説明

コイルユニットの製造方法及びそれに用いる冶具

【課題】 薄型化することができるコイルユニットおよびその製造方法ならびに電子機器を提供する。
【解決手段】 コイルユニット22は、平面状コイ30ルと、平面状コイル30を収容する平面状コイル収容部40aを含む配線印刷基板40と、平面状コイル30の伝送面側に設けられた、平面状コイル30を保護するための保護シート50と、平面状コイル30の非伝送面側に設けられた磁性シート60とを含む。平面状コイル30は、平面状コイル収容部40aに収容され、配線印刷基板40と電気的に接続されている。平面状コイル収容部40aは、平面状コイル30の外形に対応した形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを用いた無接点電力伝送に係るコイルユニットおよびその製造方法ならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用し、金属部分の接点がなくても電力送信を可能にする無接点電力伝送が知られている。この無接点電力伝送の適用例として、携帯電話の充電や家庭用機器(たとえば電話機の子機)の充電などが提案されている。
【0003】
近年、携帯電話においては小型化が益々求められている。それに伴い、電力伝送を行うコイルユニットのより小型化、特に薄型化が必要となっている。小型化に関する技術として、特許文献1〜特許文献3に開示された技術がある。
【0004】
特許文献1は、無接点電力伝送モジュールのコイル部分を従来用いられていたフェライトから軟磁性シートに置き換えることで、コイル部分の薄型化に関する発明が開示されている。しかし、磁性体自体の薄型化には有用であるが、その他のコイルユニットの部分の薄型化にはさほどつながらないため、なお課題が残る。
【0005】
特許文献2は、非接触ICカードの使用環境下において、周囲の金属の影響を受け難くする構造にすることにより、小型化を実現した発明である。具体的には、非接触ICカードの読み取り、書込みに際して、アンテナ・磁性材料の裏側に2枚の金属板を置き、アンテナをチューニングすることで、周囲の金属に影響されることなく、安定的な読み取り、書込みを行っている。しかし、この技術を無接点電力伝送に適用した場合には、非接触ICカードに比べて、金属板の発熱が生じる課題がある。また、アンテナ一つ一つに対してチューニングを行う必要があるため、高コストとなり、量産性が低いという問題がある。
【0006】
特許文献3は、非接触電力伝送モジュールをフレキシブル配線印刷基板(FPC)で作成することで、非接触電力伝送モジュールの小型化を実現している。この文献には、コイル部と基板部とに分け、中間を折り返せるように形成し、それらをポット型コアに挟み込むように折り返して、フレキシブル配線印刷基板を実装している技術が開示されている。しかし、フェライト材をコアとして用いる場合は有用だが、シート状の磁性材料を用いる際には、コイルをはめ込む形状の作成ができないという問題がある。また、コイル巻き線や基板で作成する場合には、適用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−148360号公報
【特許文献2】特開2005−26743号公報
【特許文献3】特開2005−260112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、薄型化することができるコイルユニットおよびその製造方法ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るコイルユニットは、平面状コイルと、前記平面状コイルを収容する平面状コイル収容部を含む配線印刷基板と、前記平面状コイルの伝送面側に設けられた、前記平面状コイルおよび前記配線印刷基板を保護するための保護シートと、前記平面状コイルの非伝送面側に設けられた磁性シートとを含み、前記平面状コイルは、前記平面状コイル収容部に収容され、前記配線印刷基板と電気的に接続され、前記平面状コイル収容部は、前記平面状コイルの外形に対応した形状を有する。
【0010】
この発明によれば、配線印刷基板の平面状コイルの収容部に平面状コイルが収容されるため、平面状コイルの平面状コイルが収容された厚み分だけ、コイルユニット自体の厚みを薄くすることができる。またこの構成によれば、平面状コイルの伝送面とその周囲の面とを面一にし易い。さらに、平面状コイルを平面状コイル収容部に収容しさえすれば、平面状コイルを配線印刷基板に位置決めすることができるため、位置決めが容易となる。
