説明

コジェネレーションシステム

【課題】貯湯槽内の温水を暖房に利用しても、貯湯槽内の成層状態を維持することが出来るコジェネレーションシステムの提案。
【解決手段】発電装置(1)と、貯湯槽(2)と、暖房負荷に連通する回路(La)を循環する熱媒体と貯湯槽内の温水とが熱交換を行なう第一の熱交換器(5)と、貯湯槽(2)から第一の熱交換器(5)に向かう第一の温水ラインと、第一の熱交換器(5)を流過した温水が流れる第二の温水ラインを備え、該第二の温水ラインには、温水を一時的に貯蔵するタンク(4)と、該タンク(4)から出た温水を加圧する第一のポンプ(P1)とが介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気及び熱を併給するコジェネレーションシステム(電熱併給システム)に関し、より詳細には、電熱併給が可能な発電装置(例えば燃料電池やガスエンジン発電機等)からの排熱を貯湯槽に蓄熱し、暖房負荷や給湯負荷に対して貯湯タンク内の温水を供給して対処するタイプのコジェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、電熱併給が可能な発電装置である燃料電池ユニット1を備え、該燃料電池ユニット1からの排熱を利用した給湯暖房装置100Jを示している。図6において、給湯暖房装置100Jは、燃料電池ユニット1、貯湯槽2、暖房熱交換器5、補助熱源機3A、3Bを備えている。
燃料電池ユニット1には、燃料電池の冷却を目的として熱交換器7が装備されている。
貯湯槽2の上部2aと底部2bとは冷却水ラインLcによって連通しており、冷却水ラインLcには熱交換器7及び冷却水ポンプPcが介装されており、冷却水が循環している。
【0003】
貯湯槽2の底部2bには上水ラインLjが連通しており、貯湯槽2内の温水量が減少した場合に上水が補填されるように構成されている。
貯湯槽2の上部2aには、補助熱源機3Bを介装した給湯用ラインLbが設けられ、図示しない給湯栓に連通している。さらに、貯湯槽上部2aの2箇所には、貯湯槽2の温水を循環させるための温水ラインLhの両端が接続されている。
温水ラインLhには、貯湯槽2の出口側に温水ポンプPhが介装され、貯湯槽2の入口側には暖房熱交換器5が介装されており、暖房熱交換器5では温水ラインLhを流れる温水と暖房負荷とが熱交換をしている。
【0004】
温水ラインLhにおいて、温水ポンプPhと暖房熱交換器5との間の領域には分岐点Bと合流点Gとが形成されており、分岐点Bと合流点GとはバイパスラインLbによって接続されている。
バイパスラインLbには開閉弁Vbが介装されている。そしてバイパスラインLbは、温水ラインLhに介装された開閉弁Vhと補助熱源機3Aとをバイパスしている。
暖房熱交換器5には暖房回路Laが連通しており、暖房回路Laは、図示しない暖房熱負荷と暖房熱交換器5とを接続しており、その内部を暖房熱媒が循環している。そして、暖房熱交換器5において、温水ラインLhを流過する温水から暖房回路Laを循環する暖房熱媒に熱が投与されるように構成されている。
暖房回路Laにおいて、暖房熱交換器5の出口側には暖房ポンプPaが介装され、暖房ポンプPaの吐出側には暖房熱同弁Vaが介装されている。
【0005】
図6の給湯暖房装置100Jでは、暖房運転や、風呂の追い焚き運転を行なうに際して、暖房熱交換器5で暖房熱媒と熱交換して降温した温水は、温水ラインLhを流れて貯湯槽2の上方領域へ直接戻される様に構成されている。
ここで、貯湯槽2の内部は、成層状態、すなわち、貯湯槽2内において、垂直方向上方の温水温度が高温で且つ垂直方向下方の温水が低温であり、貯湯槽2内の上下方向について直線的且つ均一な温水温度勾配が形成されている状態となっている。
【0006】
しかし、降温した温水が貯湯槽2の上方領域へ直接戻されると、貯湯槽2における成層状態が崩れてしまう。
さらに、暖房熱交換器5で暖房熱媒と熱交換して降温した温水において、その降温の幅は、暖房負荷の大小に応じても変化する。
すなわち、図6の給湯暖房装置100Jでは、不均一の温度で且つ低温の温水が貯湯槽2の上方領域へ直接戻されてしまうので、貯湯槽2内における温度成層状態が崩れてしまい、蓄熱効率が低下する。
貯湯槽2における蓄熱量Qは、貯湯槽2内の温度差に比例し、成層状態にある貯湯槽2内では温度差は大きい。しかし、成層状態が崩れると、貯湯槽2内で降温の温水も低温の温水も均一に混合されてしまい、温度差が減少する。その結果、成層状態が崩れると、蓄熱量Qも減少し、蓄熱効率が低下するのである。
【0007】
一方、暖房熱交換器5で暖房熱媒と熱交換して降温した温水を貯湯槽2の底部に戻すと、当該温水は貯湯槽2下方領域の温水よりも高温であるため、やはり成層状態が崩れてしまう。それに加えて、貯湯槽2下方領域における温水温度が高くなると、貯湯槽2下方領域における温水は燃料電池ユニット1の冷却水として用いられるため、燃料電池ユニット1が過熱してしまう恐れがある。
【0008】
その他の従来技術として、給湯温度を安定化するため、熱源機で加熱された温水を貯湯タンクの上部に戻すための配管系を備えた技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、貯湯タンク内の温水を暖房負荷に利用した場合に常に熱源機で加熱して貯湯タンクに戻すことになるので、暖房時において常時熱源機を作動することになり、熱源機で多大なエネルギーを消費するので、省エネルギーにならないという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−309531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、貯湯槽内の温水を暖房に利用しても、貯湯槽内の成層状態を維持することが出来るコジェネレーションシステムの提案を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコジェネレーションシステムは、
電熱併給が可能な発電装置(1:例えば燃料電池やガスエンジン発電機等)と、
該発電装置(1)で発生した熱(排熱)を蓄熱するための貯湯槽(2)と、
暖房負荷に連通する回路(暖房回路La)を循環する熱媒体と前記貯湯槽内の温水とが熱交換を行なう第一の熱交換器(暖房熱交換器5)と、
