説明

コネクタ

【課題】ヒンジ部分を水が溜まり難い構造にすることで、ヒンジ部分の凍結によって蓋が開閉困難になることを防止できるコネクタを提供する。
【解決手段】電気自動車に搭載され、充電ケーブルのコネクタと接続されるコネクタ1は、ハウジング2と、ハウジング2に回転自在に軸支されて該ハウジング2の開口部を開閉する蓋3と、支軸7と、を備えている。蓋3には支軸7が通される軸孔31が設けられた一対の蓋側取付板37が設けられ、ハウジング2には支軸7が通される軸孔24aが設けられかつ一対の蓋側取付板37を互いの間に位置付ける一対のハウジング側取付板24が設けられている。また、一対の蓋側取付板37には、一対のハウジング側取付板24に対向する各面から円筒状に立設し、支軸7が通されるボス39が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電ケーブル等のコネクタと接続される蓋付きのコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7〜11に示すコネクタ201は、従来から電気自動車に用いられているコネクタであり、前記電気自動車のバッテリに充電を行うための充電ケーブルのコネクタ9と接続されるものである(特許文献1を参照。)。
【0003】
このコネクタ201は、ハウジング202と、ハウジング202に回転自在に軸支されて該ハウジング202の開口部221a,222aを開閉する蓋203と、ハウジング202に回転自在に軸支され、開口部221a,222aを覆った状態の蓋203の縁233に引っ掛かることで、蓋203が開口部221a,222aを覆った状態を維持するロック204と、支軸207,208と、を備えている。
【0004】
上記ハウジング202は、合成樹脂で構成されており、ハウジング本体220と、ハウジング本体220の外表面に環状に設けられたフランジ部223と、ハウジング本体220の外表面に互いに間隔をあけて設けられた蓋203を取り付ける一対のハウジング側取付板224と、ハウジング本体220の外表面に互いに間隔をあけて設けられたロック204を取り付ける一対のロック取付板225と、が設けられている。前記一対のハウジング側取付板224には、支軸207が通される軸孔224aが設けられている。また、前記一対のロック取付板225には、支軸208が通される軸孔が設けられている。
【0005】
上記ハウジング本体220には、複数の端子用キャビティ222と、上記充電ケーブルのコネクタ9のフード部を受け入れるハウジング用キャビティ221と、が設けられている。端子用キャビティ222は、充電ケーブルのコネクタ9との嵌合方向に延びており、ハウジング本体220の上端及び下端に開口部222a,222bが形成されている。下側の開口部222bからは電線付き端子(不図示)が挿入され、上側の開口部222aからは充電ケーブルのコネクタ9の端子(不図示)が挿入される。これら電線付き端子と充電ケーブルのコネクタ9の端子とは、端子用キャビティ222内で嵌合する。
【0006】
上記蓋203は、合成樹脂で構成されており、ハウジング本体220の上端に重ねられる板部232と、板部232の外縁に設けられた縁233と、板部232の外縁でかつ前記縁233と反対側に設けられた基部230と、が設けられている。前記基部230は、図8に示すように、板部232の外縁から延長された延長部236と、延長部236から立設し、互いに対向する一対の蓋側取付板237,238と、で構成されている。これら一対の蓋側取付板237,238には、支軸207が通される軸孔237a,238aが設けられている。
【0007】
また、一対の蓋側取付板237,238がハウジング202の一対のハウジング側取付板224間に位置付けられて、一対の蓋側取付板237,238の軸孔237a,238a及び一対のハウジング側取付板224の軸孔224aに支軸207が通されることにより、蓋203がハウジング202に回転自在に軸支される。また、蓋203は、ハウジング202に充電ケーブルのコネクタ9が差し込まれる際は開口部221a,222aを開放し、充電時以外は開口部221a,222aを覆ってハウジング202内に水や埃が入ることを防止する。
【0008】