【0011】
本発明の一態様では、前記平面状コイルは、空芯部を有する平面状コイルであり、前記平面状コイルの内側端子は、前記平面状コイルの非伝送面側から引き出されたコイル内端引き出し線を有することができる。
【0012】
このようにすることで、コイル内端引き出し線が伝送面に存在すると伝送面に凹凸が生ずるが、本実施態様では伝送面を面一にすることができると共に、伝送効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の一態様では、前記保護シートは、前記平面状コイルの前記空芯部に対応する位置に設けられた第1の位置決め孔を有することができる。
【0014】
保護シートが平面状コイルの空芯部に対応する位置に第1の位置決め孔を有することで、平面状コイルと保護シートとの間で位置決めがし易くなる。
【0015】
本発明の一態様では、前記保護シートは、熱伝導率1W/mK以上の放熱シートとすることができる。
【0016】
無接点電力伝送では、発熱をどう押さえるかが課題となっており、特に、コイルからの発熱をどう逃がすかが重要な課題である。保護シートが、ガラスの熱伝導率である1W/mK
以上の放熱シートであると、コイルからの放熱をコイルに密着した保護シート(放熱シート)を介して放熱できる。特に伝送面は製品外装ケースに密着することになるので、コイルの伝送面側にて密着する保護シート(放熱シート)を介した放熱経路として、外装ケースへの熱抵抗を低減できる。逆に非伝送面は、電池や水晶等温度上昇の影響を受ける部品があるので、伝送面側を主たる放熱経路としている。
【0017】
なお、平面状コイルの内側端子は、非伝送面側から引き出されたたことで、伝送面が面一になることによって、平面状コイルと保護シート(放熱シート)の密着性が高まり、接触熱抵抗が低減されて放熱しやすくなるという効果を奏することができる。
【0018】
本発明の一態様では、前記配線印刷基板は、前記平面状コイルの両端子の引き出し線を収容する引き出し線収容部を有し、前記引き出し線収容部は、前記平面状コイル収容部と連続させることができる。
【0019】
引き出し線収容部があることで、引き出し線が配線印刷基板に乗り上げる際の引き出し線の屈曲を緩やかにし、かつ、平面状コイルの付近にて引き出し線の厚み分だけ薄型化をすることができる。
【0020】
本発明の一態様では、前記配線印刷基板は、第2の位置決め孔を有し、前記保護シートは、前記第2の位置決め孔と対応した位置に、第3の位置決め孔を有することができる。
【0021】
保護シートが配線印刷基板の第2の位置決め孔と対応する位置に第3の位置決め孔を有することで、配線印刷基板と保護シートとの間で位置決めがし易くなる。
【0022】
本発明の一態様では、前記配線印刷基板の非伝送面に実装回路を搭載することができる。このように実装回路を非伝送面側に搭載することで、伝送面に凹凸が生じるのを防ぐことができる。
【0023】
本発明の一態様では、前記配線印刷基板の伝送面に、前記実装回路と電気的に接続している共通グランド電極面を設けることができる。これにより、伝送面側に共通グランド電極を設けることで、配線印刷基板の伝送面側のスペースを有効利用して広い面積のグランド面を確保して、グランド電位を安定させることができる。また、配線印刷基盤の伝送面側をグランド電極面とすることでフラットにできる。なお、配線印刷基板の伝送面と非伝送面のグランド電極同士はスルーホールにて電気的に接続できる。
【0024】
本発明の一態様に係る電子機器は、上記に記載のコイルユニットを含む。この電子機器によれば、コイルユニット自体が薄型化・小型化され易い構成となっているため、電子機器自体も小型化し易いという利点がある。また、平面状コイルはコイルユニット内に設けられているため、平面状コイルの電子機器への組み付けが容易である。
【0025】
本発明の一態様に係るコイルユニットの製造方法は、平面状コイルを含むコイルユニットの製造方法であって、組み付け冶具に保護シートを搭載する工程(A)と、前記保護シートの上に、前記平面状コイルの外形に対応する形状を有する平面状コイル収容部が設けられた配線印刷基板を搭載する工程(B)と、前記平面状コイル収容部内に、前記平面状コイルを収容する工程(C)と、前記配線印刷基板および前記平面状コイルの上に、磁性シートを搭載する工程(D)と、を含む。
