説明

コネクタ検査方法

【課題】コネクタの切片部が、嵌合されるメモリモジュールなどの電子部品に設けた端子部に対して良好な接触性を有しているか否かを評価するためのコネクタ検査方法を提供する。
【解決手段】被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14を直列状態で電気的に接続し、この直列接続全体の第1の抵抗値を測定する工程と、各端子部14にケイ砂(粉体)を付着させたメモリモジュール12を被検査コネクタ10に嵌合して、被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14を直列状態で電気的に接続し、この直列接続全体の第2の抵抗値を測定する工程と、前記第1の抵抗値と前記第2の抵抗値の差分抵抗値を算出する工程と、算出された前記差分抵抗値が予め設定した所定範囲内に入っているか否かにより、被検査コネクタ10の各切片部13の各端子部14に対する接触状態を判断する工程と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリモジュール(例えば、DIMM)などの多数の端子部を有する電子部品を着脱可能に嵌合するコネクタの、前記各端子部と電気的に接続される各切片部の該端子部に対する接触状態を評価するためのコネクタ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(パソコン)等内には、コネクタ(ソケット)に着脱可能に電気的に接続された主記憶部となるメモリモジュール(例えば、DIMM)が配設されている。このメモリモジュールに対しては、例えば、特許文献1のように、その製造時等において検査装置で所定の電気的特性検査(試験)を行い、検査をパスした良品を出荷している。また、コネクタ側も同様に、その製造時等において所定の検査を行い、検査をパスした良品を出荷している。
【0003】
そして、電気的特性検査で良品であると判定されたメモリモジュールを、例えば、パーソナルコンピュータ(パソコン)内の基板上に配設したコネクタ(ソケット)に着脱可能に嵌合することで、メモリモジュールの各端子部がコネクタ側の各切片部に電気的に接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メモリモジュールをコネクタへ嵌合するときに、嵌合時の両者の擦れによって生じる削りかす等が接触するメモリモジュールの各端子部とコネクタの各切片部間に付着する。このため、例えば、コネクタの各切片部の平面性が公差範囲内で不均一になっていると、嵌合時にメモリモジュールの各端子部との間で接触力が小さい箇所が生じる。これにより、所定の検査をパスしているコネクタであっても、付着している削りかす等の影響でメモリモジュールの端子部とコネクタの切片部間で接触不良が発生するおそれがある。
【0005】
このように、メモリモジュールとコネクタがそれぞれ単体の検査で良品である場合でも、メモリモジュールをコネクタへ嵌合した場合に、メモリモジュールの端子部とコネクタの切片部間で接触不良が発生するおそれがある。そこで、それぞれ単体の検査で良品であるメモリモジュールをコネクタへ嵌合する前に、コネクタの各切片部の端子部に対する接触状態を評価できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、コネクタの各切片部が、嵌合されるメモリモジュール等の電子部品に設けた各端子部に対して良好な接触性を有しているか否かを評価するためのコネクタ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、多数の端子部を有する電子部品を着脱可能に嵌合するコネクタの、前記各端子部と電気的に接続される各切片部の該端子部に対する接触状態を評価するためのコネクタ検査方法であって、検査基板上に取付けた被検査コネクタの前記各切片部または前記電子部品の各端子部に微細な粉体を付着させる粉体付着工程と、前記粉体付着工程後に、前記電子部品の各端子部を前記各切片部に圧接状態で電気的に接続して、前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合する電子部品嵌合工程と、前記電子部品嵌合工程後に、前記電子部品を前記被検査コネクタから取外し、前記粉体を付着させた前記被検査コネクタの各切片部または前記電子部品の各端子部の表面を観察して、前記被検査コネクタの各切片部の前記電子部品の端子部に対する接触状態を判断する観察工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、多数の端子部を有する電子部品を着脱可能に嵌合するコネクタの、前記各端子部と電気的に接続される各切片部の該端子部に対する接触状態を評価するためのコネクタ検査方法であって、検査基板上に取付けた被検査コネクタの前記各切片部に前記電子部品の各端子部を圧接させて、前記端子部と前記切片部の複数の接続箇所が全体として電気的に直列接続の配線パターンとなるように前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合する電子部品嵌合工程と、前記電子部品嵌合工程後に、前記直列接続された配線パターン全体における全抵抗値を測定する第1の抵抗測定工程と、前記第1の抵抗測定工程後に、前記被検査コネクタから取外した前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部に微細な粉体を付着させる粉体付着工程と、前記粉体付着工程後に、前記電子部品の各端子部を前記各切片部に圧接状態で電気的に接続して、前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合した後、前記直列接続された配線パターン全体における全抵抗値を測定する第2の抵抗測定工程と、前記第2の抵抗測定工程後に、前記第1の抵抗測定工程で測定された全抵抗値と前記第2の抵抗測定工程で測定された全抵抗値の差分抵抗値を算出する差分抵抗値算出工程と、前記差分抵抗値算出工程で算出された前記差分抵抗値が予め設定した所定範囲内に入っているか否かにより、前記被検査コネクタの各切片部の前記端子部に対する接触状態を判断する接触状態判断工程と、を含むことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記第1の抵抗測定工程及び前記第2の抵抗測定工程で測定されたそれぞれの全抵抗値が、それぞれに設定した所定範囲内に入っていない場合は、前記直列接続された配線パターン全体の中に接触不良箇所が有ると判断し、前記直列接続された配線パターン全体を複数に分割して、各分割領域毎の抵抗値を測定することで接触不良箇所を特定する接触不良箇所特定工程をさらに有することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記粉体付着工程で前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部に前記粉体を付着させる前に、前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部の表面に水分または液化ガスを噴霧して付着させておくことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記液化ガスはHFC13aであることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記粉体には予め湿気が付与されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記粉体は絶縁体または導電率の低い粉体であることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記粉体は直径が6.6〜8.6μmのケイ砂であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のコネクタ検査方法によれば、電子部品を被検査コネクタから取外し、粉体を付着させた被検査コネクタの各切片部または電子部品の各端子部の表面を観察することで、被検査コネクタの各切片部の、電子部品の端子部に対する接触状態を容易に判断することができる。
【0016】
また、請求項2に記載のコネクタ検査方法によれば、第1の抵抗測定工程で測定された全抵抗値と第2の抵抗測定工程で測定された全抵抗値の差分抵抗値を算出し、算出された差分抵抗値が予め設定した所定範囲内に入っているか否かを判定することで、被検査コネクタの各切片部の、電子部品の各端子部に対する接触状態を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】メモリモジュールと該メモリモジュールを嵌合するコネクタを示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態におけるコネクタ検査方法の手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施形態におけるコネクタ検査方法の手順を示すフローチャート。
【図4】被検査コネクタを検査基板上に設置した状態を示した平面図。
【図5】(a)、(b)は、被検査コネクタにメモリモジュールを嵌合する状態を示した図。
【図6】被検査コネクタの各切片部にメモリモジュールの各端子部が直列状態で電気的に接続された状態を示した図。
【図7】ケイ砂をメモリモジュールの各端子部付近に付着させている状態を示した図。
