説明

コカイン乱用を治療するためのBChEアルブミン融合体

霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響を軽減する方法。前記方法は、霊長類に対して、ある量のアミノ酸置換A227S、S315G、A356WおよびY360Gを含むBChE−アルブミン融合タンパク質を投与することを含み、前記融合タンパク質の量は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響の軽減を引き起こすために有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年11月10日に出願された米国仮特許出願第61/412,205号と、2009年12月8日に出願された米国仮特許出願第61/283,791号との優先権を主張し、これらの内容は全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願を通して、種々の刊行物と、公開された特許出願と、特許とが参照される。全体としてこれらの書面の開示は、本発明が関係する最先端技術をより十分に記載するために、参照により本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
コカイン乱用および依存は、悲惨な医学的および社会的結果を有し、これは効果的な利用の開発を最優先にしている(Pan,Y.,Gao,D.,Yang,W.,Cho,H.,Yahg,G.,Tai,H.,Zhan,C.,“Computational redesign of human butyrylcholinesterase for anticocaine medication,”PNAS,102(46):16656−61,2005)。しかしながら、Brimijoinらが述べるように、「自制に達している使用者において、コカインの過剰投与を治療する、または再発の可能性を減らす確実な方法はない。ヒト血漿ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)は、正常なコカイン代謝に貢献し、コカイン毒性の治療において使用することが考慮されている。」(Brimijoin,S.,Gao,Y.,Anker,J.,Gliddon,L.,LaFleur,D.,Shah,R.,Zhao,Q.,Singh,M.,Carroll,M.,“A Cocaine Hydrolase Engineered from Human butyrylcholinesterase Selectively Blocks Cocaine Toxicity and Reinstatement of Drug Seeking in Rats,”Neuropsychopharmacology,33:2715−25,2008)。
【0004】
野生型BChEは、生体におけるコカイン代謝に重要であるが、コカインに対しては触媒効率が低い。野生型BChEの低いコカインヒドロラーゼ活性は、コカイン乱用または過剰投与を治療するために非常に大量の精製酵素の使用を必要とする。コカインヒドロラーゼ活性を増大させるという目的でヒトBChEにおいて行われた突然変異生成は、野生型BChEに比べて40倍高いkcatを有する二重突然変異A328W/Y332A(全長BChEと比較して残基356と360)の開発に至り、これはKをほんの僅かに上昇させた(Sun H.,Shen M.,Pang Y.,Lockridge O.,Brimijoin S.,“Cocaine Metabolism Accelerated by a Re−Engineered Human butyrylcholinesterase”Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,302(2):710−716,2002)。
【0005】
コカインのBChE触媒加水分解の第1化学反応ステップについての遷移状態を刺激する分子動力学を利用する更なる実験は、野生型BChEよりも500倍大きく、他に従前設計されたBChE突然変異体よりも大きい触媒効率を有するBChE突然変異体であるA227S/S315G/A356W/Y360Gをもたらした(Pan,Y.,Gao,D.,Yang,W.,Cho,H.,Yang,G.,Tai,H.,Zhan,C.,“Computational redesign of human butyrylcholinesterase for anticocaine medication,”PNAS,102(46):16656−61,2005)。
【0006】
治療的使用に適している可能性があるA227S/S315G/A356W/Y360GのBChE突然変異体の形態を得るために、Panらによって設計されたBChE突然変異体は、そのC末端でヒト血清アルブミン(HSA)に融合され、これは、類似の融合体は、高い安定性と増大した血漿半減期を有する有益な薬物速度論的特性を示すことが観察されたためである。上記突然変異を含むBChE−アルブミン融合体は、コカインと高い触媒効率を維持し、ラットへの静脈注射後8時間の血漿半減期を示すことが観察された(Brimijoin S.,Gao,Y.,Anker J.,Gliddon L.,LaFleur D.,Shah R.,Zhao,Q.,“A Cocaine Hydrolase Engineered from Human Butyrylcholinesterase Selectively Blocks Cocaine Toxicity and Reinstatement of Drug Seeking in Rats”Neuropsychopharmacology,33:2715−25,2008)。
【0007】
これまで、突然変異であるA227Sと、S315Gと、A356Wと、Y360Gとを含むBChE−アルブミン融合体を利用する、開発された霊長類におけるコカイン乱用または過剰投与を治療するための効率的な方法はなかった。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響を軽減するための方法であって、
(a)配列:
EDDIIIATKNGKVRGMNLTVFGGTVTAFLGIPYAQPPLGRLRFKKPQSLTKWSDIWNATKYANSCCQNIDQSFPGFHGSEMWNPNTDLSEDCLYLNVWIPAPKPKNATVLIWIYGGGFQTGTSSLHVYDGKFLARVERVIVVSMNYRVGALGFLALPGNPEAPGNMGLFDQQLALQWVQKNIAAFGGNPKSVTLFGESSGAASVSLHLLSPGSHSLFTRAILQSGSFNAPWAVTSLYEARNRTLNLAKLTGCSRENETEIIKCLRNKDPQEILLNEAFVVPYGTPLGVNFGPTVDGDFLTDMPDILLELGQFKKTQILVGVNKDEGTWFLVGGAPGFSKDNNSIITRKEFQEGLKIFFPGVSEFGKESILFHYTDWVDDQRPENYREALGDVVGDYNFICPALEFTKKFSEWGNNAFFYYFEHRSSKLPWPEWMGVMHGYEIEFVFGLPLERRDNYTKAEEILSRSIVKRWANFAKYGNPNETQNNSTSWPVFKSTEQKYLTLNTESTRIMTKLRAQQCRFWTSFFPKV(配列番号1)、
を含む突然変異ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)ポリペプチドと、
(b)配列:
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)
を含むヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチドと、
(c)配列MRPTWAWWLFLVLLLALWAPARG(配列番号3)を含むシグナルペプチドと
を含むある量の融合タンパク質を霊長類に投与することを含み、
前記融合タンパク質の量は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響の軽減を引き起こすために有効である方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(配列番号4)は、AlbuBChE、突然変異であるA227Sと、S315Gと、A356Wと、Y360Gとを含むBChE−アルブミン融合タンパク質のアミノ酸配列を示す図。
【図2】図2は、0.2、1または5mg/kgのAlbuBChE投与量(上部パネル直線目盛、下部パネル片対数目盛)の単回IM投与後の個々のカニクイザルにおけるAlbuBChE血清濃度−時間プロフィールを示す図。
【図3】図3は、0.2、1または5mg/kgのAlbuBChE投与量(上部パネル直線目盛、下部パネル片対数目盛)の単回IM投与後の個々のカニクイザルにおける平均AlbuBChE血清濃度−時間プロフィールを示す図。
【図4A】図4は、対照動物(n=2)における平均コカイン濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図4B】図4は、対照動物(n=2)における平均コカイン濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図5A】図5は、対照動物(n=2)における平均ベンゾイルエクゴニン濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図5B】図5は、対照動物(n=2)における平均ベンゾイルエクゴニン濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図6A】図6は、対照動物(n=2)における平均エクゴニンメチルエステル濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図6B】図6は、対照動物(n=2)における平均エクゴニンメチルエステル濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図7】図7は、第1日のコカイン対照群についての平均コカイン濃度−時間プロフィールと、0.2、1または5mg/kgでのAlbuBChE投与後の第11日(240時間)との比較を示す図。
【図8】図8は、0.2、1または5mg/kgでのAlbuBChE投与量の単回IM投与後のカニクイザルにおけるAlbuBChE PK/PD分析を示す図。コカインは、対照動物において1mg/kgの投与量で、またはAlbuBChE投与の2、48、96、120および240時間後にIV投与された。
【図9】図9は、コカイン代謝経路を示す図。
【図10】図10は、対照動物(n=2)における1mg/kgのIVコカイン投与後の平均コカインAUC(0−t)をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図11】図11は、対照動物(n=2)における1mg/kgのIVコカイン投与後の平均ベンゾイルエクゴニンAUC(0−t)をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図12】図12は、5mg/kgのAlbuBChE投与後の個々のリスザルにおけるAlbuBChE血清濃度−時間プロフィールを示す図(片対数目盛)。
【図13】図13は、対照動物(n=2)における平均コカイン濃度対時間をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図14】図14は、対照動物(n=2)における1mg/kgのIVコカイン投与の5分後の平均エクゴニンメチルエステル濃度をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図15】図15は、対照動物(n=2)における1mg/kgのIVコカイン投与の5分後の平均ベンゾイルエクゴニン濃度をAlbuBChE投与後の時間(n=3)の関数として示す図。
【図16】図16は、コカイン注射の5分後(上部パネル)および30分後(下側パネル)のコカイン、ならびにコカイン代謝物エクゴニンメチルエステル(EME)およびベンゾイルエクゴニン(BZ)のリスザルの血液レベルの概要を示す図。
【図17】図17は、5mg/kgのAlbuBChE投与の単回IM投与後のリスザルにおけるAlbuBChE PK/PD分析を示す図。コカインは、対照動物(n=2)において1mg/kgの投与量で、またはAlbuBChE投与(n=3)の2、72、および96時間後にIV投与された。
【図18】図18は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均心拍数数対時間を示す図。
【図19】図19は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均心拍数圧力生成対時間を示す図。
【図20】図20は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均動脈圧対時間を示す図。
【図21】図21は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均拡張期血圧対時間を示す図。
【図22】図22は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均収縮期血圧対時間を示す図。
【図23】図23は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均体温対時間を示す図。
【図24A】図24Aは、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均呼吸数対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図24Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図24Bの下段パネルに示す。
【図24B】図24Aは、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均呼吸数対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図24Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図24Bの下段パネルに示す。
【図25A】図25Aは、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均SPO2レベル対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図25Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図25Bの下段パネルに示す。
【図25B】図25Aは、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均SPO2レベル対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図25Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図25Bの下段パネルに示す。
【図26A】図26は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均ETCO2レベル対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図26Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図26Bの下段パネルに示す。
【図26B】図26は、15mg/kgのAlbuBChE投与または製剤緩衝液の単回IM投与前およびその後のカニクイザルにおける平均ETCO2レベル対時間を示す図。雄性カニクイザルについてのデータを図26Bの上段パネルに示し、雌性カニクイザルについてのデータを図26Bの下段パネルに示す。
【図27】図27は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均動脈圧対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図28】図28は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均最低血圧対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図29】図29は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均最高血圧対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図30】図30は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均心拍数対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図31】図31は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均心筋仕事量対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図32】図32は、15mg/kgのAlbuBChE投与の3時間後に1mg/kgのコカイン投与量でIV投与された後のカニクイザルにおける平均体温対時間を示す図。コカイン投与はt=0で投与された。
【図33】図33は、コカインまたは生理食塩水のいずれかが自己投与に利用され得た連続日数全体での自己投与期間中のリスザル反応速度(上段パネル)と注射回数(下段パネル)を示す図。応答は、ビヒクルまたはAlbuBChE投与(5mg/kg)後の5日間追跡された。
【図34】図34は、AlbuBChEまたはAlbuBChEビヒクルの投与後のコカイン自己投与の回復のレベルを示す図。AlbuBChEまたはビヒクルはi.m.で与えられた。2、48および96時間後、0.3mg/kgコカインi.v.(左パネル)または0.1mg/kgのコカインi.v.(右パネル)は、生理食塩水の置換期間前の5分間に与えられた。
【図35】図35は、AlbuBChEによってメタンフェタミンで訓練された対象におけるコカインの弁別刺激効果の調節を示す図。
【図36】図36は、AlbuBChE投与後のメタンフェタミンで訓練された対象におけるメタンフェタミンの弁別刺激効果を示す図。
【図37】図37は、アルブミン融合体が週1回服用され、非融合ペプチドが1日1回服用される場合、非融合ペプチドと比較したアルブミン融合体の相対的血清濃度を示す図。
【図38】図38は、CHO細胞から精製されたAlbuBChEのSDS−PAGEを示す図。レーン1は分子量マーカーであり、レーン2と4は、それぞれ還元および非還元条件下で精製されたAlbuBChEを示す。
【図39】図39は、コカイン投与前の野生型BChEまたはAlbu−CocHで処理されたラット、コカイン服用単独で与えられたラット、およびコカインおよびBChEが与えられていないラットにおける、ビーム横断数対時間を示す図。運動活性は、Brimijoinらにおいて報告されるように、赤外線ビーム切断を検出することによって評価された。
【図40】図40は、AlbuBChEの投与後のマウスにおけるAlbuBChE濃度対時間を示し、同時に、AlbuBChE投与後のコカイン加水分解(コカイン投与の60分以内にコカインが安息香酸に変換された割合(%BA)として表される)対時間を示す図。
【図41】図41は、尾静脈を介してAlbuBChE(3mg/kg)投与量または生理食塩水を与えられ、続いて10分後、また尾静脈を介して30μCiの3H−コカイン(3.5mg/kg)が与えられたラット(n=6)から回収された脳および心臓におけるコカイン含有量を示す図。脳および心臓は、3H−コカイン投与の10分後に回収された。左から右へ、対照データはバー1と3であり、一方、AlbuBChEデータはバー2と4である。
【図42】図42は、30μCiの3H−コカイン投与(3.5mg/kg)前の10分間で、3mg/kgのAlbuBChE投与または生理食塩水が与えられたラットから回収された脳、心臓および血漿におけるコカイン(左プロット)および安息香酸レベル(右プロット)を示す図。脳、心臓および血漿は、コカイン投与の10分後に回収された。
【図43】図43は、致死量から保護するAlbuBChEの能力を調べる研究の実験的設計を示す図。
【図44】図44は、0、1、3、または10mg/kgのAlbuBChEを投与の10分後に与えられた100mg/kgコカインの投与に応答して、多動、発作、および死を示すラットの割合を示す図。
【図45】図45は、0、2、および10mg/kgのAlbuBChEのIV投与が与えられ、続いてその5分後、60または100mg/kgのコカインのIP投与が与えられたSprague Dawleyラットにおけるコカイン濃度対時間を示す図。
【図46】図46は、中毒および再発の行動モデルを示す図。「S」および「D」は、それぞれ生理食塩水および薬物コカインを表す。動物をコカイン注入のためにレバー押しを自発するように訓練される。安定化(維持)後、コカインを生理食塩水に置換し、鎮静させる。その後の回復時期では、コカインのプライミング注射を行い、生理食塩水に代える。
【図47】図47は、AlbuBChE処理に起因した薬物要求行動のコカイン刺激回復の選択的妨害を示す図。以前にコカインを自己投与したラットであって、コカインが生理食塩水で置換されたときに鎮静されるラットは、生理食塩水(S)、コカイン(C、10mg/kg)、またはアンフェタミン(A、2mg/kg)のIV注射で刺激された。AlbuBChEは、行動期間の2時間前にIV投与された(E、2mg/kg)。
【図48】図48は、生理食塩水注射、コカイン注射(10mg/kg、IV)、またはAlbuBChE(2mg/kg、IV)後にコカイン(10mg/kg、IV)注射されたラットにおいて、中毒段階および強制自制後の時期あたりのレバー押しの数を示す図。
【図49】図49は、単回の静脈内(IV)、皮下(SC)、または筋内(IM)注射後のカニクイザルにおけるAlbuBChE生物学的利用能、半減期、最大濃度に対する時間Tmaxを示す図。投与のIMおよびSC経路についてのAlbuBChE絶対生物学的利用能は、3mg/kg投与レベルでのIVと比較して計算された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響を軽減するための方法であって、
(a)配列:
EDDIIIATKNGKVRGMNLTVFGGTVTAFLGIPYAQPPLGRLRFKKPQSLTKWSDIWNATKYANSCCQNIDQSFPGFHGSEMWNPNTDLSEDCLYLNVWIPAPKPKNATVLIWIYGGGFQTGTSSLHVYDGKFLARVERVIVVSMNYRVGALGFLALPGNPEAPGNMGLFDQQLALQWVQKNIAAFGGNPKSVTLFGESSGAASVSLHLLSPGSHSLFTRAILQSGSFNAPWAVTSLYEARNRTLNLAKLTGCSRENETEIIKCLRNKDPQEILLNEAFVVPYGTPLGVNFGPTVDGDFLTDMPDILLELGQFKKTQILVGVNKDEGTWFLVGGAPGFSKDNNSIITRKEFQEGLKIFFPGVSEFGKESILFHYTDWVDDQRPENYREALGDVVGDYNFICPALEFTKKFSEWGNNAFFYYFEHRSSKLPWPEWMGVMHGYEIEFVFGLPLERRDNYTKAEEILSRSIVKRWANFAKYGNPNETQNNSTSWPVFKSTEQKYLTLNTESTRIMTKLRAQQCRFWTSFFPKV(配列番号1)、
を含む突然変異ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)ポリペプチドと、
(b)配列:
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)
を含むヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチドと、
(c)配列MRPTWAWWLFLVLLLALWAPARG(配列番号3)を含むシグナルペプチドと
を含む融合タンパク質のある量を霊長類に投与することを含み、
前記融合タンパク質の量は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響の軽減を引き起こすために有効である方法を提供する。
【0011】
本方法の実施形態では、融合タンパク質は、配列:
MRPTWAWWLFLVLLLALWAPARGEDDIIIATKNGKVRGMNLTVFGGTVTAFLGIPYAQPPLGRLRFKKPQSLTKWSDIWNATKYANSCCQNIDQSFPGFHGSEMWNPNTDLSEDCLYLNVWIPAPKPKNATVLIWIYGGGFQTGTSSLHVYDGKFLARVERVIVVSMNYRVGALGFLALPGNPEAPGNMGLFDQQLALQWVQKNIAAFGGNPKSVTLFGESSGAASVSLHLLSPGSHSLFTRAILQSGSFNAPWAVTSLYEARNRTLNLAKLTGCSRENETEIIKCLRNKDPQEILLNEAFVVPYGTPLGVNFGPTVDGDFLTDMPDILLELGQFKKTQILVGVNKDEGTWFLVGGAPGFSKDNNSIITRKEFQEGLKIFFPGVSEFGKESILFHYTDWVDDQRPENYREALGDVVGDYNFICPALEFTKKFSEWGNNAFFYYFEHRSSKLPWPEWMGVMHGYEIEFVFGLPLERRDNYTKAEEILSRSIVKRWANFAKYGNPNETQNNSTSWPVFKSTEQKYLTLNTESTRIMTKLRAQQCRFWTSFFPKVDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号4)
を含む。
【0012】
本方法の別の実施形態では、融合タンパク質はコカイン暴露前に投与される。
【0013】
別の実施形態では、融合タンパク質は、コカイン暴露前の1日以内に投与される。
【0014】
別の実施形態では、融合タンパク質は、コカイン暴露前の216時間以内に投与される。融合タンパク質は、コカイン暴露の1、2、3、4、5、6、7、8、または9日前に投与されてもよい。
【0015】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質はコカイン暴露後に投与される。更なる実施形態では、融合タンパク質は、コカイン暴露後の6時間以内に投与される。別の実施形態では、融合タンパク質は、コカイン暴露後の1時間以内に投与される。
【0016】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン暴露は単回コカイン暴露である。
【0017】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン暴露は反復コカイン暴露である。本方法の更なる実施形態では、反復コカイン暴露はコカイン乱用またはコカイン依存である。
【0018】
本方法のなお別の実施形態では、反復コカイン暴露は、12カ月の期間において少なくとも6回の単回コカイン暴露を含む。
【0019】
本方法のなお別の実施形態では、反復コカイン暴露は、霊長類の生涯において少なくとも20回の単回コカイン暴露を含む。
【0020】
本方法のなお別の実施形態では、生物学的影響は霊長類におけるコカイン過剰投与によって引き起こされ、軽減が生物学的影響を治療または予防する。
【0021】
本方法のなお別の実施形態では、生物学的影響は血圧上昇である。
【0022】
本方法の更なる実施形態では、血圧上昇の持続時間は60〜90%低減する。
【0023】
本方法の更なる実施形態では、血圧上昇の持続時間は約78%低減する。
【0024】
本方法のなお別の実施形態では、生物学的影響は心拍数または体温の上昇である。本方法の更なる実施形態では軽減の程度は45%〜70%である。本方法の更なる実施形態では、軽減の程度は57%である。
【0025】
本方法のなお別の実施形態では、生物学的影響は霊長類におけるコカイン要求行動である。
【0026】
本方法の別の実施形態では、コカイン要求行動はコカイン暴露後のコカイン自制期間中に起こる。
【0027】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動は再発後に起こる。
【0028】
本方法のなお別の実施形態では、再発の2時間前の融合タンパク質の投与は、再発直後の霊長類によるコカイン要求行動を軽減する。
【0029】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン暴露の2時間前の融合タンパク質の投与は、霊長類によるコカイン要求行動の50%〜100%の減少をもたらす。
【0030】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動の軽減は、融合タンパク質の投与後の4日以内に観察される。
【0031】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の投与は、投与しない場合よりも霊長類における総コカイン暴露の低下をもたらす。
【0032】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動の軽減は、霊長類におけるコカイン自制期間をもたらす。本方法の更なる実施形態では、自制期間は2週〜3週である。
【0033】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動の軽減は、投与しない場合よりも、霊長類がコカインに暴露されない日数の割合を大きくする。
【0034】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動の軽減は、投与しない場合よりも、霊長類がコカインに暴露されない連続日数を大きくする。
【0035】
本方法のなお別の実施形態では、コカイン要求行動の軽減は、コカイン選択的重度評価(CSSA)または精神障害の診断と統計の手引IV(DSM−IV)によって評価されるように、コカイン依存または乱用の重度の低下をもたらす。
【0036】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は、霊長類の血清コカインレベルを1mg/kg静脈内コカイン投与の約30分以内に約0mg/mlまで減少させる量である。
【0037】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の投与は、霊長類の血清コカインレベルを、1mg/kg静脈内コカイン投与の約5分以内に、投与しない場合の血清コカインレベルの12%未満まで減少させる。
【0038】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の投与は、霊長類の血清コカインレベルを、1mg/kg静脈内コカイン投与の約5分以内に、投与しない場合の血清コカインレベルの7%まで減少させる。
【0039】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質は、1回だけ、1日1回、週2回、週1回、月2回、または月1回投与される。
【0040】
別の実施形態では、融合タンパク質は週1回または週2回投与される。
【0041】
別の実施形態では、融合タンパク質は、コカイン暴露後の単回投与として投与される。
【0042】
別の実施形態では、融合タンパク質は、コカイン過剰投与後に単回投与として投与される。
【0043】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質は、筋内注射または皮下注射によって投与される。
【0044】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質は、10mMリン酸ナトリウムと、200mMマンニトールと、60mMトレハロースと、0.01%(w/v)ポリソルベート80とを含むpH7.2の製剤緩衝液中にある。
【0045】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質が少なくとも30mg/mlの濃度で製剤に存在する。
【0046】
本方法のなお別の実施形態では、生物学的影響の軽減は、融合タンパク質の投与後の72時間以内に観察される。
【0047】
本方法のなお別の実施形態では、霊長類はヒトである。
【0048】
本方法の更なる実施形態では、コカイン暴露は、10mg〜60mgの単回コカイン暴露であるかまたは反復コカイン暴露であり、反復コカイン暴露の各単回コカイン暴露は10mg〜60mgである。
【0049】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は、40mgの静脈内コカイン投与の約30分以内に、約0ng/mlまでヒト血清コカインレベルを低減させる量である。
【0050】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は0.06mg/kg〜5mg/kgである。本方法の別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は0.06mg/kg、0.3mg/kg、1.6mg/kg、または4.8mg/kgである。
【0051】
本方法のなお別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は50mg〜300mgである。本方法の別の実施形態では、融合タンパク質の有効量は50mg、100mg、150mg、または300mgである。
【0052】
アミノ酸置換A227Sと、S315Gと、A356Wと、Y360Gとを含むBChE−アルブミン融合タンパク質の実施形態を図1に示す(配列番号4)。図1に示されるアミノ酸配列は、下線によって示される異種シグナルペプチドと、ヒトBChEのアミノ酸E29〜V529を含むBChEドメインと、イタリック体で示されるヒト血清アルブミン(HSA)とを含む。アミノ酸置換A227Sと、S315Gと、A356Wと、Y360Gとをボールド体で示し、図1では下線が付されている。置換の番号は、全長BChEの番号に相対する。図1のアミノ酸配列によってコードされるタンパク質は、本明細書全体で「AlbuBChE」と呼ばれる。
【0053】
本発明の上述された実施形態の全ての組み合わせは本発明の範囲内であることが理解される。
【0054】
本明細書で使用するとき、「霊長類」とは、特に、両眼視力の高度な発達、握るための手足の構造の特殊化、および大脳半球の拡大によって特徴付けられ、ヒト、類人猿、サル、および関連形態を含む哺乳動物のいずれの目を指す。
【0055】
本明細書で使用するとき、「軽減の程度」とは、BChE−アルブミン融合タンパク質において観察されたコカイン暴露の生物学的影響と比較して、BChE−アルブミン融合タンパク質の投与後に観察されるコカイン暴露の生物学的影響の減少を指す。軽減の程度は、以下の式:
【数1】

