説明

コネクタの取付構造

【課題】電気部品を相手側部材に組み付けることによってコネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付作業を容易にする。
【解決手段】本発明は、コネクタ10とこのコネクタ10を遊動可能に支持するブラケット30とを備えた電気部品1をケースRに組み付けることにより、コネクタ10をケースRにおける取付孔R2に取り付るためのコネクタ10の取付構造であって、ブラケット30は、コネクタ10が取付孔R2に取り付けられる直前までは、コネクタ10の遊動を規制しているものの、コネクタ10が取付孔R2に取り付けられる取付途上においては、コネクタ10の遊動を許容する構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタを相手側部材における所定の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のオートマチックトランスミッション等に用いられる電気部品として、コネクタとこのコネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えており、電気部品を相手側部材に組み付けることにより、コネクタが相手側部材における所定の装着箇所に取り付けられる構成のものがある(例えば下記特許文献1)。このような電気部品の取付作業においては、コネクタの軸心位置が所定の装着箇所に対して位置ずれしないように慎重に作業を行う必要がある。この点、上記電気部品によると、コネクタが支持部材に対して遊動可能に支持されているから、位置ずれを吸収してコネクタの軸芯を一定の位置に保持しつつ取付作業を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−4840公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記電気部品によると、コネクタが常に支持部材に対して遊動可能に支持されているため、コネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付作業にかかる前にコネクタを所定の装着箇所に対して芯合わせすることが困難になる。かといって、コネクタを支持部材に対して遊動不能に固定してしまうと、コネクタの取付途上においてコネクタの位置ずれが許容されないため、コネクタに無理な力が加わる等のおそれがある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電気部品を相手側部材に組み付けることによってコネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、コネクタとこのコネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、コネクタを相手側部材における所定の装着箇所に取り付るためのコネクタの取付構造であって、支持部材は、コネクタが所定の装着箇所に取り付けられる直前までは、コネクタの遊動を規制しているものの、コネクタが所定の装着箇所に取り付けられる取付途上においては、コネクタの遊動を許容する構成としたところに特徴を有する。
【0005】
このような構成によると、電気部品のコネクタを相手側部材における所定の装着箇所に取り付ける直前までは、コネクタの遊動が規制されているから、所定の装着箇所に対するコネクタの芯合わせがしやすくなる。また、コネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付途上においては、コネクタの遊動が許容されているから、コネクタの軸芯位置が所定の装着箇所に対して位置ずれするおそれがない。したがって、コネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付作業が容易になる。
【0006】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
コネクタの所定の装着箇所への取付方向をZ方向と定義したときに、支持部材は、コネクタに設けられた挿通溝に対してZ方向に挿通可能な取付片を有し、コネクタの遊動を規制する規制位置とコネクタの遊動を許容する許容位置との間でコネクタを移動可能に支持する構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタの取付方向と取付片の挿通方向が一致しているため、取付片を挿通溝へ挿通する作業に続けて、コネクタを所定の装着箇所に取り付ける作業を行うことができる。
