記実施の形態では、電子ペン3を用いて、カード2のドットパターン12を読み取っている。この他にもたとえば、カメラ付き携帯電話端末、カメラを装着した携帯情報端末などにより、ゲームカード2などに印刷されたドットパターン12を読み取るようにしてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、変換テーブル53には円や直線の動きによる軌跡が軌跡パターンとして登録されている。この他にもたとえば、変換テーブル53には、軌跡パターンとして、文字、L字型、レ点、鉤、複雑な軌跡などが登録されていてもよい。これにより、たとえば、軌跡パターンの書き込みの難易度を、操作コマンドの技の難易度に応じた複雑さに設定することなどが可能となる。
【0065】
上記実施の形態では、操作コマンド生成部62は、ゲーム処理部63とともに変換装置4に設けられている。この他にもたとえば、操作コマンド生成部62やゲーム処理部63は、電子ペン3に設けられていても、さらにこの電子ペン3と接続されるたとえば電子ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯端末、ゲーム機能を備えたポータブルオーディオ機器、ゲーム機能を備えた車載用ナビゲーション装置などの別機器に設けられていてもよい。なお、操作コマンド生成部62が電子ペン3に設けられ、且つ、ゲーム処理部63が変換装置4に設けられている場合、電子ペン3から変換装置4へは操作コマンドデータ54が送信されることになる。また、電子ペン3は、表示装置5と直接に通信して、表示装置5へ画面や音声を出力するための信号を出力するものであってもよい。
【0066】
上記実施の形態では、変換装置4は、1つの電子ペン3と通信している。この他にもたとえば、変換装置4は、複数の電子ペン3と通信するものであってもよい。この変形例の場合において、操作コマンド生成部62は、各電子ペン3から受信した読取データ35毎に操作コマンドを1つずつ生成するものであっても、複数の電子ペン3から受信した複数の読取データ35により1つの操作コマンドを生成するものであってもよい。
【0067】
このように複数の電子ペン3を用いる場合においては、特に、複数のカード2に互いに異なる図案11とともに互いに異なる座標値範囲へ変換可能なパターンを印刷し、変換テーブル53において軌跡パターンおよび操作コマンドを各カード2の座標値範囲と対応付け、さらに、操作コマンド生成部62が変換テーブル53の中の、軌跡情報中の読取座標値を含む座標値範囲に対応付けられている軌跡パターンを用いて一致を判定するようにするとよい。
【0068】
図6は、野球ゲーム用のゲームシステム1におけるカード2と変換テーブル53とを示す説明図である。図6(A)は、ピッチャー用のカード2であり、(x11,y11)から(x12,y12)の座標値が対応付けられている。図6(B)は、バッター用のカード2であり、(x21,y21)から(x22,y22)の座標値が対応付けられている。そして、図6(C)の変換テーブル53では、複数の操作コマンドは、それぞれの座標値範囲に対応付けて記憶される。たとえばカーブ、シュート、ストレートなどの複数のピッチャー用の操作コマンドは、図6(A)のピッチャー用のカード2の座標値範囲「(x11,y11)−(x12,y12)」に対応付けられている。
【0069】
このように、たとえば野球ゲームなどにおいて、ピッチャー用のカード2とバッター用のカード2とを用い、変換テーブル53には、それぞれに別々の操作コマンドを割り当てることができる。特に、図6(C)の1行目と4行目の右矢印に例示するように、ピッチャー用のカード2を用いた軌跡の入力操作と、バッター用のカード2を用いた軌跡の入力操作とが同じもの(似ているもの)であったとしても、それらを区別して適切な操作コマンドを選択することができる。複数種類の図案11のカード2を使用する場合において、すべての軌跡の入力操作が互いに判別可能なものとしなくて済む。たとえばレ点などの単純な軌跡の入力により、ピッチャーの動きを操作したり、バッターの動きを操作したりすることができる。
【0070】
なお、図6(C)の変換テーブル53の3行目には、軌跡パターンと対応付けられていない操作コマンドを有する。操作コマンド生成部62は、ピッチャー用のカード2に印刷されたドットパターン12を読み取った軌跡がその上のいずれかの軌跡パターンと一致していると判断できない場合、この軌跡パターンが対応付けられていない操作コマンドを選択する。変換テーブル53にこのような操作コマンドを追加することにより、ユーザが入力操作をすれば、操作コマンド生成部62の一致判定に関係なく、操作コマンドが必ず選択されることになる。ユーザが入力操作をしたのに、ゲームの進行やゲーム中のオブジェクトが制御されなくなってしまうことを防止することができる。また、このようにユーザによる如何なる軌跡の入力操作に対しても操作コマンドの生成を保証することにより、軌跡パターンが対応付けられている操作コマンドの一致判断の基準を厳しくすることができる。ユーザの軌跡の入力操作に対して操作コマンドが生成されなくなってしまうことを危惧することなく、軌跡パターンが対応付けられている操作コマンドの一致判断のし易さを個別に設定することができる。
【0071】
