説明

コネクタ

【課題】ハウジングの後端面における操作面の面積を大きく確保する。
【解決手段】ハウジング10の後端面10Rのうち電線13の導出領域よりも外縁側の領域が、ハウジング10を前方へ押し操作するための操作面14となっている。ハウジング10の後端部外周には、操作面14と対応し且つ操作面14よりも前方の領域を凹ませた形態の外向き溝15(係止凹部)が形成され、ハウジング10には、外向き溝15の溝底面17(奥面)の一部を更に凹ませた形態の肉抜き部18が形成され、電線カバー20の内面には、外向き溝15と嵌合可能な内向き突部26(係止凸部)が形成され、内向き突部26には、肉抜き部18と係止可能な規制突起27とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子収容室が形成されたハウジングと、ハウジングの後端部に外嵌されてハウジングから後方へ導出された複数本の電線を包囲する電線カバーとを備えたコネクタが開示されている。このコネクタには、ハウジングと電線カバーとを組付け状態に保持するための係止手段として、ハウジングの左右両外側面に、左右一対の係止突部を形成するとともに、電線カバーの左右両側壁部に、係止突部を嵌合させるための左右一対の係止孔が形成されている。ハウジングに電線カバーを組み付けると、係止突部と係止孔との係止により、ハウジングと電線カバーが、前後方向及び上下方向への相対変位を規制される。また、係止突部の後面は、ハウジングの後端面(電線が導出される面)に対して面一状に連なっており、このハウジングの後端面と係止突部の後面は、ハウジングを相手側コネクタと嵌合する際に指を宛てて押し操作するための操作面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−127813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタでは、係止突部が係止孔の内部に嵌入されるようになっているため、係止突部の上下方向(係止突部の突出方向と交差する方向)の寸法を、十分大きく確保することができない。その分、係止突部の後面の面積が小さくなるので、操作面全体の面積も小さくなるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングの後端面における操作面の面積を大きく確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、内部に端子収容室が形成され、後端面から複数本の電線を導出させたハウジングと、前記ハウジングの後端部外周に外嵌され、前記複数本の電線を包囲する電線カバーとを備え、前記ハウジングの前記後端面のうち前記複数本の電線の導出領域よりも外縁側の領域が、前記ハウジングを前方へ押し操作するための操作面となっているコネクタにおいて、前記ハウジングの後端部外周には、前記操作面と対応し且つ前記操作面よりも前方の領域を凹ませた形態の係止凹部が形成され、前記ハウジングには、前記係止凹部の奥面の一部を更に凹ませた形態の肉抜き部が形成され、前記電線カバーの内面には、前記係止凹部との嵌合により前記電線カバーの前記ハウジングに対する前後方向への相対変位を規制する係止凸部が形成され、前記係止凸部には、前記肉抜き部に係止することで、前記電線カバーが前記ハウジングに対して前記操作面と平行な方向へ相対変位するのを規制する規制突起が形成されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記電線カバーは、前記ハウジングに対して前記操作面と平行な方向に組み付けられるようになっており、前記係止凹部は、前記電線カバーの組付け方向と平行な溝状をなし、且つ前記組付け方向における両端部が前記ハウジングの外周面に開放されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
ハウジングに組み付けられた電線カバーは、係止凹部内と係止凸部との嵌合によりハウジングに対して前後方向への相対変位を規制されるとともに、規制突起と肉抜き部との係止によりハウジングに対して操作面と平行な方向へ相対変位することを規制される。本発明によれば、ハウジングにおける電線カバーとの係止手段である係止凹部を、ハウジングの外周面における操作面よりも前方の領域に配置したので、係止凹部を形成することに起因して操作面の面積が減少することはない。
【0008】
<請求項2の発明>