【0007】
取付片の板面方向においてZ方向と交差する方向をX方向と定義したときに、挿通溝を構成する周壁は、規制位置において取付片のX方向両側に当接可能なX方向規制壁を備えている構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタが規制位置にあるときには、取付片のX方向両側がX方向規制壁に当接することにより、コネクタのX方向への移動が規制される。
【0008】
取付片の板厚方向をY方向と定義したときに、挿通溝を構成する周壁は、規制位置において取付片のY方向両側に当接可能なY方向規制壁を備えている構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタが規制位置にあるときには、取付片のY方向両側がY方向規制壁に当接することにより、コネクタのY方向への移動が規制される。
【0009】
コネクタは、取付片の板厚方向に変位可能な係止部を備え、取付片は、規制位置で係止部と係止することによりコネクタのZ方向への抜止を行う第1抜止部と、許容位置で係止部と係止することによりコネクタの遊動を許容しつつZ方向への抜止を行う第2抜止部とを備えている構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタが規制位置にあるときには、係止部が第1抜止部に係止することによりコネクタのZ方向への抜止が可能である。一方、コネクタが許容位置にあるときには、係止部が第2抜止部に係止することによりコネクタの遊動を許容しつつZ方向への抜止が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気部品を相手側部材に組み付けることによってコネクタを所定の装着箇所に取り付ける取付作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図11の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、自動車のオートマチックトランスミッションのケース(図示せず)内に配される電気部品1が、ケース(本発明の「相手側部材」の一例)Rを介して外部回路に対して電気的に接続されるものを示す。尚、以下の説明において、幅方向とは図1の矢線X方向を基準とし、前後方向とは図2の矢線Y方向を基準として図示左側を前側とし、上下方向とは図1や図2の矢線Z方向を基準とする。
【0012】
ケースRは合成樹脂製のプレートR1を有しており、このプレートR1には、外部回路と接続される外部回路用接続部(図示せず)と、電気部品1と接続される電気部品用接続部(図示せず)とが設けられている。この電気部品用接続部は、図1に示すように、プレートR1の一面(下面)に開口する取付孔(本発明の「所定の装着箇所」の一例)R2の内部に設けられている。また、取付孔R2の開口縁には、外方(図示Z方向下方)に向けて間口が次第に大きくなる傾斜面を有する案内面R3が周設されている。尚、取付孔R2には、次述するコネクタ10が挿入可能である。
【0013】
電気部品1は、コネクタ10と、コネクタ10の下端部に取り付けられたブラケット(本発明の「支持部材」の一例)30とを備えている。ブラケット30は、コネクタ10の遊動を規制する規制位置とコネクタ10の遊動を許容する許容位置との間でコネクタ10を上下方向(取付孔R2への挿入方向)に移動可能に支持している。
【0014】
ブラケット30は、金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。ブラケット30は、前後方向に延びる基底部31と、基底部31の幅方向両側縁から上方に立ち上がる一対の規制片32と、基底部31の前縁から上方に立ち上がる取付片33とを備えている。取付片33は、その上端部を幅広に形成した第1幅広部33Aと、その第1幅広部33Aよりも下側(基底部31側)に形成された第2幅広部33Bとを備えている。第2幅広部33Bは、第1幅広部33Aよりもやや幅広に設定されており、かつ、上下方向の寸法が第1幅広部33Aよりも長めに設定されている。また、取付片33において第1幅広部33Aの下端と第2幅広部33Bの上端との間は、第1幅広部33Aよりも幅狭に形成された第1幅狭部33Cとされ、取付片33において第2幅広部33Bの下端と連なる部分は、第2幅広部33Bよりも幅狭に形成された第2幅狭部33Dとされている。
【0015】