この他にもたとえば、操作コマンド生成部62は、1組のカード2および電子ペン3の操作から得られる操作コマンドのパラメータ値を、他の少なくとも1つの組のカード2および電子ペン3の操作から得られる操作コマンドのパラメータ値により増減させて、選択した操作コマンドの最終的なパラメータ値を生成するようにしてもよい。これにより、たとえば対戦型ゲーム用の1組のカード2および電子ペン3の操作により攻撃用の操作コマンドが生成される場合において、防御用の他の組のカード2および電子ペン3の操作により、そのパラメータ値を増減させることができる。その結果、ゲームの競技者は、直接的に対戦している感覚(リアリティ)をより強く意識することになり、対戦型のゲームの臨場感を高めることができる。
【0072】
さらに他にもたとえば、変換テーブル53において、軌跡パターンおよび操作コマンドは、カード2の紙面を分ける複数の区画の座標値範囲毎に対応付けられていてもよい。図7は、1枚のカード2に対する複数組の操作コマンドの対応付け例を示す説明図である。図7(A)のカード2の紙面は、6つに区分けされている。なお、この紙面の分割数や区画は、図7の均等な六分割に限られるものではなく、自由な数およびサイズの組合せに区分けすることができる。
【0073】
この変形例の場合、変換テーブル53の複数の操作コマンドは、図7(B)に示すように、各区画毎の座標値範囲に分類して対応付けられる。この変形例の場合、操作コマンド生成部62は、まず、変換テーブル53の中の、軌跡情報中の読取座標値を含む区画の座標値範囲を特定し、次に、その特定した座標値範囲に対応付けられている軌跡パターンを用いて一致を判定するようにしてもよい。これにより、1枚のカード2に複数組の操作コマンドを対応付け、カード2への軌跡の入力位置に応じて異なる操作コマンドを生成させることができる。図7に示すように、たとえばロボットAの左腕の図案11と重なる区画「(x32,y32)−(x33,y33)」においては左腕による攻撃の操作コマンドを対応付け、且つ、ロボットAの右腕の図案11と重なる区画「(x31,y32)−(x32,y33)」においては右腕による攻撃の操作コマンドを対応付けることができる。
【0074】
上記実施の形態の変換テーブル53には、各操作コマンドには軌跡パターンが1つずつ対応付けられている。この他にもたとえば、操作コマンドには、複数の軌跡パターンが対応付けられていてもよい。
【0075】
図8は、複数の軌跡パターンが対応付けられた操作コマンドを有する変換テーブル53の一例を示す図である。図8において、最下行の操作コマンド「r−jump_kich(x)」には、第一軌跡パターンおよび第二軌跡パターンの2つの軌跡パターンが対応付けられている。操作コマンド生成部62は、筆跡情報を構成する複数の読取座標値を所定の基準で2組に分けて、最初の組による再現軌跡が第一軌跡パターンと一致し且つ後の組による再現軌跡が第二軌跡パターンと一致するとき、この最下行の操作コマンド「r−jump_kich(x)」を選択する。
【0076】
このように各操作コマンドに対して複数の軌跡パターンを対応付けることを可能とすることにより、操作コマンドを選択するための入力操作が、線や円などによる1つの図形に制限されなくなる。入力操作の図形は、複数の図形や、一点鎖線(非連続な点と線による図形)などによるものとすることができる。また、たとえば、カード2の同一箇所を何度もたたくことにより得られるモールス信号的な軌跡情報に基づいて、その箇所を1度だけ読み取る通常の軌跡情報とは異なる操作コマンドを選択させることも可能となる。さらにたとえば、左回りの円、上から下への線、右回りの円、左から右への線、左回りの円、上から下への線、左周りの円、右回りの円、上から下への線などのような複雑な図形の組合せにより選択される必殺技(操作コマンド)を設定することも可能となる。なお、操作コマンド生成部62は、軌跡の組合せに応じてパラメータ値を異なる値とするようにしてもよい。
【0077】
上記実施の形態では、電子ペン3による読取データ35の生成処理と、変換装置4の経路データ変換部による経路データの生成処理と、制御データ生成部による制御データの生成処理と、制御通信部による制御データの送信処理とは、それぞれ前段階の処理が完了したら順次実行されている。この他にもたとえば、これらの処理が同時並列的に実行されるようにしてもよい。
【0078】
上記実施の形態では、電子ペン3がメモリ32を有し、このメモリ32において読取データ35が生成されている。この他にもたとえば、電子ペン3がメモリ32を持たないものであり、読取データ35は、変換装置4のメモリ51などにおいて生成されるようにしてもよい。そして、この変形例での電子ペン3から変換装置4などへの読取に基づくデータの転送は、ケーブルを用いた有線通信によるものであっても、無線通信によるものであってもよい。なお、メモリを持たずに読み取りをする読取機器としては、たとえばパーソナルコンピュータに接続して使用されるタブレットペンなどがある。
【0079】
上記実施の形態では、操作コマンド生成部62は、読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと変換テーブル中の軌跡パターンとの一致を判定し、一致判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択し、さらに、軌跡データ中の複数の読取座標値に基づいて、選択された操作コマンドのパラメータ値を生成している。この他にもたとえば、操作コマンド生成部62は、手書きならではの一致のさせ方として、複数の軌跡パターンと読取部により読み取られた軌跡との尤度が最も高いもの(最も合致するもの)を一致として判定するようにしてもよい。これにより、変換テーブル53に登録された複数の軌跡パターンと一致しない軌跡が入力されたとしても、その入力軌跡に応じて異なるコマンドの選択が可能となり、ゲームはより一層単調になりにくい。
