説明

コアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法

本発明はコアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法に関し、且つ複合コアセルベーションにおける架橋のためにトランスグルタミナーゼを使用することに関する。本発明はさらに、一般に、カプセル化される材料を、コロイドのゲル化温度より下で、少なくとも1つのコロイドを含む溶液に添加するコアセルベーション法に関する。本発明の方法によれば、エマルジョン/疎水性材料の懸濁液が、親水コロイドを含む溶液をコアセルベート相の臨界ゲル化温度より下に冷却した後に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法、および複合コアセルベーションにおける架橋のためのトランスグルタミナーゼの使用に関する。本発明はさらに、カプセル化される材料を、コロイドのゲル化温度より下で、少なくとも1つのコロイドを含む溶液に添加する、コアセルベーション法に関する。
【0002】
発明の背景と解決するべき課題
コアセルベーション法の典型的な工程は、一般に(a)親水コロイドを含む溶液中で、一般に疎水性材料の乳化、(b)コアセルベート相の形成を含むコアセルベーション(相分離)、(c)親水コロイドが乳化した疎水材料の液滴の周りに凝集することによる壁形成、および(d)壁の硬化を含み、前記硬化は一般に、壁を形成する親水コロイドが架橋することによって得られ、ゆえに過程が不可逆になり、得られるマイクロカプセルを水不溶性にし、機械的な応力および熱暴露に耐性にする。
【0003】
壁形成の工程は一般に、コアセルベーション相、水、および疎水材料の間の表面張力差によって起きる。多くの産業上のコアセルベーション法では、コアセルベーション法に用いられる親水コロイドの1つが、ゲル化可能な蛋白質から選択される。ゲル化可能ではない親水コロイドと比較すると、それらは使いやすく、壁形成の後、温度がゲル化温度より低いときに凝集がより少ない傾向がある。ゲル化はまた、一般にゲル化可能な親水コロイドのゲル化点より下に、混合の反応温度を下げることによってもたらされる。よく知られたこの原理は、米国2,800,457号内に例示されており、そこで複合コアセルベーションの過程が詳細に開示されている。第一欄において、本混合物は、それゆえに1つのコロイドの水性ゾルを形成し、ここで選択された油脂を乳化し、エマルジョンを他のコロイドの水性ゾルと混合することによって製造され、あるいは2つのゾルを製造し、混合して油脂をそこで乳化する、と記載されている。[...]本方法の工程は、ゼラチン工程以降で、使用するコロイド材料のゲル化点より高い温度で、前記成分を用いて実施され、ゲル化は冷却によってもたらされる。
【0004】
同様に、GB920,868号およびWO2004/022220号A1の両方は、ゲル化点より高い温度で、カプセル化される疎水性材料を含むエマルジョンの形成について開示している。
【0005】
今日、多くの産業のコアセルベーション法は未だこの原理に則って実行されている。この観点では、本発明の課題は、コアセルベーションによってマイクロカプセルを生産するための異なる方法を確立することである。特に、本発明の課題は、加熱工程の時間を減らし、合計の行程時間を短くすることである。
【0006】
本発明のさらなる課題は、壁硬化工程に関する。既に数年間、有害だという理由で、硬化剤としてのグルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドを、親水コロイドの架橋のためにトランスグルタミナーゼを用いた酵素処理で置き換えるための努力がなされている。トランスグルタミナーゼは、至適温度範囲が45〜55℃であり、至適pHが約6〜7の酵素である。
【0007】
従って、US6,475,542号B1およびUS6,592,916号B2は、単純コアセルベーション法を開示しており、そこにおいて架橋工程は30℃で開始されるが、その後40℃に上げられた温度で実施され、酵素の至適温度に近づく。これらの参考文献においては、酵素反応は通常10〜60℃で行われると記載されている。
【0008】
EP0,856,355号A2において、トランスグルタミナーゼによる架橋との複合コアセルベーション法が開示されている。この教示によれば、複合コアセルベーションにおける架橋中の温度は、20℃〜27℃、あるいは5〜10℃に調整されてよいが、好ましくは後者である。この低い温度では、pHは好ましくは至適pH、即ち7に調整される。同様に、US6,969,530号B1においても、架橋は非常に低い温度、好ましくは5℃で行われる。
【0009】
トランスグルタミナーゼによる架橋についての先行技術の観点では、これまでに開示されたものと異なる条件でトランスグルタミナーゼを用いるコアセルベーション法を提供することが目的である。特に、極端な温度への長時間の冷却および/または加熱を必要としない温度での複合コアセルベーションによる、産業的に実現可能なマイクロカプセル化法を提供することが目的である。室温あるいは室温よりわずかに上ではあるが酵素の至適温度の50℃よりはまだ低い温度で架橋を行い、余計な加熱によるエネルギー消費を避けることが目的である。特に、トランスグルタミナーゼによる硬化工程は、一般に5〜24時間かかり、それ故に全体の生産過程の中で最も長い工程であり、高温(30℃またはそれより上)あるいは室温より低い温度(10℃またはそれより下)での保持を避けることには、きわめて大きな興味がもたれている。言い換えれば、全体的により安全で、より経済的な、コアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法を提供することが、本発明の課題である。
