コアーピン
【課題】鋳造作業の生産性を向上できるコアーピンを提供すること。
【解決手段】鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピン5であって、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部51と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部52と、からなっており、組み付け部52が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部53と、金型内面と同一面を構成する鍔部54と、からなっており、鍔部54が、コア部51側の表面に、4個の凹部6を、有しており、凹部6が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部53を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴としている。
【解決手段】鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピン5であって、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部51と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部52と、からなっており、組み付け部52が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部53と、金型内面と同一面を構成する鍔部54と、からなっており、鍔部54が、コア部51側の表面に、4個の凹部6を、有しており、凹部6が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部53を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用金型の金型内面に組み付けられるコアーピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアーピンは、奥深い穴部を有する鋳造製品を形成する場合に、金型内面の、当該穴部に対応した箇所に、組み付けて用いられる。コアーピンは、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部を、有している。コア部が、金型の一部として機能して、上記穴部を形成する。
【0003】
ところで、従来において、コアーピンは、金型の裏側から金型を貫通させて、金型に組み付けられていた。例えば、特許文献1、2参照。しかし、この組み付け方法では、金型の構造が複雑になっていた。それ故、コアーピンが折れた場合のコアーピンの交換作業に長時間を要し、その間、鋳造作業を停止せざるを得ず、生産性が悪かった。
【0004】
そこで、コアーピンを金型内面側から金型に組み付ける方法が提案されている。この方法では、コアーピンは金型内面にねじ止めされる。
【特許文献1】特開平8−10931号公報
【特許文献2】特開平9−1313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コアーピンを金型内面にねじ止めする方法の場合には、鋳造作業中にねじが緩んでしまい、その度にねじ止め作業が必要となり、その間、鋳造作業を停止せざるを得ず、生産性が悪かった。
【0006】
本発明は、鋳造作業の生産性を向上できるコアーピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピンであって、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部と、からなっており、組み付け部が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部と、金型内面と同一面を構成する鍔部と、からなっており、鍔部が、コア部側の表面に、1個以上の凹部を、有しており、上記凹部が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴としている。
【0008】
更に、本発明においては、次の構成(1)を採用するのが好ましい。
(1)上記凹部が、螺挿部の締め付け方向側に、深部が偏在するよう、形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、キャビティ内に溶湯を注入する際に、凹部内において、螺挿部の締め付け方向側に向かう溶湯の流れを生じさせることができるので、鍔部を、螺挿部と共に、螺挿部の締め付け方向へ回動させることができる。したがって、本発明によれば、鋳造作業において溶湯の注入を行う度に、螺挿部を締め付けることができる。
【0010】
よって、螺挿部を締め付けるためだけの作業を不要にでき、それ故に、鋳造作業の生産性を向上できる。
【0011】
しかも、緩んだ螺挿部の締め付け作業を怠ってしまうのを防止できる。したがって、緩んだコアーピンに起因する鋳造製品の不良発生を防止できる。
【0012】
上記構成(1)によれば、凹部は、簡単な構成であるので、簡単に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明のコアーピンが組み付けられたダイカスト鋳造用金型を示す縦断面図である。この金型10は、可動型1と固定型2とからなっている。固定型2には、スリーブ91とプランジャ92とで構成された射出部9が設けられている。金型10は、可動型1と固定型2とを合わせることによってキャビティ100を構成するようになっている。そして、可動型1には、コアーピン5が組み付けられている。
【0014】
図2はコアーピン5の斜視図、図3は図2のIII矢視図、図4は図2のIV矢視図である。コアーピン5は、コア部51と組み付け部52とからなっている。組み付け部52は、螺挿部53と鍔部54とからなっている。コア部51は、棒状に延びた部分である。螺挿部53は、コア部51とは反対側に位置しており、周面にねじ531を有する棒状の部分である。鍔部54は、コア部51と螺挿部53との間に位置しており、コア部51及び螺挿部53に対して直交する方向に張り出した円板状の部分である。コアーピン5の長手方向に延びた中心線Oは、コア部51、螺挿部53、及び鍔部54の中心を通っている。
【0015】
コアーピン5は、図1に示すように、螺挿部53を金型内面101に形成されたねじ穴102に螺挿させ、且つ、鍔部54を金型内面101に形成された凹部103に嵌入させることによって、金型内面101に組み付けられている。凹部103とねじ穴102とは連通している。凹部103に陥入された鍔部54は、金型内面101と同一面を構成している。したがって、金型内面101に組み付けられたコアーピン5において、コア部51は、キャビティ100内へ突出している。また、組み付け部52は、可動型1内に埋設されている。
