説明

コネクタ

【課題】 複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供する。
【解決手段】 ハウジングは、リテーナの進入方向に沿って並設された第1の突部及び第2の突部を有し、
リテーナは、互いに向かい合って形成されかつ略同じ太さを有する第1の脚部及び第2の脚部と、第1の脚部の端部に形成された第1の傾斜部であって、進入方向に対して第1の角度をなしかつ進入の過程で第1突部と係合可能な第1の傾斜部と、第2の脚部の端部に形成された第2の傾斜部であって、進入方向に対して第1の角度とは異なる第2の角度をなしかつ進入の過程で第2突部と係合可能な第2の傾斜部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電線同士を接続するコネクタに関する。特に、リテーナをハウジングに取り付けるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングに取り付けられた端子部材をリテーナによって係止するコネクタがあった。このリテーナに形成された凸部が端子部材の凹部に挿嵌されることで、端子部材をハウジングに係止させて、端子部材の電気的な接続を確実にするものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
リテーナをハウジングに取り付ける過程では、仮係止と最終係止との2つの係止状態がある。一般に、リテーナをハウジングにある程度押し込んで仮係止の状態にし、仮係止の状態でユーザに納品する場合がある。ユーザは、仮係止の状態で端子部材をハウジングに取り付け、その後、リテーナをさらに押し込んで、最終係止の状態にして端子部材の取り付けを完了する。仮係止の状態でユーザに納品する場合には、振動や衝撃などでリテーナがハウジングから外れないようにする必要がある。
【0004】
このため、太さが細い第1の脚部と、第1の脚部よりも太さが太い第2の脚部とを有するように構成し、第1の脚部の太さと第2の脚部の太さとの相違によって、仮係止に要する力と最終係止に要する力とを異ならしめたり、ハウジングから外れないようにしたりしていたリテーナがあった(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
仮係止の状態を経て最終係止の状態に至らせる場合には、仮係止の状態をより確実かつ容易に実現するために、仮係止に要する力を最終係止に要する力よりも小さくできることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266497号公報
【特許文献2】特許第3365315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ユーザの都合によって、リテーナを最終係止させた後に取り外し、別の端子部材を取り付け直して、リテーナを最終係止させる場合もある。このような要請に応えるべく、リテーナが複数回の着脱に耐えるようにする必要もある。しかしながら、上述した従来のリテーナは、異なる太さの脚部を有するものであったため、着脱に要する力が偏ってしまい、脚部が破損する可能性が高かった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る特徴は、
端子部材が取り付けられるハウジングと前記ハウジングに着脱可能に挿入されて前記端子部材を係止するリテーナとを有するコネクタであって、
前記ハウジングは、所定の方向に向かって突出する第1の突部と、前記第1の突部とは異なる方向に突出する第2の突部とを有し、
前記リテーナは、互いに向かい合って形成された第1の脚部及び第2の脚部を有し、
前記第1の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能であり、
前記第2の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能であることである。
【0010】
リテーナは、互いに向かい合って形成された第1の脚部及び第2の脚部を有し、リテーナの進入の過程において、第1の脚部は第1の突部と係合でき、第2の脚部は第2の突部と係合できるので、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の脚部及び第2の脚部に分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【発明の効果】
【0011】
複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】オスハウジング100の挿入孔(図示せず)に、メスハウジング200の端部が挿入された状態を示す斜視図である。
【図1B】オスハウジング100とメスハウジング200とを別個に示す斜視図である。
【図2A】オスハウジング100とオスリテーナ300とを示す斜視図である。
【図2B】メスハウジング200とメスリテーナ400とを示す斜視図である。
【図3A】オスハウジング100を示す平面図である。
【図3B】メスハウジング200を示す平面図である。
【図4A】オスリテーナ300を示す側面図である。
【図4B】メスリテーナ400を示す側面図である。
【図5】カム形成突条114aを示す側面図である。
【図6】オスリテーナ300がオスハウジング100に進入する過程を示す断面図である。
【図7】メスリテーナ400がメスハウジング200に進入する過程を示す断面図(a)及び(b)と、カム形成突条214aを島状に形成する金型の例を示す斜視図(c)とである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0014】
<<<コネクタの構成>>>
図1A及び図1Bは、本発明の実施例のコネクタであるオスハウジング100及びメスハウジング200を示す図である。図1Aは、オスハウジング100の挿入孔(図示せず)に、メスハウジング200の端部が挿入された状態を示す斜視図である。図1Bは、オスハウジング100とメスハウジング200とを別個に示す斜視図である。
【0015】
本発明の実施例のコネクタは、オスハウジング100及びメスハウジング200によって構成される。図1Aに示すように、オスハウジング100がメスハウジング200の挿入孔(図示せず)に挿入されたときには、オスハウジング100に取り付けられた端子部材500(図示せず)と、メスハウジング200に取り付けられた端子部材500とが互いに接触して、端子部材500同士の電気的接続が形成される。端子部材500の構成については後述する。
【0016】
<<オスハウジング100及びメスハウジング200の構成>>
オスハウジング100及びメスハウジング200の構成について説明する。
【0017】
<貫通孔102a〜102e、104a〜104e、202a〜202e、204a〜204e>
【0018】
図1A及び図1Bに示すように、オスハウジング100には、上段に5つの貫通孔102a〜102eが略平行に並ぶように形成され、下段に5つの貫通孔104a〜104eが形成されている。同様に、メスハウジング200には、上段に5つの貫通孔202a〜202eが略平行に並ぶように形成され、下段に5つの貫通孔204a〜204eが略平行に並ぶように形成されている。貫通孔102a〜102e、104a〜104e、202a〜202e、204a〜204eの各々には、端子部材500を挿入することができ、オスハウジング100とメスハウジング200との双方に、合計で10個の端子部材500を取り付けることができる。
【0019】
オスハウジング100の貫通孔102aがメスハウジング200の貫通孔202aに対応するように、オスハウジング100の貫通孔102bがメスハウジング200の貫通孔202bに対応するように、オスハウジング100の貫通孔102cがメスハウジング200の貫通孔202cに対応するように、オスハウジング100の貫通孔102dがメスハウジング200の貫通孔202dに対応するように、オスハウジング100の貫通孔102eがメスハウジング200の貫通孔202eに対応するように形成されている。
【0020】
オスハウジング100の貫通孔104aがメスハウジング200の貫通孔204aに対応するように、オスハウジング100の貫通孔104bがメスハウジング200の貫通孔204bに対応するように、オスハウジング100の貫通孔104cがメスハウジング200の貫通孔204cに対応するように、オスハウジング100の貫通孔104dがメスハウジング200の貫通孔204dに対応するように、オスハウジング100の貫通孔104eがメスハウジング200の貫通孔204eに対応するように形成されている。
【0021】
<リテーナ挿入孔106、206>
図2Aは、オスハウジング100とオスリテーナ300と示す斜視図である。図2Bは、メスハウジング200とメスリテーナ400と示す斜視図である。
【0022】
オスハウジング100には、オスリテーナ300を挿入するためのリテーナ挿入孔106が形成されている。メスハウジング200には、メスリテーナ400を挿入するためのリテーナ挿入孔206が形成されている。リテーナ挿入孔106は、おおよその外形が四角形の挿入開口108を有する。また、リテーナ挿入孔206は、おおよその外形が四角形の挿入開口208を有する。