【図8】(a)は、ケイ砂が適正(略均一)な状態でメモリモジュールの各端子部付近に分布している状態を示した図、(b)は、ケイ砂が不適正(不均一)な状態でメモリモジュールの各端子付近に分布している状態を示した図。
【図9】(a)は、取外したメモリモジュールの各端子部に擦れた軌跡が残っている状態を示した図(写真画像)、(b)は、取外したメモリモジュールの各端子部に擦れた軌跡がほとんど残っていない状態を示した図(写真画像)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1に示すように、パーソナルコンピュータ(パソコン)等内には、基板1上に設けたコネクタ(ソケット)2に、電子部品としての主記憶部となるメモリモジュール(例えば、DIMM)3が着脱可能に電気的に接続されるようにして設置される。コネクタ2の差込口には複数の切片部4が設けられており、メモリモジュール3を嵌合したときに該メモリモジュール3の複数の端子部5と電気的に接続される。
【0019】
ところで、メモリモジュール3をコネクタ2へ嵌合するときに、嵌合時の両者の擦れによって生じる削りかす等が接触するメモリモジュール3の各端子部5とコネクタ2の各切片部4間に付着する。このため、例えば、コネクタ2の各切片部4の平面性が公差範囲内で不均一になっていると、嵌合時にメモリモジュール3の各端子部5との間で接触力が小さい箇所が生じる。これにより、所定の検査をパスしているコネクタ2であっても、付着している削りかす等の影響でメモリモジュール3の端子部5とコネクタ2の切片部4間で接触不良が発生するおそれがある。
【0020】
そこで、本発明では、以下に説明するコネクタ検査方法によって、事前にコネクタ2の各切片部4がメモリモジュール3の各端子部5に対して良好な接触性を有しているか否かの評価を行うものである。
【0021】
次に、本発明の実施形態におけるコネクタ検査方法を、図2、図3に示すフローチャート、及び図4〜図9を参照して説明する。
【0022】
先ず、図4に示すように、被検査コネクタ10を検査基板11上に設置する(ステップS1)。なお、図1に示したコネクタ2は縦置きタイプであるが、図4に示した被検査コネクタ10は同様の機能を有する横置きタイプである。
【0023】
そして、図5(a),(b)に示すように、この被検査コネクタ10にDIMM等の検査用メモリモジュール(以下、「メモリモジュール」という)12を嵌合して、被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14を直列状態で電気的に接続し(図6参照)、この直列接続全体の総合抵抗値(以下、「第1の抵抗値」という)を測定端子部15a,15b間に接続した抵抗測定装置(不図示)で測定する(ステップS2)。
【0024】
このメモリモジュール12は、被検査コネクタ10に実際に嵌合される製品としてのメモリモジュールと同じ仕様のものであり、予め電気的特性検査で良品と判定されている。なお、このメモリモジュール12として、被検査コネクタ10に実際に嵌合される製品としてのメモリモジュールを用いてもよい。
【0025】
そして、ステップS2で測定された第1の抵抗値が所定範囲内にある場合(ステップS3:YES)、即ち、嵌合された被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュール12の各端子部14間に接触不良がなく、良好に接触していると判定した場合には、被検査コネクタ10からメモリモジュール12を一旦取外す(ステップS4)。
【0026】
そして、取外したメモリモジュール12の各端子部14付近の全域に、噴霧器や加湿器等を用いて微小な水滴を均一に吹き付ける(ステップS5)。なお、水滴を吹き付ける以外にも、HFC13aなどの冷媒として使用される液化ガスをスプレー缶の噴射ノズルから吹き付けてもよい。噴霧されたHFC13aなどの液化ガスは、水滴よりも乾きにくく、メモリモジュール12の各端子部14の表面もより長時間湿らせておくことができる。
【0027】
そして、水滴や液化ガス(HFC13aなど)の吹き付けで表面が湿っているメモリモジュール12の各端子部14付近の全域に、吸湿させた微細な粉体としてのケイ砂を付着させる(ステップS6)。このケイ砂の直径は6.6〜8.6μm程度である。なお、微細な粉体としは、絶縁体または導電率の低い粉体であれば、ケイ砂以外でも使用可能である。
【0028】
吸湿させたケイ砂をメモリモジュール12の各端子部14付近の全域に付着させる方法としては、例えば、図7に示すように、吸湿させたケイ砂を含ませた厚手のガーゼ16を、メモリモジュール12の各端子部14の上方に持ってきて、このガーゼ16の両面を指で押さえてこすりながら、各端子部14が配置された方向にゆっくり移動させる。
【0029】
