説明

コイル部品およびその製造方法

【課題】耐振性および半田付け性を向上させたコイル部品およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】コイル電極11と、このコイル電極11を埋設する外装体12とを備え、コイル電極の端部11aを外装体12の底面から突出させ、この突出部16から遠い方の第一の側面12bに向かって折り曲げ、第一の側面12bに設けられた係止部13でコイル電極の端部11aを係止させることにより端子電極14を形成したものであり、突出部16から第一の側面12b側を第一の底部12c、その反対側を第二の底部12dとし、端子電極14を上にしたとき、第一の底部12cが第二の底部12dよりも高くなるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられるコイル部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年自動車のエンジン近傍のDC/DCコンバータ回路部等に用いられるコイル部品では、電気的性能および信頼性向上のため、図9に示すように、エッジワイズに巻回したコイル1を磁性体2に埋設させ、コイル1の端部を磁性体2から突出させたものを折り曲げて端子3とし、磁性体2底面の端子3が当接する部分に凹部4を設けていた。この凹部4を設けることにより、端子3の位置決め、および端子3の平坦性を確保していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−309024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車用のコイル部品では大電流化に対応するために、直流抵抗値を低くすることが要求され、そのためにコイル電極を太くする必要があり、コイル部品の大型化を招き、上記従来のコイル部品では、耐振性や半田付け性に課題が生じてきていた。これに対し本発明は、耐振性、および半田付け性に優れたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、平角導線の幅広面を巻回軸に対して垂直に巻回してなるエッジワイズ状のコイル電極と、このコイル電極を埋設する外装体とを備え、コイル電極の端部を外装体の底面から突出させ、この突出させた部分から遠い方の第一の側面に向かって折り曲げ、第一の側面に設けられた係止部でコイル電極の端部を係止させることにより端子電極を形成したものであり、コイル電極の突出部から第一の側面側を第一の底部、その反対側を第二の底部とし、端子電極を上にしたとき、第一の底部が第二の底部よりも高くなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、コイル部品が実装基板に実装されたときに、大きな面積の底面で半田付けをすることができ、耐振性等の信頼性を向上させることができる。コイル部品が大型化してくると、リフロー半田付け時に、熱がコイル部品の内部に吸収され、端子電極部分の温度が下がり、半田付け性が悪くなりやすい。特に、従来のコイル部品のように底面に凹部を設けて、ここに端子を収納するようにすると、端子の側面が凹部によって一部隠れるようになるため、リフロー半田付け時の加熱の熱風が遮られてさらに端子部分の温度が上がりにくくなり、半田付け性を悪化させていた。
【0008】
これに対し本発明の構成によれば、端子電極の面積を大きくしても、その両端部、すなわち係止部の部分と突出部の部分の両方が側面方向から見えているため、リフロー半田の熱を、端子電極の両端部で吸収しやすくなり、端子電極全体で半田付け性を向上させることができ、耐振性が向上するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の外装体形成前の分解斜視図
【図3】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図4】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法における金型を説明する図
【図5】図4におけるD−D線の断面図
【図6】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法における突起部の他の例を示す断面図
【図7】本発明の一実施の形態における他の例を示すコイル部品の斜視図
【図8】本発明の一実施の形態における更に別の例を示すコイル部品の斜視図
【図9】従来のコイル部品の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態におけるコイル部品について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1、図2において、絶縁被覆付き平角導線の幅広面を巻回軸に対して垂直に巻回してなるいわゆるエッジワイズ巻きすることによって得られたコイル電極11の中芯部に絶縁スリーブ18を挿入し、中芯部及び周辺部に磁性体コア19を装着し、全体を液晶ポリマー等の樹脂でモールドして外装体12を形成したものである。コイル電極の端部11aをそれぞれ巻回軸に対して平行な外装体12の一つの面(コイル部品の底面となる面)から突出させ、この突出部16から遠い方の第一の側面12bに向かって折り曲げて、外装体12の側面に設けられた係止部13で係止させることにより端子電極14を形成している。
【0012】
