説明

コイル部品

【課題】複数の周波数帯域におけるノイズを一の部品で除去するコイル部品を提供すること。
【解決手段】積層コイル部品1は、複数の絶縁体層30〜41が積層されてなる素体3と、素体3の両端部にそれぞれ配置された端子電極5,7と、素体3の内部に配置され、端子電極5,7に接続される第1のコイル10と、素体3の内部に配置され、端子電極5のみに接続され端子電極7に接続されない第2のコイル10とを備えている。第1及び第2のコイル10,20は、絶縁体層30〜41の積層方向において、互いに対向するように上下に配置されており、第2のコイル20が当該第2のコイル20内で浮遊容量Csを形成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用のフィルタ回路などに使用されるLC複合部品として、コンデンサ部とインダクタ部とを備えた三端子のLC複合部品が知られている(例えば特許文献1を参照)。また、ノイズの低減効果を得るために、コイルと当該コイルに対向する導体部とを備えた二端子のコイル部品が知られている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−026294号公報
【特許文献2】特開平06−061053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した部品は、1つの共振点を有する構成であるため、除去したいノイズの周波数帯域も1つしか選択できず、複数の周波数帯域におけるノイズを除去したい場合には、複数の部品が必要であった。そこで、特許文献1に記載の三端子のLC複合部品において、複数の共振点を有することができる構成が検討されている。
【0005】
しかしながら、三端子のLC複合部品では、接地端子用の接続端子が回路基板側に別途必要となるため、実際の回路設計においてノイズ対策が必要となった段階でこの接地端子用の接続端子を回路基板側に新たに設けようとすると、場合によっては、回路基板の設計をやり直さなければならないといった問題があった。そこで、そのような接続端子が必要とならない二端子部品で、複数の周波数帯域におけるノイズを除去できる部品が望まれている。
【0006】
本発明は、複数の周波数帯域におけるノイズを一の部品で除去できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコイル部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、素体の両端部にそれぞれ配置された第1及び第2の端子電極と、素体の内部に配置され、第1及び第2の端子電極に接続される第1のコイルと、素体の内部に配置され、第1の端子電極に接続され且つ第2の端子電極に接続されない第2のコイルと、を備え、第2のコイルが当該第2のコイル内で浮遊容量を形成することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るコイル部品では、片端がオープンな第2のコイルが、当該第2のコイル内で浮遊容量を形成するようにしている。片端がオープンな第2のコイルを単に設けただけだとLC共振回路を一の部品内に2つ形成することは難しいが、かかる構成としたことにより、LC共振回路を一の部品内に2つ形成することが可能となる。その結果、本発明に係るコイル部品によれば、2つの共振点を設けることができ、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することが可能となる。つまり、二端子のコイル部品で二極トラップを容易に形成することができる。
【0009】
上記のコイル部品において、第1及び第2のコイルは、絶縁体層の積層方向において、互いに対向するように上下に配置されていることが好ましい。この場合、第2のコイルの形成を容易に行うことができる。
【0010】
上記のコイル部品において、第2のコイルの巻回数が第1のコイルの巻回数よりも多くなるようにしてもよい。この場合、高周波側での減衰をより深くすることができるため、2つ目の共振点を容易に設けることができる。
【0011】
上記のコイル部品において、第1及び第2のコイルの第1の端子電極への引き出し部それぞれは、積層方向から見た場合に、少なくとも一部が重なるようにしてもよい。この場合、第1のコイルと第2のコイルとの間の浮遊容量を大きくすることができる。
【0012】
上記のコイル部品において、第1及び第2のコイルの第1の端子電極への引き出し部それぞれは、積層方向から見た場合に、互いに重ならないようにしてもよい。この場合、第1のコイルと第2のコイルとの間の浮遊容量を小さくすることができる。
【0013】
上記のコイル部品において、第1及び第2のコイルの第1の端子電極への引き出し部が共通であるようにしてもよい。この場合、引き出し部を形成する層を共通化できるので、その分、第1又は第2のコイルの巻回数を増やしたり、コイル部品の低背化を図ることができる。
【0014】
上記のコイル部品において、第1及び第2のコイルは、積層方向から見た場合に、巻き上げ方向が互いに異なっているようにしてもよい。この場合、巻き上げ方向が同じコイル部品に比べて、2つの共振点をよりはっきりと分離することができ、明確な二極トラップ構成とすることができる。
【0015】
上記のコイル部品において、素体の内部に配置され、第1の端子電極に接続され且つ第2の端子電極に接続されない第3のコイルを更に備え、第2及び第3のコイルが、積層方向において、第1のコイルを挟むように配置されているようにしてもよい。この場合、LC共振回路を一の部品内に3つ形成することが可能となり、一の部品によって3つの周波数帯域におけるノイズを除去することが可能となる。
【0016】
上記のコイル部品において、第2のコイルは、第1のコイルの内側に配置されているようにしてもよい。この場合、コイル部品の低背化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の周波数帯域におけるノイズを一の部品で除去するコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【図2】図1に示した積層コイル部品のII-II線断面図である。