【0016】
なお、螺挿部53のねじ531と金型内面101のねじ穴102とは、螺挿部53をコア部51側から見て時計回りに回動させることによって、螺挿部53がねじ穴102に締め付けられるよう、形成されている。
【0017】
そして、本発明では、図2及び図4に示すように、鍔部54のコア部51側の表面に、4個の凹部6が形成されている。凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで形成されている。凹部6は、図4のV−V断面矢視図である図5に示すように、図4における円周方向の時計回り側が、漸次深くなるよう形成されている。すなわち、凹部6は、図4における時計回り側に深部61を有しており、また、反時計側から深部61に向けてなだらかに傾斜した傾斜面62を有している。したがって、凹部6においては、深部61が時計回り側に偏在している。そして、全ての凹部6は、同じ形態を有している。
【0018】
上記構成のコアーピン5を組み付けた金型10を用いてダイカスト鋳造を行うと、射出部9から金型10のキャビティ100内に注入された溶湯8は、キャビティ100内に充填されていくとともに鍔部54のコア部51側の表面にも接触していく。このとき、鍔部54に接触してくる溶湯8は、図5に示すように、凹部6内において、傾斜面62に沿って流動し、すなわち、矢印B1に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B1方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図4における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0019】
以上のように、上記構成のコアーピン5を用いれば、鋳造作業において溶湯8の注入を行う度に、螺挿部53を締め付けることができる。したがって、螺挿部53を締め付けるためだけの作業を不要にでき、それ故に、鋳造作業の生産性を向上できる。
【0020】
しかも、緩んだ螺挿部53の締め付け作業を怠ってしまうのを防止できる。したがって、緩んだコアーピン5に起因する鋳造製品の不良発生を防止できる。
【0021】
更に、凹部6は、深部61を一方側に偏在させた簡単な構成であるので、簡単に形成できる。
【0022】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図7は図6のVII−VII断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0023】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して反時計回り側の壁面64が時計回り側に向けて漸次低くなるよう少しだけ傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0024】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図7に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B2に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B2方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図6における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0025】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0026】
[第3実施形態]
図8は第3実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図9は図8のIX−IX断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の数及び形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0027】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで8個形成されている。また、本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して、反時計回り側の壁面64が、時計回り側に向けて且つ凹部6の円周方向長さL1の半分以上に渡って、漸次低くなるよう、緩やかに傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0028】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図9に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B3に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B3方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図8における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0029】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0030】
しかも、本実施形態によれば、凹部6の個数が第1実施形態の場合より多いので、第1実施形態の場合に比して矢印C方向への付勢力が大きく、したがって、螺挿部53をより強く締め付けることができる。
【0031】
[第4実施形態]
図10は第4実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図11は図10のXI−XI断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の数及び形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0032】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで8個形成されている。また、本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して、反時計回り側の壁面64が、時計回り側に向けて且つ凹部6の円周方向長さL2の半分以下の長さに渡って、漸次低くなるよう、やや急峻に傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0033】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図11に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B4に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B4方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図10における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0034】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0035】