【0026】
この発明によれば、コイルユニットの構成部材を組み付け治具を用いて順次積層し、平面状コイルを平面状コイル収容部に収容して配線印刷基板に搭載しているため、容易にコイルユニットを製造できる。
【0027】
本発明の一態様において、コイル端子の引き出し線を配線印刷基板の配線に電気的に接続するのは、工程(C)と工程(D)の間であっても、または、工程(D)の後に行ってもよい。
【0028】
本発明の一態様では、前記平面状コイルは、空芯状の平面状コイルであり、前記保護シートは、前記平面状コイルの空芯部に対応する位置に設けられた第1の位置決め孔を有し、前記組み付け冶具は、第1の位置決め突部が設けられており、前記工程(A)は、前記第1の位置決め突部を前記第1の位置決め孔に挿通させて、前記保護シートを前記組み付け冶具に対して位置決めを行い、前記工程(C)は、前記第1の位置決め突部を前記空芯部に挿通させて、前記平面状コイルを前記組み付け冶具に対して位置決めを行うことができる。
【0029】
この発明によれば、組み付け冶具の第1の位置決め突部を保護シートおよび平面状コイルの位置決め孔に貫入させて、それらを組み付け冶具に対して位置決めを行っているため、位置決めが容易となる。
【0030】
本発明の一態様では、前記平面状コイルの内側端子の引き出し線は、前記平面状コイルが前記保護シートと重なり合う面とは逆の面に設けることができる。これによれば、薄型化されたコイルユニットを製造することができる。
【0031】
本発明の一態様では、前記第1の位置決め突部は、突出方向に付勢されて進退可能に、前記組み付け治具に保持することができる。これによれば、搭載時には、第1の位置決め突部の高さを確保して保護シート、配線印刷基板及び平面状コイルを位置決めし易いと共に、保護シートの貼付によって第1の位置決め突部を降下させることができ、組立性が向上する。
【0032】
本発明の一態様では、前記配線印刷基板は、第2の位置決め孔を有し、前記保護シートは、前記第2の位置決め孔と対応した位置に、第3の位置決め孔を有し、前記組み付け冶具は、第2の位置決め突部を有し、前記工程(B)は、前記第2の位置決め突部を前記第2位置決め孔に挿通させて、前記配線印刷基板を前記組み付け冶具に対して位置決めを行い、前記工程(C)は、前記第2の位置決め突部を前記第3の位置決め孔に挿通させて、前記保護シートを前記組み付け冶具に対して位置決めを行うことができる。
【0033】
この発明によれば、組み付け冶具の第2の位置決め突部を保護シートおよび配線印刷基板の各位置決め孔に挿通させて、それらを組み付け冶具に対して位置決めを行っているため、位置決めが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】充電器と、この充電器に充電される電子機器例えば携帯電話機20とを模式的に示す図である。
【図2】コイルユニットを模式的に示す図である。
【図3】コイルユニットを模式的に示す分解斜視図である。
【図4】平面状コイルおよび配線印刷基板を模式的に示す図である。
【図5】コイルユニットの断面図である。
【図6】コイルの引き出し線接続領域0を拡大した図である。
【図7】図6のVIII−VIII線に沿った断面を模式的に示す図である。
【図8】配線印刷基板の実装回路領域を説明するための図である。
【図9】配線印刷基板の共通電極を説明するための図である。
【図10】配線印刷基板のコンタクト部における断面を模式的に示す図である。
【図11】コイルユニットの製造工程を模式的に示す図である。
【図12】コイルユニットの製造工程を模式的に示す図である。
【図13】コイルユニットの製造工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
1.充電システム
図1は、充電器10と、この充電器10に充電される電子機器例えば携帯電話機20とを模式的に示す図である。図1は、充電器10に横置きされる携帯電話機20を示している。充電器10から携帯電話機20への充電は、充電器10のコイルユニット12のコイルと携帯電話機20のコイルユニット22のコイルとの間に生じる電磁誘導作用を利用し、無接点電力伝送により行われる。
【0037】