【図3】図1に示した積層コイル部品に含まれる素体の展開斜視図である。
【図4】図3に示したコイル導体等によって構成される第1及び第2のコイルを示す斜視図である。
【図5】図1に示した積層コイル部品で発生する浮遊容量を示す図である。
【図6】図1に示した積層コイル部品の等価回路を示す図である。
【図7】比較例1となる積層コイル部品の断面図である。
【図8】図7に示したコイル導体等によって構成される第1及び第2のコイルを示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る積層コイル部品と比較例1の積層コイル部品の減衰特性の違いを示す図である。
【図10】第2実施形態に係る積層コイル部品の断面図である。
【図11】図10に示したコイル導体等によって構成される第1及び第2のコイルを示す斜視図である。
【図12】第3実施形態に係る積層コイル部品の断面図である。
【図13】図12に示したコイル導体等によって構成される第1及び第2のコイルを示す斜視図である。
【図14】第4実施形態に係る積層コイル部品の断面図である。
【図15】図14に示したコイル導体等によって構成される第1及び第2のコイルを示す斜視図である。
【図16】比較試験用の積層コイル部品の模式的な斜視図である。
【図17】図16に示した各積層コイル部品の減衰特性の違いを示す図である。
【図18】第5実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【図19】第1及び第5実施形態に係る積層コイル部品の減衰特性の違いを示す図である。
【図20】巻回数を異ならせた積層コイル部品の断面図である。
【図21】図20に示した各積層コイル部品の減衰特性の違いを示す図である。
【図22】積層コイル部品の変形例を示す模式的な平面図である。
【図23】図22に示した積層コイル部品の減衰特性の違いを示す図である。
【図24】積層コイル部品の別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1実施形態]
まず、図1〜図3を参照して、第1実施形態に係る積層コイル部品1の構成を説明する。積層コイル部品1は、回路基板(図示しない)の表面に実装される積層チップビーズであり、素体3と、端子電極5,7と、第1のコイル10と、第2のコイル20と、を備えて構成されている。第1及び第2のコイル10,20は、素体3内に配置される。
【0021】
素体3は、図1に示されるように、長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面3a,3bと、一対の端面3a,3b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面3c,3dと、一対の主面3c,3dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面3e,3fと、を有する。主面3c,3dのうちの一方は、積層コイル部品1が回路基板に実装されたときに、当該回路基板に対応する実装面となる。
【0022】
端子電極5は、一方の端面3a及び端面3aと直交する主面3c,3d及び側面3e,3fの各縁部の一部を覆うように形成され、素体3の一端に配置されている。端子電極7は、他方の端面3b及び端面3bと直交する主面3c,3d及び側面3e,3fの各縁部の一部を覆うように形成され、素体3の他端に配置されている。端子電極5,7は、多層化されており、素体3に接する内側の層には、例えばCu,Ni,Ag−Pdなどが用いられ、外側の層には、例えばNi−Snなどのめっきが施されている。
【0023】
素体3は、図2及び図3に示されるように、複数の絶縁体層30〜41が積層されることにより構成された積層体である。素体3の内部には、引き出し部11,15、コイル導体12〜14及びスルーホール導体16〜19からなる第1のコイル10と、引き出し部21、コイル導体22〜24及びスルーホール導体25〜27からなる第2のコイル20とが配置されている。素体3は、コイル導体12〜14,22〜24等を形成した絶縁体層30〜41の焼成によって形成されており、実際の積層コイル部品1では、絶縁体層30〜41の各層同士は、視認できない程度に一体化されている。
【0024】
絶縁体層30〜41は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、絶縁体グリーンシートの焼成物からなるものである。絶縁体層30〜41は、例えば、ストロンチウム、カルシウム、アルミナ及び酸化珪素からなるガラスとアルミナとからなるガラス系セラミックから構成されている。絶縁体層30〜41は、フェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又はNi−Cu系フェライト)から構成されていてもよい。絶縁体層30〜41の厚みは、例えば、5μm〜30μm程度である。
【0025】
引き出し部11は、第1のコイル10を端子電極5に引き出すための部分であり、絶縁体層36上の第1の端面3a側に形成されている。引き出し部11の一端は、絶縁体層36の縁に引き出されて、素体3の第1の端面3aに露出している。引き出し部11の他端は、絶縁体層36を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体16と電気的に接続されている。引き出し部11は、第1の端面3aに露出した部分において、端子電極5に電気的に接続される。また、引き出し部11は、積層された状態で、スルーホール導体16を介して、隣接するコイル導体12の一端と電気的に接続される。
【0026】