【0023】
リテーナ挿入孔106は、オスハウジング100の貫通孔102a〜102e及び104a〜104eの長手方向に対して垂直方向に形成されている。図2Aに示すように、リテーナ挿入孔106は、貫通孔102a〜102e及び104a〜104eの長手方向に対して垂直方向に分断するように形成されている。リテーナ挿入孔206は、メスハウジング200の貫通孔202a〜202e及び204a〜204eの長手方向に対して垂直方向に形成されている。図2Bに示すように、リテーナ挿入孔206は、貫通孔202a〜202e及び204a〜204eの長手方向に対して垂直方向に分断するように形成されている。
【0024】
<カム130a、140a、150a及びカム130b、140b、150bの構成>
図2A及び図3Aに示すように、リテーナ挿入孔106は、互いに向かい会う2つの側壁110a及び110bと、底面112とを有する。側壁110aには、側壁110aに沿ってカム形成突条114aが形成されている。カム形成突条114aは、底面112から挿入開口108に向かって形成されている。カム形成突条114aによって、オスリテーナ300の進入方向に沿った経路になすことができる。図5及び図6(a)〜(f)に示すように、カム形成突条114aは、底面112に対して略垂直にかつ底面112と連結するように形成されている。カム形成突条114aは、底面112から挿入開口108に向かって長尺な形状を有する。カム形成突条114aは、挿入開口108に向かう先端部116aを有する。先端部116aは、底面112と挿入開口108との間に位置する。たとえば、先端部116aは、底面112と挿入開口108との略中央に位置する。
【0025】
図5及び図6(a)〜(f)に示すように、カム形成突条114aは、長尺な形状を有し、長手方向に沿った第1の面118a及び第2の面120aを有する。第1の面118a及び第2の面120aは、底面112から先端部116aに向かってかつ互いに略平行に形成されている。
【0026】
第1の面118aには、1つのカム130aが、第1の面118aから突出するように、すなわち、第1の面118aから離隔する方向に突出するように形成されている。第2の面120aには、2つのカム140a及び150aが、第2の面120aから突出するように、すなわち、第2の面120aから離隔する方向に突出するように形成されている。このように、カム130a、カム140a及び150aは、カム形成突条114aとともに、側壁110aに形成されている。カム130a、カム140a及び150aは、斜面部と垂直部と水平部とを有する。
【0027】
カム130aは、斜面部132aと垂直部134aと水平部136aとを有する。斜面部132aは、底面112に対して略30度の角度をなすように形成されている。垂直部134aは、底面112に対して略垂直、すなわち、第1の面118aと略平行になるように形成されている。水平部136aは、底面112に対して略平行、すなわち、第1の面118aと略垂直になるように形成されている。
【0028】
カム130aの高さが、後述するオスリテーナ300の爪部330aの水平部336aの長さよりも若干小さくなるように、カム130aは形成されている。このようにすることで、オスリテーナ300を2次係止の状態又は最終係止の状態にしたときに(図6(f)参照)、カム130aの水平部136aとオスリテーナ300の爪部330aの水平部336aとを係合させることができ、オスリテーナ300がオスハウジング100から離脱することを防止して、オスリテーナ300の最終係止の状態を確実に維持することができる。ここで、カム130aの高さは、第1の面118aから垂直部134aまでの長さである。
【0029】
カム140aは、斜面部142aと垂直部144aと水平部146aとを有する。斜面部142aは、底面112に対して略45度の角度をなすように形成されている。垂直部144aは、底面112に対して略垂直、すなわち、第2の面120aと略平行になるように形成されている。水平部146aは、底面112に対して略平行、すなわち、第2の面120aと略垂直になるように形成されている。
【0030】
カム140aの高さが、後述するオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aの長さよりも若干小さくなるように、カム140aは形成されている。このようにすることで、オスリテーナ300を1次係止の状態又は仮係止の状態にしたときに(図6(d)参照)、カム140aの水平部146aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを係合させることができ、オスリテーナ300がオスハウジング100から離脱することを防止して、オスリテーナ300の仮係止の状態を確実に維持することができる。ここで、カム140aの高さは、第2の面120aから垂直部144aまでの長さである。
【0031】
カム150aは、斜面部152aと垂直部154aと水平部156aとを有する。斜面部152aは、底面112に対して略45度の角度をなすように形成されている。垂直部154aは、底面112に対して略垂直、すなわち、第2の面120aと略平行になるように形成されている。水平部156aは、底面112に対して略平行、すなわち、第2の面120aと略垂直になるように形成されている。
【0032】
カム150aの高さがカム140aの高さよりも低くなるように、カム150aは形成されている。2次係止の状態又は最終係止の状態にしたとき(図6(f)参照)に、カム150aの水平部156aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを接触させるとともに、カム130aの水平部136aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを係合させることができ、オスリテーナ300の最終係止の状態をより確実に維持することができる。ここで、カム150aの高さは、第2の面120aから垂直部154aまでの長さである。
【0033】
上述したように、カム130aは第1の面118aに形成されている。2つのカム140a及び150aは、第2の面120aに形成されている。図6(b)及び(c)に示すように、爪部340aがカム140aと係合するときには、爪部330aはカム130aとは係合しない。すなわち、オスリテーナ300を仮係止の状態にするときには、爪部330a及び340aのうちのいずれか一方と係合するようにカムを形成するのが好ましい。また、図6(d)及び(e)に示すように、爪部340aがカム150aと係合するときには、同時に、爪部330aはカム130aとは係合する。すなわち、オスリテーナ300を最終係止の状態にするときには、爪部330a及び340aの双方と係合するようにカムを形成するのが好ましい。
【0034】
2つのカム140a及び150aは、第2の面120aに形成されている。これらの2つのカム140a及び150aは、オスリテーナ300の進入方向に沿って異なる位置に形成されている。本実施の形態では、カム140aは、カム150aよりも底面112から離れた位置に第2の面120aに形成されている。カム150aは、カム140aよりも底面112から近い位置に第2の面120aに形成されている。
【0035】
カム形成突条114aと同様に、側壁110bには、底面112から挿入開口108に向かって、側壁110bに沿って、カム形成突条114bが形成されている。カム形成突条114bは、長尺な形状を有し、長手方向に沿った第1の面118b及び第2の面120bを有する。カム形成突条114bによって、オスリテーナ300の進入方向に沿った経路になすことができる。カム形成突条114bの構造及び形状並びにカム形成突条114bに設けられているカム130b、カム140b及びカム150bもカム130a、カム140a及びカム150aの構造及び形状と同様である。したがって、カム130b、カム140b及びカム150bも、カム形成突条114bと同様に、側壁110bに形成されている。
【0036】
<端子部材500>
端子部材500(図示せず)は、長尺な形状を有する。端子部材500は、長手方向に沿って第1の端部と第2の端部とを有する。端子部材500の第1の端部には、各種の電線が電気的に接続されている。端子部材500がオスハウジング100に取り付けられたときには、各種の電線は、オスハウジング100から延出するように配置される。端子部材500がメスハウジング200に取り付けられたときには、各種の電線は、メスハウジング200から延出するように配置される。オスハウジング100が、メスハウジング200に挿入されて、所望する位置に位置づけられたときには、オスハウジング100に取り付けられた端子部材500の第2の端部と、メスハウジング200に取り付けられた端子部材500の第2の端部とが電気的に接続される。
【0037】
端子部材500の第1の端部と第2の端部との間には、凹部(図示せず)が形成されている。端子部材500が、オスハウジング100やメスハウジング200に取り付けられたときに、後述するリテーナに形成された係止用突部(図示せず)が端子部材500の凹部に挿入され、端子部材500が変位したりオスハウジング100やメスハウジング200から脱落したりすることを防止できる。
