コイル装置、磁場発生装置、および磁気共鳴イメージング装置
【課題】被検体の撮影部位に関わらず、少ないループコイルで高品質な磁気共鳴画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】クレードル支持板に、磁気共鳴信号を受信するためのコイル群3を内蔵する。コイル群3は、所定点Pcを取り囲むように配された6個のループコイル31〜36と、1個の円形ループコイル37とを有している。6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、実質的に同一の面(ZX面)内に設けられている。6個のループコイル31〜36の各々のコイル片は、所定点Pcを中心とした円の円周に沿うように形成される。
【解決手段】クレードル支持板に、磁気共鳴信号を受信するためのコイル群3を内蔵する。コイル群3は、所定点Pcを取り囲むように配された6個のループコイル31〜36と、1個の円形ループコイル37とを有している。6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、実質的に同一の面(ZX面)内に設けられている。6個のループコイル31〜36の各々のコイル片は、所定点Pcを中心とした円の円周に沿うように形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置、磁場発生装置、および磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置で被検体を撮影する場合、撮像領域が広くても高品質な画像を得ることができるように、複数のループコイルを組み合わせて磁気共鳴信号を受信することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
また、被検体に受信コイルを取り付けなくても高品質な磁気共鳴画像を得ることができるように、複数のループコイルをクレードルに埋め込む技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-132308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のループコイルをクレードルに埋め込む場合、被検体のどの部位でも撮像できるようにするためには、クレードルの全体に渡ってループコイルを埋め込む必要がある。したがって、多数のループコイルが必要となり、コストが掛かるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、被検体の撮影部位に関わらず、少ない数のループコイルで高品質な磁気共鳴画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決する本発明のコイル装置は、
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とを有する磁場発生装置に内蔵され、上記被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置であって、
所定点を取り囲むように同一面内に配された複数のループコイルを有し、
上記複数のループコイルの各々は、
上記所定点を中心とした円の円周方向に延在する第1の部分と、
上記第1の部分と上記所定点との間に位置し、上記第1の部分の両端を繋ぐ第2の部分と、
を有している。
また、本発明の磁場発生装置は、本発明のコイル装置を有している。
更に、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、本発明の磁場発生装置を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、複数のループコイルの各々は、円周に沿うように延在する部分を有している。したがって、複数のループコイルを組み合わせた全体の外形は、略円形となる。通常、静磁場が均一な領域は、マグネットセンターを中心とした略球形であるので、静磁場が均一な領域の断面も略円形となる。したがって、ループコイルの各々が、円周に沿うように延在する第1のコイル片を有することによって、使用するループコイルの数が少なくても、静磁場が均一な領域においてはコイル感度を十分に高くすることができ、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】クレードル支持板2eを示す図である。
【図4】コイル群3の平面図である。
【図5】ループコイル31〜36の説明図である。
【図6】ループコイル31〜36の相対的な位置関係の説明図である。
【図7】6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係の説明図である。
【図8】コイル群3のコイル感度と、ボア2a内の静磁場分布との関係の説明図である。
【図9】コイル感度が計算される面の説明図である。
【図10】比較例のコイル群の平面図である。
【図11】コイル感度の計算結果を示す図である。
【図12】第2の実施形態におけるコイル群100の平面図である。
【図13】コイル群100から、8の字コイル12および13を分けて示した平面図である。
【図14】図13の破線で囲まれた領域Aの拡大図である。
【図15】コイル群100から、8の字コイル11を分けて示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の側面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic
Resonance Imaging)装置と呼ぶ)1は、磁場発生装置2と、テーブル5と、制御装置6と、入力装置7と、表示装置8とを有している。
【0013】
磁場発生装置2は、被検体9が搬入されるボア2aを有している。また、磁場発生装置2は、超伝導コイル2bと、勾配コイル2cと、送信コイル2dとを内蔵している。超伝導コイル2bは静磁場B0を印加し、勾配コイル2cは勾配パルスを印加し、送信コイル2dはRFパルスを送信する。更に、磁場発生装置2は、被検体9が載置されるクレードル5aを支持するためのクレードル支持板2eを有している。
【0014】
クレードル支持板2eには、被検体9から発生した磁気共鳴信号Smを受信する受信コイル装置が内蔵されている。受信コイル装置は、複数のループコイルからなるコイル群3を有している(図2参照)。コイル群3の外形は、略円形の構造を有している。また、磁場発生装置2は、コイル群3と送信コイル2dとの間に中和回路4を有している。中和回路4は、コイル群3および送信コイル2dに、相互誘導により発生する電圧とは逆位相の電圧を供給する回路であり、逆位相の電圧を供給することによって、コイル群3と送信コイル2dとの間のカップリングを低減することができる。尚、コイル群3の構造については、後述する。
【0015】
クレードル5aは、磁場発生装置2の前方に設けられたテーブル5と、ボア2aに設けられたクレードル支持板2eとを、z方向および−z方向にスライドできるように構成されている。クレードル5aがz方向に移動することによって、被検体9がボア2aに搬送される。クレードル5aが−z方向に移動することによって、ボア2aに搬送された被検体9は、ボア2aから搬出される。第1の実施形態では、被検体9の腹部9aを撮影するために、被検体9は、腹部9aがマグネットセンターMCに位置するように搬入されている。
【0016】
制御装置6は、コイル制御手段6aおよび信号処理手段6bを有している。
【0017】
コイル制御手段6aは、入力装置7から入力された撮影命令に従ってパルスシーケンスが繰り返し実行されるように、勾配コイル2cおよび送信コイル2dを制御する。信号処理手段6bは、コイル群3が受信した磁気共鳴信号Smを処理し、画像を再構成する。
