説明

コイル及びコイルの製造方法

【課題】大型で平面視して外形が長形(長方形、長円、楕円を含む)の複数ターンの巻線が極めて容易なコイル又はコイルの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の絶縁電線12〜18の束線11を用いたコイル10であって、束線11の両端部から露出する各絶縁電線12〜18の導線12a〜17aを自己以外の異なる導線13b〜18bに接続して絶縁電線12〜18を直列に接続した。特に、単数又は複数の自動車への無接触充電に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等のバッテリを使用する乗り物やその他の車両に無接触で電力を送る場合に使用されるコイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一次コイルに高周波電源を接続し、二次コイルを自動車に配置して、電磁誘導によって一次コイルから二次コイルに電力を供給し、自動車のバッテリ等を充電する装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、絶縁被膜で覆われた複数本の素線を束ねて縒り合わせ、外皮シースで囲んで形成された高周波用の電線( リッツ線) が開示されている。そして、この電線を用いて床側に配置される一次コイル及び車両側に配置される二次コイルを製作することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4318742号公報
【特許文献2】特開2011−124129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この電線又は通常の電線を用いて一次コイルを作製する場合、一次コイルの径が小さい場合は特に問題はないが、例えば、並べて配置された複数の自動車に電力を供給できる長尺の一次コイルを形成しようとする場合、極めて手間であり、特に、平面視して外形が長円形状となった合成樹脂パイプ内に複数ターンのコイルを形成する場合、極めて困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、大型で平面視して外形が長形(長方形、長円、楕円を含む)の複数ターンの巻線が極めて容易なコイル又はコイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係るコイルは、複数の絶縁電線の束線を用いたコイルであって、前記束線の両端部から露出する前記各絶縁電線の導線を自己以外の異なる導線に接続して前記絶縁電線を直列に接続している。
【0008】
また、前記目的に沿う第2の発明に係るコイルの製造方法は、長尺又は大径のコイルの製造方法であって、複数の絶縁電線の束線を用い、該束線の両端部が同一位置にあるようにして、該束線を特定場所に配置する工程と、前記束線の両端部から露出する前記各絶縁電線の導線を自己以外の異なる導線に接続して前記絶縁電線を直列に接続する。
【0009】
以上の発明において、前記各絶縁電線の直列接続は、鑞付けによって接続されている場合であっても、接続端子を用いて行われている場合であっても、縒っている( 捩じって連結) 場合であってもよく、電気的に接続されていればよい。
また、前記各絶縁電線の芯線( 即ち、導線) には、複数の絶縁被覆で覆われた金属線を縒ったリッツ線を用いるのが好ましいが、通常の導線、アルミ線等であっても本発明は適用される。
また、複数の絶縁電線が収納された束線(例えば、キャプタイヤケーブル)を複数本、所定の場所に配置する場合も本発明は適用される。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係るコイル、第2の発明に係るコイルの製造方法においては、複数の絶縁電線を有する束線を所定の場所に配置し、束線の両端部から露出する各絶縁電線の導線を自己以外の異なる導線に接続して絶縁電線を直列に接続しているので、結果としてその部分に複数ターンのコイルを巻いたことになる。従って、複数本の被覆導線、絶縁電線を有する一本の束線を所定場所に配置すればよく、結果としてコイルの作製が容易となる。
【0011】
特に、束線としてキャプタイヤケーブル(cabtire cable)を用いた場合は、線材の入手が容易であると共に、温度、環境等に対して耐候性を有するように通常構成されているので、安全性の高いコイルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコイルの接続状態を示す説明図である。
【図2】同コイルの使用状態を示す側面図である。
【図3】同コイルの使用状態を示す平面図である。
【図4】同コイルの接続状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について接続する。