【0038】
<<オスリテーナ300の構成>>
オスリテーナ300は、オスハウジング100内に挿入された端子部材500を係止して、端子部材500が変位したりオスハウジング100から抜けたりしないようにするための部材である。オスリテーナ300は、合成樹脂によって形成されている。合成樹脂は、弾性、耐久性、耐熱性などの各種の特性を満たす材料を用いればよい。
【0039】
<基部302>
図2A及び図4Aに示すように、オスリテーナ300は基部302を有する。基部302は、5個の貫通孔304a〜304eが形成された本体部306を有する。本体部306の下面には、5個の係止用突部308a〜308e(図示せず)が形成されている。5個の貫通孔の上面にも5個の係止用突部310a〜310e(図示せず)が貫通孔の各々の内側に向かって形成されている。
【0040】
オスリテーナ300が、進入方向X(図4A及び図6(a)〜(f)参照)にオスハウジング100内に挿入されたときには、これらの係止用突部308a〜308e及び310a〜310eが端子部材500の凹部(図示せず)挿入されることで端子部材500を係止し、端子部材500が変位したりオスハウジング100から抜けたりしないようにする。
【0041】
<脚部322a及び324a>
図2A及び図4Aに示すように、基部302の2つの側面の各々には、互いに向かい合う2つの側面体320a及び320bを有する。側面体320aは、長尺な2つの脚部322a及び324aを有する。2つの脚部322a及び324aは、互いに略平行にかつ基部302から離隔する方向に形成されている。脚部322aの幅L1と、脚部324aの幅L2とは略同じになるように形成されている。このようにすることで、脚部322aの太さ及び脚部324aの太さも略同じになるように形成でき、脚部322aと脚部324aとの強度を略同じにでき、オスリテーナ300の着脱時に2つの脚部322a及び324aのどちらか一方が破損することを防止できる。
【0042】
脚部322aと脚部324aとは略同じ太さを有するので、着脱の際に加えられる力を分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えるようにできる。脚部322aの強度と脚部324aの強度とが、略同じになるようにすればよく、脚部322aと第2の脚部との断面形状などが互いに異なっていても、実質的に太さが同じであればよい。
【0043】
側面体320bも、側面体320aと同様に、長尺な2つの脚部322b及び324bを有する。2つの脚部322b及び324bは、互いに略平行にかつ基部302から離隔する方向に形成されている。なお、以下では、説明の簡略のため、主として、側面体320aや2つの脚部322a及び324aについて説明するが、側面体320bや2つの脚部322b及び324bも同様の構成を有し同様に機能する。
【0044】
<爪部330a>
脚部322aの長手方向に沿って基部302から最も離隔した脚部322aの先端には、爪部330aが形成されている。爪部330aは、斜面部332aと垂直部334aと水平部336aとを有する。斜面部332aは、基部302の表面に対して略30度の角度をなすように形成されている。垂直部334aは、基部302の表面に対して略垂直、すなわち、脚部322aの長手方向と略平行になるように形成されている。水平部336aは、基部302の表面に対して略平行、すなわち、脚部322aの長手方向と略垂直になるように形成されている。
【0045】
上述したように、カム130aの高さが、後述するオスリテーナ300の爪部330aの水平部336aの長さよりも若干小さくなるように、カム130aは形成されている。このようにすることで、オスリテーナ300を2次係止の状態又は最終係止の状態にしたときに、カム130aの水平部136aとオスリテーナ300の爪部330aの水平部336aとを接触させることができ、オスリテーナ300がオスハウジング100から離脱することを防止して、オスリテーナ300の2次係止状態を確実に維持することができる。ここで、カム130aの高さは、第1の面118aから垂直部134aまでの長さである。また、水平部336aの長さは、垂直部334aから脚部322aに至るまでの距離である。
【0046】
<爪部340a>
脚部324aの長手方向に沿って基部302から最も離隔した脚部324aの先端には、爪部340aが形成されている。爪部340aは、斜面部342aと垂直部344aと水平部346aとを有する。斜面部342aは、基部302の表面に対して略45度の角度をなすように形成されている。垂直部344aは、基部302の表面に対して略垂直、すなわち、脚部324aの長手方向と略平行になるように形成されている。水平部346aは、基部302の表面に対して略平行、すなわち、脚部324aの長手方向と略垂直になるように形成されている。
【0047】
上述したように、カム140aの高さが、後述するオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aの長さよりも若干小さくなるように、カム140aは形成されている。このようにすることで、オスリテーナ300を1次係止状態又は仮係止の状態にでき、カム140aの水平部146aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを接触させることができ、オスリテーナ300がオスハウジング100から離脱することを防止して、オスリテーナ300の1次係止状態を確実に維持することができる。ここで、カム140aの高さは、第1の面118aから垂直部144aまでの長さである。また、水平部346aの長さは、垂直部344aから脚部342aに至るまでの距離である。
【0048】
カム150aの高さがカム140aの高さよりも低くなるように、カム150aは形成されている。オスリテーナ300を2次係止状態又は最終係止の状態にしたときは、カム150aの水平部156aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを接触させるとともに、カム130aの水平部136aとオスリテーナ300の爪部340aの水平部346aとを接触させることができ、オスリテーナ300の2次係止状態をより確実に維持することができる。
【0049】
脚部322aから突出する爪部330aと、脚部324aから突出する爪部340aとが互いに向かい合うように、爪部330aと爪部340aとが形成されている。また、脚部322aの長手方向に沿った長さN1と、脚部324aの長手方向に沿った長さN2とが略同じになるように、脚部322aと脚部324aとが形成されている。上述したように、脚部322aの太さ及び脚部324aの太さも略同じになるように、脚部322aと脚部324aとは形成されている。このように、脚部322aと脚部324aとは、太さと長さとが略同じになるように形成されているので、脚部322aと脚部324aとの強度と撓みやすさとを略同じにすることができる。
【0050】
脚部322aから突出する爪部330aと、脚部324aから突出する爪部340aとが互いに向かい合うように、爪部330aと爪部340とが形成されている。このように爪部330aと爪部340aとが、脚部322aと脚部324aとの間に向かって、すなわち内側に向かって突出するように形成されている。
【0051】
このように爪部330aと爪部340aとを形成したことにより、爪部330aを係止するカム130aと、爪部340aを係止するカム140a及び150aとを、カム形成突条114aに外側に向かって突出するように形成できる(図5参照)。すなわち、カム130aと、カム140a及び150aとが、互いに離隔する方向に突出するように形成できる(図5参照)。具体的には、図5に示すように、カム130aは、図5の左方向に突出するように、カム140a及び150aは、図5の右方向に突出するように形成できる。
【0052】
このように、カム130aとカム140a及び150aとを、カム形成突条114aの外側に向かって突出するように形成できるので、オスハウジング100を金型で成型する場合には、金型のアンダーカットを考慮する必要がなく、カム形成突条114aに形成するカムの数によることなく金型を設計できる。したがって、カム形成突条114aに形成するカムの数を所望する数にできるとともに、金型の設計の自由度を高めることができる。
【0053】
<延出部350a及び360a>
側面体320aには、脚部322aと接続するように延出部350aが形成され、脚部324aと接続するように延出部360aが形成されている。延出部350aは、湾曲部352aを介して脚部322aと接続する。延出部360aは、湾曲部362aを介して脚部324aと接続する。
【0054】
延出部350aの幅M1は、延出部360aの幅M2よりも短くなるように形成されている。このようにすることで、オスリテーナ300をオスハウジング100に挿入するときに、オスリテーナ300の向きを間違えて挿入することを防止でき、挿入操作を迅速かつ的確にすることができる。ここで、延出部350aの幅M1は、後述する段差部354aから延出部350aの外端部までの距離である。また、延出部360aの幅M2は、後述する段差部364aから延出部360aの外端部までの距離である。延出部350aの外端部は、脚部322aの長手方向と略平行であり、延出部360aの外端部は、脚部324aの長手方向と略平行である。