コイル導体12は、第1のコイル10の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層37上で略C字状に形成されている。コイル導体12の一端には、積層された状態でスルーホール導体16と電気的に接続される領域が含まれている。コイル導体12の他端は、絶縁体層37を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体17と電気的に接続されている。コイル導体12は、積層された状態で、スルーホール導体17を介して、隣接するコイル導体13の他端と電気的に接続される。
【0027】
コイル導体13は、第1のコイル10の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層38上で略逆C字状に形成されている。コイル導体13の他端には、積層された状態でスルーホール導体17と電気的に接続される領域が含まれている。コイル導体13の一端は、絶縁体層38を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体18と電気的に接続されている。コイル導体13は、積層された状態で、スルーホール導体18を介して、隣接するコイル導体14の一端と電気的に接続される。
【0028】
コイル導体14は、第1のコイル10の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層39上で略C字状に形成されている。コイル導体14の一端には、積層された状態でスルーホール導体18と電気的に接続される領域が含まれている。コイル導体14の他端は、絶縁体層39を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体19と電気的に接続されている。コイル導体14は、積層された状態で、スルーホール導体19を介して、隣接する引き出し部15の一端と電気的に接続される。
【0029】
引き出し部15は、第1のコイル10を端子電極7に引き出すための部分であり、絶縁体層40上の第2の端面3b側に形成されている。引き出し部15の一端には、積層された状態でスルーホール導体19と電気的に接続される領域が含まれている。引き出し部15の他端は、絶縁体層40の縁に引き出されて、素体3の第2の端面3bに露出している。引き出し部15は、第2の端面3bに露出した部分において、端子電極7に電気的に接続される。
【0030】
このように、各絶縁体層36〜41が積層され、各引き出し部11,15及び各コイル導体12〜14が各スルーホール導体16〜19を介して接続されることにより、図4に示されるように、ターン数(巻回数)が1.5ターンである第1のコイル10が構成される。第1のコイル10は、端子電極5,7に接続される。各引き出し部11,15、各コイル導体12〜14及び各スルーホール導体16〜19は、Ag、Cu、又はNiなどを主成分とする導電性ペーストにより形成される。なお、以下説明する第2のコイル20の各構成の主成分も同様である。
【0031】
引き出し部21は、第2のコイル20を端子電極5に引き出すための部分であり、絶縁体層31上の第1の端面3a側に形成されている。引き出し部21の一端は、絶縁体層31の縁に引き出されて、素体3の第1の端面3aに露出している。引き出し部21の他端は、絶縁体層31を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体25と電気的に接続されている。引き出し部21は、第1の端面3aに露出した部分において、端子電極5に電気的に接続される。また、引き出し部21は、積層された状態で、スルーホール導体25を介して、隣接するコイル導体22の一端と電気的に接続される。
【0032】
コイル導体22は、第2のコイル20の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層32上で略C字状に形成されている。コイル導体22の一端には、積層された状態でスルーホール導体25と電気的に接続される領域が含まれている。コイル導体22の他端は、絶縁体層32を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体26と電気的に接続されている。コイル導体22は、積層された状態で、スルーホール導体26を介して、隣接するコイル導体23の他端と電気的に接続される。
【0033】
コイル導体23は、第2のコイル20の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層33上で略逆C字状に形成されている。コイル導体23の他端には、積層された状態でスルーホール導体26と電気的に接続される領域が含まれている。コイル導体23の一端は、絶縁体層33を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体27と電気的に接続されている。コイル導体23は、積層された状態で、スルーホール導体27を介して、隣接するコイル導体24の一端と電気的に接続される。
【0034】
コイル導体24は、第2のコイル20の略1/2ターン分に相当し、絶縁体層34上で略C字状に形成されている。コイル導体24の一端には、積層された状態でスルーホール導体27と電気的に接続される領域が含まれている。一方、コイル導体24の他端(第2のコイル20のオープン端)は、いずれのスルーホール導体や引き出し部とも直接的に接続されていない。これにより、第2のコイル20は、端子電極7に接続されない構成となっている。
【0035】
このように、各絶縁体層30〜35が積層され、引き出し部21及び各コイル導体22〜24が各スルーホール導体25〜27を介して接続されることにより、図4に示されるように、ターン数が1.5ターンである第2のコイル20が構成される。第2のコイル20は、端子電極5には接続されるものの、端子電極7には接続されない片端がオープンなコイルとなっている。第1及び第2のコイル10,20は、図2及び図4に示されるように、絶縁体層30〜41の積層方向に上下となるように配置されており、積層方向に互いに対向するように配置されている。なお、第1のコイル10の引き出し部11と第2のコイル20の引き出し部21とは、積層方向から見た場合に、略全体が重なるようになっている。