充電器10と携帯電話機20とは、それぞれ位置決め構造を有することができる。例えば、充電器10には、その筐体の外表面より外方に突出する位置決め突部を設け、一方、携帯電話機20には、その筐体の外表面に形成された位置決め凹部を設けることができる。この位置決めにより、携帯電話機20のコイルユニット22は、充電器10のコイルユニット12と対向する位置に少なくとも配置される。
【0038】
2.コイルユニット
図2は、コイルユニット22を模式的に示す図である。図3は、コイルユニット22を模式的に示す分解斜視図である。なお、図2および図3は、図1においてコイルユニット22がコイルユニットと対向する伝送面とは逆側の非伝送面側から、コイルユニット22を見た図である。ここで、伝送面とは、図1に示すように2つのコイルユニット12,22同士が対向したときの対向面側を意味する。図4は、平面状コイル30と配線印刷基板40とを模式的に示す、非伝送面側から見た図である。非伝送面とは、コイルユニット12,22の伝送面とは逆側の面を意味する。図5は、コイルユニット22の断面図である。図6は、コイルの引き出し線接続領域0を拡大した図である。図7は、図6のVIII−VIII線に沿った断面を模式的に示す図である。
【0039】
コイルユニット22は、平面状コイル30と、配線印刷基板40と、保護シート50と、磁性シート60とを含むことができる。平面状コイル30は、図4に示すように、配線印刷基板40に設けられた平面状コイル収容部40aに収容されている。この平面状コイル収容部40aは、配線印刷基板40の厚さ方向で貫通された穴で構成される。配線印刷基板40の伝送面側には、平面状コイル30および配線印刷基板40を保護するための保護シート50が設けられている。平面状コイル30の非伝送面側には、磁性シート60が設けられている。
【0040】
以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0041】
平面状コイル30は、平面的なコイルであれば特に限定されないが、たとえば、単芯または多芯の被覆コイル線を平面上で巻回した空芯コイルを適用することができる。以下では、空芯部30a(図3,図4参照)を有する平面状コイル30を例にとり、実施の形態に係るコイルユニットを説明する。
【0042】
平面状コイル30は、上述したように、配線印刷基板40に設けられた平面状コイル収容部40aに収容されている。このように平面状コイル収容部40aに平面状コイル30を収容することで、平面状コイル収容部40aに収容された平面状コイル分の厚みだけコイルユニットを薄くすることができる。また、平面状コイル30を平面状コイル収容部40aに収容することで、平面状コイル30の伝送面とその周囲の面とを面一にし易い。事実、本実施形態では保護シート50には凹凸は生じない。また、平面状コイル収容部40aは、平面状コイル30の外形に対応した形状を有する。これにより、平面状コイル30を平面状コイル収容部40aに収容しさえすれば、平面状コイル30を配線印刷基板40に位置決めすることができるため、位置決めが容易となる。
【0043】
平面状コイル30は、コイル内端を引き出すコイル内端引き出し線30bと、コイル外端を引き出すコイル外端引き出し線30cとを有する。コイル内端引き出し線30bは、図3および図4で示すように、平面状コイル30の非伝送面側から引き出されることが好ましい。非伝送面側からコイル内端引き出し線30bを引き出すことで、伝送面がコイル内端引き出し線30bによって凸部が生じるのを防ぐことができるため、伝送面を面一にすることができると共に、伝送効率を向上させることができる。
【0044】
配線印刷基板40は、コイルを駆動するための種々の実装部品と、それらを電気的に接続する配線とが設けられている。配線印刷基板40は、フレキシブル基板よりもむしろ、平面状コイル収容部40aが一定深さを確保できるリジッド基板が好ましい。
【0045】
配線印刷基板40には、平面状コイル収容部40aと連続して引き出し線収容部40hが設けられている(図3参照)。引き出し線収容部40hは、図6および図7に示すように、平面状コイル30のコイル内端引き出し線30bおよびコイル外端引き出し線30cを収容するためのものである。引き出し線収容部40hがあることで、引き出し線30b,30cがそこに収容それているため、その領域において引き出し線30b,30cの厚み分だけ薄型化をすることができる。また、図7に示すように、引き出し線30b,30c(図7では引き出し線30cのみを図示)は、引き出し線収容部40hにて比較的緩やかに屈曲されて配線回路基板40に乗り上げるため、断線が少なくなる。
