説明

コネクタ端子

【課題】導体との接続箇所における良好な防水性及び耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供すること。
【解決手段】電線11の外被13から露出された芯線12が導通接続されるバレル部21と、相手方端子と導通されるタブ端子部31とを備え、バレル部21及び電線11の端部が、樹脂からなる防水ケース41によって覆われて防水されるコネクタ端子10であって、防水ケース41は、電線11の外被13と同一材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防水性を持たせるために、芯線を絶縁被覆で被覆している被覆電線の端末より芯線を露出させ、芯線に端子を接続し、端子の電気接触部は露出させると共に端子の電線接続部および端子と接続される被覆電線の端末を樹脂モールドすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−97704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように単に端子を樹脂モールドしても、外力が作用した際に、樹脂モールドが端子から剥がれるおそれがあった。そして、樹脂モールドが端子から剥がれると、この剥がれた部分から結露などによって生じた水が浸入し、電線と端子の接続部分の耐食性が低下してしまう。
【0005】
特に、アルミニウム電線と銅端子とを圧着して接続するような場合、異種金属からなる接続箇所が被水することにより、異種金属接触腐食などの電食が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体との接続箇所における良好な防水性及び耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手方端子と導通される端子部とを備え、前記バレル部及び前記電線の端部が、樹脂からなる防水ケースによって覆われて防水されるコネクタ端子であって、
前記防水ケースは、前記電線の外被と同一材料から形成されていること。
(2) 上記(1)の構成のコネクタ端子において、
前記バレル部における前記防水ケースに密着する箇所または前記バレル部における前記導体に当接する箇所に、予めプライマーが塗布されていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のコネクタ端子において、
半割りのケース部材からならなる前記防水ケースが、前記バレル部及び前記電線の端部を覆うように前記ケース部材を互いに突き合わせて超音波接合することにより取り付けられていること。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタ端子では、防水ケースを電線の外被と同一材料から形成したので、電線の外被との密着力を高めて防水性をさらに高めることができる。
上記(2)の構成のコネクタ端子では、防水ケースが密着される箇所に、予めプライマーが塗布されているので、バレル部及び電線の端部を覆うように防水ケースを取り付けた際に、防水ケースとの接着性の向上によって密着力を大幅に高めることができる。これにより、外力による防水ケースの剥がれを防止することができ、よって、電線の導体との接続箇所を防水ケースで確実に密閉し、高い耐食性を長期的に確保することができる。したがって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所が被水することによる異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。
上記(3)の構成のコネクタ端子では、バレル部及び電線の端部を覆うようにケース部材を互いに突き合わせて超音波接合することにより防水ケースを取り付けているので、金型を用いて樹脂モールドを形成したものと比較して、金型を不要とすることができ、製造コストを削減することができる。また、防水ケースで覆う構造であるので、樹脂を塗布して密閉する場合と比較して、外形寸法の管理の容易化及び外形寸法の均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導体との接続箇所における良好な防水性及び耐食性を得ることが可能なコネクタ端子を提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図である。
【図2】電線が接続された実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。
【図3】防水ケースが取り付けられた実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。
【図4】防水ケースが取り付けられた実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図4(a)は側断面図、図4(b)は上ケースを取り外した状態における平面図である。
【図5】図3(a)におけるA−A断面図である。
【図6】実施形態に係るコネクタ端子への防水ケースの取り付け方を示す図であって、図6(a)は側面図、図6(b)は平面図である。
【図7】参考例のコネクタ端子を示す図であって、図7(a)は側面図、図7(b)は平面図である。
【図8】他の参考例のコネクタ端子を示す図であって、図8(a)は側面図、図8(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図、図2は、電線が接続された実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図、図3は、防水ケースが取り付けられた実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図、図4は、防水ケースが取り付けられた実施形態に係るコネクタ端子を示す図であって、図4(a)は側断面図、図4(b)は上ケースを取り外した状態における平面図、図5は、図3(a)におけるA−A断面図、図6は、実施形態に係るコネクタ端子への防水ケースの取り付け方を示す図であって、図6(a)は側面図、図6(b)は平面図である。
