説明

コイル部品

【課題】磁性合金を材料とした磁性コアを用いた場合でもフェライトを材料とした磁性コアを用いた従前のコイル部品と同等以上の曲げ強度を確保できるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品10は、磁性合金を材料とした磁性コア11と、螺旋状部14aを磁性コア11の柱状部11bの周囲に配置されたコイル14と、磁性コア11の下面を除いてコイル14を覆うように該磁性コア11に形成された磁性外装15と、磁性コア11及び磁性外装15に形成された第1外部端子ET1及び第2外部端子ET2とを備えており、磁性外装15には多数のボイドVDが内在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性コアの柱状部の周囲にコイルを配置した構造を備える表面実装タイプのコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性コアの柱状部の周囲にコイルを配置した構造を備える表面実装タイプのコイル部品、例えば、インダクタやチョークコイルでは、近年における大電流化の要求に追従するために、磁性コアの材料を従前のフェライト(磁性セラミックス)よりも高透磁率の磁性合金に変更する試みが為されている。
【0003】
ところで、磁性合金を材料とした磁性コアは、磁性合金粒子群を含む磁性体ペーストを型を利用して整形した後に熱を加えることによって作製されるが、熱を加えてもフェライトを材料とした磁性コアのような焼結作用が得難いため、磁性コア自体の曲げ強度がフェライトを材料とした従前の磁性コアに比べて劣る嫌いがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−034102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、磁性合金を材料とした磁性コアを用いた場合でもフェライトを材料とした磁性コアを用いた従前のコイル部品と同等以上の曲げ強度を確保できるコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明(コイル部品)は、板状部と該板状部の上面に設けられた柱状部とを一体に有し、且つ、磁性合金を材料とした磁性コアと、前記磁性コアの板状部の側面から下面に及ぶように形成された一対の第1導体膜と、導線が螺旋状に巻かれた螺旋状部と該螺旋状部から引き出された導線一端部及び導線他端部とを一体に有していて、前記螺旋状部を前記磁性コアの柱状部の周囲に配置され、且つ、前記導線一端部を前記第1導体膜の一方に接合され前記導線他端部を前記第1導体膜の他方に接合されたコイルと、前記磁性コアの柱状部の上面及び板状部の側面と、前記第1導体膜の一方及び他方の側面部分の表面と、前記コイルの螺旋状部、導線一端部、導線一端部の接合部分の表面、導線他端部及び導線他端部の接合部分の表面とをそれぞれ覆うように形成された磁性外装と、前記磁性外装の側面から該磁性外装の下面を通じて前記磁性コアの板状部の下面に及ぶように、且つ、前記第1導体膜の一方及び他方の下面部分の表面をそれぞれ覆うように形成された一対の第2導体膜と、前記第2導体膜の一方及び他方の表面をそれぞれ覆うように形成された一対の第3導体膜を備え、前記第1導体膜の一方、前記第2導体膜の一方及び前記第3導体膜の一方によって第1外部端子が構成され、前記第1導体膜の他方、前記第2導体膜の他方及び前記第3導体膜の他方によって第2外部端子が構成されていると共に、前記磁性外装には多数のボイドが内在している、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁性外装がコイルの上面及び周囲のみならず磁性コアの柱状部の上面及び板状部の側面をも覆っており、しかも、該磁性外装には多数のボイドが内在しているため、外力及び内力に対して緩衝作用を発揮する各ボイドによって、磁性コアの曲げに対する耐性、特に板状部の外周部分の曲げに対する耐性を向上させてコイル部品全体としての曲げ強度を高めることができる。依って、コイル部品を回路基板等に搭載する時に受ける外力やリフローハンダ付け時に該コイル部品に生じる熱膨張収縮によって磁性コアにクラックを生じたり、また、実装後のコイル部品が熱膨張収縮を生じた時に磁性コアにクラックを生じたりすること等を未然に防止して、コイル部品の信頼性を向上できる。