【0018】
入力装置7は、オペレータ10の操作に応答して、制御装置6に種々の命令などを伝送する。
【0019】
表示装置8は、画像などを表示する。
【0020】
次に、クレードル支持板2eに内蔵されたコイル群3の構造について説明する。
【0021】
図3は、クレードル支持板2eを示す図である。
図3(a)は、クレードル支持板2eの平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0022】
クレードル支持板2eは、z方向に延在する略長方形の形状を有している。クレードル支持板2eには、コイル群3が内蔵されている。以下に、コイル群3の構造について説明する。
【0023】
図4は、コイル群3の平面図である。
【0024】
コイル群3は、所定点Pcを取り囲むように配された6個のループコイル31〜36を有している。また、コイル群3は、6個のループコイル31〜36に跨るように配された1個の円形ループコイル37も有している。6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、実質的に同一の面(ZX面)内に設けられている。コイル群3のx方向およびz方向の長さLは、L=L1である。
【0025】
図5(a)は、コイル群3のうちの6個のループコイル31〜36のみを示した平面図、図5(b)は、6個のループコイル31〜36のうちのループコイル31のみを示した平面図である。
【0026】
ループコイル31は、図5(b)に示すように、4本のコイル片CP1〜CP4を有している。コイル片CP1は、所定点Pcを中心とした半径R1の円E1の円周上に位置している。また、コイル片CP2は、所定点Pcを中心とした半径R2の円E2の円周上に位置している。コイル片CP2は、コイル片CP1よりも長くなるように形成されている。コイル片CP3は、コイル片CP1の一端とコイル片CP2の一端とを接続しており、コイル片CP4は、コイル片CP1の他端とコイル片CP2の他端とを接続している。コイル片CP1〜CP4は、コンデンサなどの電子部品と導線との組み合わせによって構成されているが、図5では、説明の便宜上、コイル片CP1〜CP4は、簡略化して示されている。尚、コイル片CP1が、本発明におけるループコイルの第1の部分に相当し、コイル片CP2〜CP3を組み合わせたものが、本発明におけるループコイルの第2の部分に相当する。
【0027】
ループコイル31は、4本のコイル片CP1〜CP4で囲まれたループ面SLを有している。
【0028】
尚、上記の説明では、ループコイル31について説明されているが、他のループコイル32〜36についても、ループコイル31と同様に、4本のコイル片CP1〜CP4によって構成されている。したがって、ループコイル31〜36の各々のコイル片CP1は、半径R1の円E1の円周上に位置しており、ループコイル31〜36の各々のコイル片CP2は、半径R2の円E2の円周上に位置している。
【0029】
次に、ループコイル31〜36の相対的な位置関係について説明する。
【0030】
図6(a)は、6個のループコイル31〜36の平面図、図6(b)は、6個のループコイル31〜36から、ループコイル31を分けて示した平面図である。
【0031】
ループコイル31のコイル片CP3は、隣のループコイル32の内側に位置しており、ループコイル31のコイル片CP4は、隣のループコイル36の内側に位置している。したがって、ループコイル31のループ面SLは、両隣のループコイル32および36とオーバーラップするオーバーラップ領域J1およびJ2を有している(図6(a)参照)。図6では、ループコイル31について説明したが、他のループコイル32〜36についても、両隣のループコイルとの間にオーバーラップ領域J3〜J6を有している。オーバーラップ領域J1〜J6の幅Wは、W=W1である。各ループコイルが両隣のループコイルとの間にオーバーラップ領域J1〜J6を有するようにループコイル31〜36を配することによって、ループコイル31〜36同士のカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域J1〜J6の幅W1が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域J1〜J6の幅W1は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0032】
尚、ループコイル31〜36のうち、互いに隣り合うループコイルの間には、電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0033】
次に、6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係について説明する。
【0034】
図7は、6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係の説明図である。
【0035】
円形ループコイル37は、所定点Pcを中心とした半径R3の円の円周に沿うようにループが形成されている。半径R3は、半径R1よりも大きいので、円形ループコイル37は、6個のループコイル31〜36の各々とオーバーラップするオーバーラップ領域K1〜K6を有している。オーバーラップ領域K1〜K6の幅Wは、W=W2である。円形ループコイル37が6個のループコイル31〜36との間にオーバーラップ領域K1〜K6を有することによって、円形ループコイル37と6個のループコイル31〜36との間のカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域K1〜K6の幅W2が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域K1〜K6の幅W2は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0036】
コイル群3は、上記のように構成されている。
【0037】
コイル群3は、クレードル支持板2eに内蔵されているので、被検体9の撮影部位をマグネットセンターMCの近傍に位置決めすることによって、撮影部位はコイル群3の近傍に位置決めされる。したがって、被検体9の撮影部位が、頭部、腹部、脚部など、どの部位であっても、クレードル5aをz方向(又は−z方向)に移動させることによって、撮影部位はコイル群3の近傍に位置決めすることができる。このため、クレードル支持板2eの全体に渡ってループコイルを内蔵しなくても、マグネットセンターMCの近傍にのみループコイルを内蔵するだけで、被検体9のどの撮影部位でも撮影することができる。また、クレードル支持板2eの全体に渡ってループコイルを内蔵する必要はなく、マグネットセンターMCの近傍にのみループコイルを内蔵するだけでよいので、磁気共鳴信号を受信するために必要となるループコイルの数が少なくて済み、コストの削減が図られる。
【0038】
次に、コイル群3のコイル感度と、ボア2a(図1参照)内の静磁場分布との関係について、図8を参照しながら説明する。
【0039】
図8は、コイル群3のコイル感度と、ボア2a内の静磁場分布との関係の説明図である。
【0040】