このように、ケイ砂に予め湿気を付与しておくことにより、ガーゼ16内から飛散するケイ砂17が広範囲に拡がることなくメモリモジュール12の各端子部14付近のみに良好に付着される。なお、メモリモジュール12の各端子部14付近の全域にケイ砂を付着させた後、このメモリモジュール12の側面を手で軽く叩き、弱く付着しているケイ砂を振り落としておく。これは、弱く付着しているケイ砂が後の工程で剥がれて周囲に飛散しないようにするためである。
【0030】
ケイ砂をガーゼ16に含ませる前の前処理として、ケイ砂を入れた恒温恒湿槽(不図示)内を温度40℃、湿度70%の条件で1時間加熱し、ケイ砂を吸湿させる。吸着させたケイ砂は、吸湿処理しないときよりも粘度が高くなり、メモリモジュール12の各端子部14付近に付着した後も剥がれにくくなる。更に、メモリモジュール12の各端子部14付近の表面が予め水滴(または噴霧されたHFC13aなどの液化ガス)で湿らせているので、上方からふりかけたケイ砂がメモリモジュール12の各端子部14付近により良好に付着する。
【0031】
そして、検査担当者は目視でケイ砂の付着分布状態を観察し、図8(a)に示すように、ケイ砂17が適正(略均一)な状態でメモリモジュール12の各端子部14付近に分布しているか、或いは図8(b)に示すように、ケイ砂17が不適正(不均一)な状態でメモリモジュール12の各端子部14付近に分布しているかを判定する(ステップS7)。
【0032】
ステップS7でケイ砂が適正(略均一)な状態(図8(a)参照)でメモリモジュール12の各端子部14付近に分布していると判定した場合(ステップS7:YES)、このメモリモジュール12を再度被検査コネクタ10に嵌合する。そして、ステップS2と同様に被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14を直列状態で電気的に接続し(図6参照)、この直列接続全体の総合抵抗値(以下、「第2の抵抗値」という)を測定端子部15a,15b間に接続した抵抗測定装置(不図示)で測定する(ステップS8)。
【0033】
一方、ステップS7でケイ砂が不適正(不均一)な状態(図8(b)参照)でメモリモジュール12の各端子部14付近に分布していると判定した場合(ステップS7:NO)、このメモリモジュール12に付着しているケイ砂を布等でふき取って除去し(ステップS9)、その後ステップS5の前に戻り、再度メモリモジュール12の各端子部14付近に水滴を吹き付ける(またはHFC13aなどの液化ガスを噴霧する)。
【0034】
そして、ステップS8で測定された第2の抵抗値が所定範囲内にある場合(ステップS10:YES)、即ち、嵌合された被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュール12の各端子部14間に接触不良がなく、良好に接触していると判定した場合には、ステップS2で測定された第1の抵抗値とステップS8で測定された第2の抵抗値との差分(以下、差分抵抗値」という)を算出する(ステップS11)。
【0035】
そして、ステップS11で測定された差分抵抗値が所定範囲内にある場合(ステップS12:YES)、即ち、第1の抵抗値と第2の抵抗値とを比較したときの抵抗値の変化が小さいと判定した場合には、嵌合された被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュール12の各端子部14間にケイ砂が分布して付着していても、各切片部13と各端子部14とが強く圧接して良好に接触している。
【0036】
よって、ステップS11で測定された差分抵抗値が所定範囲内にある場合には、検査担当者はこの差分抵抗値の算出結果に基づいて、両者の接触面にケイ砂が付着していても各切片部13と各端子部14とが強く圧接した状態にあり、被検査コネクタ10の各切片部13が良好な接触性を有していると判断する(ステップS13)。
【0037】
そして、ステップS13で良好な接触性を有していると判定されたメモリモジュール12を被検査コネクタ10から取外し、このメモリモジュール12のケイ砂が付着している各端子部14を、検査担当者が目視で観察する(ステップS14)。
【0038】
良好な接触性を有している被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14が接触している場合は、上記したように各切片部13と各端子部14とが強く圧接した状態にあるので、メモリモジュール12を被検査コネクタ10から取外すときに、メモリモジュール12の各端子部14と被検査コネクタ10の各切片部13との接触部分が強く擦れる。このため、図9(a)に示すように、取外したメモリモジュール12の各端子部14にこの擦れた軌跡(直線状の接触痕)Aがはっきりと残る。
【0039】