【0056】
によって計算される。
【0057】
例えば、コカイン暴露がBChE−アルブミン融合タンパク質の不存在下で38℃〜38.7℃の基準温度を上昇させ、コカイン暴露がBChE−融合タンパク質の存在下で38℃〜38.3℃の基準温度を上昇させる場合、軽減の程度は57.1%((0.7℃−0.3℃)/0.7℃)である。
【0058】
本明細書で使用するとき、「単回コカイン暴露」とは、任意の他のコカイン暴露から分離された1つのコカイン暴露を指す。「反復コカイン暴露」とは、1回を超える単回コカイン暴露を指す。反復コカイン暴露は、対象における第2または続く単回コカイン暴露で開始する単回コカイン暴露の規則的または不規則的パターンであってもよい。コカイン暴露の反復を経験する個体は、精神障害の診断と統計の手引IV(DSM−IV)のコカイン依存またはコカイン乱用についての基準を満たしている可能性がある。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「総コカイン暴露」とは、所定の時間間隔中の総計のコカイン暴露を指す。総コカイン暴露は、コカイン要求行動またはコカイン暴露の他の生物学的影響を軽減するように設計された治療期間中または治療期間後に測定されてもよい。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「コカイン自制の期間」とは、霊長類が新たなコカイン暴露を経験しないコカイン暴露後の期間を指す。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「再発」とは、コカイン自制の期間後のコカイン暴露を指す。
【0062】
パラメータ範囲が与えられる場合、その範囲内の整数の全ての10分の1は本発明によって与えられる。例えば、「0.2mg/kg〜15mg/kg」は、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kgなど、最大15.0mg/kg(これを含む)を含む。
【0063】
動物の投与量は、刊行物「Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」(米国保健福祉省食品医薬品局医薬品評価研究センター(CDER)、2005年7月)に見出される変換表を用いることによってヒト等価線量(HED)に変換されてもよい。カニクイザルに対する投与量(mg/kg)は、カニクイザル投与量を3.1で割ることによってHED(mg/kg)に変換され得る。リスザルに対する投与量(mg/kg)は、リスザル投与量を5.3で割ることによってHED(mg/kg)に変換され得る。
【0064】
略語のリスト
AUC(0−t) 時間ゼロから最後の検出可能な濃度までの血漿濃度−時間曲線下の面積(tz)
AUC(0−∞) 時間ゼロから無限までの血漿濃度−時間曲線下の面積
%AUCex tzから無限までの外挿によるAUCの割合
BChE ブチルコリンエステラーゼ
BQL 定量限界以下
CL クリアランス
max 最大濃度
CocH コカイン加水分解酵素
ELISA 酵素免疫測定法
GFR 糸球体ろ過量
hr 時間(時)
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IM 筋内
IV 静脈内
LLOQ 定量化の下限
min 分(s)
NCA 非コンパートメント分析
NIDA 国立薬物乱用研究所
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PD 薬力学
PK 薬物動態
RT 室温
Rsq 決定係数
%RSD 相対的標準偏差率
SD 標準偏差
SC 皮下
SOP 標準操作プロトコール
1/2 終末段階の半減期
max 最大濃度の時間
終末段階からの分布量
図1に示されるBChE−アルブミン融合タンパク質(AlbuBChE)は、下記の実験に記載されるように試験に適用された。
【0065】
例1
カニクイザルへのAlbuBChEの単回筋内投与および複数の静脈投与後の薬物動態および薬力学研究
目的
この試験の目的は、0.2、1または5mg/kgのAlbuBChE投与レベルで単回筋内投与後の雄性カニクイザルにおけるAlbuBChEの薬物動態(PK)プロフィールを決定し、AlbuBChE投与の投与後の2、48、96、120、および240時間でのコカインの1mg/kg投与量の静脈投与による時間の関数としてAlbuBChE活性を決定することであった。
【0066】
論理的根拠
AlbuBChEはヒト血清アルブミン(HSA)の融合タンパク質であり、コカインを安息香酸に加水分解する高い触媒効率を示すヒトブチルコリンエステラーゼ(BChE)の一般的な修飾形態である。AlbuBChEは、薬物要求行動の再発を妨げる潜在的な介入として開発中である。タンパク質のアルブミンへの融合は、クリアランスを減らし、半減期を増加させることによって、タンパク質の薬物動態特性を改善することが示されている。より長期の半減期は、薬物処方とともに、より長期の投与間隔とより良好なコンプライアンスになるように期待される。
【0067】
種選択に関する論理的根拠
カニクイザル(アカゲザル)は、ヒトに対する解剖学的、生理学的、および生化学的類似性に基づいて本研究のために選択され、これは、観察された薬物動態および薬理学特性のヒトへの外挿を促進し得る。サルは、ブチリルコリンエステラーゼを発現することが知られ、これは本薬物の成分である。また、サルは、生理学的にはコカインに反応性である。
【0068】
投与レベルおよび経路に関する論理的根拠
従前の研究では、AlbuBChE薬物動態プロフィールはカニクイザルにおいて評価された。その研究では、被験物質は、SC(7.8、2.4および0.78mg/kg)、IM(2.4mg/kg)、IM(2.4mg/kg)投与された。AlbuBChEの薬物動態プロフィールは、測定されたSC投与全体で直線的であった。本研究についてIMの選択は、従前の研究において観察されたSC(それぞれ79%と35〜39%)と比較して、IMにおけるより大きな生物学的利用能に基づいていた。さらに、0.2、1および5mg/kgのAlbuBChEのIM投与レベルは、カニクイザルにおけるAlbuBChEの薬力学範囲を画定するために選択された。
【0069】
1mg/kgでのコカインIV投与は、生理学的関連応答を得て、血中のコカインの測定可能な濃度を達成するのに十分に高い投与量として選択され、これは、動物を過剰に反応させない。
【0070】
各群の動物の数は、動物間の変動の評価のために必要な群あたりの動物の最小数である。これはプロット研究であるため、ただ1つの性(雄)が評価された。
【0071】
試験溶液
被験物質であるAlbuBChEは、−70±15℃で29.9mg/mLを含む凍結液剤として保存溶液中で保存された。投与前に、被験物質製剤を室温で融解した。被験物質製剤を完全に融解したとき、容器を緩やかに反転させることによって混合し、濃度が20mg/mLに達するように被験物質の希釈物の適切な溶液を用いて希釈した。この製剤は、4および0.8mg/mLの濃度に達するように被験物質の希釈物を用いて連続的に希釈された。
【0072】
薬力学被験物質として塩酸コカインをSigmaから購入した。投与レベルは、塩酸塩として表された。
【0073】
実験設計
本研究は、4つの投与群に分けられた11匹の実験に使われていない成熟雄性カニクイザルを含んだ:
コカインの単回IV投与だけを受けた2匹のカニクイザルの対照群;
0.2、1または5mg/kgのAlbuBChEの単回IM投与を用いて処理された3つの投与群。3匹の実験に使用されていない雄性カニクイザルを各投与群において使用した。AlbuBChE処理後、1mg/kgのIV投与のコカインは、AlbuBChE投与の2、48、96、120、および240時間後に投与された。
【0074】
投与記号および投与レベルの概要を表1に見出すことができる。個々の投与量は、投与の日に記録される体重に基づいて計算された。動物は、投与の投与前に絶食された。
【表1】

