コネクタ端子
【課題】電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供すること。
【解決手段】芯線１２を外被１３で覆った電線１１に接続されるコネクタ端子１０であって、外被１３から露出されて被膜１４で覆われた芯線１２に圧着されるバレル部２１と、相手端子と導通される電気接続部３１とを備え、バレル部２１の内面に、電線１１の軸線との直交方向に沿う溝部２５が形成され、溝部２５の深さ寸法が、被膜１４の被覆厚よりも小さくされている。
【解決手段】芯線１２を外被１３で覆った電線１１に接続されるコネクタ端子１０であって、外被１３から露出されて被膜１４で覆われた芯線１２に圧着されるバレル部２１と、相手端子と導通される電気接続部３１とを備え、バレル部２１の内面に、電線１１の軸線との直交方向に沿う溝部２５が形成され、溝部２５の深さ寸法が、被膜１４の被覆厚よりも小さくされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電線の端部に接続されるコネクタ端子に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、電線の端部に接続されるコネクタ端子の接続箇所を保護するために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００１−１６２６４７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記のように、圧着接続部分をモールドしたコネクタ端子では、電線を圧着する圧着工程を行った後、圧着機から取り外して成形機へ配置させ、この成形機でモールド樹脂を注入して樹脂モールドを成形する成形工程を行うこととなる。したがって、成形工程を行う成形機及びモールド用の樹脂材料が必要であり、設備費及び製造費が嵩んでしまう。
【０００５】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子は、下記（１）〜（３）を特徴としている。
（１） 導体を外被で覆った電線に接続されるコネクタ端子であって、
前記外被から露出されて被膜で覆われた前記導体に圧着されるバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記バレル部の内面に、前記電線の軸線との直交方向に沿う溝部または突条が形成され、
前記溝部の深さ寸法または前記突条の突出寸法が、前記被膜の被覆厚よりも小さくされていること。
（２） 上記（１）の構成のコネクタ端子において、前記バレル部には、前記導体への圧着によって前記導体の先端側を密閉する密閉片が形成されていること。
（３） 上記（１）または（２）の構成のコネクタ端子において、前記バレル部は、前記導体部分を圧着する芯線圧着部と、前記外被部分を圧着する外被圧着部とに分割されていること。
【０００７】
上記（１）の構成のコネクタ端子では、電線の軸線との直交方向に沿ってバレル部の内面に形成された溝部または突条に、被膜で覆われた導体が食い込む。よって、電線の導体に強固に圧着され、導体との良好な導通状態が得られる。
このとき、溝部の深さ寸法または突条の突出寸法が、導体の被膜の被覆厚よりも小さくされているので、バレル部と導体との間の被膜が破断されることなく、導体がバレル部に圧着される。したがって、このバレル部での圧着箇所での被膜の破断による導体の露出を防止することができ、被膜による導体の防食効果を維持させることができる。したがって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、電線と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
上記（２）の構成のコネクタ端子では、導体にバレル部が圧着されることにより、導体の先端側が密閉片で密閉される。これにより、圧着された電線の導体の周囲をバレル部で確実に覆うことができ、被膜を効果的に保護することができる。
上記（３）の構成のコネクタ端子では、分割された芯線圧着部及び外被圧着部がそれぞれ独立して外径のことなる導体及び外被に圧着されることとなる。これにより、電線の端部へより確実に接続することができる。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供できる。
【０００９】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】図１は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す斜視図である。
【図２】図２は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す断面図である。
【図３】図３は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す分解斜視図である。
【図４】図４は、コネクタ端子を示す図であって、図４（ａ）は全体の断面図、図４（ｂ）はバレル部の拡大断面図である。
【図５】図５は、コネクタ端子が接続される電線の端部の一部を断面視した側面図である。
【図６】図６は、電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の断面図である。
【図７】図７は、シールキャップを被せた電線に接続されたコネクタ端子の断面図である。
【図８】図８は、変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【図９】図９は、変形例に係るコネクタ端子の断面図である。
【図１０】図１０は、変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【００１２】