しかも、本実施形態によれば、凹部6の個数が第1実施形態の場合より多いので、第1実施形態の場合に比して矢印C方向への付勢力が大きく、したがって、螺挿部53をより強く締め付けることができる。
【0036】
[別の実施形態]
(1)凹部6の数は、4個や8個に限るものではない。凹部6が溶湯8の圧力を受けて螺挿部53を回動させる付勢力を生じさせるならば、凹部6の数は、1個又はそれ以上の任意の数でよい。
(2)凹部6の形態は、凹部6が溶湯8の圧力を受けて螺挿部53を回動させる付勢力を生じさせるならば、上記実施形態の形態に限るものではない。
(3)上記実施形態では、螺挿部53の締め付け方向を、コア部51側から見て時計回り方向としているが、その逆の反時計回り方向としてもよい。その場合には、凹部6の形態は、鍔部54の円周方向の観点において上記実施形態とは逆とする。すなわち、凹部6は、鍔部54の円周方向の反時計回り側に、深部が偏在するよう、形成される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、金型内面にキャビティ側から組み付けるコアーピンが緩んでしまうのを確実に防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態のコアーピンが組み付けられたダイカスト鋳造用金型を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態のコアーピンの斜視図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【図4】図2のIV矢視図である。
【図5】図4のV−V断面矢視図である。
【図6】第2実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図7】図6のVII−VII断面矢視図である。
【図8】第3実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図9】図8のIX−IX断面矢視図である。
【図10】第4実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図11】図10のXI−XI断面矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 金型 100 キャビティ 101金型内面 5 コアーピン 51 コア部 52 組み付け部 53 螺挿部 54 鍔部 6 凹部 61 深部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用金型の金型内面に組み付けられるコアーピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアーピンは、奥深い穴部を有する鋳造製品を形成する場合に、金型内面の、当該穴部に対応した箇所に、組み付けて用いられる。コアーピンは、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部を、有している。コア部が、金型の一部として機能して、上記穴部を形成する。
【0003】
ところで、従来において、コアーピンは、金型の裏側から金型を貫通させて、金型に組み付けられていた。例えば、特許文献1、2参照。しかし、この組み付け方法では、金型の構造が複雑になっていた。それ故、コアーピンが折れた場合のコアーピンの交換作業に長時間を要し、その間、鋳造作業を停止せざるを得ず、生産性が悪かった。
【0004】
そこで、コアーピンを金型内面側から金型に組み付ける方法が提案されている。この方法では、コアーピンは金型内面にねじ止めされる。
【特許文献1】特開平8−10931号公報
【特許文献2】特開平9−1313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コアーピンを金型内面にねじ止めする方法の場合には、鋳造作業中にねじが緩んでしまい、その度にねじ止め作業が必要となり、その間、鋳造作業を停止せざるを得ず、生産性が悪かった。
【0006】
本発明は、鋳造作業の生産性を向上できるコアーピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピンであって、金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部と、からなっており、組み付け部が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部と、金型内面と同一面を構成する鍔部と、からなっており、鍔部が、コア部側の表面に、1個以上の凹部を、有しており、上記凹部が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴としている。
【0008】
更に、本発明においては、次の構成(1)を採用するのが好ましい。
(1)上記凹部が、螺挿部の締め付け方向側に、深部が偏在するよう、形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、キャビティ内に溶湯を注入する際に、凹部内において、螺挿部の締め付け方向側に向かう溶湯の流れを生じさせることができるので、鍔部を、螺挿部と共に、螺挿部の締め付け方向へ回動させることができる。したがって、本発明によれば、鋳造作業において溶湯の注入を行う度に、螺挿部を締め付けることができる。
【0010】
よって、螺挿部を締め付けるためだけの作業を不要にでき、それ故に、鋳造作業の生産性を向上できる。
【0011】
しかも、緩んだ螺挿部の締め付け作業を怠ってしまうのを防止できる。したがって、緩んだコアーピンに起因する鋳造製品の不良発生を防止できる。
【0012】
上記構成(1)によれば、凹部は、簡単な構成であるので、簡単に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明のコアーピンが組み付けられたダイカスト鋳造用金型を示す縦断面図である。この金型10は、可動型1と固定型2とからなっている。固定型2には、スリーブ91とプランジャ92とで構成された射出部9が設けられている。金型10は、可動型1と固定型2とを合わせることによってキャビティ100を構成するようになっている。そして、可動型1には、コアーピン5が組み付けられている。