【0075】
AlbuBChEに関する試料回収
AlbuBChEの単回筋内(IM)投与は、試験第1日に投与され、血液は表2に概要される時間点で回収された。約0.5mLの全血が大腿静脈から血清分離管(SST)に回収された。
【表2】

【0076】
コカインに関する試料回収
全血の約0.5mLは、コカインの各投与の5、10、15、20、30、40および60分後に大腿静脈から回収された(対照群の試験第1日、およびAlbuBChE投与の投与後の試験第1日(2時間)、第3日(48時間)、第5日(96時間)、第6日(120時間)、および第11日(240時間))。血液は、エステラーゼ阻害剤であるジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)を含むK2EDTA血液回収管に入れた。これらの管を数回反転し、回収時に氷水上に置いた。試料は、回収の45分以内に2〜8℃で遠心分離された。得られた血漿を回収し、血漿の単一の200μLの分割量をポリプロピレンチューブに入れた。血漿試料をドライアイス上で凍結し、−75±15℃で保存した。
【0077】
アッセイ法
下記の概要は、投与前、および投与後の異なる時間で得られたサル血清試料におけるAlbuBChE濃度の測定に使用されたELISAに基づくアッセイを記述する。
【0078】
Immulon 4 HBXプレートは、PBS中1ug/mLである100μLの抗BChE mAb002−01(Abcam ab 17246)を用いて、一晩4℃にて被覆される。ブロッキングは、1×PBS中の2%カゼイン、200μL/ウェル、2時間室温にて行われる。洗浄後、100μLの希釈血清試料を標準とともにプレートに添加される。標準は、2000から3.1ng/mLまでAlbuBChEの3.64倍の連続希釈を通じて生じさせた。血清試料および標準は、貯蔵されたカニクイザル血清を含む緩衝液を用いた希釈によって、10%血清で維持される。洗浄ステップは、0.04μg/mLの100μLの抗HSA mAb−6502−HRPを用いて1時間、検出に先立って行われる。100μlのTMB基質を用いた発色前に再度ウェルを洗浄する。15分後、反応を100μL/ウェルの1N H2SO4で停止させ、SpectraMaxプレートリーダー上で450/570nmにて読み込んだ。未知の血清試料の値は、AlbuBChE標準の4パラメータフィットによって生じさせた標準曲線の内挿によって計算される。カニクイザル血清における定量限界は21.1ng/mLであった。
【0079】
血清中のコカインのLC−MS定量化
以下の概要は、血清試料中のコカインを測定するために使用されたLC−MSに基づくアッセイを記述する。MS分析前に、血漿試料、較正標準および対照は、支持された液体抽出(SLE−ISOLUTE,Biotage)を用いて抽出された。25マイクロリットルの試料(25μL)は、150μLの5%水酸化アンモニウムと25μlの内部標準溶液(コカイン−d3)を受け入れた。混合し、SLEプレートに移した後、塩化メチレンを用いて試料を抽出し、乾燥するまで蒸発させた。50μlの再構成溶液−水中の10mM酢酸アンモニウムにおける5%ACN中の再懸濁後、Thermo Hypercarbカラムに0.5ml/分で10μlを注入した。移動相を二相にした。質量分析検出は、Api4000、APCI陽性インターフェイス、および多重反応モニタリング(MRM)を用いて行われた。コカイン、ベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステルの血漿濃度は、このアッセイを用いて決定された。
【0080】
AlbuBChEのPK分析
AlbuBChE薬物動態パラメータ値は、個々の動物について、血清濃度−時間プロフィールを用いて決定された。コンピュータソフトウェアWinNonlin Professional(バージョン4.0.1 Pharsight Corporation,USA)を用いた。具体的には、血管外インプットを用いる非コンパートメント分析用モデルを適用した。血清濃度曲線の最終段階において3データ点よりも少ない場合、最終段階の半減期および半減期から由来するPKパラメータはそのプロフィールについて計算されなかった。分析されたパラメータは、tmax、Cmax、t1/2、AUC(0−t)およびAUC(0−∞)を含み、これらが計算された。
【0081】
コカインのPK分析
データが許容される場合、コカインとその代謝物に関する薬物動態パラメータは、コカイン投与の全ての研究日で個々の動物について血清濃度−時間プロフィールを用いて決定された。コンピュータソフトウェアWinNonlin Professional(バージョン4.0.1 Pharsight Corporation,USA)を用いた。具体的には、非コンパートメント分析のためのモデルは、コカインについてはIVボーラスインプット、その代謝物については血管外インプットとともに用いられる。血漿濃度曲線の最終段階における3データ点より少ない場合、最終段階半減期とその半減期に由来するPKパラメータは、そのプロフィールについて計算されなかった。
【0082】
PK/PD分析
AlbuBChE PK/PD関係は、コンピュータソフトウェアWinNonlin Professional(バージョン4.0.1 Pharsight Corporation,USA)を用いて定義された。具体的には、直接的なS字阻害効果Emaxモデルは、コカインAUCによって測定される最大効果(Emax)が、AlbuBChE濃度がゼロとして推定される使用であった。このモデル方程式は、以下の通りに記載することができる:
阻害効果S字Emax、C=Emaxで0、C=Eで∞
E=Emax−(Emax−E0)*(C**Gamma/(C**Gamma+EC50**Gamma))
S字モデルは、2時間の時間点と比較して、48時間の時間点で観察された高い活性により選択された。
【0083】
この分析に使用されるPDパラメータはコカインAUCであった。このモデルで使用されるPKパラメータは、AlbuBChE投与の2、48、96、120、および240時間後のAlbuBChE血漿濃度であった。AlbuBChE濃度がAlbuBChE投与の2時間後に測定されなかったという事実に起因して、投与の3時間後の濃度がこの分析で用いられ、AlbuBChE投与の3時間後のAlbuBChE濃度が、AlbuBChE投与の2時間後のAlbuBChE濃度を反映し得ると想定される。
【0084】
統計的方法
実験群による濃度プロフィールとPKパラメータ値の簡易統計データは、WinNonlinにおける記述的統計関数を用いて計算された。報告されている統計パラメータは、N、平均、SDおよび変動係数率(%CV)である。
【0085】
結果
AlbuBChE濃度プロフィール
AlbuBChE濃度−時間データおよび簡易統計データを表3および4に列挙する。0.2、1または5mg/kgの単回AlbuBChE IM注射後の個々の動物AlbuBChE血清濃度−時間プロフィールを図2に示す。3つのAlbuBChE投与群についての平均血清濃度−時間プロフィールを図3に示す。
【0086】
IM注射後、全ての動物は、測定可能なAlbuBChE濃度を有した。投与群あたりの動物間変動性は、全ての時間点について8.2〜78.4の範囲にある%CVによって示されるように妥当であると考えられる。AlbuBChE血清濃度は投与量の増加に伴って増加した。
【表3−1】

【表3−2】

【表4】

【0087】
コカイン、ベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステルの濃度プロフィール
LC/MS分析は、サル血漿におけるコカイン、ベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステルレベルを分析するために全ての試料について行われた。対照動物において、および0.2、1、または5mg/kg後の平均血漿濃度−時間プロフィールは、それぞれコカイン、ベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステルについて、表5、6、および7、ならびに図4、5、および6に見出すことができる。
【0088】
一般に、コカイン血漿濃度は、AlbuBChE投与の関数として減少し、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加するようである。AlbuBChE投与の240時間後のコカイン濃度は、第1日のコカイン対照群と同じ範囲にあるようである(図7)。これは、AlbuBChEが、0.2、1または5mg/kgのAlbuBChE投与の240時間後に活性でなかったことを示唆する。また、これは、コカイン動力学が、第1日の単回IV投与のコカインと、AlbuBChE投与後の複数回投与のコカインプロフィールとの比較を実施可能にする、カニクイザルにおける時間依存的な動力学を示さないことを指示する。
【0089】
コカイン代謝経路に基づいて期待され得るように(図9)、ベンゾイルエクゴニン血漿濃度は、AlbuBChE投与の関数として減少し、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加するようである。
【0090】
理論的には、エクゴニンメチルエステルの血漿濃度は、AlbuBChE投与後に増加しなければならない(図9)。この増加は、3つ全てのAlbuBChE投与レベルについてのAlbuBChE投与の2時間後に投与されるコカイン投与でのみ明らかであった。エクゴニンメチルエステル血漿濃度は、AlbuBChE投与の48、96、120または240時間後のコカイン投与後に、対照と容易に区別することができなかった。
【表5】

【表6】

【表7】

【0091】
AlbuBChEの薬物動態分析
個々の動物の0.2、1または5mg/kgのAlbuBChE投与の単回IM投与後のAlbuBChE薬物動態パラメータ値および群あたりの記述統計データを表8に見出すことができる。0.2、1または5mg/kgのIM投与後のAlbuBChEについての平均PKパラメータ値を表9に要約する。
【0092】
一般に、投与のIM部位からの吸収は迅速であり、測定可能な濃度が回収された第1の試料(投与の1時間後)で観察された。最大濃度は、0.2および1mg/kg投与レベルについて3時間にて観察された。Tmax値は、5mg/kg投与について僅かに長かった(6時間)。
【0093】
投与量増加に伴って増加させたAlbuBChE暴露
投与量を標準化させてCmaxおよびAUC値は、投与量の関数としての暴露における比例増加よりも多くを示唆する投与量の関数として増加するようである。また、これは、特に1と5mg/kg投与レベル間の投与量の関数として最終排除t1/2の増加を伴われた。この場合、t1/2値はほぼ2倍であった。
【表8】