【0010】
高揮発性および/または熱感受性の化合物を含む、多くの種類の異なる材料をカプセル化するのに有用である方法を提供することが、本発明の課題である。風味剤および芳香剤は、本カテゴリに分類される。特に、カプセル化工程の間にカプセル化される材料の揮発性成分の損失を減らすのが目的である。この理由のため、比較的低い温度でのマイクロカプセル化方法を提供し、それ故に蒸発による揮発分の損失を避けられることが課題である。さらには、生物活性成分、例えば風味剤、芳香剤、薬品などは、熱感受性の化合物を包含する。前記化合物の劣化を避けるために、低温カプセル化法はさらなる利点を提供する。
【0011】
さらには、本発明は、世界中の宗教および/または栄養の要請を満たすマイクロカプセルを提供するという課題を有する。特に、本発明は、親水コロイド、および特にカシェルおよび/またはハラールであるゼラチンを使用することが課題である。
【0012】
この点において、WO96/20612号は、コアセルベーション法において温水魚ゼラチンの使用を特徴としている。従って、複合コアセルベーションを高温、とりわけ約33〜35℃の温度で行う必要があることを教示している。本参考文献における"マイクロカプセル化"の工程が、おそらく壁形成の工程に注目している一方で、改めて、本発明の課題は、より低温、それ故により経済的な方法でのマイクロカプセルを生産することである。本発明の課題は一般にコアセルベーション法において温水魚ゼラチンを使用することで、それは良好な熱耐性および剪断力に対しての物理的安定性を有するカプセル壁を提供することを示しているからである。さらには、魚ゼラチンは、ハラール状態の許しを得ており、一方でカシェルである。
【0013】
温水魚ゼラチンのゲル化温度を一般に27℃以上と仮定して、現在の認識では、この温度より下で複合コアセルベーション法を実施することは事実上、不可能に見える。そこで、本発明の課題は、コアセルベーション法において温水魚ゼラチンを使用することであり、特に複合コアセルベーション法において、同時に、先行技術内で示されているよりも低い温度でマイクロカプセル化(壁形成)の工程を実施することである。
【0014】
発明の要旨
特に、本発明者らは、コアセルベーション法において、疎水性材料を親水コロイド溶液に添加する工程を、一般にゼラチンを含むコアセルベーション相のゲル化温度より低い温度で行うことができることを見出した。一般的な認識による教示とは全く異なり、コアセルベーションで得られるマイクロカプセルの壁の形成は、ゼラチンベースのコアセルベート相のゲル化温度より下で開始することができる。
【0015】
従って、第一の側面で本発明は、コアセルベーションによって疎水性材料をマイクロカプセル化する方法において、
少なくとも1つの蛋白質および随意に非蛋白質ポリマーを水に溶かして親水コロイド溶液を製造し、
親水コロイド溶液を、前記蛋白質に基づいたコアセルベート相のゲル化温度より低い温度に冷却し、
冷却工程の後に、溶液中で疎水材料を乳化および/または懸濁することによって、エマルジョンおよび/または懸濁液を製造し、
エマルジョンおよび/または懸濁液中に存在する疎水材料の液滴および/または粒子まわりに蛋白質を含むコロイド壁を形成し、そして
コロイド壁を架橋させる
工程を含む方法を提供する。
【0016】
さらなる側面で本発明は、複合コアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法において、マイクロカプセルの親水コロイド壁をトランスグルタミナーゼで温度範囲13〜25℃およびpH範囲4〜6.5で架橋させる工程を含む方法を提供する。
【0017】
他の側面で本発明は、複合コアセルベーションによるマイクロカプセルの製造方法において、温水魚ゼラチンを含む親水コロイド壁をトランスグルタミナーゼで温度範囲13〜25℃で架橋する工程を含む方法を提供する。
【0018】
本発明の重要な利点は、大部分は、本発明のコアセルベーション法が、もし所望であれば室温(RT=25℃)、あるいは室温よりわずかに高い、あるいは低い温度、例えば室温±10℃で実施することができるという事実である。従って、別の方法では必要とされる冷却および/または加熱のためのエネルギー消費が最小化され得る。さらには、工程が広範囲の加熱なしで行われれば、揮発成分の蒸発および/または熱分解による損失が減少され得る。特に、本方法は、随意に揮発性および/または熱感受性の疎水材料を含んで、それらの工程を比較的低い温度で実施することを可能にし、一方で、他の工程、例えば親水コロイドの溶解など、は高温のままで実施することができる。
【0019】
驚くべきことに、本発明の方法では、相分離がpHを下げることでもたらされる場合、架橋工程は相分離のために調整されたpH付近で実施され得る。従って、それぞれの工程に最適なpHの調整の繰り返しが減らされる。