【0036】
続いて、積層コイル部品1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、絶縁体層30〜41を形成するための絶縁体グリーンシートを準備する。絶縁体グリーンシートは、焼成されることにより、積層コイル部品1の絶縁体層30〜41を構成する。絶縁体グリーンシートは、絶縁体グリーンシート用塗料をドクターブレード法などによりPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの基材上に塗布し、その後、乾燥させることによって、形成される。絶縁体グリーンシート用塗料は、上述したガラス系セラミックの粉末とバインダ樹脂とバインダ樹脂の溶媒とを含有する。
【0038】
次に、絶縁体グリーンシートに貫通孔を形成する。絶縁体グリーンシートの所定の位置、すなわち上述したスルーホール導体16〜19,25〜27が形成される予定の位置に、レーザ光を照射することにより、貫通孔を形成する。レーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザやYAGレーザなどを用いることができる。
【0039】
次に、絶縁体グリーンシートに導電性ペーストを付与し、焼成後に引き出し部11,15,21及びコイル導体12〜14,22〜24を構成する導体パターンを絶縁体グリーンシート上に形成する。この導電性ペーストの付与において、導体パターンの形成と共に、導電性ペーストを絶縁体グリーンシートに形成された貫通孔に充填する。導電性ペーストは、例えば、上述した金属を主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。
【0040】
導体パターンの形成及び貫通孔への導電性ペーストの充填は、スクリーン印刷などにより行われる。貫通孔内への導電性ペーストの充填の度合いは、ペースト粘度や印刷時のスキージ圧などを調整することにより制御できる。なお、絶縁体グリーンシート上に形成された導体パターンと、貫通孔に充填された導電性ペーストとは一体化している。このため、後述する焼成により、引き出し部11,15,21及びコイル導体12〜14,22〜24とスルーホール導体16〜19,25〜27とが一体的で且つ同時に形成されることとなる。
【0041】
次に、導体パターンが形成された絶縁体グリーンシートを基材から剥がし、図3に示される積層順となるように積層する。絶縁体グリーンシートを積層した後、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。その後、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断し、グリーンチップを得る。得られたグリーンチップをバレル研磨し、グリーンチップの稜部を丸めてもよい。
【0042】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダ樹脂を除去した後、グリーンチップを焼成する。この焼成により、絶縁体グリーンシートから絶縁体層30〜41が、また、導体パターンから引き出し部11,15,21及びコイル導体12〜14,22〜24が、また、貫通孔内に充填された導電体ペーストからスルーホール導体16〜19,25〜27が、それぞれ形成された素体3が得られる。得られた素体3は、バレル研磨して、引き出し部11,15,21を外表面に確実に露出させてもよい。
【0043】
次に、素体3の外表面に導電性ペーストを付与して、熱処理を施すことにより導電性ペーストを素体3に焼き付けて、端子電極5,7を形成する。導電性ペーストは、例えば、Cuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni,Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。導電性ペーストを焼き付けて形成した電極の上にめっきを施してもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金、Sn−Ag合金、Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。金属めっきは、たとえば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としてもよい。
【0044】
以上の工程により、図1〜図4に示された積層コイル部品1が得られる。
【0045】
ここで、積層コイル部品1における作用効果について説明する。
【0046】
まず、積層コイル部品1の作用効果を説明するための比較例として、第1及び第2のコイル10,20aの両方が端子電極5,7に接続された比較例1の積層コイル部品1aを準備する。この比較例1の積層コイル部品1aでは、図7及び図8に示されるように、第2のコイル20aが、引き出し部21,コイル導体22〜24及びスルーホール導体25〜27に加えて、更に、スルーホール導体28及び引き出し部29を備えており、これにより、第2のコイル20aも端子電極5,7に接続される構成となっている。
【0047】
そして、この比較例1の積層コイル部品1aと、上述した積層コイル部品1との減衰特性をシミュレーションにて算出したところ、図9に示されるような結果となった。すなわち、両コイル10,20aを端子電極5,7に接続した積層コイル部品1aでは、コイルを2つ設けたものの、従来と同様に1つの周波数帯域におけるノイズを除去する作用効果を奏するのみであるのに対し、一方のコイル20を片端オープンとした積層コイル部品1では、従来と異なり、2つの周波数帯域におけるノイズを除去できるといった作用効果を奏するといった結果となった。
【0048】
