説明

コネクタ接続用治具及びコネクタ接続方法

【課題】コネクタ接続方向と直交する方向からの操作によりコネクタを接続可能としながら、コネクタの製造コストを抑制する。
【解決手段】軸部11を側面に備えるハウジング10を含む基板側コネクタC1と、軸部21を側面に備えるハウジング20を含む配線材側コネクタC2とを接続するコネクタ接続用治具30Aである。この治具30Aは、仮嵌合状態のハウジング10、20を挟み込む一対の側板部31を備える。各側板部31は、当該治具30Aをハウジング10、20に対して移動させるに伴い、軸部11、21を案内する第1案内部34及び第2案内部36備える。案内部34,36は、治具30Aを操作方向に移動させるときには、コネクタ接続方向に軸部11、21を相対的に接近させ、これと逆方向に移動させるときには、軸部11、21の位置関係を維持したまま両ハウジング10、20から治具30Aを引き離すことを許容するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの接続作業に用いられるコネクタ接続用治具、及びこのコネクタ接続用治具を用いたコネクタ接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、コネクタ接続方向と直交する方向にスライダを操作することでコネクタ同士を接続することが可能なコネクタが知られている。
【0003】
このコネクタは、雄型ハウジングを有する第1コネクタと、雌型ハウジングを有する第2コネクタとからなり、雌型ハウジングがコネクタ接続方向に変位可能となるように前記雄型ハウジングに連結されている。詳しくは、第2コネクタの雌型ハウジングは、ハウジング本体と、このハウジング本体に対してコネクタ接続方向と直交する方向にスライド可能となるように当該ハウジング本体に組み付けられるスライダとを備えている。このスライダはカム溝を備えており、雄型ハウジングに形成されたフォロアピンがこのカム溝に挿入されることで、両ハウジングが互いに係合、連結されている。そして、スライダの移動に伴い、雌型ハウジング(ハウジング本体)と雄型ハウジングとが互いに離れた非嵌合位置と互いに嵌合する嵌合位置とに前記雄型ハウジングが変位することが可能となるように前記カム溝が形成されている。これにより、コネクタ接続時には、所定の引き出し位置からスライダを押し込むことで、このスライダの操作に伴い雌型ハウジングと雄型ハウジングとが嵌合し、逆にスライダを引き出すと、雌型ハウジングと雄型ハウジングとが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−172651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなコネクタは、コネクタ接続方向に力を掛けることができない場合などに適しており、例えば車両に配索されるワイヤハーネス等、多極化されたコネクタ同士の接続作業の作業性を向上させるために有用なものである。
【0006】
しかし、第2コネクタの雌型ハウジングを製造するには、ハウジング本体とスライダとを個別に成形した上で、さらにスライダをハウジング本体に組み付ける組立作業が必要となるため製造コストがかかる。また、車両のワイヤハーネスなどでは、一旦、車両に配索されると、スライダを操作してコネクタ接続作業を再度行うことは希であり、コネクタ接続後はスライダが無駄になる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、コネクタ接続方向と直交する方向からの操作によりコネクタを接続可能としながら、コネクタの製造コストを抑制することに寄与する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタ接続用治具は、コネクタ接続方向と直交する方向に互いに反対向きに突出する一対の第1軸部を側面に備える第1コネクタハウジングを含む第1コネクタと、前記第1コネクタハウジングに嵌合可能な形状を有し、当該第1コネクタハウジングに嵌合した状態で前記第1軸部とそれぞれ平行に並ぶ、当該第1軸部と同等の一対の第2軸部を側面に備える第2コネクタハウジングを含む第2コネクタとを互いに接続するためのコネクタ接続用治具であって、前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとが完全な嵌合状態に至る前の仮嵌合状態で、これらコネクタハウジングを前記第1軸部及び前記第2軸部の軸方向の外側から挟み込むことが可能な一対の側板