ボア2a内における静磁場分布は、ボア内2aの全領域に渡って均一にすることは困難であるが、マグネットセンターMCの近傍では、静磁場分布が実質的に均一になる領域(以下、「静磁場均一領域」と呼ぶ)RBと考えることができる。一般的には、静磁場均一領域RBは、マグネットセンターMCを中心とした球で表すことができ、撮像視野FOVは、静磁場均一領域RB内に位置決めされるように設定される。したがって、撮像視野FOV内において高品質な磁気共鳴画像を得るためには、コイル群3は、球形で表される静磁場均一領域RBにおいて高いコイル感度を有していることが必要となる。そこで、第1の実施形態では、球形で表される静磁場均一領域RB内において、コイル群3ができるだけ高いコイル感度を有するようにするため、ループコイル31〜36のコイル片CP2を、半径R2の円E2の円周上に位置するように設けている(図5参照)。ループコイル31〜36のコイル片CP2を、半径R2の円2の円周上に位置するように設けることによって、コイル群3の外形は、略円形になるので、球形で表される静磁場均一領域RB内において、コイル群3のコイル感度を高くすることができる。この理由を検証するため、静磁場均一領域RB内におけるコイル群3のコイル感度をシミュレーションで計算した。以下に、シミュレーション結果について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0041】
シミュレーションでは、コイル群3を用いて、静磁場均一領域RBを横切る面内のコイル感度を計算した。
【0042】
図9は、コイル感度が計算される面の説明図である。
【0043】
シミュレーションでは、静磁場均一領域RBの中心(マグネットセンターMC)を通りZX面に平行な面SCを規定し、面SCにおけるコイル感度を計算した。面SCにおけるコイル感度を計算するに当たって、コイル群3のx方向およびz方向の長さL1(図7参照)は、L1=48cmとした。
【0044】
また、シミュレーションでは、コイル群3の効果を説明するために、比較例として、コイル群3とは異なる別のコイル群を使用した場合の面SCにおけるコイル感度も計算した。以下に、比較例のコイル群の構造について説明する。
【0045】
図10は、比較例のコイル群の平面図である。
【0046】
比較例のコイル群30は、9個の矩形状のループコイル301〜309を有している。9個のループコイル301〜309は、3×3のマトリックス状に配列されている。ループコイル301〜309のうち、互いに隣り合うループコイルの間には、電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0047】
また、互いに隣り合うループコイルの間には、カップリングが低減されるように、オーバーラップ領域H(斜線で示されている部分)が設けられている。比較例のコイル群30を用いて面SCにおけるコイル感度を計算するにあたって、コイル群30のx方向およびz方向の長さL2(図10参照)は、L2=48cmとした。
【0048】
以下に、コイル群3および30のコイル感度の計算結果を説明する。
【0049】
図11は、コイル感度の計算結果を示す図である。
【0050】
図11(a)は、コイル群3を用いた場合の面SCにおけるコイル感度分布の計算結果を示す図、図11(b)は、コイル群30を用いた場合の面SCにおけるコイル感度分布の計算結果を示す図である。図11(a)および(b)に示された円は、面SC内における静磁場均一領域RBを示している。
【0051】
図11(a)および(b)を参照すると、コイル群3および30は、いずれも、面SC内における静磁場均一領域RBにおいて高いコイル感度を有していることがわかる。
【0052】
尚、コイル群30は、矩形状のループコイル301〜309を有しているので、静磁場均一領域RBの外側においてもコイル感度は高くなるが、第1の実施形態のコイル群3は、6個のループコイル31〜36の各々が円弧形状のコイル片CP1を有しているので、静磁場均一領域RBの外側ではコイル感度は低くなる。しかし、第1の実施形態のコイル群3を用いても、撮像視野FOVが設定される静磁場均一領域RB内では高いコイル感度が得られているので、高品質な磁気共鳴画像を得ることができる。
【0053】
第1の実施形態のコイル群3は、7個のループコイル31〜37を用いるだけで、面SC内における静磁場均一領域RBにおけるコイル感度を十分に高くすることができるのに対し、比較例のコイル群30は、9個のループコイルが必要となる。したがって、比較例のコイル群30よりも、第1の実施形態のコイル群3を使用することによって、必要なループコイルの数を少なくすることができ、コストの削減を図ることができる。
【0054】
第1の実施形態では、円形ループコイル37が備えられている。円形ループコイル37を備えることによって、マグネットセンターMCの近傍において高いコイル感度を得ることができる。尚、円形ループコイル37は必ずしも備える必要はなく、コイル群30を、6個のループコイル31〜36のみで構成してもよい。ただし、コイル群30を、6個のループコイル31〜36のみで構成する場合は、マグネットセンターMCの近傍において高いコイル感度が得られるように、6個のループコイル31〜36のコイル片CP1の位置を、所定点Pcに十分に近づける必要がある。
【0055】
また、第1の実施形態のコイル群3は、所定点Pcを取り囲むループコイルとして、6個のループコイル31〜36を有しているが、所定点Pcを取り囲むループコイルの数は、6個に限られず、6個より少なくても多くてもよい。ただし、ループコイルの数が少なすぎると、静磁場均一領域RBにおいて高いコイルを得ることができなくなり、一方、ループコイルの数が多すぎると、コストが高くなるので、コイル感度とコストとのトレードオフを考慮してループコイルの数を決める必要がある。
【0056】
尚、第1の実施形態では、ループコイル同士のカップリングが十分に小さくなるように、オーバーラップ領域が設けられているが、オーバーラップ領域は必ずしも備える必要はない。ただし、オーバーラップ領域を備えない場合は、ループコイル同士のカップリングを低減するためのデカップリング回路が必要となるので、コスト高になる。したがって、コストを低減するためには、オーバーラップ領域を設けることが望ましい。
【0057】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態の説明に当たっては、第1の実施形態との相違点を主に説明する。
【0058】
第2の実施形態のMRI装置は、第1の実施形態のMRI装置が有しているコイル群3とは異なるコイル群を有しているが、その他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下に、第2の実施形態のMRI装置が有するコイル群について、図12〜15を参照しながら説明する。
【0059】
図12は、第2の実施形態におけるコイル群100の平面図である。
【0060】
コイル群100は、6個のループコイル31〜36と、1個の円形ループコイル37と、3個の8の字コイル11〜13を有している。尚、図12〜図15では、ループコイル31〜37と、8の字コイル11〜13とを区別しやすくするため、8の字コイル11〜13は太い実線で示されている。
【0061】
第2の実施形態における6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、第1の実施形態における6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37と同一構造である。したがって、コイル群100の説明に当たっては、6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37の説明は省略し、3個の8の字コイル11〜13について説明する。
【0062】
図13は、コイル群100から、8の字コイル12および13を分けて示した平面図、図14は、図13の破線で囲まれた領域Aの拡大図である。
【0063】
3個の8の字コイル11〜13は、ループコイル31〜37と同様に、ZX面内に配されている。
【0064】
