説明

コア−シェル型樹脂粒子

【課題】 本発明は、導電性微粒子の基材粒子等に用いた場合に接続信頼性の高い導電性微粒子を得ることが可能なコア−シェル型樹脂粒子、及び、該コア−シェル型樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子であって、前記多孔質樹脂層は、空隙率が1〜50体積%であるコア−シェル型樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子の基材粒子等に用いた場合に接続信頼性の高い導電性微粒子を得ることが可能なコア−シェル型樹脂粒子、及び、該コア−シェル型樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に異なる材料からなる層を持つ粒子(以下、「コア−シェル型粒子」ともいう)は、コア粒子に導電性、絶縁性、撥水性、親水性、分散性、耐摩耗性、接着性、着色等の機能を付与することが可能であり、種々の導電性微粒子、充填剤、色材等に応用されている。
【0003】
導電性微粒子の材料としてコア−シェル型粒子を用いる場合として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、硬質粒子の表面に軟質樹脂をコーティングしたコア−シェル型粒子を用い、更に、コア−シェル型粒子の表面を金属層で被覆した導電性粒子が開示されている。このような導電性微粒子を用いれば、熱圧着により軟質樹脂が金属薄層とともに変形し、電極と金属薄層との接続面積を増加させる一方、硬質粒子により導電性粒子全体の変形率を制御することができるとしている。
【0004】
しかしながら、これらの導電性微粒子は、実際に用いられると、軟質樹脂と金属層との密着力が低いため、金属層が剥がれてしまうことがあり、その結果、導電性が低下してしまうことがあった。また、落下等の衝撃が加わることにより金属層に亀裂ができたり、電極と導電性微粒子との接続界面が破壊されたりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−140481号公報
【特許文献2】特開2003−272445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電性微粒子の基材粒子等に用いた場合に接続信頼性の高い導電性微粒子を得ることが可能なコア−シェル型樹脂粒子、及び、該コア−シェル型樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子であって、前記多孔質樹脂層は、空隙率が1〜50体積%であるコア−シェル型樹脂粒子である。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0008】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を有する。
上記中実樹脂粒子を有することで、適度な強度や柔軟性を付与することができる。
上記中実樹脂粒子の材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等が挙げられる。
【0009】
上記中実樹脂粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が500μmである。平均粒子径が0.1μm未満であると、多孔質層を形成する際に中実樹脂粒子の凝集が起こり、500μmを超えると、表面に均一な多孔質層を形成することができにくくなる。
【0010】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、多孔質樹脂層を有する。
上記多孔質樹脂層を有することで、更に金属層を積層する場合、金属層との密着性に優れるものとなる。また、コア−シェル型樹脂粒子に液体吸収性、増粘性、光拡散性、体感性向上効果等の種々の効果を付与することができる。
上記多孔質樹脂の材質は特に限定されず、上記中実樹脂粒子と同様のものを用いてもよいが、後述する重合性モノマーから得られるポリマーを用いることが好ましい。
【0011】
上記多孔質樹脂層は、空隙率の下限が1体積%、上限が50体積%である。上記空隙率が1体積%未満であると、金属層の密着性向上などの上記多孔質樹脂層を形成する効果が充分でなく、50体積%を超えると、取扱時の強度が不足し、粒子が破壊される。上記空隙率の好ましい下限は5体積%、好ましい上限は40体積%である。
なお、本明細書において空隙率とは、コア−シェル型樹脂粒子全体積中に占める中空部体積を百分率(%)で表示したものであり、例えば、ガス吸着法細孔分布測定装置トライスター3000(島津製作所社製)を用いて封入窒素圧力0〜760mmHgの条件等にて測定することができる。
【0012】
上記多孔質樹脂層は、平均気孔径の好ましい上限が1000nmである。上記平均気孔径が1000nmを超えると、上記多孔質樹脂層を形成する効果が得られない。上記平均気孔径のより好ましい上限は600nmである。
【0013】
上記多孔質樹脂層の厚みの好ましい下限はコア−シェル型樹脂粒子の平均粒子径の1/100以上、好ましい上限はコア−シェル型樹脂粒子の平均粒子径の1/2以下である。上記多孔質樹脂層の厚みがコア−シェル型樹脂粒子の平均粒子径の1/100未満であると、上記多孔質樹脂層を形成する効果が不充分となり、平均粒子径の1/2を超えると、取扱時の強度が不足し、粒子が破壊される。
【0014】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が1000μmである。上記範囲内とすることで、生産性を低下させることなく安定して製造することができる。
【0015】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、粒子径のCV値の好ましい下限が1%、好ましい上限が60%である。上記粒子径のCV値が1%未満であると、生産性が低下し、60%を超えると、一定品質の効果が得られない。上記粒子径のCV値のより好ましい下限は2%、より好ましい上限は45%である。
なお、本明細書において上記粒子径のCV値は、下記式(1)で表される。
粒子径のCV値=(粒子径の標準偏差σ/平均粒子径Dn)×100 (1)
【0016】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、表面に多孔質樹脂層を有することから、更に金属層を積層する場合、金属層との密着性に優れ、金属層の剥がれや亀裂を防止することができ、接続信頼性の高い導電性微粒子とすることができる。
また、高い液体吸収性を有するので、インク、塗料、接着剤、艶消し剤、カラム充填剤、研磨剤、流動性制御剤、水性インク、水性塗料、コーティング剤、フィルタ等のペースト組成物用途に使用することができる。
更に、このような液体吸収性を利用して、おむつ、ナプキン、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材等の吸水用や吸油用の組成物用途、徐放性の農薬や医薬、帯電防止剤等に用いることができる。