図１は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す斜視図、図２は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す断面図、図３は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す分解斜視図、図４（ａ）及び図４（ｂ）はコネクタ端子を示す図であって、図４（ａ）は全体の断面図、図４（ｂ）はバレル部の拡大断面図、図５はコネクタ端子が接続される電線の端部の一部を断面視した側面図、図６は電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の断面図である。
【００１３】
図１から図３に示すように、コネクタ端子１０は、電線１１に接続される。この電線１１は、アルミニウムからなる芯線（導体）１２と、この芯線１２の周囲に押出し被覆された外被１３とを有している。
【００１４】
コネクタ端子１０は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部２１及び電気接続部３１を有している。
【００１５】
バレル部２１は、先端側である電気接続部３１側が芯線圧着部２２とされ、後端側が外被圧着部２３とされている。このバレル部２１は、正面視で上方側が開放されたＵ字状または凹状に形成されており、その内部に電線１１の端部が配置された状態で圧着される。
【００１６】
図４（ａ）及び図４（ｂ）に示すように、コネクタ端子１０のバレル部２１には、その芯線圧着部２２の内面に、深さ寸法Ｘの複数の溝部２５が形成されている。これらの溝部２５は、接続する電線１１の軸線との直交方向に沿って形成されており、互いに間隔をあけて配置されている。
【００１７】
図５に示すように、コネクタ端子１０が接続される電線１１は、アルミニウムからなる芯線１２における外被１３の端部から露出した部分に半田付けが施されている。これにより、この芯線１２の露出部分の周囲は、半田からなる被膜１４によって覆われており、この被膜１４によってアルミニウムからなる芯線１２の腐食が防止されている。この芯線１２の周囲の被膜１４は、被覆厚Ｙとされている。
【００１８】
ここで、コネクタ端子１０のバレル部２１の芯線圧着部２２に形成された溝部２５の深さ寸法Ｘは、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さく（Ｘ＜Ｙ）されている。
【００１９】
コネクタ端子１０に電線１１を接続するには、コネクタ端子１０のバレル部２１に電線１１の端部を配置させた状態で圧着機によって内側に押し曲げて加締める。このように、圧着機でバレル部２１が内側に押し曲げられると、バレル部２１に配置された電線１１の芯線１２にバレル部２１の芯線圧着部２２が圧着され、電線１１の外被１３に外被圧着部２３が圧着される。これにより、電線１１の芯線１２とコネクタ端子１０とが導通された状態でコネクタ端子１０が電線１１に接続される。また、電線１１の軸線との直交方向に沿ってバレル部２１の内面に形成された複数の溝部２５に、被膜１４で覆われた芯線１２が食い込み、よって、コネクタ端子１０は、電線１１の芯線１２に強固に圧着され、芯線１２とコネクタ端子１０との良好な導通状態が得られる。
【００２０】
このとき、図６に示すように、コネクタ端子１０のバレル部２１の芯線圧着部２２に形成された溝部２５の深さ寸法Ｘが、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくされているので、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４が破断されることなく、芯線１２がバレル部２１に圧着される。したがって、このバレル部２１での圧着箇所での被膜１４の破断による芯線１２の露出が防止され、被膜１４による芯線１２の防食効果が維持される。
【００２１】
以上、説明したように、上記実施形態に係るコネクタ端子によれば、電線１１の軸線との直交方向に沿ってバレル部２１の内面に形成された溝部２５に、被膜１４で覆われた芯線１２が食い込むので、電線１１の芯線１２に強固に圧着させることができ、芯線１２との良好な導通状態を得ることができる。
【００２２】
しかも、溝部２５の深さ寸法Ｘが、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくされているので、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４が破断されることなく、芯線１２がバレル部２１に圧着される。したがって、圧着箇所における被膜１４の破断による芯線１２の露出を防止することができ、被膜１４による芯線１２の防食効果を維持させることができる。したがって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によってモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、電線１１と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ芯線１２との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【００２３】
なお、上記の実施形態では、バレル部２１の芯線圧着部２２の内面に、電線１１の軸線の直交方向に沿う複数の溝部２５を形成したが、これらの溝部２５に代えて電線１１の軸線の直交方向に沿う複数の突条を形成しても良い。この場合、突条の突出寸法は、被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくする。これにより、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４の破断なく芯線１２にバレル部２１を圧着させ、圧着箇所における被膜１４の破断による芯線１２の露出を防止することができ、被膜１４による芯線１２の防食効果を維持させることができる。
【００２４】
また、露出部分を半田からなる被膜１４で覆った芯線１２にコネクタ端子１０を接続したが、芯線１２を覆う被膜１４としては、半田に限らず、導電性ペースト等でも良い。
【００２５】
また、図７に示すように、電線１１へコネクタ端子１０を圧着する際に、電線１１の芯線１２の先端に、ゴム等の防水性を有する弾性材料から形成されたシールキャップ４１を被せても良い。
