説明

コエンザイムQ10包接体

【課題】コエンザイムQ10のβCD包接体を効率よくかつ簡単な方法で得る製造方法を確立する。
【解決手段】βCDを50℃〜70℃で加熱溶解しコエンザイムQ10を包接体に対して7〜14%加えてホモジナイズし得られた混合物を70℃以下で乾燥することによってバイオアビリティの優れたコエンザイムQ10包接体を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコエンザイムQ10のβサイクロデキストリン包接体の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクロデキストリンを用いて様々の包接化合物が提案され使用されている。すでにコエンザイムQ10についてはβCD包接体が特開昭58−206540にγCDについては特開昭60−89442において出願されている。各特許ともコエンザイムQ10の安定性と腸管からの吸収率が向上することをあげている。
【特許文献1】特開昭58−206540
【特許文献2】特開昭60−89442
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は先願の出願特許の包接体の製造においてさらに簡略化した製造方法を提供することが目的である。すなわち通常のコエンザイムQ10の製造では攪拌して包接体を得るのに時間がかかったり、時間を短縮するために特殊なエネルギー付与をするなどの方法が用いられる。本発明では短時間で複雑な操作をすることなくコエンザイムQ10のβサイクロデキストリン包接体を得る方法を提供することが可能である。
【0004】
通常βサイクロデキストリンは水に溶解しにくく常温では5%程度である。又コエンザイムQ10は常温では固形であり水中への微分散は容易でない。
【0005】
一方コエンザイムQ10のβサイクロデキストリン包接体は水に不溶であり、水中から回収して乾燥粉砕して用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、コエンザイムQ10のβサイクロデキストリン包接体を複雑な工程を得ることなく製造することにある。通常βサイクロデキストリン(以下βCDと略する)は他のサイクロデキストリンと比べて水に溶解しにくく常温では5%程度の溶解性であるが加熱することにより15%〜20%程度の溶解性が生じる。従ってβCDを用いて加熱下コエンザイムQ10を添加し攪拌し得られた混合物から水分を除去することによって本発明を完成させた。
【0007】
本発明においてβCDを加熱溶解することによって工業化に十分な濃度のβCD溶液が得られる。加熱をしなければ5%程度の水溶液しか得られない。工業的には水分の除去をする上でまた設備の負担が多く効率的でない。15〜20%のβCDを熱溶解することで工業的なレベルでの加工が容易になる。
【0008】
本発明において60℃〜70℃の熱水を用いることで融点が50℃付近であるコエンザイムQ10も液状になりβCD溶液との接触が良くなり包接されやすくなる。この場合加熱下のコエンザイムQ10の酸化劣化等が懸念されたが、包接化が早急に進行することによって十分に安定な状態を保つことが可能である。
【0009】
本発明においては通常減圧下での乾燥が好ましい。特にフリーズドライや棚式の減圧乾燥により水分を除去することにより内包物の変質が抑制される。通常食品の水分含量は腐敗を避けるため12〜13%以下に乾燥され流通している。本発明においてはこの水分量をさらに減少させ5%以下にすることによって流動性に優れ、内包物の劣化を抑制した粉末を得ることが出来る。
【0010】
乾燥機において水分の除去を徹底するため乾燥機の乾燥温度を上昇させるが本発明においては70℃以下で乾燥することが好ましい。
通常コエンザイムQ10は常態で外気に暴露すると変質しやすいものを包接するため高温にて乾燥すると酸化や重合、異性化などの変質を起こす場合が多い。これを避ける必要があるが乾燥温度を低くしすぎると水分が除去されにくくこのため粉体の水分量が5%以上になると流動性の優れた粉末は得られない
【発明の効果】
【0011】
本発明に従ってコエンザイムQ10とβCDを包接することによって体内への吸収性に優れ大気中でも安定な流動性に優れたコエンザイムQ10βCD包接体をえることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施する上でもっとも必要なことは60℃〜70℃の水溶液中でβサイクロデキストリンでコエンザイムQ10を包接することであり次に乾燥する上で70℃以下で水分5%以下にすることである。
【0013】
本発明においてβCDを加熱溶解することによって工業化に十分な濃度のβCD溶液が得られる。加熱をしなければβCDは5%程度の水溶液しか得られない。工業的には水分の除去をする上でまた設備の負担が多く効率的でない。αサイクロデキストリンやγサイクロデキストリンは常温で20%以上の溶解性がありこれらの濃度での使用は可能であり常温下での包接は可能である。15〜20%のβCDを熱水中に溶解することで工業的なレベルでの加工が容易になる。
【0014】
本発明において60℃〜70℃の熱水に溶解したβCDを用いることで融点が50℃付近であるコエンザイムQ10も混合槽中で液状になり攪拌下でのβCD溶液との接触が良くなり包接されやすくなる。この場合加熱下のコエンザイムQ10の酸化劣化等が懸念されたが、包接化が20分程度で早急に進行することによって十分に安定な状態を保つことが可能である。
【0015】