加えて、本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、体感性向上効果が高いことから、ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドー、ボディパウダー、ベビーパウダー、プレシェーブローション、ボディローション、ローション等の化粧品を含めた体感性向上組成物として用いることができる。
なかでも、本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、導電性微粒子に使用することが好ましい。
【0017】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子は、例えば、中実樹脂粒子を水に分散させた中実樹脂粒子水分散液を調製する工程、前記中実樹脂粒子分散液と、重合性モノマー、重合開始剤及び非重合性溶剤を含有するモノマー溶液とを混合する工程、及び、前記重合性モノマーを重合させることで中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を形成する工程を有する方法によって製造することができる。このようなコア−シェル型樹脂粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0018】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法では、中実樹脂粒子を水に分散させた中実樹脂粒子水分散液を調製する工程を行う。
【0019】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法では、上記中実樹脂粒子水分散液を調製する工程において、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤を中実樹脂粒子水分散液全体に対して1〜30重量%の割合で添加することが好ましい。
【0020】
上記水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としては、使用する重合性モノマーの種類にもよるが、例えば、アルコール類、ケトン類等の水溶性の有機溶媒が好適に用いられる。上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。その他の水溶性の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル等が用いられる。
【0021】
上記水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤の添加量としては、上記中実樹脂粒子水分散液に対して、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が30重量%である。上記水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤の添加量が1重量%未満であると、後の重合性モノマーを添加する工程にて、モノマー添加が完了する前に水相の分離が生じ、空隙を有する多孔質樹脂層が得られず、30重量%を超えると、得られる粒子が凝集することがある。上記両親媒性溶媒の添加量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0022】
本発明では、次いで、上記中実樹脂粒子分散液と、重合性モノマー、重合開始剤及び非重合性溶剤を含有するモノマー溶液とを混合する工程を行う。
このような工程を行うことで、上記中実樹脂粒子を内包する微小の液滴が生成し、水に分散した分散液となる。
【0023】
上記重合性モノマーとしては、例えば、単官能性モノマー、多官能性モノマーを用いることができる。
【0024】
上記重合性モノマーを構成する単官能性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、透明性の高い多孔質樹脂層が得られることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマー、及び、スチレン等のスチレン系モノマーを用いることが好ましい。
また、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマーを用いた場合は、焼成時にすすや灰分を生じにくくなる。
【0025】
上記多官能性モノマーは、粒子の収縮を抑制し、耐圧縮強度を改善する目的で添加され、特に限定されないが、例えば、以下に示すようなジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジアリル化合物、トリアリル化合物、ジビニル化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記モノマー溶液における上記重合性モノマーの添加量は、多孔質樹脂層の空隙率を規定し、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が99重量%となるように添加する。上記モノマー溶液における重合性モノマー添加量が50重量%未満であると、得られる多孔質樹脂層の強度が低下することがあり、99重量%を超えると、得られる多孔質樹脂層の空隙率が不充分となる。
【0028】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法では、分散安定剤を添加することが好ましい。
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン等の無機物、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン等の水溶性ポリマー、あるいは、各種アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等が用いられる。
【0029】
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類等により適宜決定されるが、重合性モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0030】
上記分散安定剤と同時に添加される分散安定助剤としては、例えば、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
上記中実樹脂粒子分散液と、モノマー溶液とを混合する方法の例としては、ホモミキサー、バイオミキサー等の機械的分散機や、超音波ホモジナイザー等を用いる方法等が挙げられる。
【0032】
本発明のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法では、次いで、上記重合性モノマーを重合させる工程を行う。
【0033】
上記重合の際には、通常、重合開始剤を用いる。上記重合開始剤としては、上記重合性モノマーと相溶する油溶性のフリーラジカルを発生する化合物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、αークミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、レドックス開始剤等が挙げられる。
