説明

コイル巻装部品

【課題】ボビンのコイル巻装部に巻装したコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を巻線処理端子に絡げた後、そのコイル端末の処理が確実に行え、電気的は短絡、断線等を防止でき、信頼性を向上できるコイル巻装部品を提供する。
【解決手段】コイル巻装部13及びこのコイル巻装部13の両端にフランジ部14,15を有するボビン10と、このボビン10の両フランジ部14,15の外側からボビン10に嵌合されたコア11と、コイル巻装部13に巻装されたコイル32と、ボビン10に設けられコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末が絡げられる巻線処理端子25とからなり、巻線処理端子25に、コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を絡げる絡げ凹部26を設け、この絡げ凹部26に絡げたコイル端末33を切断するナイフエッジ部28を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、デジタルカメラのストロボ発振トランス等のコイル巻装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス、チョークコイル等のコイル巻装部品は、特許文献1に示すように、例えば、フェノール樹脂を材料とするコア、コイルボビンを有し、コイルボビンに設けられたコイル巻装部には1次巻線と2次巻線とからなるコイルが巻装されている。コイルボビンには端子台が設けられ、この端子台には巻線処理端子が外方に突出して設けられている。
【0003】
巻線処理端子は、短冊状の金属片からなり、端子台に所定間隔を存して複数個設けられており、コイル巻装部に巻装されたコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を前記巻線処理端子に絡げた後、そのコイル端末を切断し、コイル絡げ部を巻線処理端子に半田付けしている。
【0004】
また、トランスにおいて、コイルの引出し線の断線防止構造において、特許文献1に示すように、引出し線をピン端子に配線した上、引出し線を隣のピン端子との間に複数回絡げて半田付けした後、最初に配線したピン端子を根元部で切断したものも知られている。
【特許文献1】実用新案登録第2539710号公報
【特許文献2】特開昭63−29916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、コイル巻装部に巻装したコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を巻線処理端子に絡げた後、そのコイル端末を切断するには、コイルを引張って切断している。しかし、コイルは巻線処理端子の部分で切断されるとは限らず、コイル端末が巻線処理端子の側方に延びるとともに、コイル巻装部品の小型化に伴って隣り合うリード端子が接近して設けられている。したがって、巻線処理端子の側方に延びたコイル端末が隣り合う巻線処理端子やコイル端末と接触して電気的に短絡してしまうことがある。
さらに、コイルは20μmφという極細のワイヤであるため、コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を巻線処理端子に絡げたとき、巻線処理端子の角部によってコイルが屈曲されてしかも圧接した状態になる。この状態で、コイル絡げ部を半田付けすると、半田溶解熱によってコイルが断線することがある。
【0006】
また、特許文献2は、最初に配線したピン端子を根元部で切断し、コイルの引出し線に負担がかからないようにしてコイルの断線事故を防止したものであり、工程数が増えてコストアップの原因となる。
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ボビンのコイル巻装部に巻装したコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を巻線処理端子に絡げた後、そのコイル端末の処理が確実に行え、電気的な短絡、断線等を防止でき、工程数の減少と信頼性を向上できるコイル巻装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記目的を解決するために、請求項1は、コイル巻装部及びこのコイル巻装部の両端にフランジ部を有するボビンと、このボビンの両フランジ部の外側から前記ボビンに嵌合されたコアと、前記コイル巻装部に巻装されたコイルと、前記ボビンに設けられ前記コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末が絡げられる巻線処理端子とからなり、前記巻線処理端子に、前記コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を絡げる絡げ凹部を設け、この絡げ凹部に絡げたコイル端末を切断するナイフエッジ部を設けたことを特徴とするコイル巻装部品にある。
【0008】
請求項2は、請求項1の前記絡げ凹部は、V字状もしくはU字状であり、その底部にナイフエッジ部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1の前記巻線処理端子の前記絡げ凹部と反対側の角部は、樹脂で覆われてR面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、巻線処理端子に、コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を切断するナイフエッジ部を設けることにより、コイルを巻線処理端子の部分で確実に切断でき、電気的な短絡を防止でき、信頼性を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図3はコイル巻装部品としてストロボ発振トランスの第1の実施形態を示し、図1は全体の斜視図、図2はコイルを除いた状態のボビンとコアの分解斜視図、図3はコアを除いた状態のボビンの側面図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、ボビン10とコア11はMn−Zn MT30D等によって成形されており、ボビン10は、角筒状で、上下方向に貫通する貫通孔12を有するコイル巻装部13の両端には上部フランジ部14と下部フランジ部15が設けられている。上部フランジ部14は矩形状で、その上部における左右両側部には貫通孔12の幅と略同一幅の嵌合凹部16が設けられている。したがって、上部フランジ部14の上面には低部と高部との段差が形成され、その段差部にはコア11が嵌合される嵌合凹部16が上部に向って開拡するように傾斜面17aに形成されている。この傾斜面17aは上部フランジ部14の上面と嵌合凹部16との角部を鈍角としてボビン10の強度アップを図っている。