【0080】
具体的にはたとえば、操作コマンド生成部62は、登録されているコマンドに対応する各軌跡パターンと、ユーザが描いた軌跡との尤度を算出し、もっとも尤度の高い軌跡を一致と判断すればよい。これにより、登録されている軌跡パターンと差異が大きい軌跡が入力されたとしても、操作コマンド生成部62の一致判定処理においてエラーとならなくなり、エラー時に選択されるデフォルトコマンドが選択されないようにすることができる。操作コマンド生成部62は、尤度は低いが敢えて言うならもっとも近いコマンドを選択することができる。
【0081】
なお、操作コマンド生成部62による尤度の算出方法は、たとえば軌跡からいくつかの特徴量を算出して、それらの類似度合いから尤度を算出するものであっても、コマンドエリアを細かな領域に分けて、それぞれの領域に含まれる線の傾きなどから尤度を算出するものであっても、いわゆるパターン認識によるものであってもよい。
【0082】
ここで、操作コマンド生成部62は、選択したコマンドにおける尤度によって、パラメータを減少させるようにしてもよい。図9は、ユーザが描いたある軌跡に基づいて判断される各軌跡パターンとの尤度を示す図である。なお、図中には、変換テーブル53において各軌跡パターンに対応付けられているコマンド名も図示されている。この場合、操作コマンド生成部62は、尤度が最も高い「コマンド3」を選択する。そして、操作コマンド生成部62は、たとえば、該当コマンドに対する「強さのパラメータ(以下、パラメータ)」として、尤度による重み付け処理を行うようにすればよい。
【0083】
このように尤度による重み付けを用いたパラメータを利用することによって、同じ図形を描こうとしたときの個人の個性を反映させることができるようになる。また、最終的な尤度を重み付けとして用いるだけでなく、尤度算出の過程での細分化した領域などでの尤度によりパラメータの重み付け処理をすることにより、さらに個性を反映することができるようになる。
【0084】
他の具体例では、2つの軌跡パターンの中間的な軌跡が入力された場合、操作コマンド生成部62は、両者の軌跡パターンに対応する2つのコマンドの中間的なコマンドあるいは中間的な値のパラメータを設定するようにすればよい。たとえば、変換テーブル53には、「閉じた軌跡」と「キックコマンド」とを対応付けて登録する。そして、操作コマンド生成部62は、「角の数」や「直線の数」に基づいて「閉じたコマンド」に対するパラメータを算出する。具体的にはたとえば、操作コマンド生成部62は、「角の数」によりキックの高さのパラメータを算出し、「直線の数」によりキックの強さのパラメータを算出するものとする。また、それぞれ数が大きくなるほど、大きくなるものとする。
【0085】
図10は、ユーザが入力する三種類の軌跡を示す図である。そして、図10の左側の丸が入力された場合、操作コマンド生成部62は、「角の数:0、直線の数:0」と判断し、「弱いローキック」となるパラメータを算出する。また、図10の左側の三角が入力された場合、操作コマンド生成部62は、「角の数:3、直線の数:3」と判断し、「強いハイキック」となるパラメータを算出する。また、図10の真中の角がとれたオムスビ形が入力された場合、操作コマンド生成部62は、「角の数:0、直線の数:3」と判断し、「強いローキック」となるパラメータを算出する。このように、操作コマンド生成部62は、図10真中の中間的な軌跡が入力された場合、「弱いローキック」と「強いハイキック」との間の中間的なコマンドである「強いローキック」となるパラメータを算出することができる。
【0086】
さらに他の具体例では、変換テーブル53には、「○(丸)」の軌跡パターンをローキックコマンド、「△(三角)」の軌跡パターンをハイキックコマンドとして登録しておき、操作コマンド生成部62は、角がとれたおむすび形の入力軌跡に基づいて、いずれかのコマンドを選択した後、上述したような尤度算出により、実質的にそれらのコマンドの中間的な「ミドルキック」のコマンドとなるパラメータを算出するようにしてもよい。
【0087】
さらに他にもたとえば、変換テーブル53には、所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドを登録するとともに、操作コマンド生成部62は、この所定の軌跡パターンと読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出し、算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択し、さらに、軌跡データ中の複数の読取座標値に基づいて、選択された操作コマンドのパラメータを生成するようにしてもよい。この変形例の場合、操作コマンド生成部62は、算出手段、選択手段および生成手段として機能する。
【0088】
