コネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造
【課題】端子金具が不適正な向きで誤挿入されたときに、その誤挿入の見落としを防止することができ、しかも、誤挿入によって端子金具が破損することを防止することができるコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造を提供すること。
【解決手段】端子金具20が不適正な向きで挿入されたときに端子金具20のスタビライザ25の前端と衝突して端子金具20を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁14をハウジング10の端子挿入孔11に備える端子金具の誤挿入防止構造であって、端子衝突壁14は、スタビライザ25との衝突時にスタビライザ25からの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、スタビライザ25の衝突時には、端子衝突壁14の変形によりスタビライザ25への衝撃を緩和する構造。
【解決手段】端子金具20が不適正な向きで挿入されたときに端子金具20のスタビライザ25の前端と衝突して端子金具20を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁14をハウジング10の端子挿入孔11に備える端子金具の誤挿入防止構造であって、端子衝突壁14は、スタビライザ25との衝突時にスタビライザ25からの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、スタビライザ25の衝突時には、端子衝突壁14の変形によりスタビライザ25への衝撃を緩和する構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一側にスタビライザが突設された端子金具が不適正な向きでコネクタのハウジングに誤挿入されたときに、その誤挿入の見落としを防止するためのコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図12及び図13は、端子金具の誤挿入防止構造を有したコネクタの従来例を示したものである。
【0003】
ここに示したコネクタ100の場合、ハウジング110に収容される端子金具200は、金属板のプレス成形によって形成された雄型の端子金具で、先端に配置されて相手の雌型の端子金具に嵌合する嵌合接続部210と、後端に配置されて電線300が圧着接続される電線圧着部220と、嵌合接続部210と電線圧着部220との間を連結している中間部230と、中間部230の外周に突設されたスタビライザ240と、を備える。
【0004】
スタビライザ240は、中間部230を形成している金属板の一部を切り起こして形成された突片状で、誤挿入の防止に利用される。
【0005】
ハウジング110は、端子金具200が挿入装着される端子挿入孔111と、端子挿入孔111の一側の壁面(図12では、上壁面)に装備されたガイド溝112と、が備えられた構造のものである。このハウジング110は、更に、端子金具200の誤挿入防止構造として、端子衝突壁113が備えられている。
【0006】
ガイド溝112は、端子金具200が適正な向きで挿入されたときにスタビライザ240を正規の嵌合完了位置まで案内するように、端子挿入孔111の上壁面の両側部に形成されている。また、図示例のハウジング110の場合、ガイド溝112は、端子挿入孔111の上壁面に一体形成されたランス114の両側に、ランス114に沿って装備されている。
【0007】
ランス114は、図13に示すように、端子金具200の挿入方向(図12の矢印X1方向)に沿って延在する弾性片114aの先端に端子挿入孔111内に突出した突起114bを設けた構造である。ランス114は、端子金具200が図12に示すように適正な向きで正規の嵌合完了位置まで挿入されたときに、突起114bを端子金具200の中間部230に形成した突起係合穴に嵌入させることで、端子金具200の抜け止めを行う。
【0008】
端子衝突壁113は、図12及び図13に示すように、端子金具200が上下反転させた不適正な向きで挿入されたときに、スタビライザ240の前端と衝突して、端子金具200を中途挿入状態に停止させる。特許文献1の場合、端子衝突壁113は、スタビライザ240の前端と平行な垂直壁で、スタビライザ240との衝突によって、端子金具200を中途挿入状態に止めることで、誤挿入の見落としを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−45269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に開示のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、図13に示すように、端子金具200が誤挿入された場合に、スタビライザ240の前端と端子衝突壁113とは垂直面同士で、一気に正面衝突するため、端子金具200の挿入力が大きい場合には、スタビライザ240に過大な衝撃荷重が作用し、スタビライザ240の変形等の端子金具200の破損を招くおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、端子金具が不適正な向きで誤挿入されたときに、その誤挿入の見落としを防止することができ、しかも、誤挿入によって端子金具が破損することを防止することができるコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)誤挿入防止用のスタビライザが一側の外周に突設された端子金具が挿入装着される端子挿入孔と、前記端子金具が適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザを正規の嵌合完了位置まで案内するように前記端子挿入孔の一側の壁面に装備されたガイド溝と、がハウジングに備えられるコネクタのハウジングにおいて、前記端子金具が不適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザの前端と衝突して前記端子金具を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁を前記端子挿入孔に備えて、不適正な向きで挿入された前記端子金具を中途挿入状態に止めることで誤挿入の見落としを防止する、コネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造であって、