よって、取外したメモリモジュールの各端子部14にこの擦れた軌跡(直線状の接触痕)Aがはっきりと残っている場合には、取外したメモリモジュール12の各端子部14を観察するだけでも、被検査コネクタ10の各切片部13が良好な接触性を有していると判断することができる。
【0040】
また、ステップS11で測定された差分抵抗値が所定範囲内に入っていない場合(ステップS12:NO)、即ち、第1の抵抗値と第2の抵抗値とを比較したときの抵抗値の変化が大きい場合には、嵌合された被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュール12の各端子部14との接触力が小さく、両者の接触面に付着しているケイ砂の影響によって、各切片部13と各端子部14とが良好に接触していない。各切片部13と各端子部14とが良好に接触していない要因としては、例えば、被検査コネクタ10の各切片部13の平面性が公差範囲内で不均一になっていることが挙げられる。
【0041】
よって、ステップS11で測定された差分抵抗値が所定範囲内に入っていない場合(ステップS12:NO)には、検査担当者はこの差分抵抗値の算出結果に基づいて、被検査コネクタ10の各切片部13が良好な接触性を有していないと判定する(ステップS15)。
【0042】
良好な接触性を有していない被検査コネクタ10の各切片部13にメモリモジュール12の各端子部14が接触している場合は、上記したように各切片部13と各端子部14との接触力が小さいので、メモリモジュール12を被検査コネクタ10から取外すときに、メモリモジュール12の各端子部14と被検査コネクタ10の各切片部13との接触部分での擦れが小さい。このため、図9(b)に示すように、取外したメモリモジュール12の各端子部14に擦れた軌跡がほとんど残らない。
【0043】
よって、取外したメモリモジュール12の各端子部14に擦れた軌跡がほとんど残っていない場合には、取外したメモリモジュール12の各端子部14を観察するだけでも、被検査コネクタ10の各切片部13が良好な接触性を有していないと判断することができる。
【0044】
また、ステップS2で測定された第1の抵抗値が所定範囲内に入っていない場合(ステップS3:NO)、及びステップS8で測定された第2の抵抗値が所定範囲内に入っていない場合(ステップS3:NO)には、検査担当者は直列接続全体の配線パターン(図6参照)のいずれかの箇所で部分的な接触不良が発生していると判断する(ステップS16)。
【0045】
そして、電気的に接続されている被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュール12の各端子部14との間の直列接続全体の配線パターン(図6参照)に対して測定箇所を複数に分割し、分割された各測定箇所の両端間の抵抗値を順に測定して、被検査コネクタ10の各切片部13のうちの接触不良の切片部を特定する(ステップS17)。なお、接触不良の切片部の特定は、測定した抵抗値が所定範囲内に入っていないことで判断することができる。
【0046】
このように、本実施形態のコネクタ検査方法によれば、被検査コネクタ10の各切片部13がメモリモジュール12の各端子部14に対して良好な接触性を有しているか否かを容易に判断することができる。これにより、良好な接触性を有していると判断された被検査コネクタ10を選択して用いることで、実際に製品としてのメモリモジュールを嵌合したときに、被検査コネクタ10の各切片部13とメモリモジュールの各端子部間に削りかす等が付着しても良好な接触性を確保することができる。
【0047】
また、このコネクタ検査方法によれば、被検査コネクタ10の各切片部13のいずれかが接触不良の切片部であっても、分割された各測定箇所の両端間の抵抗値を順に測定することで、容易にこの接触不良の切片部を特定することができる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、粉体としてのケイ砂をメモリモジュール12の各端子部14付近に付着させる構成であったが、ケイ砂を被検査コネクタ10の各切片部13側に付着させる構成でも同様に、被検査コネクタ10の各切片部13がメモリモジュール12の各端子部14に対して良好な接触性を有しているか否かを評価することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 コネクタ
3 メモリモジュール(電子部品)
4、13 切片部
5、14 端子部
10 被検査コネクタ
12 検査用メモリモジュール(電子部品)
17 ケイ砂(粉体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2002−343096号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の端子部を有する電子部品を着脱可能に嵌合するコネクタの、前記各端子部と電気的に接続される各切片部の該端子部に対する接触状態を評価するためのコネクタ検査方法であって、
