説明

コネクタ用配線部材

【課題】電線に接続されているコネクタを手間を掛けずに所望の位置に位置決めした形態を維持することができ、更に、電線の曲げ形状を簡単に変更して、相手コネクタの設置位置の変更等にも柔軟に対応することのできるコネクタ用配線部材を提供すること。
【解決手段】一端がコネクタに接続される複数の電線43と、コネクタの配置箇所において複数の電線43に形成される曲げ部M1を含む範囲で電線43に縦添えされると共に曲げ変形が残る樹脂製の骨部材45と、電線43の長手方向に離間した複数箇所で骨部材45を複数の電線43に結束する結束手段47と、を備え、骨部材45を曲げ変形させることで、複数の電線43をコネクタの用途にあった曲げ形状に維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載の機器等に接続するコネクタが一端に接続されるコネクタ用配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図7〜図9は、自動車の車体等に配索されるワイヤハーネスから分岐して、先端にコネクタが接続されたコネクタ用配線部材の処理例を示したものである。
【0003】
図7に示したコネクタ用配線部材1は、オプションで車載されるオプション機器へ接続されるオプションコネクタ3が先端に接続されたものである。このコネクタ用配線部材1は、オプション機器が搭載されていない場合は使用されないため、通常は、他のコネクタとの混同を防止する目的等で、他の配線部材5との分岐点6から他の配線部材5の根本側に折り返されて、更に、オプションコネクタ3の直近部位を回路止めテープ7により他の配線部材5に固定されている。
【0004】
このコネクタ用配線部材1は、使用する際には、回路止めテープ7を剥がして、折り返していた余長を延ばして、オプションコネクタ3を対応するオプション機器に接続する。
【0005】
図8に示したコネクタ用配線部材11は、車載機器に装備された機器コネクタ12に接続する機器付けコネクタ13が先端に接続されたものである。コネクタ用配線部材11は、類似した他のコネクタ用配線部材14,15から、機器コネクタ12の近くの分岐点18で分岐している。分岐点18から延出する3本のコネクタ用配線部材11,14,15は、略同等の長さで延出している。また、他のコネクタ用配線部材14,15も、先端には、同様の機器付けコネクタ16,17が接続されている。
【0006】
それぞれのコネクタ用配線部材11,14,15は、複数本のバラの被覆電線を粘着テープ19で束ねた構造で、分岐点18から任意方向に折り曲げ可能である。それぞれのコネクタ用配線部材11,14,15は、分岐点18からそれぞれの接続先のコネクタの位置に向かって延出するような曲げ癖は付与されていない。
【0007】
作業者は、電線を束ねている粘着テープ19の色やコネクタ形状の差異等から接続先の機器コネクタを特定して、接続先の機器コネクタに向かうように配線部材を撓ませて、コネクタ接続作業を行う。
【0008】
図8に示した矢印Aは、機器付けコネクタ13を機器コネクタ12に接続する際に、コネクタ用配線部材11を撓ませる方向である。
【0009】
図9に示したコネクタ用配線部材21は、下記特許文献1に開示されたものである。
このコネクタ用配線部材21は、先端に待ち受けコネクタ23が接続されている。コネクタ用配線部材21は、相手コネクタ24が矢印Bに示すように接続位置に移動してくると、相手コネクタ24の移動に伴って待ち受けコネクタ23が矢印Cに示すように接続位置に移動するように、金属製のガイド機構26により支持されている。
【0010】
ガイド機構26は、コネクタ用配線部材21の基端側を移動可能に支持するスライド部材31、スライド部材31を矢印D方向に往復移動可能に支持する案内部材32、待ち受けコネクタ23を回動可能に支持する回動アーム33、相手コネクタ24の移動に伴って回動アーム33を回動させるための作動レバー34など、多くの機構部品から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−123748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、前述した従来のコネクタ用配線部材1,11,21は、いずれも、配線部材単独では、コネクタを所望の位置に位置決めした形態(曲げ形状)を維持することができず、そのために、次のような不便があった。
【0013】