上記ロック204は、合成樹脂で構成されており、支軸208が通される軸孔241が設けられている。このロック204は、ハウジング202の一対のロック取付板225間に位置付けられて、軸孔241及び一対のロック取付板225の軸孔に支軸208が通されることにより、ハウジング202に回転自在に軸支される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−216882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のコネクタ201においては、以下に示す問題があった。すなわち、コネクタ201は、蓋203にガタを生じさせないようにするために、図11に示すように、互いに対向する各ハウジング側取付板224と各蓋側取付板237,238との間隔をできる限り詰めている。それ故に、各ハウジング側取付板224と各蓋側取付板237,238との間の微小な隙間S2に、表面張力によって結露水や雨水等の水分が溜まり易く、この水分が低温時に凍結して蓋203の開閉が困難になることがあるという問題があった。
【0011】
なお、上述した水分が溜まることを防止するために、各ハウジング側取付板224と各蓋側取付板237,238との間隔を大きくしてしまうと、ガタが大きくなって蓋203が正常に機能しないという問題があった。さらに、上述した隙間S2に溜まる水分量を減らすために、一対のハウジング側取付板224または一対の蓋側取付板237,238の全体の大きさを小さくしてしまうと、この部分の強度が低下してしまうという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、ヒンジ部分を水が溜まり難い構造にすることで、ヒンジ部分の凍結によって蓋が開閉困難になることを防止できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、ハウジングと、前記ハウジングに回転自在に軸支されて該ハウジングの開口部を開閉する蓋と、を備え、前記蓋には支軸が通される軸孔が設けられた一対の蓋側取付板が設けられ、前記ハウジングには前記支軸が通される軸孔が設けられかつ前記一対の蓋側取付板を互いの間に位置付ける一対のハウジング側取付板が設けられたコネクタにおいて、前記一対の蓋側取付板と前記一対のハウジング側取付板とのうちいずれか一方に、他方に対向する各面から円筒状に立設し、前記支軸が通されるボスが設けられていることを特徴とするコネクタである。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記ボスの外周面に凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、前記一対の蓋側取付板と前記一対のハウジング側取付板とのうちいずれか一方に、他方に対向する各面から円筒状に立設し、前記支軸が通されるボスが設けられているので、互いに対向する各蓋側取付板と各ハウジング側取付板との間の微小な隙間を形成する部分の面積を小さくすることができ、前記微小な隙間に溜まる水分量を減らすことができる。よって、前記微小な隙間に溜まった水分が凍結した場合でも、その氷の量はわずかであるので、該氷を容易にせん断することができる。したがって、ヒンジ部分の凍結によって蓋が開閉困難になることを防止できる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、前記ボスの外周面に凹凸が形成されているので、互いに対向する各蓋側取付板と各ハウジング側取付板との間に氷が生じた場合に、蓋を回動させることにより前記氷に作用するせん断応力を大きくすることができ、該氷を容易にせん断することができる。したがって、ヒンジ部分の凍結によって蓋が開閉困難になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるコネクタを示す平面図である。
【図2】図1に示されたコネクタの蓋を示す斜視図である。
【図3】図1中のC−C線に沿った断面図である。
【図4】図3に示されたコネクタの蓋がハウジングの開口部を覆った状態を示す断面図である。
【図5】図1中のD−D線に沿った断面図である。
【図6】図2に示された蓋の変形例を示す斜視図である。
【図7】従来のコネクタを示す平面図である。
【図8】図7に示されたコネクタの蓋を示す斜視図である。
【図9】図7中のF−F線に沿った断面図である。
【図10】図9に示されたコネクタの蓋がハウジングの開口部を覆った状態を示す断面図である。
【図11】図7中のG−G線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態にかかる「コネクタ」を、図1〜5を参照して説明する。
【0019】
図1,3,4に示すコネクタ1は、電気自動車に搭載されるコネクタであり、前記電気自動車のバッテリに充電を行うための充電ケーブルのコネクタ9(図3を参照。)と接続されるものである。このコネクタ1は、ハウジング2と、ハウジング2に回転自在に軸支されて該ハウジング2の開口部21a,22aを開閉する蓋3と、蓋3を開口部21a,22aから離れる側に付勢するバネ5と、ハウジング2に回転自在に軸支され、開口部21a,22aを覆った状態の蓋3の縁33に引っ掛かることで、蓋3が開口部21a,22aを覆った状態を維持するロック4と、ロック4を開口部21a,22aに近付く側に付勢するバネ6と、支軸7,8と、を備えている。