【0008】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明を適用したコイル部品(一実施形態)の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したコイル部品のS1−S1線に沿う拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示したコイル部品のS2−S2線に沿う拡大断面図である。
【図4】図4は、図1に示したコイル部品の拡大下面図である。
【図5】図5は、図2〜図4に示した磁性コアを透過型電子顕微鏡で観察したときに得た画像に準じて粒子状態を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《一実施形態》
図1〜図5は、本発明を適用したコイル部品10(一実施形態)を示す。ここでは、説明の便宜上、図2の上、下、左、右、手前、奥をそれぞれ上、下、前、後、左、右と称し、図1、図3及び図4のこれらに相当する向きも同様に称する。
【0011】
〈コイル部品10の構造〉
図1〜図4に示したコイル部品10は、磁性コア11と、一対の第1導体膜12及び13と、コイル14と、磁性外装15と、一対の第2導体膜16及び17と、一対の第3導体膜18及び19とを備えている。このコイル部品10のサイズは、例えば、前後寸法が2.5mmで、左右寸法が2.0mmで、上下寸法が1.0mmである。
【0012】
磁性コア11は、下面視輪郭が略矩形状で所定厚さ(例えば、上下寸法が1.0mmの場合で0.24mm)の板状部11aと、該板状部11aの上面に設けられた上面視輪郭が略楕円形状で所定高さの柱状部11bとを一体に有している。また、板状部11aの前面及び後面の略中央には、上面視輪郭が略台形状を成す凹み11cがそれぞれ形成されている。板状部11aの上面を基準とした柱状部11bの高さは、コイル14の螺旋状部14aの高さと略一致しているか、或いは、コイル14の螺旋状部14aの高さよりも僅かに大きい。
【0013】
この磁性コア11は、磁性合金をその材料として形成されている。具体的には、図5から分かるように、表面に酸化物膜(=絶縁膜)が形成され、且つ、該酸化物膜を介して相互結合した磁性合金粒子群から成り、酸化物膜によって隣接する磁性合金粒子の絶縁が確保されている。作製方法等について述べれば、磁性コア11は、磁性合金粒子群と溶剤とバインダとを所定質量比で含む磁性体ペーストを型を利用して整形した後に、整形物に酸化性雰囲気中で熱処理を施して溶剤及びバインダを消失させて作製されている。酸化物膜は熱処理過程で各磁性合金粒子の表面に形成され、また、熱処理過程で溶剤及びバインダが消失することに伴って、酸化物膜が形成された磁性合金粒子の間にはポアが存在する。磁性合金粒子は、好ましくはFe−Cr−Si合金やFe−Si−Al合金やFe−Ni−Cr合金等の粒子であり、体積基準の粒子径とした見た場合の該磁性合金粒子の好ましいd50(メディアン径)は3〜20μmで、磁性体ペーストにおける磁性合金粒子群の好ましい含有比率は85〜95wt%である。
【0014】
図5は、d50(メディアン径)が10μmのFe−Cr−Si合金粒子を用いて磁性コア11を作製し、該磁性コア11を透過型電子顕微鏡で観察したときに得た画像に準じて粒子状態を模式的に表している。各磁性合金粒子は実際のところ完全な球形を成すものではないが、粒子径が分布を持つことを表現するために磁性合金粒子全てを球形として描いてある。加えて、各磁性合金粒子の表面に存する酸化物膜の厚さは実際のところ0.05〜0.2μmの範囲でバラツキを有するが、該酸化物膜が各磁性合金粒子の表面に存することを表現するためにその厚さ全てを均等に描いてある。因みに、磁性合金粒子がFe−Cr−Si合金粒子である場合、酸化物膜は磁性体に属するFe34と非磁性体に属するFe23とCr23を含むことが確認されている。