係止凹部はハウジングに対する電線カバーの組付け方向と平行をなすので、電線カバーを組み付ける際のガイド機能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1においてハウジングに電線カバーを組み付けた状態をあらわす斜視図
【図2】ハウジングに電線カバーを組み付けた状態をあらわす平面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】ハウジングの背面図
【図5】ハウジングの側面図
【図6】図4のB−B線断面図
【図7】電線カバーのハウジングに組み付ける前の状態をあらわす正面図
【図8】電線カバーのハウジングに組み付ける前の状態をあらわす底面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図8を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、図1,2に示すように、合成樹脂製のハウジング10と、ハウジング10の後端部に組み付けられる電線カバー20とを備えて構成されている。このコネクタは、ハウジング10の後端面10Rの操作面14の面積を大きく確保するようにしたものである。
【0011】
図3,4,6に示すように、ハウジング10の内部には、前後方向(図6における左右方向)に貫通する複数の端子収容室11が、図3,4における左右方向(図6における上下方向)に並列して形成されている。図6に示すように、各端子収容室11内には、夫々、ハウジング10の後方(図6における右方)から端子金具12が挿入されている。各端子金具12の後端部には電線13が接続されており、複数の端子金具12を端子収容室11に挿入した状態では、複数本の電線13がハウジング10の後端面10Rから左右方向に拡がった状態で後方へ導出されている。図1,2に示すように、ハウジング10から導出された複数本の電線13は、電線カバー20内を貫通するようになっている。
【0012】
図2,4〜6に示すように、ハウジング10の後端面10R(即ち、複数本の電線13が導出される面)のうち電線13の導出領域よりも外縁側の領域(即ち、左右両端部の領域)は、左右対称な一対の操作面14となっている。この操作面14は、ハウジング10を相手側コネクタ(図示省略)に嵌合する際に、作業者が指を当ててハウジング10を前方(相手側コネクタに向かって)押し操作するための面である。
【0013】
図2,4〜6に示すように、ハウジング10の後端部(図5における右側の端部)には、その左右両外側面を凹ませた形態であって、左右対称な一対の外向き溝15(本発明の構成要件である係止凹部)が形成されている。外向き溝15は、ハウジング10に対する上カバー21の組付け方向と平行に上下方向に延びており、図4,5に示すように、外向き溝15の上下方向(上カバー21の組付け方向)における両端部15Eはハウジング10の外周面(上面と下面)に開放されている。図2,5,6に示すように、外向き溝15は、前後方向においてハウジング10の操作面14(後端面10R)よりも前方の領域に配置されている。ハウジング10の後端外周部のうち操作面14と外向き溝15との間の部分は、上下方向に延びるとともに外側方へリブ状に突出した形態の左右対称な一対の外向き突部16となっている。外向き突部16の前面と後面(即ち、操作面14)は互いに平行な平坦面である。
【0014】
図3,4,6に示すように、ハウジング10の後端部には、左右両外向き溝15の溝底面17(本発明の構成要件である係止凹部の奥面)を、更に奥方へ凹ませた形態の肉抜き部18が形成されている。肉抜き部18は、左右方向(即ち、上カバー21の組付け方向と直交する方向であり、且つ操作面14と平行な方向である)に型開きされる金型(図示省略)によって形成されている。溝底面17における肉抜き部18の開口縁は、エッジ状(略直角な段差状)をなしている。各外向き溝15には、肉抜き部18が上下に並んで一対ずつ形成されている。
【0015】
図1,3,7,8に示すように、電線カバー20は、合成樹脂製の上カバー21と合成樹脂製の下カバー22とを上下に嵌合して合体させて構成されている。上カバー21と下カバー22を合体した状態では、図1,2に示すように、電線カバー20は左方へ屈曲した筒状をし、電線カバー20の前端部がハウジング10の後端部に外嵌するようにして組み付けられる。電線カバー20を組み付けた状態では、ハウジング10から後方へ導出された電線13が、電線カバー20の内部で左方(ハウジング10の後端面10Rと略平行な方向)へ曲げられて電線カバー20外へ導出される。
【0016】