前記貯湯槽(2)から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かう第一の温水ライン(温水ラインLhにおいて、ラインLh1の貯湯槽2から暖房熱交換器5までの間の領域と、ラインLh5とにより構成される)と、
前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)を流過した温水が流れる第二の温水ライン(温水ラインLhにおいて、ラインLh1の暖房熱交換器5から暖房戻りタンク4までの間の領域と、ラインLh2と、ラインLh3と、ラインLh4により構成される)を備え、
該第二の温水ラインには、温水を一時的に貯蔵するタンク(暖房戻りタンク4)と、該タンク(暖房戻りタンク4)から出た温水を加圧する第一のポンプ(暖房循環ポンプP1)とが介装され、
前記第二の温水ラインは、第一のポンプ(暖房循環ポンプP1)の吐出側(における分岐点B1)で、前記発電装置(1)を冷却する第二の熱交換器(6)を有する温水ライン(Lh2)と、前記貯湯槽内の温水を前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)側へ吐出する第二のポンプ(P2)の吐出側の前記第一の温水ラインに連通する分岐ライン(Lh3)とに分岐しており、
前記第二の熱交換器(6)を有する温水ライン(Lh2)には流量制御弁(V1)が介装され、該流量制御弁(V1)よりも温水の流れ方向下流で、前記貯湯槽(2)の下方から供給された冷却水を第三の熱交換器(7)に供給する冷却水ライン(Lhc)と(合流点G1で)合流して(ラインLh4として)前記貯湯槽(2)の上方に戻ることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
本発明において、
前記タンク(暖房戻りタンク4)内の温水温度(Tt)を計測する第一の温度センサ(St1)と、
前記発電装置(1)を冷却する前記第二の熱交換器(6)で加熱された後の冷却水(温水)温度(Tb)を計測する第二の温度センサ(St2)と、
制御装置(コントローラ10)を備え、
該制御装置(コントローラ10)は、前記発電装置(1)の発熱量(Qex:例えば、発電出力を計測して演算)と、前記第一の温度センサ(St1)で計測された前記タンク(暖房戻りタンク4)内の温水温度(Tt)と、前記第二の温度センサ(St2)で計測された前記第二の熱交換器(6)で加熱された後の冷却水(温水)温度(Tb)と、前記第一のポンプ(暖房循環ポンプP1)の吐出流量qtに基づいて、前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)から戻った温水を、前記発電装置(1)を冷却する前記第二の熱交換器(6)に送られる量と、再び前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かって送り出される量とに分配制御する機能を有しているのが好ましい(請求項2)。
【0013】
係る本発明(請求項2の発明)において、
前記第一の温水ラインは、補助熱源機(3A)を経由するライン(Lh1)と前記補助熱源機(3A)を経由しないライン(Lh5)に(分岐点B2で)分岐しており、
該分岐点(B2)と前記貯湯槽(2)との間の領域における温水温度(T2)を計測する第三の温度センサ(St3)を有しており、
前記制御装置(10)は、前記第三の温度センサ(St3)で計測された温水温度(T2)が設定温度(暖房設定温度)よりも低温であれば前記貯湯槽(2)の上方から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かう温水を前記補助熱源機(3A)を経由する前記ライン(Lh1)に流過させて前記補助熱源機(3A)を作動する機能と、
前記第三の温度センサ(St3)で計測された温水温度(T2)が設定温度(暖房設定温度)以上の高温であれば前記貯湯槽(2)の上方から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かう温水を前記補助熱源機(3A)を経由しない前記ライン(Lh5)に流過させて前記補助熱源機(3A)を作動させない機能を有しているのが好ましい(請求項3)。
ここで、前記設定温度(暖房設定温度)は、前記貯湯槽(2)から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に送られる温水の温度であって、暖房運転時に前記補助熱源機(3A)により当該温水の加熱を行なうべきであると判断される温度の上限値を意味している。
【0014】
また本発明(請求項2、請求項3の発明)において、
前記冷却水ライン(Lhc)には第三のポンプ(排熱循環ポンプP3)が介装されており、
前記冷却水ライン(Lhc)の前記貯湯槽(2)と前記第三のポンプ(排熱循環ポンプP3)との間の領域には温水冷却装置(8:例えば冷却塔やラジエータ)が介装され、
前記貯湯槽(2)内の温水温度(T1:例えば、貯湯槽最下方の温水温度)を計測する第四の温度センサ(St4)を有しており、
前記制御装置(コントローラ10)は、前記発電装置(1)が作動している場合に前記発電装置(1)の発熱量に対応して(例えば発電出力を計測して)前記第三のポンプ(排熱循環ポンプP3)を作動し、前記第四の温度センサ(St4)で計測された前記貯湯槽(2)内の温水温度(T1)が設定値(貯湯設定温度Th)以上の高温の場合には前記温水冷却装置(8:例えば冷却塔やラジエータ)を作動する機能を有しているのが好ましい(請求項4)。
ここで、設定値(貯湯設定温度Th)は、前記貯湯槽(2)内の温水温度(T1:例えば、貯湯槽の最下方の温水温度)がその温度(Th)以上である場合には、前記貯湯槽(2)内の温水を前記発電装置(図示の実施形態では燃料電池ユニット1)に冷却水として供給するのが妥当ではない(高温である)という温度である。
【0015】