ここで端子電極14を上にして、コイル電極11の突出部16から第一の側面12b側を第一の底部12c、その反対側を第二の底部12dとしたとき、第一の底部12cが第二の底部12dよりも高くなるようにしている。このとき第一の底部12cと第二の底部12dとの高さの差をコイル電極の端部11aの厚さの半分以上にしている。また突出部16におけるコイル電極の端部11aの第一の底部12c側の両側にはつぶし部15が設けられている。
【0013】
このようにすることにより、端子電極14の面積を大きくしても、その両端部、すなわち係止部13の部分と突出部16の部分の両方が側面方向から見えているため、リフロー半田の熱を、端子電極14の両端部で吸収しやすくなり、端子電極14全体で半田付け性を向上させることができる。またつぶし部15を設けることにより、コイル電極の端部11aが折り曲げやすくなり、端子電極14の平坦性を向上させることができる。
【0014】
なお図1のように、端子電極14と、端子電極14に沿った近い方の側面との間の領域の高さを第二の底部12dの高さと同じにしておくことがより望ましい。このようにすることにより、端子電極14に沿った側面の方からも端子電極14が見えるようになるため、リフロー半田の熱を、端子電極14で吸収しやすくなり、半田付け性をより向上させることができる。
【0015】
次に、本実施の形態におけるコイル部品の製造方法について図3を用いて説明する。
【0016】
まず、図3(a)のように、絶縁被覆付き平角導線の幅広面を巻回軸に対して垂直に巻回してなるいわゆるエッジワイズ巻きすることによってコイル電極11を形成する。このときコイル電極11の幅を約2.5mm、厚さを約0.2mmとし、コイル電極の端部11aはそれぞれ巻回軸に対して垂直な同一方向に延びるようにする。このようにすることにより、外装体12から直接実装基板の方につながるため、磁気効率を上げることができ、結果として直流抵抗が小さいコイル部品を得ることができる。
【0017】
次に、図3(b)のように、コイル電極11の中芯部に絶縁スリーブ18を挿入し、中芯部および周辺部に磁性体コア19を装着する。
【0018】
次に、図3(c)のように金型を用いて全体を液晶ポリマー等の樹脂でモールドして外装体12を形成する。このときコイル電極の端部11aが突出している面を上にして、コイル電極の端部11aがそれぞれ突出した突出部16から遠い方の第一の側面12b側を第一の底部12c、その反対側を第二の底部12dとしたとき、第一の底部12cが第二の底部12dよりも高くなるようにしている。また突出部16におけるコイル電極の端部11aの第一の底部12c側の両側にはつぶし部15が設けられている。
【0019】
次に、外装体12から突出したコイル電極の端部11aの絶縁被覆を剥離し、外装体の底面12aから突出したコイル電極の端部11aを、それぞれ突出させた突出部16から遠い方の第一の側面12bに向かって折り曲げ、第一の側面12bに設けられた係止部13でコイル電極の端部11aを係止させることにより端子電極14を形成し、図3(d)のようなコイル部品を得ることができる。
【0020】
ここで外装体12を形成する工程について詳しく説明する。図4は外装体12を形成する工程における金型の形状を示す断面図であり、図5は図4におけるD−D線の断面図であり、図5(a)は金型が開いた状態を示しており、図5(b)は金型が閉じた状態を示している。
【0021】
突出部16におけるコイル電極の端部11aの第一の底部12c側の両側にはつぶし部15が設けられているが、これはつぶし部15を形成したい部分の金型17に突起部20を設け、型締めのときに突起部20によりコイル電極の端部11aを潰すことによってつぶし部15を形成している。
【0022】
本実施の形態のようにコイル電極の端部11aを突出させてモールドを行なう場合、コイル電極の端部11aが突出する部分の金型17を逃がしておく必要がある。このときコイル電極の端部11aの形状、位置等のバラツキに対応するために、コイル電極の端部11aの両側に、金型の逃がしとの間にクリアランス21を設けておく必要がある。このクリアランス21が大きいとモールド樹脂が漏れ出してバリが発生することがある。これに対して本実施の形態のようにすれば、型締めによってコイル電極の端部11aに当たって突起部20がコイル電極の端部11aにつぶし部15を形成するとともに、コイル電極の端部11aの両側の方向に広がるため、クリアランス21を小さくする。そのためモールド樹脂で成形する時に樹脂が漏れ出しにくくなり、バリの発生を抑えることができる。
【0023】
さらに次の工程でコイル電極の端部11aを折り曲げて端子電極14を形成するときに、折り曲げられる部分の内側につぶし部15が形成されているため、この部分が起点となって折り曲げられるため、折り曲げやすくなり、端子電極14の平坦性を向上させることができる。
【0024】
また、第一の底部12cと第二の底部12dの高さが同じであった場合、第一の底部12c側の金型17に設けた突起部20に対向する部分の、第二の底部12d側の金型17はちょうど金型の角部になってしまう。このような状態で型締めを行うと、コイル電極の端部11aにせん断応力がかかってしまうため、端子強度が弱くなり、耐振性に劣ったものとなってしまう。これに対して本実施の形態のように第一の底部12cが第二の底部12dよりも高くなるようにした場合、図4に示すように、突起部20に対向する金型は面で受けているため、コイル電極の端部11aにせん断応力をかけずにつぶし部15を設けながら、コイル電極の端部11aの両側の方向に広げることができる。このせん断応力をかけないようにするためには、第一の底部12cと第二の底部12dとの高さの差をコイル電極の端部11aの厚さの半分以上にすることが望ましい。
