説明

コネクタ

【課題】端子金具のがたつきを確実に防止できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、端子金具3とコネクタハウジング4とスペーサ5とを備えている。コネクタハウジング4は、端子金具3を収容する。スペーサ5は、コネクタハウジング4に取り付けられて、端子金具3がコネクタハウジング4内から抜け出ることを防止する。スペーサ5は、スペーサ本体50と、弾性変形部60とを備えている。弾性変形部60は、弾性材料で構成され、スペーサ本体50の端子金具3と相対する外表面に設けられて、スペーサ本体50がコネクタハウジング4に取り付けられると端子金具3と当接して弾性変形した後に、弾性復元力によって端子金具3を該端子金具の挿入方向L1に直交(交差)する方向Pに沿って押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具を収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに取り付けられて前記端子金具が前記コネクタハウジング内から抜け出ることを防止するスペーサとを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載される。この自動車は、前記電子機器に電力や制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、コネクタ(例えば、特許文献1参照)とを備えている。電線は、導電性の芯線と、該芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えた所謂被覆電線である。
【0003】
前述した特許文献1に記載されたコネクタは、端子金具と、コネクタハウジングと、スペーサとを備えている。端子金具は、所謂雌型の端子金具である。端子金具は、導電性の板金等で構成され、電線接続部と電気接触部とを一体に備えている。電線接続部には、前述した電線が電気的かつ機械的に接続される。電気接触部は、筒状に形成されている。電気接触部は、コネクタに嵌合する相手方のコネクタの雄型の端子金具の電気接触部が内部に挿入されて、該雄型の端子金具の電気接触部と電気的に接続する。
【0004】
コネクタハウジングは、絶縁性の合成樹脂等で構成され、例えば射出成形によって成形されている。コネクタハウジングは、筒状のハウジング本体と、ハウジング本体の外側に設けられたフード部とを一体に備えている。ハウジング本体には、端子金具を収容する端子収容室が設けられている。端子収容室内には、端子金具を端子収容室内に係止する係止ランスが突出している。
【0005】
スペーサは、絶縁性の合成樹脂等で構成され、例えば射出成形によって成形されている。スペーサは、基壁と、基壁の両端から立設した一対の側壁と、基壁の中央から立設した中壁とを一体に備えている。スペーサがコネクタハウジングに取り付けられると、基壁はハウジング本体の先端面に重ねられ、一対の側壁はそれぞれハウジング本体とフード部との間に挿入され、中壁は端子収容室内に挿入される。
【0006】
このとき、中壁の先端は、端子収容室の内面と係止ランスとの間に位置付けられて、端子金具を係止する係止ランスの弾性変形を防止し、端子金具が端子収容室内から抜け出ることを防止する。また、中壁の基端は、端子収容室の内面と端子金具の電気接触部との間に位置付けられて、その外表面が電気接触部の外表面と重なり合って、端子金具が端子収容室内でがたつくことを防止する。
【特許文献1】特開2003−338338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1に記載されたコネクタにおいては、スペーサの中壁の基端側の外表面が、端子金具の電気接触部の外表面と重なり合うように設計されている。しかしながら、スペーサは合成樹脂等で構成されているので、成形時に寸法誤差が生じる虞がある。この寸法誤差によって中壁が所定の寸法よりも薄く成形されると、中壁の外表面と端子金具の電気接触部の外表面との間に隙間ができてしまう。そして、この隙間によって、コネクタが自動車に搭載されたときに端子金具が端子収容室内でがたついて、端子金具同士の接点が磨耗し導通不良を起こして接続信頼性が低下したり、異音が発生したりするといった問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、端子金具のがたつきを確実に防止できるコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、端子金具を収容するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに取り付けられて、前記端子金具が前記コネクタハウジング内から抜け出ることを防止するスペーサと、を備えたコネクタにおいて、前記スペーサが、前記