説明

コッタ組付装置

【課題】コッタ開きをコッタに挿入するに際して、スムーズにコッタを開かせて挿入することができるコッタ組付装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るコッタ組付装置1は、コッタ40を開かせるコッタ開き14を具備するコッタ組付装置10であって、コッタ開き14の先端部が、コッタ40の内周と当接し、且つ互いに離間して3以上設けられた第1の部分と、隣接する第1の部分の間に配置され、コッタ開き14の中心軸と垂直な断面における側面から中心軸までの径方向の長さが第1の部分よりも短い第2の部分と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コッタを開かせるためのコッタ開きを具備するコッタ組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン(内燃機関)の吸・排気バルブのバルブステムには、コッタを介してリテーナを取り付ける。バルブステムの上端にはリテーナが取り付けられ、リテーナとシリンダヘッドの間にはバルブスプリングが圧縮状態で配置される。リテーナは、円周方向に2分割された半割テーパ状のコッタを介してバルブステムの上端に取り付けられる。コッタはバルブステムに抱きつくと共に、コッタの内周面に形成された凸部をバルブステムの外周面に形成された凹部に係合させる。リテーナはコッタの外周側に嵌合され、バルブスプリングの押圧力によりバルブステムから抜けないように固定される。
【0003】
図5は従来のコッタ組付装置による組付け方法を説明するための図である。コッタ組付装置100は、ハウジング110と、コッタ押さえ120と、コッタ開き130と、センターシャフト140と、を備えている。従来では、図5(a)に示される状態から、コッタ開き130をコッタ40へと挿入し、コッタ40を左右に開かせる(図5(b)及び(c))。コッタ押さえ120でコッタ40の姿勢を維持しながら、一旦バルブステム20の凹部を越えて組付下降端まで下降させる(図5(d)及び(e))。組付装置100を上昇させると、コッタ40の凸部がバルブステム20の凹部へと倣いながら入り、図5(f)に示すように組付が完了する。このようなコッタ組付装置として、例えば特許文献1には、円柱状のコッタ開きを用いてコッタを組みつけられるように開くコッタ組付装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−88733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコッタ組付装置により組付けを実施すると、コッタ開きによりコッタを左右へと開かせる際にコッタに対向する力が発生してしまい、コッタが開かないという問題があった。
【0005】
図6は、従来のコッタ組付装置についての問題点を説明するための図である。図6(a)はコッタを示す側面図であり、図6(b)は上面図である。尚、図においては説明のため、円周方向に2分割された1対のコッタ半体のうち片方のコッタ半体のみを実線で示している。図6(a)に示すように、コッタ開き130がコッタ40へと挿入する際には、コッタ開き130の先端(下端)に設けられたテーパ面131をコッタ40へと押し付けながらコッタ40を開かせる。このとき、図6(b)に示すように、テーパ面131であるコッタ開き130の外周面はコッタ40の内周面に沿って当接するため、コッタ40の半径方向に押圧力が発生する(図において、斜線部で示す部分に押圧力が発生する)。ここで、コッタがバルブの回転を容易とするフリーバルブ用のコッタ40である場合には、コッタ40は真円を円周方向に2分割した1対のコッタ半体からなる。このため、通常のコッタ半体の中心角が略120度〜140度であるのに対して、フリーバルブ用のコッタ40ではコッタ半体の中心角が180度となる。従って、コッタ40を開かせるために必要な方向の力(図では左右方向の力F2)以外にも、半円形状を有するコッタ半体の端部方向にも力(図では上下方向に対向する力F1及びF3)が発生してしまう。この上下方向に対向する力によって、コッタ40は上下方向に突っ張ってしまい、左右方向へと開くことができない。
【0006】
このように、従来のコッタ組付装置によれば、コッタ開きをコッタに挿入するに際してコッタを開かせることができないものであり、コッタの組付けができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、コッタ開きをコッタに挿入するに際して、スムーズにコッタを開かせて挿入することができるコッタ組付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコッタ組付装置は、コッタを開かせるコッタ開きを具備するコッタ組付装置において、前記コッタ開きの先端部が、前記コッタの内周と当接し、且つ互いに離間して3以上設けられた第1の部分と、隣接する前記第1の部分の間に配置され、前記コッタ開きの中心軸と垂直な断面における側面から前記中心軸までの径方向の長さが前記第1の部分よりも短い第2の部分と、を含むものである。
【0009】
このようなコッタ組付装置によれば、コッタ開きをコッタに挿入するに際して、対向する力の発生を阻止してコッタが突っ張ることを防止することができるため、スムーズにコッタを開かせて挿入することができる。
【0010】
また、前記第1の部分が、前記コッタ開きの周方向に沿って均等に配されるようにしてもよい。このような構成により、少なくとも1つのコッタ開きの第1の部分が、2つのコッタ半体のいずれか一方の内周に必ず当接する。このため、コッタ開きの先端部の配置に対して、コッタの位相(即ちコッタが配置される角度)がランダムに決定される場合においても、コッタを突っ張らせずに確実に開かせることができる。
【0011】
さらにまた、前記コッタ開きの先端部が、下方に向かうにつれ徐々に内径を縮径させるテーパ形状を有するようにしてもよい。このような構成により、よりスムーズにコッタを開かせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コッタ開きをコッタに挿入するに際して、スムーズにコッタを開かせて挿入することができるコッタ組付装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態1.