【0020】
驚くべきことに、本発明は温水魚ゼラチンの利用およびトランスグルタミナーゼによる架橋を提供し、それは一般に安全性の点で、並びにハラールおよびカシェル状態での利点を伴う。
【0021】
図面の簡単な説明
図1は、温度および攪拌速度の変化、並びに本発明による方法の過程における主なプロセス段階を示す。工程Aは、アラビアゴムおよびゼラチンの希釈溶液の製造であり、Bは速い冷却工程を表し、Cは油性相の導入であり、相Dの間、温度は25℃に保たれ、工程Eの間、最終温度への冷却が生じる。
図2は、実施例2で得られたマイクロカプセルの顕微鏡像である。
図3は、実施例3で得られたマイクロカプセルの顕微鏡像である。
【0022】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明はコアセルベーションによる疎水材料のマイクロカプセル化方法を提供する。本発明の目的では、疎水材料は、本発明の方法の間、液体あるいは固体状態であってよい。好ましくは液体である。疎水材料は一般に、25℃で水に混和しない材料であるとみなされ、それに添加したとき、分離した疎水相を形成する。本発明の目的で、疎水材料という用語は、コアセルベーション法で一般に用いられる温度、即ち約50℃以下で固体状態である材料を含む。前記の固体材料は、例えば結晶の形態で存在してもよい。好ましくは、前記固体材料が融点より上の加熱で液化する場合、その温度の水の中で分離層を形成する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様によれば、疎水材料は風味剤、芳香剤、脂肪、油脂、口当たり強化剤、栄養薬剤(neutraceuticals)、薬剤、他の生物活性材料、あるいはそれらの混合物を含む。
【0024】
"風味剤"および"芳香剤"の用語は、ここでは、天然および合成由来の様々な風味および芳香材料を定義していると考えられる。それらは単体化合物あるいは混合物を含む。前記化合物の特定の例は、文献内、例えばFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients, 1975, CRC Press、synthetic Food Adjuncts 1947 M.B.Jacobs著、van Nostrand編集、またはPerfume and Flavor Chemicals, S.Arctander著,1969,Montclair, N.J.(USA)で見つけられる。それらの物質は、芳香、風味および/または芳香性の商品、即ち匂いおよび/または風味あるいは味を、従来的に芳香あるいは風味付いた商品に付与する、あるいは商品の匂いおよび/または味を修正する分野の当業者には公知である。
【0025】
栄養薬剤は、食用の材料、例えば、摂取によって医学上または健康上の恩恵を人間または動物個体に与える食品あるいは食材である。栄養薬剤は、例えば多価不飽和脂肪酸および/またはそれらを含む油脂、ビタミン、ミネラル、コエンザイムQ、カルニチン、植物抽出物、例えば高麗人参、二葉銀杏、セントジョーンズワート、ノコギリヤシ、機能性食品、例えばオート、ブラン、オオバコ、リグニン、プレバイオティクス(prebiotics)、キャノーラ油およびスタノールなどを含む。好ましくは、疎水材料は風味剤および/または芳香剤を含む。多くの生物活性成分、しかし特に風味剤および/または芳香剤、あるいは風味剤および/または芳香剤の組成物が、高い比率の揮発性化合物および/または成分を有する。
【0026】
従って、1つの実施態様において、材料は少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、そして最も好ましくは少なくとも40%の、25℃で蒸気圧0.007Pa以上を有する化学化合物を含む。
【0027】
好ましくは少なくとも10質量%が蒸気圧0.1以上を有し、より好ましくは10質量%が25℃での蒸気圧1Pa以上を有し、そして最も好ましくは少なくとも10質量%が25℃での蒸気圧10Pa以上を有する。25℃で0.007Paという値は、それが風味および/または芳香業の当事者によって用いられるほとんどの化合物を含むので、選択される。それらの基準に合致する化合物は、一般に揮発特性を有するとみなされている。さらには、揮発性が低いために無臭のままである化合物は除外される。前記化合物の10質量%の限定は、材料の実質的な部分を構成するとみなされる。しかしながら、本発明の方法はより多い量の全材料内に存在するより多くの揮発材料の効率的なカプセル化を可能にする。
【0028】
本発明の目的および利便上の目的で、蒸気圧は計算によって決定される。従って、"EPI suite",2000,米国環境保護局、内に開示されている方法が、特定の化合物あるいは材料の成分の蒸気圧の具体的な値を決定するのに用いられる。前記のソフトウェアは、無償で利用可能であり、様々な科学者の種々の方法によって得られた蒸気圧の平均値に基づいている。
【0029】
芳香化合物リモネンが、"EPI suite"法を適用した計算による蒸気圧の同定の例として提示され、リモネンは25℃で約193Paの蒸気圧を有すると計算される。
【0030】