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突時に前記スタビライザからの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴って前記スタビライザとの接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、前記スタビライザの衝突時には、前記端子衝突壁の変形によりスタビライザへの衝撃を緩和することを特徴とするコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0013】
(2)前記スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が、弾性変形であることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0014】
(3)前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面を備え、前記テーパ面の傾斜角度の設定により、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性が調整されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0015】
上記(1)の構成によれば、端子金具が誤挿入された場合に、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突により、端子金具が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0016】
しかも、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザへの衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザの変形等の端子金具の破損を防止することができる。
【0017】
上記(2)の構成によれば、スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が弾性変形であるため、誤挿入された端子金具を端子挿入孔から抜けば、端子衝突壁が変形のない当初の状態に復帰する。
【0018】
そのため、誤挿入した端子金具を適正な向きで挿入し直すことで、端子金具を簡単に正規の嵌合完了状態に修正することができ、コネクタ組立時の作業性や歩留まりを向上させることができる。
【0019】
上記(3)の構成によれば、端子金具が設計変更されて端子金具のスタビライザの強度が変わる場合には、端子衝突壁のテーパ面の傾斜角度を設定変更して、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性を端子金具に合わせることで、端子金具の破損を防止する性能を維持することができ、端子金具の設計変更への対応を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造によれば、端子金具が誤挿入された場合に、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突により、端子金具が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0021】
しかも、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザへの衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザの変形等の端子金具の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る端子金具の誤挿入防止構造を有するコネクタのハウジングの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示したハウジングの後面図である。
【図3】図1のハウジングに挿入装着される端子金具の斜視図である。
【図4】図2に示したハウジングのA−A断面図である。
【図5】図4のB部の拡大図である。
【図6】(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が適正な向きで挿入される状態を示す側面図、(b)は一実施形態の端子金具がハウジングの端子挿入孔に正規の嵌合完了位置まで挿入装着された状態の図4に相当する縦断面図である。
【図7】(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が不適正な向きで挿入される状態を示す側面図、(b)は一実施形態の端子金具が不適正な向きでハウジングの端子挿入孔に挿入されたために端子衝突壁により中途挿入状態に止められている状態の縦断面図である。
【図8】一実施形態のハウジングに装備されている端子衝突壁の動作説明図で、(a)は端子金具のスタビライザの前端が端子衝突壁に衝突開始したときの状態の説明図、(b)はスタビライザの前端の衝突によって端子衝突壁が変形途中の状態の説明図、(c)はスタビライザの前端の衝突による端子衝突壁の変形が完了して端子金具が規定の中途挿入状態に止められている状態の説明図である。
【図9】一実施形態の端子衝突壁とスタビライザの衝突時における挿入力の変化を示すグラフである。
【図10】(a)は本発明に係る端子衝突壁のテーパ構造における挟角を一実施形態よりも鋭角化した場合の端子衝突壁の説明図、(b)は(a)に示した端子衝突壁にスタビライザが衝突したときの挿入力の変化を示すグラフである。
【図11】(a)は本発明に係る端子衝突壁のテーパ構造における挟角を図10(a)の例よりも更に鋭角化した場合の端子衝突壁の説明図、(b)は(a)に示した端子衝突壁にスタビライザが衝突したときの挿入力の変化を示すグラフである。