【0046】
コイル内端引き出し線30bおよびコイル外端引き出し線30cは、コンタクト電極40bまで引き出され、図2および図5に示すように、半田付け部40gにより配線印刷基板40上のパターンと電気的に接続されている。コンタクト電極40bは、配線印刷基板40の非伝送面側(図2および図5では手前側)に設けられている。コイル内端引き出し線30bおよびコイル外端引き出し線30cは、上述したように、図7に示すように、配線印刷基板40の引き出し線収容部40aに収容されているが、配線印刷基板40に乗り上げられるように屈曲部30dが設けられている。
【0047】
配線回路基板40を非伝送面側から見た図8に示すように、コンタクト電極40bがある領域は、実装回路領域40jとなっている。このように実装回路領域40jを平面状コイル収容部40aの付近に設けないことで、伝送特性に影響が生じてしまうのを防ぐことができる。実装回路領域40jは非伝送面側に設けられているが、これにより、伝送面に凹凸が生じるのを防ぐことができる。この実装回路領域40jは、平面状コイル30を駆動する実装部品40iなどにより構成されている。実装回路領域40jの実装回路は、配線回路基板40を伝送面側から見た図9に示すように、共通グランド電極面40cと電気的に接続されている。伝送面側に共通グランド電極面40cを設けることで、配線印刷基板40の伝送面側のスペースを有効利用して、グランド面積を確保してグランド電位を安定させることができる。また、共通グランド電極面40cには部品が実装されないので、配線印刷基板40の伝送面側をフラットにすることができる。なお、共通グランド電極面40c形成範囲についても、実装回路領域40jと同じ理由で、実装回路領域40jと同じ範囲に形成することで、伝送特性への影響を低減している。
【0048】
共通グランド電極面40cは、図10に示すように、スルーホール40fに設けられたコンタクト部40dを介して、実装部品40iに接続されている配線と電気的に接続されている。
【0049】
なお、実施形態に係るモジュールは、回路規模が小さいため、配線印刷基板40の伝送面側のパターンはグランドのみとしたが、回路規模が大きくなれば、グランド以外のパターンを形成しても良い。
【0050】
配線印刷基板40は、保護シート50と位置決めするための複数例えば2つの位置決め孔(第2の位置決め孔)40eが設けられている。実装回路領域40jは、平面状コイル30を収容する配線印刷基板40とは別の基板に設けてもよい。
【0051】
保護シート50は、少なくとも平面状コイル30を保護するためのシートであるが、本実施形態では配線印刷基板40及び平面状コイル30の伝送面側全体を覆って形成している。保護シート50は第一義的には絶縁性のものであれば特に限定されない。保護シート50は、図3に示すように、平面状コイル30の空芯部30aに対応する位置に設けられ
た位置決め孔(第1の位置決め孔)50aを有する。空芯部30aに対応する位置に位置決め孔50aを有することで、平面状コイル30と保護シート50との間で位置決めがしやすい。また、保護シート50は、図3に示すように、配線印刷基板40の位置決め孔40eと対応した位置に、位置決め孔(第3の位置決め孔)50bが設けられている。この位置決め孔40e,50bにより、配線印刷基板40と保護シート50との間で位置決めしやすい。
【0052】
ここで、保護シート50は、ガラスの熱伝導率である1W/mK以上の材質にて形成された放熱シートとすることが好ましい。たとえば、パナソニック製PGSグラファイトシートでは、熱伝導率が600W/mKと、銅の2〜4倍、アルミの3〜6倍もの優れた熱伝導率である。この種の材質を用いると、保護シート50を放熱シートとして利用でき、平面状コイル30からの放熱をコイル30に密着した保護シート50を介して放熱できる。特に伝送面は製品外装ケースに密着することになるので、コイル30の伝送面側にて密着する保護シート50を介した放熱経路として、外装ケースへの熱抵抗を低減できる。逆に非伝送面は、電池や水晶等温度上昇の影響を受ける部品があるので、伝送面側を主たる放熱経路としている。
【0053】