【００２６】
このように、電線１１の芯線１２の先端にシールキャップ４１を被せた状態で、電線１１にコネクタ端子１０を圧着すれば、芯線１２の先端部がシールキャップ４１で覆われることとなり、芯線１２を保護することができるとともに、芯線１２の耐食性を高めることができる。
【００２７】
次に、変形例に係るコネクタ端子について説明する。
【００２８】
図８は変形例に係るコネクタ端子の斜視図、図９は変形例に係るコネクタ端子の断面図である。
【００２９】
図８及び図９に示すように、このコネクタ端子１０は、バレル部２１における電気接続部３１側に密閉片４２が形成されている。このコネクタ端子１０では、バレル部２１を加締めて電線１１の端部に圧着した際に、密閉片４２も加締められ、芯線１２の先端部分が密閉片４２によって密閉される。
【００３０】
このように、このコネクタ端子１０では、圧着された電線１１の芯線１２の周囲をバレル部２１で確実に覆うことができ、被膜１４で覆われた芯線１２を効果的に保護することができる。
【００３１】
図１０は変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【００３２】
図１０に示すように、このコネクタ端子１０は、バレル部２１を構成する芯線圧着部２２と外被圧着部２３とが分割されたものである。このコネクタ端子１０では、バレル部２１を加締めて電線１１の端部に圧着した際に、分割された芯線圧着部２２及び外被圧着部２３がそれぞれ独立して外径のことなる芯線１２及び外被１３に圧着されることとなる。これにより、電線１１の端部へコネクタ端子１０を、より確実に接続することができる。
【００３３】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【００３４】
１０ コネクタ端子
１１ 電線
１２ 芯線（導体）
１３ 外被
１４ 被膜
２１ バレル部
２２ 芯線圧着部
２３ 外被圧着部
２５ 溝部
３１ 電気接続部
４２ 密閉片
Ｘ 深さ寸法
Ｙ 被覆厚
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電線の端部に接続されるコネクタ端子に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、電線の端部に接続されるコネクタ端子の接続箇所を保護するために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００１−１６２６４７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記のように、圧着接続部分をモールドしたコネクタ端子では、電線を圧着する圧着工程を行った後、圧着機から取り外して成形機へ配置させ、この成形機でモールド樹脂を注入して樹脂モールドを成形する成形工程を行うこととなる。したがって、成形工程を行う成形機及びモールド用の樹脂材料が必要であり、設備費及び製造費が嵩んでしまう。
【０００５】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子は、下記（１）〜（３）を特徴としている。
（１） 導体を外被で覆った電線に接続されるコネクタ端子であって、
前記外被から露出されて被膜で覆われた前記導体に圧着されるバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記バレル部の内面に、前記電線の軸線との直交方向に沿う溝部または突条が形成され、
前記溝部の深さ寸法または前記突条の突出寸法が、前記被膜の被覆厚よりも小さくされていること。
（２） 上記（１）の構成のコネクタ端子において、前記バレル部には、前記導体への圧着によって前記導体の先端側を密閉する密閉片が形成されていること。
（３） 上記（１）または（２）の構成のコネクタ端子において、前記バレル部は、前記導体部分を圧着する芯線圧着部と、前記外被部分を圧着する外被圧着部とに分割されていること。
【０００７】
上記（１）の構成のコネクタ端子では、電線の軸線との直交方向に沿ってバレル部の内面に形成された溝部または突条に、被膜で覆われた導体が食い込む。よって、電線の導体に強固に圧着され、導体との良好な導通状態が得られる。
このとき、溝部の深さ寸法または突条の突出寸法が、導体の被膜の被覆厚よりも小さくされているので、バレル部と導体との間の被膜が破断されることなく、導体がバレル部に圧着される。したがって、このバレル部での圧着箇所での被膜の破断による導体の露出を防止することができ、被膜による導体の防食効果を維持させることができる。したがって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、電線と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
上記（２）の構成のコネクタ端子では、導体にバレル部が圧着されることにより、導体の先端側が密閉片で密閉される。これにより、圧着された電線の導体の周囲をバレル部で確実に覆うことができ、被膜を効果的に保護することができる。
上記（３）の構成のコネクタ端子では、分割された芯線圧着部及び外被圧着部がそれぞれ独立して外径のことなる導体及び外被に圧着されることとなる。これにより、電線の端部へより確実に接続することができる。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供できる。
【０００９】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】図１は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す斜視図である。
【図２】図２は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す断面図である。
【図３】図３は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す分解斜視図である。