【0015】
尚、前記酸化物膜は、前記熱処理過程で磁性合金粒子に含まれる元素を酸化させて得たものであるが、前記熱処理過程で酸化物膜となる物質を前記磁性体ペーストに予め添加することで得るようにしても良いし、前記熱処理過程で酸化物膜と同様の絶縁膜となるガラス成分を前記磁性体ペーストに予め添加することで得るようにしても良い。
【0016】
前側の第1導体膜12は、磁性コア11の板状部11aの前面(凹み11cの内面を含む)から、該板状部11aの下面の前部に及ぶように、且つ、該板状部11aの左右面の前部に及ぶように形成されている。後側の第1導体膜13は、磁性コア11の板状部11aの後面(凹み11cの内面を含む)から、該板状部11aの下面の後部に及ぶように、且つ、該板状部11aの左右面の後部に及ぶように形成されている。
【0017】
作製方法等について述べれば、各第1導体膜12及び13は、金属粒子群と溶剤とバインダとを所定質量比で含む導体ペーストを磁性コア11の板状部11aの所定箇所に塗布した後に、塗布ペーストに焼付け処理を施して溶剤及びバインダを消失させて作製されている。金属粒子は、好ましくはAgやPd等の粒子であり、体積基準の粒子径とした見た場合の金属粒子の好ましいd50(メディアン径)は3〜20μmで、導体ペーストにおける金属粒子群の好ましい含有比率は85〜95wt%である。
【0018】
つまり、各第1導体膜12及び13は耐熱性に優れた焼付け導体膜であって樹脂成分等を含むものではないため、後に熱処理(導線一端部14b及び導線他端部14cの接合に伴う熱処理や、磁性外装15の作製に伴う熱処理や、各第2導体膜16及び17の作製に伴う熱処理等を指す)を施しても、該熱処理時に各第1導体膜12及び13に変質や位置ずれ等の変化を生じることはなく、該各第1導体膜12及び13の磁性コア11に対する密着性も良好に維持できる。
【0019】
コイル14は、導線が螺旋状に巻かれた螺旋状部14aと、該螺旋状部14aから引き出された導線一端部14b及び導線他端部14cとを一体に有している。コイル14に用いられている導線は平角線(断面形状が長辺と短辺を有する矩形を成す導線を意味する)と称されるものであり、螺旋状部14aの巻き方向はフラットワイズで巻き方はα巻きである。導線には、好ましくはCuやAg等の金属線(コストの観点からすればCuが望ましい)とその周囲を覆う絶縁膜とから成るものや、同金属線とその周囲を覆う絶縁膜と該絶縁膜の周囲を覆う熱融着膜(螺旋状部14aを構成する導線相互を結合する役目を果たす)とから成るもの等が利用できる。
【0020】
螺旋状部14aは磁性コア11の柱状部11bの周囲に配置されており、配置方法としては、柱状部11bに直接導線を巻き付けて螺旋状部14aを形成する方法や、コイル14を別途作製して螺旋状部14aを柱状部11bに嵌め込む方法等が挙げられる。磁性コア11の柱状部11bの高さ(板状部11aの上面を基準とした柱状部11bの高さ)が螺旋状部14aの高さと略一致している場合には、図2及び図3に示したように、配置後の螺旋状部14aの上面は磁性コア11の柱状部11bの上面と略面一状態となる。また、導線一端部14bの先端は、該先端を覆う絶縁層や融着層を除去した後に、その長辺側の面を前側の第1導体膜12の側面部分12aの表面の略中央(凹み11cの内面の略中央に相当する位置)に拡散接合(熱融着接合)によって電気的に接合されている。さらに、導線他端部14cの先端は、該先端を覆う絶縁層や融着層を除去した後に、その長辺側の面を後側の第1導体膜13の側面部分13aの表面の略中央(凹み11cの内面の略中央に相当する位置)に拡散接合(熱融着接合)によって電気的に接合されている。
【0021】