このように、積層コイル部品1では、片端がオープンな第2のコイル20を第1のコイル10と対向するように上下に配置したことにより、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することが可能となっている。つまり、本実施形態によれば、二端子のコイル部品で二極トラップを容易に形成することができる。なお、このように、一方のコイル20を片端オープンとして第1のコイル10と対向させる構成によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去できるようになったのは、図5に示されるように、第2のコイル20のコイル導体22〜24等の間において浮遊容量Csが形成されるためだと考えられる。
【0049】
そして、このような浮遊容量Csの形成により、積層コイル部品1では、見かけ上、図6(a)の等価回路図に示されるような並列共振回路が2つ直列に配置される構成を実現することができている。より正確には、図6(b)に示されるように、積層コイル部品1では、容量成分Cと並列に配置される第1のコイル10と、容量成分Cと並列に配置される第2のコイル20とが結合し、更に、第2のコイル20のオープンな片端と、端子電極7や第1のコイル10の端子電極7側の端部との間に容量成分Cが形成されるように構成されている。
【0050】
また、積層コイル部品1では、第1及び第2のコイル10,20が、絶縁体層30〜41の積層方向において、互いに対向するように配置されている。このため、2つの周波数帯域におけるノイズ除去効果を奏するために第2のコイルを形成することが容易に行える。
【0051】
また、積層コイル部品1では、第1及び第2のコイル10,20の端子電極5への引き出し部11,21それぞれは、積層方向から見た場合に、その略全面が重なるようになっている。このため、第1のコイル10と第2のコイル20との間の浮遊容量を大きくすることもできる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る積層コイル部品1bについて説明する。本実施形態に係る積層コイル部品1bでは、第2のコイル20bの構成部材の積層方向における配置順が第1実施形態のコイル20と異なっており、引き出し部21bが積層方向において第1のコイル10側(図10における下方)に位置するようになっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
積層コイル部品1bは、素体3と、端子電極5,7と、第1のコイル10と、第2のコイル20bとを備えて構成されている。素体3の内部には、コイル導体12〜14等からなる第1のコイル10と、引き出し部21b、コイル導体22b〜24b及びスルーホール導体25b〜27bからなる第2のコイル20bとが配置されている。
【0054】
引き出し部21bは、第2のコイル20bを端子電極5に引き出すための部分であり、その一端が素体3の第1の端面3aに露出している。引き出し部21bの他端は、その上方に配置される絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体25bと電気的に接続されている。引き出し部21bは、スルーホール導体25bを介して、隣接するコイル導体22bの一端と電気的に接続される。
【0055】
コイル導体22bは、第2のコイル20bの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体22bの一端はスルーホール導体25bと電気的に接続され、他端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体26bと電気的に接続されている。コイル導体22bは、スルーホール導体26bを介して、隣接するコイル導体23bの他端と電気的に接続される。
【0056】
コイル導体23bは、第2のコイル20bの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体23bの他端は、スルーホール導体26bと電気的に接続され、一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体27bと電気的に接続されている。コイル導体23bは、スルーホール導体27bを介して、隣接するコイル導体24bの一端と電気的に接続される。
【0057】
コイル導体24bは、第2のコイル20bの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体24bの一端は、スルーホール導体27bと電気的に接続され、他端は、いずれのスルーホール導体や引き出し部とも直接的に接続されていない。これにより、第2のコイル20bは、第1実施形態と同様、端子電極7に接続されない構成となっている。
【0058】
このように、積層コイル部品1bでは、第1実施形態と同様に、片端がオープンな第2のコイル20bを第1のコイル10と対向するように上下に配置したことにより、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することができるようになっている。なお、積層コイル部品1bでは、第1及び第2のコイル10,20bの端子電極5への引き出し部11,21bそれぞれが、第1実施形態に比べて積層方向において近くになるように配置されている。このような配置により、第1のコイル10と第2のコイル20bとの間の浮遊容量を第1実施形態と異ならせることができる。
【0059】
[第3実施形態]
次に、図12及び図13を参照して、第3実施形態に係る積層コイル部品1cについて説明する。本実施形態に係る積層コイル部品1cでは、第2のコイル20cを引き出す端面が第1実施形態のコイル20と異なっており、第2の端面3bに引き出されるようになっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0060】
積層コイル部品1cは、素体3と、端子電極5,7と、第1のコイル10と、第2のコイル20cとを備えて構成されている。素体3の内部には、第1のコイル10と、引き出し部21c、コイル導体22c〜24c及びスルーホール導体25c〜27cからなる第2のコイル20cとが配置されている。
