コネクタ
【課題】コネクタハウジングに対する電線の保持力を向上させる。
【解決手段】コネクタハウジング11の内部に電線40が保持固定されたコネクタ10であって、コネクタハウジング11を貫通して設けられた電線収容孔12と、電線収容孔12の内面に設けられた係止凹部23と、電線40の外被覆43に食い込むようにかしめ付けられるかしめ片44と、電線収容孔12の内面とかしめ片44との間に配されかしめ片44に後方から係止する固定部51と、固定部51に弾性変形可能に設けられ、前方から係止凹部23に係止するロック片52とを備えて構成されている。
【解決手段】コネクタハウジング11の内部に電線40が保持固定されたコネクタ10であって、コネクタハウジング11を貫通して設けられた電線収容孔12と、電線収容孔12の内面に設けられた係止凹部23と、電線40の外被覆43に食い込むようにかしめ付けられるかしめ片44と、電線収容孔12の内面とかしめ片44との間に配されかしめ片44に後方から係止する固定部51と、固定部51に弾性変形可能に設けられ、前方から係止凹部23に係止するロック片52とを備えて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コネクタハウジングの内部に電線が固定されたコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、電線の外被覆に固定される合成樹脂製のリテーナと、このリテーナを収容可能な電線収容孔が形成されたコネクタハウジングとを備えて構成されている。
【0003】
リテーナは、リテーナの内面に設けられた一対の保持突起を電線の外被覆に食い込ませることで電線に固定される一方、リテーナの外面に設けられた抜け止め凹部と電線収容孔内に設けられた抜け止め突部とを係止させることで、電線収容孔から抜け止めされる。このように、電線に固定されたリテーナがコネクタハウジングに保持されることで、コネクタハウジング対して電線が固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−225371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のコネクタでは、電線の外被覆に対して一対の保持突起を食い込ませることで、リテーナを電線に固定しているので、電線に対するリテーナの保持力が低い。また、合成樹脂製の外被覆に合成樹脂製の保持突起を食い込ませているので、外被覆に対して保持突起が滑りやすくなっている。
【0006】
また、リテーナをコネクタハウジングに係止させるには、抜け止め突部と抜け止め凹部とを無理に嵌め合う、いわゆる無理嵌めをすることになり、抜け止め突部が潰れることを防ぐには、係止代を小さくする必要がある。
【0007】
このように、上記のコネクタによると、電線に対するリテーナの保持力及びコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が低く、電線が抜け方向に強く引っ張られるとコネクタハウジングから電線が引き抜かれてしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、コネクタハウジングの内部に電線が保持固定されたコネクタであって、前記コネクタハウジングの内部を前後方向に貫通して設けられた電線収容孔と、前記電線収容孔の内面に設けられた係止部と、前記電線の外被覆に食い込むようにかしめ付けられる金属製のかしめ部材と、前記電線収容孔の内面と前記かしめ部材との間に配され、前記かしめ部材に保持固定される固定部と、前記固定部に前記電線側へ弾性変形可能に設けられ、前記電線を後方から前記電線収容孔に挿入する際に前記電線収容孔の内面に押圧されることで前記電線側に弾性変形し、前記電線が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前方から前記係止部に係止するロック片とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0010】
このような構成のコネクタによると、電線の外被覆に強固にかしめ付けられた金属製のかしめ部材に固定部を保持固定させているので、従来のように電線の外被覆に合成樹脂製の突起を食い込ませることで固定部を電線に係止させるよりも、電線に対する固定部の保持力を向上させることができる。これにより、固定部が電線に対して前後方向に位置ずれすることを確実に規制することができる。
また、固定部に設けられたロック片を電線収容孔の係止部に前方から係止させることで、固定部が電線収容孔から後方へ抜けることを規制することができる。これにより、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを規制することができる。
また、ロック片が電線の挿入過程において弾性変形し、弾性復帰することで電線収容孔の係止部に前方から係止するので、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めする場合に比べて、係止部とロック片との係止代を小さくする必要がない。また、ロック片が潰れることで、係止代が小さくなることを防止することができる。これにより、ロック片が前方から係止部に係止する係止代を大きくすることができ、係止部とロック片との係止力を向上させることができる。