部と、これら側板部をそれらの並び方向と直交する方向の端部で互いに連結する連結部とを備えており、前記各側板部は、前記コネクタ接続方向と直交する方向を操作方向として、前記連結部とは反対側から当該各側板部の間に前記仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングが挿入されるように当該コネクタ接続用治具を両コネクタハウジングに対して当該操作方向に相対的に移動させることにより前記第1軸部及び前記第2軸部を受け入れつつ案内する第1案内部及び第2案内部をそれぞれ備えており、これら第1案内部及び第2案内部は、当該コネクタ接続用治具を前記両コネクタハウジングに対して前記操作方向に相対的に移動させるときには、当該移動に伴い前記第1軸部及び前記第2軸部が前記コネクタ接続方向に相対的に接近するように当該第1軸部及び第2軸部を案内する一方、当該コネクタ接続用治具を両コネクタハウジングに対して前記操作方向と逆方向に相対的に移動させるときには、前記コネクタ接続方向における前記第1軸部及び第2軸部の位置関係を維持したまま両コネクタハウジングから当該コネクタ接続用治具を引き離すことを許容するように形成されているものである。
【0009】
また、本発明にかかるコネクタ接続方法は、コネクタ接続方向と直交する方向に互いに反対向きに突出する一対の第1軸部を側面に備える第1コネクタハウジングを含む第1コネクタを準備する第1コネクタ準備工程と、前記第1コネクタハウジングに嵌合可能な形状を有し、当該第1コネクタハウジングに嵌合した状態で前記第1軸部とそれぞれ平行に並ぶ、当該第1軸部と同等の一対の第2軸部を側面に備える第2コネクタハウジングを含む第2コネクタを準備する第2コネクタ準備工程と、上記のコネクタ接続用治具を準備する治具準備工程と、前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとを、これらが完全な嵌合状態に至る前の仮嵌合状態とする接続準備工程と、仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングが各側板部の間に挿入され、かつ、前記第1軸部が第1案内部に受け入れられるとともに第2軸部が第2案内部に受け入れられるように前記コネクタ接続用治具を配置した後、第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングに対して前記コネクタ接続用治具を前記操作方向に移動させ、この移動に伴い前記第1軸部及び前記第2軸部を前記コネクタ接続方向に相対的に接近させることで前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとを完全な嵌合状態にするコネクタ接続工程と、このコネクタ接続工程の後、前記コネクタ接続用治具を前記操作方向と逆方向にスライドさせることにより、前記第1コネクタハウジング及び前記第2コネクタハウジングから前記コネクタ接続用治具を引き離す治具取り外し工程と、を含むものである。
【0010】
このようなコネクタ接続用治具及びコネクタ接続方法によれば、仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングを各側板部の間に介在させながらコネクタ接続用治具を操作方向に移動させることで両コネクタを接続することができる。すなわち、コネクタ接続用治具を操作方向に移動させると、第1軸部及び第2軸部がそれぞれ第1案内部及び第2案内部に案内されてコネクタ接続方向に相対的に接近し、その結果、両コネクタハウジングが互いに嵌合される。そして、両コネクタの接続後は、コネクタ接続用治具を操作方向と逆方向に移動させることで、両コネクタの接続状態を保ったままコネクタ接続用治具を両コネクタハウジングから取り外す(引き離す)ことができる。そのため、第1コネクタや第2コネクタの各コネクタハウジングに軸部が設けられていれば、当該各コネクタハウジングに従来のようなスライダに相当する部材を組み込むことなく、コネクタ接続方向と直交する方向からの操作によりコネクタを接続することが可能となる。
【0011】
なお、コネクタ接続用治具のより具体的な構成として、前記第1案内部は、当該コネクタ接続用治具が前記操作方向又は前記逆方向に移動させられる当該コネクタ接続用治具の使用状態の下で、コネクタ接続方向に並び、前記操作方向と平行な方向に互いに平行にかつ直線状に延びる一対の第1案内面を有しており、前記第2案内部は、当該コネクタ接続用治具の前記使用状態の下で、コネクタ接続方向に並び前記操作方向に延びる一対の第2案内面を有し、これら第2案内面のうち前記第1案内部側に位置する一方側の第2案内面が前記第1案内面と平行に形成される一方、これら第2案内面の間隔が前記連結部とは反対側の位置で最も広く前記連結部側に向かうに伴い狭くなるように他方側の第2案内面が形成されている。