上述した本発明のコジェネレーションシステム(請求項2のコジェネレーションシステム)の制御方法は、前記発電装置(1)の発熱量(Qex:例えば、発電出力を計測して演算)と、前記第一の温度センサ(St1)で計測された前記タンク(暖房戻りタンク4)内の温水温度(Tt)と、前記第二の温度センサ(St2)で計測された前記第二の熱交換器(6)で加熱された後の冷却水(温水)温度(Tb)と、前記第一のポンプ(暖房循環ポンプP1)の吐出流量qtに基づいて、前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)から戻った温水を、前記発電装置(1)を冷却する前記第二の熱交換器(6)に送られる量と、再び前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かって送り出される量とに分配制御する工程を実行するのが好ましい。
【0016】
また、本発明のコジェネレーションシステム(請求項3のコジェネレーションシステム)の制御方法は、上述した工程(分配制御する工程)に加えて、前記第三の温度センサ(St3)で計測された温水温度(T2)が設定温度(暖房設定温度)よりも低温であれば前記貯湯槽(2)の上方から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かう温水を前記補助熱源機(3A)を経由する前記ライン(Lh1)に流過させて前記補助熱源機(3A)を作動する工程(S5〜S8)と、前記第三の温度センサ(St3)で計測された温水温度(T2)が設定温度(暖房設定温度)以上の高温であれば前記貯湯槽(2)の上方から前記第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かう温水を前記補助熱源機(3A)を経由しない前記ライン(Lh5)に流過させて前記補助熱源機(3A)を作動させない工程(S9〜S12)を有しているのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のコジェネレーションシステム(請求項4のコジェネレーションシステム)の制御方法は、前記発電装置(1)が作動している場合に前記発電装置(1)の発熱量に対応して(例えば発電出力を計測して)前記第三のポンプ(排熱循環ポンプP3)を作動する工程(S34)と、前記第四の温度センサ(St4)で計測された前記貯湯槽(2)内の温水温度(T1)が設定値(貯湯設定温度Th)以上の高温の場合には前記温水冷却装置(例えば冷却塔やラジエータ8)を作動する工程(S37)とを有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上述する構成を具備する本発明によれば、暖房運転時において、貯湯槽(2)から送り出された温水は、第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に送られて、暖房負荷に連通する回路(暖房回路La)を循環する熱媒体に保有する熱量を投入して降温するが、当該降温した温水は、従来技術のように貯湯槽(2)に直接戻されることはなく、タンク(暖房戻りタンク4)に一旦貯蔵される。
そのため、暖房熱交換器(5)から戻った温水が、その温度が低下した状態で直接貯湯槽(2)上方に戻されることは防止され、貯湯槽(2)内の成層状態(貯湯槽内の温水において、垂直方向上方の温水温度が高温で且つ垂直方向下方の温水が低温であり、直線的且つ均一な温水温度勾配が形成されている状態)が破壊されてしまうことはない。そのため、貯湯槽(2)における温度差が保持され、蓄熱効率が高い状態が維持され、暖房需要及び/又は給湯需要に応えることと、燃料電池ユニット(1)を冷却する機能を発揮することを同時に充足させることが出来る。
【0019】
そして本発明によれば、タンク(暖房戻りタンク4)に貯蔵された温水は、該タンク(4)から出た後に二方向へ分岐され、一方は発電装置(1)と熱交換を行なう第二の熱交換器(6)に送られ、他方は、再び第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かって送り出される。
発電装置(1)と熱交換を行なう第二の熱交換器(6)に供給された温水は、発電装置(1)で発生する熱(例えば、燃料電池の排熱)が投入されて昇温する。そして、当該温水(発電装置で発生する熱が投入された温水)は、温度が高い状態で貯湯槽(2)の上方に戻るので、貯湯槽内の成層状態は保持される。
また、タンク(暖房戻りタンク4)に貯蔵された温水であって、発電装置(1)と熱交換を行なう第二の熱交換器(6)には供給されなかった温水は、分岐ライン(Lh3)を流れ、貯湯槽(2)に戻らずに再び第一の熱交換器(暖房熱交換器)に向かって送り出されるので、降温した温水が貯湯槽内の成層状態を崩してしまうことが防止される。
【0020】
ここで、発電装置(1)が停止している間に暖房需要があり、貯湯槽内の温水が第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に供給された場合には、発電装置(1)が停止しているため第一の熱交換器(暖房熱交換器5)で降温した温水を発電装置側に供給しても昇温せず、発電装置側に供給された温水を、貯湯槽(2)の上方に戻しても、貯湯槽(2)の成層状態を崩してしまう。
これに対して本発明において流量制御弁(V1)を閉鎖すれば、低温の温水が貯湯槽(2)に流れ込むのを防止して、以って、貯湯槽(2)の成層状態を保つことが出来る。
【0021】
本発明において、制御装置(コントローラ10)を設け、発電装置(1)の発熱量(Qex)と、第一の温度センサ(St1)で計測されたタンク(暖房戻りタンク4)内の温水温度(Tt)と、第二の温度センサ(St2)で計測された第二の熱交換器(6)で加熱された後の冷却水(温水)温度(Tb)と、第一のポンプ(暖房循環ポンプP1)の吐出流量qtに基づいて、第一の熱交換器(暖房熱交換器5)から戻った温水から、発電装置(1)を冷却する第二の熱交換器(6)に送られる量と、再び第一の熱交換器(暖房熱交換器5)に向かって送り出される量とを分配制御する様に構成すれば(請求項2)、コジェネレーションシステム(100)の運転状態に対応して、適正な量の温水が第二の熱交換器(6)に送られ、或いは、再び暖房熱交換器(5)に向かって送り出され、適正な運転状態が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における暖房運転の制御を示すフローチャートである。
【図3】図2における流量分配制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における貯湯運転の制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における給湯運転の制御を示すフローチャートである。