【表9】

【0094】
コカインおよび代謝物の薬物動態分析
投与群あたりの平均コカイン薬物動態値の概要表を表10に示す。
【0095】
コカイン薬物動態プロフィールは、全ての投与群と時間点について十分に特徴付けられたが、1つの例外は、AlbuBChE投与の2時間後に投与されたコカイン投与についての血漿濃度−時間プロフィールは全ての投与群に対して変動的であった。このようにして、最終排除t1/2は、このコカイン投与の場合、大部分の動物において正確に特徴付けることができなかった。
【0096】
コカインAUC(0−t)は、AlbuBChE投与の関数として減少し、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加するようである。同様に、コカイン全身血漿クリアランスは、AlbuBChE投与の関数として増加し、AlbuBChE投与後の時間の関数として対照値に戻るようである。AlbuBChE投与の240時間後に、コカインAUCおよびクリアランスは、第1日のコカイン対照群と同じ範囲になるようである。
【0097】
3つ全てのAlbuBChE投与レベルについて、コカインクリアランスまたはAUCにおける最大AlbuBChE効果は、投与の48時間後に観察された。効果の持続時間は、AlbuBChE投与レベルに関連付けられた。5mg/kg投与後、コカインAUCとクリアランスにおけるAlbuBChE効果は、投与後の120時間以内は明らかであった。1mg/kg投与で、コカインAUCまたはクリアランスにおけるAlbuBChE効果は、対照または240時間の値と比較して、AlbuBChE投与の96〜120時間後でなおも明らかであり得る。AlbuBChE投与が0.2mg/kgに減少したので、それにより、48時間という効果の持続時間はコカインクリアランスが増加した最後の時間点であった。このデータに基づいて、AlbuBChEの週1回または週2回の投与処方が可能である。
【0098】
図5に観察され得るように、ベンゾイルエクゴニンの濃度−時間プロフィールは、最終排除段階を含まなかった。このようにして、ベンゾイルエクゴニンの薬物動態特徴付けは、AUC(0−t)の特徴付けに限定された。コカイン対照群と比較したAlbuBChE投与量とAlbuBChE投与後の時間の関数としての平均AUC値の概要表を表11に見出すことができる。コカイン代謝経路(図9)と一致して、図11に示されるように、ベンゾイルエクゴニンAUCはAlbuBChE投与の関数として減少したが、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加する。
【0099】
図6において観察され得るように、エクゴニンメチルエステルの濃度−時間プロフィールは平らであり、最終排除段階を含まなかった。このようにエクゴニンメチルエステルの薬物動態特徴付けは行われなかった。理論的には、エクゴニンメチルエステルAUCは、AlbuBChE投与後に増加するべきである(図9)。この増加は、3つ全てのAlbuBChEレベルについてのAlbuBChE投与の2時間後に投与されたコカイン投与でのみ明らかであった。エクゴニンメチルエステルにおけるAlbuBChE効果は、AlbuBChE投与の48、96、120または240時間後のコカイン投与後に対照と容易に区別することができなかった。
【表10】

【表11】

【0100】
PK/PD分析
AlbuBChEの作用機構に基づいて、直接的効果阻害EmaxモデルはAlbuBChEとコカインのPK/PD関係を特徴付けることができることが予測された。
【0101】
この分析に使用されるPKおよびPDデータを表12に示す。直接的なS字阻害効果Emaxモデルから得られた適合を図8に示す。
【0102】
データは、明らかに、AlbuBChE血清濃度とコカイン暴露との間の逆関係を示す。コカイン濃度の50%減少をもたらし得るAlbuBChE血清濃度(EC50)は、約600ng/mLとなるモデルによって推定された。Emax、E、およびガンマ値は、それぞれ12909(分*ng/mL)、1096(分*ng/mL)、および0.708であった。
【表12】

【0103】
動物観察
試験全体で動物を観察した。この試験中に死亡はなく、いずれかの投与量でAlbuBChEの投与と関連した臨床またはケージサイズ観察はなかった。被験物質による前処理なしの1mg/kgの投与量でのコカイン投与は、活動過剰をもたらし、腹式呼吸を含む呼吸数を増加させた。コカインに関連した観察は、0.2〜5mg/kgの範囲のAlbuBChE投与量で被験物質を用いて前処理した後の5日間は観察せず、試験第6日と第11日に戻した。
【0104】
結論
AlbuBChEは、0.2、1または5mg/kgの単回IM投与後のカニクイザルにおいて十分に容認された。
【0105】
投与のIM部位からのAlbuBChE吸収は迅速であった。Tmaxは、0.2と1mg/kgについて3時間、5mg/kg投与について6時間で観察された。AlbuBChE暴露は、投与量の関数として、増幅幅が大きくなるように増加するようである。最終排除t1/2は、1と5mg/kg投与レベル間で31〜62時間増加した。
【0106】
コカインは、第1日の対照動物に、ならびにAlbuBChE投与の2、48、96、120および240時間後に投与された。各コカイン投与後、AlbuBChEの血清レベルの減少に応答して、薬物動態プロフィールを決定するという目的で複数の試料を採取した。コカインAUC(0−t)はAlbuBChE投与量の関数として減少し、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加した。
【0107】
効果の持続期間はAlbuBChE投与レベルに関連していた。コカインAUCおよびクリアランスにおけるAlbuBChE効果は、5mg/kg投与量について120時間、1mg/kg投与量について96〜120時間、0.2mg/kg投与量について48時間まで明らかであった。このデータに基づくと、AlbuBChEの週に1回または2回の投与処方が可能である。
【0108】
カニクイザルにおけるPK/PD関係は、AlbuBChE血清濃度とコカイン暴露との間の逆関係を示すようである。コカイン濃度の50%減少をもたらし得るAlbuBChE血清濃度(EC50)は、約600ng/mLとなる直接的なS字阻害効果Emaxモデルモデルによって推定された。
【0109】
例2
リスザルにおけるAlbuBChE薬物動態薬力学(PK/PD)試験
目的
リスザルに対してAlbuBChEの1回の5mg/kg筋内注射後のAlbuBChE薬物動態と薬力学を評価すること。AlbuBChE薬力学的効果は、対照動物における1mg/kgの投与量、またはAlbuBChE投与の2、72および96時間後のコカインIV投与後に測定された。
【0110】
試験設計
投与レベル:5mg/kgのAlbuBChE投与レベルは、この投与レベルがコカイン暴露の減少に有効であることが見出されたカニクイザルにおける以前の試験に基づいて選択された。1mg/kgのコカインIV投与量は、このような投与が極端な活動過剰を引き起こすことなく、サルにおいて効果をもたらすのに十分であるという文献報告に基づいていた。AlbuBChE投与についての投与のIM経路は、これがヒトへの意図された投与経路であるために選択された。
【表13】

【表14】

【0111】
AlbuBChE薬物動態試料
血液試料(0.4mL)は大腿静脈から回収され、投与前、投与の24、72、96および336時間後に血清分離管(SST)に置かれた(投与の336時間後(14日目)に回収された試料は、免疫原性を評価することが意図された。また、試料はAlbuBChE濃度について分析された。)。室温にて少なくとも1時間、これらの管を維持したが、遠心分離前に4時間を超えることはなかった。試料を遠心分離し、少なくとも200μLの血清を回収し、ドライアイス上に維持し、その後、約−70℃にて保存した。
【0112】
コカイン薬物動態試料
コカイン投与後の毎回、投与の5分と30分で大腿静脈から約0.4mLの全血を回収した。エステラーゼ阻害剤(ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP))を含むKEDTA血液回収管に血液を入れた。これらの管を数回反転し、回収時に氷水上に置いた。回収から45分以内に試料を2〜8℃で遠心分離した。得られた血漿を回収し、血漿の単一の200μL分割量をポリプロピレン管に入れた。血漿試料をドライアイス上で凍結し、約−70℃で保存した。
【0113】
AlbuBChE試料分析
以下の段落は、血清試料におけるAlbuBChE濃度の測定に使用されたELISAに基づくアッセイを簡単に説明する。
【0114】
Immulon 4 HBXプレートは、PBS中1μg/mLにて100ulの抗ヒトBChE mAB 002−01(Abcam ab17246)を用いて、一晩4℃で被覆される。ブロッキングは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2%カゼイン、200μL/ウェル、2時間室温にて行われる。洗浄後、100μLの希釈された血清試料は、標準とともにプレートに添加される。標準は、420〜5.2ng/mLにAlbuBChEの2.6倍の連続希釈により生成した。血清試料および標準は、貯蔵されたカニクイザル血清を含む緩衝液を用いた希釈によって、10%血清で維持される。洗浄ステップは、0.04μg/mLにて100μlの抗HSA mAb−6502−HRPを用いて1時間、検出に先立って行う。100μLのテトラメチルベンジジン基質を用いた発色前にウェルを再度洗浄する。15分後、100μL/ウェルの1N HSOを用いて反応を停止させ、SpectraMaxプレートリーダー上で450/570nmにて読み込んだ。未知の血清試料についての値は、AlbuBChE標準の5パラメータ適合によって生じさせた標準曲線の内挿により計算される。また、投与前および投与後の第14日に回収された血清試料を免疫原性について分析した。
【0115】
AlbuBChE薬物動態およびPK/PD分析
AlbuBChE薬物動態パラメータ値は、個々の動物についての血清濃度−時間プロフィールを用いて決定された。コンピュータソフトウェアWinNonlin Professional(バージョン4.0.1 Pharsight Corporation,USA)を用いた。具体的には、血管外インプットを用いた非コンパートメント分析のためのモデルが適用された。
【0116】
データの限定された量に関わらず、PK/PD関係を特徴付ける試みがなされた。コンピュータソフトウェアWinNonlin Professional(バージョン4.0.1 Pharsight Corporation,USA)を用いた。具体的には、直接的な阻害効果Emaxモデルが用いられ、そこでは、AlbuBChE濃度が0であるときのEmaxが想定された。モデル方程式は以下のように記述することができる。
【0117】
E=Emax*(1−(C/(C+EC50)))
この分析に使用されるPDパラメータは、コカイン投与の5分後のコカイン血漿濃度であった。このモデルで使用されるPKパラメータは、AlbuBChE投与の2、72および96時間後のAlbuBChE血漿濃度であった。AlbuBChE濃度がAlbuBChE投与の2時間後に測定されなかったという事実に起因して、回収された1回目の試料がこの分析(AlbuBChE投与の24時間後)に用いられ、これは、AlbuBChE投与の24時間後のAlbuBChE濃度がAlbuBChE投与の2時間後のAlbuBChE濃度を反映し得ると想定された。この分析に用いられた限定されたデータおよび想定に起因して、このPK/PD分析からのパラメータ値は、概算として眺められる必要がある。
【0118】
結果
AlbuBChE
表15および図12は、5mg/kgのAlbuBChE投与量の単回筋内投与後の3匹の雄性リスザルにおけるAlbuBChE血清濃度−時間プロフィールを与える。表16は、AlbuBChEのリスザル薬物動態パラメータ値を要約する。
【0119】
AlbuBChE最終排除勾配は、0.9より高いRsq値によって示されるように十分に特徴付けられた。また、曲線下面積は、20%未満である外挿された%AUCによって示されるように十分に特徴付けられた。AlbuBChE濃度−時間プロフィールの初期吸収段階は、最初の試料が投与の24時間後に回収されたため、特徴付けられなかった。このようにして、実際のTmaxが3〜6時間で生じるように期待され得るため、報告されたTmaxおよびCmaxは適切である。AlbuBChE暴露は3匹の動物について一致し、レベルの差だけが2週間後に明確に現れた。例えば、3匹の動物についてのAUC値は、%CVが約7%である狭い範囲にあった。AlbuBChE最終排除t1/2は、45.5〜65.5時間の範囲であると推定された(平均半減期56.6時間)。
【表15】