【0012】
この構成によれば、コネクタ接続用治具を操作方向に移動させるときには、第1軸部が第1案内面により両側から拘束されることで、当該第1軸部がコネクタ接続方向の一定位置に保たれる。一方、第2軸部は、第2案内部の一対の第2案内面のうち前記他方側の第2案内面に押圧されつつ案内されることで第1軸部に接近するように変位する。これにより両コネクタハウジングが互いに嵌合される。そして、この状態で、コネクタ接続用治具を操作方向と逆方向に移動させるときには、第1軸部及び第2軸部のいずれもコネクタ接続方向に変位することなくそのままの位置に保たれる。これにより両コネクタの接続状態が維持されることとなる。
【0013】
なお、上記のようなコネクタ接続用治具においては、仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングをハウジング対としたときに、前記各側板部は、一列に配列される複数のハウジング対を同時に挟み込むことが可能な形状を有しており、前記第1案内部及び第2案内部は、前記各側板部の間に各ハウジング対が順次挿入されるように当該コネクタ接続用治具を前記操作方向に移動させると、当該移動に伴い各ハウジング対の前記第1軸部及び前記第2軸部を順次受け入れつつこれら第1軸部及び第2軸部を順次前記コネクタ接続方向に相対的に接近させ、前記操作方向と逆方向に当該コネクタ接続用治具を移動させると、各ハウジング対の前記コネクタ接続方向における前記第1軸部及び第2軸部の位置関係を維持したまま各ハウジング対から順次当該コネクタ接続用治具を引き離すことを許容するように形成されていてもよい。
【0014】
この場合、上記したコネクタ接続方法において、前記治具準備工程では、このコネクタ接続用治具を準備し、前記接続準備工程では、第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングをハウジング対として、各第1軸部が同じ側に位置しかつ各第2軸部が同じ側に位置するように複数のハウジング対を一例に配列し、前記コネクタ接続工程では、複数のハウジング対のうちそれらの配列方向の一端に位置するハウジング対の前記第1軸部が第1案内部に、第2軸部が第2案内部にそれぞれ受け入れられるように前記コネクタ接続用治具を配置した後、当該コネクタ接続用治具を前記操作方向へ移動させ、この移動に伴い各ハウジング対の前記第1軸部及び前記第2軸部を順次前記コネクタ接続方向に相対的に接近させることにより各ハウジング対の第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとを完全は嵌合状態にし、前記治具取り外し工程では、コネクタ接続用治具を前記操作方向と逆方向に移動させることにより、各ハウジング対から順次コネクタ接続用治具を引き離すようにすればよい。
【0015】
このようなコネクタ接続用治具及びコネクタ接続方法によれば、複数のコネクタ接続作業を一つのコネクタ接続用治具を用いて効率良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のコネクタ接続用治具及びこれを用いたコネクタ接続方法によれば、従来のようなスライダに相当する部材を別途製作してコネクタハウジングに組み込むことなく、コネクタ接続方向と直交する方向からの操作によりコネクタを接続することが可能となる。従って、コネクタの製造コストを抑制することに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるコネクタ接続用治具(第1実施形態)の使用状態を示す斜視図である。
【図2】コネクタ接続用治具を示す斜視図である。
【図3】コネクタ接続用治具を用いたコネクタ接続作業の説明図である。
【図4】本発明にかかるコネクタ接続用治具(第2実施形態)の使用状態を示す斜視図である。
【図5】コネクタ接続用治具を用いたコネクタ接続作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1及び図2は、本発明にかかるコネクタ接続用治具を概略的に示しており、図1は、その使用状態を、図2は、コネクタ接続用治具単体を、それぞれ斜視図で示している。
【0020】