本発明の方法の1つは、少なくとも1つの蛋白質、および随意に非蛋白質ポリマーを水に溶解することによって親水コロイド溶液を製造する段階を含む。好ましくは、非蛋白質ポリマーは蛋白質と逆極性に帯電している。本発明の目的では、"含む"あるいは"含んでいる"の語は、"他のものの中に含まれている"を意味すると意図している。"それだけで構成されている"を意味する意図はない。
【0031】
本発明は、"単純"および"複合"コアセルベーションを含む。単純コアセルベーションにおいては蛋白質だけを用い、相分離が起きるときにカプセル壁が形成される。複合コアセルベーションは、一般に逆極性に帯電された非蛋白質ポリマーおよび蛋白質ポリマーがカプセル壁を一緒に形成する方法を指す。複合コアセルベーションの原理によれば、本発明の方法は、逆極性に帯電された非蛋白質ポリマー、好ましくは多糖類を親水コロイド溶液に任意に添加することを提供する。
【0032】
コロイドという用語は、一般に親水コロイドのことを指し、それはポリマー状の物質であり、随意に例えば90℃までの高温で、水に溶解され得る。それらはポリマー、例えば蛋白質、多糖類、および多価酸などを含み、それらは一般にコアセルベーション法で有用として知られている。
【0033】
複合コアセルベーション法で有用な典型的な非蛋白質ポリマーは、特に、負に帯電されたポリマーを含む。例えば、それらはアラビアゴム、キサンタン、アルギン酸塩、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ペクチン酸塩、カラギーナン、ポリアクリル酸およびメタクリル酸、および/またはそれらの混合物から選択されてもよい。さらなる適した非蛋白質は、文献、例えばWO2004/022221号、4ページ、27〜29行目から引用できる。
【0034】
コアセルベーション法において有用な蛋白質は、アルブミン、植物性グロブリン、およびゼラチンを含む。蛋白質の分子量は、典型的には、40000〜50000、好ましくは20000〜250000のオーダーである。しかしながら、複数の蛋白質が100万台の分子量を有していてもよい。
【0035】
好ましくは、蛋白質はゼラチンである。良好な物理化学的および化学的特性を有するゼラチンを使用することが好まれる。なぜなら、良好な膜形成能力、両性特性、pHによる帯電量の制御性、および好ましくは臨界温度で溶液からゲルへの変化の発現によって特徴付けられるためである。特に述べられたように、マイクロカプセルの製造において用いられるための仕様を満たす任意のゼラチンが用いられてよい。
【0036】
ゼラチンは、例えば魚、豚肉、牛肉、および/または鶏肉ゼラチンであってよい。好ましい実施態様によれば、蛋白質は魚、牛肉あるいは鶏肉ゼラチンである。より好ましい実施態様によれば、蛋白質は温水魚ゼラチンである。好ましくは、温水魚ゼラチンは約150〜約300ブルーム、より好ましくは約200〜約300ブルームのブルームを有している。好ましくは、温水魚ゼラチンは、250ブルーム以上を有している。一般的な認識によれば、温水魚とは、27℃より高温の水に長時間耐えうる魚である。
【0037】
本発明の好ましい実施態様によれば、蛋白質はハラールである。さらに好ましい実施態様によれば、蛋白質はカシェルである。
【0038】
好ましくは、水性の親水コロイド溶液内で、蛋白質は0.5〜3.5質量%、好ましくは1〜2質量%からの量で存在する。
【0039】
存在するならば、多糖類は、水溶液内に0.5〜3.5質量%、好ましくは1〜2質量%からの量で存在する。
【0040】
上記の濃度は、任意の希釈工程の後で得られることができ、その工程の間に、より濃縮された貯蔵液は、コアセルベート相および/またはカプセル壁の形成を含む工程に有用である濃度にされる。より濃縮された貯蔵液から開始する1つの利点は、より濃縮された親水コロイド溶液内において、エマルジョン粒子のサイズがより制御しやすいためである。
【0041】
好ましい実施態様によれば、本発明の方法はコアセルベート相の形成を誘発する工程を含む。コアセルベート相は一般に、蛋白質、随意に非ポリマー化合物に基づく。この工程は、相分離とも呼ばれる。この工程は好ましくは、pHを蛋白質の等電点より下に修正、好ましくは下げることによって遂行されてもよい。非蛋白質ポリマー、例えば多糖類が存在すれば、pHは、好ましくは蛋白質上の正電荷が非蛋白質ポリマー上の負電荷によって中性化されるように調整される。
【0042】
相分離は、様々な他の方法、一般には溶液の物理化学的環境を変えることによって誘発されてもよい。コアセルベーション法の種類(単純、複合)によって、相分離誘発の種々の方法を適用し得る。例えば相分離は、例えば塩析、壁材料の均質な相分離誘発のための第二の高分子量化合物の添加によって実現されてもよい。
【0043】
本発明の方法は、親水コロイド溶液を、ゼラチンに基づくコアセルベート相のゲル化温度より下の温度に冷却する工程を含んでもよい。単純コアセルベーション法において、コアセルベート相は、多糖類を有さないが、複合コアセルベーション法においては、コアセルベート相は蛋白質および少なくとも1つの多糖類を含む。便宜上、本発明の目的では、本発明のコアセルベーション法で用いられるゲル化可能な蛋白質のゲル化温度は、本発明のコアセルベート相のゲル化温度と等しいとみなされている。
【0044】