【図6】従来技術を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示すコジェネレーションシステムは、電熱併給が可能な発電装置である燃料電池ユニット1と、貯湯槽2と、補助熱源機3A、3Bと、暖房戻りタンク4と、制御装置であるコントローラ10とを有している。また、コジェネレーションシステム100は、温水ラインLhと、冷却水ラインLhcと、暖房回路Laと、給湯ラインLbとを備えている。
ここで、貯湯槽2の上部には、第一の合流点G1及び温水ラインLh4を介して、燃料電池ユニット1で加熱された温水が流入している。そして、貯湯槽2の底部には上水ラインLjが連通しており、給湯で減少した貯湯槽2内の温水湯を上水によって補填出来るように構成されている。
【0024】
符号Lhによって包括的に示されている温水ラインは、ラインLh1〜ラインLh5から構成されている。
ラインLh1は、貯湯槽2の上部と暖房戻りタンク4とを連通している。ラインLh1には、貯湯槽2の出口側から、暖房熱源ポンプ(第二のポンプ)P2、第三の開閉弁V3、熱源機3A、暖房熱交換器5が介装されており、暖房戻りタンク4に連通している。
ラインLh1において、暖房熱源ポンプP2と第三の開閉弁V3との間の領域には、暖房熱源ポンプP2に近い側に第二の合流点G2が設けられ、開閉弁V3に近い側には第二の分岐点B2が設けられている。またラインLh1において、熱源機3Aと暖房熱交換器5との間の領域には、第三の合流点G3が設けられている。
ここで、温水ラインLhにおいて、ラインLh1の貯湯槽2から暖房熱交換器5までの間の領域と、ラインLh5とにより、上述した「第一の温水ライン」が構成される。また、温水ラインLhにおいて、ラインLh1の暖房熱交換器5から暖房戻りタンク4までの間の領域と、ラインLh2と、ラインLh3と、ラインLh4により、「第二の温水ライン」が構成される。
【0025】
貯湯槽2から温水ラインLh1に流出した温水は、必要に応じて補助熱源機3Aによって加熱昇温され、温水ラインLh1を流れる温水が保有する熱量は、暖房熱交換器5において暖房回路Laを流れる暖房熱媒に投与される。
暖房回路Laは図示しない暖房負荷に連通しており、その内部を循環する暖房熱媒により、図示しない暖房負荷に熱を供給している。
暖房回路Laにおいて、暖房熱交換器5から図示しない暖房負荷に向かう領域(暖房回路Laにおいて「暖房往」に向かうライン)には、第四のポンプ(暖房ポンプ)P4と、開閉弁(暖房熱動弁)Vaを介装している。
【0026】
温水ラインLh1を流れる温水は、暖房熱交換器5で熱量を投与して降温した後、暖房戻りタンク4に送られて貯留される。
暖房戻りタンク4の「出」側には温水ラインLh2が連通している。
【0027】
ラインLh2は、燃料電池ユニット1を経由して、暖房戻りタンク4と第一の合流点G1とを連通している。
ラインLh2において、燃料戻りタンク5と燃料電池ユニット1との間の領域(燃料戻りタンク5と燃料電池ユニット1内の第二の熱交換器6との間の領域)に暖房循環ポンプ(第一のポンプ)P1が介装され、暖房循環ポンプP1と燃料電池ユニット1との間の領域(暖房循環ポンプP1と燃料電池ユニット1内の第二の熱交換器6との間の領域)には第一の分岐点B1が設けられている。
第一の分岐点B1において、温水ラインLh2から分岐ラインLh3が分岐しており、分岐ラインLh3は第二の合流点G2でラインLh1に合流している。
図1では、分岐ラインLh3には流量調整弁V2が介装されているが、流量調整弁V2は省略可能である。
【0028】
ラインLh2は、燃料電池ユニット1内における第二の熱交換器6を有しており、第二の熱交換器6と合流点G1との間の領域に流量制御弁V1を介装している。第二の熱交換器6では、ラインLh2を流れる水(降温した温水)によって、燃料電池ユニット1を冷却している。
ここで、暖房循環ポンプP1の吐出量qtは、分岐点B1で燃料電池ユニット1(の熱交換器6)側に流れる流量Q3と、分岐ラインLh3に流れる流量Qv2とに分配される。また、暖房循環ポンプP1の吸入量は、熱源ポンプP2の吐出量と分岐ラインLh3の流量Qv2とを合計したものに等しい。
なお、流量に関しては後述する。
【0029】
ラインLh4は、第一の合流点G1と貯湯槽2の上部とを連通している。
冷却水ラインLhcは、貯湯槽2の底部から、燃料電池ユニット1における第三の熱交換器7を経由して、合流点G1に連通している。冷却水ラインLhcには、貯湯槽2側の領域に温水冷却装置であるラジエータ8が介装され、燃料電池ユニット1側には排熱循環ポンプ(第三のポンプ)P3が介装されている。
【0030】
第三の熱交換器7では、冷却水ラインLhcを流過する冷却水によって、燃料電池ユニットを冷却している。冷却水ラインLhcのラジエータ8は、貯湯槽2下方領域における温水温度が所定値以上になった場合に、ラインLhcを流過する冷却水を降温するように構成されている。
【0031】
ラインLh5は、ラインLh1における第二の分岐点B2から分岐して、第三の合流点G3でラインLh1と合流しており、補助熱源機3Aを介装したラインLh1をバイパスしている。
そしてラインLh5には、第四の開閉弁V4が介装されている。
【0032】
給湯ラインLbは、図示しない給湯設備の給湯栓と貯湯槽2の上部とを連通している。そして給湯ラインLbには、補助熱源機3Bが介装されている。
給湯ラインLbを流れる温水温度、或いは貯湯槽2上方領域における温水温度が給湯設定温度以下の場合には、補助熱源機3Bを作動して、給湯ラインLbを流れる温水温度を昇温する様に構成されている。
【0033】
暖房戻りタンク4の底部には温度センサSt1が設けられており、温度センサSt1は、コントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。ここで、温度センサSt1で計測した暖房戻りタンク4内の水温を「Tt」とする。
温水ラインLh2における燃料電池ユニット1側には温度センサSt2が介装されており、温度センサSt2はコントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。温度センサSt2で計測した温水ラインLh2を流れる水の温度(燃料電池ユニット1出口側における水温)を「Tb」とする。