非伝送面側に配置される電池は、電力伝送システムを用いる場合、通常2次電池を使用する。近年携帯電話やMP3プレーヤー等で多用されているリチウムイオン2次電池やリチウムポリマー2次電池では、物性の特徴から充電時の温度を約45℃以下に規定されてする。これ以上の温度で充電を行う場合、電池内部にガスが発生し、電池の劣化や最悪の場合破裂を起こす危険性がある。そのため、充電時の発熱を押さえる必要があり、本実施形態では保護シート50を放熱経路として利用して、非伝送面側の温度上昇を抑えている。
【0054】
また、平面状コイル30の内側端子は、非伝送面側から引き出されたたことで、伝送面が面一になることによって、平面状コイル30と保護シート(放熱シート)50の密着性が高まり、接触熱抵抗が低減されて放熱しやすくなるという効果を奏することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、保護シート50は配線印刷基板40に一致した外形であるが、これに限定されない。保護シート50の形状(面積)は、コイルユニットの伝送面側が接触する外装ケースの内部形状(面積)と接触面積が最大になるように形成することができる。こうすると、放熱効果はより高まる。
【0056】
磁性シート60は、平面状コイル30からの磁束を受ける働きをし、平面状コイル30のインダクタンスを上げる機能を有する。磁性シートの材質としては、軟磁性材が好ましく、フェライト軟磁性材や金属軟磁性材を適用することができる。
【0057】
また、携帯電話機20のコイルユニット22では、磁性シート60が平面状空芯コイル30と面する側の逆側には、必要に応じて磁束漏れ防止部材(図示せず)を設けることができる。磁束漏れ防止部材は、磁性シート60が捕捉しきれなかった磁束や、磁性シート60の周りから漏れた磁束を吸収する役割を有する。これにより、携帯電話機20内の部品への磁束の悪影響を回避できる。磁束漏れ防止部材の材質は、磁束を吸収できる材質であれば特に限定されず、非磁性体たとえば、アルミニウムを挙げることができる。伝送特性は、磁性シート60の下に接触した状態で形成されているものに影響を受ける。したがって、磁束漏れ防止部材は、求める伝送特性に応じて、その材質や大きさを規定するのが好ましい。
【0058】
上記の配線印刷基板40および平面状コイル30と保護シート50との貼り合わせ、および、配線印刷基板40および平面状コイル30と磁性シート60との貼り合わせは、たとえば両面テープなどにより行うことができる。
【0059】
3.コイルユニットの製造方法
次に、コイルユニットの製造方法について説明する。図11〜図13は、コイルユニットの製造方法を説明するための図である。
【0060】
まず、組み付け冶具70を用意する。組み付け冶具70は、複数例えば2つの第1の位置決め突部70aおよび第2の位置決め突部70bを有する。
【0061】
次に、組み付け冶具70に保護シート50を搭載する。組み付け冶具70の第1の位置決め突部70a、70bを位置決め孔50b、50aに挿通させて、保護シート50を組み付け冶具70に対して位置決めを行う。
【0062】
次に、組み付け冶具70に配線印刷基板40を搭載する。組み付け冶具70の第1の位置決め突部70aを配線印刷基板40の位置決め孔40eに挿通させて、配線印刷基板40を組み付け冶具70に対して位置決めを行う。
【0063】
次に、組み付け冶具70に平面状コイル30を搭載する。平面状コイル30は配線印刷基板40の平面状コイル収容部40aに収容されるように搭載する。平面状コイル収容部40aは平面状コイル30の外形に対応する形状を有しているため、平面状コイル30の位置決め部としての機能を有することになる。さらに、組み付け冶具70の第2の位置決め突部70bを平面状コイル30の空芯部30aに挿通させて、平面状コイル30を組み付け冶具70に対して位置決めを行う。
【0064】
次に、平面状コイル30および配線印刷基板40の上に、磁性シート60を搭載し、磁性シート60側から力を加え、保護シート50と配線印刷基板40および平面状コイル30との貼り合わせ、および、磁性シート60と配線印刷基板40および平面状コイル30との貼り合わせを行い、コイルユニット22が形成される。なお、貼り合わせ時の接着は、たとえば、保護シート50と配線印刷基板40との間、平面状コイル30と磁性シート60との間に両面テープ(図示せず)を介在させることにより行うことができる。