【図４】図４は、コネクタ端子を示す図であって、図４（ａ）は全体の断面図、図４（ｂ）はバレル部の拡大断面図である。
【図５】図５は、コネクタ端子が接続される電線の端部の一部を断面視した側面図である。
【図６】図６は、電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の断面図である。
【図７】図７は、シールキャップを被せた電線に接続されたコネクタ端子の断面図である。
【図８】図８は、変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【図９】図９は、変形例に係るコネクタ端子の断面図である。
【図１０】図１０は、変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【００１２】
図１は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す斜視図、図２は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す断面図、図３は本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す分解斜視図、図４（ａ）及び図４（ｂ）はコネクタ端子を示す図であって、図４（ａ）は全体の断面図、図４（ｂ）はバレル部の拡大断面図、図５はコネクタ端子が接続される電線の端部の一部を断面視した側面図、図６は電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の断面図である。
【００１３】
図１から図３に示すように、コネクタ端子１０は、電線１１に接続される。この電線１１は、アルミニウムからなる芯線（導体）１２と、この芯線１２の周囲に押出し被覆された外被１３とを有している。
【００１４】
コネクタ端子１０は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部２１及び電気接続部３１を有している。
【００１５】
バレル部２１は、先端側である電気接続部３１側が芯線圧着部２２とされ、後端側が外被圧着部２３とされている。このバレル部２１は、正面視で上方側が開放されたＵ字状または凹状に形成されており、その内部に電線１１の端部が配置された状態で圧着される。
【００１６】
図４（ａ）及び図４（ｂ）に示すように、コネクタ端子１０のバレル部２１には、その芯線圧着部２２の内面に、深さ寸法Ｘの複数の溝部２５が形成されている。これらの溝部２５は、接続する電線１１の軸線との直交方向に沿って形成されており、互いに間隔をあけて配置されている。
【００１７】
図５に示すように、コネクタ端子１０が接続される電線１１は、アルミニウムからなる芯線１２における外被１３の端部から露出した部分に半田付けが施されている。これにより、この芯線１２の露出部分の周囲は、半田からなる被膜１４によって覆われており、この被膜１４によってアルミニウムからなる芯線１２の腐食が防止されている。この芯線１２の周囲の被膜１４は、被覆厚Ｙとされている。
【００１８】
ここで、コネクタ端子１０のバレル部２１の芯線圧着部２２に形成された溝部２５の深さ寸法Ｘは、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さく（Ｘ＜Ｙ）されている。
【００１９】
コネクタ端子１０に電線１１を接続するには、コネクタ端子１０のバレル部２１に電線１１の端部を配置させた状態で圧着機によって内側に押し曲げて加締める。このように、圧着機でバレル部２１が内側に押し曲げられると、バレル部２１に配置された電線１１の芯線１２にバレル部２１の芯線圧着部２２が圧着され、電線１１の外被１３に外被圧着部２３が圧着される。これにより、電線１１の芯線１２とコネクタ端子１０とが導通された状態でコネクタ端子１０が電線１１に接続される。また、電線１１の軸線との直交方向に沿ってバレル部２１の内面に形成された複数の溝部２５に、被膜１４で覆われた芯線１２が食い込み、よって、コネクタ端子１０は、電線１１の芯線１２に強固に圧着され、芯線１２とコネクタ端子１０との良好な導通状態が得られる。
【００２０】
このとき、図６に示すように、コネクタ端子１０のバレル部２１の芯線圧着部２２に形成された溝部２５の深さ寸法Ｘが、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくされているので、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４が破断されることなく、芯線１２がバレル部２１に圧着される。したがって、このバレル部２１での圧着箇所での被膜１４の破断による芯線１２の露出が防止され、被膜１４による芯線１２の防食効果が維持される。
【００２１】
以上、説明したように、上記実施形態に係るコネクタ端子によれば、電線１１の軸線との直交方向に沿ってバレル部２１の内面に形成された溝部２５に、被膜１４で覆われた芯線１２が食い込むので、電線１１の芯線１２に強固に圧着させることができ、芯線１２との良好な導通状態を得ることができる。
【００２２】
しかも、溝部２５の深さ寸法Ｘが、芯線１２の被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくされているので、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４が破断されることなく、芯線１２がバレル部２１に圧着される。したがって、圧着箇所における被膜１４の破断による芯線１２の露出を防止することができ、被膜１４による芯線１２の防食効果を維持させることができる。したがって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によってモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、電線１１と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ芯線１２との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【００２３】