【図12】従来のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造を示すコネクタの縦断面図である。
【図13】図12に示したハウジングに端子金具が誤挿入された状態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1〜図9は本発明に係るコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造の一実施形態を示したもので、図1は一実施形態におけるコネクタのハウジングの斜視図、図2は図1に示したハウジングの後面図、図3は図1のハウジングに挿入装着される端子金具の斜視図、図4は図2に示したハウジングのA−A断面図、図5は図4のB部の拡大図、図6(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が適正な向きで挿入される状態を示す側面図、図6(b)は一実施形態の端子金具がハウジングの端子挿入孔に正規の嵌合完了位置まで挿入装着された状態の図4に相当する縦断面図、図7(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が不適正な向きで挿入される状態を示す側面図、図7(b)は一実施形態の端子金具が不適正な向きでハウジングの端子挿入孔に挿入されたために端子衝突壁により中途挿入状態に止められている状態の縦断面図である。また、図8は一実施形態のハウジングに装備されている端子衝突壁の動作説明図で、図8(a)は端子金具のスタビライザの前端が端子衝突壁に衝突開始したときの状態の説明図、図8(b)はスタビライザの前端の衝突によって端子衝突壁が変形途中の状態の説明図、図8(c)はスタビライザの前端の衝突による端子衝突壁の変形が完了して端子金具が規定の中途挿入状態に止められている状態の説明図、図9は一実施形態の端子衝突壁とスタビライザの衝突時における挿入力の変化を示すグラフである。
【0025】
本実施形態に示したコネクタのハウジング10は、図4及び図5に示すように、図3に示した端子金具20が挿入装着される複数の端子挿入孔11と、端子挿入孔11に正規に嵌合完了した端子金具20を抜け止めするランス12と、ランス12の側方に並んで設けられたガイド溝13と、が備えられ、更に、端子金具20の誤挿入防止構造として端子衝突壁14が備えられている。
【0026】
端子金具20は、金属板のプレス成形によって形成された雌型の端子金具で、図3に示すように、先端に配置されて相手の雄型の端子金具に嵌合する角筒状の嵌合接続部21と、後端に配置されて電線が圧着接続される電線圧着部22と、嵌合接続部21と電線圧着部22との間を連結している中間部23と、嵌合接続部21に形成されたランス係合部24と、嵌合接続部21の外周に突設されたスタビライザ25と、を備える。
【0027】
ランス係合部24は、ハウジング10のランス12が係合する段差面で、嵌合接続部21の上部壁21aの後端に形成されている。
【0028】
スタビライザ25は、上部壁21aの側縁から上方に突出するように、嵌合接続部21を形成している金属板の一部を切り起こして形成された突片である。スタビライザ25は、端子挿入孔11への誤挿入の防止に利用される。
【0029】
ハウジング10の複数の端子金具20は、図1及び図2に示すように、2行2列に、装備される。
【0030】
ランス12は、図5に示すように、端子挿入孔11の一側の壁面(図5では、端子挿入孔11の下側の壁面)に装備されている。ランス12は、図5に示すように、端子金具20の挿入方向(図5の矢印X2方向)に沿って延在する弾性片12aの先端に端子挿入孔11内に突出した突起12bを設けた構造である。ランス12は、端子金具20が図6(b)に示すように適正な向きで正規の嵌合完了位置まで挿入されたときに、突起12bを端子金具20の嵌合接続部21に形成したランス係合部24に係合させることで、端子金具20の抜け止めを行う。
【0031】
本実施形態の場合、端子挿入孔11に挿入される端子金具20の適正な向きとは、図6(b)に示すように、スタビライザ25が下方に向いた向きである。
【0032】
ガイド溝13は、図6に矢印X3で示すように端子金具20が適正な向きで端子挿入孔11に挿入されたときに、スタビライザ25を正規の嵌合完了位置まで案内するように、端子挿入孔11の一側の壁面(図6(b)では、端子挿入孔11の下側の壁面)に、ランス12と並んで装備されている。
【0033】
誤挿入防止構造として端子衝突壁14は、図7に矢印X4で示すように端子金具20が上下反転させた不適正な向きで挿入されたときに、スタビライザ25の前端と衝突して端子金具20を中途挿入状態に停止させる。この端子衝突壁14は、上下反転させた不適正な向きで挿入された端子金具20を図7(b)に示すように中途挿入状態に止めることで、誤挿入の見落としを防止する。
【0034】
本実施形態の場合、端子衝突壁14は、図8に示すようにスタビライザ25との衝突時にスタビライザ25からの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、スタビライザ25の衝突時には、端子衝突壁14の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザ25への衝撃を緩和する。
【0035】
更に詳しく説明すると、端子衝突壁14は、端子金具20の挿入方向と逆方向に突出するように、端子挿入孔11の上壁面11aに突設された突起状であり、スタビライザ25との衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面14aを備えることで、テーパ構造になっている。
【0036】
図8(a)に示すように、テーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ1は、90度未満となる鋭角に設定されている。
【0037】
本実施形態の端子衝突壁14は、スタビライザ25が衝突する前の状態では、先端部14bが端子挿入孔11側に突出しない(即ち、図8(a)に示した上壁面11aの延長上に先端部14bが位置する)状態にある。そして、スタビライザ25の衝突途中では、図8(b)に示すように、先端部14bがスタビライザ25からの押圧力に応じて圧縮変形し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加する。そして、端子衝突壁14がスタビライザ25の移動を規制する力は、スタビライザ25との間の接触面積の増加に相応して徐々に増加し、接触面積が所定値に達すると、スタビライザ25を中途挿入状態に止める。