例えば、図7に示したコネクタ用配線部材1の場合は、先端のオプションコネクタ3を相手コネクタに接続する際には、回路止めテープ7を剥ぎ取って、コネクタ用配線部材1の曲げを延ばし、相手コネクタ側にコネクタ用配線部材1を曲げるという面倒な作業が必要になる。
【0014】
また、図8に示したコネクタ用配線部材11の場合は、まず、機器コネクタ12が接続相手のコネクタであるか否かを、粘着テープ19や他の機器付けコネクタ16,17の形状との比較で判別する作業が必要となり、更に、コネクタ用配線部材11を機器コネクタ12側に撓ませる作業も必要となる。コネクタ用配線部材11を機器コネクタ12側に撓ませる作業の途中で、コネクタ用配線部材11から手を離すと、コネクタ用配線部材11は、元の位置に戻って他のコネクタ用配線部材14,15と混ざってしまうため、コネクタ接続作業が完了するまで、コネクタ用配線部材11から手を離せないという、問題が生じる。
【0015】
また、図9に示したコネクタ用配線部材21の場合は、コネクタ用配線部材21の曲げ形状の維持のために、多数の機構部品から構成されるガイド機構26を使用しているため、配索設備費が嵩むという問題が生じている。
【0016】
更に、いずれのコネクタ用配線部材1,11,21も、相手コネクタの設置位置の変更等に対しては、配線部材自体を交換したり、あるいは新規に設計し直したガイド機構を用意するなど、抜本的な改良が必要になり、簡単に対応することができないという問題があった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、電線に接続されているコネクタを手間を掛けずに所望の位置に位置決めした形態を維持することができ、更に、電線の曲げ形状を簡単に変更して、相手コネクタの設置位置の変更等にも柔軟に対応することのできるコネクタ用配線部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)一端がコネクタに接続される複数の電線と、前記コネクタの配置箇所において前記複数の電線に形成される曲げ部を含む範囲でこれらの複数の電線に縦添えされる樹脂製の骨部材と、前記電線の長手方向に離間した複数箇所で前記骨部材を複数の電線に結束する結束手段と、を備え、
前記骨部材は、前記複数の電線の束よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ線条体であることを特徴とするコネクタ用配線部材。
【0019】
上記(1)の構成によれば、複数の電線に縦添えされている骨部材を、例えば、配索経路の形状に沿うように曲げ変形させることで、電線に接続されているコネクタを手間を掛けずに配索経路上の所望の位置に位置決めした状態を維持することができる。
【0020】
また、上記(1)の構成によれば、電線の曲げ形状は、骨部材を曲げ直すことで簡単に変更することができ、骨部材の曲げを調整することで、電線の余長を周辺の邪魔にならない形状に収めることも可能である。そのため、相手コネクタの設置位置の変更等にも柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるコネクタ用配線部材によれば、複数の電線に縦添えされている骨部材を、例えば、配索経路の形状に沿うように曲げ変形させることで、電線に接続されているコネクタを手間を掛けずに配索経路上の所望の位置に位置決めした形態を維持することができる。
【0022】
また、本発明によるコネクタ用配線部材によれば、電線の曲げ形状は、骨部材を曲げ直すことで簡単に変更することができ、骨部材の曲げを調整することで、電線の余長を周辺の邪魔にならない形状に収めることも可能である。そのため、相手コネクタの設置位置の変更等にも柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るコネクタ用配線部材の第1実施形態で、配線部材の先端にオプションコネクタが接続された状態の斜視図である。
【図2】(a)は図1のコネクタ用配線部材に使用されている骨部材の曲げ変形がない状態の平面図、(b)は(a)に示した骨部材を曲げ変形させた状態の斜視図である。
【図3】図1に示したワイヤハーネスの横断面図である。
【図4】図1に示したコネクタ用配線部材を折り返した曲げ形状に変形させた状態の斜視図である。
【図5】本発明に係るコネクタ用配線部材の第2実施形態で、(a)は機器付けコネクタが接続された配線部材の先端側を機器コネクタ側に撓ませた状態の斜視図、(b)はコネクタ相互の接続が完了した配線部材の余長を骨部材の曲げ変形により調整した状態の斜視図である。