【0014】
図2はコアーピン5の斜視図、図3は図2のIII矢視図、図4は図2のIV矢視図である。コアーピン5は、コア部51と組み付け部52とからなっている。組み付け部52は、螺挿部53と鍔部54とからなっている。コア部51は、棒状に延びた部分である。螺挿部53は、コア部51とは反対側に位置しており、周面にねじ531を有する棒状の部分である。鍔部54は、コア部51と螺挿部53との間に位置しており、コア部51及び螺挿部53に対して直交する方向に張り出した円板状の部分である。コアーピン5の長手方向に延びた中心線Oは、コア部51、螺挿部53、及び鍔部54の中心を通っている。
【0015】
コアーピン5は、図1に示すように、螺挿部53を金型内面101に形成されたねじ穴102に螺挿させ、且つ、鍔部54を金型内面101に形成された凹部103に嵌入させることによって、金型内面101に組み付けられている。凹部103とねじ穴102とは連通している。凹部103に陥入された鍔部54は、金型内面101と同一面を構成している。したがって、金型内面101に組み付けられたコアーピン5において、コア部51は、キャビティ100内へ突出している。また、組み付け部52は、可動型1内に埋設されている。
【0016】
なお、螺挿部53のねじ531と金型内面101のねじ穴102とは、螺挿部53をコア部51側から見て時計回りに回動させることによって、螺挿部53がねじ穴102に締め付けられるよう、形成されている。
【0017】
そして、本発明では、図2及び図4に示すように、鍔部54のコア部51側の表面に、4個の凹部6が形成されている。凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで形成されている。凹部6は、図4のV−V断面矢視図である図5に示すように、図4における円周方向の時計回り側が、漸次深くなるよう形成されている。すなわち、凹部6は、図4における時計回り側に深部61を有しており、また、反時計側から深部61に向けてなだらかに傾斜した傾斜面62を有している。したがって、凹部6においては、深部61が時計回り側に偏在している。そして、全ての凹部6は、同じ形態を有している。
【0018】
上記構成のコアーピン5を組み付けた金型10を用いてダイカスト鋳造を行うと、射出部9から金型10のキャビティ100内に注入された溶湯8は、キャビティ100内に充填されていくとともに鍔部54のコア部51側の表面にも接触していく。このとき、鍔部54に接触してくる溶湯8は、図5に示すように、凹部6内において、傾斜面62に沿って流動し、すなわち、矢印B1に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B1方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図4における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0019】
以上のように、上記構成のコアーピン5を用いれば、鋳造作業において溶湯8の注入を行う度に、螺挿部53を締め付けることができる。したがって、螺挿部53を締め付けるためだけの作業を不要にでき、それ故に、鋳造作業の生産性を向上できる。
【0020】
しかも、緩んだ螺挿部53の締め付け作業を怠ってしまうのを防止できる。したがって、緩んだコアーピン5に起因する鋳造製品の不良発生を防止できる。
【0021】
更に、凹部6は、深部61を一方側に偏在させた簡単な構成であるので、簡単に形成できる。
【0022】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図7は図6のVII−VII断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0023】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して反時計回り側の壁面64が時計回り側に向けて漸次低くなるよう少しだけ傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0024】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図7に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B2に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B2方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図6における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0025】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0026】
[第3実施形態]
図8は第3実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図9は図8のIX−IX断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の数及び形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0027】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで8個形成されている。また、本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して、反時計回り側の壁面64が、時計回り側に向けて且つ凹部6の円周方向長さL1の半分以上に渡って、漸次低くなるよう、緩やかに傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0028】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図9に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B3に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B3方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図8における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0029】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0030】