【表16】

【0120】
コカインおよび代謝物
コカインは、対照動物(n=2)における、またはAlbuBChE投与の2、72および96時間(n=3)後の1mg/kgの投与量でIV投与された。生物分析法は、コカイン、ならびにその代謝物の2つ:エクゴニンメチルエステルおよびベンゾイルエクゴニンの血漿濃度を測定した。コカイン代謝経路を図9に示す、エクゴニンメチルエステル代謝物は、ブチリルコリンエステラーゼ酵素を介してコカインから直接形成される。このようにして、この代謝物は、AlbuBChE投与後に増加することが予測され得る。
【0121】
対照およびAlbuBChE処理されたリスザルにおける個々の平均コカイン濃度(ng/mL)対時間(時)データを表17に示す。平均コカイン濃度対時間の概要を図13に示す。コカインの最高濃度が対照動物において観察された。コカインの最低レベルは、対照の約7%である値に達するAlbuBChE投与の2時間後に観察された。コカイン濃度はAlbuBChE投与後の時間の関数として増加し、AlbuBChE投与の96時間後でさえもコカイン濃度はなおも対照動物の60%であった。
【0122】
対照およびAlbuBChE処理されたリスザルにおける個体の平均エクゴニンメチルエステル血漿濃度(ng/mL)対時間(時)データを表18に示す。平均エクゴニンメチルエステル濃度の概要を図14に示す。期待されたように、コカイン投与の5分後のエクゴニンメチルエステル濃度は、対照動物において低かった。その値は、AlbuBChE投与の2時間後に観察された最高濃度で動物を処理したAlbuBChEにおいて約40倍高かった。エクゴニンメチルエステル濃度はAlbuBChE投与後の時間の関数として減少し、AlbuBChE投与の96時間後でさえ、エクゴニンメチルエステル濃度は対照動物におけるよりもなおも高かった。
【0123】
対照およびAlbuBChE処理されたリスザルにおける個々の平均ベンゾイルエクゴニン血漿濃度(ng/mL)対時間(時)データを表19に示す。平均ベンゾイルエクゴニン濃度の概要を図15に示す。例示されるように、コカイン代謝物であるベンゾイルエクゴニンにおけるAlbuBChE効果はあまり顕著ではなかった。
【0124】
図16は、コカイン注射の5分後と30分後に、コカインと、コカイン代謝物であるエクゴニンメチルエステル(EME)およびベンゾイルエクゴニン(BZ)の血液レベルの概要を示す。ビヒクルの投与後の対照コカイン注射と比較して、AlbuBChEコカイン血液レベルの投与の2時間後は、5分と30分の時間点(それぞれF3,7=7.34、p<0.05とF3,7=14.4、p<0.005)の両方で有意に減少した。AlbuBChEコカインレベルの72時間後は、コカインの30分後で対照レベルをなおも有意に下回った。AlbuBChEの効果は、投与96時間後、5分と30分の時間点のいずれも有意でなかった。EMEレベルにおけるAlbuBChEの効果は同じであるが、コカインの効果とは反対方向であった。EMEの血液レベルは、AlbuBChE投与の2時間後で5分と30分の時間の両方で上昇した(F3,7=5.6、p<0.05とF3,7=33.3、p<0.001)。EMEの血液レベルは、30分の時間点について、AlbuBChEの72時間後に有意に上昇したままであった。BZ血液レベルはAlbuBChEの2時間後に僅かに減少しているようであるが、これらの効果は有意でなかった。
【表17】

【表18】

【表19】

【0125】
AlbuBChE PK/PD関係
限定された数の時間点および動物にも関わらず、雄性リスザルにおけるAlbuBChE PK/PD関係を特徴付ける試みがなされた。本分析に用いられたPKおよびPDデータを表20に示す。個々のデータおよび直接的な阻害効果Emaxモデルから得られた適合を図17に示す。データは、AlbuBChE血清濃度とコカインレベルとの間の逆関係を明確に示す。コカイン濃度における50%減少をもたらす可能性があるAlbuBChE血清濃度(EC50)は、約400ng/mLであるモデルによって推定された。Emaxは213ng/mLであった。この分析に用いられる限定されたデータおよび想定に起因して、このPK/PD分析からのパラメータ値は、およその見積もりとして眺められる必要がある。
【表20】

【0126】
# AlbuBChE濃度がAlbuBChE投与の2時間後に測定されなかったという事実に起因して、回収された第1回の試料が分析(AlbuBChE投与の24時間後)において用いられ、AlbuBChE投与の24時間後のAlbuBChE濃度が、AlbuBChE投与の2時間後のAlbuBChE濃度を反映する可能性があるとを想定された。
【0127】
結論
AlbuBChE薬物動態プロフィールは、単回IMの5mg/kgのAlbuBChE投与後の3匹の雄性リスザルにおいて特徴付けられた。暴露における変動の程度は最小であった(約7%)。AlbuBChE最終排除t1/2は、45.5から65.5時間の範囲であると推定された。
【0128】
コカインは、対照動物において(n=2)、またはAlbuBChE投与の2、72および96時間(n=3)後の1mg/kgの投与量でIV投与された。AlbuBChEはコカイン暴露の減少を引き起こした。この効果はAlbuBChE投与の2時間後に最も顕著であった(対照の7%未満)。コカイン暴露は、AlbuBChE投与の96時間後に対照の約60%であった。
【0129】
AlbuBChEの作用機序と一致して、コカインの代謝物であるエクゴニンメチルエステルへの暴露は、AlbuBChE投与の2時間後に約40倍増加し、AlbuBChE投与後の時間の関数として減少した。
【0130】
AlbuBChE効果は、コカイン代謝物のベンゾイルエクゴニンにおいてあまり顕著ではなかった。
【0131】
リスザルにおけるPK/PD関係は、AlbuBChE血清濃度とコカインレベルとの間の逆関係を示すようである。コカイン濃度における50%減少をもたらし得るAlbuBChE血清濃度(EC50)は、約400ng/mLである直接的な阻害効果Emaxモデルによって見積もられた。限定されたデータおよびこの分析において用いられる想定に起因して、このPK/PD分析からのパラメータ値はおよその見積もりとして眺められる必要がある。
【0132】
例3
AlbuBChE:コカイン投与の有無におけるカニクイザルにおける心血管安全性薬理学的試験
目的
3匹の雄性および3匹の雌性カニクイザルにおける筋内(IM)経路によって投与されたAlbuBChEの心血管および呼吸安全性を評価すること。さらに、心血管安全性におけるコカイン(静脈(IV)経路により投与される)、AlbuBChEおよびそれらの組み合わせの効果は、3匹の雄性および3匹の雌性カニクイザルの別の群において評価された。
【0133】
試験設計
試験の開始前に、サルは、テレメトリ送信機および血管アクセスポートを外科的に装着された。以下のCVパラメータを監視した:収縮期圧、拡張期圧、平均動脈圧、平均心拍数および平均心拍数−収縮期圧の積。また、体温変化を監視した。
【0134】
試験群1(3匹の雄と3匹の雌)は、AlbuBChE単独の効果をそのビヒクルと比較して試験するための対照群として使用された。試験第1日目と第4日目(SD)に対照物質のAlbuBChE製剤緩衝液がサルに投与された。製剤緩衝液投与の3時間後、呼吸および心血管(CV)パラメータをそれぞれ記録した。
【0135】
被験物質(15mg/kgのAlbuBChE)の単回IM投与がSD8および11に投与された。AlbuBChE投与の3時間後(AlbuBChEのTmaxに対応する)、CVおよび呼吸パラメータをそれぞれ監視した。
【0136】
CVパラメータにおけるコカイン投与前のAlbuBChEによる前処理の効果が、動物の第2の群(群2)(3匹の雄および3匹の雌)において試験された。第1の基準CVパラメータは、AlbuBChE製剤緩衝液のIM投与、続く3時間後の生理食塩水(コカインビヒクル)の単回IV投与後のSD15において記録された。CVパラメータにおけるコカインの効果はSD18において測定され、その日に、動物は、AlbuBChE製剤緩衝液の単回IM注射、続く3時間後のコカイン(1mg/kg、IV)の単回IV投与を受けた。
【0137】
CVパラメータにおけるコカイン誘導の変化におけるAlbuBChEを用いた前処理の効果をSD22に監視した。CVパラメータは、AlbuBChE(15mg/kg)の単回IM投与、続く3時間後のコカイン(1mg/kg)の単回IV投与の後に記録された(表21参照)。
【0138】
全ての動物は、疾病率、死亡率、損傷、ならびに食物および水の利用可能性について少なくとも1日2回観察された。血圧、心拍数、体温、および心電図(ECG)を含む、被験物質投与に対する生理学的応答を監視した。
【表21】