【0034】
温水ラインLh1における合流点G2と分岐点B2の間の領域には温度センサSt3が介装されており、温度センサSt3はコントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。温度センサSt3で計測した温水温度(ポンプP2における吐出側水温)を「T2」とする。
貯湯槽2において、その深さ方向には、均等のピッチで複数の温度センサが配置されており、複数の温度センサはコントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。図1において、貯湯槽2の最下方の温水温度T1を計測する温度センサは符号St4で示されており、貯湯槽2の最上方の温水温度Tnを計測する温度センサは符号St7で示されている。換言すれば、図1において、温度センサSt4で計測された温水温度であって、貯湯槽2の下方領域における温水温度が、符合「T1」で示されている。そして、温度センサSt7で計測される温水温度であって、貯湯槽2の上方領域における温水温度が、符号「Tn」で示されている。
【0035】
暖房回路Laにおいて、暖房熱交換器5の出口側には温度センサSt5が介装されており、温度センサSt5はコントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。温度センサSt5で計測された暖房熱媒温度は、符号「Td」で示されている。
冷却水ラインLhcにおける燃料電池ユニット1の出口側には、温度センサSt6が介装されており、温度センサSt6はコントローラ10と出力信号ラインSiによって接続されている。
【0036】
図1において、暖房循環ポンプP1、暖房熱源ポンプP2、排熱循環ポンプP3、暖房ポンプP4、流量制御弁V1、V2、開閉弁V3、V4、暖房熱動弁Va及びラジエータ8は、制御ラインSoによって、コントローラ10と接続されており、コントローラ10からの制御信号を受信して作動する様に構成されている。
【0037】
暖房熱源ポンプP2の吐出流量をQ2、分岐ラインLh3を流れる温水流量をQv2、暖房循環ポンプP1の吐出流量をqtとすれば、暖房循環ポンプP1の吐出流量と吸込流量とは等しく、暖房循環ポンプP1の吸込側の流量はQ2とQv2との合計となるので、
qt=Q2+Qv2
∴Qv2=qt−Q2
従って、流量調整弁V2は省略しても、暖房熱源ポンプP2の吐出流量Q2と暖房循環ポンプP1の吐出流量qtとにより、分岐ラインLh3を流れる温水流量をQv2は定まる。
【0038】
図1で示すコジェネレーションシステム100において、貯湯槽2内の温水が保有する熱量を、暖房熱交換器5を介して暖房回路La側に投入して暖房運転を行なう場合の制御について、主として図2を参照して説明する。
【0039】
図2のステップS1では、暖房運転を行なうに当たって、暖房熱動弁Vaを開放する。そして、ステップS2において、暖房ポンプP4を作動させる。
ステップS3では、温度センサSt3によって計測された貯湯槽2の出口温水温度T2を確認する。そしてステップS4において、貯湯槽2の出口温水温度T2の値が、暖房設定温度より低いか否かを判断する。
貯湯槽2の出口温度T2が暖房設定温度より低ければ(ステップS4がYES)ステップS5に進み、暖房設定温度以上であれば(ステップS4がNO)ステップS9まで進む。
【0040】
ここで、ステップS4における「暖房設定温度」とは、貯湯槽2から暖房熱交換器5側に送られる温水の温度であって、暖房運転時に補助熱源機3Aにより当該温水の加熱を行なうべきであると判断される温度の上限値を意味している。
【0041】
ステップS5(貯湯槽2の出口温度T2が暖房設定温度より低温:ステップS4がYES)では、開閉弁V3を開放し、開閉弁V4を閉鎖する。これにより、貯湯槽2から温水ラインLh1に流出した温水は、全量が補助熱源機3A側を流れる。
ステップS6においては、流量制御弁V1を開放して(流量弁V2を設けた場合には、当該弁V2も開放して)、暖房循環ポンプP1を作動させる。
ステップS7では、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを制御する。それと共に、流量制御弁V1における開度制御を行ない、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを、ラインLh2の流量とラインLh3の流量Qv2を分配する流量分配制御が行なわれる。係る流量分配制御の詳細については、図3を参照して後述する。
ステップS8では、補助熱源機3Aを作動させ、ステップS13に進む。
【0042】
一方、ステップS9(貯湯槽2の出口温度T2が暖房設定温度以上の高温:ステップS4がNO)では、開閉弁V3を閉鎖し、開閉弁V4を開放する。これにより、貯湯槽2から温水ラインLh1に流出した温水は、全量が補助熱源機3A側をバイパスする。
ステップS10において、流量制御弁V1を開放して(流量弁V2を設けた場合にはV2も開放して)、暖房循環ポンプP1を作動する。
ステップS11では、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを制御する。そして、流量制御弁V1における開度制御を行ない、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを、ラインLh2の流量とラインLh3の流量Qv2を分配する流量分配制御が行なわれる。ステップS11の流量分配制御の詳細についても、図3を参照して後述する。
ステップS12では補助熱源機3Aを停止しており、ステップS13に進む。
【0043】
ステップS13では、暖房回路Laを循環する熱媒体温度Td(暖房往温度Td)が所定温度(例えば、60℃或いは80℃)となる様に、必要な制御(図2のステップS13では「暖房往温度Td制御」)が行なわれる。
ステップS13における「暖房往温度Td制御」は、補助熱源機3Aが「ON」となっている場合(貯湯槽2の出口温度T2が暖房設定温度より低温で、ステップS4がYESの場合)には、貯湯槽2から暖房熱交換器5側に送られる温水の温度(T2)と、当該温水の流量と、補助熱源機3Aにおける加熱量とを適宜制御することにより行なわれる。