【0020】
上記ハウジング2は、合成樹脂で構成されており、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の外表面に環状に設けられたフランジ部23と、ハウジング本体20の外表面に互いに間隔をあけて設けられた蓋3を取り付ける一対のハウジング側取付板24と、ハウジング本体20の外表面に互いに間隔をあけて設けられたロック4を取り付ける一対のロック取付板25と、が設けられている。
【0021】
上記ハウジング本体20には、複数の端子用キャビティ22と、上記充電ケーブルのコネクタ9を受け入れるハウジング用キャビティ21と、が設けられている。前記端子用キャビティ22は、充電ケーブルのコネクタ9との嵌合方向(図3中の矢印E)に延びており、ハウジング本体20の上端及び下端に開口部22a,22bが形成されている。下端の開口部22bからは電線付き端子(不図示)が挿入され、上端の開口部22aからは充電ケーブルのコネクタ9の端子(不図示)が挿入される。これら電線付き端子と充電ケーブルのコネクタ9の端子とは、端子用キャビティ22内で嵌合する。前記ハウジング用キャビティ21は、ハウジング本体20の上端から凹に形成されているとともに複数の端子用キャビティ22を囲むように環状に形成されている。ハウジング用キャビティ21には、充電ケーブルのコネクタ9のフード部(不図示)が挿入される。
【0022】
また、端子用キャビティ22の上端の開口部22aとハウジング用キャビティ21の開口部21aとは、特許請求の範囲に記載した「開口部」に相当する。すなわち蓋3は、ハウジング2に充電ケーブルのコネクタ9が差し込まれる際は開口部21a,22aを開放し、充電時以外は開口部21a,22aを覆ってハウジング2内に水や埃が入ることを防止する。
【0023】
上記一対のハウジング側取付板24には、支軸7が通される軸孔24a(図5を参照。)が設けられている。また、上記一対のロック取付板25には、支軸8が通される軸孔が設けられている。これら一対のハウジング側取付板24と一対のロック取付板25とは、ハウジング本体20の中心を挟んで互いに180°反対側の位置に配置されている。
【0024】
上記蓋3は、合成樹脂で構成されており、図2,4に示すように、ハウジング本体20の上端に重ねられる板部32と、板部32の外縁に設けられた縁33と、板部32の外縁でかつ前記縁33と反対側に設けられた基部30と、が設けられている。前記縁33は、図4に示すように、ハウジング本体20の外壁の外側に位置付けられる。この縁33には、前述したようにロック4が引っ掛けられる。
【0025】
上記基部30は、図2に示すように、板部32の外縁から延長された延長部36と、延長部36から立設し、互いに対向する一対の蓋側取付板37と、で構成されている。前記一対の蓋側取付板37には、支軸7が通される軸孔31が設けられている。
【0026】
このような蓋3は、一対の蓋側取付板37がハウジング2の一対のハウジング側取付板24間に位置付けられて、一対の蓋側取付板37の軸孔31及び一対のハウジング側取付板24の軸孔24aに支軸7が通されることにより、ハウジング2に回転自在に軸支される。また、図3中の矢印ABは、蓋3の回動方向を示している。
【0027】
さらに、図2,5に示すように、一対の蓋側取付板37には、一対のハウジング側取付板24に対向する各面から円筒状に立設し、支軸7が通されるボス39が設けられている。このボス39は、軸孔31と同軸位置に設けられている。また、ボス39の内径は、軸孔31と等しい寸法とされている。また、図5中のS1は、互いに対向する各ボス39と各ハウジング側取付板24との間の微小な隙間を表している。このように本発明のコネクタ1においては、蓋3にガタを生じさせないようにするために、互いに対向する各ハウジング側取付板24と各蓋側取付板37との間隔を、ボス39を用いてできる限り詰めている。
【0028】
上記バネ5は、針金が塑性変形されて形成されており、螺旋状に複数回巻かれ、内側に支軸7が通される螺旋部と、螺旋部の一端に設けられ基部30に取り付けられる基部側取付部と、螺旋部の他端に設けられハウジング2に取り付けられるハウジング側取付部と、で構成されている。また、バネ5は、蓋3を図3の矢印B方向に付勢する。
【0029】