図1において、符号30Aは、コネクタ接続用治具を、符号C1、C2は、このコネクタ接続用治具30A(以下、治具30Aと略す)を用いて接続することができるコネクタをそれぞれ示している。
【0021】
コネクタC1は、基板側コネクタ(以下、基板側コネクタC1という;第1コネクタ)であり、電気接続箱1に収容された図外の回路基板の表面に実装された状態で固定されている。また、コネクタC2は、この基板側コネクタC1に接続可能に構成された配線材側コネクタ(以下、配線材側コネクタC2という;第2コネクタ)であり、電線2の末端に設けられている。
【0022】
基板側コネクタC1は、同図で左右方向に細長い直方体状のコネクタハウジング10(以下、ハウジング10と略す;第1コネクタハウジング)と、このハウジング10に保持される複数の端子(図略)とを含み、電気接続箱1に形成される開口部から外部に露出している。前記ハウジング10は、回路基板の法線方向に開口する嵌合用凹部を備えており、この嵌合用凹部は、配線材側コネクタC2の後記コネクタハウジング20が嵌合されることが可能な形状を有する。前記端子は、タブ状の接触部を有する雄型端子であり、ハウジング10の前記嵌合用凹部の奥端面から当該嵌合用凹部内にそれぞれ接触部を突出させた状態で当該ハウジング10に保持されるとともに、前記回路基板上に半田付けされることにより基板上回路に電気的に接続されている。
【0023】
配線材側コネクタC2は、コネクタハウジング20(以下、ハウジング20と略す;第2コネクタハウジング)と、各々電線2の末端に装着された状態で前記ハウジング20に保持される複数の端子(図略)とを含む。前記ハウジング20は、基板側コネクタC1の前記嵌合用凹部に嵌合することが可能な直方体状の形状を有する。前記端子は、前記基板側コネクタC1の端子のタブ状の接触部に接触可能な弾性接触片を備えた雌型端子であり、電線2の導体に接触する状態で当該電線2に装着されている。各端子は、前記ハウジング20に形成される端子収納室12に各々収納された状態で、当該ハウジング20により保持されている。これにより前記電線2の末端に配線材側コネクタC2が設けられている。なお、図1中、電線2は1本だけ図示しており、他は省略している。
【0024】
前記基板側コネクタC1と配線材側コネクタC2との接続は、配線材側コネクタC2を基板側コネクタC1の前記嵌合用凹部に対向させ、配線材側コネクタC2をその先端側から嵌合用凹部に差し込み、両ハウジング10、20を互いに嵌合させることにより行う。
【0025】
なお、両ハウジング10、20は、前記治具30Aを用いてこれらハウジング10、20を嵌合するための軸部を備えている。具体的には、基板側コネクタC1のハウジング10は、互いに対向する一対の側面、当例では長辺側の側面に、当該各側面から互いに反対方向に突出する一対の軸部11(第1軸部)を備えている。また、配線材側コネクタC2のハウジング20も同様に、長辺側の側面に、当該各側面から互いに反対方向に突出する、前記軸部11と同等の一対の軸部21(第2軸部)を備えている。
【0026】
基板側コネクタC1の軸部11は、ハウジング10の先端部(図1では上端部)であってその幅方向(図1では左右方向)の中間に設けられ、配線材側コネクタC2の軸部21は、ハウジング10の後端部(図1では上端部)であってその幅方向の中間にそれぞれ設けられている。これにより軸部11、21は、両ハウジング10、20が互いに嵌合した状態では、互いに平行にかつコネクタ接続方向(図1では上下方向)に並ぶ。
【0027】
次に、治具30Aについて説明する。治具30Aは、図1及び図2に示すように、互いに平行に延びる細長い一対の側板部31と、これら側板部31をそれらの長手方向の一端部で互いに連結する連結部33とを備えたコ字型の形状をなし、これら側板部31と連結部33とが同一樹脂材料により一体に成形されたものである。
【0028】
前記一対の側板部31の間隔は、図2に示すように、基板側コネクタC1の嵌合用凹部に配線材側コネクタC2が差し込まれた状態で、両ハウジング10、20を挟み込むことが可能な間隔とされている。具体的には、両ハウジング10、20の側面のうち前記軸部11、21が突設されている側の側面を介して(つまり、軸部11、21の軸方向の外側から)両ハウジング10、20を挟み込むことが可能な間隔とされている。
【0029】