【0139】
結果
試験終了まで全ての動物が生存していた。
【0140】
試験群1
図18〜26に示されるように、15mg/kg(IM)のAlbuBChEは、記録されたCVパラメータ、およびAlbuBChE製剤緩衝液を用いて決定された基準値と比較して体温のいずれの有意な変化を生じさせなかった。
【0141】
試験群2
コカイン(1.0mg/kg、IV)投与後の2分以内に、平均動脈圧(MAP)は、105mmHgの基準値を上回って約35mmHg上昇させた。図27に示されるように、コカイン投与前の15mg/kgのAlbuBChEを用いた前処理は、最高血圧がAlbuBChEによって減少されただけでなく、この効果の逆転への時間もまた4.5倍(コカインを単独で与えた場合の77分と比較して、コカイン投与前のAlbuBChEによる前処理における17分)に切り詰められたことを示した。
【0142】
コカインの投与は、約3分以内に140の脈拍/分の基準値から240の脈拍/分(70%増加)のピーク値に達する心拍数の急激な増加を引き起こした。この心拍数におけるコカイン誘導の上昇は、約15分間持続し、徐々に消え、コカイン投与の2時間後に基準値に戻った。AlbuBChEによる前処理は、約3分以内に182の脈拍/分のピーク値まで、迅速であるが中程度の30%増加を示す心拍数のコカイン誘導上昇を鈍らせた。図30に示されるように、この心拍数の軽度の増加は、完全に逆転され、コカイン投与のすでに30分後に基準値に戻った。
【0143】
コカイン投与(1.0mg/kg、IV)は、38℃の基準温度と比較して、投与の45分後に38.7℃のピーク値である体温の軽度の段階的な増加をもたらした。図32に示されるように、コカイン投与前のAlbuBChE(15mg/kg、IM)による前処理は、38.3℃の値まで体温をほんの僅かな上昇を引き起こした。
【0144】
例4
AlbuBChE:リスザルにおけるコカイン自己投与試験のコカイン自己投与および回復
方法
対象
体重が0.8〜1.2kgである成熟雄性リスザル(Saimiri sciureus)を対象として用いた。全てのサルは、湿度と温度の調節された室内で個別に収容され、自由に水を利用できるようにした。サルは、任意の実験手法後に、安定した体重を維持するように決定されたある量の食物(Lab Diet 5045,PMI Nutrition International,Richmond,IN;Banana Softies,Bio−Serv,Frenchtown,NJ)を与えられた。新鮮な果実、野菜および環境強化もまた毎日与えられた。動物ケア施設は、AAALACによって完全に公認され、全ての実験は、NIDA国際試験プログラム動物ケアおよび使用委員会によって承認された。
【0145】
コカイン自己投与
3匹のサルは、30μg/kg/inj i.v.コカインを自己投与するように訓練された。自己投与訓練法の詳細は、他に見出すことができる(Justinovaら、2003)。要約すると、サルは、Plexiglas拘束イスに座位で置かれた。このイスを大きな音響室に入れた。拘束イスの前壁には、応答レバーと刺激ライトがあった。緑色のライトは、セッションの始まりを合図した。サルは、コカインのi.v.注射を受けるために、10回の反応(固定比率、FR、10)を行うように訓練された。コカインの注射は、緑色の光を消灯することによって達成され、黄色の刺激ライトが2秒間示される。各々のコカイン注射後、さらに60秒中断された。中断の終わりに、緑色のライトが点灯した。セッションは1時間続いた。時々、コカインに代えて生理食塩水に置換した。安定なコカイン自己投与、および生理食塩水置換後の応答の確実な消滅が達成された後、AlbuBChE(5mg/kg、i.m.)またはそのビヒクル(i.m.)は、自己投与セッション前の2時間に与えられた。次に、自己投与応答は連続して5日間測定された。各薬物試験または生理食塩水の置換後、30μg/kg/injのコカインに対する応答は、少なくとも5日間、再度達成された。回復試験後(以下参照)、自己投与に利用可能なコカインの投与量を10μg/kg/injに低下し、AlbuBChE(5mg/kg、i.m.)の効果を再度決定した。
【0146】
コカイン自己投与の回復
生理食塩水は、30μg/kg/inj i.v.コカインを確実に自己投与しているサルにおいて、コカインに代えて置換された。応答は迅速に減少し、日数全体でその低レベルで維持された。次に、AlbuBChEのビヒクルは、コカイン(0.3mg/kg、i.v.)前の2時間に与えられ、それは、セッションの5分前に与えられ、この場合、生理食塩水は、コカインが自己投与応答を回復するかどうかを決定するために自己投与について利用可能であった。また、同じ投与量のコカインは、48時間および96時間後の自己投与セッション前に与えられた。続いて、AlbuBChE(5mg/kg、i.m.)は、0.3mg/kg i.v.コカインを用いた3回の回復試験の第2順の前の2時間に与えられた。これらの試験後、サルを基準に戻し、この場合、30μg/kg/injコカインが自己投与に利用可能であった。次に、生理食塩水は、再度、コカインに代えて置換され、第2シリーズの回復試験は、0.1mg/kg i.v.コカインが回復セッション前に与えられることを除いて、同じようにして行われた。
【0147】
薬物
AlbuBChEは、30mg/mlの濃度で凍結溶液中のTEVA Pharmacutical(Netanya,Israel)によって供給された。一度融解し、この溶液をビヒクルを用いて15mg/mlに希釈し、次に、0.33ml/kgの溶液でサルに与えた。コカイン(NIDA、メリーランド州ボルティモア)は滅菌生理食塩水中に調製され、自己投与用に0.2mlの体積で与えられた。回復試験用の前処理として与える場合、コカインは0.3ml/kgの体積で与えられた。
【0148】
データ分析
血液レベルデータは、各代謝物と時間点(5分または30分)について別々に分析された。一元配置分散分析(ANOVA)は、対照としてビヒクルで処理されたサルの結果を用いて、フォローアップDunnett検定により行われた。自己投与データは、ビヒクル処理またはAlbuBChE処理のいずれかの後に、反応率または注射について別々について分析された。対照データは、直前の基準条件について最後の3日の平均をとることによって分析に含められた。次に、被験者内ANOVAは、ビヒクルまたはAlbuBChE後の日数を対照と対比させるフォローアップ試験を用いて行われた。回復試験について、二元ANOVAは、対象内因子としてビヒクルまたはAlbuBChE後の時間、および対象間因子としての前処理(ビヒクルまたはAlbuBChE)を用いて、反応率と注射の両方について行われた。フォローアップ対比は、各時間点でビヒクルとAlbuBChEを比較した。
【0149】
結果
30μg/kg/injコカインを自己投与するサルにおいて、AlbuBChEは自己投与を減少させた。図33のパネルは、連続した日数全体での反応率(上段パネル)と注射(下段パネル)を示す。最初の5日は基準応答を示す。次に、生理食塩水は、コカインに代えて置換され、比率(F5,10=3.70、p<0.001)と注射(F5,10=188.7、p<0.001)の両方は、先の基準期間の最後の3日間の平均と比較した場合、置換5日間で有意に減少した。基準までの5日の回復後、サルをビヒクルで処理し、5日間の自己投与訓練を与えた。先行する基準期間の最後の3日の平均と比較すると、ビヒクル処理は注射に効果がなかった(F5,10=2.6、p=0.10)。日数の全体効果は反応率(F5,10=4.6、p<0.05)について観察されたが、フォローアップ対比は、ビヒクル処理後の5日間のいずれにおいても対照からの応答に何らかの有意な変化を示さなかった。ビヒクル処理後、サルは、5mg/kgのAlbuBChEを与えられ、コカイン自己投与は5日間追跡された。先行する基準の最後の3日間の平均からの有意な変化は、反応率(F5,10=4.6、p<0.05)および注射(F5,10=14.1、p<0.001)について観察された。フォローアップ対比は、反応率が処理の1〜4日後に対照とは異なり、注射が処理の1日後と4日後に対照とは有意に異なっていたことを示した。
【0150】
回復試験後(下記参照)、サルは、より低いコカイン投与量(10μg/kg/inj)での自己投与に戻された。維持投与量の減少は、応答率および注射回数を減少させた(図33、右パネル)。基準安定後、サルは、ビヒクル注射を与えられ、自己投与が5日間継続した。反応率および注射は、基準における最後の3日の平均と比較して、ビヒクル注射後に有意に変化しなかった。次に、AlbuBChE(5mg/kg)が与えられ、追加の5日間にコカインの自己投与が継続した。反応率と注射の両方は、AlbuBChE注射後の2時間減少したが、これらの効果は有意に至らなかった。
【0151】
30μg/kg/injコカインに応答しているサルにおいて、コカインから生理食塩水への置換は応答の迅速な減少をもたらした。次に、AlbuBChEビヒクルをi.m.で与えた。2、48および96時間後、0.3mg/kgコカインi.v.を生理食塩水の置換セッション前の5分に与えた。コカインの投与は、図34の左パネルにおける黒色のバーに示されるように、コカイン自己投与応答の回復をもたらした。5mg/kgのAlbuBChEをi.m.で与え、2時間、48時間および96時間後に、0.3mg/kgコカインi.v.を生理食塩水の置換セッション直前に与えたとき、応答の回復は、反応率(F1,4=16.9、p<0.05)と注射(F1,4=34.9、p<0.001)の両方について2時間の時間点で有意にブロックされた。続いて、回復投与として0.1mg/kgコカインと同じようにしてサルを試験した。低コカイン投与量への回復はより変動的である一方で、結果の類似パターンが観察され、5mg/kgのAlbuBChEの効果が再度、反応(F1,4=15.2、p<0.05)と注射(F1,4=129.7、p<0.001)の両方について2時間で有意であった。
【0152】
0.6mg/kgメタンフェタミンと生理食塩水とを区別するように訓練された4匹のサルにおいて、コカインは、0.3mg/kgの投与量でメタンフェタミンと十分に置換した(図35、上段パネル)。5mg/kgのAlbuBChEをコカイン投与−効果機能の決定前の2時間に与えた場合、0.3mg/kgのコカインは、メタンフェタミンのきっかけに一般化できなかった。部分置換(約70%)は、より高いコカイン投与量(1.0mg/kg)で観察された。AlbuBChEの24時間後、コカインの0.3mg/kgの投与量は、なおも、メタンフェタミンきっかけ(約70%)に完全には一般化できなかったが、ここで、1.0mg/kgはメタンフェタミンに十分に一般化された。AlbuBChE後の48時間以内、0.3mg/kgの投与量は、メタンフェタミンきっかけに十分に一般化された。メタンフェタミン投与量−効果機能の決定前の2時間でのAlbuBChEを用いた前処理は、メタンフェタミンきっかけに対してメタンフェタミンの一般化に影響を及ぼさなかった(図36、上段パネル)。AlbuBChEを用いた前処理は、いずれかの処理条件下で応答率に影響を及ぼさなかった(図35と36、下段パネル)。
【0153】
サルは、コカインを自己投与するように訓練され、また、全4回のAlbuBChE注射を受けた回復手法において試験された。血液は、第1、第2および第4のAlbuBChE注射後のAlbuBChE抗体の決定のために採取された。最初の2回の注射後、抗体レベルは、検出レベルを下回った(力価レベルは20であった)。しかしながら、4回目の注射後、抗体レベルは上昇するように見えた。2匹のサルにおいて、抗体力価は、検出限界を上回って僅かに上昇した(21と43)。3番目のサルについて、抗体レベルは明らかに上昇した(643)。また、このサルについて血液中のAlbuBChEの濃度は、AlbuBChE注射の1週間後に減少した(27ng/ml対他の2匹のサルについては55と53ng/ml)。
【0154】
検討
これらの試験の結果は、明らかに、BChEの修飾形態を用いた前処理が、非ヒト霊長類におけるコカインの行動的効果を遮断することにおいて有効であることを示す。この試験は、げっ歯類においてこの化合物を用いた以前の試験を広げ、この場合、AlbuBChEは、ラットにおけるコカインの毒性効果を遮断し、またコカイン自己投与のコカイン誘導回復をブロックすることができた(Brimijoinら、2008)。ここで、5mg/kgのAlbuBChEを用いた前処理は、30μg/kg/injコカインを自己投与するサルにおける反応率と注射の両方を減少させた。自己投与消滅後のコカイン自己投与の回復について試験されたこれらの同じサルにおいて、5mg/kgのAlbuBChEは、0.3mg/kgまたは0.1mg/kgコカインのいずれかによる応答の回復をブロックすることができる。自己投与に利用可能な投与量を10μg/kg/injに減少した場合、AlbuBChEは再び、受け入れた反応率と注射数を減少するように見えたが、10μg/kg/injコカインを用いたこれらの効果は、より変動しやすく、有意性に至らなかった。最後に、AlbuBChEの5mg/kg投与量は、メタンフェタミン弁別刺激へのコカインの一般化を遮断することができたが、この効果はコカインに特異的であり、それは、AlbuBChEがメタンフェタミンの弁別刺激効果を遮断することができなかったためである。
【0155】
30μg/kg/injコカイン自己投与に対して試験した場合、AlbuBChEの効果は、3日後でもなお明らかであったが、有効性は減少していた。しかしながら、回復および区別に関して、AlbuBChEの効果は、処理の48時間後に明らかではなかった。AlbuBChEの半減期は約56時間であることが示されたが、コカイン代謝における効果は、AlbuBChE投与の72時間後でなおも明らかであり、そのため、これらの手法におけるある効果は72時間で明らかであることが期待され得た。多数の因子は、72時間で回復またはコカイン一般化における減少を見るためにこの失敗に貢献し得た。自己投与中に、少ないコカインの投与量は、長期間中で与えられた。他の手法では、相対的に大きなコカイン投与量は、ボーラス注射として投与された。他の条件下よりも自己投与条件下で脳に到達する前に、AlbuBChEがコカインを代謝することは容易であり得る。AlbuBChEは自己投与下でコカインを代謝する場合、その効果は、消滅条件を設定することである。また、消滅からの行動回復は、自己投与におけるAlbuBChE処理の効果を引き延ばす場合がある。回復試験では、応答は、以前に回復と関連付けられた生理食塩水と刺激を生じさせた。コカイン注射後にサルが応答を回復した場合、それらのサルはなおも応答のために生理食塩水を受け入れがたが、それらは、以前にコカインと関連付けられた刺激を受け入れた。また、この刺激の提示は、回復条件(Spealmaら、1999)下での連続した応答を促進した可能性があり、AlbuBChEの効果のいくつかをマスクしている。
【0156】
AlbuBChEの効果は、ほぼ確実に、コカインの代謝におけるその効果に関連した。AlbuBChEの投与は、少なくとも72時間、血液中のコカイン量を減少させた。EMEラベルがまたAlbuBChEの少なくとも72時間後に増加したという事実は、AlbuBChEが天然のBChE(Jones、1984)に類似してコカインを代謝していたことを示唆する。コカイン代謝のこの時間経過は、サルが30μg/kg/injコカインを用いて強化された自己投与実験について観察されたものと類似している。さらに、AlbuBChEは、弁別試験における反応率において効果がなく、これは、血液中のコカインの存在とは独立した自発的反応における非特異的な効果を生じさせないことを示唆する。
【0157】
4回目の注射後の1匹のサルにおけるAlbuBChE抗体の相対的に高いレベルの観察は、AlbuBChEが複数回の注射を通じてその有効性のいくつかを失った可能性があることを示す。その1匹の特定のサルの結果は、試験された他の2匹のサルとは異なっているようには見えなかったが、抗体の観察は、AlbuBChEのいくつかがコカインを代謝するその能力を減少し得た抗体によって結合されたことを示唆する。更なる試験は、抗体産生が霊長類においてどのように広まるか、および観察された抗体のレベルがコカインの代謝におけるAlbuBChEの有効性を減少させるのに十分であるか否かを決定するために必要となる。
【0158】
コカインは、DAWN検査における救急外来言及と監察医報告書の両方に示され続ける。このようにして、コカインの毒性効果を妨げることができた薬物は、コカインを乱用している患者の救急外来処置に付属して有用であり得る。コカインを代謝する薬物を用いる利点は、コカインに特異的であり、最小の副作用を有するべきであるということである。しかしながら、患者がコカインを用いていることを確認することが必要であり、それは、AlbuBChEが、毒性効果の類似の薬効範囲を生じ得る、アンフェタミンなどの他の乱用薬物によって生じる毒性に対して有効ではないためである。
【0159】
コカインの毒性効果の処置に加えて、AlbuBChEはまた、コカイン乱用のための他の処置の付属物として有用であり得た。コカインを摂取する、AlbuBChEが十分な血液レベルであるヒトは、コカインの主観的効果の減少を経験することが期待された。現在の試験に照らして、これは、より少ないコカイン自己投与、コカイン自己投与の回復の減少、コカインによるメタンフェタミン弁別刺激に一般化する障害に翻訳する。コカイン乱用への再発は治療における課題を残しているため、コカインの主観的効果の減少は、再発を減少させるように期待された。使用を再発する処置を受けている者について、血液中のAlbuBChEの存在は、コカインの大部分を代謝し、連続したコカイン使用の可能性を潜在的に減少させる。これは、再発が期待される期間全体でAlbuBChEを摂取し続けるように個体に要求する。したがって、AlbuBChEに対する抗体の発生をどのように妨げるか、およびコカインを代謝するその能力にどのようにした達成し得るかを決定することは重要である。
【0160】
結論として、AlbuBChEを用いたリスザルの前処理は、コカインボーラス処置後の血液中のコカイン量を減少させることができた。AlbuBChEを用いた前処理は、10および30μg/kg/injコカインを自己投与するように訓練されたサルにおいて、コカイン自己投与を減少させることができた。AlbuBChEは、2つの異なる投与量のコカインについて、コカイン自己投与のコカイン誘導回復をブロックすることができた。最後に、AlbuBChEはまた、リスザルにおけるコカインの弁別効果を遮断することができた。AlbuBChEが、コカインの行動的効果の3つの異なるモデルにおけるコカインの行動的影響を遮断し得たという見解は、コカイン乱用の潜在的な治療として有効であるべきであることを示唆する。
【0161】
例5
コカインレクリエーションボランティアにおけるAlbuBChE投与後のコカインの薬物動態および薬力学パラメータを評価するためのコカインの複数回投与後のAlbuBChEの二重盲検、プラセボ対照、単回漸増投与量
目的
AlbuBChE投与に続く複数回投与後のコカイン血液レベルを決定すること、およびAlbuBChE投与に続く複数回投与後のコカインの行動、心理的、および安全性効果を決定すること。AlbuBChEの薬物動態、安全性、および忍容性を評価すること。