コネクタハウジングに取り付けられるスペーサ本体と、弾性材料で構成され、かつ、前記スペーサ本体の前記端子金具と相対する外表面に設けられて、前記スペーサ本体が前記コネクタハウジングに取り付けられると前記端子金具と当接して弾性変形した後に弾性復元力によって前記端子金具を該端子金具の挿入方向に交差する方向に沿って押圧する弾性変形部と、を備えたことを特徴としたコネクタである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載されたコネクタにおいて、前記スペーサ本体が合成樹脂で構成され、前記スペーサ本体と前記弾性変形部とが一体成形されたことを特徴としたコネクタである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載されたコネクタにおいて、前記弾性変形部の前記端子金具と相対する外表面に、突部が設けられたことを特徴としたコネクタである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載されたコネクタにおいて、前記突部が複数設けられ、複数の前記突部のうちの前記弾性変形部の前記端子金具の先端と相対する外表面に設けられた突部が、前記弾性変形部の前記端子金具の先端以外と相対する外表面に設けられた突部よりも突出して設けられ、かつ、前記端子金具の先端を該端子金具の挿入方向の反対方向に沿って押圧することを特徴としたコネクタである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、スペーサ本体や弾性変形部の成形時の寸法誤差によらず、弾性変形部が端子金具の挿入方向に交差する方向に沿って端子金具を押圧する。したがって、端子金具の挿入方向に交差する方向に沿った端子金具のがたつきを確実に防止できる。これによって、端子金具の接続信頼性が向上し、異音が発生することがない。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、スペーサをコネクタハウジングに取り付けることによって、弾性変形部が端子金具を押圧する。したがって、弾性変形部を設けても、取付作業性が低下することがない。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、弾性変形部は、突部が該突部周辺(即ち凹部)に入り込むように弾性変形する。このため、突部周辺は、弾性変形部が弾性変形する際の逃げ部となる。したがって、弾性変形部を設けても端子金具の挿入力(またはスペーサの挿入力)の上昇を抑えることができる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、弾性変形部の端子金具の先端と相対する外表面に設けられた突部が、端子金具の挿入方向に沿って端子金具を押圧する。したがって、端子金具の挿入方向に沿った端子金具のがたつきを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態にかかるコネクタを図1ないし図4を参照して説明する。本発明の第1の実施形態にかかるコネクタ1は、自動車等に配索されるワイヤハーネスを構成する。ワイヤハーネスは、図1に示すように、複数の電線2と、コネクタ1とを備えている。電線2は、導電性の芯線21と、この芯線21を被覆する絶縁性の被覆部22とを備えている。
【0018】
コネクタ1は、図1に示すように、端子金具3と、コネクタハウジング4と、スペーサ5とを備えている。端子金具3は、所謂雌型の端子金具である。端子金具3は、導電性の板金等で構成され、電線接続部31と電気接触部32とを備えている。電線接続部31には、前述した電線2が電気的かつ機械的に接続される。電気接触部32は、筒状に形成され、電線接続部31に連なっている。電気接触部32は、コネクタ1に嵌合する相手方のコネクタの雄型の端子金具の電気接触部が内部に挿入されて、該雄型の端子金具の電気接触部と電気的に接続する。
【0019】
コネクタハウジング4は、絶縁性の合成樹脂等で構成され、射出成形等によって成形されている。コネクタハウジング4は、図1に示すように、ハウジング本体40と、端子収容室41と、スライド溝(図示せず)とを備えている。ハウジング本体40は、筒状に形成されている。
【0020】
端子収容室41は、ハウジング本体40内に複数設けられている。端子収容室41は、矢印Lに沿って直線孔状に形成されており、互いに平行に並べられている。端子収容室41には、一方の開口から矢印L1に沿って端子金具3が挿入される。矢印L1は、矢印Lと平行な方向であり、端子金具3の挿入方向をなしている。端子収容室41は、内部に端子金具3を収容する。端子収容室41が内部に端子金具3を収容することで、コネクタハウジング4は端子金具3を収容する。
【0021】