図1に示すように本発明の一実施の形態に係るコイル10は、所定長のキャプタイヤケーブル(束線の一例)11を用い、内部の複数の絶縁電線12〜18(この例では7芯)をキャプタイヤケーブル11の両側で突出させている。
【0014】
そして、図4に示すように、各絶縁電線12〜18をその両端部から露出している導線12a〜18aと、導線12b〜18bを、各絶縁電線12〜18が自己の導線ではなく異なる導線と接続されるように接続端子(コネクターの一例)20で接続する。従って、導線18a、12bは残して、導線12a−13b、導線13a−14b、導線14a−15b、導線15a−16b、導線16a−17b、導線17a−18bを接続すると、全ての絶縁電線12〜18が直列に接続されることになる。
【0015】
この場合、各絶縁電線12〜18で7ターン(7巻)のコイル10が形成されることになるが、4ターンのコイルとする場合は、絶縁電線12〜18のうち4本を使用すればよく、他は開放しておけばよい。また、2本以上のキャプタイヤケーブル11を並列使用して、8ターン以上のコイルを形成することができる。
【0016】
各絶縁電線12〜18は例えば9kHz〜100kHzの高周波電流を流すので、表皮効果によって各導線の表面にしか電流が流れず、中実の導線(例えば、銅又はアルミ)を使用すると、実質抵抗が増加する。そこで、この各絶縁電線12〜18の導体に導体経路が筒状となった導線を使用するのが好ましい。この導体経路の形成は、単に筒状電線を使用する場合、絶縁体の周囲に金属導体をめっき又は蒸着したものを使用する場合であってもよい。また、細い(例えば、直径が0.01〜1mm)導体の周囲を絶縁被膜で覆い、これを縒って又は並べて形成したリッツ線であってもよい。
【0017】
また、各絶縁電線12〜18は内部導体の周囲が絶縁被膜又は絶縁チューブで覆われているが、この絶縁被膜としては屈曲性及び耐熱性を有するものを使用するのが好ましい。また、これらの絶縁電線12〜18を覆う被覆(シース)も屈曲性及び耐熱性を有する必要がある。キャプタイヤケーブル11は使用によって発熱するので、キャプタイヤケーブル11内に水冷管を設けてもよいし、絶縁電線12〜18の一つを省略、又は絶縁電線12〜18に加えて、温度測定用電線を収納することもでき、これによってキャプタイヤケーブル11の温度を監視し、キャプタイヤケーブル11に温度上昇があった場合は、コイル10に供給する電力を下げる(具体的には電圧を落とす、又は周波数を変える)ことができる。
【0018】
温度測定用電線としては、温度上昇によって対象物の電気伝導度が上昇又は下降し、しかも一定の折り曲げ可能性を有する導体又は半導体によって形成するのが好ましい。勿論、銅線、鉄線、ニッケル線、ステンレス線、ニクロム線等でもよいが、測定機器の製作上、電気抵抗が高い金属線を使用するのが好ましい。
【0019】
続いて、図2、図3を参照しながら、長尺(例えば、5〜100m)又は大径(例えば、0.1〜5mm)のコイルの製造方法及び使用方法について説明する。この例では、特定場所の一例である駐車場22の床面にコイル10を配置する場合について説明する。床面に適当深さの溝を形成し、この溝内に所定本数の絶縁電線12〜18を有するキャプタイヤケーブル11を両端部が同一位置にあるように配置し、キャプタイヤケーブル11の両端から絶縁電線12〜18を露出させる。
【0020】
この場合のコイル10は平面視して外形が角部を丸くした長方形状となって、例えば、10〜15m×0.8〜1.5m程度となって、大凡3台の自動車が充電のために駐車できるようになっている。なお、キャプタイヤケーブル11の埋め込み深さは、キャプタイヤケーブル11が駐車場22の床面から上に突出せず、しかも床面に近いのが好ましい。キャプタイヤケーブル11はそのまま床面に配置するよりは、例えば絶縁体からなるパイプ(例えは、塩化ビニール製のパイプ)等に収納して埋設するのがよい。
【0021】
そして、キャプタイヤケーブル11の両端から絶縁電線12〜18を露出させ、更に内部の導線12a〜18a、12b〜18bを露出させて、図1、図4に示すように、接続端子20を用いて各導線12a〜17a、13b〜18bを接続し、キャプタイヤケーブル11を一つのコイル10にする。なお、接続端子20の表面及び露出した各導線12a〜18a、12b〜18bは、絶縁性を有する筒状物(例えば、熱収縮性合成樹脂によって形成したチューブ)等で覆う。これによって、絶縁電線12、18を引き出す。
【0022】
このコイル10は、商用周波数を一旦直流にし、更にインバータによって高周波交流とする高周波電源24に接続され、一次コイルとして作用する。一方、自動車25〜27は、このコイル10を跨いだようにして駐車される。そして、自動車25〜27の底部に二次コイルを備えた受電装置29がそれぞれ設けられている。この受電装置29については、例えば、特許第4318742号公報に記載されているものが適用される。
【0023】