【0061】
引き出し部21cは、第2のコイル20cを端子電極7に引き出すための部分であり、その他端が素体3の第2の端面3bに露出している。引き出し部21cの一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体25cと電気的に接続されている。引き出し部21cは、スルーホール導体25cを介して、隣接するコイル導体22cの他端と電気的に接続される。
【0062】
コイル導体22cは、第2のコイル20cの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体22cの他端はスルーホール導体25cと電気的に接続され、一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体26cと電気的に接続されている。コイル導体22cは、スルーホール導体26cを介して、隣接するコイル導体23cの一端と電気的に接続される。
【0063】
コイル導体23cは、第2のコイル20cの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体23cの一端は、スルーホール導体26cと電気的に接続され、他端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体27cと電気的に接続されている。コイル導体23cは、スルーホール導体27cを介して、隣接するコイル導体24cの他端と電気的に接続される。
【0064】
コイル導体24cは、第2のコイル20cの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体24cの他端は、スルーホール導体27cと電気的に接続され、一端は、いずれのスルーホール導体や引き出し部とも直接的に接続されていない。これにより、第2のコイル20cは、端子電極5に接続されない構成となっている。
【0065】
このように、積層コイル部品1cでは、第1実施形態等と同様に、片端がオープンな第2のコイル20cを第1のコイル10と対向するように上下に配置したことにより、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することができるようになっている。なお、積層コイル部品1cでは、第1及び第2のコイル10,20の端子電極7への引き出し部15,21cが、第1実施形態に比べて積層方向において遠くになるように配置されている。また、第2のコイル20cが第1の端面3aに引き出されていないため、第1及び第2のコイル10,20cの端子電極5への引き出し部が互いに重ならないようになっている。このため、積層コイル部品1cでは、第1実施形態に比べて、第1及び第2のコイル10,20間の浮遊容量を小さくすることができる。
【0066】
[第4実施形態]
次に、図14及び図15を参照して、第4実施形態に係る積層コイル部品1dについて説明する。本実施形態に係る積層コイル部品1dでは、第1及び第2のコイル10d,20dを端子電極7に引き出す引き出し部11dが共通となっている点で第1実施形態の第1及び第2のコイル10,20と異なっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
積層コイル部品1dは、素体3と、端子電極5,7と、第1のコイル10dと、第2のコイル20dとを備えて構成されている。素体3の内部には、引き出し部11d,15d、コイル導体12d〜14d及びスルーホール導体16d〜19dからなる第1のコイル10dと、引き出し部11d、コイル導体22d〜24d及びスルーホール導体25d〜27dからなる第2のコイル20dとが配置されている。
【0068】
引き出し部11dは、第1及び第2のコイル10d,20dを端子電極7に引き出すための共通部分である。引き出し部11dの他端は、素体3の第2の端面3bに露出し、端子電極7に電気的に接続される。引き出し部11dの一端は、その上下に位置する絶縁体層を厚み方向にそれぞれ貫通して形成されたスルーホール導体16d,25dと電気的に接続されている。引き出し部11dは、スルーホール導体16dを介して、下方に隣接するコイル導体12dの他端と電気的に接続され、また、スルーホール導体25dを介して、上方に隣接するコイル導体22dの他端と電気的に接続される。
【0069】
コイル導体12dは、第1のコイル10dの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体12dの他端は、スルーホール導体16dと電気的に接続され、一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体17dと電気的に接続されている。コイル導体12dは、スルーホール導体17dを介して、隣接するコイル導体13dの一端と電気的に接続される。
【0070】
コイル導体13dは、第1のコイル10dの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体13dの一端は、スルーホール導体17dと電気的に接続され、他端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体18dと電気的に接続されている。コイル導体13dは、スルーホール導体18dを介して、隣接するコイル導体14dの他端と電気的に接続される。
【0071】
コイル導体14dは、第1のコイル10dの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体14dの他端は、スルーホール導体18dと電気的に接続され、一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体19dと電気的に接続されている。コイル導体14dは、スルーホール導体19dを介して、隣接する引き出し部15dの他端と電気的に接続される。