各側板部31は、その長手方向に延びるスリット状の第1案内部34と、この第1案内部34の上側に並び、同じく前記長手方向に延びるスリット状の第2案内部36とを備えている。これら案内部34、36は、両ハウジング10、20を嵌合させるために前記軸部11、21を案内するものであり、第1案内部34は、基板側コネクタC1の軸部11を、第2案内部36は、配線材側コネクタC2の軸部21をそれぞれ案内するものである。
【0030】
これら案内部34、36は、治具30Aの先端側、すなわち側板部31の長手方向において前記連結部33とは反対側にそれぞれ開いている。これにより治具30Aの先端側から軸部11を第1案内部34に、軸部21を第1案内部34に受け入れ可能となっている。
【0031】
これら案内部34、36のうち、第1案内部34を形成する上下の案内面34a、34b(それぞれ本発明の第1案内面に相当する)は、側板部31の長手方向に互いに平行にかつ真っ直ぐに形成されている。一方、第2案内部36を形成する上下の案内面36a、36b(それぞれ本発明の第2案内面に相当する)については、これら案内面36a、36bのうち、下側の案内面36aは前記第1案内部34の各案内面34a、34bと平行に形成されるが、上側の案内面36bは、治具30Aの先端側から後端側に向かって先下がり形成されている。つまり、第2案内部36は、その案内面36a、36bの間隔が治具30Aの先端側で最も広く連結部33側に向かうに伴い狭くなるように形成されている。
【0032】
なお、図中符号32は側板部31を補強するための補強部であり、案内部34、36の両側の部分(符号31a〜31cで示す部分)を互いに連結することにより当該側板部31を補強する。この補強部32は、各側板部31の長手方向複数位置に形成されており、何れも案内面34a、34b及び案内面36a、36bの外側に形成されている。
【0033】
図3は、この治具30Aを用いた上記コネクタC1、C2の接続作業の手順を示している。この治具30Aを用いて上記コネクタC1、C2を接続するには、まず、図3(a)に示すように、基板側コネクタC1の嵌合用凹部に配線材側コネクタC2を差し込み、これらのハウジング10、20を、それが完全な嵌合状態に至る前の仮嵌合状態にする(第1コネクタ準備工程、第2コネクタ準備工程、治具準備工程および接続準備工程)。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、コネクタ接続方向と直交する方向と側板部31とが略平行となるように治具30Aを保持し、コネクタ接続方向と直交する方向を操作方向として治具30Aをその先端側から仮嵌合状態の両コネクタC1、C2のハウジング10、20に近づけ、これらハウジング10、20を両側板部31の間に介在させつつ、基板側コネクタC1の軸部11を各側板部31の第1案内部34に、配線材側コネクタC2の軸部21を第2案内部36にそれぞれ受け入れた状態に当該治具30Aを配置する。
【0035】
そして、この状態からさらに治具30Aを操作方向に操作し、当該治具30Aを当該操作方向にスライドさせる。このように治具30Aをスライドさせると、各側板部31の長手方向、つまり治具30Aの操作方向に互いに平行に真っ直ぐ延びる第1案内部34の各案内面34a、34bに沿って軸部11が案内される結果、軸部11は上下方向の一定位置に拘束される。その一方で、軸部21は、第2案内部36の上側の案内面36bに沿って案内されることにより当該案内面36aにより押圧されつつ下側に変位し、その結果、ハウジング20が下側に変位する。従って、治具30Aを所定位置まで押し込むと、図3(c)に示すように、両ハウジング10、20が完全な嵌合状態となる位置までハウジング20が変位し、これにより基板側コネクタC1と配線材側コネクタC2とが接続される(コネクタ接続工程)。
【0036】
両コネクタC1、C2の接続が完了した後は、治具30Aを上記操作方向とは逆方向にスライドさせ、両ハウジング10、20から治具30Aを引き離す。この際、第2案内部36の下側の案内面36aが、上記のように第1案内部34の各案内面34a、34bと平行となるように形成されている結果、図3(d)に示すように、軸部21は、上下方向に変位することなくその位置に保たれる。つまり、治具30Aが移動しても、コネクタ接続方向における両軸部11、21の位置関係が保たれる。これにより、基板側コネクタC1と配線材側コネクタC2との接続状態が保たれた状態で治具30AがコネクタC1、C2から取り外されることとなる(治具取り外し工程)。
【0037】