また、取付片33において第1幅広部33Aから第1幅狭部33Cにかけての範囲には、略方形をなす第1抜止孔(本発明の「第1抜止部」の一例)33Eが取付板33の板厚方向に貫通して形成されている。取付片33において第2幅広部33Bの上端より下方には、略方形をなす第2抜止孔(本発明の「第2抜止部」の一例)33Fが取付板33の板厚方向に貫通して形成されている。第2抜止孔33Fは、その上端側が幅狭に形成されており、その幅狭部分の幅寸法は、第1抜止孔33Eの幅寸法よりも幅広に設定されている。また、第2抜止孔33Fの上下寸法は、第1抜止孔33Eの上下寸法よりも長めに設定されている。
【0016】
コネクタ10は上方に開口した円筒状をなす本体部11を有し、本体部11内部における奥端(下端)には、雄タブ(図示せず)が上方に突出して設けられている。本体部11の外周面における上端部には、カム溝12がらせん状に形成されている。一方、電気部品用接続部は回動部材(図示せず)を有し、この回動部材(図示せず)に設けられたカムピン(図示せず)がカム溝12内部に進入可能となっている。このため、コネクタ10を取付孔R2内部に挿入させカムピンをカム溝12内部に進入させた後、回動部材を回動させることによりコネクタ10が取付孔R2の奥方(上方)へ引き込まれる。そして、コネクタ10が取付孔R2内部の正規位置まで挿入されると、コネクタ10が電気部品用接続部と正規嵌合する。
【0017】
本体部11の外周面においてカム溝12の下方には、ゴム栓取付溝13が周設されている。このゴム栓取付溝13には、ゴムリング40が装着されており、本体部11が取付孔R2内部に挿入されると、ゴムリング40が取付孔R2の内周面とゴム栓取付溝13を構成する周面との間で全周方向に亘って密着した状態となる。このため、取付孔R2の外部から内部に水が浸入することが規制される。
【0018】
本体部11の下面11Aにおける前端位置には、ブラケット30の取付片33と接続されるブラケット接続部14が垂下形成されている。ブラケット接続部14は、取付片33の第1幅広部33Aが挿通される第1挿通溝15と、取付片33の第2幅広部33Bが挿通される第2挿通溝16とを備え、第1挿通溝15が第2挿通溝16の上方に配置されている。また、ブラケット接続部14は両挿通溝15,16の前後両側にそれぞれ配置された一対の保護壁17を備えており、これにより両挿通溝15,16が外部の衝撃によって損傷することが規制されている。
【0019】
第1挿通溝15は、第1幅広部33Aの両側縁部を前後方向及び幅方向の双方から挟み付け可能に形成されている。すなわち、第1挿通溝15は、断面略門形をなす一対の溝部を有し、この溝部を構成する奥面(本発明の「X方向規制壁」の一例)15A同士が対向状態をなし両溝部が幅方向に所定間隔を空けて設置されている。奥面15A同士の間隔は、第1幅広部33Aの幅寸法とほぼ同じか、あるいは第1幅広部33Aの幅寸法よりもやや大きめとなるように設定され、第1幅狭部33Cの幅寸法よりも幅広に設定されている。また、溝部を構成する前面(本発明の「Y方向規制壁」の一例)15Bは、同後面(本発明の「Y方向規制壁」の一例)15Cと対向配置され、前後両面15B,15Cの間隔は、第1幅広部33Aの板厚とほぼ同じか、あるいは第1幅広部33Aの板厚よりもやや大きめとなるように設定されている。
【0020】
第2挿通溝16は、第2幅広部33Bの両側縁部を前後方向及び幅方向の双方から挟み付け可能に形成されている。すなわち、第2挿通溝16は、断面略門形をなす一対の溝部を有し、この溝部を構成する奥面(本発明の「X方向規制壁」の一例)16A同士が対向状態をなし両溝部が幅方向に所定間隔を空けて設置されている。奥面16A同士の間隔は、図9に示すように、第2幅広部33Bの幅寸法とほぼ同じか、あるいは第2幅広部33Bの幅寸法よりもやや大きめとなるように設定され、図10に示すように、第2幅狭部33Dの幅寸法よりも幅広に設定されている。また、溝部を構成する前面(本発明の「Y方向規制壁」の一例)16Bは、同後面(本発明の「Y方向規制壁」の一例)16Cと対向配置され、前後両面16B,16Cの間隔は、第2幅広部33Bの板厚とほぼ同じか、あるいは第2幅広部33Bの板厚よりもやや大きめとなるように設定されている。
【0021】
ブラケット接続部14において第1挿通溝15の上端と本体部11の下面11Aとの間には、第1幅広部33Aを収容可能とする第1収容空間18Aが形成されている。第1収容空間18Aは、その幅寸法が第1幅広部33Aの幅寸法よりも幅広に設定され、その上下寸法が第1幅広部33Aの上下寸法よりも大きめに設定されている。また、第1収容空間18A内部に収容された第1幅広部33Aは、両保護壁17間で前後方向に自由に移動可能である。