この受電装置29は、それぞれコイル(一次コイル)10に対向して、二次コイル及び共振コイルを有し、共振コイルにはコンデンサが接続されて共振回路を構成し、コイル10からの電力を効率的に受電できる構成となっている。二次コイルによって受電された電力は、整流回路によって整流され、直流に変換して各自動車25〜27の充電を行うようになっている。
【0024】
なお、ここで電池の充電にあっては、その充電電流を検知して行うのが好ましい。即ち、バッテリへの充電を、電流センサーで検知し、充電電流が一定値以下に低下すると、充電を停止するようにする。この場合、パイロットランプの点滅を行ってもよい。また、電池の充電をその充電電圧を検知して行うようにする場合も本発明が適用されることは当然である。
各自動車25〜27は、バッテリへの充電が完了した後は、充電回路を切断し、その場を離れることになる。
【0025】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、前記実施の形態において、各導線を接続端子20を用いて接続したが、鑞付け、溶接、巻き付け等によって連結する場合も本発明は適用される。
前記実施の形態ではコイルの形状は平面視して外形が長方形であったが、長円形、楕円、円形又はその他の形状であってもよい。
【0026】
前記実施の形態では、コイルの製造にあっては周囲が絶縁材で覆われたキャプタイヤケーブルを用いたが、複数の絶縁電線が束になった束線を用いることも可能であり、例えば、絶縁性を有するパイプに複数の絶縁電線を収納したものであってもよい。
更に前記実施の形態においては、一次コイルのみに本発明のコイルを適用したが、二次コイル又は共振コイルに本発明のコイルを適用できる。
そして、前記実施の形態においては、一次コイルは床面に配置したが、壁面又は支持部材等で立てた状態で配置、あるいは天井面に接地することもできる。
更には、前記駐車場に自動車が縦列駐車をしている場合を示しているが、横列駐車をする場合も本発明は適用される。
また、走行中充電用コイルを道路に設置する場合においても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0027】
10:コイル、11:キャプタイヤケーブル、12〜18:絶縁電線、12a〜18a、12b〜18b:導線、20:接続端子、22:駐車場、24:高周波電源、25〜27:自動車、29:受電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁電線の束線を用いたコイルであって、前記束線の両端部から露出する前記各絶縁電線の導線を自己以外の異なる導線に接続して前記絶縁電線を直列に接続したことを特徴とするコイル。
【請求項2】
請求項1記載のコイルにおいて、前記束線は周囲が絶縁材で覆われたキャプタイヤケーブルであることを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項1記載のコイルにおいて、前記各絶縁電線の直列接続は、鑞付けによって接続されていることを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項1記載のコイルにおいて、前記各絶縁電線の直列接続は、接続端子を用いて行われていることを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載のコイルにおいて、前記各絶縁電線の導線には、絶縁被膜で覆われた細い金属線を縒ったリッツ線が用いられていることを特徴とするコイル。
【請求項6】
長尺又は大径のコイルの製造方法であって、複数の絶縁電線の束線を用い、該束線の両端部が同一位置にあるようにして、該束線を特定場所に配置する工程と、前記束線の両端部から露出する前記各絶縁電線の導線を自己以外の異なる導線に接続して前記絶縁電線を直列に接続することを特徴とするコイルの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のコイルの製造方法において、前記束線はキャプタイヤケーブルであることを特徴とするコイルの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載のコイルの製造方法において、前記各絶縁電線の直列接続は、接続端子を用いて行われていることを特徴とするコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30688(P2013−30688A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167216(P2011−167216)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(596014221)株式会社ヘッズ (7)
【出願人】(591221916)有限会社日本テクモ (13)
【Fターム(参考)】