一方、補助熱源機3Aが「OFF」となっている場合(貯湯槽2の出口温度T2が暖房設定温度以上の高温で、ステップS4がNOの場合)には、ステップS13における「暖房往温度Td制御」は、貯湯槽2から暖房熱交換器5側に送られる温水の温度T2と、当該温水の流量とを適宜制御することにより行なわれる。
ここで、貯湯槽2から暖房熱交換器5側に送られる温水の流量Q2は、暖房熱源ポンプP2の吐出量、開閉弁V3の開閉等により決定される。
【0044】
ステップS13では、暖房回路Laを循環する熱媒体温度Td(温度センサSt5で計測される暖房往温度Td)を所定温度(例えば、60℃或いは80℃)に制御する(ステップS13における「暖房往温度Td制御」)のに加えて、暖房循環ポンプP1の吐出流量を制御している(ステップS13における「暖房循環ポンプ流量制御」)。係る「暖房循環ポンプ流量制御」は、暖房負荷の変動や、補助熱源機3AのON/OFFの影響等により、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを変動するべき場合が存在することを考慮して実行される。
それと共に、燃料電池ユニット1と熱交換を行なう温水流量(温水ラインLh2の分岐点B1から燃料電池ユニット1側に流れる流量)Q3も変動させなければならない場合も存在し得るので、流量制御弁V1の開度を制御して、流量Q3を制御する(ステップS13における「流量分配制御」)。
ステップS13における「流量分配制御」は、ステップS7における「流量分配制御」及びステップS12における「流量分配制御」と同様であり、その詳細については、図3を参照して説明する。
【0045】
図13における各種制御を実行したならば、暖房運転を停止するか否かを判断し(ステップS14)、暖房運転を継続するのであれば(ステップS14がNO)ステップS3に戻り、暖房運転を停止するのであれば(ステップS14がYES)所定のルーチンに従って暖房運転を終了する。
【0046】
図3は、図2のステップS7、ステップS12、ステップS13における「流量分配制御」を示している。
図3のステップS21において、図示しない手段、例えば電力計によって燃料電池ユニット1の発電出力を検知し、排熱量Qexを算出する。
ステップS22では、温度センサSt1によって暖房戻りタンク4の水温Ttを計測し、温度センサSt2によって燃料電池ユニット1の出口温度Tbを計測する。そして、ステップS23において、暖房循環ポンプP1の流量qtを確認する。
ステップS24では、流量制御弁V1の開度αを求め、流量制御弁V1を係る開度αに変更する。
【0047】
ステップS24で流量制御弁V1の開度αを求めるに際して、当該開度αは、燃料電池ユニット1の発熱量Qex、暖房戻りタンク内の温水温度Tt、燃料電池ユニット1における第二の熱交換器6で加熱された後の冷却水(温水)温度Tb、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを変数とする関数或いは関係式として定められている。
流量制御弁V1の開度αを、燃料電池ユニット1の発熱量Qex、暖房戻りタンク内の温水温度Tt、燃料電池ユニットとの熱交換器6で加熱された後の冷却水(温水)温度Tb、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを変数とする関係式或いは関数は、運転条件、仕様、その他によりケース・バイ・ケースで定められる。
【0048】
実際の制御に当たっては、予め実験等により、流量制御弁V1の開度αと、燃料電池ユニット1の発熱量Qex、暖房戻りタンク内の温水温度Tt、燃料電池ユニットとの熱交換器6で加熱された後の冷却水(温水)温度Tb、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtとの関係式或いは関数若しくは関係を、数式、特性図、マップ等によって求めておく。そしてステップS24では、係る数式、特性図、マップ等により、燃料電池ユニット1の発熱量Qex、暖房戻りタンク内の温水温度Tt、燃料電池ユニットとの熱交換器6で加熱された後の冷却水(温水)温度Tb、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtから、流量制御弁V1の開度αを決定する。
【0049】
次に、図4を参照して、図1のコジェネレーションシステム100の貯湯運転について説明する。
図4において、貯湯モードの運転を行なうに当たっては、ステップS31において、温度センサSt4によって計測された貯湯槽2における温水温度T1を確認し、温水温度T1が貯湯設定温度Thより低いか否かを判断する(ステップS32)。
ここで、貯湯設定温度Thは、貯湯槽内の温水温度T1(例えば、貯湯槽の最下方の温水温度)がその温度(貯湯設定温度Th)以上である場合には、貯湯槽2内の温水は高温過ぎるので、燃料電池ユニット1に冷却水として供給するのが妥当ではないと判断される温度を意味している。換言すれば、貯湯槽内の温水温度T1(例えば、最下方の温水温度)が貯湯設定温度Th以上の場合には、そのまま冷却水として供給したならば、燃料電池ユニット1が過熱する可能性がある、という温度が、貯湯設定温度Thである。
【0050】
貯湯槽2内における温水温度T1が貯湯設定温度Thよりも低温である場合(ステップS32がYES)には、貯湯槽2内の温水を燃料電池ユニット1の冷却水として使用し、燃料電池ユニット1の排熱を投入することが出来ると判断して、ステップS33に進む。
一方、温水温度T1が貯湯設定温度Th以上の高温である場合(ステップS32がNO)には、貯湯槽2内の温水を燃料電池ユニット1の冷却水として使用することは出来ないと判断してステップS31まで戻り、貯湯槽2内における温水温度T1が貯湯設定温度Thよりも低温になるまで、ステップS32がNOのループを繰り返す。
【0051】
ステップS33(貯湯槽2内における温水温度T1が貯湯設定温度Thよりも低温:ステップS32がYES)では、コントローラ10は、燃料電池ユニット1が作動しているか否か判断する。燃料電池ユニット1が作動していれば(ステップS33がYES)、排熱循環ポンプP3を駆動して、貯湯槽2内の温水を冷却水として燃料電池システム1における第三の熱交換器7へ供給する(ステップS34)。