【0022】
尚、第1収容空間18Aは、保護壁17を略T字形に切り欠くことにより形成された切り欠き部17Aにおいて幅方向に延びる開口部から前方に臨んでいる。この切り欠き部17Aにおいて上下方向に延びる開口部の下端には、保護壁17の板厚方向(取付片33の板厚方向)に撓み可能な係止片(本発明の「係止部」の一例)19が上方に突出して設けられている。
【0023】
ブラケット接続部14において第1挿通溝15の下端と第2挿通溝16の上端との間には、第2幅広部33Bを収容可能とする第2収容空間18Bが形成されている。第2収容空間18Bは、その幅寸法が第2幅広部33Bの幅寸法よりも幅広に設定され、その上下寸法が第2幅広部33Bの上下寸法よりもやや大きめとなるように設定されている。また、第2収容空間18B内部に収容された第2幅広部33Bは、両保護壁17間で前後方向に自由に移動可能である。
【0024】
さて、上述したようにコネクタ10は、ブラケット30に対して規制位置と許容位置との間で上下方向に移動可能となっており、取付孔R2に取り付けられる直前までは、規制位置に位置して遊動が規制されているものの、取付孔R2に取り付けられる取付途上においては、許容位置に位置して遊動が許容されるように構成されている。
【0025】
コネクタ10が規制位置にあるときには、図1に示すように、第1幅広部33Aの上端部が第1挿通溝15の下端部に進入し、第2幅広部33Bの上端部が第2挿通溝16の下端部に進入し、係止片19が第1係止孔33E内に嵌り込んだ状態となっている。このため、コネクタ10は、幅方向及び前後方向の双方に移動することが規制されている。さらに、コネクタ10は、図2に示すように、係止片19の上端係止面19Aが第1係止孔33Eの内周面における上面と係止することで、ブラケット30から上方に抜けることが規制されている。
【0026】
コネクタ10が規制位置から許容位置へ向かう途上では、図3に示すように、第1幅広部33Aが第1挿通溝15内によって挿通され、第2幅広部33Bが第2挿通溝16によって挿通されている。このため、コネクタ10は、幅方向及び前後方向の双方に移動することが規制されている。このとき係止片19は、図4に示すように撓み変形しつつ、上端係止面19Aが取付片33において第1抜止孔33Eと第2抜止孔33Fとの間に乗り上げた状態となっている。そして、コネクタ10が許容位置に至ると、図6に示すように、係止片19が復帰して上端係止面19Aが第2係止孔33Fに嵌り込んだ状態となる。
【0027】
コネクタ10が許容位置にあるときには、図5に示すように、第1幅広部33Aが第1収容空間18A内に収容され、第1幅狭部33Cが第1挿通溝15の両溝部間に配置され、第2幅広部33Bが第2収容空間18B内に収容され、第2幅狭部33Dが第2挿通溝16の両溝部間に配置されている。このため、コネクタ10は、図7、図8、又は図11に示すように、幅方向及び前後方向の双方に移動することが許容される。
【0028】
さらに、上下方向については、図6に示すように、ブラケット30の規制片32の上面32Aが、本体部11の下面11Aにおいて前後方向に形成された凹部20の上面20Aに当接することでコネクタ10が最下点に位置し、この最下点にあるときに係止片19の上端係止面19Aと第2抜止孔33Fの内周面における上面との間に隙間が形成されているから、この隙間の分だけコネクタ10が上方へ移動することが許容される。尚、凹部20の上面20Aにおける外側縁には、規制片32の上面32Aが凹部20から外れることを規制する外れ止め規制部21が垂下形成されている。
【0029】
以上のように、規制位置及びこの規制位置から許容位置に向かう途上におけるコネクタ10は、図1ないし図4に示すように、幅方向、前後方向、及び上下方向のいずれの方向にも移動することが規制されている。一方、許容位置におけるコネクタ10は、図5及び図6に示すように、遊動可能な状態でブラケット30に取り付けられているから、図7に示すように、幅方向及び上下方向に移動することが許容されると共に、図8に示すように、前後方向及び上下方向に移動することが許容される。さらに、図7に示すように、コネクタ10がブラケット30に対して傾いた姿勢をとったとしても、外れ止め規制部21により規制片32の上面32Aが凹部20から外れてしまうことが規制される。
【0030】