端子収容室41には、係止ランス42が設けられている。係止ランス42は、端子収容室41の内面と一体に形成されており、この内面から該端子収容室41の内側に向かって延びている。また、係止ランス42は、矢印L(L1)に沿って延びている。係止ランス42は、端子収容室41内に端子金具3が挿入されると、電気接触部32の電線接続部31寄りの端部に係止する。
【0022】
スライド溝は、ハウジング本体40の内面のうち、ハウジング本体40の幅方向(図1中、紙面手前−紙面奥方向)に沿って互いに相対する一対の内面のそれぞれに設けられている。スライド溝は、前記内面から凹に形成され、前述した矢印L(L1)に沿って延びている。スライド溝は、複数設けられ、前記内面にそれぞれ2つずつ、合計で4つ設けられている。複数のスライド溝は、互いに平行である。
【0023】
前述したスライド溝は、内側にスペーサ5の後述する仮係止突起53bまたは本係止突起54bを位置付けることで、スペーサ5をスライド溝の長手方向、即ち矢印Lに沿ってスライド自在に支持する。コネクタハウジング4は、スライド溝の内側にスペーサ5の仮係止突起53b及び本係止突起54bを位置付けることで、スペーサ5を仮係止位置と本係止位置とに亘って移動自在にハウジング本体40に取り付ける。
【0024】
前述した4つのスライド溝のうち、内側にスペーサ5の仮係止突起53bを位置付ける2つのスライド溝には、仮係止部が設けられている。仮係止部は、スライド溝の内面から突出している。仮係止部は、スライド溝の長手方向中央に設けられている。仮係止部は、スライド溝内に位置付けられた仮係止突起53bと、矢印L(L1、L2)に沿って相対する。
【0025】
また、前述した4つのスライド溝のうち、内側のスペーサ5の本係止突起54bを位置付ける残りの2つのスライド溝には、本係止部が設けられている。本係止部は、スライド溝の内面から突出している。本係止部は、仮係止部より矢印L2の前方側に設けられている。矢印L2は、矢印L及び矢印L1と平行な方向、かつ、矢印L1の反対方向であり、スペーサ5の取付方向をなしている。本係止部は、スライド溝内に位置付けられた本係止突起54bと、矢印L(L1、L2)に沿って相対する。
【0026】
スペーサ5は、図2等に示すように、スペーサ本体50と、弾性変形部60とを一体に備えている。スペーサ本体50は、絶縁性の合成樹脂等で構成されている。この合成樹脂は、少なくとも弾性変形部60を構成する材料よりも硬質とされ、弾性変形部60を構成する材料よりも大きな弾性力を生じることがない。弾性変形部60は、弾性力を生じるゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料で構成されている。このようなスペーサ5は、例えば、二色成形によってスペーサ本体50と弾性変形部60とが一体成形される。また、一方を予め成形しておき、インサート成形によってこれらが一体成形されていてもよい。
【0027】
スペーサ本体50は、図2等に示すように、基壁51と、基壁51の幅方向両端から立設した一対の側壁52と、仮係止アーム53と、本係止アーム54とを備えている。基壁51は、矩形平板状に形成されている。基壁51には、端子通し孔51aと、治具通し孔51bとが設けられている。
【0028】
端子通し孔51aは、基壁51の中央を貫通して1つ設けられている。端子通し孔51aは、スペーサ5がコネクタハウジング4に取り付けられると、ハウジング本体40のそれぞれの端子収容室41の他方の開口と連通して、内部に相手方のコネクタの雄型の端子金具を通す。
【0029】
治具通し孔51bは、基壁51を貫通して複数設けられている。複数の治具通し孔51bは、基壁51の幅方向両端に設けられるとともに、基壁51の長手方向に沿って並んでいる。治具通し孔51bは、それぞれの端子収容室41の係止ランス42に対応する位置に設けられ、内部に治具等を通す。
【0030】
一対の側壁52は、矩形平板状に形成され、互いに間隔をあけて互いに平行に設けられている。一対の側壁52には、それぞれ、リブ52aが設けられている。
【0031】
リブ52aは、図3に示すように、側壁52の先端側に設けられ、一対の側壁52の互いに相対する内面から突出している。リブ52aは、側壁52の幅方向(矢印L、L1、L2)に沿って設けられ、複数設けられている。複数のリブ52aは、互いに間隔をあけて互いに平行に設けられている。複数のリブ52aは、それぞれの端子収容室41の係止ランス42に対応する位置に設けられている。リブ52aは、スペーサ5が本係止位置に位置付けられると、端子収容室41の内面と係止ランス42との間に挿入されて、係止ランス42が弾性変形することを防止する。
【0032】
仮係止アーム53は、図3に示すように、一方の側壁52の長手方向一端と、他方の側壁52の(一方の側壁52の長手方向一端から離れた)長手方向一端に設けられている。仮係止アーム53は、アーム本体53aと、仮係止突起53bとを備えている。アーム本体53aは、側壁52の幅方向に沿って延びている。アーム本体53aは、両持ちアーム状に形成され、側壁52に近づく方向に弾性変形自在である。仮係止突起53bは、アーム本体53aの外表面に設けられ、側壁52から離れる方向に突出している。