本実施の形態1に係るコッタ組付装置は、コッタを開かせるコッタ開きを具備し、コッタ開きの先端部が、コッタの内周と当接し、且つ互いに離間して3以上設けられた第1の部分と、隣接する第1の部分の間に配置され、コッタ開きの中心軸と垂直な断面における側面から中心軸までの径方向の長さが第1の部分よりも短い第2の部分と、を含むものである。
【0014】
このようなコッタ組付装置によれば、コッタ開きをコッタに挿入するに際して、対向する力の発生を阻止してコッタが突っ張ることを防止することができるため、スムーズにコッタを開かせて挿入することができる。
【0015】
以下、図面を参照しながら本実施の形態1に係るコッタ組付装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置を示す図である。図1(a)はコッタ組付装置を示す斜視図であり、図1(b)はコッタ組付装置を示す断面図である。バルブステム20の上端部にはコッタ40を介してリテーナ30が取り付けられる。リテーナ30と図示しないシリンダヘッドとの間に、バルブスプリング50が圧縮状態で配される。バルブスプリング50は、バルブステム20の外側に配置される。尚、バルブステム20は、吸気弁のバルブステムでもよいし、排気弁のバルブステムでもよい。また、コッタ40はバルブの回転を容易とするフリーバルブ用のコッタであり、真円を円周方向に2分割した1対のコッタ半体からなる。
【0016】
図に示すように、コッタ組付装置10は、チャック爪11と、本体12と、コッタ押さえ13と、コッタ開き14と、を備えている。コッタ組付装置10の本体12外側には、リテーナ30とバルブスプリング50を押圧するチャック爪11が設けられる。本体12の内側には、コッタ40を開かせる際にコッタ40の姿勢を維持するコッタ押さえ13と、コッタ40を押し付けて開かせるコッタ開き14が設けられる。コッタ開き14は、コッタ押さえ13を貫通して上下方向へスライド自在に設けられ、その先端部(下端部)には、後述する第1の部分及び第2の部分が形成されている。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置による組付け方法を説明するための図である。まず、コッタ組付装置10にリテーナ30及びコッタ40を配置する。図2(a)に示される状態からコッタ組付装置10を下降させて、コッタ開き14をコッタ40へと挿入し、コッタ40を左右に開かせる(図2(b)及び(c))。そして、図2(c)に示される状態から、コッタ押さえ13でコッタ40の姿勢を維持しながら、一旦バルブステム20の凹部を越えて組付下降端まで下降させる(図2(d)及び(e))。その後、コッタ組付装置10を上昇させると、コッタ40の凸部がバルブステム20の凹部へと倣いながら入り、図2(f)に示すように組付が完了する。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置のコッタ開き先端部を示す図である。図3(a)は、コッタ開き14の先端部を示す斜視図である。図に示すように、円柱形状を有するコッタ開き14の先端部は、中心軸Cに沿って三つの平面により切断される(図において、例えば切断面14bにより切断される)。長手方向(中心軸Cの軸方向)における切断面の長さは、コッタ開き14を挿入するコッタ40の深さよりも大きなものとする。コッタ開き14の先端部は切断により円柱形状から略三角柱形状へと加工され、さらに、三角柱の頂点近傍がR加工される。即ち、三角柱の頂点近傍部分であり、コッタ40への挿入に際してコッタ40に最初に当接する角部(図において斜線により示す部分)が面取り加工される。これにより、コッタ開き14がコッタ40へと挿入するに際して、コッタ40の損傷を防止することができる。
【0019】
図3(b)は、コッタ開きの先端部を示す下面図である。図に示すように、第1の部分としての部分P1、P2、P3は、中心軸Cを中心とする円弧形状で外側に膨らんでおり、コッタ開き14をコッタ40へ挿入する際に、コッタ40の内周と当接する。また、部分P1とP2、部分P1とP3、部分P2とP3はそれぞれ互いに離間して設けられる。第2の部分は、第1の部分を除いた部分であり、隣接する第1の部分の間に配置され、コッタ開き14の中心軸Cと垂直な断面における側面から中心軸Cまでの径方向の長さが第1の部分よりも短い部分である。即ち、第2の部分は、コッタ開き14をコッタ40へ挿入する際に、コッタ40の内周と当接しない部分である。R1は、コッタ開き14の先端部におけるコッタ開き14の外径を示し、コッタ40の内径より大きな値とする。R2は、コッタ開き14の先端部を除いた部分におけるコッタ開き14の外径を示し、R1はR2よりも小さな値とする。
【0020】
図3(c)は、コッタ開きの先端部の断面図である。コッタ開き14の先端部は、中心軸Cと垂直な断面において、側面から中心軸Cまでの径方向の長さが異なる第1の部分及び第2の部分を含む。言い換えると、コッタ開き14の先端部は、周方向の位置に従って、中心軸Cまでの距離が変化する。中心軸Cから側面までの距離L1及びL2について、距離L1は距離L2よりも大きなものとする。第1の部分は、コッタ開き14の先端部における外周上に設けられ、中心軸Cからの距離がL1となる部分である(図において部分P1、P2、P3である)。第2の部分は、コッタ開き14の先端部における外周上に設けられ、中心軸Cからの距離がL2となる部分である(図において、切断線X1−X1'、X2−X2'、X3−X3'上の部分である)。