【0162】
試験設計
これは、AlbuBChEによる処理と負の対照としてのプラセボを比較するための5つの治療並列群である活性およびプラセボ調節された二重盲検無作為試験である。
【0163】
コカインを用いていた40人の治療を求めない健常成人は、5つの処置群に無作為に割り当てられる。各群は8人の対象を含む。
【0164】
A群(低投与量):対象は50mgのAlbuBChEの単回筋内注射を受ける。
【0165】
B群(中投与量):対象は100mgのAlbuBChEの単回筋内注射を受ける。
【0166】
C群(高中投与量):対象は150mgのAlbuBChEの単回筋内注射を受ける。
【0167】
D群(高投与量):対象は300mgのAlbuBChEの単回筋内注射を受ける。
【0168】
E群(負の対象):対象は、プラセボの単回筋内注射を受ける。
【0169】
試験は、2〜3日空けて、集団あたり8対象の5集団に分けられる。
【0170】
入院段階
対象は、第11日の朝まで、第1日の前の晩(チェックイン;第−1日)から入院したままである。対象は、第18±2日にフォローアップ外来のための病院に戻る。第−1日:−1日の朝、40mgのコカイン静脈投与が投与される。
【0171】
第1日:AlbuBChEまたはプラセボの単回筋内投与が投与される。
【0172】
第1、4、8および10日:第1日に、AlbuBChEのCmax(投与の3時間後)、AlbuBChE/プラセボ投与の対応する時間で第4日(72時間後)、第8日(168時間後)、および第10日(216時間後)の朝に、40mgのコカインの筋内チャレンジ投与を投与する。
【0173】
生理食塩水注入は、コカイン投与の各日に含まれ(コカイン注入を用いて無作為化され、別々に2時間で投与される)、単盲検された注入タイプ順を有する。
【0174】
試験薬物投与
計画されたAlbuBChE投与はA〜E群について上記される通りである。各対象は、筋内(IM)注射によってAlbuBChEまたはプラセボの単回投与を受け入れる。40mgの塩酸コカインは、1mg/mlの生理食塩水溶液として調製され、一定速度の注入ポンプを用いて、1mg/秒の速度で前腕静脈内に注射された。
【0175】
試験持続時間
各対象についての試験期間(スクリーニングから治験終了(EOS)来院)は約11〜12週である。
【0176】
試験集団
娯楽コカイン使用者である18〜55歳の合計40人の男性対象。投与後、任意の理由で試験を中止する対象を置き換えない。
【0177】
主な包含/排除基準
包含基準
1.18〜55歳(両端を含む)の男性ボランティア;
2.体格指数(BMI)18〜33kg/m、少なくとも50kgの体重;
3.健常、臨床的に重大な病歴なし、身体検査、心電図(ECG)、バイタルサインおよびスクリーニングの実験結果によって決定される;
4.喫煙、鼻腔内またはi.v.経路によるコカインの現在の使用;スクリーニング前の少なくとも月1回、過去1年に6回、生涯にわたって20回として定義される。現在の使用は、入院期間前(すなわち、スクリーニングまたはスクリーニングと第1日の間)の陽性尿薬物試験(UDS)を通じて確認される;
5.試験の性質と、それに参加することのいずれかの危険を理解することができる;
6.調査員と十分にやりとりすることができ、全試験に参加し、その要求に従うことができる;および
7.情報と同意書を読み、調査員またはその代理人と試験について検討し、インフォームドコンセントにサインする機会をもった後、参加するための承諾書を与えようとする意欲。
【0178】
排除基準
1.DSM−IV−TR(精神障害の診断と統計の手引−最新バージョン)基準に従ったアルコールもしくは薬物依存の現在または過去、あるいはリハビリテーションプログラムへの参加(禁煙を除く);
2.重度のアレルギーまたはアナフィラキシ−反応の病歴;
3.天然もしくは組み換えブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、ヒト血清アルブミン(HSA)、または製剤の任意の他の成分に対する既知のアレルギーまたは過剰な感受性;
4.任意の臨床的に重要な(主任調査員によって決定される)心臓病、内分泌疾患、血液病、肝臓病、免疫疾患、代謝病、泌尿器疾患、肺疾患、神経疾患、皮膚病、精神疾患、腎疾患、または他の主な疾患の病歴;
5.任意の悪性疾患の病歴;
6.スクリーニング前の2カ月以内、またはスクリーニングとチェックインとの間の任意の時間における大外傷または外科手術;
7.スクリーニング前の2週間以内、またはスクリーニングとチェックインとの間の任意の時間における急性感染;
8.主任調査員によって決定される、スクリーニングまたはチェックイン外来での臨床的に重要な異常ECG所見;
9.スクリーニングまたはチェックイン時の収縮期90〜140mmHgまたは拡張期45〜90mmHg(少なくとも5分の休息後に測定される)の範囲外の血圧。血圧は、5〜10分の間隔で仰臥位において再試験されてもよい。血圧上昇は、収縮期または拡張期圧のいずれかが3つの評価後に規定の制限を超えている場合に維持されると考えられ、したがって、患者は無作為化されなくてもよい;
10.スクリーニングまたはチェックイン時の心拍数<40拍/分(少なくとも5分の休息後に測定される);
11.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型または2型の既知の病歴、またはスクリーニング時のそれについての陽性試験結果;
12.B型肝炎表面抗原(HBsAg)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の既知の病歴、またはそれについてのスクリーニング時の陽性試験結果;
13.投与前の2週間以内または投与前の5半減期以内の、いずれか長いほうの、処方薬または市販(OTC)薬(パラセタモール(アセトアミノフェン)、≦2g/日またはイブプロフェン、≦650mg/日)、試験薬、ビタミン、または植物性生薬の使用;
14.投与前の3カ月以内または投与前の5半減期以内の、いずれか長いほうの、新規化学物質または処方薬の別の臨床試験における参加;
15.投与前の2カ月以内の400mLを超える血液の喪失(例えば、血液ドナーとして)、またはチェックイン前の3カ月以内に任意の血液、血漿、または血小板輸血を受け、または試験中もしくは試験後の3カ月以内に寄贈を計画している;
16.対象は、スクリーニング前の1カ月に1日平均20本を超えるたばこを消費するか、または少なくとも6時間、喫煙(任意のニコチン含有物質の使用)を控えることができない(それにより、全ての投与前と投与後/注入に関連した評価は中断なしに完了し得る);
17.アンフェタミン、コカイン(第1日のみ)、オピオイド、カンナビノイド、およびベンゾジアゼピンについて陽性UDS。長期半減期により、一定または減少する限り受け入れることができるベンゾジアゼピンおよびカンナビノイドについて陽性結果。他の薬物について陽性UDSは、調査員/被験者の裁量でスケジュール変更をもたらす;陽性呼気アルコール検査もまた調査員/被験者の裁量でスケジュール変更をもたらす;
18.農薬または任意の他の有機リン酸エステル類への暴露(例えば、農業労働者);
19.一般開業医または調査員の意見において、本試験に参加できない、または首尾よく完了できない。これは、ボランティアが
a.精神的にもしくは法律的に無能力であるか、または任意の理由で同意を与えることができない;
b.行政上もしくは法律上の決定による保護にある、または管理下の仮釈放、またはサニタリウムもしくは社会的機関に認められている;
c.緊急の場合接触できない;
d.臨床試験プロトコールに協調もしくは適合できないか、または任意の他の理由で適切でない、ためである。
【0179】
安全性、忍容性、および免疫原性分析
安全性
血圧、心拍数(PDパラメータの部分)および体温を含むバイタルサインを測定する。身体検査、臨床検査、および12リードECGを行い、12リードECGは、各コカイン注射後、注射前、注射の30分後と2時間後、および最初の注射の8時間後に行った。遠隔測定は、各コカイン注射直後の4時間行った。
【0180】
BChEおよびアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性についての試料を回収するが、必ずしも全てをアッセイするということではない。BChEおよびAChEの活性は、内因性酵素についての中和アッセイとして機能する、Ellmanアッセイに基づく比色法を用いて決定される。サンプリングの時間点は、スクリーニング時、投与前、ならびに投与の168時間後(第8日)、240時間後(第11日)およびフォローアップ(第18±2日)である。Ellmanアッセイについての血液試験は、(関連する場合)コカインの投与前に行われる。
【0181】
コカインの静脈内注射は以下のいずれか:
1.収縮期BPが180mmHgもしくはそれを超える;
2.拡張期BPが100mmHGもしくはそれを超える;
3.HRが130bpmもしくはそれを超える;または
4.神経刺激薬毒性の行動的発現(動揺、精神病、または試験手順に協力することができない)
が起こる場合に即座に終了される。
【0182】
対象は、以下のいずれか:
1.急性胸痛もしくは息切れ;
2.収縮期BPが180mmHgもしくはそれを超える;
3.拡張期BPが120mmHgもしくはそれを超える;
4.HRが[220−年齢×0.85]bpmもしくはそれを超える(すなわち、20歳の対象について170bpmを超える);
5.神経学的または精神医学的事象(例えば、パニックもしくは精神病);
6.臨床的に重大なECG異常(心臓ブロック、3以上の持続的異所性心室拍動、もしくは頻脈性不整脈);
7.更なるコカイン注入についての停止基準は、適切な時間枠内で許容される制限に戻らない(例えば30分);
8.更なるコカイン注入についての停止基準は、プロトコール内で2回目について満たされる;または
9.対象に危険性を提示するのに十分な頻度であるPIの臨床的判断における任意の条件
が起こる場合にIVコカイン注射を忍容しなかったと考えられる。
【0183】
AlbuBChEのIM注射の忍容性
注射部位での局所的忍容性と疼痛(視覚的アナログスケール(VAS)によって評価される)は、投与後の最初24時間以内に評価される。時間点は、AlbuBChE投与の20分後、1、2、4、8および24時間後である。
【0184】
有害事象(AE)は本試験を通じて監視される。
【0185】
免疫原性(IG)
免疫原性レベルの試料を回収するが、必ずしも全てをアッセイしなくてもよい。HSA、ヒトブチリルコリンエステラーゼ(hBChE)とAlbuBChEに対する抗体の力価を評価する。サンプリング時間点は、投与前、ならびに投与の168時間後(第8日)、240時間後(第11日)、およびフォローアップ(第18±2日)である。IGアッセイについて血液試験は、(関連する場合)コカインの投与前に行われる。
【0186】
薬物動態変数とサンプリング
AlbuBChEの血清濃度を決定するために、血液試料は、投与前と投与後のいくつかの時間点で回収される。データが容認する場合、以下の薬物動態(PK)パラメータを計算する:
max 観察される最高血清濃度
maxmaxに到達する時間
AUC(0−t) 0時間から最後の定量化できる濃度の時間までの血清濃度−時間曲線下面積
AUC(0−∞)無限大まで外挿された血清濃度−時間曲線下面積
AUCextlastから無限大までの外挿によるAUC(0−∞)の割合
/f 最終段階中の分布の見掛けの体積
CL/f 見掛けの全生体クリアランス
λ 片対数濃度対時間曲線の最終段階における線形回帰によって推定される最終排除速度定数
1/2 見掛けの時間排除半減期
MRT 平均滞留時間
更なるパラメータは、必要と判断する場合に計算されてもよい。血清におけるAlbuBChEのPKについてのサンプリング時間点は以下の通りである:投与前、ならびに投与の20分後、40分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後、18時間後、24時間後(第2日)、36時間後(第2日)、48時間後(第3日)、72時間後(第4日)、96時間後(第5日)、120時間後(第6日)、144時間後(第7日)、168時間後(第8日)、192時間後(第9日)、および216時間後(第10日)。適切な場合、AlbuBChEのPKについてのサンプリング時間点は、コカイン注入直前に取られる。
【0187】
薬力学変数およびサンプリング
血液試料は、コカインの投与前、およびコカインの各投与後のいくつかの時間点で回収された。インビボにおけるコカインレベル(ならびにその代謝物であるベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステル)は、有効なLC/MS−MS法によって決定され、AlbuBChEの血液レベルに相関する。コカイン暴露(Cmax、tmax、AUC(0−t)、AUC(0−∞)およびV)およびクリアランス(CL、λ、t1/2)を決定する。各コカイン投与後の血清のコカインレベルのPDサンプリング時間点は以下の通りである:投与前、投与の2、5、10、15、30、45、60、90、および120分後。
【0188】
血圧と心拍数は、注入前、ならびに注入の2、5、10、15、30、45、60、90、120、180、240、および300分後に測定される。
【0189】
行動的効果および心理的効果(主観的効果)
主観的効果は、コンピュータ計算された(21CFR11有効)視覚的アナログスケール(VAS)を用いて測定される。主観的効果の回収についての時間点は、コカイン血液試料についての時間点と合致する。以下のセットのVASは、薬物嗜好性、再度の薬物摂取、全薬物嗜好性、ハイ、良い効果、悪い効果、焦りを感じること、コカインへの願望、不安感、過剰な刺激、および任意の薬物効果である。
【0190】
各コカイン投与後のVASパラメータのPDサンプリング時間点は以下の通りである:投与前、投与の2、5、10、15、30、45、60、および120分後。
【0191】
採尿
尿は、第1日、第4日および第8日におけるコカイン投与後の52時間の間隔で代謝調査のために回収される。回収範囲は、(i)コカイン投与直後、続いて(ii)3時間の2つの間隔、および(iii)6時間の9つの間隔の回収間隔である。
【0192】
統計学的分析
薬物動態
PKパラメータは、各投与レベル(対象数、平均、SD、幾何平均(AUCおよびCmaxについて)、変動係数、最小、中央値、および最大)について血清濃度から誘導される。パワーモデルを用いた投与比率性(AlbuBChEのみについて)は、Cmax、AUC0−t、およびAUC0−∞について評価される。
【0193】
薬力学
PD効果の時間的経過(主観的および客観的)を決定する。PDパラメータは、Emax(最大効果)、TEmax(Emaxまでの時間)、効果曲線下の時間平均領域(TA_AUE)、初期時間点についての部分AUE、および累積AUEを含む。
【0194】
安全性
安全性データは、必要に応じて、各処理群について、記述統計学および基準からの変化を用いて決定される。AEは、国際医薬用語集(MedDRA)の最新版を用いて符号化され、器官別分類および好ましい用語によって要約される。
【0195】
生物分析
AlbuBChE濃度および抗体を決定するための凍結血清試料は、分析のためにドライアイスで搬送される。コカインおよび代謝レベルの分析は、有効な方法を用いて行われる。
【0196】
結果
安全性、認容性および免疫原性
AlbuBChEはヒトに投与するのには安全である。50mg〜300mgの筋内(IM)AlbuBChE投与量を用いた場合、有意な安全性の問題は観察されない。AlbuBChEは十分に認容的であり、受け入れられない副作用はない。IM注射部位での局所的認容性および疼痛は受け入れることができ、有意な有害事象はない。単回投与としての50mg〜300mgのAlbuBChEの投与は、有意な免疫反応を引き起こさない。HSA、ヒトブチリルコリンエステラーゼ(hBChE)およびAlbuBChEに対する抗体の力価は全て、許容限度内である。
【0197】
薬物動態変数
AlbuBChEの観察された最大血清濃度、CmaxはAlbuBChEの投与量の増加に伴って増加する。投与のIM部位からのAlbuBChE吸収は急速であり、Cmaxに到達する時間が短い。AUC(0−t)とAUC(0−∞)は、AlbuBChEレベルが有意であり、臨床的に有用な時間量で持続することを示す。V/f値は、大部分のAlbuBChEが最終段階の循環血液中に存在することを示す。CL/f値は、許容速度で生体から消え去ることを示す。適切な最終排除半減期値は、治療レベル維持するためにAlbuBChEの週1回または週2回の投与を示す。AlbuBChEの平均滞留時間は、臨床的に許容制限内である。
【0198】
薬力学変数
コカインの観察された最大血清濃度であるCmaxは、AlbuBChEの投与量の増加に伴って減少した。Cmaxレベルは、コカインの40mgの静脈内投与後に非常に急速に達成し、tmaxは短い。コカイン、ならびにその代謝物であるベンゾイルエクゴニンおよびエクゴニンメチルエステルのAUC(0−t)およびAUC(0−∞)は、コカインが、プラセボを受けている対象よりも、コカイン暴露前にAlbuBChEの投与を受けている対象においてより迅速に代謝されることを示す。コカインAUC(0−t)は、AlbuBChE投与量の関数として減少し、AlbuBChE投与後の時間の関数として増加する。V値は、大部分のコカインは最終段階の循環血液中に存在することを示す。CL値は、プラセボと比較して、AlbuBChEの投与後のより急速なコカインクリアランスを示し、クリアランス速度は、AlbuBChE投与後の時間が増すのにつれて減少する。同様に、見掛けの最終排除半減期値は、プラセボと比較して、AlbuBChEの投与後により迅速なコカインクリアランスを示し、クリアランス速度は、AlbuBChE投与後の時間が増すのにつれて減少する。
【0199】
行動効果および心理効果
AlbuBChEを投与された対象は、プラセボを投与された対象と比較して、視覚的アナログスケール(VAS)に関する有意に異なる結果を報告する。AlbuBChE投与はコカイン連鎖を減少させる。AlbuBChE投与は、再度、コカインを摂取したいという願望を減少させる。AlbuBChE投与は全薬物連鎖を減少させる。AlbuBChE投与は、コカイン暴露と関連した「ハイ」を減少させる。AlbuBChE投与は、コカイン暴露後の「良い影響」の主観的感情を減少させる。AlbuBChE投与は、コカイン暴露に関連した「ラッシュ」の主観的感情を減少させる。AlbuBChE投与は、コカインへの願望を減少させる。AlbuBChE投与は、コカイン暴露後の不安の感情を減少させる。AlbuBChE投与は、コカイン暴露後の過度に刺激されるという主観的感情を減少させる。AlbuBChE投与は、「任意の薬物効果」の報告を減少させる。
【0200】
コカイン暴露前のAlbuBChE投与された対象は、プラセボ投与された対象と比較して、AlbuBChE投与後の有意に異なる「悪い影響」を報告しない。AlbuBChEは、コカイン暴露後の「悪い影響」の感情を減少させる。
【0201】
考察
本例は、AlbuBChE投与の後でのコカインの複数回投与後のコカインの血液レベルを決定し、入院設定におけるAlbuBChE投与の後での複数回投与後のコカインの行動効果、心理効果および安全効果を決定する。