【0033】
前述した仮係止アーム53は、アーム本体53aが弾性変形して仮係止突起53bがコネクタハウジング4のスライド溝内の仮係止部に係止して、スペーサ5を仮係止位置に位置付ける。仮係止アーム53は、仮係止位置に位置付けられたスペーサ5が矢印L1に沿って移動する(コネクタハウジング4から抜け落ちる)ことを防止する。
【0034】
本係止アーム54は、図3に示すように、一方の側壁52の長手方向他端と、他方の側壁52の(一方の側壁52の長手方向他端から離れた)長手方向他端に設けられている。本係止アーム54は、アーム本体54aと、本係止突起54bとを備えている。アーム本体54aは、側壁52の幅方向に沿って延びている。アーム本体54aは、両持ちアーム状に形成され、側壁52に近づく方向に弾性変形自在である。本係止突起54bは、アーム本体54aの外表面に設けられ、側壁52から離れる方向に突出している。
【0035】
前述した本係止アーム54は、本係止突起54bがコネクタハウジング4のスライド溝内の本係止部に係止して、仮係止位置に位置付けられたスペーサ5が矢印L2に沿って移動することを防止する。また、本係止アーム54は、アーム本体54aが弾性変形して本係止突起54bがスライド溝内の本係止部に係止して、スペーサ本体50をコネクタハウジング4に取り付けて、スペーサ5を本係止位置に位置付ける。本係止アーム54は、本係止位置に位置付けられたスペーサ5が矢印L1に沿って移動することを防止する。
【0036】
弾性変形部60は、図3に示すように、スペーサ本体50のそれぞれの側壁52の基端側に設けられ、一対の側壁52の互いに相対する内面(スペーサ本体50の端子金具3と相対する外表面)から突出している。弾性変形部60は、側壁52の幅方向に沿って延びたリブ状に形成されて、複数設けられている。複数の弾性変形部60は、互いに間隔をあけて互いに平行に設けられている。複数の弾性変形部60は、それぞれの端子収容室41内に収容される端子金具3に対応する位置に設けられている。弾性変形部60と前述したリブ52aとは、側壁52の幅方向に沿って並んでいる。
【0037】
この弾性変形部60の側壁52から離れた外表面、即ち端子金具3と相対する外表面は、図4に示すように、押圧面61Aとされている。押圧面61Aは、側壁52の内面と平行であり、平坦に形成されている。押圧面61Aの矢印L2の前方側端部には、テーパ面62が連なっている。テーパ面62は、矢印L2前方側にいくにしたがって徐々に側壁52の内面に近づくように傾斜している。
【0038】
さらに、押圧面61Aと側壁52の内面との間隔H1(図4、即ち、弾性変形部60の側壁52の内面からの突出量)は、端子金具3の電気接触部32と端子収容室41の内面との間隔H0(図1)よりも大きい。これによって、スペーサ5がコネクタハウジング4に取り付けられると、後述するように、弾性変形部60は端子金具3と当接して弾性変形し、その後、弾性復元力によって端子金具3を押圧することが可能となる。
【0039】
前述した弾性変形部60は、スペーサ本体50がコネクタハウジング4に取り付けられてスペーサ5が本係止位置に位置付けられると、図1に示すように、端子収容室41の内面と端子金具3の電気接触部32との間に挿入される。そして、弾性変形部60は、端子金具3の電気接触部32の外表面と当接して弾性変形した後に、弾性復元力によって押圧面61Aが端子金具3の電気接触部32を矢印Pに沿って押圧する。矢印Pは、矢印L1(L、L2)に直交(交差)する方向であり、端子金具3の挿入方向に直交(交差)する方向である。そして、弾性変形部60は、端子金具3が端子収容室41内でがたつくのを防止する。
【0040】
前述したコネクタ1を組み立てる際には、まず、スペーサ本体50即ちスペーサ5を、矢印L2に沿ってコネクタハウジング4の端子収容室41内に挿入していく。すると、スペーサ5の仮係止アーム53の仮係止突起53bがスライド溝内に通された後、本係止アーム54の本係止突起54bがスライド溝内に通される。
【0041】
さらにスペーサ5を端子収容室41内に挿入していくと、仮係止アーム53の仮係止突起53bがスライド溝内の仮係止突部と当接してアーム本体53aが弾性変形した後に、仮係止突起53bが仮係止突部を乗り越えて、スペーサ5が仮係止位置に係止される。
【0042】
そして、スペーサ5が仮係止位置に位置付けられたコネクタハウジング4の端子収容室41内に、矢印L1に沿って端子金具3を挿入する。端子金具3は係止ランス42によって端子収容室41内に係止される。
【0043】