ゲル化可能な蛋白質、好ましくはゼラチンのゲル化温度の同定は、部分的には実験によって設定される必要がある。本発明の目的では、ゲル化温度はNormand V. and Parker A.によって"Scaling the Dynamics of Gelatin Gels",3rd International Symposium on Food Rheology and Structure,2003,185−189に記載された臨界温度Tcに対応する。
【0045】
任意の所定のゲル化可能蛋白質のTc温度は、系においてゲル形成力学がゲル溶解力学を超える温度に対応する。興味深いことに、NormandとParkerによって2003年に示されたように、任意の特定のゲル化可能蛋白質の臨界温度は、ゲル形成動態への濃度の影響力にかかわらず濃度に対して独立である。
【0046】
従って、本発明の目的では、±1℃の精度でゲル化温度TcがNormand and Parker、2003内の式1に基づいて同定された
【数1】

[式中、
εは換算温度、ε=1−T/Tc℃であり、
Cは重量分率として表される濃度であり、tは時間、およびg(x)はNormand and Parker(2003)による標準曲線の形状を決定するスケール関数である]。
4つの指数および臨界濃度Ccはフィッティングパラメーターである。本発明の目的では、指数は一定であるとみなされ、即ち、α=3.2、β=−9.3、μ=2.3およびν=−2.6である。Ccは、ゼロであると見なされている。それらの値は近似的な単純化を用いているが、一般にほとんどのゼラチンが遭遇する状況に一致していることがわかっている。
【0047】
Tcを算出するための唯一の未知要素G(t)の決定のための値は、以下に提供される実験条件によって実験的に測定される。
【0048】
従って、Physica MCR 300流動計が用いられ(Anton Paar GmbH、ドイツ、www.anton−paar.com)、直径5cm、角度2゜の円錐とプレートの配置で固定した。ギャップは50μmである。周波数1Hzおよび一定の1%ひずみで振動測定を行う。
【0049】
4つの個々の実験を20時間の間行い、その間のゲル形成をモニターする。これらの実験から、標準曲線が設定され、ここから臨界温度TcをNormand and Parker(2003)に従って導出することができる。特に、ゲル化可能な蛋白質の4つの水溶液を製造し、それらの2つは5質量%で、他の2つは10質量%の濃度である。溶液を60℃に加熱し、軽いかき混ぜ条件の下で、30分間、その温度で維持して、ゼラチンを水に溶解することによって溶液を製造する。これに続いて、溶液を2℃/分の速度で試験温度に冷却する。
【0050】
2つの濃度それぞれに対して、2つの実験温度、15℃および20℃がそれぞれ試験される。
【0051】
所定の試料に対する実験温度に到達する時間から開始し、G(t)の流動性測定を上に示した振動によって行う。G(t)のために得られた値は、形成しているゲルによって供給される機械的な抵抗を特徴付ける。G(t)測定は、合計20時間、最初の1時間は1分おきに、次の1時間は10分おきに、そして3時間目の始め以降は1時間に1回行われる。4つの試料それぞれの時間による測定から得られた値から、Normand and Parker(2003)の図1と似た曲線が設定される。臨界温度は、他のパラメーター(Cc、α、β、μ、ν)が一定で、測定値に最もよく合うものが得られたときの温度Tcである。最も良く合うものは、式1に基づく標準曲線によって表され、それはNormand and Parker(2003)の図2に対応する。このようにして、臨界温度は精度±1℃で、上述のように決定された。従って、式1と共に上記の実験条件から、所定のゲル化可能蛋白質の臨界ゲル化温度を設定することができる。本発明の方法に従って、ゲル化可能な蛋白質を含む親水コロイド溶液を、コアセルベート相のゲル化温度として得られたこの温度より下に冷却する。
【0052】
例証のために、豚肉ゼラチンのゲル化温度は一般に29℃〜36℃の範囲であると述べることができる。しかしながら、例えば任意の豚肉、牛肉、鶏肉あるいは温水魚ゼラチンから選択される任意のゼラチンの正確なゲル化温度は、上記の方法論によって決定されてもよい。本発明によれば、溶液の温度を好ましくはそれらの温度よりも下に下げる。本発明の1つの方法によれば、さらに下に詳述されるように、冷却工程は疎水材料を添加する前に行う。従って、疎水材料を添加する前に、溶液を、用いられるゼラチンのゲル化温度より、0〜5℃、好ましくは1〜4℃、より好ましくは2〜3℃低い温度に冷却する。
【0053】
好ましい実施態様によれば、疎水材料を22〜33℃、好ましくは24〜32℃の範囲の温度を有する溶液に添加する。ゼラチンなどのゲル化可能な蛋白質の実施例で上に示されたように、正確な温度は、使用される特定の蛋白質のゲル化温度に依存する。
【0054】
本発明の方法は、冷却工程の後で、溶液中で疎水材料を乳化および/または懸濁することによって、エマルジョンおよび/または懸濁液を製造する工程を含んでもよい。好ましくは、冷却工程は懸濁液あるいはエマルジョンによって疎水材料を加える添加に先行し、比較的素早く行う。例えば、この冷却工程を、好ましくは約1.4〜4℃/分、好ましくは1.8〜2.5℃/分で行う。
【0055】