すなわち、電線に対する固定部の保持力を向上させ、かつ、コネクタハウジングに対する固定部の後方への係止力を向上させることができるので、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを確実に規制することができる。
【0011】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記固定部には、前記かしめ部材を収容することで前記かしめ部材と前後方向に係止可能な収容溝が形成されており、前記係止部は、前記電線収容孔の軸線方向と交差する方向に凹んで形成されており、前記ロック片の先端には、前記電線から離れる方向に突出して、前記係止部に前方から係止可能なロック爪が形成されており、前記電線収容孔の内面には、前記固定部が後方から当接する前止まり部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、かしめ部材に対して固定部を前後方向に係止させて固定部をかしめ部材に保持固定すると共に、ロック片を前方から係止部に係止させ、且つ、固定部が前止まり部に当接して前止まりされるので、固定部を電線収容孔内において前後方向に移動することなく保持することができる。これにより、コネクタハウジングの電線収容孔内に電線を確実に保持固定することができる。
【0012】
前記固定部は、複数の分割体によって前記かしめ部を全周に亘って包囲するように形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、電線の端末に端子金具を接続した後にかしめ部材をかしめ付け、複数の分割体を装着することで、固定部を装着することができるので、固定部を電線に先通しする必要がなく、作業効率を良くすることができる。
【0013】
前記複数の分割体は、同一形状をなしている構成としてもよい。
このような構成によると、一種類の分割体によって固定部を構成することができるので、形状の異なる複数の分割体によって固定部を構成する場合に比べて、分割体の製造コストを低減することができる。また、分割体の部品管理を容易にすることができる。
【0014】
前記係止部は、前記電線収容孔の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んでいる構成としてもよい。
係止部が例えば電線収容孔の前後方向中央付近に設けられている場合には、メンテナンスなどでコネクタハウジングから電線を離脱させる際に、電線収容孔の中央付近まで治具などを差し込むなどして、ロック片を弾性変形させてロック片と係止部との係止状態を解除することになる。それに対して、このような構成によると、係止部が電線収容孔の開口縁部において前方に臨んだ形態となっているので、治具などを電線収容孔の奥部に差し込むことなく前方からロック片を弾性変形させて、ロック片と係止部との係止状態を容易に解除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コネクタハウジングに対する電線の保持力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コネクタの斜視図
【図2】コネクタの平面図
【図3】コネクタの側面図
【図4】コネクタの底面図
【図5】コネクタの正面図
【図6】図5のVI−VI線断面図
【図7】図2のVII−VII線断面図
【図8】図6の要部拡大断面図
【図9】電線に固定部が装着された状態を示した斜視図
【図10】電線に固定部が装着された状態を示した平面図
【図11】電線に固定部が装着された状態を示した側面図
【図12】電線に固定部を装着する前の状態を示した斜視図
【図13】コネクタハウジングの背面図
【図14】コネクタハウジングに電線が上下逆に挿入されて、ワイヤバレルと誤組防止部とが当接した状態を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図14を参照して説明する。
本実施形態におけるコネクタ10は、例えばインバータ装置等の機器のケースに設けられた図示しない取付孔に嵌合されるものであって、バッテリなどの電源供給装置からインバータ装置に電力を供給する複数の電線40の途中に接続されている。また、このコネクタ10は、電線40をコネクタハウジング11に貫通させることで、電線40の端末に接続された端子金具41が遊動可能とされており、ケース内に設けられた図示しない端子台に対して端子金具41が容易にアライニングできるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは図3における上下方向を基準とし、前後方向とは、図3における右側を前方、左側を後方とし、左右方向とは図5における左右方向を基準とする。
【0018】
コネクタ10は、図1に示すように、アルミダイキャスト製のコネクタハウジング11を備えている。コネクタハウジング11の内部には、図1及び図6に示すように、複数の電線収容孔12が左右方向に並んで形成されている。各電線収容孔12は、前後方向に貫通して形成されており、各電線収容孔12には、電線40が前後方向に貫通した状態で個別に収容されている。
【0019】
電線40は、図9及び図10に示すように、複数の金属素線からなる芯線42と、この芯線42を覆う合成樹脂製の外被覆43とを備えて構成されており、電線40の端末には端子金具41が接続されている。
【0020】