【0021】
また、図3(c)に示すように、コッタ開き14の先端部を中心軸Cに沿って切断する平面の切断線X1−X1'、X2−X2'、X3−X3'は、切断線が正三角形を形成するように切断される。正三角形の頂点近傍に設けられる第1の部分P1、P2、P3は、コッタ開き14の外周上に周方向に沿って均等に配される。即ち、第1の部分P1、P2、P3は、中心軸Cとのなす角度が略120度となるように形成される。このような構成により、第1の部分P1、P2、P3のうち、少なくとも1つの第1の部分が、一対のコッタ半体のいずれか片方のコッタ半体の内周に必ず当接する。このため、コッタ開き14の先端部の配置に対して、コッタ40の位相(即ちコッタ40が配置される角度)がランダムに決定される場合においても、コッタ40を突っ張らせずに確実に開かせることができる。
【0022】
さらに、コッタ開き14の先端部は、中心軸C方向において下方に向かうにつれ徐々に内径を縮径させるテーパ形状を有する。このような構成により、よりスムーズにコッタを開かせることができる。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態1に係るコッタ開きがコッタを開く様子を示す図である。図4(a)はコッタを示す側面図であり、図4(b)は上面図である。尚、図においては説明のため、1対のコッタ半体の片方のコッタ半体のみを実線で示している。図4(a)に示すように、コッタ開き14がコッタ40へと挿入する際には、コッタ開き14の先端(下端)に設けられたテーパ面14aをコッタ40へと押し付けながらコッタ40を開かせる。このとき、図4(b)に示すように、コッタ開き14の先端部に設けられた第1の部分がコッタ40の内周面に沿って当接するため、コッタ40の半径方向に押圧力が発生する(図において、斜線部で示す部分に押圧力が発生する)。このため、コッタ40を突っ張らせる原因となる方向の力(図では上下方向に対向する力F1及びF3)の発生を阻止して、コッタ40を開かせるために必要な方向の力(図では左右方向の力F2)のみを得ることができる。従って、コッタ開き14をコッタ40に挿入するに際して、対向する力の発生を阻止して、スムーズにコッタ40を開かせて挿入することができる。
【0024】
その他の実施の形態.
尚、上述した実施の形態においては、第1の部分を3つとした場合について説明したが本発明はこれに限定されない。即ち、従来技術ではコッタ開き130の外周面の全範囲がコッタ40の内周面に沿って当接するため、コッタ40が突っ張ってしまい開くことができないものであったのに対して、本発明によれば、コッタ開き14の先端部の形状について、コッタ40の内周と当接し、且つ互いに離間して設けられる第1の部分を少なくとも3つ設けることで、コッタ40を突っ張らせる原因となる方向の力の発生を阻止するものである。従って、第1の部分を3以上とした場合についても、同様の効果を得ることができる。
【0025】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置による組付け方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るコッタ組付装置のコッタ開き先端部を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るコッタ開きがコッタを開く様子を示す図である。
【図5】従来のコッタ組付装置による組付け方法を説明するための図である。
【図6】従来のコッタ組付装置についての問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
10 コッタ組付装置、
11 チャック爪、
12 本体、
13 コッタ押さえ、
14 コッタ開き
20 バルブステム、
30 リテーナ、
40 コッタ、
50 バルブスプリング、
110 ハウジング、
120 コッタ押さえ、
130 コッタ開き、
131 テーパ面、
140 センターシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コッタを開かせるコッタ開きを具備するコッタ組付装置において、
前記コッタ開きの先端部が、
前記コッタの内周と当接し、且つ互いに離間して3以上設けられた第1の部分と、
隣接する前記第1の部分の間に配置され、前記コッタ開きの中心軸と垂直な断面における側面から前記中心軸までの径方向の長さが前記第1の部分よりも短い第2の部分と、を含むコッタ組付装置。
【請求項2】
前記第1の部分が、前記コッタ開きの周方向に沿って均等に配される
ことを特徴とする請求項1記載のコッタ組付装置。
【請求項3】
前記コッタ開きの先端部が、下方に向かうにつれ徐々に内径を縮径させるテーパ形状を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のコッタ組付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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