【0065】
この貼り合わせ時に、図12および図13に示すように、第2の位置決め突部70bがコイルスプリング70c等により突出付勢されることによって、組み付け治具70に対して進退可能に保持されていることが好ましい。これによれば、組立時には、第2の位置決め突部70bの高さを確保して、保護シート50及びコイル30を位置決めし易くすると共に、磁性シート60の貼付時の圧力によって第2の位置決め突部70bを降下させることができる(図13参照)。
【0066】
次に、平面状コイル30の端子引き出し線30b,30cを配線印刷基板40のコンタクト電極40bに半田付けなどにより電気的に接続する。この半田付けの工程は、磁性シート60を搭載する前であってもよい。
【0067】
(電子機器の適用例)
本実施の形態は、電力伝送や信号伝送を行うすべての電子機器に適用可能であり、たとえば、腕時計、電動歯ブラシ、電動ひげ剃り、コードレス電話、パーソナルハンディフォン、モバイルパソコン、PDA(Personal Digital Assistants)、電動自転車などの二
次電池を備える被充電機器と充電機器とに適用可能である。本実施の形態に係る電子機器によれば、コイルユニット自体が小型化され易い構成となっているため、電子機器自体も小型化し易いという利点がある。また、平面状コイルはコイルユニット内に設けられているため、平面状コイルの電子機器への組み付けが容易である。
【0068】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0069】
本実施の形態は、無接点電力伝送に係るものであったが、電磁誘導原理を用いた無接点信号伝送にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 充電器、10a 筐体、12 コイルユニット、20 電子機器(携帯電話機)、20a 筐体、22 コイルユニット、30 平面状コイル、30a 空芯部、30b コイル内端引き出し線、30c コイル外端引き出し線、30d 屈曲部、40 配線印刷基板、40a 平面状コイル収容部、40b コンタクト電極、40c 共通グランド電極、40d コンタクト部、40e 第2の位置決め孔、40g 半田付け部、40h 引き出し線収容部、40i 実装部品、40j 実装回路領域、50 保護シート、50a 第1の位置決め孔、50b 第3の位置決め孔、60 磁性シート、70 組み付け冶具、70a 第1の位置決め突部、70b 第2の位置決め突部、70c 付勢部材(バネ)、100 充電システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状コイルと、
前記平面状コイルを収容する平面状コイル収容部を含む配線印刷基板と、
前記平面状コイルの伝送面側に設けられた、前記平面状コイルを保護するための保護シートと、
前記平面状コイルの非伝送面側に設けられた磁性シートと、
を有し、
前記平面状コイルは、前記平面状コイル収容部に収容され、前記配線印刷基板と電気的に接続され、
前記平面状コイル収容部は、前記平面状コイルの外形に対応した穴形状を有することを特徴とするコイルユニット。
【請求項2】
請求項1において
前記平面状コイルは、空芯部を有する平面状コイルであり、
前記平面状コイルの内側端子は、前記平面状コイルの非伝送面側から引き出されたコイル内端引き出し線を有することを特徴とするコイルユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記保護シートは、前記平面状コイルの前記空芯部に対応する位置に設けられた第1の位置決め孔を有することを特徴とするコイルユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記保護シートは、熱伝導率1W/mK以上の放熱シートであることを特徴とするコイルユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記配線印刷基板は、前記平面状コイルの両端子の引き出し線を収容する引き出し線収容部を有し、
前記引き出し線収容部は、前記平面状コイル収容部と連続していることを特徴とするコイルユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記配線印刷基板は、第2の位置決め孔を有し、