上記ロック4は、合成樹脂で構成されており、支軸8が通される軸孔41が設けられた基部40と、基部40から突出し、開口部21a,22aを覆った状態の蓋3の外表面側に位置付けられる押さえ爪42と、基部40から突出し、押さえ爪42よりも軸孔41側に配置された突出部43と、が設けられている。ロック4は、基部40がハウジング2の一対のロック取付板25間に位置付けられて、基部40の軸孔41及び一対のロック取付板25の軸孔に支軸8が通されることにより、ハウジング2に回転自在に軸支される。また、図3中の矢印CDは、ロック4の回動方向を示している。このようなロック4は、図4に示すように、開口部21a,22aを覆った状態の蓋3の縁33を押さえ爪42と突出部43との間に位置付けるようにして縁33に引っ掛かる。
【0030】
上記バネ6は、針金が塑性変形されて形成されており、螺旋状に複数回巻かれ、内側に支軸8が通される螺旋部と、螺旋部の一端に設けられ基部40に取り付けられる基部側取付部と、螺旋部の他端に設けられハウジング2に取り付けられるハウジング側取付部と、で構成されている。また、バネ6は、ロック4を図3の矢印C方向に付勢する。
【0031】
次に、上記コネクタ1の蓋3の開閉操作を説明する。開いた蓋3を閉じる際は、ロック4をバネ6の付勢力に抗して図3の矢印D方向に回動させた状態で、蓋3をバネ5の付勢力に抗して図3の矢印A方向に回動させ、ロック4を放して該ロック4を蓋3の縁33に引っ掛ける。また、閉じた蓋3を開く際は、ロック4をバネ6の付勢力に抗して図3の矢印D方向に回動させる。すなわちロック4を解除する。すると、バネ5の付勢力によって蓋3が自動で図3の矢印B方向に開く。
【0032】
また、図7〜11を参照して説明したように、従来のコネクタ201においては、各ハウジング側取付板224と各蓋側取付板237,238との間の微小な隙間S2に、表面張力によって結露水や雨水等の水分が溜まり易く、この水分が低温時に凍結して蓋203の開閉が困難になることがあるという問題があった。しかし、上述した本発明のコネクタ1においては、一対の蓋側取付板37に、ハウジング側取付板24に対向する各面から立設したボス39が設けられているので、互いに対向する各蓋側取付板37と各ハウジング側取付板24との間の微小な隙間S1を形成する部分の面積を従来のコネクタ201よりも小さくすることができ、前記微小な隙間S1に溜まる水分量を減らすことができる。よって、前記微小な隙間S1に溜まった水分が凍結した場合でも、その氷の量はわずかであるので、該氷を容易にせん断することができる。したがって、ヒンジ部分の凍結によって蓋3が開閉困難になることを防止できる。また、前記「ヒンジ部分」とは、一対のハウジング側取付板24と、基部30と、支軸7と、で構成される部分を意味する。
【0033】
また、上述した実施形態では、一対の蓋側取付板37に、ハウジング側取付板24に対向する各面から立設したボス39が設けられている例を説明したが、本発明では、一対のハウジング側取付板24に、蓋側取付板37に対向する各面から立設した「ボス」が設けられていても良い。
【0034】
また、本発明では、図6に示すように、ボス39の外周面に複数の突起39aが設けられていても良く、図示はしないがボス39の外周面に複数の凹部が設けられていても良い。すなわち、ボス39の外周面に凹凸が形成されていても良い。このようにボス39の外周面に凹凸を形成することにより、互いに対向する各蓋側取付板37と各ハウジング側取付板24との間に氷が生じた場合に、蓋3を回動させることにより前記氷に作用するせん断応力を大きくすることができ、該氷を容易にせん断することができる。
【0035】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 蓋
7 支軸
24 ハウジング側取付板
24a 軸孔
31 軸孔
37 蓋側取付板
39 ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに回転自在に軸支されて該ハウジングの開口部を開閉する蓋と、を備え、前記蓋には支軸が通される軸孔が設けられた一対の蓋側取付板が設けられ、前記ハウジングには前記支軸が通される軸孔が設けられかつ前記一対の蓋側取付板を互いの間に位置付ける一対のハウジング側取付板が設けられたコネクタにおいて、
前記一対の蓋側取付板と前記一対のハウジング側取付板とのうちいずれか一方に、他方に対向する各面から円筒状に立設し、前記支軸が通されるボスが設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ボスの外周面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−252859(P2012−252859A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124052(P2011−124052)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】