【0055】
<段差部354aと段差部364a>
延出部350aと湾曲部352aと脚部322aとに亘って略直線状に延在するように段差部354aが形成されている。段差部354aは、脚部322aの長手方向に対して略平行になるように形成されている。延出部360aと湾曲部362aと脚部324aとに亘って略直線状に延在するように段差部364aが形成されている。段差部364aは、脚部324aの長手方向に対して略平行になるように形成されている。
【0056】
図2Aに示すように、段差部354aと段差部364aとは、厚みを異ならしめることで形成されている。段差部354aを形成したことにより、延出部350aと湾曲部352aと脚部322aとは、肉厚部と肉薄部とからなる。同様に、段差部364aを形成したことにより、延出部360aと湾曲部362aと脚部324aとは、肉厚部と肉薄部とからなる。
【0057】
図2Aに示すように、リテーナ挿入孔106の側壁110aには、角部122a及び124aが形成されている。角部122a及び124aは、挿入開口108から底面112に亘って長尺に形成されている。同様に、リテーナ挿入孔106の側壁110bには、角部122b及び124bが形成されている。角部122b及び124bは、挿入開口108から底面112に亘って長尺に形成されている。
【0058】
段差部354aは、角部122aと接触することができ、段差部354aは、角部122aによって案内される。同様に、段差部364aは、角部124aと接触することができ、段差部364aは、角部124aによって案内される。また、段差部354b(図示せず)は、角部122bと接触することができ、段差部354bは、角部122bによって案内される。同様に、段差部364b(図示せず)は、角部124bと接触することができ、段差部364bは、角部124bによって案内される。このようにすることで、オスリテーナ300は、段差部354a、段差部364a、段差部354b及び段差部364bによって案内されつつ、リテーナ挿入孔106に挿入される。このようにすることで、オスリテーナ300の姿勢を適切なものにしつつ、オスリテーナ300をリテーナ挿入孔106に挿入することができる。
【0059】
<<オスリテーナ300のオスハウジング100への取り付け>>
オスリテーナ300は、オスハウジング100に形成されたリテーナ挿入孔106の挿入開口108から挿入されて、リテーナ挿入孔106に取り付けられる。図6(a)〜(f)は、オスリテーナ300がリテーナ挿入孔106に進入する過程を示す断面図である。オスリテーナ300がリテーナ挿入孔106に適切な姿勢で挿入されたときに、オスリテーナ300がリテーナ挿入孔106に進入する方向(以下、進入方向と称する。)は、脚部322a及び324aの長手方向や、リテーナ挿入孔106の深さ方向(挿入開口108から底面112に向かう方向)や、カム形成突条114aの第1の面118a及び第2の面120aと略一致する。
【0060】
図6(a)は、操作者によってオスリテーナ300が挿入開口108に挿入された直後の状態を示す断面図である。この状態では、オスリテーナ300の段差部354aは、オスハウジング100の角部122aに摺動可能に案内されるとともに、オスリテーナ300の段差部364aは、オスハウジング100の角部124aと摺動可能に案内される。これにより、オスリテーナ300の姿勢が直立した状態を維持しつつ、底面112に向かってリテーナ挿入孔106に進入する。
【0061】
図5に示すように、カム形成突条114aの先端部116aには、先端部116aを挟んで2つの突条傾斜部126a及び128aが形成されている。オスリテーナ300が挿入開口108に挿入されて、オスリテーナ300が傾いた場合には、オスリテーナ300の斜面部332aは突条傾斜部126aに係合したり、オスリテーナ300の斜面部342aは突条傾斜部128aに係合したりすることができる。斜面部332aと突条傾斜部126aとの係合や、斜面部342aと突条傾斜部128aとの係合によって、オスリテーナ300を適切な姿勢にすることができる。このようにして、図6(a)に示す状態から図6(b)に示す状態に移行する間に、脚部322aと脚部342aとの間にカム形成突条114aが嵌入して、オスリテーナ300を進入させることができる。
【0062】
その後、爪部330aの垂直部334aはカム形成突条114aの第1の面118aに案内され、爪部340aの垂直部344aはカム形成突条114aの第2の面120aに案内されるので、オスリテーナ300の姿勢をより安定させて直立した状態にすることができる。すなわち、爪部330aと爪部340aとが、カム形成突条114aを挟むように案内される。さらに、オスリテーナ300の段差部354aは、オスハウジング100の角部122aと摺動可能に案内され、オスリテーナ300の段差部364aは、オスハウジング100の角部124aと摺動可能に案内される。このようにして、オスリテーナ300を適切な姿勢にして、オスリテーナ300を進入させることができる。
【0063】
上述したオスリテーナ300の段差部354a及びオスハウジング100の角部122aと、オスリテーナ300の段差部364a及びオスハウジング100の角部124aとによって蟻溝構造を構成できる。蟻溝構造を構成することで、オスリテーナ300の段差部354a及び段差部364aの形状に沿って、仮係止の状態を経て最終係止の状態までオスハウジング100を案内することができる。
【0064】
図6(b)は、オスリテーナ300の爪部340aがカム140aと当接した状態を示す断面図である。
【0065】
オスリテーナ300が底面112に向かって進入することで、オスリテーナ300の爪部340aがカム140aと当接する状態になる。具体的には、爪部340aの斜面部342aと、カム140aの斜面部142aとが接触した状態となる。また、この図6(b)の状態では、爪部330aの垂直部334aは、カム形成突条114aの第1の面118aと当接している。
【0066】
この図6(b)に示す状態では、角部124aの下端部と、脚部324aの根元部とが略一致するように位置する(図6(b)の線A参照)。このように図6(a)から図6(b)に至るまでの間では、角部124aの下端部によって、脚部324aが変形することを防止でき、爪部330aと爪部340aとが、カム形成突条114aを挟むように案内できる。図6(b)に示すように、脚部324aの根元部と略一致するように、角部124aの下端部の位置を予め定めている。
【0067】
図6(c)は、操作者によってオスリテーナ300がリテーナ挿入孔106に押し込まれ、カム140aにより脚部324aが変形した状態を示す断面図である。オスリテーナ300は、合成樹脂によって形成されており、脚部324aは弾性変形することができる。
【0068】
爪部340aとカム140aとが係合する箇所は、カム140aの斜面部142aから垂直部144aまで徐々に下方向に移動する。具体的には、オスリテーナ300の爪部340aの垂直部344aと水平部346aとの間の角部345a(図4A参照)と、カム形成突条114aのカム140aの垂直部144aと水平部146aとの間の角部145a(図5参照)との係合が解除されるまで、爪部340aとカム140aとは係合する。
【0069】
係合する箇所が、徐々に移動するに従って、脚部324aは徐々に広がって変形していく。オスハウジング100は、合成樹脂製であり弾性変形できる。角部345aと角部145aとの係合が解除されたときには、オスリテーナ300の弾性力によって元の形状に戻り、図6(d)に示す仮係止の状態に至る。
【0070】
図6(c)の状態でも、オスリテーナ300の段差部354aは、オスハウジング100の角部122aに摺動可能に案内されるとともに、オスリテーナ300の段差部364aは、オスハウジング100の角部124aと摺動可能に案内される。また、爪部330aの垂直部334aは、カム形成突条114aの第1の面118aと摺動可能に当接している。このため、脚部324aのみが変形することができる。
【0071】
図6(d)は、第1係止の状態、すなわち、仮係止の状態を示す断面図である。この仮係止の状態は、オスリテーナ300が、オスハウジング100の第1の進入位置まで進入した状態である。
【0072】
オスリテーナ300の爪部340aがカム140aと係合していた状態が解除されて、オスリテーナ300の爪部330aがカム130aと当接するとともに、オスリテーナ300の爪部340aがカム150aと当接する状態となる。このように、爪部330aがカム130aと当接するとともに爪部340aがカム150aと当接しているので、オスリテーナ300が底面112に向かって移動しにくくできる。
【0073】
また、オスリテーナ300が挿入開口108に向かって引き出そうとされたときには、爪部340aはカム140aによって係止されるので、挿入開口108に向かう移動を防止することができる。すなわち、爪部340aの水平部346aとカム140aの水平部146aは、ともに、進入方向に対して略垂直に形成されている。このため、爪部340aの水平部346aは、カム140aの水平部146aによって係止され、爪部340aの水平部346aとカム140aの水平部146aとの当接状態を維持することができ、オスリテーナ300が挿入開口108に向かって引き出そうとされても、挿入開口108に向かう移動を的確に防止でき、仮係止の状態を維持することができる。