【0038】
図8(c)の状態は、端子衝突壁14の変形の増大によって、端子衝突壁14とスタビライザ25との接触面積が所定値に達して、スタビライザ25が中途挿入状態に止められた状態を示している。この状態では、端子衝突壁14の先端部14bが端子挿入孔11側に膨出するように、先端部14bが撓み変形している。
【0039】
本実施形態の場合、スタビライザ25との衝突時に端子衝突壁14に発生する変形が弾性変形に止まるように、端子衝突壁14の形状、及び樹脂材料の選定がなされている。
【0040】
図9は、本実施形態において、端子金具20の誤挿入によってスタビライザ25が端子衝突壁14に衝突するときに、端子金具20の挿入に必要な挿入力F1を示している。
【0041】
以上に説明した本実施形態のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、端子金具20が誤挿入された場合に、スタビライザ25の前端と端子衝突壁14との衝突により、端子金具20が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0042】
しかも、スタビライザ25の前端と端子衝突壁14との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁14の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザ25への衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザ25の変形等の端子金具20の破損を防止することができる。
【0043】
更に、本実施形態のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、スタビライザ25との衝突時に端子衝突壁14に発生する変形が弾性変形であるため、誤挿入された端子金具20を端子挿入孔11から抜けば、端子衝突壁14が変形のない当初の状態に復帰する。
【0044】
そのため、誤挿入した端子金具20を適正な向きで挿入し直すことで、端子金具20を簡単に正規の嵌合完了状態に修正することができ、コネクタ組立時の作業性や歩留まりを向上させることができる。
【0045】
なお、本発明のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0046】
例えば、端子衝突壁のテーパ構造を形成するテーパ面の傾斜角度は、上記実施形態よりも適宜に増減させることで、スタビライザとの衝突時の変形特性を変えることができ、衝撃吸収特性を調整することができる。
【0047】
図10(a)は、本発明に係る端子衝突壁14Aのテーパ構造におけるテーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ2を一実施形態のθ1よりも鋭角化した場合の端子衝突壁14Aの説明図、図10(b)は図10(a)に示した端子衝突壁14Aにスタビライザ25が衝突したときの挿入力F2の変化を示すグラフである。
【0048】
また、図11(a)は本発明に係る端子衝突壁14Bのテーパ構造におけるテーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ3を図10(a)の例のθ2よりも更に鋭角化した場合の端子衝突壁14Bの説明図、図11(b)は図11(a)に示した端子衝突壁14Bにスタビライザ25が衝突したときの挿入力F3の変化を示すグラフである。
【0049】
図10及び図11に示したように、テーパ面14aの傾斜角度の設定により、スタビライザ25との衝突時の衝撃吸収特性を調整するようにした場合には、次の作用・効果を得ることができる。
【0050】
即ち、端子金具20が設計変更されて端子金具20のスタビライザ25の強度が変わる場合には、端子衝突壁のテーパ面14aの傾斜角度を設定変更して、スタビライザ25との衝突時の衝撃吸収特性を端子金具20に合わせることで、端子金具20の破損を防止する性能を維持することができ、端子金具20の設計変更への対応を容易にすることができる。
【0051】
また、上記各実施形態において、端子衝突壁14a,14Aは、スタビライザ25との衝突により弾性変形するものであるが、端子衝突壁14a,14Aは、塑性変形するものであっても、端子金具20の誤挿入の見落とし及び端子金具20の破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ハウジング
11 端子挿入孔
13 ガイド溝
14 端子衝突壁
14a テーパ面
14b 先端部
20 端子金具
25 スタビライザ
θ1 挟角(傾斜角)
【技術分野】
【0001】
本発明は、一側にスタビライザが突設された端子金具が不適正な向きでコネクタのハウジングに誤挿入されたときに、その誤挿入の見落としを防止するためのコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図12及び図13は、端子金具の誤挿入防止構造を有したコネクタの従来例を示したものである。
【0003】
ここに示したコネクタ100の場合、ハウジング110に収容される端子金具200は、金属板のプレス成形によって形成された雄型の端子金具で、先端に配置されて相手の雌型の端子金具に嵌合する嵌合接続部210と、後端に配置されて電線300が圧着接続される電線圧着部220と、嵌合接続部210と電線圧着部220との間を連結している中間部230と、中間部230の外周に突設されたスタビライザ240と、を備える。
【0004】
スタビライザ240は、中間部230を形成している金属板の一部を切り起こして形成された突片状で、誤挿入の防止に利用される。
【0005】
ハウジング110は、端子金具200が挿入装着される端子挿入孔111と、端子挿入孔111の一側の壁面(図12では、上壁面)に装備されたガイド溝112と、が備えられた構造のものである。このハウジング110は、更に、端子金具200の誤挿入防止構造として、端子衝突壁113が備えられている。