その後、さらにスペーサ5を端子収容室41内に挿入していくと、本係止アーム54の本係止突起54bがスライド溝内の本係止突部と当接してアーム本体54aが弾性変形した後に、本係止突起54bが本係止突部を乗り越えて、スペーサ5が本係止位置に係止されてコネクタハウジング4に取り付けられる。
【0044】
このとき、スペーサ5の側壁52の基端側に設けられた弾性変形部60は、端子収容室41の内面と端子金具3の電気接触部32との間に挿入されていく。そして、弾性変形部60は、端子金具3の電気接触部32の外表面と当接して弾性変形した後に、弾性復元力によって押圧面61Aが端子金具3の電気接触部32を矢印Pに沿って押圧する。このように、弾性変形部60は、端子金具3が端子収容室41内でがたつくのを防止する。
【0045】
また、このとき、スペーサ5の側壁52の先端側に設けられたリブ52aは、端子収容室41の内面と係止ランス42との間に挿入されて、係止ランス42が弾性変形することを防止する。このように、スペーサ5は、コネクタハウジング4に取り付けられて、端子金具3が端子収容室41内から抜け出ることを防止する。
【0046】
本実施形態によれば、スペーサ本体50や弾性変形部60の成形時の寸法誤差によらず、弾性変形部60が矢印Pに沿って端子金具3を押圧する。したがって、矢印Pに沿った端子金具3のがたつきを確実に防止できる。これによって、端子金具3の接続信頼性が向上し、異音が発生することがない。
【0047】
スペーサ5をコネクタハウジング4に取り付けることによって、弾性変形部60が端子金具3を押圧する。したがって、弾性変形部60を設けることによって取付作業性が低下することがない。
【0048】
前述した実施形態においては、矢印L2(スペーサ5の取付方向)が、矢印L1(端子金具3の挿入方向)と平行であった。しかしながら本発明では、矢印L2が矢印L1と直交(交差)するように、コネクタハウジング4及びスペーサ5を設計してもよい。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態にかかるコネクタ1を、図5及び図6を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本発明の第2の実施形態にかかるコネクタ1は、スペーサ5の弾性変形部60の押圧面61Bの形状のみが第1の実施形態のコネクタ1と異なる。押圧面61Bには、図5及び図6に示すように、一対の突部63a、63bが突出している。押圧面61Bは、一対の突部63a、63bによって波形状に形成されている。
【0051】
一対の突部63a、63bは、矢印L2(L、L1)に沿って並んでいる。一対の突部63a、63bは、図6に示すように、スペーサ本体50の側壁52の内面からの突出量が互いに等しい。突部63a、63bの先端と側壁52の内面との間隔H2(即ち、弾性変形部60の側壁52の内面からの突出量)は、端子金具3の電気接触部32と端子収容室41の内面との間隔H0(図1)よりも大きい。
【0052】
また、一対の突部63a、63bの間や、一対の突部63a、63bのうち矢印L2後方側の一方の突部63aとスペーサ本体50の側壁52との間には、凹部64が形成される。この凹部64が、弾性変形部60が弾性変形する際に突部63a、63bの逃げ部となる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、突部63a、63bが凹部64内に入り込むようにして弾性変形部60が弾性変形するので、押圧面61Bと端子金具3との摩擦力を小さくすることができる。したがって、前述した第1の実施形態の効果に加え、弾性変形部60を設けても、スペーサ5が仮係止位置に位置付けられたコネクタ1の端子収容室41内に端子金具3を挿入する際の挿入力や、仮係止位置のスペーサ5を本係止位置に挿入する際の挿入力の上昇を抑えることができる。
【0054】
前述した実施形態においては、押圧面61Bには一対の突部63a、63bが設けられていた。しかしながら本発明では、突部が1つまたは3つ以上であってもよい。
【0055】
次に、本発明の第3の実施形態にかかるコネクタ1を、図7ないし図9を参照して説明する。なお、前述した第1及び第2の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
本発明の第3の実施形態にかかるコネクタ1は、スペーサ5の弾性変形部60の押圧面61Cの形状のみが第1及び第2の実施形態のコネクタ1と異なる。押圧面61Cには、図7及び図8に示すように、一対の突部63c、63dが突出している。押圧面61Cは、一対の突部63c、63dによって波形状に形成されている。
【0057】
一対の突部63c、63dは、矢印L2(L、L1)に沿って並んでいる。一対の突部63c、63dのうち矢印L2後方側の一方の突部63cは、押圧面61Cの、スペーサ5が本係止位置に位置付けられたときに端子金具3の先端(端子金具3の電気接触部32の電線接続部31から離れた端部)と相対する部分から突出している。また、他方の突部63dは、押圧面61C、スペーサ5が本係止位置に位置付けられたときに端子金具3の先端以外(端子金具3の電気接触部32の長手方向中央周辺)と相対する部分から突出している。