しかも、本実施形態によれば、凹部6の個数が第1実施形態の場合より多いので、第1実施形態の場合に比して矢印C方向への付勢力が大きく、したがって、螺挿部53をより強く締め付けることができる。
【0031】
[第4実施形態]
図10は第4実施形態のコアーピンの図4に相当する図、図11は図10のXI−XI断面矢視図である。本実施形態は、第1実施形態に対して、凹部6の数及び形態が異なるだけであり、その他は同じである。
【0032】
本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向に等間隔に並んで8個形成されている。また、本実施形態の凹部6は、鍔部54の円周方向の時計回り側の壁面63が略垂直に形成されているのに対して、反時計回り側の壁面64が、時計回り側に向けて且つ凹部6の円周方向長さL2の半分以下の長さに渡って、漸次低くなるよう、やや急峻に傾斜して形成されている。この凹部6内においても、深部61が時計回り側に偏在している。
【0033】
上記構成のコアーピン5を用いた場合も、キャビティ100内に注入されて鍔部54に接触してくる溶湯8は、図11に示すように、凹部6内において、壁面64に沿って流動し、すなわち、矢印B4に示すように流動する。それ故、凹部6においては矢印C方向への付勢力が生じる。矢印B4方向及び矢印C方向は、鍔部54において、図10における円周方向の時計回り方向、すなわち、螺挿部53の締め付け方向である。よって、鍔部54は、溶湯8の圧力を受けて、螺挿部53と共に、螺挿部53の締め付け方向へ回動しようとする。したがって、溶湯8をキャビティ100内に注入する際、螺挿部53は、常に締め付けられることとなる。
【0034】
したがって、本実施形態のコアーピン5によっても、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。すなわち、鋳造作業の生産性を向上でき、また、鋳造製品の不良発生を防止でき、更には、凹部を簡単に形成できる。
【0035】
しかも、本実施形態によれば、凹部6の個数が第1実施形態の場合より多いので、第1実施形態の場合に比して矢印C方向への付勢力が大きく、したがって、螺挿部53をより強く締め付けることができる。
【0036】
[別の実施形態]
(1)凹部6の数は、4個や8個に限るものではない。凹部6が溶湯8の圧力を受けて螺挿部53を回動させる付勢力を生じさせるならば、凹部6の数は、1個又はそれ以上の任意の数でよい。
(2)凹部6の形態は、凹部6が溶湯8の圧力を受けて螺挿部53を回動させる付勢力を生じさせるならば、上記実施形態の形態に限るものではない。
(3)上記実施形態では、螺挿部53の締め付け方向を、コア部51側から見て時計回り方向としているが、その逆の反時計回り方向としてもよい。その場合には、凹部6の形態は、鍔部54の円周方向の観点において上記実施形態とは逆とする。すなわち、凹部6は、鍔部54の円周方向の反時計回り側に、深部が偏在するよう、形成される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、金型内面にキャビティ側から組み付けるコアーピンが緩んでしまうのを確実に防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態のコアーピンが組み付けられたダイカスト鋳造用金型を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態のコアーピンの斜視図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【図4】図2のIV矢視図である。
【図5】図4のV−V断面矢視図である。
【図6】第2実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図7】図6のVII−VII断面矢視図である。
【図8】第3実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図9】図8のIX−IX断面矢視図である。
【図10】第4実施形態のコアーピンの図4に相当する図である。
【図11】図10のXI−XI断面矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 金型 100 キャビティ 101金型内面 5 コアーピン 51 コア部 52 組み付け部 53 螺挿部 54 鍔部 6 凹部 61 深部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピンであって、
金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部と、からなっており、
組み付け部が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部と、金型内面と同一面を構成する鍔部と、からなっており、
鍔部が、コア部側の表面に、1個以上の凹部を、有しており、
上記凹部が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴とするコアーピン。
【請求項2】
上記凹部が、螺挿部の締め付け方向側に、深部が偏在するよう、形成されている、請求項1記載のコアーピン。
【請求項1】
鋳造用金型の金型内面にキャビティ側から組み付けられるコアーピンであって、
金型内面にてキャビティ内へ突出するコア部と、金型内面にて金型内へ埋設される組み付け部と、からなっており、
組み付け部が、金型内面のねじ穴に螺挿される螺挿部と、金型内面と同一面を構成する鍔部と、からなっており、
鍔部が、コア部側の表面に、1個以上の凹部を、有しており、
上記凹部が、鋳造作業において注入される溶湯の圧力を受けて螺挿部を締め付け方向に回動させる付勢力を生じさせるよう、形成されていることを特徴とするコアーピン。
【請求項2】
上記凹部が、螺挿部の締め付け方向側に、深部が偏在するよう、形成されている、請求項1記載のコアーピン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−114254(P2008−114254A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299768(P2006−299768)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000124889)花野商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000124889)花野商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]