以上のように、上記の治具30Aによれば、仮嵌合状態のハウジング10、20を両側板部31の間に介在させながら治具30Aを操作方向に押圧操作することで両ハウジング10、20を嵌合させて両コネクタC1、C2を接続することができる。しかも、両コネクタC1、C2の接続後は、治具30Aを操作方向と逆方向に移動させることで、両コネクタC1、C2の接続状態を保ったままで、治具30Aを両ハウジング10、20から取り外す(引き離す)ことができる。そのため、コネクタC1、C2のハウジング10、20に従来のようなスライダに相当する部材を組み込むことなく、コネクタ接続方向と直交する方向からの操作でコネクタC1、C2を接続することができる。従って、コネクタC1、C2の製造コストを抑制することに寄与し得る。しかも、当該治具30Aは、両コネクタC1、C2を接続した後は、取り外して別のコネクタC1、C2のコネクタ接続作業に繰り返し使用することができるため、無駄になることもない。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態にかかるコネクタ接続用治具とこれを用いたコネクタ接続作業について説明する。なお、第2実施形態にかかるコネクタ接続用治具の基本的な構成は、上述した第1実施形態のコネクタ接続用治具30Aと同等であるため、共通する要素については同一符号を付して説明を省略し、以下、相違的についてのみ詳細に説明することにする。
【0039】
図4は、第2実施形態にかかるコネクタ接続用治具30Bの使用状態を斜視図で示している。この図に示すコネクタ接続用治具30B(以下、治具30Bと略す)は、同図に示すように、電気接続箱1に一列に配列され複数(図示の例では3個)の基板側コネクタC1に対して配線材側コネクタC2を連続的に順次接続するためのものである。なお、各基板側コネクタC1は、軸部11がそれぞれ同じ側に位置するように一列に配列されている。
【0040】
この治具30Bは、一対の側板部31及び連結部33を備える点で第1実施形態の治具30Aと共通するが、同図に示すように、各基板側コネクタC1の嵌合用凹部にそれぞれ配線材側コネクタC2が差し込まれた状態で、これら複数組のコネクタC1、C2のハウジング10、20を一体に挟み込むことが可能となるように各側板部31が形成(つまり、各側板部31の長手方向寸法が設定)されており、この点で第1実施形態の前記治具30Aと構成が相違している。
【0041】
この治具30Bを用いて上記複数組のコネクタC1、C2を接続するには、まず、各基板側コネクタC1の嵌合用凹部にそれぞれ配線材側コネクタC2を差し込み、これらハウジング10、20(以下、一組のハウジング10、20をハウジング対という)を仮嵌合状態にしておく。
【0042】
そして、図4及び図5(a)に示すように、コネクタ接続方向と直交する方向、つまり、操作方向に沿って治具30Bをその先端側から、複数のハウジング対のうちそれらの並び方向の一端に位置するハウジング対に近づけ、当該ハウジング対を両側板部31の間に介在させつつ、基板側コネクタC1の軸部11を第1案内部34に、配線材側コネクタC2の軸部21を第2案内部36にそれぞれ受け入れた状態に当該治具30Bを配置する。その後、この状態から治具30Bを操作方向に操作し、これにより当該治具30Bをスライドさせる。このように治具30Bをスライドさせると、複数のハウジング対のハウジング20が順次下側に移動して各ハウジング対が完全な嵌合状態となり、各ハウジング対にかかる基板側コネクタC1と配線材側コネクタC2とが順次接続される。
【0043】
コネクタC1、C2の接続が完了した後は、治具30Bを上記操作方向とは逆方向に移動させる。このように治具30Bを逆方向にスライドさせると、第1実施形態の治具30Aの場合と同様に、各ハウジングにかかるコネクタC1、C2の接続状態が保たれた状態で当該コネクタC1、C2から順次治具30Aが取り外される。
【0044】
このような第2実施形態の治具30Bによれば、第1実施形態の治具30Aと同等の作用効果を享受しながら、さらに、上記のように一列に並んだ複数組のコネクタC1、C2の接続作業を一つの治具30Bを用いて連続的に行うことが可能となる。そのため、複数組のコネクタC1、C2の接続作業を効率良く行うことができる。
【0045】
なお、この治具30Bは、基板側コネクタC1の配列間隔との関係で、当該治具30Bを操作方向にスライドさせると、まず、一端のハウジング対が完全な嵌合状態になった後に、隣接するハウジング対のハウジング20が変位し始めるように第2案内部36(上側の案内面36a)が形成されているのが好ましい。この構成によれば、治具30Bのスライド操作に伴い、各ハウジング対の嵌合が独立に進行するため、治具30Bの操作力を軽減することができるという利点がある。