導線一端部14bの接合部分14b1の上下寸法と導線他端部14cの接合部分14c1の上下寸法は磁性コア11の板状部11aの厚さと同じでも構わないが、図2に示したように、各接合部分14b1及び14c1の下端と板状部11aの下面との間に隙間CL1が空くようにした方が、各接合部分14b1及び14c1の下側に磁性外装15の一部が回り込んだ部位を形成できる点において好ましい。因みに、螺旋状部14aの巻き数や導線の金属線の断面積は、コイル部品10に求めるインダクタンスや定格電流等の特性値に応じて適宜定められている。
【0022】
先に述べたように、各第1導体膜12及び13は耐熱性に優れた焼付け導体膜であるため、導線一端部14b及び導線他端部14cの接合に伴う熱処理を施しても、該熱処理時に各第1導体膜12及び13に変質や位置ずれ等の変化を生じることはなく、該各第1導体膜12及び13に対する導線一端部14b及び導線他端部14cの接合を良好に行える。
【0023】
磁性外装15は、上面視輪郭が略矩形状で、磁性コア11の柱状部11bの上面及び板状部11aの前後左右面(側面)と、各第1導体膜12及び13の側面部分12a及び13aの表面と、コイル14の螺旋状部14a、導線一端部14b、導線一端部14bの接合部分14b1の表面、導線他端部14c及び導線他端部14cの接合部分14c1の表面をそれぞれ覆うように形成されており、その下面は磁性コア11の柱状部11bの下面と略面一状態にある。
【0024】
また、図2及び図3に示したように、磁性外装15には多数のボイドVDが内在している。多数のボイドVDの1個当たりの平均体積は、好ましくは1.4×10-11〜6.5×10-8cm3である。また、磁性外装15の体積との比較において多数のボイドVDの総体積比率は、好ましくは1.5〜15.0%である。
【0025】
この磁性外装15は、磁性合金粒子群と該磁性合金粒子間に介在する絶縁材料とから成り、該絶縁材料によって隣接する磁性合金粒子が結合していると共に隣接する磁性合金粒子の絶縁が確保されている。作製方法等について述べれば、磁性外装15は、磁性合金粒子群と熱硬化性絶縁材料とを所定質量比で含み、且つ、多数のボイドが含まれる磁性体ペーストを型を利用して整形しつつ、該型内に磁性コア11(コイル14が取り付けられた後のもの)を前記被覆が行えるように挿入した後に、整形物に熱処理を施して絶縁材料を硬化させて作製されている。磁性合金粒子は、好ましくはFe−Cr−Si合金やFe−Si−Al合金やFe−Ni−Cr合金等の粒子であり、体積基準の粒子径とした見た場合の磁性合金粒子の好ましいd50(メディアン径)は3〜20μmで、磁性体ペーストにおける磁性合金粒子群の好ましい含有比率は85〜95wt%である。また、熱硬化性絶縁材料には、好ましくはエポキシ樹脂やフェノール樹脂やポリエステル等が利用できる。
【0026】
つまり、磁性外装15はエポキシ樹脂等から成る絶縁材料を含むものであるため、該絶縁材料によって磁性コア11、第1導体膜12及び13、及びコイル14に対する密着力を十分に確保できる。
【0027】
前側の第2導体膜16は、磁性外装15の前面の下部から、該磁性外装15の下面を通じて磁性コア11の板状部11aの下面の前部に及ぶように、且つ、該磁性外装15の左右面の前部に及ぶように形成されており、前側の第1導体膜12の下面部分12bの表面を覆っていて該下面部分12bに電気的に接続されている。後側の第2導体膜17は、磁性外装15の後面の下部から、該磁性外装15の下面を通じて磁性コア11の板状部11aの下面の後部に及ぶように、且つ、該磁性外装15の左右面の後部に及ぶように形成されており、後側の第1導体膜13の下面部分13bの表面を覆っていて該下面部分13bに電気的に接続されている。また、各第2導体膜16及び17の側面部分16a及び17aの上端高さは、磁性コア11の板状部11aの上面高さよりも僅かに高くなるように設定されている。さらに、前側の第2導体膜16の側面部分16aと下面部分16bは、磁性外装15の左右面それぞれに存する第2の側面部分16cを介して連続しており、後側の第2導体膜17の側面部分17aと下面部分17bは、磁性外装15の左右面それぞれに存する第2の側面部分17cを介して連続している。
【0028】