端子金具41は、プレス加工により打ち抜き加工や折り曲げ加工などを施すことによって形成されている。端子金具41の一端側には、電線40の芯線42をかしめ付けるバレル部41Bが形成されており、他端側には、バレル部41Bの底板から前方に延びる平板状の接続片41Aが形成されている。バレル部41Bは、接続片41Aよりも上側に張り出した形態となっている。また、接続片41には、板厚方向に貫通する長孔形状のボルト孔41Cが形成されている。
【0021】
電線収容孔12の後端開口には、図6及び図7に示すように、弾性材からなるゴム栓13が装着されている。ゴム栓13は軸孔14を有し、この軸孔14には電線40が挿通されている。また、ゴム栓13は、電線40と共に電線収容孔12に挿入され、電線40の外周面と電線収容孔12の内周面とに密着するようになっている。これにより、電線40の外周面と電線収容孔12の内周面との間から電線収容孔12内に水や埃などの異物が浸入することを防止している。
【0022】
ゴム栓13の後方には、ゴム栓13の後方への抜け止めを行うゴム栓押さえ15が装着されている。このゴム栓押さえ15は、左右方向に横長に形成されており、各電線収容孔12に装着されたゴム栓13を一括して後方から抜け止めしている。ゴム栓押さえ15の外周面には、図4に示すように、複数の保持突起16が突設されている。この保持突起16は、電線収容孔12の後端開口部に設けられた係止孔17の内周面に係止することで、ゴム栓押さえ15が後方へ抜けることを規制している。これにより、ゴム栓13は後方へ抜け止めされている。
【0023】
コネクタハウジング11は、図1乃至図3に示すように、前方部分が図示しないケースの取付孔に嵌合される嵌合部18とされており、後方部分がシェル取付部19とされている。
【0024】
嵌合部18の外面には、弾性材からなる環状のゴムリング20が装着されている。このゴムリング20は、コネクタ10をケースの取付孔に嵌合させた際に、取付孔からケース内に水や埃などの異物が浸入することを防止している。
【0025】
シェル取付部19には、図1及び図7に示すように、後方からシールドシェル21が装着されるようになっている。このシールドシェル21は、シェル取付部19の上面に設けられた図示しないボルト締結孔にボルトBを締結することで装着されている。
シェル取付部19の左右方向両端部には、一対の固定片22が形成されている。この固定片22は、シェル取付部19の左右方向両端部から左右方向に張り出すように設けられている。固定片22には、上下方向に貫通するボルト挿通孔22Aが形成されており、このボルト挿通孔22Aに図示しないボルトを挿通させて、ケースに締め込むことで、コネクタハウジング11をケースに固定することができるようになっている。
【0026】
さて、電線40は、図6乃至図8に示すように、電線40と電線収容孔12の内面との間に配されたターミナルロック50によって電線収容孔12内に保持固定されている。
以下に、電線40をターミナルロック50によってコネクタハウジング11に保持固定する構造について説明する。
【0027】
電線40の外被覆43には、金属製のかしめ片(本発明の「かしめ部材」の一例)44がかしめ付けられ、更にその外周にターミナルロック50が装着されている。
かしめ片44は、図12に示すように、略矩形状の金属板の側縁を対向させるように電線40に回曲することで、円筒状に形成されている。また、かしめ片44は、図8に示すように、かしめ片44の前端部及び後端部における内周角部44Aが電線40の外被覆43に食い込むと共に、かしめ片44の前端部及び後端部における外周角部44Bが外被覆43から外側に僅かに突出するようにかしめ付けられている。これにより、かしめ片44は、外被覆に合成樹脂製の保持突起を食い込ませる場合に比べて、外被覆に強固に固定された状態となっている。また、かしめ片44の前端面45は、電線40の軸線方向と直交して、且つ、前方に臨んだ面とされ、かしめ片44の後端面46は、電線40の軸線方向と直交して、且つ、後方に臨んだ面とされている。
【0028】
ターミナルロック50は、図6及び図8に示すように、円環状の固定部51と、固定部51と一体に設けられた一対のロック片52とを備えている。
固定部51は、かしめ片44を全周に亘って包囲するように形成されており、固定部51の外径寸法は、図6に示すように、電線収容孔12の左右方向の寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。
また、ターミナルロック50は、図9及び図12に示すように、一対の半割体(本発明の「分割体」の一例)53を互いに組み付けることで構成されており、各半割体53にロック片52が一つずつ形成されている。
【0029】
両半割体53は、同一形状をなし、かしめ片44を全周に亘って包囲するように、電線40の両側から組み付けられている。すなわち、ターミナルロック50は、一種類の半割体53によって構成されている。したがって、形状の異なる複数の半割体によってターミナルロック50を構成する場合に比べて、半割体53の製造コストを低減すると共に、半割体53の部品管理を容易にすることができる。また、電線40の端末に端子金具41を接続した後にかしめ片44をかしめ付け、両半割体53を装着することで、ターミナルロック50を電線40に装着することができるので、ターミナルロック50を電線40に先通しする必要がなく、作業効率を良くすることができる。
【0030】
固定部51の内側には、図8に示すように、収容溝54が形成されている。この収容溝54の内部には、電線40の外被覆43から突出したかしめ片44が収容可能とされており、収容溝54の前側の内面は、かしめ片44の前端面45と係止可能とされ、収容溝54における後側の内面は、かしめ片44の後端面46と係止可能とされている。