【図6】本発明に係るコネクタ用配線部材の第3実施形態で、(a)は配線部材の曲げ形状によって配線部材先端のコネクタが待ち受けコネクタとして所定位置に位置決めされた状態の斜視図、(b)は(a)のE部の拡大図である。
【図7】オプションコネクタが先端に接続される従来のコネクタ用配線部材の配索構造の説明図である。
【図8】機器付けコネクタが先端に接続される従来のコネクタ用配線部材の配索構造の説明図である。
【図9】待ち受けコネクタが先端に接続される従来のコネクタ用配線部材の配索構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコネクタ用配線部材の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1〜図4は本発明に係るコネクタ用配線部材の第1実施形態を示したもので、図1は配線部材の先端にオプションコネクタが接続された状態の斜視図、図2(a)は図1のコネクタ用配線部材に使用されている骨部材の曲げ変形がない状態の平面図、図2(b)は図2(a)に示した骨部材を曲げ変形させた状態の斜視図、図3は図1に示したワイヤハーネスの横断面図、図4は図1に示したコネクタ用配線部材を折り返した曲げ形状に変形させた状態の斜視図である。
【0026】
この第1実施形態のコネクタ用配線部材41は、一端がコネクタに接続される複数の電線43と、複数の電線43に縦添えされる骨部材45と、複数の結束手段47と、を備える。
【0027】
本実施形態の場合、コネクタ用配線部材41の一端に接続されるコネクタは、オプションで車載されるオプション機器へ接続されるオプションコネクタ51である。
【0028】
複数の電線43は、複数系統の配線部材を束ねたワイヤハーネス61から分岐していて、先端にオプションコネクタ51が固定された導体の外周を絶縁被覆で覆った被覆電線である。複数の電線43は、バラの電線を集めたものでも、複数の被覆電線を帯状に一体化したリボン電線(フラット電線)でも良い。
【0029】
骨部材45は、オプションコネクタ51の配置箇所において複数の電線43に形成される曲げ部M1(図4参照)を含む範囲で、これらの複数の電線43に縦添えされる。
【0030】
本実施形態の場合、骨部材45は、複数の電線43の束よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ帯板状の線条体である。
【0031】
曲げ変形していない骨部材45は、図2(a)に示すように、真っ直ぐに延びた帯状である。図2(b)では、2つの曲げ部M2,M3で骨部材45を折り曲げた状態を示している。
【0032】
骨部材45に曲げ変形を起こす曲げ荷重は、例えば、曲げた複数の電線43の束の復元力よりも大きな荷重に設定されている。従って、曲げ変形させた部分が、複数の電線43の束の復元力で曲げが戻ることはない。
【0033】
骨部材45は、具体的には、次のような成分組成の樹脂で、所定の強度の帯状態に仕上げられたものである。
【0034】
結束手段47は、例えば粘着テープや、樹脂製の結束バンド等が使用される。本実施形態の場合、結束手段47は、電線43の長手方向に離間した2箇所で、骨部材45を複数の電線43に結束する。具体的には、本実施形態の場合、結束手段47は骨部材45の両端部を、複数の電線43に固定している。
【0035】
本実施形態の場合、結束手段47は、図3に示すように、複数本の電線43が横断面形状で楕円形状に束ねている。しかし、結束手段47によって結束された電線束の横断面形状は、楕円形に限らない。円形や四角形など、配索箇所の空きスペースに応じて、適宜形状に設定することが可能である。
【0036】
本実施形態のコネクタ用配線部材41では、電線43の一端に接続されるコネクタがオプションコネクタ51であるため、オプション機器が設置されていない状況では、図4に示すように、骨部材45は曲げ部M1で電線43の根本側に折り返された曲げ形状に曲げ加工される。
【0037】
各電線43の曲げ形状は、骨部材45の曲げ形状に維持されるため、折り返したコネクタ用配線部材41上のオプションコネクタ51を、テープ等で固定しなくても、オプションコネクタ51が不用意に浮き上がったり、あるいは、電線43が意図しない方向に垂れることが防止される。
【0038】
以上に説明した第1実施形態のコネクタ用配線部材41では、図4に示したように、複数の電線43に縦添えされている骨部材45を、例えば、配索経路の形状に沿うように曲げ変形させることで、電線43に接続されているコネクタ51を手間を掛けずに配索経路上の所望の位置に位置決めした状態を維持することができる。