下部フランジ部15も矩形状で、その下部における左右両側部には貫通孔12の幅と略同一幅の嵌合凹部18が設けられている。下部フランジ部15の下面も低部と高部との段差が形成され、その段差部には傾斜面17bに形成されている。この傾斜面17bは下部フランジ部15の下面と嵌合凹部18との角部を鈍角としてボビン10の強度アップを図っている。
さらに、下部フランジ部15の上面における前部及び後部には端子台19がボビン10と一体に設けられている。したがって、嵌合凹部18を挟んで前部及び後部に平行に端子台19が形成されている。これら端子台19は上面に外方に向って下り勾配の傾斜面20を有しており、その上面の一部は上方に突出し、その突出部の上面が平坦面21に形成されている。したがって、平坦面21と傾斜面20との両者間に段差部22が形成され、この段差部22は端子台19の前後方向(コイル巻装部13と端子台19の外側部との間)に亘って連通してコイル端末挿通部23を形成している。
【0014】
また、端子台19の下面における両端部にはトランスをプリント基板等に実装するための実装端子24が設けられ、前後の側面には実装端子24と一体に形成された複数個の巻線処理端子25が設けられている。実装端子24は端子台19の下面及び側面に沿ってL字状に折曲して形成されている。巻線処理端子25は、図4及び図5に示すように、端子台19の側面から外方に突出する端子板25aが矩形状で、その一側部には後述するコイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を絡げる絡げ凹部26が設けられ、他側部(絡げ凹部26と反対側の角部)にはボビン10と一体に成形された樹脂からなるコイル保護層27が設けられている。なお、このコイル保護層27はボビン10と一体に成形することに限定されず、別部材を巻線処理端子25に固着してもよい。
【0015】
絡げ凹部26はV字状もしくはU字状の切欠部であり、その底部は端子板25aを薄肉にしたナイフエッジ部28が設けられ、絡げ凹部26に絡げたコイル端末を簡単に切断できるように形成されている。また、コイル保護層27は、その外周面がR面27aに形成され、絡げ凹部26に絡げるコイル端末が端子板25aの角部に接触しないように保護するようになっている。
前記コア11は、ボビン10の上下方向から該ボビン10を挟持するように嵌合されている。コア11はEE型であり、両端脚部29はボビン10の両側部で互いに当接し、中央脚部30はボビン10の貫通孔12の内部で互いに当接している。そして、コア11の基部31はボビン10の嵌合凹部16,18に嵌合されている。
【0016】
さらに、ボビン10のコイル巻装部13には、20μmφという極細のワイヤで、例えば1次巻線と2次巻線からなるコイル32が巻装されている。このコイル32の巻き始め端末及び巻き終り端末のコイル端末33は端子台19の段差部22によって形成されたコイル端末挿通部23を挿通し、巻線処理端子25の絡げ凹部26に絡げられ、半田付けによって巻線処理端子25に固定されている。
【0017】
この場合、コイル端末33は巻線処理端子25の絡げ凹部26に2〜3回(反)巻き付けた後、コイル端末33の中途部が絡げ凹部26の底部に押付けられるようにしてコイル端末33を引張って切断するが、絡げ凹部26の底部にはナイフエッジ部28が形成されているため、コイル端末33をナイフエッジ部28で簡単かつ確実に切断でき、コイルの余剰端末が巻線処理端子25からヒゲ状に延びることはなく、隣り合う巻線処理端子25やコイル端末33に接触する電気的短絡を防止できる。
また、絡げ凹部26に絡げたコイル端末33はコイル保護層27の外周面のR面27aに接触した状態に絡げられるため、コイル端末33が端子板25aの角部に接触することはない。したがって、コイル絡げ部を半田付けする際に、半田溶解熱が端子板25aに加わってもコイル端末33が断線(溶断)することはなく、信頼性を向上できる。
なお、コイル巻装部品としてストロボ発振トランスについて説明したが、トリガーコイル、チョークコイル等のコイル巻装部品にも適用できる。
なお、この発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態のストロボ発振トランスを示す全体の斜視図。
【図2】同実施形態を示し、コイルを除いた状態のボビンとコアの分解斜視図。
【図3】同実施形態を示し、コアを除いた状態のボビンの側面図。
【図4】同実施形態を示し、ボビンの一部を示す斜視図。
【図5】同実施形態を示し、(a)は巻線処理端子の斜視図、(b)は巻線処理端子の縦断側面図。
【符号の説明】
【0019】
10…ボビン、11…コア、13…コイル巻装部、14,15…フランジ部、19…端子台、25…巻線処理端子、26…絡げ凹部、28…ナイフエッジ部、27…コイル保護層、27a…R面、32…コイル、33…コイル端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル巻装部及びこのコイル巻装部の両端にフランジ部を有するボビンと、このボビンの両フランジ部の外側から前記ボビンに嵌合されたコアと、前記コイル巻装部に巻装されたコイルと、前記ボビンに設けられ前記コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末が絡げられる巻線処理端子とからなり、
前記巻線処理端子に、前記コイルの巻き始め端末及び巻き終り端末を絡げる絡げ凹部を設け、この絡げ凹部に絡げたコイル端末を切断するナイフエッジ部を設けたことを特徴とするコイル巻装部品。
【請求項2】
前記絡げ凹部は、V字状もしくはU字状であり、その底部にナイフエッジ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のコイル巻装部品。
【請求項3】
前記巻線処理端子の前記絡げ凹部と反対側の角部は、樹脂で覆われてR面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイル巻装部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−329264(P2007−329264A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158782(P2006−158782)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(592074441)東京コイルエンジニアリング株式会社 (62)
【Fターム(参考)】