図1,3,7,8に示すように、上カバー21は、上壁部23と、上壁部23の前端部における左右両側縁から下方へ延出した左右一対の側壁部24とを備えている。図2,8に示すように、左右両側壁部24の前端部には、その内面を凹ませた形態の左右対称な一対の内向き溝25が形成されている。この内向き溝25は、側壁部24の下端面から上方(ハウジング10に対する上カバー21の組付け方向と平行な方向)へ延びている。そして、上カバー21の左右両側壁部24の前端部のうち上カバー21の前端面と内向き溝25の前面との間の部分は、上下方向に延びるとともに内側方へリブ状に突出した形態の左右対称な一対の内向き突部26(本発明の構成要件である係止凸部)となっている。
【0017】
図3,7,8に示すように、左右両内向き突部26の突出端面には、夫々、上下一対ずつの規制突起27が形成されている。規制突起27の上面は、上カバー21の組付け方向に対して略直角な規制面28となっている。また、規制突起27における外向き溝15の溝底面17との対向面のうち、規制面28よりも下方の領域には、上カバー21の組付け方向に対して斜めをなす誘導斜面29が形成されている。
【0018】
図3に示すように、下カバー22は、上カバー21の上壁部23の少なくとも前端側部分と対応する下壁部30を有している。図1,2,7,8に示すように、下壁部30には、その外周縁から上方へ延出した形態の複数の弾性係止片31が形成されている。これらの弾性係止片31は、上カバー21と下カバー22を合体したときに、上カバー21のロック突起32と係止することにより、両カバーを合体状態にロックする。図2,7,8に示すように、この下カバー22は、下壁部30の前端部における右側縁部において、上カバー21の前端部における右側縁部とヒンジ部33を介して連なっている。
【0019】
次に、本実施形態の作用を説明する。ハウジング10に電線カバー20を取り付ける際には、まず、上カバー21をハウジング10に対して上から組み付ける。このとき、上カバー21の内向き突部26をハウジング10の外向き溝15に嵌合するとともに、上カバー21の内向き溝25にハウジング10の外向き突部16を嵌合させる。組付けの過程では、溝15,25と突部16,26の嵌合により、上カバー21が、ハウジング10に対して前後方向への相対変位を規制された状態で案内されて、円滑に組付けが進む。また、規制突起27が外向き溝15の溝底面17に摺接することにより、上カバー21の左右両側壁部24が一時的に左右方向へ僅かに拡開するように弾性撓みする。
【0020】
そして、上カバー21がハウジング10に対して正規の組付位置に到達すると、図3に示すように、上壁部23がハウジング10の上面に当接することにより、上カバー21のそれ以上の組付け動作(下方への移動)が規制される。また、正規の組付位置に到達すると、左右両側壁部24が弾性復帰するのに伴い、規制突起27が肉抜き部18内に進入して、規制面28が肉抜き部18の上側の開口縁に係止する。この係止作用により、上カバー21はハウジング10に対して上方(ハウジング10から離脱する方向)への移動を規制される。以上により、上カバー21が、ハウジング10に対して、前後方向、左右方向及び上下方向への相対変位を規制された状態にロックされる。
【0021】
この後、ヒンジ部33を折り返すように変形させながら、そのヒンジ部33を支点として下カバー22を上カバー21に合体させる。下カバー22が正規の合体位置に到達すると、弾性係止片31がロック突起32に係止することにより、下カバー22が、上カバー21に対して合体状態にロックされ、電線カバー20が構成される。また、上下両カバー21,22が合体させるのと同時に、ハウジング10に対する電線カバー20の組付け工程が完了する。
【0022】
本実施形態のコネクタは、ハウジング10の後端面10Rのうち複数本の電線13の導出領域よりも外縁側の領域が、ハウジング10を前方へ押し操作するための操作面14となっているものであって、操作面14の面積を大きく確保することを課題としている。そして、この課題解決の手段として、ハウジング10の後端部外周に、操作面14と対応し且つ操作面14よりも前方の領域を凹ませた形態の外向き溝15を形成し、ハウジング10に、外向き溝15の溝底面17の一部を更に凹ませた形態の肉抜き部18を形成し、電線カバー20を構成する上カバー21の左右両側壁部24には、その内面から突出した形態であって、外向き溝15との嵌合により上カバー21のハウジング10に対する前後方向への相対変位を規制する内向き突部26を形成し、この内向き突部26には、肉抜き部18に係止することで、上カバー21がハウジング10に対して操作面14と平行な上下方向(ハウジング10に対する上カバー21の組付け方向と平行な方向)へ相対変位するのを規制する規制突起27を形成した。