【0074】
オスリテーナ300は、図6(d)に示す仮係止の状態でユーザに納品される場合がある。上述したように、爪部330aとカム130aとが当接し、爪部340aとカム140aとが当接し、爪部340aとカム150aとが係止可能な状態にしたことで、オスリテーナ300に振動や衝撃が加えられた場合でも仮係止の状態を維持でき、納品の信頼性を高める可能性が生ずる。
【0075】
図6(d)に示す仮係止の状態では、オスハウジング100の貫通孔102aは、オスリテーナ300の貫通孔304aと連通し、オスハウジング100の貫通孔102bは、オスリテーナ300の貫通孔304bと連通し、オスハウジング100の貫通孔102cは、オスリテーナ300の貫通孔304cと連通し、オスハウジング100の貫通孔102dは、オスリテーナ300の貫通孔304dと連通し、オスハウジング100の貫通孔102eは、オスリテーナ300の貫通孔304eと連通する。したがって、仮係止の状態にすることで、オスリテーナ300の貫通孔304a〜304eを介して、オスハウジング100の上段の5つの貫通孔102a〜102eの各々に端子部材500を円滑に取り付けることができる。
【0076】
また、この仮係止の状態では、オスリテーナ300は最終係止の状態(図6(f)参照)に至っておらず、オスリテーナ300が下段の5つの貫通孔104a〜104eに到達していないので、5つの貫通孔104a〜104eの各々に端子部材500を円滑に取り付けることができる。
【0077】
この図6(d)に示す状態では、角部122aの下端部と、脚部322aの根元部とが略一致するように位置する(図6(d)の線B参照)。仮係止の状態に至るまでの間では、角部122aの下端部によって、脚部322aが変形することを防止でき、的確に仮係止の状態に至らしめることができる。図6(d)に示すように、脚部322aの根元部と略一致するように、角部122aの下端部の位置を予め定めている。
【0078】
このようにすることで、ユーザは、仮係止状態で納品されたオスリテーナ300に端子部材500を容易に取り付けることができる。
【0079】
図6(e)は、操作者によって、オスリテーナ300がリテーナ挿入孔106にさらに押し込まれることにより、脚部322a及び324aの双方が変形した状態を示す断面図である。上述したように、オスリテーナ300は、合成樹脂によって形成されており、脚部322aは、カム130aとの当接によって弾性変形することができ、脚部324aは、カム150aとの当接によって弾性変形することができる。
【0080】
爪部330aとカム130aとが係合する箇所は、カム130aの斜面部132aから垂直部134aまで徐々に下方向に移動する。具体的には、オスリテーナ300の爪部330aの垂直部334aと水平部336aとの間の角部335a(図4A参照)と、カム形成突条114aのカム130aの垂直部134aと水平部136aとの間の角部135a(図5参照)との係合が解除されるまで、爪部330aとカム130aとは係合する。
【0081】
また、爪部340aとカム150aとが係合する箇所は、カム150aの斜面部152aから垂直部154aまで徐々に下方向に移動する。具体的には、オスリテーナ300の角部345a(図4A参照)と、カム形成突条114aのカム150aの垂直部154aと水平部156aとの間の角部155a(図5参照)との係合が解除されるまで、爪部340aとカム150aとは係合する。
【0082】
係合する箇所が、徐々に移動するに従って、脚部322aは徐々に広がって弾性変形していく。角部335aと角部135aとの係合が解除されたときには、オスリテーナ300の弾性力によって、脚部322aは元の形状に戻り、図6(f)に示す最終係止の状態に至る。
【0083】
同様に、係合する箇所が、徐々に移動するに従って、脚部324aは徐々に広がって変形していく。オスハウジング100は、合成樹脂製であり弾性変形できる。角部345aと角部155aとの係合が解除されたときには、オスリテーナ300の弾性力によって、脚部324aは元の形状に戻り、図6(f)に示す最終係止の状態に至る。
【0084】
図6(e)の状態でも、オスリテーナ300の段差部354aは、オスハウジング100の角部122aに摺動可能に案内されるとともに、オスリテーナ300の段差部364aは、オスハウジング100の角部124aと摺動可能に案内される。このため、脚部322a及び324aのみが変形することができる。
【0085】
脚部322aはカム130aと当接するとともに、脚部324aはカム150aと当接するので、オスリテーナ300から加えられる力を、脚部322aを介してカム130aと脚部324aを介してカム150aとに分散させることができる。このように、カム130aとカム150aとに力を分散させることによって、オスリテーナ300の姿勢のバランスをとることができ、脚部322a又は脚部324aのいずれか一方の側にオスリテーナ300が傾くことを防止できる。
【0086】
また、カム130aの高さは、カム150aの高さよりも高く、カム130aの高さとカム150aの高さとを異ならしめたことによって、脚部324aが変移できる空間と脚部324aが変移できる空間とを異ならしめることができる。オスハウジング100の形状や大きさに応じて、脚部324a及び324aの変移の空間を確保することができる。また、オスリテーナ300をオスハウジング100を取り外すときなどに、脚部324a及び324aに加えられる引っ張り荷重のバランスをとることができる。
【0087】
図6(f)は、操作者によって、オスリテーナ300がさらに押し込まれて、オスリテーナ300の爪部330aと爪部340aとが、オスハウジング100の底面112に到達した状態を示す断面図である。この状態が、第2係止の状態、すなわち、最終係止の状態である。この最終係止の状態は、オスリテーナ300が、オスハウジング100の第2の進入位置まで進入した状態である。第2の進入位置は、上述した第1の進入位置よりも深い位置、すなわち、第1の進入位置よりも、挿入開口108から離隔しかつ底面112に近づいた位置である。
【0088】
図6(f)に示す最終係止の状態では、オスリテーナ300の爪部330aがカム130aと当接していた状態が解除され、オスリテーナ300の爪部340aがカム150aと当接していた状態が解除される。
【0089】
オスリテーナ300が挿入開口108に向かって引き出そうとされたときには、爪部330aがカム130aと当接するとともに、爪部340aがカム150aと当接するので、オスリテーナ300が挿入開口108に向かう移動を防止することができる。すなわち、爪部330aの水平部336a及びカム130aの水平部136aと、爪部340aの水平部346a及びカム150aの水平部156aとは、ともに、進入方向に対して略垂直に形成されている。このため、爪部330aの水平部336aがカム130aの水平部136aに対して摺動しにくくなるとともに、爪部340aの水平部346aがカム150aの水平部156aに対して摺動しにくくできる。これにより、爪部330aの水平部336a及びカム130aの水平部136aの当接状態と、爪部340aの水平部346a及びカム150aの水平部156aの当接状態とを維持することができ、オスリテーナ300が挿入開口108に向かって引き出そうとされても、挿入開口108に向かう移動を的確に防止でき、最終係止の状態を維持することができる。
【0090】
図6(f)に示す最終係止の状態では、オスリテーナ300が、オスハウジング100の上段の5つの貫通孔102a〜102eの各々と下段の5つの貫通孔104a〜104eの各々とに取り付けられた端子部材500を係止するので、端子部材500が変位したりオスハウジング100から脱落したりすることを防止できる。
【0091】
また、この最終係止の状態では、図6(f)に示すように、オスリテーナ300の基部302の表面とオスハウジング100の表面とは、略面一の状態になり、オスハウジング100に段差が生ずることを防止できる。
【0092】
図6(a)から図6(f)に至るまでの間、段差部354aは角部122aによって、段差部364aは角部124aによって、段差部354bは角部122bによって、段差部364bは角部124bによって、常に案内されるので、挿入開口108におけるオスリテーナ300の姿勢を適切にできる。
【0093】
<<仮係止の状態と最終係止の状態の対比>>
仮係止の状態にするときには、爪部340aとカム140aとが係合する箇所が、角部145aに至るまで、オスリテーナ300を押し込む必要がある。一方、最終係止の状態にするときには、爪部330aとカム130aとが係合する箇所が角部135aに至るとともに、爪部340aとカム150aとが係合する箇所が、角部155aに至るまで、オスリテーナ300を押し込む必要がある。
【0094】