【0014】
図1(a)〜図2(b)に示すように、コネクタ端子10は、電線11に接続される。この電線11は、例えば、アルミニウムからなる芯線(導体)12と、この芯線12の周囲に押出し被覆された外被13とを有している。
【0015】
コネクタ端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部21及びタブ端子部31を有している。
【0016】
バレル部21は、芯線圧着部22と、外被圧着部23とを有している。芯線圧着部22は、電線11の端部で露出された芯線12を圧着する。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。また、外被圧着部23は、電線11の端部における外被13部分を圧着する。これにより、電線11の外被13部分がコネクタ端子10に固定される。
【0017】
また、バレル部21は、タブ端子部31側に、連結板部24を有しており、芯線圧着部22に圧着される電線11の芯線12の先端が連結板部24にも配置されている。この連結板部24の所定の位置には、その外周面及びその内周面に、プライマー25が塗布されている(図1〜図4、及び図6では、プライマー25が塗布された箇所を斜線で示している。)。連結板部24の外周面は、後述する防水ケースに密着する面であり、連結板部24の内周面は、芯線12に当接する面である。このプライマー25は、絶縁性を有する合成樹脂からなるもので、例えば、ポリオレフィン等が用いられる。
【0018】
タブ端子部31は、相手方端子のタブが接続される部分であり、このタブ端子部31に相手方端子のタブを接続することにより、コネクタ端子10が相手方端子と導通される。尚、本実施形態では、コネクタ端子10に、相手方端子に接触する端部がタブ形状である場合について説明するが、コネクタ端子10の端部には、オス型形状、メス型形状、またはLA端子(アース端子)等の各種形状を適用することができる。
【0019】
図3(a)〜図4(b)に示すように、コネクタ端子10は、防水ケース41を備えている。この防水ケース41は、下ケース(ケース部材)42と、上ケース(ケース部材)43とから構成された半割り構造とされている。これらの下ケース42及び上ケース43は、絶縁性を有する合成樹脂から成形されたもので、電線11の外被13と同一材料から成形されている。
【0020】
下ケース42及び上ケース43は、バレル部21を介して互いに突き合わされ、超音波接合によって互いの対向面42a,43aが溶着されて固定されている。これらの下ケース42及び上ケース43は、互いに突き合わされる対向側に、凹部44,45が形成されている。これにより、これらの下ケース42及び上ケース43を突き合わせると、凹部44,45から形成される空間部46に、電線11の端部が圧着接続されたバレル部21が収容される。
【0021】
下ケース42及び上ケース43のタブ端子部31側は、バレル部21の連結板部24の外形に沿った形状の端子密着凹部51,52を有している。これにより、下ケース42及び上ケース43におけるタブ端子部31側では、図5に示すように、バレル部21の連結板部24の外面に、端子密着凹部51,52が密着されている。ここで、下ケース42及び上ケース43の端子密着凹部51,52は、プライマー25が塗布された範囲に密着されている。また、下ケース42及び上ケース43の電線11側は、電線11の外形に沿った形状の電線密着凹部53,54を有している。これにより、下ケース及び上ケース43における電線11側では、電線11の外面に、電線密着凹部53,54が密着されている。
【0022】
そして、この下ケース42及び上ケース43からなる防水ケース41を有するコネクタ端子10は、防水ケース41によって、電線11の端部が圧着接続されたバレル部21が覆われているので、このバレル部21における芯線12との接続箇所が防水される。
【0023】
上記のコネクタ端子10に電線11を接続するには、まず、電線11の端部における外被13を切断して除去し、芯線12を露出させる。
【0024】
その後、予め所定の位置に前処理としてプライマー25が塗布されたコネクタ端子10に対して、そのバレル部21における芯線圧着部22及び外被圧着部23に、それぞれ電線11の芯線12及び外被13を圧着する。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。
【0025】
次に、図6(a)、図6(b)に示すように、電線11が接続されたバレル部21を覆うように、下ケース42及び上ケース43を互いに突き合わせて装着し、超音波を印加する。すると、これらの下ケース42及び上ケース43の互いの対向面42a,43aが超音波振動によって互いに溶着される。
【0026】
このとき、下ケース42及び上ケース43の端子密着凹部51,52では、プライマー25が塗布された連結板部24の外周面に対して、下ケース42が極めて良好に超音波接合によって溶着し、また、プライマー25が塗布された連結板部24の内周面に対して、上ケース43が極めて良好に超音波接合によって溶着する。また、下ケース42及び上ケース43の電線密着凹部53,54では、電線11の外被13に対して、下ケース42及び上ケース43が極めて良好に超音波接合によって溶着する。
【0027】
これにより、電線11が接続されたバレル部21が、互いに密着固定された下ケース42及び上ケース43からなる防水ケース41によって覆われて確実に防水された状態となる。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態に係るコネクタ端子によれば、防水ケース41を電線11の外被13と同一材料から形成したので、電線11の外周面にプライマー25を塗布しなくても、電線11の外被13との密着力を高めて防水性をさらに高めることができる。