サイクロデキストリンとしては包接される化合物によって異なるがコエンザイムQ10においてはβサイクロデキストリン、γサイクロデキストリンが使用可能である。γサイクロデキストリンについては包接部の口径が大きく安定した包接体が得られず加熱下ではコエンザイムQ10が溶融して攪拌しても表面上に液状で浮遊している。αサイクロデキストリンは包接体になることはなく水溶化に利用される。
【0016】
反応時間は本方法では極めて短時間で良好なコエンザイムQ10βCD包接体が得られる。これらは30分から60分で95%の包接体になるので未反応物を分離する必要は無い。これらの未反応物については体内への吸収性や大気中での安定性は良好では無いが通常の使用条件下で問題になることはない。
【0017】
本発明で言う水分は通常包接体の重量減少によって測定される。すなわち加工工程は水溶液または水中分散して実施され、揮発性溶剤は使われないので水分を揮発分として測定する。水分は通常食品としては食品中に13%以下であれば腐敗を抑制出来る。従ってβサイクロデキストリンは10〜13%の水分を含んでいる。
【0018】
本発明において水分を5%以下にすることによって流動性が向上するが流動性の指標は様々の測定法があるが本発明においては安息角を測定しその指標とした。流動性の良いものは安息角が小さく流動性の悪いものは安息角が大きい。水分5%以上のものは安息角が大きく流動性が悪い。このためスティック充填や打錠時にかたまって玉になったり、ブリッジングを起こして製品の品質に問題を起こす。
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
βサイクロデキストリン88gを2Lのビーカーに入れ60℃の温水1Lに溶解する。これをホモジナイザー中で攪拌しながら12gのコエンザイムQ10を加え90分攪拌する。得られた分散物を2Lのナスフラスコに移し60℃の湯浴中でロータリーエバポレーターで減圧30mmHgで減圧乾燥する。水分の蒸発、凝集が認められなくなってから2時間乾燥を継続しナスフラスコから黄色粉末100gを取り出す。この黄色粉末2.000gの110℃の乾燥機2時間での加熱減量は57mg(2.7%)であった。
【0021】
実施例2
実施例1の化合物について示差熱分析(DSC)を実施した。30度から200℃まで毎分10℃の昇温で実施したところ51℃のところにわずかにコエンザイムQ10に起因する吸熱が確認された。一方88gのβサイクロデキストリンと12gコエンザイムQ10の単純な混合物では大きな吸収が51℃で認められた。これらの吸熱ジュール比から包接が95%以上されていることが確認された。一方100℃での水による吸熱はほとんど観測されなかった。このことからこれらの化合物が包接されていることが確認できた。また水分は3%以下であることが確認できた。
【0022】
比較例1
βサイクロデキストリン88gを2Lのビーカーに入れ25℃の温水1Lに分散する。これをホモジナイザー中で攪拌しながら12gのコエンザイムQ10を加え90分攪拌する。得られた分散物を2Lのナスフラスコに移し60℃の湯浴中でロータリーエバポレーターで減圧30mmHgで減圧乾燥する。水分の蒸発、凝集が認められなくなってからナスフラスコから黄色粉末105gを取り出す。この黄色粉末2.000gの110℃の乾燥機2時間での加熱減量は178mg(8.9%)であった。
【0023】
比較例2
比較例1の化合物について示差熱分析(DSC)を実施した。30度から200℃まで毎分10℃の昇温で実施したところ51℃のところにかなりの大きさのコエンザイムQ10に起因する吸熱が確認された。これらの吸熱ジュール比からコエンザイムQ10は40〜50%包接されていることが確認された。一方100℃での水による吸熱がわずかに観察された。水分は8.9%であることが確認できた。
【0024】
実施例3
実施例1と比較例1の各コエンザイムQ10βCD包接体を各1gを毎日1週間摂取し摂取前と摂取後のコエンザイムQ10の血中濃度を測定した。コエンザイムQ10は酸化体と還元体を併せて摂取前は900〜1000nM/mlであったのに対し実施例1の摂取では3500nM〜4000nM/mlになり比較例1では1500nM〜2000nM/mlであった。
以上のように加熱下でβCDで包接したコエンザイムQ10は良好な吸収性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱したβサイクロデキストリン水溶液にコエンザイムQ10を加え高速撹拌してなるコエンザイムQ10サイクロデキストリン包接体の製造方法
【請求項2】
加熱温度が50℃から70℃である請求項1に記載のコエンザイムQ10サイクロデキストリン包接体の製造方法
【請求項3】
コエンザイムQ10の含有量が7%から14%である請求項1〜2に記載のコエンザイムQ10サイクロデキストリン包接体の製造方法
【請求項4】
請求項1〜3記載の包接体を製造する上でホモジナイザー及び/または超音波振動装置を使用することを特徴とする請求項1〜3記載の粉末組成物およびその製造法
【請求項5】
水分が5%以下である流動性に優れ手居ることを特長とする請求項1〜4記載のコエンザイムQ10サイクロデキストリン包接体の製造方法

【公開番号】特開2007−63249(P2007−63249A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291675(P2005−291675)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504258011)新興貿易株式会社 (4)
【Fターム(参考)】