上述したように、カム130aの斜面部132aは、底面112に対して略30度の角度をなすように形成されている。一方、カム140aの斜面部142aは、底面112に対して略45度の角度をなすように形成されている。このように、斜面部132aは底面112に対して略30度の角度をなし、斜面部142aは、底面112に対して略45度の角度をなすので、爪部340aの斜面部342aがカム140aの斜面部142aと係合しつつ移動するときに要する力を、爪部330aの斜面部332aが、カム130aの斜面部132aと係合しつつ移動するときに要する力よりも小さくできる。カム130aの斜面部132aの角度と、カム140aの斜面部142aの角度とを調整することによって、仮係止に要する力を最終係止に要する力よりも小さくできる。たとえば、カム140aの斜面部142aの角度をカム130aの斜面部132aの角度よりも小さくすることが好ましい。特に、カム130aの斜面部132aは、底面112に対して略30度〜略45度の角度をなすように形成し、カム140aの斜面部142aは、底面112に対して略45度〜略70の角度をなすように形成することが好ましい。
【0095】
<<メスハウジング200の構成>>
<カム230a、240a、250a及びカム230b、240b、250bの構成>
メスハウジング200にもオスハウジング100と同様に、カム230a、240a、250a及びカム230b、240b、250bが形成されている。
【0096】
図2A及び図3Bに示すように、リテーナ挿入孔206は、互いに向かい会う2つの側壁210a及び210bと、底面212とを有する。側壁210aには、側壁210aに沿ってカム形成突条214aが形成されている。カム形成突条214aは、底面212から挿入開口208に向かって形成されている。図7(a)に示すように、カム形成突条214aは、底面212に対して略垂直にかつ底面212から離隔するように形成されている。カム形成突条114aは、底面112から連結するように形成されているが、カム形成突条214aは、底面212から離隔して側壁210aのみと連結して島状に形成されている。このようにしたことにより、図7(c)に示すような金型を用いることができ、狭小なスペースでの成形の形状を維持することができる。
【0097】
カム形成突条214aは、底面212から離隔して形成されている点を除いて、カム形成突条114aと同様の構造を有し同様に機能する。また、カム形成突条214aは、カム形成突条114aと同様に、カム230a、240a、250aが形成されている。これらのカム230a、240a、250aも、カム形成突条114aのカム130a、140a、150aと同様の構造を有し同様に機能する。
【0098】
また、カム形成突条214aと同様に、側壁210bには、底面212から挿入開口208に向かって、側壁210bに沿って、カム形成突条214bが形成されている。カム形成突条214bも、カム形成突条214aと同様の構造を有し同様に機能する。また、カム形成突条214bは、カム形成突条214aと同様に、カム230b、240b、250bが形成されている。これらのカム230b、240b、250bも、カム形成突条214aのカム230a、240a、250aと同様の構造を有し同様に機能する。
<<メスリテーナ400の構成>>
メスリテーナ400は、オスリテーナ300と同様に、メスハウジング200内に挿入された端子部材500を係止して、端子部材500が変位したりメスハウジング200から抜けたりしないようにするための部材である。メスリテーナ400は、合成樹脂によって形成されている。合成樹脂は、弾性、耐久性、耐熱性などの各種の特性を満たす材料を用いればよい。
【0099】
<基部402>
図2B及び図4Bに示すように、メスリテーナ400は基部402を有する。基部402は、5個の貫通孔404a〜404eが形成された本体部406を有する。本体部406の下面には、5個の係止用突部408a〜408e(図示せず)が形成されている。5個の貫通孔の上面にも5個の係止用突部410a〜410e(図示せず)が貫通孔の各々の内側に向かって形成されている。
【0100】
メスリテーナ400が、進入方向Y(図4B及び図7(b))にメスハウジング200内に挿入されたときには、これらの係止用突部408a〜408e及び410a〜410eが端子部材500の凹部(図示せず)挿入されることで端子部材500を係止し、端子部材500が変位したりオスハウジング100から抜けたりしないようにする。
【0101】
<脚部422a及び424a>
図2B及び図4Bに示すように、基部402の2つの側面の各々には、互いに向かい合う2つの側面体420a及び420bを有する。側面体420aは、長尺な2つの脚部422a及び424aを有する。2つの脚部422a及び424aは、互いに略平行にかつ基部402から離隔する方向に形成されている。
【0102】
側面体420bも、側面体420aと同様に、長尺な2つの脚部422b及び424bを有する。2つの脚部422b及び424bは、互いに略平行にかつ基部402から離隔する方向に形成されている。なお、以下では、説明の簡略のため、主として、側面体420aや2つの脚部422a及び424aについて説明するが、側面体420bや2つの脚部422b及び424bも同様の構成を有し同様に機能する。
【0103】
脚部422aの先端には、爪部430aが形成されている。爪部430aは、斜面部432aと垂直部434aと水平部436aとを有する。爪部430a、斜面部432a、垂直部434a、水平部436aは、爪部330a、斜面部332a、垂直部334a、水平部336aと同様の構成で同様に機能する。また、脚部424aの先端には、爪部440aが形成されている。爪部440aは、斜面部442aと垂直部444aと水平部446aとを有する。爪部440a、斜面部442a、垂直部444a、水平部446aは、爪部340a、斜面部342a、垂直部344a、水平部346aと同様の構成で同様に機能する。
【0104】
側面体420a及び側面体420bは、側面体320a及び側面体320bとは異なり、段差部354aや364aなどの段差部は形成されていない。したがって、側面体420a及び側面体420bは、図7(b)に示すように、側面体420a及び側面体420bの端部が摺動可能に支持されて、進入方向Yに進入することができる。
【0105】
<他の実施の形態>
上述した例では、カム130aの斜面部132aが底面112に対して略30度の角度をなすように、かつ、カム140の斜面部142aが底面112に対して略45度の角度をなすように、かつ、カム150aの斜面部152aが底面112に対して略45度の角度をなすように形成されている場合を示した。また、爪部330aの斜面部332aが、基部302の表面に対して略30度の角度をなすように、かつ、爪部340aの斜面部342aが、基部302の表面に対して略45度の角度をなすように形成されている場合を示した。これらの傾斜部の角度は、これに限られず、互いに異なる角度であり、仮係止の状態と最終係止の状態とを実現でき維持できるものであればよい。
【0106】
たとえば、底面112に対する斜面部132aの角度と、底面112に対する斜面部142aの角度とは、互いに異なる角度であり、かつ、30度〜70度に含まれていることが好ましい。具体的には、底面112に対する斜面部132aの角度が30度〜45度の範囲に含まれ、かつ、底面112に対する斜面部142aの角度が45度〜70度の範囲に含まれることが好ましい。
【0107】
<<コネクタの概要1>>
本発明の実施の形態に係るコネクタは、
端子部材(たとえば、端子部材500)が取り付けられるハウジング(たとえば、オスハウジング100又はメスハウジング200)と前記ハウジングに着脱可能に挿入されて前記端子部材を係止するリテーナ(たとえば、オスリテーナ300又はメスリテーナ400)とを有するコネクタであって、
前記ハウジングは、所定の方向に向かって突出する第1の突部(たとえば、カム130a又は130b)と、前記第1の突部とは異なる方向に突出する第2の突部(たとえば、カム150a又は150b)とを有し、
前記リテーナは、互いに向かい合って形成された第1の脚部(たとえば、脚部322a又は322b)及び第2の脚部(たとえば、脚部324a又は324b)を有し、
前記第1の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能であり、
前記第2の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能である。
【0108】
本発明の実施の形態に係るコネクタは、ハウジングとリテーナとを有する。ハウジングには、端子部材が取り付けられることができる。リテーナは、ハウジングに着脱可能に挿入されて端子部材を係止する。端子部材は、電線が接続され電気的な接点を形成できるものが好ましい。
【0109】
ハウジングは、第1の突部及び第2の突部を有する。第1の突部は、所定の方向に向かって突出するように形成されている。第2の突部は、第1の突部とは異なる方向に突出するように形成されている。
【0110】
リテーナは、第1の脚部及び第2の脚部を有する。第1の脚部及び第2の脚部は、互いに向かい合って形成されている。したがって、第1の脚部は、第2の脚部に向かう部分が形成され、第2の脚部は、第1の脚部に向かう部分が形成されているのが好ましい。
【0111】