【0023】
この構成によれば、ハウジング10に組み付けられた上カバー21は、外向き溝15と内向き突部26との嵌合によりハウジング10に対して前後方向への相対変位を規制されるとともに、規制突起27と肉抜き部18との係止によりハウジング10に対して操作面14と平行な上方向へ相対変位することを規制される。このように本実施形態によれば、ハウジング10における上カバー21(電線カバー20)との係止手段である外向き溝15を、ハウジング10の外周面における操作面14よりも前方の領域に配置したので、外向き溝15を形成することに起因して操作面14の面積が減少することはない。
【0024】
また、上カバー21は、ハウジング10に対して操作面14と平行な上下方向に組み付けられるようになっており、外向き溝15は、上カバー21の組付け方向と平行な溝状をなし、且つ組付け方向における両端部15Eがハウジング10の外周面に開放されている。このように、外向き溝15を、上カバー21の組付け方向と平行にハウジング10を貫き通す形態としたので、電線カバー20を組み付ける際には、外向き溝15にガイド機能を発揮させることができた。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、係止凹部が、電線カバーをハウジングに組み付けるときのガイド機能を発揮するようにしたが、係止凹部は、このようなガイド機能を有しないものであってもよい。
(2)上記実施形態では、係止凹部が溝状をなしていて、その電線カバーの組付け方向における両端部がハウジングの外周面に開放される形態としたが、係止凹部の組付け方向における両端部が、ハウジングの外周面に開放されない形態としてもよい。
(3)上記実施形態では、1つの係止凹部に肉抜き部を2箇所設けたが、1つの係止凹部に形成する肉抜き部の数は、1つだけでもよく、3つ以上であってもよい。
(4)上記実施形態では、係止凸部(外向き突部)を上カバーのみに形成したが、係止凸部は上カバーと下カバーの両方に形成してもよい。
(5)上記実施形態では、係止凹部と係止凸部を一対ずつ設けたが、係止凹部と係止凸部の数は、1つずつでもよく、3つ以上ずつでもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…ハウジング
10R…ハウジングの後端面
11…端子収容室
13…電線
14…操作面
15…外向き溝(係止凹部)
15E…外向き溝(係止凹部)の組付け方向における両端部
17…溝底面(係止凹部の奥面)
18…肉抜き部
20…電線カバー
26…内向き突部(係止凸部)
27…規制突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に端子収容室が形成され、後端面から複数本の電線を導出させたハウジングと、
前記ハウジングの後端部外周に外嵌され、前記複数本の電線を包囲する電線カバーとを備え、
前記ハウジングの前記後端面のうち前記複数本の電線の導出領域よりも外縁側の領域が、前記ハウジングを前方へ押し操作するための操作面となっているコネクタにおいて、
前記ハウジングの後端部外周には、前記操作面と対応し且つ前記操作面よりも前方の領域を凹ませた形態の係止凹部が形成され、
前記ハウジングには、前記係止凹部の奥面の一部を更に凹ませた形態の肉抜き部が形成され、
前記電線カバーの内面には、前記係止凹部との嵌合により前記電線カバーの前記ハウジングに対する前後方向への相対変位を規制する係止凸部が形成され、
前記係止凸部には、前記肉抜き部に係止することで、前記電線カバーが前記ハウジングに対して前記操作面と平行な方向へ相対変位するのを規制する規制突起が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記電線カバーは、前記ハウジングに対して前記操作面と平行な方向に組み付けられるようになっており、
前記係止凹部は、前記電線カバーの組付け方向と平行な溝状をなし、且つ前記組付け方向における両端部が前記ハウジングの外周面に開放されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−186003(P2012−186003A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48050(P2011−48050)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】