各第2導体膜16及び17は、金属粒子群と該金属粒子間に介在する絶縁材料とから成り、前側の第2導体膜16に含まれる金属粒子群の一部は前側の第1導体膜12の下面部分12bの表面に接触し、後側の第2導体膜17に含まれる金属粒子群の一部は後側の第1導体膜13の下面部分13bの表面に接触している。作製方法等について述べれば、各第2導体膜16及び17は、金属粒子群と熱硬化性絶縁材料とを所定質量比で含む導体ペーストを磁性外装15及び磁性コア11の所定箇所、並びに、各第1導体膜12及び13の下面部分12b及び13bをそれぞれ覆うように塗布した後に、塗布ペーストに熱処理を施して絶縁材料を硬化させて作製されている。金属粒子は、好ましくはAgやPd等の粒子であり、体積基準の粒子径とした見た場合の金属粒子の好ましいd50(メディアン径)は3〜20μmで、導体ペーストにおける金属粒子群の好ましい含有比率は80〜90wt%である。また、熱硬化性絶縁材料には、好ましくはエポキシ樹脂やフェノール樹脂やポリエステル等が利用できる。
【0029】
つまり、各第2導体膜16及び17はエポキシ樹脂等から成る絶縁材料を含むものであるため、該絶縁材料によって磁性外装15、各第1導体膜12及び13、及び磁性コア11に対する密着力を十分に確保できる。また、各第2導体膜16及び17は金属粒子群の含有比率が大きいため、高い導電性が得られる。
【0030】
前側の第3導体膜18は、前側の第2導体膜18の表面を覆うように形成されていて、前側の第2導体膜16の側面部分16aに対応した側面部分18aと下面部分16bに対応した下面部分18bと第2の側面部分16cに対応した第2の側面部分18cとを有しており、前側の第2導体膜18に電気的に接続されている。後側の第3導体膜19は、後側の第2導体膜17の表面を覆うように形成されていて、後側の第2導体膜17の側面部分17aに対応した側面部分19aと下面部分17bに対応した下面部分19bと第2の側面部分17cに対応した第2の側面部分19cとを有しており、後側の第2導体膜17の電気的に接続されている。
【0031】
作製方法等について述べれば、各第3導体膜18及び19は、電解メッキ等の薄膜形成手法によって各第2導体膜16及び17の表面に作製されている。各第3導体膜18及び19の好ましい態様はNi膜と該Ni膜の表面を覆うSn膜の2層構造であるが、各第2導体膜17及び18に対する接続が良好に行え、且つ、コイル部品10の回路基板等への実装、詳しくは接続パッドへのハンダ付けが良好に行えるものであれば、その層数や材料に特段の制限は無い。
【0032】
前記コイル部品10にあっては、前側の第1導体膜12、前側の第2導体膜16及び前側の第3導体膜18によって第1外部端子ET1が構成され、後側の第1導体膜13、後側の第2導体膜17及び後側の第3導体膜19によって第2外部端子ET2が構成されている。加えて、前側の第2導体膜16の第2の側面部分16c及び前側の第3導体膜18の第2の側面部分18cによって、第1外部端子ET1に2つの回り込み部分ET1aが形成され、後側の第2導体膜17の第2の側面部分17c及び後側の第3導体膜19の第2の側面部分19cによって、第2外部端子ET2に2つの回り込み部分ET2aが形成されている。
【0033】
また、前記コイル部品10にあっては、コイル14の導線一端部14bの接合部分14b1は、前側の第1導体膜12の側面部分12aと、磁性外装15における磁性コア11の板状部11aの側面を覆う部分15aと、によって挟み込まれた態様を有し、しかも、磁性外装15におけるコイル14の導線一端部14bの接合部分14b1の表面を覆う部分(符号無し)は、該接合部分14b1を間において、前側の第1導体膜12の側面部分12aと、前側の第2導体膜16の側面部分16a及び前側の第3導体膜18の側面部分18aと、によって挟み込まれた態様を有している。加えて、コイル14の導線他端部14cの接合部分14c1は、後側の第1導体膜13の側面部分13aと、磁性外装15における磁性コア11の板状部11aの側面を覆う部分15aと、によって挟み込まれた態様を有し、しかも、磁性外装15におけるコイル14の導線他端部14cの接合部分14c1の表面を覆う部分(符号無し)は、該接合部分14c1を間において、後側の第1導体膜13の側面部分13aと、後側の第2導体膜17の側面部分17a及び後側の第3導体膜19の側面部分19aと、によって挟み込まれた態様を有している。