【0031】
したがって、固定部51は、収容溝54内にかしめ片44が収容された状態において、収容溝54の前側の内面がかしめ片44の前端面45に前方から係止することで、電線40に対して後方に移動できないように規制され、かつ、収容溝54の後側の内面がかしめ片44の後端面46に後方から係止することで、電線40に対して前方に移動できないように規制される。これにより、固定部51を電線40に対して前後方向に移動できないように保持固定することができる。ひいては、ターミナルロック50を電線40に対して前後方向に移動できないように保持固定することができる。
【0032】
半割体53の合わせ部分には、図10及び図12に示すように、一方に保持突起55が設けられ、他方に係止孔56Aが設けられた係止片56が設けられている。保持突起55は、両半割体53を互いに組み付けた状態において、相手側の係止孔56Aに収容されて係止片56と係止する。これにより、両半割体53を組み付けた状態に保持できるようになっている。
【0033】
ロック片52は、固定部51の前端面における外周縁部から前方に突出して形成されている。また、ロック片52は、半割体53の円弧状の外周縁部における中央部分に配されており、電線40とロック片52との間に設けられた撓み空間Sに弾性変形可能とされている。すなわち、ロック片52は電線40を中心に両側に一対配され、電線40側に向かって弾性変形可能とされている。
【0034】
ロック片52の前端部には、図8及び図10に示すように、ロック爪57が形成されている。このロック爪57は、電線40の軸線と直交すようにして電線40とは反対側に突出して形成されている。また、ロック爪57は、前端から後方に向かって電線40から離れる方向に傾斜して延び、その後端からロック爪57の外面と平行に後方に向かって僅かに延びて、さらにその後端からロック片52の外面に向かって延びた形態をなしている。また、ロック爪57における前側の傾斜した面は傾斜面57Aとされ、ロック爪57における後側の面は、係止面57Bとされている。また、図8に示すように、両ロック爪57の突出端間の寸法aは、電線収容孔12の左右方向の寸法bよりも大きく設定されている。一方、電線収容孔12の前端開口部における左右方向両端には、係止凹部(本発明の「係止部」の一例)23が形成されている。この係止凹部23は、電線収容孔12の軸線と直交する左右方向に凹んで、且つ、前方に臨んだ形態とされている。
【0035】
係止凹部23の内部には、図8に示すように、ロック片52のロック爪57が収容可能とされている。また、係止凹部23の後面23Aは、電線収容孔12の軸線と直交した面とされており、係止凹部23内にロック爪57が収容された状態において、ロック爪57の係止面57Bが前方から係止可能とされている。これにより、ロック爪57は、係止凹部23に対して前方から係止し、ターミナルロック50を電線収容孔12から後方へ抜け止めすることができる。
【0036】
また、電線収容孔12の内周面における上側及び下側には、図13に示すように、内側に向かって張り出す前止まり部24が形成されている。この前止まり部24には、固定部51の前端面における上端部及び下端部が後方から当接可能とされており、図7に示すように、電線収容孔12内において電線40が正規の位置まで挿入されると、固定部51の前端面が前止まり部24と当接して固定部51が前止まりされるようになっている。
【0037】
すなわち、ターミナルロック50は、固定部51を電線40にかしめ付けたかしめ片44に前後方向に係止させることで、電線40に対して前後方向に位置ずれしないように保持固定され、かつ、ロック片52を係止凹部23に前方から係止させると共に、固定部51を前止まり部24に後方から当接させることで、電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めされている。これにより、電線収容孔12内に電線40を確実に保持固定することができるようになっている。
【0038】
また、下側に配された前止まり部24は、図13に示すように、上側に配された前止まり部24に比べて、左右方向両端部が更に内側へ張り出した形状をなしている。これにより、端子金具41を上下反転させて、バレル部41Bが接続片41Aよりも下側に張り出した反転姿勢で、電線収容孔12に端子金具41を挿入しようとしたときには、図14に示すように、端子金具41のバレル部41Bの前端面が下側に配された前止まり部24に後方から突きあたり、端子金具41を反転姿勢で電線収容孔12に挿通することができないようになっている。
【0039】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてコネクタ10の取付手順を説明する。
まず、端子金具41が接続された電線40を用意し、図12に示すように、外被覆43の所定の位置に、かしめ片44の内周角部44Aが外被覆43に食い込むようにかしめ片44を治具等によってかしめ付ける。かしめ片44が固定されたところで、両半割体53を電線40の両側からかしめ片44を覆うように電線40に組み付け、保持突起55と係止片56とを係止させることで、図9及び図10に示すように、電線40にターミナルロック50を装着する。このとき、固定部51の収容溝54にかしめ片44が収容されて、固定部51における収容溝54の前側の内面がかしめ片44の前端面45に前方から係止し、収容溝54の後側の内面がかしめ片44の後端面46に後方から係止することで固定部51が前後方向に係止される。これにより、電線40に対して固定部51が前後方向に移動できないように固定され、ターミナルロック50が電線40に保持固定される。