【0006】
ガイド溝112は、端子金具200が適正な向きで挿入されたときにスタビライザ240を正規の嵌合完了位置まで案内するように、端子挿入孔111の上壁面の両側部に形成されている。また、図示例のハウジング110の場合、ガイド溝112は、端子挿入孔111の上壁面に一体形成されたランス114の両側に、ランス114に沿って装備されている。
【0007】
ランス114は、図13に示すように、端子金具200の挿入方向(図12の矢印X1方向)に沿って延在する弾性片114aの先端に端子挿入孔111内に突出した突起114bを設けた構造である。ランス114は、端子金具200が図12に示すように適正な向きで正規の嵌合完了位置まで挿入されたときに、突起114bを端子金具200の中間部230に形成した突起係合穴に嵌入させることで、端子金具200の抜け止めを行う。
【0008】
端子衝突壁113は、図12及び図13に示すように、端子金具200が上下反転させた不適正な向きで挿入されたときに、スタビライザ240の前端と衝突して、端子金具200を中途挿入状態に停止させる。特許文献1の場合、端子衝突壁113は、スタビライザ240の前端と平行な垂直壁で、スタビライザ240との衝突によって、端子金具200を中途挿入状態に止めることで、誤挿入の見落としを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−45269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に開示のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、図13に示すように、端子金具200が誤挿入された場合に、スタビライザ240の前端と端子衝突壁113とは垂直面同士で、一気に正面衝突するため、端子金具200の挿入力が大きい場合には、スタビライザ240に過大な衝撃荷重が作用し、スタビライザ240の変形等の端子金具200の破損を招くおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、端子金具が不適正な向きで誤挿入されたときに、その誤挿入の見落としを防止することができ、しかも、誤挿入によって端子金具が破損することを防止することができるコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)誤挿入防止用のスタビライザが一側の外周に突設された端子金具が挿入装着される端子挿入孔と、前記端子金具が適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザを正規の嵌合完了位置まで案内するように前記端子挿入孔の一側の壁面に装備されたガイド溝と、がハウジングに備えられるコネクタのハウジングにおいて、前記端子金具が不適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザの前端と衝突して前記端子金具を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁を前記端子挿入孔に備えて、不適正な向きで挿入された前記端子金具を中途挿入状態に止めることで誤挿入の見落としを防止する、コネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造であって、
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突時に前記スタビライザからの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴って前記スタビライザとの接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、前記スタビライザの衝突時には、前記端子衝突壁の変形によりスタビライザへの衝撃を緩和することを特徴とするコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0013】
(2)前記スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が、弾性変形であることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0014】
(3)前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面を備え、前記テーパ面の傾斜角度の設定により、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性が調整されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【0015】
上記(1)の構成によれば、端子金具が誤挿入された場合に、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突により、端子金具が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0016】
しかも、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザへの衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザの変形等の端子金具の破損を防止することができる。
【0017】
上記(2)の構成によれば、スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が弾性変形であるため、誤挿入された端子金具を端子挿入孔から抜けば、端子衝突壁が変形のない当初の状態に復帰する。
【0018】
そのため、誤挿入した端子金具を適正な向きで挿入し直すことで、端子金具を簡単に正規の嵌合完了状態に修正することができ、コネクタ組立時の作業性や歩留まりを向上させることができる。
【0019】