【0034】
〈コイル部品10の好ましい製法例〉
先ず、磁性コア11用の磁性体ペーストとして、d50(メディアン径)が10μmのFe−Cr−Si合金粒子群が85wt%で、ブチルカルビトール(溶剤)が13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)が2wt%の磁性体ペーストを用意し、該磁性体ペーストを型及びプレス機を用いて整形し、該整形物に大気中で750℃、2hrの熱処理を施して溶剤及びバインダを消失させ、且つ、各磁性合金粒子の表面に該磁性合金粒子の酸化物膜を形成して、磁性コア11を作製する。
【0035】
続いて、各第1導体膜12及び13用の導体ペーストとして、d50(メディアン径)が5μmのAg粒子群が85wt%で、ブチルカルビトール(溶剤)が13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)が2wt%の導体ペーストを用意し、該導体ペーストをローラ塗布機を用いて磁性コア11に塗布し、該塗布ペーストに大気中で650℃、1hrの焼付け処理を施して溶剤及びバインダを消失させて、各第1導体膜12及び13を作製する。
【0036】
続いて、磁性コア11の柱状部11bにコイル14用の導線(平角線)を巻き方向がフラットワイズで巻き方がα巻きで直接巻き付けて螺旋状部14aを形成し、導線一端部14bの先端(予め絶縁層や融着層は除去されている)を前側の第1導体膜12の側面部分12aの表面に拡散接合(熱融着接合)によって接合すると共に、導線他端部14cの先端(予め絶縁層や融着層は除去されている)を後側の第1導体膜13の側面部分13aの表面に拡散接合(熱融着接合)によって接合する。
【0037】
続いて、磁性外装15用の磁性体ペーストとして、d50(メディアン径)が10μmのFe−Cr−Si合金粒子群が90wt%で、エポキシ樹脂が10wt%の磁性体ペーストを用意し、コイル14が配置された磁性コア11に対して該磁性体ペーストを型及びプレス機を用いて整形し、該整形物に大気中で180℃、1hrの熱処理を施してエポキシ樹脂を硬化させて、磁性外装15を作製する。
【0038】
磁性外装15用の磁性体ペーストは、前記重量比のFe−Cr−Si合金粒子群とエポキシ樹脂をニーダを利用して50〜80℃で加熱しながら混練することで作製されるが、該磁性体ペースト中にボイドが積極的に残存するように、換言すれば、混練過程で混練物中に入り込んだ空気が該混練物から抜け出ないように、大気圧または大気圧よりも高い圧力の雰囲気中で前記混練を行う。磁性体ペースト中のボイドの総体積比率はこの雰囲気圧力によって調整できる他、混練過程の加熱温度や混練時間等によっても調整できる。
【0039】
続いて、各第2導体膜16及び17用の導体ペーストとして、d50(メディアン径)が5μmのAg粒子群が80wt%で、エポキシ樹脂が20wt%の導体ペーストを用意し、該導体ペーストをローラ塗布機を用いて磁性コア11及び磁性外装15に塗布し、該塗布ペーストに150℃、1hrの熱処理を施してエポキシ樹脂を硬化させて、各第2導体膜16及び17を作製する。
【0040】
続いて、各第2導体膜16及び17が作製されたものをNi用電解メッキ槽に投入して各第2導体膜16及び17の表面にNi膜を形成し、そして、これをSn用電解メッキ槽に投入して各Ni膜の表面にSn膜を形成して、各第3導体膜18及び19を作製する。
【0041】
〈コイル部品10によって得られる効果〉
(効果1)前記コイル部品10にあっては、磁性外装15がコイル14の上面及び周囲のみならず磁性コア11の柱状部11bの上面及び板状部11aの側面をも覆っており、しかも、該磁性外装15には多数のボイドVDが内在しているため、外力及び内力に対して緩衝作用を発揮する各ボイドVDによって、磁性コア11の曲げに対する耐性、特に板状部11aの外周部分の曲げに対する耐性を向上させてコイル部品10全体としての曲げ強度を高めることができる。依って、コイル部品10を回路基板等に搭載する時に受ける外力やリフローハンダ付け時に該コイル部品10に生じる熱膨張収縮によって磁性コア11にクラックを生じたり、また、実装後のコイル部品10が熱膨張収縮を生じた時に磁性コア11にクラックを生じたりすること等を未然に防止して、コイル部品10の信頼性を向上できる。