【0040】
次に、ターミナルロック50が装着された電線40をコネクタハウジング11の電線収容孔12に後方から挿入する。このとき、端子金具41のバレル部41Bが接続片41Aよりも上側に張り出した正規の姿勢で端子金具41を挿入すると共に、ターミナルロック50の両ロック片52が電線40を中心に左右方向両側に配されるようにしてターミナルロック50を挿入する。
ところが、端子金具41が上下反転した反転姿勢(バレル部41Bを接続片41Aよりも下側に張り出した姿勢)で、端子金具41を電線収容孔12に挿入しようとすると、図14に示すように、端子金具41のバレル部41Bの前端面が下側に配された前止まり部24に後方から突きあたり、端子金具41を反転姿勢で電線収容孔12に挿通することを規制できるようになっている。
【0041】
また、この電線40の挿入過程において、ターミナルロック50を電線収容孔12内に挿入する際には、ロック爪57の傾斜面57Aが電線収容孔12の後端開口縁部に当接して、傾斜面57Aが電線収容孔12の左右方向両側の内面によって押圧される。続けて電線40を電線収容孔12に挿入すると、両ロック片52は、両ロック爪57の傾斜面57Aが左右方向両側から押圧されることで電線40側に弾性変形し、ロック爪57が電線収容孔12の内面に乗り上げることで、電線収容孔12に収容される。そして、電線40が正規の挿入位置に至ると、図6及び図8に示すように、両ロック爪57が電線収容孔12の係止凹部23に収容されることで弾性復帰し、ロック爪57の係止面57Bが係止凹部23の後面23Aに後方から係止される。また、図7に示すように、固定部51の前端面が電線収容孔12に形成された前止まり部24に後方から当接する。これにより、固定部51が電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めされ、電線40が電線収容孔12内において確実に保持固定される。
【0042】
最後に、電線40に先通ししておいたゴム栓13を電線収容孔12の後端開口部に挿入してゴム栓押さえ15を装着し、更にその後方からシールドシェル21を取り付けることで、コネクタ10が完成する。
【0043】
以上のように、本実施形態によると、固定部51を電線40にかしめ付けたかしめ片44に前後方向に係止させることで、ターミナルロック50を電線40に対して前後方向に位置ずれしないように固定することができる。また、ロック片52を係止凹部23に前方から係止させると共に、固定部51が前止まり部24によって前止まりされることで、固定部51を電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めすることができる。これにより、電線収容孔12内に電線40を確実に保持固定することができる。
【0044】
また、本実施形態によると、電線40の外被覆43に強固にかしめ付けられた金属製のかしめ片44に固定部51を前後方向に係止させて、固定部51を保持固定することができるので、従来のように電線40の外被覆43に合成樹脂製の突起を食い込ませることで固定部を電線40に固定させるよりも、電線40に対する固定部51の保持力を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態によると、ロック片52が電線40の挿入過程において電線40側に弾性変形し、弾性復帰することで電線収容孔12の係止凹部23に前方から係止するので、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めする場合に比べて、係止凹部23とロック爪57との係止代を小さくする必要がない。また、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めすると、ロック爪が潰れることで係止代が小さくなる虞があるが、本実施形態によると、ロック爪57が潰れることがないので、係止代が小さくなることを防止することができる。これにより、ロック片52が前方から係止凹部23に係止する係止代を大きくすることができ、係止凹部23とロック片52との係止力を向上させることができる。
【0046】
すなわち、本実施形態によると、電線40に対するターミナルロック50の保持力を向上させ、かつ、コネクタハウジング11に対するターミナルロック50の係止力を向上させることができるので、従来のものに比べて、コネクタハウジング11に対する電線40の保持力を向上させることができる。
【0047】
また、電線収容孔12の前後方向中央付近に収容凹部を形成して、ロック片52と係止凹部とを電線収容孔12の前後方向中央付近において係止させる構成も考えられるが、その場合には、メンテナンスなどでコネクタハウジング11から電線40を離脱させる際に、電線収容孔12の中央付近まで治具などを差し込むなどして、ロック片52を弾性変形させ、ロック片52と係止凹部との係止状態を解除することになる。