本実施形態は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。まず、コネクタ10が規制位置にある状態で電気部品1をケースRに向けて近づけていく。規制位置にあるコネクタ10は、第1幅広部33Aの上端部が第1挿通溝15によって挿通されると共に、第2幅広部33Bの上端部が第2挿通溝16によって挿通されるから、幅方向、前後方向、及び上下方向に移動することが規制される。したがって、コネクタ10を取付孔R2に対して芯合わせする作業が容易になる。
【0031】
図1はコネクタ10が取付孔R2に取り付けられる直前の状態を示したものであって、ブラケット30の押し込みに伴ってコネクタ10が相対的にブラケット30側に接近する。規制位置から許容位置に向かう途上におけるコネクタ10は、図3及び図4に示すように、第1幅広部33Aの全体が第1挿通溝15によって挿通されると共に、第2幅広部33Bが第2挿通溝16の全体によって挿通されるから、幅方向、前後方向、及び上下方向に移動することが規制される。
【0032】
そして、コネクタ10が許容位置に至ると、図5及び図6に示すように、第1幅広部33Aが第1収容空間18Aに収容され、第1幅狭部33Cが第1挿通溝15の両溝部間に位置し、第2幅広部33Bが第2収容空間18Bに収容され、第2幅狭部33Dが第2挿通溝16の両溝部間に位置する。このため、コネクタ10は、幅方向、前後方向、及び上下方向における遊動が許容される。したがって、許容位置にあるコネクタ10は、図7、図8、及び図11に示すように、幅方向、前後方向、及び上下方向に移動することが許容される。
【0033】
引き続き、電気部品1のケースRへの組み付けを行い、コネクタ10を取付片33に対して相対的に接近させる作業に続けて、コネクタ10を取付孔R2に挿入することができる。このとき、電気部品1の組み付け方向が正規の組み付け方向に対して傾いた姿勢となることがあるものの、コネクタ10がブラケット30に対して遊動可能に支持されているから、コネクタ10が取付孔R2の内周面に押し当てられる等のおそれがなく、円滑な挿入が可能になる。すなわち、電気部品1をケースRへ組み付ける作業における組み付け誤差を吸収することができるから、コネクタ10の取付孔R2に対する円滑な挿入動作を確保することができる。
【0034】
以上のように本実施形態では、電気部品1のコネクタ10をケースRにおける取付孔R2に取り付ける直前までは、コネクタ10の遊動が規制されているから、取付孔R2に対するコネクタ10の芯合わせがしやすくなる。また、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける取付途上においては、コネクタ10の遊動が許容されているから、コネクタ10の軸芯位置が取付孔R2の軸心に対して位置ずれするおそれがない。したがって、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける取付作業が容易になる。
【0035】
また、コネクタ10の取付孔R2への取付方向とコネクタ10の取付片33への挿通方向が一致しているため、取付片33を両挿通溝15,16へ挿通する作業に続けて、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける作業を行うことができる。
【0036】
また、コネクタ10が規制位置にあるときには、取付片33の幅方向両側が両挿通溝15,16の奥面15A,16Aに当接することにより、コネクタ10の幅方向への移動が規制され、取付片33の前後方向両側が両挿通溝15,16の前後両面15B,15C,16B,16Cに当接することにより、コネクタ10の前後方向への移動が規制される。
【0037】
さらに、コネクタ10が規制位置にあるときには、係止片19の上端係止面19Aが第1抜止孔33Eの内周面における上面に係止することによりコネクタ10の上方への抜止が可能である。一方、コネクタ10が許容位置にあるときには、係止片19が第2抜止孔33Fの内周面における上面に係止することによりコネクタ10の遊動を許容しつつ上方への抜止が可能である。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では図1に示すようにコネクタ10が取付孔R2に対して所定の距離だけ離れた位置まで規制位置に位置するようにしているものの、本発明によると、コネクタ10が取付孔R2に挿入される直前の位置(図5のコネクタ10の位置)まで規制位置に位置するようにしてもよい。
【0039】