8の字コイル11は、コイル片111〜114を有している(図14参照)。コイル片111および112は、円形ループコイル37に沿うように設けられている。また、コイル片113は、コイル片111の一端111aから、所定点Pcを経由して、コイル片112の一端112aにまで延在するように設けられている。更に、コイル片114は、コイル片111の他端111bから、所定点Pcを経由して、コイル片112の他端112bにまで延在するように設けられている。尚、所定点Pcには、コイル片113とコイル片114とを電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0065】
8の字コイル11は、円形ループコイル37とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル11のループ面は、ループコイル31〜36のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域G1〜G6(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域G1〜G6によって、8の字コイル11とループコイル31〜36とのカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域G1〜G6の幅W3が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域G1〜G6の幅W3は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0066】
次に、8の字コイル12および13について説明する。
【0067】
図15は、コイル群100から、8の字コイル11を分けて示した平面図である。
【0068】
8の字コイル12は、ループコイル31の位置に配されている。8の字コイル12は、ループコイル31とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル12のループ面は、円形ループコイル37のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域H1およびH2(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域H1およびH2によって、8の字コイル12と円形ループコイル37とのカップリングを低減することができる。
【0069】
一方、8の字コイル13は、ループコイル34の位置に配されている。8の字コイル13は、ループコイル34とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル13のループ面は、円形ループコイル37のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域H3およびH4(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域H3およびH4によって、8の字コイル13と円形ループコイル37とのカップリングを低減することができる。
【0070】
尚、オーバーラップ領域H1〜H4の面積が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域H1〜H4の面積は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0071】
また、8の字コイル12および13のループ面は、8の字コイル11のループ面にもオーバーラップするように構成されている(図12参照)。更に、8の字コイル11〜13は、z方向に並ぶように配されている。
【0072】
8の字コイル11〜13は、上記のように構成されている。
【0073】
第2の実施形態におけるコイル群30を用いても、静磁場均一領域RB内において、高いコイル感度を得ることができる。
【0074】
また、第2の実施形態のコイル群30では、8の字コイル11〜13とループコイル31、33、および37との組合せによって、被検体からの磁気共鳴信号のクワドラチャ受信を効率よく行うことができる。例えば、図1に示すように被検体9をボア2aに搬入すると、被検体9の背骨は、z方向に並ぶ8の字コイル11〜13に沿うように位置決めされるので、被検体9の背骨の磁気共鳴信号を効率よくクワドラチャ受信することができる。したがって、被検体9の背骨が鮮明に描出された磁気共鳴画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 MRI装置
2 磁場発生装置
2a ボア
2b 超伝導コイル
2c 勾配コイル
2d 送信コイル
2e クレードル支持板
3、100 コイル群
4 中和回路
5 テーブル
5a クレードル
6 制御装置
6a コイル制御手段
6b 信号処理手段
7 入力装置
8 表示装置
9 被検体
9a 腹部
11、12、13 8の字コイル
31〜37 ループコイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置、磁場発生装置、および磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置で被検体を撮影する場合、撮像領域が広くても高品質な画像を得ることができるように、複数のループコイルを組み合わせて磁気共鳴信号を受信することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
また、被検体に受信コイルを取り付けなくても高品質な磁気共鳴画像を得ることができるように、複数のループコイルをクレードルに埋め込む技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-132308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のループコイルをクレードルに埋め込む場合、被検体のどの部位でも撮像できるようにするためには、クレードルの全体に渡ってループコイルを埋め込む必要がある。したがって、多数のループコイルが必要となり、コストが掛かるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、被検体の撮影部位に関わらず、少ない数のループコイルで高品質な磁気共鳴画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決する本発明のコイル装置は、
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とを有する磁場発生装置に内蔵され、上記被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置であって、
所定点を取り囲むように同一面内に配された複数のループコイルを有し、
上記複数のループコイルの各々は、
上記所定点を中心とした円の円周方向に延在する第1の部分と、
上記第1の部分と上記所定点との間に位置し、上記第1の部分の両端を繋ぐ第2の部分と、
を有している。
また、本発明の磁場発生装置は、本発明のコイル装置を有している。
更に、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、本発明の磁場発生装置を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、複数のループコイルの各々は、円周に沿うように延在する部分を有している。したがって、複数のループコイルを組み合わせた全体の外形は、略円形となる。通常、静磁場が均一な領域は、マグネットセンターを中心とした略球形であるので、静磁場が均一な領域の断面も略円形となる。したがって、ループコイルの各々が、円周に沿うように延在する第1のコイル片を有することによって、使用するループコイルの数が少なくても、静磁場が均一な領域においてはコイル感度を十分に高くすることができ、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】クレードル支持板2eを示す図である。