それに対して、本実施形態によると、係止凹部23は電線収容孔12の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んだ形態となっているので、コネクタハウジング11から電線40を離脱させる際に、治具などを電線収容孔12の奥部に差し込むことなく前方からロック片52を弾性変形させて、ロック片52と係止凹部23との係止状態を容易に解除することができる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線収容孔12の内面に前止まり部24を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子金具41を締結する端子台側において端子金具41を前止まりさせることで、電線収容孔12の内面に前止まり部24を形成しない構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、コネクタハウジング11をアルミダイキャスト製としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、コネクタハウジング11を合成樹脂などによって構成してもよい。
(3)上記実施形態では、ターミナルロック50を一対の半割体53よって構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、3つや4つの分割体によって構成してもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、固定部51の収容溝54にかしめ片44を収容して、固定部51とかしめ片44とを係止させる構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、かしめ片に凹部を形成し、固定部に凹部に係止する凸部を形成することで、固定部とかしめ片とを係止させる構成としてもよい。
(5)上記実施形態では、固定部51に一対のロック片52を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、固定部51に1つや3つ以上のロック片を設ける構成としてもよい。
(6)上記実施形態では、かしめ部材を金属板状のかしめ片44として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、かしめ部材をリング状のかしめリングとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:コネクタ
11:コネクタハウジング
12:電線収容孔
23:係止凹部(係止部)
24:前止まり部
40:電線
44:かしめ片(かしめ部材)
51:固定部
52:ロック片
53:半割体(分割体)
54:収容溝
57:ロック爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コネクタハウジングの内部に電線が固定されたコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、電線の外被覆に固定される合成樹脂製のリテーナと、このリテーナを収容可能な電線収容孔が形成されたコネクタハウジングとを備えて構成されている。
【0003】
リテーナは、リテーナの内面に設けられた一対の保持突起を電線の外被覆に食い込ませることで電線に固定される一方、リテーナの外面に設けられた抜け止め凹部と電線収容孔内に設けられた抜け止め突部とを係止させることで、電線収容孔から抜け止めされる。このように、電線に固定されたリテーナがコネクタハウジングに保持されることで、コネクタハウジング対して電線が固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−225371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のコネクタでは、電線の外被覆に対して一対の保持突起を食い込ませることで、リテーナを電線に固定しているので、電線に対するリテーナの保持力が低い。また、合成樹脂製の外被覆に合成樹脂製の保持突起を食い込ませているので、外被覆に対して保持突起が滑りやすくなっている。
【0006】
また、リテーナをコネクタハウジングに係止させるには、抜け止め突部と抜け止め凹部とを無理に嵌め合う、いわゆる無理嵌めをすることになり、抜け止め突部が潰れることを防ぐには、係止代を小さくする必要がある。
【0007】
このように、上記のコネクタによると、電線に対するリテーナの保持力及びコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が低く、電線が抜け方向に強く引っ張られるとコネクタハウジングから電線が引き抜かれてしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、コネクタハウジングの内部に電線が保持固定されたコネクタであって、前記コネクタハウジングの内部を前後方向に貫通して設けられた電線収容孔と、前記電線収容孔の内面に設けられた係止部と、前記電線の外被覆に食い込むようにかしめ付けられる金属製のかしめ部材と、前記電線収容孔の内面と前記かしめ部材との間に配され、前記かしめ部材に保持固定される固定部と、前記固定部に前記電線側へ弾性変形可能に設けられ、前記電線を後方から前記電線収容孔に挿入する際に前記電線収容孔の内面に押圧されることで前記電線側に弾性変形し、前記電線が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前方から前記係止部に係止するロック片とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0010】