燃料電池ユニット1が作動していなければ(ステップS33がNO)、ステップS31以降を繰り返す(ステップS33がNOのループ)。
【0052】
ここで、冷却水として燃料電池ユニット1側へ供給するべき流量は、燃料電池ユニット1の排熱に対応して決定される。そして、燃料電池ユニット1の排熱は燃料電池ユニット1の出力(発電量)に比例する。そのためステップS35では、燃料電池ユニット1における発電出力を確認(計測)し、当該発電出力に対応した流量の冷却水を燃料電池システム1側へ供給するべく、排熱循環ポンプP3の吐出流量を制御する。
【0053】
ステップS36では、貯湯槽2内の温水温度T1が貯湯設定温度Th以上になっているか否かを判断する。
貯湯槽2内における温水温度T1が貯湯設定温度Th以上まで昇温した場合(ステップS36がYES)には、貯湯槽2内の温水温度をそのまま冷却水として燃料電池ユニット1側へ供給することは不都合である(燃料電池ユニット1が過熱する可能性がある)と判断して、冷却水温度を降温するべく、ラジエータ8を作動して(ステップS37)、燃料電池ユニット1が過熱しない程度まで冷却水温度を降温させる。そして、ステップS38に進む。
一方、貯湯槽2内における温水温度T1が貯湯設定温度Thよりも低温の場合(ステップS36がNO)には、ステップS40まで進む。
【0054】
ステップS38では、貯湯槽の温度T1が貯湯設定温度Th以上になっているか否かを、再度、判断する。貯湯槽2内の温水温度T1が貯湯設定温度Th以上になっていれば(ステップS38がYES)ステップS40に進む。一方、貯湯槽2内の温水温度T1が貯湯設定温度Thよりも低温であれば(ステップS38がNO)、ラジエータ8を停止して(ステップS39)、ステップS40に進む。
【0055】
ステップS40では、コントローラ10は、貯湯運転を終了するか否かを判断する。貯湯運転を終了するのであれば(ステップS40がYES)、所定のルーチンを実行して貯湯運転を終了する。
貯湯運転を継続するのであれば(ステップS40がNO)、ステップS34まで戻り、再びステップS34以降を繰り返す。
【0056】
次に、図5を参照して、図1のコジェネレーションシステム100における給湯運転の制御を説明する。
図5で貯湯運転を行なうに当って、ステップS41において、図示しない給湯栓を開放する。ステップS42では、貯湯槽2内における温水温度Tnが給湯設定温度よりも低いか否かを判断する。
ここで、給湯設定温度とは、貯湯槽2内の温水温度(図示の実施形態では、最上方の温水温度Tn)がその温度(給湯設定温度)よりも低温である場合には、貯湯槽2内の温水を給湯に用いるには低温過ぎるので、補助熱源機3Bで加熱する必要がある、という温度である。
【0057】
貯湯槽2内の温水温度Tnが給湯設定温度よりも低温であれば(ステップS42がYES)、そのまま給湯するには低温過ぎると判断して、補助熱源機3Bを作動する(ステップS43)。そして、貯湯槽2内の温水を補助熱源機3Bで加熱し昇温して、給湯栓開度に相当する流量となる様に制御しつつ、温水を供給する(ステップS44)。
【0058】
一方、貯湯槽内の温水温度Tnが給湯設定温度以上であれば(ステップS42がNO)、そのまま給湯可能であると判断して、補助熱源機3Bを作動することなく(補助熱源機3BはOFF状態として)、給湯栓開度に相当する流量となる様に制御しつつ、貯湯槽2内の温水を図示しない給湯栓側へ供給する(ステップS45)。
ステップS46では、給湯運転を終了するか否かを判断する。給湯運転を終了するのであれば(ステップS46がYES)、所定のルーチンに従って給湯運転を終了する。
給湯運転を続行するのであれば、ステップS42まで戻り、ステップS42以降を繰り返す。
【0059】
図5では明示されていないが、貯湯槽2内の温水温度Tnが給湯設定温度以上の場合(ステップS42がNOの場合)には、ステップS45において、補助熱源機3Bを非作動状態(OFF状態)にせしめる。
【0060】
上述したように、図1〜図5で示す本発明の実施形態によれば、暖房運転時において、貯湯槽2から送り出された温水は、当該温水温度T2が暖房に必要な温度である暖房設定温度よりも低温の場合には補助熱源機3Aで加熱され、暖房設定温度以上の高温である場合には補助熱源機3Aで加熱されることなく、暖房熱交換器5に送られる。
暖房熱交換器5において、暖房回路La側に熱量を投入して降温した前記温水は、従来技術のように貯湯槽2に直接戻されることはなく、一旦、暖房戻りタンク4に貯蔵される。
そのため、暖房熱交換器5から戻った低温の温水が直接貯湯槽2上方に戻されることにより、貯湯槽2内の成層状態が破壊されてしまうことが防止される。そして、貯湯槽2内の成層状態が維持される結果、貯湯槽2内における温水の温度差と蓄熱効率とは高い状態に維持され、暖房需要及び/又は給湯需要に応えることが可能となり、且つ、燃料電池ユニット1を冷却する機能を発揮することが出来る。
【0061】
ここで、図示の実施形態によれば、暖房戻りタンク4に貯蔵された温水は、暖房戻りタンク4から出た後に二方向へ分岐され、一方は燃料電池ユニット1と熱交換を行なう熱交換器6に送られ、他方は、分岐ラインLh3を経由して再び暖房熱交換器5に向かって送り出される。
燃料電池ユニット1と熱交換を行なう熱交換器6に供給された温水は、燃料電池ユニット1の排熱が投入されて昇温する。そして、当該温水、すなわち、燃料電池ユニット1の排熱が投入された温水は、温度が高い状態で貯湯槽2の上方に戻るので、貯湯槽2内の成層状態は保持される。
また、暖房戻りタンク4に貯蔵された温水であって、燃料電池ユニット1側の熱交換器6には送られず、分岐ラインLh3を経由して暖房熱交換器5に向かって送り出された温水は、貯湯タンク2には戻されず、必要に応じて補助熱源機3Aで加熱される。
【0062】
燃料電池ユニット1が停止している間に暖房需要があり、貯湯槽2内の温水が暖房熱交換器5側に供給された場合に、暖房熱交換器5から戻って降温した温水を燃料電池ユニット1側に供給しても加熱されず、温度が低いままなので、貯湯槽2の上方に戻すと貯湯槽2の成層状態を崩してしまう。
そのため図示の実施形態では、燃料電池ユニット1が停止している間に暖房需要が存在する場合には、貯湯槽2の成層状態を保つためには、流量制御弁V1を閉鎖して、暖房熱交換器5から戻って降温した温水を燃料電池ユニット1側に供給せずに、全て分岐ラインLh3側に流している。