【0072】
引き出し部15dは、第1のコイル10dを端子電極5に引き出すための部分である。引き出し部15dの他端は、スルーホール導体19と電気的に接続され、一端は、素体3の第1の端面3aに露出し、端子電極5に電気的に接続される。
【0073】
また、コイル導体22dは、第2のコイル20dの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体22dの他端はスルーホール導体25dと電気的に接続され、一端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体26dと電気的に接続されている。コイル導体22dは、スルーホール導体26dを介して、隣接するコイル導体23dの一端と電気的に接続される。
【0074】
コイル導体23dは、第2のコイル20dの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体23dの一端は、スルーホール導体26dと電気的に接続され、他端は、絶縁体層を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体27dと電気的に接続されている。コイル導体23dは、スルーホール導体27dを介して、隣接するコイル導体24dの一端と電気的に接続される。
【0075】
コイル導体24dは、第2のコイル20dの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体24dの他端は、スルーホール導体27dと電気的に接続され、一端は、いずれのスルーホール導体や引き出し部とも直接的に接続されていない。これにより、第2のコイル20dは、端子電極5に接続されない構成となっている。
【0076】
このように、積層コイル部品1dでは、第1実施形態等と同様に、片端がオープンな第2のコイル20dを第1のコイル10dと対向するように上下に配置したことにより、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することができるようになっている。
【0077】
また、積層コイル部品1dでは、第1及び第2のコイル10d,20dの端子電極7への引き出し部11dが共通である構成となっている。このため、引き出し部11dを形成する層を共通化できるので、その分、第1又は第2のコイル10d,20dの巻回数を増やしたり、積層コイル部品1dの厚みを低減したりすることができる。
【0078】
ここで、図16に示される、1つのコイル10からなる従来の積層コイル部品1e(従来例1)と、2つのコイルを両端子電極に接続した積層コイル部品1a(比較例1)と、第1実施形態に係る積層コイル部品1と、第4実施形態に係る積層コイル部品1dとの減衰特性を比較して、その作用効果の違いについてシミュレーションした結果を図17に示す。図17に示されたシミュレーション結果から明らかなように、従来の積層コイル部品1eや比較例1の積層コイル部品1aでは、1つの周波数帯域におけるノイズしか除去できないのに対し、第1及び第4実施形態に係る積層コイル部品1,1dでは、2つの周波数帯域におけるノイズをそれぞれ除去できるといった作用効果を奏することができている。
【0079】
[第5実施形態]
次に、図18を参照して、第5実施形態に係る積層コイル部品1fについて説明する。本実施形態に係る積層コイル部品1fでは、第2のコイル20fの巻き上げ方向が第1実施形態のコイル20と逆になっており、積層方向から見た場合に、第1及び第2のコイル10,20fの巻き上げ方向が互いに異なる構成になっている。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0080】
積層コイル部品1fは、素体3と、端子電極5,7と、第1のコイル10と、第2のコイル20fとを備えて構成されている。素体3の内部には、第1のコイル10と、引き出し部21、コイル導体22f〜24f及びスルーホール導体25f〜27fからなる第2のコイル20fとが配置されている。
【0081】
コイル導体22fは、第2のコイル20fの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体22fの一端はスルーホール導体25fと電気的に接続され、他端は、スルーホール導体26fと電気的に接続されている。コイル導体22fは、スルーホール導体26fを介して、隣接するコイル導体23fの他端と電気的に接続される。
【0082】
コイル導体23fは、第2のコイル20fの略1/2ターン分に相当し、略C字状に形成されている。コイル導体23fの他端は、スルーホール導体26fと電気的に接続され、一端は、スルーホール導体27fと電気的に接続されている。コイル導体23fは、スルーホール導体27fを介して、隣接するコイル導体24fの一端と電気的に接続される。
【0083】
コイル導体24fは、第2のコイル20fの略1/2ターン分に相当し、略逆C字状に形成されている。コイル導体24fの一端は、スルーホール導体27fと電気的に接続され、他端は、いずれのスルーホール導体や引き出し部とも直接的に接続されていない。これにより、第2のコイル20fは、端子電極7に接続されない構成となっている。
【0084】
このように、積層コイル部品1fでは、第1実施形態等と同様に、片端がオープンな第2のコイル20fを第1のコイル10と対向するように上下に配置したことにより、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することができるようになっている。
【0085】