このような構成のコネクタによると、電線の外被覆に強固にかしめ付けられた金属製のかしめ部材に固定部を保持固定させているので、従来のように電線の外被覆に合成樹脂製の突起を食い込ませることで固定部を電線に係止させるよりも、電線に対する固定部の保持力を向上させることができる。これにより、固定部が電線に対して前後方向に位置ずれすることを確実に規制することができる。
また、固定部に設けられたロック片を電線収容孔の係止部に前方から係止させることで、固定部が電線収容孔から後方へ抜けることを規制することができる。これにより、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを規制することができる。
また、ロック片が電線の挿入過程において弾性変形し、弾性復帰することで電線収容孔の係止部に前方から係止するので、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めする場合に比べて、係止部とロック片との係止代を小さくする必要がない。また、ロック片が潰れることで、係止代が小さくなることを防止することができる。これにより、ロック片が前方から係止部に係止する係止代を大きくすることができ、係止部とロック片との係止力を向上させることができる。
すなわち、電線に対する固定部の保持力を向上させ、かつ、コネクタハウジングに対する固定部の後方への係止力を向上させることができるので、コネクタハウジングから電線が引き抜かれることを確実に規制することができる。
【0011】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記固定部には、前記かしめ部材を収容することで前記かしめ部材と前後方向に係止可能な収容溝が形成されており、前記係止部は、前記電線収容孔の軸線方向と交差する方向に凹んで形成されており、前記ロック片の先端には、前記電線から離れる方向に突出して、前記係止部に前方から係止可能なロック爪が形成されており、前記電線収容孔の内面には、前記固定部が後方から当接する前止まり部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、かしめ部材に対して固定部を前後方向に係止させて固定部をかしめ部材に保持固定すると共に、ロック片を前方から係止部に係止させ、且つ、固定部が前止まり部に当接して前止まりされるので、固定部を電線収容孔内において前後方向に移動することなく保持することができる。これにより、コネクタハウジングの電線収容孔内に電線を確実に保持固定することができる。
【0012】
前記固定部は、複数の分割体によって前記かしめ部を全周に亘って包囲するように形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、電線の端末に端子金具を接続した後にかしめ部材をかしめ付け、複数の分割体を装着することで、固定部を装着することができるので、固定部を電線に先通しする必要がなく、作業効率を良くすることができる。
【0013】
前記複数の分割体は、同一形状をなしている構成としてもよい。
このような構成によると、一種類の分割体によって固定部を構成することができるので、形状の異なる複数の分割体によって固定部を構成する場合に比べて、分割体の製造コストを低減することができる。また、分割体の部品管理を容易にすることができる。
【0014】
前記係止部は、前記電線収容孔の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んでいる構成としてもよい。
係止部が例えば電線収容孔の前後方向中央付近に設けられている場合には、メンテナンスなどでコネクタハウジングから電線を離脱させる際に、電線収容孔の中央付近まで治具などを差し込むなどして、ロック片を弾性変形させてロック片と係止部との係止状態を解除することになる。それに対して、このような構成によると、係止部が電線収容孔の開口縁部において前方に臨んだ形態となっているので、治具などを電線収容孔の奥部に差し込むことなく前方からロック片を弾性変形させて、ロック片と係止部との係止状態を容易に解除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コネクタハウジングに対する電線の保持力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コネクタの斜視図
【図2】コネクタの平面図
【図3】コネクタの側面図
【図4】コネクタの底面図
【図5】コネクタの正面図
【図6】図5のVI−VI線断面図
【図7】図2のVII−VII線断面図
【図8】図6の要部拡大断面図
【図9】電線に固定部が装着された状態を示した斜視図
【図10】電線に固定部が装着された状態を示した平面図
【図11】電線に固定部が装着された状態を示した側面図
【図12】電線に固定部を装着する前の状態を示した斜視図
【図13】コネクタハウジングの背面図
【図14】コネクタハウジングに電線が上下逆に挿入されて、ワイヤバレルと誤組防止部とが当接した状態を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図14を参照して説明する。