【図4】コイル群3の平面図である。
【図5】ループコイル31〜36の説明図である。
【図6】ループコイル31〜36の相対的な位置関係の説明図である。
【図7】6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係の説明図である。
【図8】コイル群3のコイル感度と、ボア2a内の静磁場分布との関係の説明図である。
【図9】コイル感度が計算される面の説明図である。
【図10】比較例のコイル群の平面図である。
【図11】コイル感度の計算結果を示す図である。
【図12】第2の実施形態におけるコイル群100の平面図である。
【図13】コイル群100から、8の字コイル12および13を分けて示した平面図である。
【図14】図13の破線で囲まれた領域Aの拡大図である。
【図15】コイル群100から、8の字コイル11を分けて示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の側面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic
Resonance Imaging)装置と呼ぶ)1は、磁場発生装置2と、テーブル5と、制御装置6と、入力装置7と、表示装置8とを有している。
【0013】
磁場発生装置2は、被検体9が搬入されるボア2aを有している。また、磁場発生装置2は、超伝導コイル2bと、勾配コイル2cと、送信コイル2dとを内蔵している。超伝導コイル2bは静磁場B0を印加し、勾配コイル2cは勾配パルスを印加し、送信コイル2dはRFパルスを送信する。更に、磁場発生装置2は、被検体9が載置されるクレードル5aを支持するためのクレードル支持板2eを有している。
【0014】
クレードル支持板2eには、被検体9から発生した磁気共鳴信号Smを受信する受信コイル装置が内蔵されている。受信コイル装置は、複数のループコイルからなるコイル群3を有している(図2参照)。コイル群3の外形は、略円形の構造を有している。また、磁場発生装置2は、コイル群3と送信コイル2dとの間に中和回路4を有している。中和回路4は、コイル群3および送信コイル2dに、相互誘導により発生する電圧とは逆位相の電圧を供給する回路であり、逆位相の電圧を供給することによって、コイル群3と送信コイル2dとの間のカップリングを低減することができる。尚、コイル群3の構造については、後述する。
【0015】
クレードル5aは、磁場発生装置2の前方に設けられたテーブル5と、ボア2aに設けられたクレードル支持板2eとを、z方向および−z方向にスライドできるように構成されている。クレードル5aがz方向に移動することによって、被検体9がボア2aに搬送される。クレードル5aが−z方向に移動することによって、ボア2aに搬送された被検体9は、ボア2aから搬出される。第1の実施形態では、被検体9の腹部9aを撮影するために、被検体9は、腹部9aがマグネットセンターMCに位置するように搬入されている。
【0016】
制御装置6は、コイル制御手段6aおよび信号処理手段6bを有している。
【0017】
コイル制御手段6aは、入力装置7から入力された撮影命令に従ってパルスシーケンスが繰り返し実行されるように、勾配コイル2cおよび送信コイル2dを制御する。信号処理手段6bは、コイル群3が受信した磁気共鳴信号Smを処理し、画像を再構成する。
【0018】
入力装置7は、オペレータ10の操作に応答して、制御装置6に種々の命令などを伝送する。
【0019】
表示装置8は、画像などを表示する。
【0020】
次に、クレードル支持板2eに内蔵されたコイル群3の構造について説明する。
【0021】
図3は、クレードル支持板2eを示す図である。
図3(a)は、クレードル支持板2eの平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0022】
クレードル支持板2eは、z方向に延在する略長方形の形状を有している。クレードル支持板2eには、コイル群3が内蔵されている。以下に、コイル群3の構造について説明する。
【0023】
図4は、コイル群3の平面図である。
【0024】
コイル群3は、所定点Pcを取り囲むように配された6個のループコイル31〜36を有している。また、コイル群3は、6個のループコイル31〜36に跨るように配された1個の円形ループコイル37も有している。6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、実質的に同一の面(ZX面)内に設けられている。コイル群3のx方向およびz方向の長さLは、L=L1である。
【0025】
図5(a)は、コイル群3のうちの6個のループコイル31〜36のみを示した平面図、図5(b)は、6個のループコイル31〜36のうちのループコイル31のみを示した平面図である。
【0026】
ループコイル31は、図5(b)に示すように、4本のコイル片CP1〜CP4を有している。コイル片CP1は、所定点Pcを中心とした半径R1の円E1の円周上に位置している。また、コイル片CP2は、所定点Pcを中心とした半径R2の円E2の円周上に位置している。コイル片CP2は、コイル片CP1よりも長くなるように形成されている。コイル片CP3は、コイル片CP1の一端とコイル片CP2の一端とを接続しており、コイル片CP4は、コイル片CP1の他端とコイル片CP2の他端とを接続している。コイル片CP1〜CP4は、コンデンサなどの電子部品と導線との組み合わせによって構成されているが、図5では、説明の便宜上、コイル片CP1〜CP4は、簡略化して示されている。尚、コイル片CP1が、本発明におけるループコイルの第1の部分に相当し、コイル片CP2〜CP3を組み合わせたものが、本発明におけるループコイルの第2の部分に相当する。
【0027】
ループコイル31は、4本のコイル片CP1〜CP4で囲まれたループ面SLを有している。
【0028】
尚、上記の説明では、ループコイル31について説明されているが、他のループコイル32〜36についても、ループコイル31と同様に、4本のコイル片CP1〜CP4によって構成されている。したがって、ループコイル31〜36の各々のコイル片CP1は、半径R1の円E1の円周上に位置しており、ループコイル31〜36の各々のコイル片CP2は、半径R2の円E2の円周上に位置している。
【0029】
次に、ループコイル31〜36の相対的な位置関係について説明する。
【0030】
図6(a)は、6個のループコイル31〜36の平面図、図6(b)は、6個のループコイル31〜36から、ループコイル31を分けて示した平面図である。
【0031】
ループコイル31のコイル片CP3は、隣のループコイル32の内側に位置しており、ループコイル31のコイル片CP4は、隣のループコイル36の内側に位置している。したがって、ループコイル31のループ面SLは、両隣のループコイル32および36とオーバーラップするオーバーラップ領域J1およびJ2を有している(図6(a)参照)。図6では、ループコイル31について説明したが、他のループコイル32〜36についても、両隣のループコイルとの間にオーバーラップ領域J3〜J6を有している。オーバーラップ領域J1〜J6の幅Wは、W=W1である。各ループコイルが両隣のループコイルとの間にオーバーラップ領域J1〜J6を有するようにループコイル31〜36を配することによって、ループコイル31〜36同士のカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域J1〜J6の幅W1が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域J1〜J6の幅W1は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0032】