エマルジョンおよび/または懸濁液を、従来の方法で製造してもよい。好ましくは、疎水材料を3〜10分の間、好ましくは4〜6分の間、攪拌機を300〜400RPMに調整して、ゆっくりと添加する。攪拌速度の調整によって、疎水材料の乳化された液滴を平均直径20〜1000μm、好ましくは100〜800、より好ましくは150〜700μm、そして最も好ましくは250〜350μmに調整することができる。平均とは、相加平均を指す。単純化のために、乳化された液滴あるいは懸濁粒子の直径を、本発明のマイクロカプセルのサイズとして採用した。
【0056】
本発明の方法は、エマルジョンおよび/または懸濁液中に存在する疎水材料の液滴を囲む蛋白質を含むコロイド壁を形成する工程を含んでもよい。この工程は、一度コアセルベート相の形成工程が誘発されれば、自発的に生じる。
【0057】
本発明の方法は好ましくは、コロイド壁の架橋工程を含む。架橋は任意の方法、例えば充分な量のホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドを添加することで実施されてもよい。しかしながら好ましくは、架橋は酵素によって行われる。好ましい実施態様によれば、架橋は酵素トランスグルタミナーゼによって行われる。好ましくは、ゼラチン1グラムあたり、トランスグルタミナーゼを10〜100、好ましくは30〜60活性ユニット添加する。この酵素は、よく説明されており、市販である。この酵素の市販試料の最適温度は、一般に40℃より高い。従って、比較的酵素の至適温度に近い、例えば室温あるいはわずかに冷却および/または加熱された温度で架橋を行なうことができるというのは本発明の利点である。
【0058】
本発明の実施態様によれば、架橋、特にトランスグルタミナーゼによるものは、11〜27℃の温度範囲で行う。例えば、架橋を11〜27℃、好ましくは12〜26℃、より好ましくは13〜25℃、さらにより好ましくは14〜24℃、例えば14〜22℃の温度範囲で起こしてもよい。
【0059】
同様に、架橋工程中のpHは、好ましくは架橋が効果的に行われ得るレベルに調整する。例えば、架橋をトランスグルタミナーゼの働きによって促進させる場合、pHを好ましくは3〜8、好ましくは3.5〜7に調整してよい。好ましい実施態様によれば、pHを3.5〜6.5、好ましくは4〜6、最も好ましくは4〜5.5に調整する。本発明の1つの利点は、好ましくはpH低下によって誘発される相分離の開始とほぼ同じpHで架橋が起きる得ることである。pHの調整が不要あるいは任意の調整だけが必要であるという事実は、さらなる工程の段階を減らし、ゆえに本発明のさらなる利点を構成している。
【0060】
本発明の方法で製造されたマイクロカプセルは、多くの用途あるいは消費者用の商品、例えば風味剤や芳香剤の分野の用途で用いることができる。特に、焼成する用途の風味付け、食肉、たばこ、フライ、缶詰(熱工程)に使用することができる。他方で、香料の分野では、それらを様々な商品、例えば住まいの洗剤、予め湿らされたワイプ、およびパーソナルケア製品の香り付けに使うことができる。それ故に、随意に他の芳香あるいは風味を有する共材とともに、本発明によるマイクロカプセルを含む芳香あるいは風味を有する組成物もまた本発明の側面である。
【0061】
本発明の実施方法
下記の実施例において、本発明を限定の目的ではなく単に例として説明する。
【0062】
実施例1
複合コアセルベーション法による親水コロイド殻内へのリモネンのマイクロカプセル化
ゲル化温度27℃を有する温水魚ゼラチン(200ブルーム、Weishardt提供)およびアラビアゴム(CNIのEfficacia(登録商標))を親水コロイドとして用いる。180gの脱イオン温水および20gのゼラチンを容器内で完全に溶解するまで混合して、ゼラチンの貯蔵液(溶液A)を製造し、その後、溶液を40℃で保持する。180gの脱イオン冷水および20gのアラビアゴムを容器内で完全に溶解するまで混合して、アラビアゴムの貯蔵液(溶液B)を製造し、その後、溶液を暖めて40℃に保つ。
【0063】
105.4gの溶液Aを、70.3gの溶液Bと容器内でゆるやかにかき混ぜながら混合する(ゼラチン/アラビアゴム比は1.5:1)。50質量%の酸水溶液でpHを4.6に調整する。
【0064】
73.5gのリモネンをゼラチンおよびアラビアゴムの混合液にゆっくりと添加し、350RPMにした攪拌機で平均液滴サイズが300μmに到達するように5分間均質化する。
【0065】
前記の系を、その後354.1gの脱イオン温水を加えて希釈し、合計の親水コロイド濃度が3.4質量%になる。混合液を、0.5℃/分の速度で最終的に20℃に冷却する。攪拌速度をわずかに緩め、pHを4.5に調整し、4.22gのトランスグルタミナーゼ(ACTIVA(登録商標) WM 味の素提供、100UA/gの酵素を有する)を混合物に添加する。20℃で一晩中、架橋が進められる。
【0066】
本方法で、マイクロカプセルの水性懸濁液が得られる。
【0067】
実施例2
複合コアセルベーション法によるマイクロカプセル化−ゲル化温度より下でのリモネンの添加
ゲル化温度27℃を有する温水魚ゼラチン(200ブルーム、Weishardt提供)およびアラビアゴム(CNIのEfficacia(登録商標))を親水コロイドとして用いる。180gの脱イオン温水および20gのゼラチンを容器内で完全に溶解するまで混合して、ゼラチンの貯蔵液(溶液A)を製造し、その後、溶液を40℃で保持する。180gの脱イオン冷水および20gのアラビアゴムを容器内で完全に溶解するまで混合して、アラビアゴムの貯蔵液(溶液B)を製造し、その後、溶液を暖めて40℃に保つ。