上記(3)の構成によれば、端子金具が設計変更されて端子金具のスタビライザの強度が変わる場合には、端子衝突壁のテーパ面の傾斜角度を設定変更して、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性を端子金具に合わせることで、端子金具の破損を防止する性能を維持することができ、端子金具の設計変更への対応を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造によれば、端子金具が誤挿入された場合に、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突により、端子金具が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0021】
しかも、スタビライザの前端と端子衝突壁との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザへの衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザの変形等の端子金具の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る端子金具の誤挿入防止構造を有するコネクタのハウジングの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示したハウジングの後面図である。
【図3】図1のハウジングに挿入装着される端子金具の斜視図である。
【図4】図2に示したハウジングのA−A断面図である。
【図5】図4のB部の拡大図である。
【図6】(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が適正な向きで挿入される状態を示す側面図、(b)は一実施形態の端子金具がハウジングの端子挿入孔に正規の嵌合完了位置まで挿入装着された状態の図4に相当する縦断面図である。
【図7】(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が不適正な向きで挿入される状態を示す側面図、(b)は一実施形態の端子金具が不適正な向きでハウジングの端子挿入孔に挿入されたために端子衝突壁により中途挿入状態に止められている状態の縦断面図である。
【図8】一実施形態のハウジングに装備されている端子衝突壁の動作説明図で、(a)は端子金具のスタビライザの前端が端子衝突壁に衝突開始したときの状態の説明図、(b)はスタビライザの前端の衝突によって端子衝突壁が変形途中の状態の説明図、(c)はスタビライザの前端の衝突による端子衝突壁の変形が完了して端子金具が規定の中途挿入状態に止められている状態の説明図である。
【図9】一実施形態の端子衝突壁とスタビライザの衝突時における挿入力の変化を示すグラフである。
【図10】(a)は本発明に係る端子衝突壁のテーパ構造における挟角を一実施形態よりも鋭角化した場合の端子衝突壁の説明図、(b)は(a)に示した端子衝突壁にスタビライザが衝突したときの挿入力の変化を示すグラフである。
【図11】(a)は本発明に係る端子衝突壁のテーパ構造における挟角を図10(a)の例よりも更に鋭角化した場合の端子衝突壁の説明図、(b)は(a)に示した端子衝突壁にスタビライザが衝突したときの挿入力の変化を示すグラフである。
【図12】従来のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造を示すコネクタの縦断面図である。
【図13】図12に示したハウジングに端子金具が誤挿入された状態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1〜図9は本発明に係るコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造の一実施形態を示したもので、図1は一実施形態におけるコネクタのハウジングの斜視図、図2は図1に示したハウジングの後面図、図3は図1のハウジングに挿入装着される端子金具の斜視図、図4は図2に示したハウジングのA−A断面図、図5は図4のB部の拡大図、図6(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が適正な向きで挿入される状態を示す側面図、図6(b)は一実施形態の端子金具がハウジングの端子挿入孔に正規の嵌合完了位置まで挿入装着された状態の図4に相当する縦断面図、図7(a)は一実施形態のハウジングに端子金具が不適正な向きで挿入される状態を示す側面図、図7(b)は一実施形態の端子金具が不適正な向きでハウジングの端子挿入孔に挿入されたために端子衝突壁により中途挿入状態に止められている状態の縦断面図である。また、図8は一実施形態のハウジングに装備されている端子衝突壁の動作説明図で、図8(a)は端子金具のスタビライザの前端が端子衝突壁に衝突開始したときの状態の説明図、図8(b)はスタビライザの前端の衝突によって端子衝突壁が変形途中の状態の説明図、図8(c)はスタビライザの前端の衝突による端子衝突壁の変形が完了して端子金具が規定の中途挿入状態に止められている状態の説明図、図9は一実施形態の端子衝突壁とスタビライザの衝突時における挿入力の変化を示すグラフである。
【0025】
本実施形態に示したコネクタのハウジング10は、図4及び図5に示すように、図3に示した端子金具20が挿入装着される複数の端子挿入孔11と、端子挿入孔11に正規に嵌合完了した端子金具20を抜け止めするランス12と、ランス12の側方に並んで設けられたガイド溝13と、が備えられ、更に、端子金具20の誤挿入防止構造として端子衝突壁14が備えられている。
【0026】
端子金具20は、金属板のプレス成形によって形成された雌型の端子金具で、図3に示すように、先端に配置されて相手の雄型の端子金具に嵌合する角筒状の嵌合接続部21と、後端に配置されて電線が圧着接続される電線圧着部22と、嵌合接続部21と電線圧着部22との間を連結している中間部23と、嵌合接続部21に形成されたランス係合部24と、嵌合接続部21の外周に突設されたスタビライザ25と、を備える。
【0027】
ランス係合部24は、ハウジング10のランス12が係合する段差面で、嵌合接続部21の上部壁21aの後端に形成されている。
【0028】
スタビライザ25は、上部壁21aの側縁から上方に突出するように、嵌合接続部21を形成している金属板の一部を切り起こして形成された突片である。スタビライザ25は、端子挿入孔11への誤挿入の防止に利用される。
【0029】
ハウジング10の複数の端子金具20は、図1及び図2に示すように、2行2列に、装備される。