なお、上記の実施形態では、バレル部２１の芯線圧着部２２の内面に、電線１１の軸線の直交方向に沿う複数の溝部２５を形成したが、これらの溝部２５に代えて電線１１の軸線の直交方向に沿う複数の突条を形成しても良い。この場合、突条の突出寸法は、被膜１４の被覆厚Ｙよりも小さくする。これにより、バレル部２１と芯線１２との間の被膜１４の破断なく芯線１２にバレル部２１を圧着させ、圧着箇所における被膜１４の破断による芯線１２の露出を防止することができ、被膜１４による芯線１２の防食効果を維持させることができる。
【００２４】
また、露出部分を半田からなる被膜１４で覆った芯線１２にコネクタ端子１０を接続したが、芯線１２を覆う被膜１４としては、半田に限らず、導電性ペースト等でも良い。
【００２５】
また、図７に示すように、電線１１へコネクタ端子１０を圧着する際に、電線１１の芯線１２の先端に、ゴム等の防水性を有する弾性材料から形成されたシールキャップ４１を被せても良い。
【００２６】
このように、電線１１の芯線１２の先端にシールキャップ４１を被せた状態で、電線１１にコネクタ端子１０を圧着すれば、芯線１２の先端部がシールキャップ４１で覆われることとなり、芯線１２を保護することができるとともに、芯線１２の耐食性を高めることができる。
【００２７】
次に、変形例に係るコネクタ端子について説明する。
【００２８】
図８は変形例に係るコネクタ端子の斜視図、図９は変形例に係るコネクタ端子の断面図である。
【００２９】
図８及び図９に示すように、このコネクタ端子１０は、バレル部２１における電気接続部３１側に密閉片４２が形成されている。このコネクタ端子１０では、バレル部２１を加締めて電線１１の端部に圧着した際に、密閉片４２も加締められ、芯線１２の先端部分が密閉片４２によって密閉される。
【００３０】
このように、このコネクタ端子１０では、圧着された電線１１の芯線１２の周囲をバレル部２１で確実に覆うことができ、被膜１４で覆われた芯線１２を効果的に保護することができる。
【００３１】
図１０は変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【００３２】
図１０に示すように、このコネクタ端子１０は、バレル部２１を構成する芯線圧着部２２と外被圧着部２３とが分割されたものである。このコネクタ端子１０では、バレル部２１を加締めて電線１１の端部に圧着した際に、分割された芯線圧着部２２及び外被圧着部２３がそれぞれ独立して外径のことなる芯線１２及び外被１３に圧着されることとなる。これにより、電線１１の端部へコネクタ端子１０を、より確実に接続することができる。
【００３３】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【００３４】
１０ コネクタ端子
１１ 電線
１２ 芯線（導体）
１３ 外被
１４ 被膜
２１ バレル部
２２ 芯線圧着部
２３ 外被圧着部
２５ 溝部
３１ 電気接続部
４２ 密閉片
Ｘ 深さ寸法
Ｙ 被覆厚
【特許請求の範囲】
【請求項１】
導体を外被で覆った電線に接続されるコネクタ端子であって、
前記外被から露出されて被膜で覆われた前記導体に圧着されるバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記バレル部の内面に、前記電線の軸線との直交方向に沿う溝部または突条が形成され、
前記溝部の深さ寸法または前記突条の突出寸法が、前記被膜の被覆厚よりも小さくされていることを特徴とするコネクタ端子。
【請求項２】
前記バレル部には、前記導体への圧着によって前記導体の先端側を密閉する密閉片が形成されていることを特徴とする請求項１に記載のコネクタ端子。
【請求項３】
前記バレル部は、前記導体部分を圧着する芯線圧着部と、前記外被部分を圧着する外被圧着部とに分割されていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載のコネクタ端子。
【請求項１】
導体を外被で覆った電線に接続されるコネクタ端子であって、
前記外被から露出されて被膜で覆われた前記導体に圧着されるバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記バレル部の内面に、前記電線の軸線との直交方向に沿う溝部または突条が形成され、
前記溝部の深さ寸法または前記突条の突出寸法が、前記被膜の被覆厚よりも小さくされていることを特徴とするコネクタ端子。
【請求項２】
前記バレル部には、前記導体への圧着によって前記導体の先端側を密閉する密閉片が形成されていることを特徴とする請求項１に記載のコネクタ端子。
【請求項３】
前記バレル部は、前記導体部分を圧着する芯線圧着部と、前記外被部分を圧着する外被圧着部とに分割されていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載のコネクタ端子。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１３−１０５５８２（Ｐ２０１３−１０５５８２Ａ）
【公開日】平成２５年５月３０日（２０１３．５．３０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２４７６１９（Ｐ２０１１−２４７６１９）
【出願日】平成２３年１１月１１日（２０１１．１１．１１）
【出願人】（０００００６８９５）矢崎総業株式会社 (7,019)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月３０日（２０１３．５．３０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年１１月１１日（２０１１．１１．１１）
【出願人】（０００００６８９５）矢崎総業株式会社 (7,019)
【Ｆターム（参考）】
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