検査基板上に取付けた被検査コネクタの前記各切片部または前記電子部品の各端子部に微細な粉体を付着させる粉体付着工程と、
前記粉体付着工程後に、前記電子部品の各端子部を前記各切片部に圧接状態で電気的に接続して、前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合する電子部品嵌合工程と、
前記電子部品嵌合工程後に、前記電子部品を前記被検査コネクタから取外し、前記粉体を付着させた前記被検査コネクタの各切片部または前記電子部品の各端子部の表面を観察して、前記被検査コネクタの各切片部の前記電子部品の端子部に対する接触状態を判断する観察工程と、を含むことを特徴とするコネクタ検査方法。
【請求項2】
多数の端子部を有する電子部品を着脱可能に嵌合するコネクタの、前記各端子部と電気的に接続される各切片部の該端子部に対する接触状態を評価するためのコネクタ検査方法であって、
検査基板上に取付けた被検査コネクタの前記各切片部に前記電子部品の各端子部を圧接させて、前記端子部と前記切片部の複数の接続箇所が全体として電気的に直列接続の配線パターンとなるように前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合する電子部品嵌合工程と、
前記電子部品嵌合工程後に、前記直列接続された配線パターン全体における全抵抗値を測定する第1の抵抗測定工程と、
前記第1の抵抗測定工程後に、前記被検査コネクタから取外した前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部に微細な粉体を付着させる粉体付着工程と、
前記粉体付着工程後に、前記電子部品の各端子部を前記各切片部に圧接状態で電気的に接続して、前記電子部品を前記被検査コネクタに嵌合した後、前記直列接続された配線パターン全体における全抵抗値を測定する第2の抵抗測定工程と、
前記第2の抵抗測定工程後に、前記第1の抵抗測定工程で測定された全抵抗値と前記第2の抵抗測定工程で測定された全抵抗値の差分抵抗値を算出する差分抵抗値算出工程と、
前記差分抵抗値算出工程で算出された前記差分抵抗値が予め設定した所定範囲内に入っているか否かにより、前記被検査コネクタの各切片部の前記端子部に対する接触状態を判断する接触状態判断工程と、を含むことを特徴とするコネクタ検査方法。
【請求項3】
前記第1の抵抗測定工程及び前記第2の抵抗測定工程で測定されたそれぞれの全抵抗値が、それぞれに設定した所定範囲内に入っていない場合は、前記直列接続された配線パターン全体の中に接触不良箇所が有ると判断し、前記直列接続された配線パターン全体を複数に分割して、各分割領域毎の抵抗値を測定することで接触不良箇所を特定する接触不良箇所特定工程をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のコネクタ検査方法。
【請求項4】
前記粉体付着工程で前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部に前記粉体を付着させる前に、前記電子部品の各端子部または前記被検査コネクタの各切片部の表面に水分または液化ガスを噴霧して付着させておくことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコネクタ検査方法。
【請求項5】
前記液化ガスは、HFC13aであることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ検査方法。
【請求項6】
前記粉体には、予め湿気が付与されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコネクタ検査方法。
【請求項7】
前記粉体は、絶縁体または導電率の低い粉体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコネクタ検査方法。
【請求項8】
前記粉体は、直径が6.6〜8.6μmのケイ砂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコネクタ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−155848(P2012−155848A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11043(P2011−11043)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】