【0034】
上記重合においては、油滴以外の場所で重合が生じることによる新粒子の発生を抑制するために、水に無機塩や水溶性重合禁止剤を添加してもよい。上記無機塩は水中に溶解して、水に対する重合性モノマー成分の溶解度を低下させ、水での重合を抑制する働きがあり、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記水溶性重合禁止剤は、水での重合を抑制する目的で添加され、具体的には例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、塩化チタン、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0035】
本発明の方法における反応系の温度設定は、用いる重合性モノマーの組成や分子量、開始剤の種類、量等によって異なるが、通常は30〜100℃の範囲で行なわれる。
上記重合を行う際、又は、実施した後に添加する添加剤としては特に限定されず、例えば、pH調整剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
【0036】
また、重合が実質的に完結した状態においては、得られるコア−シェル型樹脂粒子の中空部(内孔)には用いた水が内包された状態で残存している。
この内包された水は必要に応じて、得られる粒子の分散液にスチーム、窒素、空気等の気体を吹き込む方法や、系を減圧条件下におく方法等により除去することができる。本発明の製造方法により得られたコア−シェル型樹脂粒子は乾燥させ、粉体として用途に供することもできる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、導電性微粒子の基材粒子等に用いた場合に接続信頼性の高い導電性微粒子を得ることが可能なコア−シェル型樹脂粒子、及び、該コア−シェル型樹脂粒子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
イオン交換水に、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としてのエタノール、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)及び水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを添加し、エタノール濃度が5重量%、PVA濃度が1重量%、亜硝酸ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液を調製した。
得られた水溶液900重量部に平均粒子径8μm、CV値5%の架橋ポリメチルメタクリレート粒子70重量部を添加した後、攪拌分散装置により攪拌し、樹脂粒子水分散液を得た。
同時に、単官能性モノマーとしてのメチルメタクリレート10重量部と、多官能性モノマーとしてのトリメチロールプロパントリアクリレート5重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15重量部と、非重合性溶剤としてのシクロヘキサン15重量部とを混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液と樹脂粒子水分散液とを混合し、12時間攪拌した。
その後、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20リットルの重合器を用意し、該重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った。次いで、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした後、得られた混合液を一括投入し、重合器を70℃まで昇温させることで、重合を開始した。4時間重合させた後、重合器を室温まで冷却した。このようにして得られたスラリーを脱水装置により脱水した後、真空乾燥することにより、シェル層として多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子を得た。
なお、得られた多孔質樹脂層の多孔質樹脂層の厚みを走査型電子顕微鏡にて計測したところ0.5μmであった。
【0040】
(実施例2)
イオン交換水に、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としての酢酸エチル、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)及び水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを添加し、酢酸エチル濃度が3重量%、PVA濃度が1重量%、亜硝酸ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液を調製した。
得られた水溶液900重量部に平均粒子径55μm、CV値35%の架橋ポリスチレン粒子70重量部を添加した後、攪拌分散装置により攪拌し、樹脂粒子水分散液を得た。
同時に、単官能性モノマーとしてのスチレン20重量部と、多官能性モノマーとしてのジビニルベンゼン7重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15重量部と、非重合性溶剤としてのトルエン3重量部とを混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液と樹脂粒子水分散液とを混合し、12時間攪拌した。以下、実施例1と同様にして、シェル層として多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子を得た。
なお、得られた多孔質樹脂層の多孔質樹脂層の厚みを走査型電子顕微鏡にて計測したところ6μmであった。
【0041】
(実施例3)
イオン交換水に、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としてのメタノール、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)及び水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを添加し、メタノール濃度が10重量%、PVA濃度が1重量%、亜硝酸ナトリウム濃度が0.02重量%の水溶液を調製した。
得られた水溶液900重量部に平均粒子径0.75μm、CV値8.0%の架橋ポリメチルメタクリレート粒子50重量部を添加した後、攪拌分散装置により攪拌し、樹脂粒子水分散液を得た。