【0039】
また、以上に説明した第1実施形態のコネクタ用配線部材41では、電線43の曲げ形状は、骨部材45を曲げ直すことで簡単に変更することができる。例えば、図4では、オプションコネクタ51を使用しない回路止め位置に位置させているが、骨部材45の曲げを延ばすと、図1に示したようにオプションコネクタ51を接続相手のオプション機器側に引き出した状態に変更することができる。
【0040】
即ち、以上に説明した第1実施形態のコネクタ用配線部材41では、骨部材45の曲げを調整することで、電線43の余長を周辺の邪魔にならない形状に収めることも可能である。そのため、相手コネクタの設置位置の変更等にも柔軟に対応することができる。
【0041】
本発明のコネクタ用配線部材に接続されるコネクタは、第1実施形態に示したオプションコネクタ51に限るものではなく、機器付けコネクタや、待ち受けコネクタなど、各種のコネクタが接続可能である。
【0042】
図5は、第1実施形態に示したコネクタ用配線部材41の一端に、機器付けコネクタ61が接続された例を示している。
【0043】
機器付けコネクタ61は、車載機器に装備された機器コネクタ62に接続される。このように、一端に機器付けコネクタ61が接続されたコネクタ用配線部材41の場合は、骨部材45を曲げ変形させて、図5(a)に示すように、機器付けコネクタ61が対応する機器コネクタ62の嵌合部と対向する位置に位置決めされるように、コネクタ用配線部材41の配索形状を決定する。
【0044】
ワイヤハーネスの接続作業を行う作業者は、コネクタ用配線部材41に接続されている機器付けコネクタ61が、接続対象の機器コネクタ62と対向する位置に位置決めされているため、接続対象の機器コネクタの位置を探す手間が不要になる。また、機器付けコネクタ61が他の同種のコネクタ側に紛れ込まないように、コネクタ用配線部材41を手で支えておくような手間も不要になる。
【0045】
更に、コネクタ用配線部材41に接続された機器付けコネクタ61を、機器コネクタ62に接続した後は、図5(b)に示すように、配線部材5を更に曲げ変形させることで、余長を省スペースにまとめることもできる。
【0046】
図6は、第1実施形態に示したコネクタ用配線部材41の一端に、待ち受けコネクタ64が接続された例を示している。
【0047】
図6に示したコネクタ用配線部材41は、車載機器65から引き出されており、車載機器65を車体に固定した際に、車体側に装備されている相手コネクタと待ち受けコネクタ64との嵌合接続が容易となる位置に待ち受けコネクタ64が位置決めされるように、骨部材45が曲げ変形させられている。
【0048】
このような場合は、待ち受けする待ち受けコネクタ64の位置を維持するために、多数の機械部品等から構成されるガイド機構26が不要となり、大幅なコスト軽減を図ることができる。
【0049】
なお、本発明のコネクタ用配線部材は、前述した実施形態に限定されるものでなく、使用する骨部材、電線、結束手段などは、適宜な変形,改良等が可能である。
【0050】
例えば、骨部材は、帯板状ではなく、丸棒状または角棒状の線条体を使用するようにしても良い。また、骨部材も、上記の目的を達成できる曲げ特性を備えるものであれば、成分組成等は特に限定しない。
【符号の説明】
【0051】
41 コネクタ用配線部材
43 電線
45 骨部材
47 結束手段
51 コネクタ(オプションコネクタ)
61 コネクタ(機器付けコネクタ)
64 コネクタ(待ち受けコネクタ)
M1 曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がコネクタに接続される複数の電線と、前記コネクタの配置箇所において前記複数の電線に形成される曲げ部を含む範囲でこれらの複数の電線に縦添えされる樹脂製の骨部材と、前記電線の長手方向に離間した複数箇所で前記骨部材を複数の電線に結束する結束手段と、を備え、
前記骨部材は、前記複数の電線の束よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ線条体であることを特徴とするコネクタ用配線部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−23807(P2012−23807A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157841(P2010−157841)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】