【0042】
(効果2)前記コイル部品10にあっては、コイル14の螺旋状部14a、導線一端部14b及び導線他端部14cを囲む磁性外装15に多数のボイドVDが内在しているため、該コイル14に熱膨張を生じたときに磁性外装15が受ける力を各ボイドVDによって吸収して該磁性外装15にクラックを生じることを未然に防止できると共に、該コイル14に熱収縮を生じたときに導線一端部14bの接合部分14b及び導線他端部14cの接合部分14c1に局部剥離等のダメージが生じることを未然に防止できる。
【0043】
《他の実施形態》
(1)前記一実施形態では、コイル14用の導線として平角線を用い、螺旋状部14aの巻き方向をフラットワイズとし巻き方をα巻きとしたコイル14を示したが、螺旋状部14aの巻き方向はエッジワイズとしても良く、螺旋状部14aの巻き方をα巻き以外の巻き方としても良く、コイル14用の導線として平角線以外の導線(例えば丸線)を用いても良い。要するに、コイル14用の導線の断面形や、導線の巻き方向や巻き方を変えても、前記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10…コイル部品、11…磁性コア、11a…板状部、11b…柱状部、12,13…第1導体膜、14…コイル、14a…螺旋状部、14b…導線一端部、14c…導線他端部、15…磁性外装、VD…ボイド、16,17…第2導体膜、18,19…第3導体膜、ET1…第1外部端子、ET2…第2外部端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と該板状部の上面に設けられた柱状部とを一体に有し、且つ、磁性合金を材料とした磁性コアと、
前記磁性コアの板状部の側面から下面に及ぶように形成された一対の第1導体膜と、
導線が螺旋状に巻かれた螺旋状部と該螺旋状部から引き出された導線一端部及び導線他端部とを一体に有していて、前記螺旋状部を前記磁性コアの柱状部の周囲に配置され、且つ、前記導線一端部を前記第1導体膜の一方に接合され前記導線他端部を前記第1導体膜の他方に接合されたコイルと、
前記磁性コアの柱状部の上面及び板状部の側面と、前記第1導体膜の一方及び他方の側面部分の表面と、前記コイルの螺旋状部、導線一端部、導線一端部の接合部分の表面、導線他端部及び導線他端部の接合部分の表面とをそれぞれ覆うように形成された磁性外装と、
前記磁性外装の側面から該磁性外装の下面を通じて前記磁性コアの板状部の下面に及ぶように、且つ、前記第1導体膜の一方及び他方の下面部分の表面をそれぞれ覆うように形成された一対の第2導体膜と、
前記第2導体膜の一方及び他方の表面をそれぞれ覆うように形成された一対の第3導体膜を備え、
前記第1導体膜の一方、前記第2導体膜の一方及び前記第3導体膜の一方によって第1外部端子が構成され、前記第1導体膜の他方、前記第2導体膜の他方及び前記第3導体膜の他方によって第2外部端子が構成されていると共に、
前記磁性外装には多数のボイドが内在している、
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記磁性コアは、表面に酸化物膜が形成され、且つ、該酸化物膜を介して相互結合した磁性合金粒子群から成る、
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234867(P2012−234867A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100512(P2011−100512)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】