前記保護シートは、前記第2の位置決め孔と対応した位置に、第3の位置決め孔を有することを特徴とするコイルユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記配線印刷基板の非伝送面側に実装回路が搭載されていることを特徴とするコイルユニット。
【請求項8】
請求項7において、
前記配線印刷基板の伝送面側に、前記実装回路と電気的に接続している共通グランド電極面が設けられていることを特徴とするコイルユニット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコイルユニットを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
平面状コイルを含むコイルユニットの製造方法であって、
組み付け冶具に保護シートを搭載する工程(A)と、
前記保護シートの上に、前記平面状コイルの外形に対応する形状を有する平面状コイル収容部が設けられた配線印刷基板を搭載する工程(B)と、
前記平面状コイル収容部内に、前記平面状コイルを収容する工程(C)と、
前記配線印刷基板および前記平面状コイルの上に、磁性シートを搭載する工程(D)と、を含むことを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記工程(C)と前記工程(D)との間において、前記平面状コイルの両端子の引き出し線を前記配線印刷基板の配線に電気的に接続する工程を含むことを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項10において、
前記工程(D)の後に、前記平面状コイルの両端子の引き出し線を前記配線印刷基板の配線に電気的に接続する工程を含むことを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかにおいて、
前記平面状コイルは、空芯状の平面状コイルであり、
前記保護シートは、前記平面状コイルの空芯部に対応する位置に設けられた第1の位置決め孔を有し、
前記組み付け冶具は、第1の位置決め突部が設けられており、
前記工程(A)は、前記第1の位置決め突部を前記第1の位置決め孔に挿通させて、前記保護シートを前記組み付け冶具に対して位置決めを行い、
前記工程(C)は、前記第1の位置決め突部を前記空芯部に挿通させて、前記平面状コイルを前記組み付け冶具に対して位置決めを行うことを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記平面状コイルの内側端子の引き出し線は、前記平面状コイルが前記保護シートと重なり合う面とは逆の面に設けられていることを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項15】
請求項13または14において、
前記第1の位置決め突部は、突出方向に付勢されて進退可能に、前記組み付け治具に保持されていることを特徴とするコイルユニットの製造方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれかにおいて、
前記配線印刷基板は、第2の位置決め孔を有し、
前記保護シートは、前記第2の位置決め孔と対応した位置に、第3の位置決め孔を有し、
前記組み付け冶具は、第2の位置決め突部を有し、
前記工程(B)は、前記第2の位置決め突部を前記第2位置決め孔に挿通させて、前記配線印刷基板を前記組み付け冶具に対して位置決めを行い、
前記工程(C)は、前記第2の位置決め突部を前記第3の位置決め孔に挿通させて、前記保護シートを前記組み付け冶具に対して位置決めを行うことを特徴とするコイルユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−105434(P2009−105434A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4569(P2009−4569)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2007−39887(P2007−39887)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】