尚、ループコイル31〜36のうち、互いに隣り合うループコイルの間には、電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0033】
次に、6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係について説明する。
【0034】
図7は、6個のループコイル31〜36と円形ループコイル37との位置関係の説明図である。
【0035】
円形ループコイル37は、所定点Pcを中心とした半径R3の円の円周に沿うようにループが形成されている。半径R3は、半径R1よりも大きいので、円形ループコイル37は、6個のループコイル31〜36の各々とオーバーラップするオーバーラップ領域K1〜K6を有している。オーバーラップ領域K1〜K6の幅Wは、W=W2である。円形ループコイル37が6個のループコイル31〜36との間にオーバーラップ領域K1〜K6を有することによって、円形ループコイル37と6個のループコイル31〜36との間のカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域K1〜K6の幅W2が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域K1〜K6の幅W2は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0036】
コイル群3は、上記のように構成されている。
【0037】
コイル群3は、クレードル支持板2eに内蔵されているので、被検体9の撮影部位をマグネットセンターMCの近傍に位置決めすることによって、撮影部位はコイル群3の近傍に位置決めされる。したがって、被検体9の撮影部位が、頭部、腹部、脚部など、どの部位であっても、クレードル5aをz方向(又は−z方向)に移動させることによって、撮影部位はコイル群3の近傍に位置決めすることができる。このため、クレードル支持板2eの全体に渡ってループコイルを内蔵しなくても、マグネットセンターMCの近傍にのみループコイルを内蔵するだけで、被検体9のどの撮影部位でも撮影することができる。また、クレードル支持板2eの全体に渡ってループコイルを内蔵する必要はなく、マグネットセンターMCの近傍にのみループコイルを内蔵するだけでよいので、磁気共鳴信号を受信するために必要となるループコイルの数が少なくて済み、コストの削減が図られる。
【0038】
次に、コイル群3のコイル感度と、ボア2a(図1参照)内の静磁場分布との関係について、図8を参照しながら説明する。
【0039】
図8は、コイル群3のコイル感度と、ボア2a内の静磁場分布との関係の説明図である。
【0040】
ボア2a内における静磁場分布は、ボア内2aの全領域に渡って均一にすることは困難であるが、マグネットセンターMCの近傍では、静磁場分布が実質的に均一になる領域(以下、「静磁場均一領域」と呼ぶ)RBと考えることができる。一般的には、静磁場均一領域RBは、マグネットセンターMCを中心とした球で表すことができ、撮像視野FOVは、静磁場均一領域RB内に位置決めされるように設定される。したがって、撮像視野FOV内において高品質な磁気共鳴画像を得るためには、コイル群3は、球形で表される静磁場均一領域RBにおいて高いコイル感度を有していることが必要となる。そこで、第1の実施形態では、球形で表される静磁場均一領域RB内において、コイル群3ができるだけ高いコイル感度を有するようにするため、ループコイル31〜36のコイル片CP2を、半径R2の円E2の円周上に位置するように設けている(図5参照)。ループコイル31〜36のコイル片CP2を、半径R2の円2の円周上に位置するように設けることによって、コイル群3の外形は、略円形になるので、球形で表される静磁場均一領域RB内において、コイル群3のコイル感度を高くすることができる。この理由を検証するため、静磁場均一領域RB内におけるコイル群3のコイル感度をシミュレーションで計算した。以下に、シミュレーション結果について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0041】
シミュレーションでは、コイル群3を用いて、静磁場均一領域RBを横切る面内のコイル感度を計算した。
【0042】
図9は、コイル感度が計算される面の説明図である。
【0043】
シミュレーションでは、静磁場均一領域RBの中心(マグネットセンターMC)を通りZX面に平行な面SCを規定し、面SCにおけるコイル感度を計算した。面SCにおけるコイル感度を計算するに当たって、コイル群3のx方向およびz方向の長さL1(図7参照)は、L1=48cmとした。
【0044】
また、シミュレーションでは、コイル群3の効果を説明するために、比較例として、コイル群3とは異なる別のコイル群を使用した場合の面SCにおけるコイル感度も計算した。以下に、比較例のコイル群の構造について説明する。
【0045】
図10は、比較例のコイル群の平面図である。
【0046】
比較例のコイル群30は、9個の矩形状のループコイル301〜309を有している。9個のループコイル301〜309は、3×3のマトリックス状に配列されている。ループコイル301〜309のうち、互いに隣り合うループコイルの間には、電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0047】
また、互いに隣り合うループコイルの間には、カップリングが低減されるように、オーバーラップ領域H(斜線で示されている部分)が設けられている。比較例のコイル群30を用いて面SCにおけるコイル感度を計算するにあたって、コイル群30のx方向およびz方向の長さL2(図10参照)は、L2=48cmとした。
【0048】
以下に、コイル群3および30のコイル感度の計算結果を説明する。
【0049】
図11は、コイル感度の計算結果を示す図である。
【0050】
図11(a)は、コイル群3を用いた場合の面SCにおけるコイル感度分布の計算結果を示す図、図11(b)は、コイル群30を用いた場合の面SCにおけるコイル感度分布の計算結果を示す図である。図11(a)および(b)に示された円は、面SC内における静磁場均一領域RBを示している。
【0051】
図11(a)および(b)を参照すると、コイル群3および30は、いずれも、面SC内における静磁場均一領域RBにおいて高いコイル感度を有していることがわかる。
【0052】
尚、コイル群30は、矩形状のループコイル301〜309を有しているので、静磁場均一領域RBの外側においてもコイル感度は高くなるが、第1の実施形態のコイル群3は、6個のループコイル31〜36の各々が円弧形状のコイル片CP1を有しているので、静磁場均一領域RBの外側ではコイル感度は低くなる。しかし、第1の実施形態のコイル群3を用いても、撮像視野FOVが設定される静磁場均一領域RB内では高いコイル感度が得られているので、高品質な磁気共鳴画像を得ることができる。
【0053】
第1の実施形態のコイル群3は、7個のループコイル31〜37を用いるだけで、面SC内における静磁場均一領域RBにおけるコイル感度を十分に高くすることができるのに対し、比較例のコイル群30は、9個のループコイルが必要となる。したがって、比較例のコイル群30よりも、第1の実施形態のコイル群3を使用することによって、必要なループコイルの数を少なくすることができ、コストの削減を図ることができる。
【0054】