さらに、第1の脚部及び第2の脚部は、リテーナが進入する過程で、弾性変形することができるとともに、第1の脚部及び第2の脚部が弾性変形していない状態、すなわち、第1の脚部及び第2の脚部に力が加えられていない状態では、第1の脚部及び第2の脚部が互いに近づく配置になるものが好ましい。
【0112】
さらにまた、第1の脚部及び第2の脚部は、リテーナが進入する過程で互いに広がって離隔する方向に弾性変形するものが好ましい。
【0113】
リテーナが進入する過程で、第1の脚部が第1の突部と係合できる。同様に、リテーナが進入する過程で、第2の脚部が第2の突部と係合できる。
【0114】
このように構成したことにより、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の脚部及び第2の脚部に分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0115】
また、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記リテーナの進入の過程で前記第1の脚部が前記第1の突部と係合したときに、前記第1の脚部は前記第2の脚部から離隔する方向に変形し、
前記リテーナの進入の過程で前記第2の脚部が前記第2の突部と係合したときに、前記第2の脚部は前記第1の脚部から離隔する方向に変形する。
【0116】
リテーナの進入の過程において、第1の脚部は、第1の突部との係合によって第2の脚部から離隔する方向に変形し、第2の脚部は、第2の突部との係合によって第1の脚部から離隔する方向に変形する。したがって、リテーナの進入の過程において、第1の脚部及び第2の脚部を係合に応じて無理なく変形させることができるので、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0117】
さらに、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記第1の脚部が、前記第1の脚部から突出する第1の爪部(爪部330a又は330b)を有し、
前記第2の脚部が、前記第2の脚部から突出する第2の爪部(爪部340a又は340b)を有し、
前記第1の爪部と第2の爪部とが互いに向かい合う。
【0118】
このように構成したことにより、リテーナの着脱の際に、第1の爪部が第1の突部と的確に係合でき、第2の爪部が第2の突部と的確に係合できるので、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の脚部及び第2の脚部により的確に分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0119】
さらにまた、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記第1の突部及び前記第2の突部は、互いに離れる向きに向かって突出して形成され、
前記第1の爪部が、前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能であり、
前記第2の爪部が、前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能である。
【0120】
第1の突部及び第2の突部は、互いに離れる向きに向かって突出して形成されている。このようにしたことで、リテーナが進入する際に、第1の爪部を第1の突部と向かい合わせることができるとともに、第2の爪部を第2の突部と向かい合わせることができる。これにより、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の脚部及び第2の脚部により的確に分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0121】
また、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記ハウジングは、前記リテーナが挿入されるリテーナ挿入孔(たとえば、リテーナ挿入孔106、206)を有し、
前記リテーナ挿入孔に前記第1の突部及び前記第2の突部が形成されている。
【0122】
第1の突部及び第2の突部はリテーナ挿入孔に形成されているので、第1の突部及び第2の突部をリテーナ挿入孔によって支持でき、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の突部及び第2の突部にも分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0123】
さらに、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記リテーナ挿入孔は、前記リテーナの進入方向に沿って形成された係止用突条(カム形成突条114a、114b)を有し、
前記第1の突部及び前記第2の突部は、前記係止用突条から互いに離れる向きに突出して形成されている。
【0124】
リテーナ挿入孔に係止用突条を設けたことによって、リテーナの進入方向に沿った経路になすことができ、リテーナをリテーナ挿入孔内で的確に案内することができる。第1の突部及び第2の突部は、係止用突条に形成されているので、第1の突部及び第2の突部を係止用突条によって支持でき、リテーナの着脱の際に加えられる力を第1の突部及び第2の突部にも分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0125】
さらにまた、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記第1の脚部は、前記第1の脚部の端部に形成された第1の傾斜部であって、前記リテーナの進入方向に対して第1の角度をなしかつ前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能な第1の傾斜部(斜面部332a又は332b)を有し、
前記第2の脚部は、前記第2の脚部の端部に形成された第2の傾斜部であって、前記リテーナの進入方向に対して前記第1の角度とは異なる第2の角度をなしかつ前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能な第2の傾斜部(斜面部342a又は342b)を有する。第1の傾斜部及び第2の傾斜部によって、リテーナをリテーナ挿入孔に挿入する際に、加えられる力を適宜調整することができる。
【0126】
第1の傾斜部と第2の傾斜部との角度が相違するので、係止に要する力を異ならしめることができる。第1の傾斜部及び第2の傾斜部の角度によって、リテーナをリテーナ挿入孔に挿入する際に、加えられる力を適宜調整することができる。
【0127】
<<コネクタの概要2>>
本発明の実施の形態に係るコネクタは、
端子部材(たとえば、端子部材500)が取り付けられるハウジング(たとえば、オスハウジング100又はメスハウジング200)と前記ハウジングに着脱可能に挿入されて前記端子部材を係止するリテーナ(たとえば、オスリテーナ300又はメスリテーナ400)とを有するコネクタであって、
前記ハウジングは、前記リテーナの進入方向(X)に沿った経路に形成された第1の突部(たとえば、カム130a又は130b)及び第2の突部(たとえば、カム150a又は150b)を有し、
前記リテーナは、
互いに向かい合って形成されかつ略同じ太さを有する第1の脚部(たとえば、脚部322a又は322b)及び第2の脚部(たとえば、脚部324a又は324b)と、
前記第1の脚部の端部に形成された第1の傾斜部であって、前記進入方向に対して第1の角度をなしかつ進入の過程で前記第1突部と係合可能な第1の傾斜部(斜面部332a又は332b)と、
前記第2の脚部の端部に形成された第2の傾斜部であって、前記進入方向に対して前記第1の角度とは異なる第2の角度をなしかつ進入の過程で前記第2突部と係合可能な第2の傾斜部(斜面部342a又は342b)と、を有する。
【0128】
本発明の実施の形態に係るコネクタは、ハウジングとリテーナとを有する。ハウジングには、端子部材が取り付けられることができる。リテーナは、ハウジングに着脱可能に挿入されて端子部材を係止する。端子部材は、電線が接続され電気的な接点を形成できるものが好ましい。
【0129】
ハウジングは、第1の突部及び第2の突部を有する。第1の突部と第2の突部とは、進入方向に沿った経路に形成されている。
【0130】
前記リテーナは、第1の脚部及び第2の脚部と、第1の傾斜部と、第2の傾斜部と、を有する。
【0131】
第1の脚部及び第2の脚部は、互いに向かい合って形成されている。第1の脚部及び第2の脚部は、略同じ太さを有する。第1の脚部の強度と第2の脚部の強度とが、略同じになるようにすればよく、第1の脚部と第2の脚部との断面形状などが互いに異なっていても、双方の脚部の太さが実質的に同じであればよい。
【0132】
第1の傾斜部は、第1の脚部の端部に形成されている。この第1の傾斜部は、進入方向に対して第1の角度をなすように形成されている。第1の傾斜部は、進入の過程で第1突部と係合できる。
【0133】
第2の傾斜部は、第2の脚部の端部に形成されている。おの第2の傾斜部は、進入方向に対して第2の角度をなすように形成されている。第2の角度は第1の角度とは異なる。第2の角度は、進入の過程で第2突部と係合できる。