【0068】
105.4gの溶液Aを、70.3gの溶液Bと容器内でゆるやかにかき混ぜながら混合する(ゼラチン/アラビアゴム比は1.5:1)。前記の系を、354.1gの脱イオン温水を加えて希釈し、合計の親水コロイド濃度を3.4質量%にする。溶液を40℃で保持し、50質量%の酸水溶液でpHを4.6に調整する。その後、混合液を、2℃/分の速度で25℃に素早く冷却する。
【0069】
25℃で、70.3gのリモネンをゼラチンとアラビアゴムの混合液にゆっくりと添加し、350RPMにした攪拌機で平均液滴サイズが300μmに到達するように5分間均質化する。前記エマルジョンを、その後、25℃で20分間保持し、0.1℃/分の速度で最終的に20℃にゆっくりと冷却する。攪拌速度をわずかに緩め、pHを4.5に調整し、4.22gのトランスグルタミナーゼ(ACTIVA(登録商標) WM 味の素提供)を混合液に添加する。20℃で一晩中、架橋が進められる。
【0070】
このように得られたマイクロカプセルを図1に示す。マイクロカプセルは、平均直径250μmを有している。図2は、時間による温度および攪拌速度の点での工程の変化を示す。
【0071】
実施例3
複合コアセルベーション法による豚肉ゼラチンを用いたマイクロカプセル化
発明の詳細な説明内で提供された方法論によって設定された、32℃より高いゲル化温度を有する豚肉ゼラチン タイプA(275ブルーム)およびアラビアゴム(CNIのEfficacia(登録商標))を親水コロイドとして使用する。180gの脱イオン温水および20gのゼラチンを容器内で完全に溶解するまで混合して、ゼラチンの貯蔵液(溶液A)を製造し、その後、溶液を40℃で保持する。180gの脱イオン冷水および20gのアラビアゴムを容器内で完全に溶解するまで混合して、アラビアゴムの貯蔵液(溶液B)を製造し、その後、溶液を暖めて40℃に保つ。
【0072】
105.4gの溶液Aを、70.3gの溶液Bと容器内でゆるやかにかき混ぜながら混合する(ゼラチン/アラビアゴム比は1.5:1)。前記の系を、354.1gの脱イオン温水を加えて希釈し、合計の親水コロイド濃度を3.4質量%にする。溶液を40℃で保持し、50質量%の酸水溶液でpHを4.5に調整する。その後、混合液を、2℃/分の速度で31℃に素早く冷却する。
【0073】
70.3gのリモネンをゼラチンとアラビアゴムの混合液にゆっくりと添加し、350RPMにした攪拌機で平均液滴サイズが300μmに到達するように5分間均質化する。前記エマルジョンを、その後、31℃で20分間保持し、0.1℃/分の速度で最終的に20℃にゆっくりと冷却する。攪拌速度をわずかに緩め、pHを必要であれば4.5に調整し、4.22gのトランスグルタミナーゼ(ACTIVA(登録商標) WM 味の素提供)を混合液に添加する。20℃で一晩中、架橋が進められる。
【0074】
このように得られたマイクロカプセルを図3に示す。マイクロカプセルは、平均直径250μmを有している。
【0075】
実施例4
牛肉ゼラチンを用いた本発明によるマイクロカプセル化
発明の詳細な説明内で提供された方法論によって決定された、32℃より上のゲル化温度を有する牛肉ゼラチン タイプB(275ブルーム−カシェル)およびアラビアゴム(CNIのEfficacia(登録商標))を親水コロイドとして使用する。180gの脱イオン温水および20gのゼラチンを容器内で完全に溶解するまで混合して、ゼラチンの貯蔵液(溶液A)を製造し、その後、溶液を40℃で保持する。180gの脱イオン冷水および20gのアラビアゴムを容器内で完全に溶解するまで混合して、アラビアゴムの貯蔵液(溶液B)を製造し、その後、溶液を暖めて40℃に保つ。
【0076】
105.4gの溶液Aを、70.3gの溶液Bと容器内でゆるやかにかき混ぜながら混合する(ゼラチン/アラビアゴム比は1.5:1)。前記の系を、354.1gの脱イオン温水を加えて希釈し、合計の親水コロイド濃度を3.4質量%にする。溶液を40℃で保持し、50質量%の酸水溶液でpHを3.75に調整する。その後、混合液を、2℃/分の速度で31℃に素早く冷却する。
【0077】
70.3gのリモネンをゼラチンとアラビアゴムの混合液にゆっくりと添加し、350RPMにした攪拌機で平均液滴サイズが300μmに到達するように5分間均質化する。前記エマルジョンを、その後、31℃で20分間保持し、0.1℃/分の速度で最終的に20℃にゆっくりと冷却する。攪拌速度をわずかに緩め、必要であればpHを4.5に調整し、4.22gのトランスグルタミナーゼ(ACTIVA(登録商標) WM 味の素提供)を混合液に添加する。20℃で一晩中、架橋が進められる。
【0078】
このようにしてマイクロカプセルの水性懸濁液が得られる。マイクロカプセルは、平均直径250μmを有している。
【0079】
実施例5
鶏肉ゼラチンを用いた本発明によるマイクロカプセル化