【0029】
また、本実施形態に係るコネクタ端子によれば、防水ケース41が密着される箇所に、予めプライマー25が塗布されているので、バレル部21及び電線11の端部を覆うように防水ケース41を取り付けた際に、防水ケース41との接着性の向上によって密着力を大幅に高めることができる。これにより、外力による防水ケース41の剥がれを確実に防止することができ、よって、芯線12との接続箇所に樹脂モールドを単に一体成形して防水したものや芯線12との接続箇所に樹脂を塗布して覆って防水したものと比較して、電線11の芯線12との接続箇所を防水ケース41で確実に密閉し、高い耐食性を長期的に確保することができる。したがって、例えば、銅または銅合金とアルミニウムとの異種金属同士の接続であっても、接続箇所が被水することによる異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。
【0030】
また、バレル部21及び電線11の端部を覆うように下ケース42及び上ケース43を互いに突き合わせて超音波接合することにより防水ケース41を取り付けているので、金型を用いて樹脂モールドを形成したものと比較して、金型を不要とすることができ、製造コストを削減することができる。また、防水ケース41で覆う構造であるので、樹脂を塗布して密閉する場合と比較して、外形寸法の管理の容易化及び外形寸法の均一化を図ることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、電線11の接続前にコネクタ端子10の所定位置へプライマー25を塗布したが、このプライマー25は、電線11の接続後に塗布しても良い。この場合、接続された電線11の芯線12の表面にもプライマー25が塗布されることとなり、防水ケース41の上ケース43と芯線12との密着性も高めることができる。
【0032】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、図7(a)〜図8(b)に参考例を示す。
【0033】
図7は参考例のコネクタ端子を示す図であって、図7(a)は側面図、図7(b)は平面図、図8は他の参考例のコネクタ端子を示す図であって、図8(a)は側面図、図8(b)は平面図である。
【0034】
図7(a)、図7(b)に示すように、このコネクタ端子60は、導体部52bを絶縁材51aで覆った絶縁被覆部55と電線50の端部の絶縁材51aが除去された導体露出部56とを有する電線50と、絶縁被覆部55に圧着される第1の圧着部61および導体露出部56に圧着される第2の圧着部62を備えている。このコネクタ端子60では、電線50の延在方向で、第1の圧着部61と第1の圧着部61から電線50の端部とは逆方向に向けて伸びる側の絶縁被覆部55とを含む範囲と、第2の圧着部62の範囲と、を覆う熱可塑性エラストマーからなるシール部70を有している。このシール部70は、電線50の延在方向に直交する断面の外周を継ぎ目なく覆っており、これにより、防水性を高めることが可能となり、結果的に防食性を向上させることができる。
【0035】
しかし、このコネクタ端子60においても、シール部70との密着力を高め、防水効果の向上を図ることが望まれる。また、このコネクタ端子60では、シール部70を成形するための金型が必要となり、製造コストが嵩んでしまう。
【0036】
図8(a)、図8(b)に示すように、このコネクタ端子80は、導体圧着部81を備えており、この導体圧着部81に、電線82の外被83から露出された導体84が圧着固定されている。そして、このコネクタ端子80では、導体圧着部81で圧着固定された導体84の露出部分が、樹脂85を塗布することによって密閉され、接続箇所における電食が防止されている。
【0037】
しかし、このコネクタ端子80の場合、密閉箇所が局所的であるため、外力が作用した際に、樹脂85が剥がれて水が浸入し、電線82との接続部分の耐食性が低下してしまうおそれがある。また、塗布する樹脂85は、流動性を有するため、樹脂85を均一的に塗布することが困難であり、塗布後における外形の均一化が難しく、寸法の管理が困難である。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0039】
10 コネクタ端子
11 電線
12 芯線(導体)
13 外被
21 バレル部
25 プライマー
31 タブ端子部
41 防水ケース
42 下ケース(ケース部材)
43 上ケース(ケース部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手方端子と導通される端子部とを備え、前記バレル部及び前記電線の端部が、樹脂からなる防水ケースによって覆われて防水されるコネクタ端子であって、
前記防水ケースは、前記電線の外被と同一材料から形成されていることを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
前記バレル部における前記防水ケースに密着する箇所または前記バレル部における前記導体に当接する箇所に、予めプライマーが塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項3】
半割りのケース部材からなる前記防水ケースが、前記バレル部及び前記電線の端部を覆うように前記ケース部材を互いに突き合わせて超音波接合することにより取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62076(P2013−62076A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198554(P2011−198554)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】