【0030】
ランス12は、図5に示すように、端子挿入孔11の一側の壁面(図5では、端子挿入孔11の下側の壁面)に装備されている。ランス12は、図5に示すように、端子金具20の挿入方向(図5の矢印X2方向)に沿って延在する弾性片12aの先端に端子挿入孔11内に突出した突起12bを設けた構造である。ランス12は、端子金具20が図6(b)に示すように適正な向きで正規の嵌合完了位置まで挿入されたときに、突起12bを端子金具20の嵌合接続部21に形成したランス係合部24に係合させることで、端子金具20の抜け止めを行う。
【0031】
本実施形態の場合、端子挿入孔11に挿入される端子金具20の適正な向きとは、図6(b)に示すように、スタビライザ25が下方に向いた向きである。
【0032】
ガイド溝13は、図6に矢印X3で示すように端子金具20が適正な向きで端子挿入孔11に挿入されたときに、スタビライザ25を正規の嵌合完了位置まで案内するように、端子挿入孔11の一側の壁面(図6(b)では、端子挿入孔11の下側の壁面)に、ランス12と並んで装備されている。
【0033】
誤挿入防止構造として端子衝突壁14は、図7に矢印X4で示すように端子金具20が上下反転させた不適正な向きで挿入されたときに、スタビライザ25の前端と衝突して端子金具20を中途挿入状態に停止させる。この端子衝突壁14は、上下反転させた不適正な向きで挿入された端子金具20を図7(b)に示すように中途挿入状態に止めることで、誤挿入の見落としを防止する。
【0034】
本実施形態の場合、端子衝突壁14は、図8に示すようにスタビライザ25との衝突時にスタビライザ25からの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、スタビライザ25の衝突時には、端子衝突壁14の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザ25への衝撃を緩和する。
【0035】
更に詳しく説明すると、端子衝突壁14は、端子金具20の挿入方向と逆方向に突出するように、端子挿入孔11の上壁面11aに突設された突起状であり、スタビライザ25との衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面14aを備えることで、テーパ構造になっている。
【0036】
図8(a)に示すように、テーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ1は、90度未満となる鋭角に設定されている。
【0037】
本実施形態の端子衝突壁14は、スタビライザ25が衝突する前の状態では、先端部14bが端子挿入孔11側に突出しない(即ち、図8(a)に示した上壁面11aの延長上に先端部14bが位置する)状態にある。そして、スタビライザ25の衝突途中では、図8(b)に示すように、先端部14bがスタビライザ25からの押圧力に応じて圧縮変形し、変形の増大に伴ってスタビライザ25との接触面積が徐々に増加する。そして、端子衝突壁14がスタビライザ25の移動を規制する力は、スタビライザ25との間の接触面積の増加に相応して徐々に増加し、接触面積が所定値に達すると、スタビライザ25を中途挿入状態に止める。
【0038】
図8(c)の状態は、端子衝突壁14の変形の増大によって、端子衝突壁14とスタビライザ25との接触面積が所定値に達して、スタビライザ25が中途挿入状態に止められた状態を示している。この状態では、端子衝突壁14の先端部14bが端子挿入孔11側に膨出するように、先端部14bが撓み変形している。
【0039】
本実施形態の場合、スタビライザ25との衝突時に端子衝突壁14に発生する変形が弾性変形に止まるように、端子衝突壁14の形状、及び樹脂材料の選定がなされている。
【0040】
図9は、本実施形態において、端子金具20の誤挿入によってスタビライザ25が端子衝突壁14に衝突するときに、端子金具20の挿入に必要な挿入力F1を示している。
【0041】
以上に説明した本実施形態のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、端子金具20が誤挿入された場合に、スタビライザ25の前端と端子衝突壁14との衝突により、端子金具20が中途挿入状態に止められるため、その誤挿入の見落としを防止することができる。
【0042】
しかも、スタビライザ25の前端と端子衝突壁14との衝突時には、テーパ構造の端子衝突壁14の変形により衝突時の衝撃が吸収されて、スタビライザ25への衝撃を緩和するため、誤挿入によってスタビライザ25の変形等の端子金具20の破損を防止することができる。
【0043】
更に、本実施形態のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造では、スタビライザ25との衝突時に端子衝突壁14に発生する変形が弾性変形であるため、誤挿入された端子金具20を端子挿入孔11から抜けば、端子衝突壁14が変形のない当初の状態に復帰する。
【0044】
そのため、誤挿入した端子金具20を適正な向きで挿入し直すことで、端子金具20を簡単に正規の嵌合完了状態に修正することができ、コネクタ組立時の作業性や歩留まりを向上させることができる。
【0045】
なお、本発明のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0046】
例えば、端子衝突壁のテーパ構造を形成するテーパ面の傾斜角度は、上記実施形態よりも適宜に増減させることで、スタビライザとの衝突時の変形特性を変えることができ、衝撃吸収特性を調整することができる。
【0047】
図10(a)は、本発明に係る端子衝突壁14Aのテーパ構造におけるテーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ2を一実施形態のθ1よりも鋭角化した場合の端子衝突壁14Aの説明図、図10(b)は図10(a)に示した端子衝突壁14Aにスタビライザ25が衝突したときの挿入力F2の変化を示すグラフである。
【0048】
また、図11(a)は本発明に係る端子衝突壁14Bのテーパ構造におけるテーパ面14aと端子挿入孔11の上壁面11aとの間の挟角θ3を図10(a)の例のθ2よりも更に鋭角化した場合の端子衝突壁14Bの説明図、図11(b)は図11(a)に示した端子衝突壁14Bにスタビライザ25が衝突したときの挿入力F3の変化を示すグラフである。