同時に、単官能性モノマーとしてのイゾブチルメタクリレート10重量部と、多官能性モノマーとしてのトリメチロールプロパントリメタクリレート10重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部と、非重合性溶剤としてのシクロヘキサン30重量部とを混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液と樹脂粒子水分散液とを混合し、12時間攪拌した。以下、実施例1と同様にして、シェル層として多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子を得た。
なお、得られた多孔質樹脂層の多孔質樹脂層の厚みを走査型電子顕微鏡にて計測したところ0.1μmであった。
【0042】
(比較例1)
単官能性モノマーとしてのメチルメタクリレート20重量部と、多官能性モノマーとしてのトリメチロールプロパントリアクリレート10重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15重量部を混合、攪拌し、非重合性溶剤を添加せずモノマー溶液を調製した以外は実施例1と同様にしてコア−シェル型樹脂粒子を得た。なお、得られた樹脂粒子の断面を走査型電子顕微鏡で評価したところ、多孔質層は観察されなかった。
【0043】
(比較例2)
下記以外は実施例2と同様にしてコア−シェル型樹脂粒子を得た。水溶液900重量部に平均粒子径25μm、CV値35%の架橋ポリスチレン粒子25重量部を添加した後、攪拌分散装置により攪拌し、樹脂粒子水分散液を得た。
同時に、単官能性モノマーとしてのスチレン10重量部と、多官能性モノマーとしてのジビニルベンゼン5重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部と、非重合性溶剤としてのトルエン60重量部とを混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。得られた多孔質樹脂層の多孔質樹脂層の厚みを走査型電子顕微鏡にて計測したところ6.5μmであった。
【0044】
(比較例3)
水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としてのエタノールを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてコア−シェル型樹脂粒子の合成を試みた。しかしながらモノマー溶液と樹脂粒子水分散液とを混合し、12時間攪拌する過程においてモノマーの分離が見られ、コア−シェル型樹脂粒子は得られなかった。
【0045】
(比較例4)
イオン交換水に、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤としてのエタノール、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)及び水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを添加し水溶液を調製するに際し、エタノール濃度を50重量%としたこと以外は実施例1と同様にしてコア−シェル型樹脂粒子の合成を試みた。しかしながら重合開始直後から粒子の凝集が見られ、コア−シェル型樹脂粒子は得られなかった。
【0046】
<評価>
実施例及び比較例で得られた樹脂粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
(1)樹脂粒子の平均粒子径及びCV値
得られた樹脂粒子について、レーザー回折粒度分布計(LA−910、堀場製作所社製)を用いて体積平均粒子径及びCV値を測定した。
【0048】
(2)樹脂粒子(多孔質樹脂層)の気孔径及び空隙率
得られた樹脂粒子の多孔質樹脂層について、ガス吸着法細孔分布測定装置トライスター3000(島津製作所社製)を用いて封入窒素圧力0〜760mmHgの条件にて測定し、平均気孔径及び空隙率を求めた。
【0049】
(3)金属メッキ層の密着性
実施例及び比較例で得られた樹脂粒子について、脱脂、センシタイジング、アクチベイチングを行い表面にPd核を生成させ、無電解メッキの触媒核とした。次に、建浴、加温した無電解Niメッキ浴に浸漬し、Niメッキ層を形成した。次に、ニッケル層の表面に無電解置換銅メッキを行うことで金属メッキ層を形成し導電性粒子を得た。
得られた導電性微粒子1gを10mLのイオン交換水に分散させ、超音波照射装置(アズワン製「USD−1R」)を用いて、超音波照射(50℃、2時間、28kHz)を行った。照射後の導電性微粒子を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)にて2000倍で観察し、任意の導電性微粒子100個において、金属メッキ層の割れが生じている導電性微粒子の個数を確認し、以下の基準により金属メッキ層の密着性を評価した。
○ 金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が10個未満
△ 金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が10個以上50個未満
× 金属メッキ層の割れが確認された導電性微粒子が50個以上
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、導電性微粒子の基材粒子等に用いた場合に接続信頼性の高い導電性微粒子を得ることが可能なコア−シェル型樹脂粒子、及び、該コア−シェル型樹脂粒子の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を有するコア−シェル型樹脂粒子であって、
前記多孔質樹脂層は、空隙率が1〜50体積%である
ことを特徴とするコア−シェル型樹脂粒子。
【請求項2】
多孔質樹脂層は、平均気孔径が1000nm以下であることを特徴とする請求項1記載のコア−シェル型樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法であって、
中実樹脂粒子を水に分散させた中実樹脂粒子水分散液を調製する工程、
前記中実樹脂粒子分散液と、重合性モノマー、重合開始剤及び非重合性溶剤を含有するモノマー溶液とを混合する工程、及び、
前記重合性モノマーを重合させることで中実樹脂粒子の表面に多孔質樹脂層を形成する工程を有する
ことを特徴とするコア−シェル型樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
中実樹脂粒子水分散液を調製する工程において、水及び重合性モノマーの両方に相溶する有機溶剤を中実樹脂粒子水分散液全体に対して1〜30重量%の割合で添加することを特徴とする請求項3記載のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
重合性モノマーが多官能性モノマーを含有することを特徴とする請求項3又は4記載のコア−シェル型樹脂粒子の製造方法。


【公開番号】特開2011−74148(P2011−74148A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225127(P2009−225127)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】