【0058】
さらに、一方の突部63cは、図8に示すように、他方の突部63dよりも側壁52の内面からの突出量が大きい。また、他方の突部63dの先端と、側壁52の内面との間隔H3(即ち、弾性変形部60の側壁52の内面からの突出量)は、端子金具3の電気接触部32と端子収容室41の内面との間隔H0(図1)よりも大きい。
【0059】
スペーサ5が本係止位置に位置付けられると、一方の突部63cは、端子金具3の先端と相対する。端子金具3の先端には、図9に示すように、僅かに先細になるように傾斜した傾斜部33が設けられている。このため、一方の突部63cは、傾斜部33とスペーサ5の基壁51の内面との隙間に入り込んで、傾斜部33を矢印L2に沿って押圧する。また、このとき、他方の突部63dは、端子金具3の先端以外(端子金具3の電気接触部32の長手方向中央周辺)と相対して、電気接触部32を矢印Pに沿って押圧する。
【0060】
このように、本実施形態によれば、突部63cが、矢印L2に沿って端子金具3を押圧する。したがって、前述した第1及び第2の実施形態の効果に加え、矢印L2(L、L1)に沿った端子金具3のがたつきを確実に防止できる。
【0061】
前述した実施形態においては、押圧面61Cには一対の突部63c、63dが設けられていた。しかしながら本発明では、突部が3つ以上であってもよい。この場合、端子金具3の先端と相対する突部の突出量を、他の突部の突出量よりも大きくする。
【0062】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるコネクタを示す断面図である。
【図2】図1に示されたスペーサの斜視図である。
【図3】図2に示されたスペーサの別方向からの斜視図である。
【図4】図2に示されたスペーサの側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかるコネクタのスペーサを示す斜視図である。
【図6】図5に示されたスペーサの側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるコネクタのスペーサを示す斜視図である。
【図8】図7に示されたスペーサの側面図である。
【図9】図7に示されたスペーサがコネクタハウジングに取り付けられたときの要部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 コネクタ
3 端子金具
4 コネクタハウジング
5 スペーサ
41 端子収容室
50 スペーサ本体
60 弾性変形部
63a、63b、63c、63d 突部
L1 端子金具の挿入方向
L2 スペーサの取付方向(端子金具の挿入方向の反対方向)
P 端子金具の挿入方向に直交(交差)する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに取り付けられて、前記端子金具が前記コネクタハウジング内から抜け出ることを防止するスペーサと、を備えたコネクタにおいて、
前記スペーサが、
前記コネクタハウジングに取り付けられるスペーサ本体と、
弾性材料で構成され、かつ、前記スペーサ本体の前記端子金具と相対する外表面に設けられて、前記スペーサ本体が前記コネクタハウジングに取り付けられると前記端子金具と当接して弾性変形した後に弾性復元力によって前記端子金具を該端子金具の挿入方向に交差する方向に沿って押圧する弾性変形部と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記スペーサ本体が合成樹脂で構成され、
前記スペーサ本体と前記弾性変形部とが一体成形されたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性変形部の前記端子金具と相対する外表面に、突部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記突部が複数設けられ、
複数の前記突部のうちの前記弾性変形部の前記端子金具の先端と相対する外表面に設けられた突部が、前記弾性変形部の前記端子金具の先端以外と相対する外表面に設けられた突部よりも突出して設けられ、かつ、前記端子金具の先端を該端子金具の挿入方向の反対方向に沿って押圧することを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−62053(P2010−62053A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227964(P2008−227964)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】