図11は、所定の軌跡パターン(たとえば円)を基準とした尤度とコマンド名とが対応付けて登録された変換テーブル53を示す図である。この場合、操作コマンド生成部62は、この所定の軌跡パターン(たとえば円)と読み取りに基づいて生成された軌跡データとの尤度を算出し、算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択し、さらに、軌跡データ中の複数の読取座標値に基づいて、選択された操作コマンドのパラメータ値を生成するようにしてもよい。たとえば、尤度が「0.3」と算出された場合、操作コマンド生成部62は、「コマンド2」を選択する。
【0089】
この他にも、操作コマンド生成部62は、読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと変換テーブル中の軌跡パターンとの一致を判定し、一致判定された軌跡パターンと対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択する方法において、軌跡データと軌跡パターンとの一致を判定できない場合に、操作コマンド生成部62は、この所定の軌跡パターンと読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出し、算出された尤度を含む尤度値範囲に対応付けられている操作コマンドをゲームを制御するものとして選択するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、カードを用いたゲームシステムにおいて好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るゲームシステムを示すシステム構成図である。
【図2】図2は、図1のゲームシステムの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2中の読取データの一例を示す説明図である。
【図4】図4は、図2中の変換テーブルの一例を示す説明図である。
【図5】図5は、図2中の操作コマンド生成部による操作コマンドの生成処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、野球ゲーム用のゲームシステムにおけるカードと変換テーブルの関係を示す説明図である。
【図7】図7は、1枚のカードに対して複数組の操作コマンドを対応付ける例を示す説明図である。
【図8】図8は、複数の軌跡パターンが対応付けられた操作コマンドを有する変換テーブルの一例を示す図である。
【図9】図9は、ユーザが描いたある軌跡に基づいて判断される各軌跡パターンとの尤度を示す図である。
【図10】図10は、ユーザが入力する三種類の軌跡を示す図である。
【図11】図11は、所定の軌跡パターン(たとえば円)を基準とした尤度とコマンド名とが対応付けて登録された変換テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 ゲームシステム
2 カード(印刷媒体)
3 電子ペン(読取機器)
11 図案
12 ドットパターン(パターン)
22 赤外線カメラ(読取部)
23 圧力センサ(検出手段)
31 タイマ(計時手段)
53 変換テーブル
62 操作コマンド生成部(判定手段、選択手段、生成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体と、
上記パターンを読み取る読取部と、
複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、
上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと上記軌跡パターンとの一致を判定する判定手段と、
上記変換テーブルにおいて一致が判定された上記軌跡パターンと対応付けられている上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択する選択手段と、
を有することを特徴とするゲームシステム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記複数の軌跡パターンと前記読取部により読み取られた軌跡との尤度が最も高いものを一致として判定すること、を特徴とする請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】
ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体と、
上記パターンを読み取る読取部と、
所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、
上記所定の軌跡パターンと上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出する算出手段と、
上記算出手段により算出された尤度を含む上記尤度値範囲に対応付けられている上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択する選択手段と、
を有することを特徴とするゲームシステム。
【請求項4】
前記軌跡データ中の前記複数の読取座標値に基づいて、前記選択された操作コマンドのパラメータ値を生成する生成手段を有すること、を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゲームシステム。
【請求項5】
前記読取部による軌跡を入力する際の時間を計測する計時手段と、
軌跡を入力する際に前記読取部を有する読取機器の先に加わる圧力を検出する検出手段と、