【0025】
また、突起部20の大きさは、金型17とのクリアランス21と同程度の大きさにすることが望ましい。ただし、つぶし部15の深さが大きすぎると端子強度が弱くなってくる可能性があるため、つぶし部15の深さはコイル電極の端部11aの厚さの2/3未満とすることが望ましい。
【0026】
さらにコイル電極の端部の両側の方向に広げるためには、図5に示すように、突起部20の形状をコイル電極の端部11aの外側に向かう部分をR形状にしたり、あるいは図6のようにテーパー形状とすることが望ましい。
【0027】
なお、本実施の形態では、2つの端子電極14に挟まれた部分の高さも、端子電極14と対向する部分の高さと同じにしているが、図7のように端子電極14と対向する部分のみを高くするように構成しても良い。このように構成することにより、リフロー半田の熱を、より吸収しやすくなり、さらに半田付け性を向上させることができる。
【0028】
また、図1のように端子電極14で挟まれた底面部の形状を平坦な形状ではなく、図8のように円筒状としても良い。このとき円筒状の中心軸をコイル電極11の中心軸とほぼ一致するようにしている。このようにすることにより、外装体底部においてコイル電極11と外装体12との距離を均一にすることができ、外装体12を樹脂モールドするときに樹脂が回りやすくなるため安定した成形性が得られるとともに、端子電極14に沿った部分は低くなっているため、半田付け性も良好となる。またこのとき端子電極14で挟まれた円筒状の底面部の最も高い位置での高さを、第一の底部12cよりも高く、端子電極14の高さよりも低くなるようにすることが望ましい。このようにすることにより、十分な外装体12の強度が得られるとともに、実装性にも問題が生じることはなくなる。
【0029】
なお、本実施の形態では、コイル電極11に絶縁スリーブ18と磁性体コア19を装着し、全体を樹脂でモールドしているが、コイル電極11そのものを樹脂と磁性体粉を混合したものでモールドしたものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るコイル部品およびその製造方法は、端子電極の面積を大きくしても、その両端部、すなわち係止部の部分と突出部の部分の両方が側面方向から見えているため、リフロー半田の熱を、端子電極の両端部で吸収しやすくなり、端子電極全体で半田付け性を向上させることができ、耐振性を向上させることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0031】
11 コイル電極
11a コイル電極の端部
12 外装体
12a 外装体の底面
12b 第一の側面
12c 第一の底部
12d 第二の底部
13 係止部
14 端子電極
15 つぶし部
16 突出部
17 金型
18 絶縁スリーブ
19 磁性体コア
20 突起部
21 クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導線の幅広面を巻回軸に対して垂直に巻回してなるエッジワイズ状のコイル電極と、このコイル電極を埋設する外装体とを備え、前記コイル電極の端部を前記外装体の底面から突出させ、この突出させた部分(以下突出部と記す)から遠い方の第一の側面に向かって折り曲げ、前記第一の側面に設けられた係止部で前記コイル電極の端部を係止させることにより端子電極を形成したものであり、前記突出部から前記第一の側面側を第一の底部、その反対側を第二の底部とし、前記端子電極を上にしたとき、前記第一の底部が前記第二の底部よりも高くなるようにしたことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記端子電極で挟まれた部分の、前記外装体の底面の形状を円筒状としたことを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
平角導線の幅広面を巻回軸に対して垂直に巻回してエッジワイズ状のコイル電極を形成する工程と、前記コイル電極を樹脂でモールドすることによって外装体を形成する工程と、前記外装体の底面から突出した前記コイル電極の端部をこの突出させた部分(以下突出部と記す)から遠い方の第一の側面に向かって折り曲げ、前記第一の側面に設けられた係止部で前記コイル電極の端部を係止させることにより端子電極を形成する工程とを備え、前記外装体を形成する工程において前記突出部から前記第一の側面側を第一の底部、その反対側を第二の底部とし、前記端子電極を上にしたとき、前記第一の底部が前記第二の底部よりも高くなるようにしたことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記外装体を形成する工程は金型を用いて行い、前記コイル電極の前記突出部の前記第一の底部側の面を前記金型でつぶすことによりつぶし部を形成することを特徴とする請求項3記載のコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169587(P2012−169587A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206933(P2011−206933)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】