【0046】
なお、以上説明したコネクタ接続用治具30A、30B及びこれらコネクタ接続用治具30A、30Bを用いたコネクタ接続方法は、本発明にかかるコネクタ接続用治具及びコネクタ接続方法の好ましい実施形態の例示であって、コネクタ接続用治具の具体的な構成やコネクタ接続方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、基板側コネクタC1の軸部11(ハウジング10)に対して配線材側コネクタC2の軸部21(ハウジング20)を接近させるように治具30A、30Bの各案内部34、36が形成されているが、各案内部34、36は、軸部11及び軸部21を互いに接近する方向に案内するように形成されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、治具30A、30Bを用いて基板側コネクタC1と配線材側コネクタC2とを接続する場合について説明したが、当該治具30A、30Bは、勿論、配線材の末端に設けられる配線材側コネクタ同士を接続する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10、20 コネクタハウジング
11、21 軸部
30A、30B コネクタ接続用治具
31 側板部
33 連結部
34 第1案内部
34a、34b 案内面
36 第2案内部
36a、36b 案内面
C1 基板側コネクタ
C2 配線材側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ接続方向と直交する方向に互いに反対向きに突出する一対の第1軸部を側面に備える第1コネクタハウジングを含む第1コネクタと、前記第1コネクタハウジングに嵌合可能な形状を有し、当該第1コネクタハウジングに嵌合した状態で前記第1軸部とそれぞれ平行に並ぶ、当該第1軸部と同等の一対の第2軸部を側面に備える第2コネクタハウジングを含む第2コネクタとを互いに接続するためのコネクタ接続用治具であって、
前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとが完全な嵌合状態に至る前の仮嵌合状態で、これらコネクタハウジングを前記第1軸部及び前記第2軸部の軸方向の外側から挟み込むことが可能な一対の側板部と、これら側板部をそれらの並び方向と直交する方向の端部で互いに連結する連結部とを備えており、
前記各側板部は、前記コネクタ接続方向と直交する方向を操作方向として、前記連結部とは反対側から当該各側板部の間に前記仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングが挿入されるように当該コネクタ接続用治具を両コネクタハウジングに対して当該操作方向に相対的に移動させることにより前記第1軸部及び前記第2軸部を受け入れつつ案内する第1案内部及び第2案内部をそれぞれ備えており、
これら第1案内部及び第2案内部は、当該コネクタ接続用治具を前記両コネクタハウジングに対して前記操作方向に相対的に移動させるときには、当該移動に伴い前記第1軸部及び前記第2軸部が前記コネクタ接続方向に相対的に接近するように当該第1軸部及び第2軸部を案内する一方、当該コネクタ接続用治具を両コネクタハウジングに対して前記操作方向と逆方向に相対的に移動させるときには、前記コネクタ接続方向における前記第1軸部及び第2軸部の位置関係を維持したまま両コネクタハウジングから当該コネクタ接続用治具を引き離すことを許容するように形成されていることを特徴とするコネクタ接続用治具。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ接続用治具において、
前記第1案内部は、当該コネクタ接続用治具が前記操作方向又は前記逆方向に移動させられる当該コネクタ接続用治具の使用状態の下で、コネクタ接続方向に並び、前記操作方向と平行な方向に互いに平行にかつ直線状に延びる一対の第1案内面を有しており、
前記第2案内部は、当該コネクタ接続用治具の前記使用状態の下で、コネクタ接続方向に並び前記操作方向に延びる一対の第2案内面を有し、これら第2案内面のうち前記第1案内部側に位置する一方側の第2案内面が前記第1案内面と平行に形成される一方、これら第2案内面の間隔が前記連結部とは反対側の位置で最も広く前記連結部側に向かうに伴い狭くなるように他方側の第2案内面が形成されていることを特徴とするコネクタ接続用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタ接続用治具において、
仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングをハウジング対としたときに、前記各側板部は、一列に配列される複数のハウジング対を同時に挟み込むことが可能な形状を有しており、
前記第1案内部及び第2案内部は、前記各側板部の間に各ハウジング対が順次挿入されるように当該コネクタ接続用治具を前記操作方向に移動させると、当該移動に伴い各ハウジング対の前記第1軸部及び前記第2軸部を順次受け入れつつこれら第1軸部及び第2軸部を順次前記コネクタ接続方向に相対的に接近させ、前記操作方向と逆方向に当該コネクタ接続用治具を移動させると、各ハウジング対の前記コネクタ接続方向における前記第1軸部及び第2軸部の位置関係を維持したまま各ハウジング対から順次当該コネクタ接続用治具を引き離すことを許容するように形成されていることを特徴とするコネクタ接続用治具。
【請求項4】
コネクタ接続方向と直交する方向に互いに反対向きに突出する一対の第1軸部を側面に備える第1コネクタハウジングを含む第1コネクタを準備する第1コネクタ準備工程と、
前記第1コネクタハウジングに嵌合可能な形状を有し、当該第1コネクタハウジングに嵌合した状態で前記第1軸部とそれぞれ平行に並ぶ、当該第1軸部と同等の一対の第2軸部を側面に備える第2コネクタハウジングを含む第2コネクタを準備する第2コネクタ準備工程と、
請求項1乃至3の何れか一項に記載されたコネクタ接続用治具を準備する治具準備工程と、
前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとを、これらが完全な嵌合状態に至る前の仮嵌合状態とする接続準備工程と、
仮嵌合状態の第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングが各側板部の間に挿入され、かつ、前記第1軸部が第1案内部に受け入れられるとともに第2軸部が第2案内部に受け入れられるように前記コネクタ接続用治具を配置した後、第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングに対して前記コネクタ接続用治具を前記操作方向に移動させ、この移動に伴い前記第1軸部及び前記第2軸部を前記コネクタ接続方向に相対的に接近させることで前記第1コネクタハウジングと前記第2コネクタハウジングとを完全な嵌合状態にするコネクタ接続工程と、
このコネクタ接続工程の後、前記コネクタ接続用治具を前記操作方向と逆方向にスライドさせることにより、前記第1コネクタハウジング及び前記第2コネクタハウジングから前記コネクタ接続用治具を引き離す治具取り外し工程と、を含むことを特徴とするコネクタ接続方法。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタ接続方法において、
前記治具準備工程では、請求項3に記載されたコネクタ接続用治具を準備し、
前記接続準備工程では、第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングをハウジング対として、各第1軸部が同じ側に位置しかつ各第2軸部が同じ側に位置するように複数のハウジング対を一例に配列し、
前記コネクタ接続工程では、複数のハウジング対のうちそれらの配列方向の一端に位置するハウジング対の前記第1軸部が第1案内部に、第2軸部が第2案内部にそれぞれ受け入れられるように前記コネクタ接続用治具を配置した後、当該コネクタ接続用治具を前記操作方向へ移動させ、この移動に伴い各ハウジング対の前記第1軸部及び前記第2軸部を順次前記コネクタ接続方向に相対的に接近させることにより各ハウジング対の第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとを完全は嵌合状態にし、
前記治具取り外し工程では、コネクタ接続用治具を前記操作方向と逆方向に移動させることにより、各ハウジング対から順次コネクタ接続用治具を引き離すことを特徴とするコネクタ接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33684(P2013−33684A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169931(P2011−169931)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】