また、本実施形態に係る積層コイル部品1fでは、第1及び第2のコイル10,20fの巻き上げ方向が互いに異なる構成となっている。このように、巻き上げ方向を異ならせることにより、図19に示されるように、第1実施形態に係る積層コイル部品1(巻き上げ方向が同じ)に比べて、積層コイル部品1f(巻き上げ方向が異)では、2つの共振点をはっきりと分離することができ、明確な2トラップ構成とすることができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、第1及び第2のコイル10,20等のターン数を1.5としたものを例として説明したが、ターン数はこれに限定されるものではなく、ターン数をより多くしてももちろんよい。また、上記実施形態では、第1及び第2のコイル10,20等のターン数を同じとしたが、コイル間でターン数が異なっていてもよい。
【0087】
例えば、第1実施形態に係る積層コイル部品1の構成において、図20に示されるように、ターン数を変更させてもよい。即ち、図20(a)に示される積層コイル部品1gのように、両端接続の第1のコイル10gのターン数を3.5、片端がオープンな第2のコイル20gのターン数を4.5としてもよい。また、図20(b)に示される積層コイル部品1hのように、両端接続の第1のコイル10hのターン数を4.5、片端がオープンな第2のコイル20hのターン数を3.5としてもよい。
【0088】
なお、このように総ターン数を同じとしつつターン数を第1及び第2のコイル間で変更させた場合には、図21に示されるように、例えば、図20(a)に示す積層コイル部品1g(コイル3.5Ts)の方が、図20(b)に示す積層コイル部品1h(ダミー3.5Ts)よりも高周波側の減衰を深くすることができるといった作用効果も奏することができる。すなわち、第1のコイル10gよりも第2のコイル20gのターン数を多くすることにより、高周波側での減衰をより深くしたりすることができる。
【0089】
また、上記実施形態におけるコイル導体22〜24の幅を、図22(b)に示されるように増加させて、第1のコイル10のコイル導体12の幅より太くしてもよい。このようにコイル導体22〜24の幅を増加させてコイル導体22j〜24jとすることにより、例えば、浮遊容量を増加させたり、または、図23に示されるように、共振点を低周波側へシフトさせたりすることもできる。また、コイル導体22〜24の幅を第1のコイル10のコイル導体12の幅より細くしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、第1及び第2のコイル10,20が積層方向に上下となるように互いに対向して配置した例を示したが、図24に示されるように、第1のコイル10kの内部に、第2のコイル20kを設ける構成としてもよい。この場合であっても、片端がオープンな第2のコイル20kを第1のコイル10kと異なる箇所に配置したことにより、第2のコイル20k内において浮遊容量を形成することができ、その結果、一の部品によって、2つの周波数帯域におけるノイズを除去することができる。なお、この場合、積層コイル部品の低背化を図ることもできる。
【0091】
また、上記実施携帯では、片端オープンな第2のコイル20を1つ設けた構成としたが、第2のコイル20と同様な構成の片端オープンな第3のコイルを更に設け、第2及び第3のコイルが、積層方向において、第1のコイル10を挟むように配置する構成としてもよい。このような構成により、LC共振回路を一の部品内に3つ形成することが可能となり、一の部品によって3つの周波数帯域におけるノイズを除去することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1b〜1d,1f〜1h,1k…積層コイル部品、3…素体、5,7…端子電極、10,10d,10k…第1のコイル、20,20b〜20d,20f〜20h,20k…第2のコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、
前記素体の両端部にそれぞれ配置された第1及び第2の端子電極と、
前記素体の内部に配置され、前記第1及び第2の端子電極に接続される第1のコイルと、
前記素体の内部に配置され、前記第1の端子電極に接続され且つ前記第2の端子電極に接続されない第2のコイルと、を備え、
前記第2のコイルが当該第2のコイル内で浮遊容量を形成することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1及び第2のコイルは、前記絶縁体層の積層方向において、互いに対向するように上下に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2のコイルの巻回数が前記第1のコイルの巻回数よりも多いことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1及び第2のコイルの前記第1の端子電極への引き出し部それぞれは、前記絶縁体層の積層方向から見た場合に、少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1及び第2のコイルの前記第1の端子電極への引き出し部それぞれは、前記絶縁体層の積層方向から見た場合に、互いに重ならないことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1及び第2のコイルの前記第1の端子電極への引き出し部が共通であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1及び第2のコイルは、前記絶縁体層の積層方向から見た場合に、巻き上げ方向が互いに異なっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記素体の内部に配置され、前記第1の端子電極に接続され且つ前記第2の端子電極に接続されない第3のコイルを更に備え、
前記第2及び第3のコイルは、前記積層方向において、前記第1のコイルを挟むように配置されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第2のコイルは、前記第1のコイルの内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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