【0134】
第1の脚部及び第2の脚部は略同じ太さを有するので、着脱の際に加えられる力を分散させることができ、複数回の着脱操作に耐えることができるリテーナを有するコネクタを提供できる。
【0135】
また、第1の傾斜部と第2の傾斜部との角度が相違するので、係止に要する力を異ならしめることができる。
【0136】
また、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記ハウジングは、前記進入方向に沿って形成された係止用突条(カム形成突条114a、114b)を有し、
前記第1の突部及び前記第2の突部は、前記係止用突条から互いに離れる向きに突出して形成され、
前記第1の脚部の端部は、前記第1の傾斜部が形成された第1の爪部(爪部330a又は330b)を有し、
前記第2の脚部の端部は、前記第2の傾斜部が形成された第2の爪部(爪部340a又は340b)を有し、
前記第1の爪部及び前記第2の爪部は、互いに向かい合って前記係止用突条を挟むように形成されている。
【0137】
第1の突部及び第2の突部は、係止用突条から互いに離隔するように形成されているので、成型用部材を用いた場合には、成型用部材の設計の自由度を高めることができる。
【0138】
さらに、本発明の実施の形態に係るコネクタは、
前記ハウジングは、前記進入方向に沿って形成された第1の案内部と、前記進入方向に沿って形成された第2の案内部とを有し、
前記第1の脚部は、前記第1の案内部に対して少なくとも一部が摺動可能に形成された第1の被案内部を有し、
前記第2の脚部は、前記第1の案内部に対して少なくとも一部が摺動可能に形成された第2の被案内部を有し、
前記リテーナは、前記第1の被案内部が前記第1の案内部によって案内され、かつ、前記第2の被案内部が前記第2の案内部によって案内されて、進入方向に移動できる。
【0139】
第1の被案内部が第1の案内部によって案内され、かつ、第2の被案内部が第2の案内部によって案内されて、リテーナは前記進入方向に移動できるので、リテーナの姿勢を適切にでき、リテーナをハウジングに円滑に取り付けることができる。
【0140】
また、前記係止用突条は、前記進入方向に沿って形成された第1の面(第1の面118a)及び第2の面(第2の面120a)とを有し、
前記第1の面には、前記第1の突部が形成され、
前記第2の面には、前記第2の突部が形成され、かつ、前記第2の突部とは異なる位置に第3の突起(カム140a又は140b)が形成されている。
【0141】
第2の傾斜部が第3の突部と係止したときに、リテーナを第1の係止状態(仮係止の状態)にでき、第2の傾斜部が第2の突部と係止したときに、リテーナを第2の係止状態(最終係止の状態)にできる。特に、第2の傾斜部が第2の突部と係止したときには、第1の傾斜部が第1の突部と係止することが好ましい。第1の傾斜部と第1の突部との係止と、第2の傾斜部と第2の突部との係止との双方の係止によって、第2の係止状態(最終係止の状態)を安定した状態にすることができる。
【0142】
前記第1の爪部は、前記進入方向に対して略垂直な方向に形成された第1の係止面(たとえば、水平部336a、336b)を有し、
前記第2の爪部は、前記進入方向に対して略垂直な方向に形成された第2の係止面(たとえば、水平部346a、346b)を有し、
前記リテーナは、進入の過程において前記第3の突部と前記第2の傾斜部との係合が解除されたときに、前記リテーナは第1の係止状態になり、
前記リテーナは、進入の過程において前記第1の突部と前記第1の傾斜部との係合と、前記第2の突部と前記第2の傾斜部との係合とが解除されたときに、前記リテーナは第2の係止状態になり、
前記リテーナが第1の係止状態であるときに、前記第3の突部によって前記第2の係止面が係止され、
前記リテーナが第2の係止状態であるときに、前記第1の突部によって前記第1の係止面が係止され、かつ、前記第2の突部によって前記第2の係止面が係止される。
【0143】
第3の突部によって第2の係止面が係止されるので、第1の係止状態を安定させることができる。第1の突部によって第1の係止面が係止され、かつ、第2の突部によって第2の係止面が係止されるので、第2の係止状態を第1の係止状態よりも安定させることができる。
【符号の説明】
【0144】
100 オスハウジング
110a、110b 側壁(壁面)
114a、114b カム形成突条(係止用突条)
118a 第1の面(第1の面)
120a 第2の面(第2の面)
130a、130b カム(第1の突部)
140a、140b カム(第3の突部)
150a、150b カム(第2の突部)
200 メスハウジング
300 オスリテーナ
322a、322b 脚部(第1の脚部)
324a、324b 脚部(第2の脚部)
330a、330b 爪部(第1の爪部)
332a、332b 斜面部(第1の傾斜部)
340a、340b 爪部(第2の爪部)
342a、342b 斜面部(第2の傾斜部)
336a、336b 水平部(第1の係止面)
346a、346b 水平部(第2の係止面)
400 メスリテーナ
500 端子部材
X、Y 進入方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部材が取り付けられるハウジングと前記ハウジングに着脱可能に挿入されて前記端子部材を係止するリテーナとを有するコネクタであって、
前記ハウジングは、所定の方向に向かって突出する第1の突部と、前記第1の突部とは異なる方向に突出する第2の突部とを有し、
前記リテーナは、互いに向かい合って形成された第1の脚部及び第2の脚部を有し、
前記第1の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能であり、
前記第2の脚部は、前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能であることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記リテーナの進入の過程で前記第1の脚部が前記第1の突部と係合したときに、前記第1の脚部は前記第2の脚部から離隔する方向に変形し、
前記リテーナの進入の過程で前記第2の脚部が前記第2の突部と係合したときに、前記第2の脚部は前記第1の脚部から離隔する方向に変形することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1の脚部は、前記第1の脚部から突出する第1の爪部を有し、
前記第2の脚部は、前記第2の脚部から突出する第2の爪部を有し、
前記第1の爪部と第2の爪部とが互いに向かい合うことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1の突部及び前記第2の突部は、互いに離れる向きに向かって突出して形成され、
前記第1の爪部が、前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能であり、
前記第2の爪部が、前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能であることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記リテーナが挿入されるリテーナ挿入孔を有し、
前記リテーナ挿入孔に前記第1の突部及び前記第2の突部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記リテーナ挿入孔は、前記リテーナの進入方向に沿って形成された係止用突条を有し、
前記第1の突部及び前記第2の突部は、前記係止用突条から互いに離れる向きに突出して形成されたことを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第1の脚部は、前記第1の脚部の端部に形成された第1の傾斜部であって、前記リテーナの進入方向に対して第1の角度をなしかつ前記リテーナの進入の過程で前記第1の突部と係合可能な第1の傾斜部を有し、
前記第2の脚部は、前記第2の脚部の端部に形成された第2の傾斜部であって、前記リテーナの進入方向に対して前記第1の角度とは異なる第2の角度をなしかつ前記リテーナの進入の過程で前記第2の突部と係合可能な第2の傾斜部を有することを特徴とする請求項1ないし6に記載のコネクタ。




【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230927(P2012−230927A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−190457(P2012−190457)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2011−38459(P2011−38459)の分割
【原出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511049509)日本デルファイ・オートモーティブ・システムズ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】