【0202】
外来設定におけるコカイン乱用および依存の成功した処置の一番の目安は、治療中および治療後の自制期間である。自制期間、例えば、自制の2または3週間の促進は、成功した治療を示す。第2の結果判定法は、コカインレベルまたはコカイン摂取量の減少、コカインの非使用日数の全比率、成功した対象の比率、連続したコカインの非使用日数の最大数、例えば、コカイン選択的重症度評価(CCSA)によって評価されるコカイン依存の重症度を含む。
【0203】
以前の試験は、AlbuBChEがラットにおいて約8時間の半減期を有することを見出し、AlbuBChEの潜在的な半減期がヒトにおいて1日から数日の範囲であると推測されている(Brimijoinら、2008;Gaoら 2009)。Gaoらは、ラットにおける単量体AlbuBChEの観察された半減期は、天然の四量体BChEのものよりも短いことに気付き、AlbuBChEの半減期はポリエチレングリコシル化などの翻訳後修飾によって増加し得ることを推測した。
【0204】
本例は、筋内注射によって投与された場合のAlbuBChEの半減期が投与量に依存し、半減期値が投与量の増加に伴って増加することを決定する。特定の用量での半減期値は、ポリエチレングリコシル化などの翻訳後修飾の必要なく、週1回または週2回の投与スケジュールを可能にする。
【0205】
また、以前の試験は、ラットへのAlbuBChEの静脈内投与が、血圧の小幅な上昇および軽度の昏睡を引き起こし得ることを報告している(Brimijoinら 2008)。対照的に、血圧の有意な増加は、筋内注射によって、AlbuBChEがヒトに投与された場合に観察されず、昏睡もかなりの数の対象において報告されない。
【0206】
AlbuBChEを投与されたヒト対象は、コカイン禁断症状の有意な増加を報告しない。対照的に、コカインを使用したいという願望は、AlbuBChE投与後に有意に減少し、AlbuBChEの単回投与後の1週間以内は有意に低下したままである。
【0207】
本例の所見は、特定の用量でのヒトへのAlbuBChEの筋内投与が、いずれの受け入れられない副作用をもたらさず、特定の投与が、コカイン暴露の生物学的影響の成功した治療を可能にすることを示す。
【0208】
参考文献
Brimijoin, S., Gao, Y., Anker, J. J., Gliddon, L. A., LaFleur, D., Shah, R., Zhao, Q., Singh, M., and Carroll, M. E., “A Cocaine Hydrolase Engineered from Human Butyrylcholinesterase Selectively Blocks Cocaine Toxicity and Reinstatement of Drug Seeking in Rats”. Neuropsychopharmacology, 33: 2715-2725, 2008.
Brogan, W.C. 3rd, Kemp, P.M., Bost, R.O., Glamann, D.B., Lange, R.A., Hillis, L.D., “Collection and handling of clinical blood samples to assure the accurate measurement of cocaine concentration,” J. Anal. Toxicol. 1992 May-Jun;16(3):152-4.
Davies, B. and Morris, T., “Physiological parameters in laboratory animals and humans,” Pharm. Res., 10: 1093-1095, 1993.
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, American Psychiatric Publishing, Inc.; 4th edition (June 2000)
“Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,” U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER), July 2005.
Pan, Y., Gao, D., Yang, W., Cho, H., Yahg, G., Tai, H., Zhan, C., “Computational redesign of human butyrylcholinesterase for anticocaine medication,” PNAS, 102(46):16656-61, 2005.
Sun, H., Shen, M., Pang, Y., Lockridge, O., Brimijoin, S., “Cocaine Metabolism Accelerated by a Re-Engineered Human Butyrylcholinesterase,” Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 302(2): 710-16, 2002.
US Patent Application Publication No. 2008/0194481, published August 14, 2008 (U.S. Serial No. 11/932,823, filed October 31, 2007).
Gao, et al. (2009) “An Albumin-Bytyrylcholinesterase for Cocaine Toxicity and Addiction: Catalytic and Pharmacokinetic Properties,” NIH Public Access Author Manuscript, published in final edited form as Chem. Biol. Interact. 2008 September 25; 175(1-3): 83-87.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響を軽減するための方法であって、
(a)配列:
EDDIIIATKNGKVRGMNLTVFGGTVTAFLGIPYAQPPLGRLRFKKPQSLTKWSDIWNATKYANSCCQNIDQSFPGFHGSEMWNPNTDLSEDCLYLNVWIPAPKPKNATVLIWIYGGGFQTGTSSLHVYDGKFLARVERVIVVSMNYRVGALGFLALPGNPEAPGNMGLFDQQLALQWVQKNIAAFGGNPKSVTLFGESSGAASVSLHLLSPGSHSLFTRAILQSGSFNAPWAVTSLYEARNRTLNLAKLTGCSRENETEIIKCLRNKDPQEILLNEAFVVPYGTPLGVNFGPTVDGDFLTDMPDILLELGQFKKTQILVGVNKDEGTWFLVGGAPGFSKDNNSIITRKEFQEGLKIFFPGVSEFGKESILFHYTDWVDDQRPENYREALGDVVGDYNFICPALEFTKKFSEWGNNAFFYYFEHRSSKLPWPEWMGVMHGYEIEFVFGLPLERRDNYTKAEEILSRSIVKRWANFAKYGNPNETQNNSTSWPVFKSTEQKYLTLNTESTRIMTKLRAQQCRFWTSFFPKV(配列番号1)、
を含む突然変異ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)ポリペプチドと、
(b)配列:
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)
を含むヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチドと、
(c)配列MRPTWAWWLFLVLLLALWAPARG(配列番号3)を含むシグナルペプチドと
を含むある量の融合タンパク質を霊長類に投与することを含み、
前記融合タンパク質の量は、霊長類におけるコカイン暴露の生物学的影響の軽減を引き起こすために有効である方法。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、配列:
MRPTWAWWLFLVLLLALWAPARGEDDIIIATKNGKVRGMNLTVFGGTVTAFLGIPYAQPPLGRLRFKKPQSLTKWSDIWNATKYANSCCQNIDQSFPGFHGSEMWNPNTDLSEDCLYLNVWIPAPKPKNATVLIWIYGGGFQTGTSSLHVYDGKFLARVERVIVVSMNYRVGALGFLALPGNPEAPGNMGLFDQQLALQWVQKNIAAFGGNPKSVTLFGESSGAASVSLHLLSPGSHSLFTRAILQSGSFNAPWAVTSLYEARNRTLNLAKLTGCSRENETEIIKCLRNKDPQEILLNEAFVVPYGTPLGVNFGPTVDGDFLTDMPDILLELGQFKKTQILVGVNKDEGTWFLVGGAPGFSKDNNSIITRKEFQEGLKIFFPGVSEFGKESILFHYTDWVDDQRPENYREALGDVVGDYNFICPALEFTKKFSEWGNNAFFYYFEHRSSKLPWPEWMGVMHGYEIEFVFGLPLERRDNYTKAEEILSRSIVKRWANFAKYGNPNETQNNSTSWPVFKSTEQKYLTLNTESTRIMTKLRAQQCRFWTSFFPKVDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号4)
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記融合タンパク質がコカイン暴露前に投与される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記融合タンパク質がコカイン暴露前の1日以内に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記融合タンパク質がコカイン暴露前の216時間以内に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記融合タンパク質がコカイン暴露後に投与される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記融合タンパク質がコカイン暴露後の1時間以内に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コカイン暴露が単回コカイン暴露である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コカイン暴露が反復コカイン暴露である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反復コカイン暴露がコカイン乱用またはコカイン依存である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反復コカイン暴露が、12カ月の期間において少なくとも6回の単回コカイン暴露を含む、請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記反復コカイン暴露が、霊長類の生涯において少なくとも20回の単回コカイン暴露を含む、請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的影響が霊長類におけるコカイン過剰投与によって引き起こされ、前記軽減が生物学的影響を治療または予防する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的影響が血圧上昇である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記血圧上昇の持続時間が60〜90%低減する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記血圧上昇の持続時間が約78%低減する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的影響が心拍数または体温の上昇である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記軽減の程度が45%〜70%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記軽減の程度が57%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的影響が霊長類におけるコカイン要求行動である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記コカイン要求行動がコカイン暴露後のコカイン自制期間中に起こる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記コカイン要求行動が再発後に起こる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記再発の2時間前の融合タンパク質の投与が、再発直後の霊長類によるコカイン要求行動を軽減する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記コカイン暴露の2時間前の融合タンパク質の投与が、霊長類によるコカイン要求行動の50%〜100%の低減をもたらす、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記コカイン要求行動の軽減が、融合タンパク質の投与後の4日以内に観察される、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記融合タンパク質の投与が、投与しない場合よりも霊長類における総コカイン暴露の低下をもたらす、請求項20〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記コカイン要求行動の軽減が、2週〜3週のコカイン自制期間をもたらす、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記コカイン要求行動の軽減が、投与しない場合よりも、霊長類がコカインに暴露されない日数の割合を大きくする、請求項20〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記コカイン要求行動の軽減が、投与しない場合よりも、霊長類がコカインに暴露されない連続日数を大きくする、請求項20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記コカイン要求行動の軽減が、コカイン選択的重度評価(CSSA)または精神障害の診断と統計の手引IV(DSM−IV)によって評価される、コカイン依存または乱用の重度の低下をもたらす、請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記融合タンパク質の有効量は、霊長類の血清コカインレベルを1mg/kg静脈内コカイン投与の約30分以内に約0mg/mlまで減少させる量である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記融合タンパク質の投与が、霊長類の血清コカインレベルを、1mg/kg静脈内コカイン投与の約5分以内に、投与しない場合の血清コカインレベルの12%未満まで減少させる、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記融合タンパク質の投与が、霊長類の血清コカインレベルを、1mg/kg静脈内コカイン投与の約5分以内に、投与しない場合の血清コカインレベルの7%まで減少させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記融合タンパク質が週1回または週2回投与される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記融合タンパク質が筋内注射または皮下注射によって投与される、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記融合タンパク質が、10mMリン酸ナトリウムと、200mMマンニトールと、60mMトレハロースと、0.01%(w/v)ポリソルベート80を含むpH7.2の製剤緩衝液中にある、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記融合タンパク質が少なくとも30mg/mlの濃度で製剤に存在する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的影響の軽減が、前記融合タンパク質の投与後の72時間以内に観察される、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記霊長類がヒトである、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記コカイン暴露が、10mg〜60mgの単回コカイン暴露であるかまたは反復コカイン暴露であり、前記反復コカイン暴露の各単回コカイン暴露が10mg〜60mgである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記融合タンパク質の有効量は、ヒト血清コカインレベルを40mgの静脈内コカイン投与の約30分以内に約0ng/mlまで減少させる量である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
融合タンパク質の有効量が0.06mg/kg〜5mg/kgである、請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記融合タンパク質の有効量が0.06mg/kg、0.3mg/kg、1.6mg/kg、または4.8mg/kgである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記融合タンパク質の有効量が50mg〜300mgである、請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記融合タンパク質の有効量が50mg、100mg、150mg、または300mgである、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公表番号】特表2013−512959(P2013−512959A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543204(P2012−543204)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059292
【国際公開番号】WO2011/071926
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】