発明の詳細な説明内で提供された方法論によって決定された、32℃より上のゲル化温度を有する鶏肉ゼラチン(200ブルーム)およびアラビアゴム(CNIのEfficacia(登録商標))を親水コロイドとして使用する。180gの脱イオン温水および20gのゼラチンを容器内で完全に溶解するまで混合して、ゼラチンの貯蔵液(溶液A)を製造し、その後、溶液を40℃で保持する。180gの脱イオン冷水および20gのアラビアゴムを容器内で完全に溶解するまで混合して、アラビアゴムの貯蔵液(溶液B)を製造し、その後、溶液を暖めて40℃に保つ。
【0080】
105.4gの溶液Aを、70.3gの溶液Bと容器内でゆるやかにかき混ぜながら混合する(ゼラチン/アラビアゴム比は1.5:1)。前記の系を、354.1gの脱イオン温水を加えて希釈し、合計の親水コロイド濃度を3.4質量%にする。溶液を40℃で保持し、50質量%の酸水溶液でpHを4.2に調整する。その後、混合液を、2℃/分の速度で31℃に素早く冷却する。
【0081】
70.3gのリモネンをゼラチンとアラビアゴムの混合液にゆっくりと添加し、350RPMにした攪拌機で平均液滴サイズが300μmに到達するように5分間均質化する。前記エマルジョンを、その後、31℃で20分間保持し、0.1℃/分の速度で最終的に20℃にゆっくりと冷却する。攪拌速度をわずかに緩め、pHを必要であれば4.5に調整し、4.22gのトランスグルタミナーゼ(ACTIVA(登録商標) WM 味の素提供)を混合液に添加する。20℃で一晩中、架橋が進められる。
【0082】
このようにしてマイクロカプセルの水性懸濁液が得られる。マイクロカプセルは、平均直径250μmを有している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】温度および攪拌速度の変化、並びに本発明による方法の過程における主なプロセス段階を示す図である。
【図2】実施例2で得られたマイクロカプセルの顕微鏡像を示す図である。
【図3】実施例3で得られたマイクロカプセルの顕微鏡像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアセルベーション法による疎水材料のマイクロカプセル化方法において、
少なくとも1つのゲル化可能な蛋白質および随意に非蛋白質ポリマー化合物を水に溶解することで親水コロイド溶液を製造する工程と、
親水コロイド溶液を、蛋白質に基づくコアセルベート相のゲル化温度より低い温度に冷却する工程と、
冷却工程の後に、溶液中で疎水材料を乳化および/または懸濁することによって、エマルジョンおよび/または懸濁液を製造する工程と、
エマルジョンおよび/または懸濁液中に存在する疎水材料の液滴および/または粒子まわりに蛋白質を含むコロイド壁を形成する工程と、
コロイド壁を架橋させる工程
を含む方法。
【請求項2】
溶液中での相分離を誘発することによって、蛋白質に基づくコアセルベート相を提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素トランスグルタミナーゼで架橋が実施される、請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
架橋を3.5〜6.5のpH範囲で起こす、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
疎水材料を溶液に添加し、該溶液が22〜32℃の温度範囲を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
11〜27℃の温度範囲で架橋を行う、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
12〜26℃の温度範囲で架橋を行う、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
13〜25℃の温度範囲で架橋を行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
蛋白質が温水魚ゼラチンである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
疎水材料が、風味剤、芳香剤、脂肪、油脂、口当たり強化剤、栄養薬剤、薬剤、他の生物活性材料および/またはそれらの数種類あるいはそれ以上を含む混合物を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複合コアセルベーション法によるマイクロカプセルの製造方法において、
13〜25℃の温度範囲および3.5〜6.5のpH範囲で、トランスグルタミナーゼによって、マイクロカプセルの親水コロイド壁を架橋する工程を含む方法。
【請求項12】
複合コアセルベーション法によるマイクロカプセルの製造方法において、
13〜25℃の温度範囲で、トランスグルタミナーゼによって、温水魚ゼラチンを含む親水コロイド壁を架橋する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−532202(P2009−532202A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503699(P2009−503699)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050899
【国際公開番号】WO2007/113706
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】