【0049】
図10及び図11に示したように、テーパ面14aの傾斜角度の設定により、スタビライザ25との衝突時の衝撃吸収特性を調整するようにした場合には、次の作用・効果を得ることができる。
【0050】
即ち、端子金具20が設計変更されて端子金具20のスタビライザ25の強度が変わる場合には、端子衝突壁のテーパ面14aの傾斜角度を設定変更して、スタビライザ25との衝突時の衝撃吸収特性を端子金具20に合わせることで、端子金具20の破損を防止する性能を維持することができ、端子金具20の設計変更への対応を容易にすることができる。
【0051】
また、上記各実施形態において、端子衝突壁14a,14Aは、スタビライザ25との衝突により弾性変形するものであるが、端子衝突壁14a,14Aは、塑性変形するものであっても、端子金具20の誤挿入の見落とし及び端子金具20の破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ハウジング
11 端子挿入孔
13 ガイド溝
14 端子衝突壁
14a テーパ面
14b 先端部
20 端子金具
25 スタビライザ
θ1 挟角(傾斜角)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誤挿入防止用のスタビライザが一側の外周に突設された端子金具が挿入装着される端子挿入孔と、前記端子金具が適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザを正規の嵌合完了位置まで案内するように前記端子挿入孔の一側の壁面に装備されたガイド溝と、がハウジングに備えられるコネクタのハウジングにおいて、前記端子金具が不適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザの前端と衝突して前記端子金具を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁を前記端子挿入孔に備えて、不適正な向きで挿入された前記端子金具を中途挿入状態に止めることで誤挿入の見落としを防止する、コネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造であって、
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突時に前記スタビライザからの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴って前記スタビライザとの接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、前記スタビライザの衝突時には、前記端子衝突壁の変形によりスタビライザへの衝撃を緩和することを特徴とするコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【請求項2】
前記スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が、弾性変形であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【請求項3】
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面を備え、前記テーパ面の傾斜角度の設定により、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性が調整されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【請求項1】
誤挿入防止用のスタビライザが一側の外周に突設された端子金具が挿入装着される端子挿入孔と、前記端子金具が適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザを正規の嵌合完了位置まで案内するように前記端子挿入孔の一側の壁面に装備されたガイド溝と、がハウジングに備えられるコネクタのハウジングにおいて、前記端子金具が不適正な向きで挿入されたときに前記スタビライザの前端と衝突して前記端子金具を中途挿入状態に停止させる端子衝突壁を前記端子挿入孔に備えて、不適正な向きで挿入された前記端子金具を中途挿入状態に止めることで誤挿入の見落としを防止する、コネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造であって、
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突時に前記スタビライザからの押圧力に応じて変形が増大し、変形の増大に伴って前記スタビライザとの接触面積が徐々に増加するテーパ構造に形成され、前記スタビライザの衝突時には、前記端子衝突壁の変形によりスタビライザへの衝撃を緩和することを特徴とするコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【請求項2】
前記スタビライザとの衝突時に前記端子衝突壁に発生する変形が、弾性変形であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【請求項3】
前記端子衝突壁は、前記スタビライザとの衝突の開始位置に向かって徐々に板厚を低減させるテーパ面を備え、前記テーパ面の傾斜角度の設定により、スタビライザとの衝突時の衝撃吸収特性が調整されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタにおける端子金具の誤挿入防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−25958(P2013−25958A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158291(P2011−158291)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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