前記軌跡データ中の前記複数の読取座標値、上記計時手段により計時される軌跡の入力時間、上記検出手段により検出される圧力、および前記軌跡データと所定の軌跡パターンとの尤度の中の少なくとも1つの情報を用いて、前記選択された操作コマンドのパラメータ値を生成する生成手段と、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゲームシステム。
【請求項6】
前記印刷媒体および前記読取部を2組以上有する対戦型のゲームシステムであって、
前記生成手段は、1組の前記印刷媒体および前記読取機器の操作から得られる前記操作コマンドのパラメータ値を、他の少なくとも1つの組の前記印刷媒体および前記読取機器の操作から得られる前記操作コマンドのパラメータ値により増減させて、前記選択した操作コマンドの最終的なパラメータ値を生成すること、を特徴とする請求項4または5記載のゲームシステム。
【請求項7】
複数の前記印刷媒体のそれぞれには、互いに異なる図案とともに、互いに異なる座標値範囲へ変換可能なパターンが印刷され、
前記変換テーブルにおいて、前記軌跡パターンおよび前記操作コマンドは各前記印刷媒体の上記座標値範囲と対応付けられており、
前記判定手段は、上記座標値範囲に対応付けられている前記軌跡パターンを用いて一致を判定すること、
を特徴とする請求項1または2記載のゲームシステム。
【請求項8】
前記変換テーブルにおいて、前記軌跡パターンおよび前記操作コマンドは、前記印刷媒体上を複数の区画に分ける座標値範囲と対応付けられており、
前記判定手段は、上記軌跡パターンを用いて一致を判定すること、
を特徴とする請求項1または2記載のゲームシステム。
【請求項9】
前記変換テーブルは、前記軌跡パターンと対応付けられていない操作コマンドを有し、
前記選択手段は、前記判定手段が前記変換テーブル中で一致する軌跡パターンを判定しない場合、所定の操作コマンドを選択すること、
を特徴とする請求項1から5の中のいずれか1項記載のゲームシステム。
【請求項10】
ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体を読み取る読取部と、
複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、
上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと上記軌跡パターンとの一致を判定する判定手段と、
上記変換テーブルにおいて一致が判定された上記軌跡パターンと対応付けられている上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択する選択手段と、
を有することを特徴とする読取機器。
【請求項11】
ゲームに関する図案とともに、印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンが印刷された印刷媒体を読み取る読取部と、
所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルと、
上記所定の軌跡パターンと上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出する算出手段と、
上記算出手段により算出された尤度を含む上記尤度値範囲に対応付けられた上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択する選択手段と、
を有することを特徴とする読取機器。
【請求項12】
印刷媒体にゲームに関する図案とともに印刷された、該印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンを読み取るステップと、
複数の軌跡パターンと対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルを用いて、上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データと上記軌跡パターンとの一致を判定するステップと、
上記変換テーブルにおいて一致が判定された上記軌跡パターンと対応付けられている上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択するステップと、
を有することを特徴とするゲーム用操作コマンドの生成方法。
【請求項13】
印刷媒体にゲームに関する図案とともに印刷された、該印刷媒体上の位置を示す座標値へ変換可能なパターンを読み取るステップと、
所定の軌跡パターンとの尤度値範囲と対応付けて複数の操作コマンドが登録された変換テーブルを用いて、上記所定の軌跡パターンと上記読み取りに基づいて生成された複数の読取座標値からなる軌跡データとの尤度を算出するステップと、
上記変換テーブルにおいて上記算出された尤度を含む上記尤度値範囲に対応付けられている上記操作コマンドを上記ゲームを制御するものとして選択するステップと、
を有することを特徴とするゲーム用操作コマンドの生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−246041(P2008−246041A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92888(P2007−92888)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】