【0063】
ここで、図示の実施形態で暖房戻りタンク4が介装されていなければ、暖房熱交換器5から戻った温水を全て分岐ラインLh3側に流すと、貯湯槽2内の高温の温水を暖房熱交換器5に向かって送り出すことにより、貯湯槽2から暖房熱交換器5に向かうラインLh1における流量が過多となってしまう。そのため、貯湯槽2内の高温の温水を、暖房熱交換器5に向かって新たに送り出すことが出来なくなる恐れが存在する。
【0064】
これに対して、図示の実施形態では暖房戻りタンク4を介装しているので、暖房熱交換器5から戻った温水を貯蔵することが出来る。そのため、貯湯槽2から暖房熱交換器5に向かう配管の流量が過多となってしまうことなく、貯湯槽2内の高温の温水を、暖房熱交換器5に向かって常時送り出すことが可能である。
さらに、暖房戻りタンク4はバッファタンクとして作用して、燃料電池ユニット1における発電量及び排熱量が多く、水温が上昇した場合における膨張を吸収することが出来る。
【0065】
図示の実施形態によれば、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtを、燃料電池ユニット1と熱交換を行なう熱交換器6に送られる量と、再び暖房熱交換器5に向かって送り出される量と分配するに際しては、燃料電池ユニット1の発熱量Qex、暖房戻りタンク内の温水温度Tt、燃料電池ユニット1との熱交換器6で加熱された後の冷却水(温水)温度Tb、暖房循環ポンプP1の吐出流量qtに基づいて(分配)制御される。そのため、コジェネレーションシステム100の運転状態に対応して、適正な量の温水が燃料電池ユニット1側の熱交換器6に送られ、或いは、再び暖房熱交換器5に向かって送り出され、適正な運転状態が保持される。
【0066】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態では電熱併給が可能な発電装置として燃料電池ユニットが示されているが、ガスエンジン発電装置を用いても良い。
【符号の説明】
【0067】
1・・・燃料電池ユニット
2・・・貯湯槽
3A、3B・・・補助熱源機
4・・・暖房戻りタンク
5・・・第一の熱交換器/暖房熱交換器
6・・・第二の熱交換器
7・・・第三の熱交換器
8・・・温水冷却装置/ラジエータ
B1、B2・・・分岐点
G1、G2、G3・・・合流点
Lhc・・・冷却水ライン
Lh、Lh1〜Lh5・・・温水ライン
P1・・・暖房循環ポンプ
P2・・・暖房熱源ポンプ
P3・・・排熱循環ポンプ
St1・・・温度センサ
V1、V2・・・流量制御弁
V3、V4・・・開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱併給が可能な発電装置と、該発電装置で発生した熱を蓄熱するための貯湯槽と、
暖房負荷に連通する回路を循環する熱媒体と貯湯槽内の温水とが熱交換を行なう第一の熱交換器と、
前記貯湯槽から前記第一の熱交換器に向かう第一の温水ラインと、
前記第一の熱交換器を流過した温水が流れる第二の温水ラインを備え、
該第二の温水ラインには、温水を一時的に貯蔵するタンクと、該タンクから出た温水を加圧する第一のポンプとが介装され、
前記第二の温水ラインは、第一のポンプの吐出側で、前記発電装置を冷却する第二の熱交換器を有する温水ラインと、前記貯湯槽内の温水を前記第一の熱交換器側へ吐出する第二のポンプの吐出側の前記第一の温水ラインに連通する分岐ラインとに分岐しており、
前記第二の熱交換器を有する温水ラインには流量制御弁が介装され、該流量制御弁よりも温水の流れ方向下流側で前記貯湯槽の下方から供給された冷却水を第三の熱交換器に供給する冷却水ラインと合流して前記貯湯槽の上方に戻ることを特徴とするコジェネレーションシステム。
【請求項2】
前記タンク内の温水温度を計測する第一の温度センサと、
前記発電装置を冷却する第二の熱交換器で加熱された後の冷却水温度を計測する第二の温度センサと、
制御装置を備え、
該制御装置は、前記発電装置の発熱量と、前記第一の温度センサで計測された前記タンク内の温水温度と、前記第二の温度センサで計測された前記第二の熱交換器で加熱された後の冷却水温度と、前記第一のポンプの吐出流量に基づいて、前記第一の熱交換器から戻った温水を、発電装置を冷却する前記第二の熱交換器に送られる量と、再び前記第一の熱交換器に向かって送り出される量とに分配制御する機能を有している請求項1のコジェネレーションシステム。
【請求項3】
前記第一の温水ラインは、補助熱源機を経由するラインと前記補助熱源機を経由しないラインに分岐しており、
当該分岐点と前記貯湯槽との間の領域における温水温度を計測する第三の温度センサを有しており、
前記制御装置は、前記第三の温度センサで計測された温水温度が設定温度よりも低温であれば前記貯湯槽の上方から前記第一の熱交換器に向かう温水を前記補助熱源機を経由する前記ラインに流過させて前記補助熱源機を作動する機能と、
前記第三の温度センサで計測された温水温度が設定温度以上の高温であれば前記貯湯槽の上方から前記第一の熱交換器に向かう温水を前記補助熱源機を経由しない前記ラインに流過させて、前記補助熱源機を作動させない機能を有している請求項2のコジェネレーションシステム。
【請求項4】
前記冷却水ラインには第三のポンプが介装されており、
前記冷却水ラインの前記貯湯槽と前記第三のポンプとの間の領域には温水冷却装置が介装され、
前記貯湯槽内の温水温度を計測する第四の温度センサを有しており、
前記制御装置は、前記発電装置が作動している場合に前記発電装置の発熱量に対応して前記第三のポンプを作動し、前記第四の温度センサで計測された前記貯湯槽内の温水温度が設定値以上の高温の場合には前記温水冷却装置を作動する機能を有している請求項2または請求項3の何れかのコジェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−181049(P2010−181049A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22691(P2009−22691)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】