第1の実施形態では、円形ループコイル37が備えられている。円形ループコイル37を備えることによって、マグネットセンターMCの近傍において高いコイル感度を得ることができる。尚、円形ループコイル37は必ずしも備える必要はなく、コイル群30を、6個のループコイル31〜36のみで構成してもよい。ただし、コイル群30を、6個のループコイル31〜36のみで構成する場合は、マグネットセンターMCの近傍において高いコイル感度が得られるように、6個のループコイル31〜36のコイル片CP1の位置を、所定点Pcに十分に近づける必要がある。
【0055】
また、第1の実施形態のコイル群3は、所定点Pcを取り囲むループコイルとして、6個のループコイル31〜36を有しているが、所定点Pcを取り囲むループコイルの数は、6個に限られず、6個より少なくても多くてもよい。ただし、ループコイルの数が少なすぎると、静磁場均一領域RBにおいて高いコイルを得ることができなくなり、一方、ループコイルの数が多すぎると、コストが高くなるので、コイル感度とコストとのトレードオフを考慮してループコイルの数を決める必要がある。
【0056】
尚、第1の実施形態では、ループコイル同士のカップリングが十分に小さくなるように、オーバーラップ領域が設けられているが、オーバーラップ領域は必ずしも備える必要はない。ただし、オーバーラップ領域を備えない場合は、ループコイル同士のカップリングを低減するためのデカップリング回路が必要となるので、コスト高になる。したがって、コストを低減するためには、オーバーラップ領域を設けることが望ましい。
【0057】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態の説明に当たっては、第1の実施形態との相違点を主に説明する。
【0058】
第2の実施形態のMRI装置は、第1の実施形態のMRI装置が有しているコイル群3とは異なるコイル群を有しているが、その他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下に、第2の実施形態のMRI装置が有するコイル群について、図12〜15を参照しながら説明する。
【0059】
図12は、第2の実施形態におけるコイル群100の平面図である。
【0060】
コイル群100は、6個のループコイル31〜36と、1個の円形ループコイル37と、3個の8の字コイル11〜13を有している。尚、図12〜図15では、ループコイル31〜37と、8の字コイル11〜13とを区別しやすくするため、8の字コイル11〜13は太い実線で示されている。
【0061】
第2の実施形態における6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37は、第1の実施形態における6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37と同一構造である。したがって、コイル群100の説明に当たっては、6個のループコイル31〜36および1個の円形ループコイル37の説明は省略し、3個の8の字コイル11〜13について説明する。
【0062】
図13は、コイル群100から、8の字コイル12および13を分けて示した平面図、図14は、図13の破線で囲まれた領域Aの拡大図である。
【0063】
3個の8の字コイル11〜13は、ループコイル31〜37と同様に、ZX面内に配されている。
【0064】
8の字コイル11は、コイル片111〜114を有している(図14参照)。コイル片111および112は、円形ループコイル37に沿うように設けられている。また、コイル片113は、コイル片111の一端111aから、所定点Pcを経由して、コイル片112の一端112aにまで延在するように設けられている。更に、コイル片114は、コイル片111の他端111bから、所定点Pcを経由して、コイル片112の他端112bにまで延在するように設けられている。尚、所定点Pcには、コイル片113とコイル片114とを電気的に絶縁するための絶縁シートが設けられているが、図示省略されている。
【0065】
8の字コイル11は、円形ループコイル37とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル11のループ面は、ループコイル31〜36のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域G1〜G6(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域G1〜G6によって、8の字コイル11とループコイル31〜36とのカップリングを低減することができる。ただし、オーバーラップ領域G1〜G6の幅W3が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域G1〜G6の幅W3は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0066】
次に、8の字コイル12および13について説明する。
【0067】
図15は、コイル群100から、8の字コイル11を分けて示した平面図である。
【0068】
8の字コイル12は、ループコイル31の位置に配されている。8の字コイル12は、ループコイル31とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル12のループ面は、円形ループコイル37のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域H1およびH2(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域H1およびH2によって、8の字コイル12と円形ループコイル37とのカップリングを低減することができる。
【0069】
一方、8の字コイル13は、ループコイル34の位置に配されている。8の字コイル13は、ループコイル34とのカップリングが十分に小さくなるように構成されている。また、8の字コイル13のループ面は、円形ループコイル37のループ面にオーバーラップするオーバーラップ領域H3およびH4(斜線で示されている)を有している。オーバーラップ領域H3およびH4によって、8の字コイル13と円形ループコイル37とのカップリングを低減することができる。
【0070】
尚、オーバーラップ領域H1〜H4の面積が小さすぎたり大きすぎたりすると、カップリングを十分に低減することができないので、オーバーラップ領域H1〜H4の面積は、カップリングが十分に小さくなるように決める必要がある。
【0071】
また、8の字コイル12および13のループ面は、8の字コイル11のループ面にもオーバーラップするように構成されている(図12参照)。更に、8の字コイル11〜13は、z方向に並ぶように配されている。
【0072】
8の字コイル11〜13は、上記のように構成されている。
【0073】
第2の実施形態におけるコイル群30を用いても、静磁場均一領域RB内において、高いコイル感度を得ることができる。
【0074】
また、第2の実施形態のコイル群30では、8の字コイル11〜13とループコイル31、33、および37との組合せによって、被検体からの磁気共鳴信号のクワドラチャ受信を効率よく行うことができる。例えば、図1に示すように被検体9をボア2aに搬入すると、被検体9の背骨は、z方向に並ぶ8の字コイル11〜13に沿うように位置決めされるので、被検体9の背骨の磁気共鳴信号を効率よくクワドラチャ受信することができる。したがって、被検体9の背骨が鮮明に描出された磁気共鳴画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 MRI装置
2 磁場発生装置
2a ボア
2b 超伝導コイル
2c 勾配コイル
2d 送信コイル
2e クレードル支持板
3、100 コイル群
4 中和回路
5 テーブル
5a クレードル
6 制御装置
6a コイル制御手段
6b 信号処理手段