(2)本実施形態ではコネクタ10が両挿通溝15,16に対して上下方向に挿通されるものの、本発明によると、コネクタ10が挿通溝に対して幅方向に挿通されるものとしてもよいし、前後方向に挿通されるものとしてもよいし、本体部11の中心を上下方向に通過する軸線回りに回動されるものとしてもよい。
【0040】
(3)本実施形態では規制位置にあるコネクタ10が幅方向、前後方向、及び上下方向のいずれの方向に対しても移動が規制されているものの、本発明によると、コネクタ10が上記いずれか一つの方向に対して移動が規制されるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態におけるコネクタが規制位置にある状態を示した正面図
【図2】そのコネクタが規制位置にある状態を示した一部切り欠き側断面図
【図3】そのコネクタが規制位置から許容位置に向かう途上を示した正面図
【図4】そのコネクタが規制位置から許容位置に向かう途上を示した一部切り欠き側断面図
【図5】そのコネクタが許容位置にある状態を示した正面図
【図6】そのコネクタが許容位置にある状態を示した一部切り欠き側断面図
【図7】そのコネクタが許容位置において幅方向及び上下方向に傾いた状態を示した正面図
【図8】そのコネクタが許容位置において前後方向及び上下方向に傾いた状態を示した一部切り欠き側断面図
【図9】そのコネクタが規制位置にある状態において幅方向及び前後方向に移動が規制された状態を示した断面図
【図10】そのコネクタが許容位置にある状態において幅方向及び前後方向に遊動可能に支持されている状態を示した断面図
【図11】そのコネクタが許容位置にある状態において幅方向及び前後方向に傾いた状態を示した断面図
【符号の説明】
【0042】
1…電気部品
10…コネクタ
15…第1挿通溝
15A…第1挿通溝の奥面(X方向規制壁)
15B…第1挿通溝の前面(Y方向規制壁)
15C…第1挿通溝の後面(Y方向規制壁)
16…第2挿通溝
16A…第2挿通溝の奥面(X方向規制壁)
16B…第2挿通溝の前面(Y方向規制壁)
16C…第2挿通溝の後面(Y方向規制壁)
19…係止片(係止部)
30…ブラケット(支持部材)
33…取付片
33E…第1抜止孔(第1抜止部)
33F…第2抜止孔(第2抜止部)
R…ケース(相手側部材)
R2…取付孔(所定の装着箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタとこのコネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、前記コネクタを前記相手側部材における所定の装着箇所に取り付るためのコネクタの取付構造であって、
前記支持部材は、前記コネクタが前記所定の装着箇所に取り付けられる直前までは、前記コネクタの遊動を規制しているものの、前記コネクタが前記所定の装着箇所に取り付けられる取付途上においては、前記コネクタの遊動を許容することを特徴とするコネクタの取付構造。
【請求項2】
前記コネクタの前記所定の装着箇所への取付方向をZ方向と定義したときに、前記支持部材は、前記コネクタに設けられた挿通溝に対して前記Z方向に挿通可能な取付片を有し、前記コネクタの遊動を規制する規制位置と前記コネクタの遊動を許容する許容位置との間で前記コネクタを移動可能に支持する請求項1に記載のコネクタの取付構造。
【請求項3】
前記取付片の板面方向において前記Z方向と交差する方向をX方向と定義したときに、前記挿通溝を構成する周壁は、前記規制位置において前記取付片の前記X方向両側に当接可能なX方向規制壁を備えている請求項2に記載のコネクタの取付構造。
【請求項4】
前記取付片の板厚方向をY方向と定義したときに、前記挿通溝を構成する周壁は、前記規制位置において前記取付片の前記Y方向両側に当接可能なY方向規制壁を備えている請求項2又は請求項3に記載のコネクタの取付構造。
【請求項5】
前記コネクタは、前記取付片の板厚方向に変位可能な係止部を備え、前記取付片は、前記規制位置で前記係止部と係止することにより前記コネクタの前記Z方向への抜止を行う第1抜止部と、前記許容位置で前記係止部と係止することにより前記コネクタの遊動を許容しつつ前記Z方向への抜止を行う第2抜止部とを備えている請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のコネクタの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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