7 入力装置
8 表示装置
9 被検体
9a 腹部
11、12、13 8の字コイル
31〜37 ループコイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とを有する磁場発生装置に内蔵され、前記被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置であって、
所定点を取り囲むように同一面内に配された複数のループコイルを有し、
前記複数のループコイルの各々は、
前記所定点を中心とした円の円周方向に延在する第1の部分と、
前記第1の部分と前記所定点との間に位置し、前記第1の部分の両端を繋ぐ第2の部分と、
を有するコイル装置。
【請求項2】
前記複数のループコイルの各ループコイルのループ面は、隣りに位置するループコイルのループ面にオーバーラップする、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記複数のループコイルと同一面内に配された第1の8の字コイルと、
前記複数のループコイルと同一面内に配された第2の8の字コイルと、
を有する、請求項1又は2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記複数のループコイルのうちの第1のループコイルおよび第2のループコイルは、前記所定点を挟んで互いに対向するように配されており、
前記第1の8の字コイルは、前記第1のループコイルが配された位置に設けられており、
前記第2の8の字コイルは、前記第2のループコイルが配された位置に設けられている、請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記複数のループコイルとは別のループコイルを有しており、
前記別のループコイルは、前記別のループコイルの内側に前記所定点が位置するように配される、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記別のループコイルのループ面は、前記複数のループコイルの各々のループ面にオーバーラップする、請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記複数のループコイルと同一面内に配された第3の8の字コイルを有し、
前記第3の8の字コイルは、前記別のループコイルが配された位置に設けられる、請求項5又は6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記複数のループコイルの各々は、
前記所定点を中心とした第1の円の円周方向に延在する第1のコイル片と、
前記所定点を中心とした第2の円の円周方向に延在する第2のコイル片と、
前記第1のコイル片の一端と前記第2のコイル片の一端とを接続する第3のコイル片と、
前記第1のコイル片の他端と前記第2のコイル片の他端とを接続する第4のコイル片と、
を有する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項9】
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とRFパルスを送信する送信コイルとを有する磁場発生装置であって、
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のコイル装置を内蔵する磁場発生装置。
【請求項10】
前記送信コイルと前記複数のループコイルとのカップリングを低減するための中和回路を有する、請求項9に記載の磁場発生装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の磁場発生装置を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とを有する磁場発生装置に内蔵され、前記被検体から発生した磁気共鳴信号を受信するコイル装置であって、
所定点を取り囲むように同一面内に配された複数のループコイルを有し、
前記複数のループコイルの各々は、
前記所定点を中心とした円の円周方向に延在する第1の部分と、
前記第1の部分と前記所定点との間に位置し、前記第1の部分の両端を繋ぐ第2の部分と、
を有するコイル装置。
【請求項2】
前記複数のループコイルの各ループコイルのループ面は、隣りに位置するループコイルのループ面にオーバーラップする、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記複数のループコイルと同一面内に配された第1の8の字コイルと、
前記複数のループコイルと同一面内に配された第2の8の字コイルと、
を有する、請求項1又は2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記複数のループコイルのうちの第1のループコイルおよび第2のループコイルは、前記所定点を挟んで互いに対向するように配されており、
前記第1の8の字コイルは、前記第1のループコイルが配された位置に設けられており、
前記第2の8の字コイルは、前記第2のループコイルが配された位置に設けられている、請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記複数のループコイルとは別のループコイルを有しており、
前記別のループコイルは、前記別のループコイルの内側に前記所定点が位置するように配される、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記別のループコイルのループ面は、前記複数のループコイルの各々のループ面にオーバーラップする、請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記複数のループコイルと同一面内に配された第3の8の字コイルを有し、
前記第3の8の字コイルは、前記別のループコイルが配された位置に設けられる、請求項5又は6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記複数のループコイルの各々は、
前記所定点を中心とした第1の円の円周方向に延在する第1のコイル片と、
前記所定点を中心とした第2の円の円周方向に延在する第2のコイル片と、
前記第1のコイル片の一端と前記第2のコイル片の一端とを接続する第3のコイル片と、
前記第1のコイル片の他端と前記第2のコイル片の他端とを接続する第4のコイル片と、
を有する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項9】
被検体が搬入されるボアと静磁場を発生する静磁場発生手段とRFパルスを送信する送信コイルとを有する磁場発生装置であって、
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のコイル装置を内蔵する磁場発生装置。
【請求項10】
前記送信コイルと前記複数のループコイルとのカップリングを低減するための中和回路を有する、請求項9に記載の磁場発生装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の磁場発生装置を有する磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図11】
【公開番号】特開2011−24685(P2011−24685A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171445(P2009−171445)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
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