本実施形態におけるコネクタ10は、例えばインバータ装置等の機器のケースに設けられた図示しない取付孔に嵌合されるものであって、バッテリなどの電源供給装置からインバータ装置に電力を供給する複数の電線40の途中に接続されている。また、このコネクタ10は、電線40をコネクタハウジング11に貫通させることで、電線40の端末に接続された端子金具41が遊動可能とされており、ケース内に設けられた図示しない端子台に対して端子金具41が容易にアライニングできるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは図3における上下方向を基準とし、前後方向とは、図3における右側を前方、左側を後方とし、左右方向とは図5における左右方向を基準とする。
【0018】
コネクタ10は、図1に示すように、アルミダイキャスト製のコネクタハウジング11を備えている。コネクタハウジング11の内部には、図1及び図6に示すように、複数の電線収容孔12が左右方向に並んで形成されている。各電線収容孔12は、前後方向に貫通して形成されており、各電線収容孔12には、電線40が前後方向に貫通した状態で個別に収容されている。
【0019】
電線40は、図9及び図10に示すように、複数の金属素線からなる芯線42と、この芯線42を覆う合成樹脂製の外被覆43とを備えて構成されており、電線40の端末には端子金具41が接続されている。
【0020】
端子金具41は、プレス加工により打ち抜き加工や折り曲げ加工などを施すことによって形成されている。端子金具41の一端側には、電線40の芯線42をかしめ付けるバレル部41Bが形成されており、他端側には、バレル部41Bの底板から前方に延びる平板状の接続片41Aが形成されている。バレル部41Bは、接続片41Aよりも上側に張り出した形態となっている。また、接続片41には、板厚方向に貫通する長孔形状のボルト孔41Cが形成されている。
【0021】
電線収容孔12の後端開口には、図6及び図7に示すように、弾性材からなるゴム栓13が装着されている。ゴム栓13は軸孔14を有し、この軸孔14には電線40が挿通されている。また、ゴム栓13は、電線40と共に電線収容孔12に挿入され、電線40の外周面と電線収容孔12の内周面とに密着するようになっている。これにより、電線40の外周面と電線収容孔12の内周面との間から電線収容孔12内に水や埃などの異物が浸入することを防止している。
【0022】
ゴム栓13の後方には、ゴム栓13の後方への抜け止めを行うゴム栓押さえ15が装着されている。このゴム栓押さえ15は、左右方向に横長に形成されており、各電線収容孔12に装着されたゴム栓13を一括して後方から抜け止めしている。ゴム栓押さえ15の外周面には、図4に示すように、複数の保持突起16が突設されている。この保持突起16は、電線収容孔12の後端開口部に設けられた係止孔17の内周面に係止することで、ゴム栓押さえ15が後方へ抜けることを規制している。これにより、ゴム栓13は後方へ抜け止めされている。
【0023】
コネクタハウジング11は、図1乃至図3に示すように、前方部分が図示しないケースの取付孔に嵌合される嵌合部18とされており、後方部分がシェル取付部19とされている。
【0024】
嵌合部18の外面には、弾性材からなる環状のゴムリング20が装着されている。このゴムリング20は、コネクタ10をケースの取付孔に嵌合させた際に、取付孔からケース内に水や埃などの異物が浸入することを防止している。
【0025】
シェル取付部19には、図1及び図7に示すように、後方からシールドシェル21が装着されるようになっている。このシールドシェル21は、シェル取付部19の上面に設けられた図示しないボルト締結孔にボルトBを締結することで装着されている。
シェル取付部19の左右方向両端部には、一対の固定片22が形成されている。この固定片22は、シェル取付部19の左右方向両端部から左右方向に張り出すように設けられている。固定片22には、上下方向に貫通するボルト挿通孔22Aが形成されており、このボルト挿通孔22Aに図示しないボルトを挿通させて、ケースに締め込むことで、コネクタハウジング11をケースに固定することができるようになっている。
【0026】
さて、電線40は、図6乃至図8に示すように、電線40と電線収容孔12の内面との間に配されたターミナルロック50によって電線収容孔12内に保持固定されている。
以下に、電線40をターミナルロック50によってコネクタハウジング11に保持固定する構造について説明する。
【0027】
電線40の外被覆43には、金属製のかしめ片(本発明の「かしめ部材」の一例)44がかしめ付けられ、更にその外周にターミナルロック50が装着されている。
かしめ片44は、図12に示すように、略矩形状の金属板の側縁を対向させるように電線40に回曲することで、円筒状に形成されている。また、かしめ片44は、図8に示すように、かしめ片44の前端部及び後端部における内周角部44Aが電線40の外被覆43に食い込むと共に、かしめ片44の前端部及び後端部における外周角部44Bが外被覆43から外側に僅かに突出するようにかしめ付けられている。これにより、かしめ片44は、外被覆に合成樹脂製の保持突起を食い込ませる場合に比べて、外被覆に強固に固定された状態となっている。また、かしめ片44の前端面45は、電線40の軸線方向と直交して、且つ、前方に臨んだ面とされ、かしめ片44の後端面46は、電線40の軸線方向と直交して、且つ、後方に臨んだ面とされている。
【0028】
ターミナルロック50は、図6及び図8に示すように、円環状の固定部51と、固定部51と一体に設けられた一対のロック片52とを備えている。
固定部51は、かしめ片44を全周に亘って包囲するように形成されており、固定部51の外径寸法は、図6に示すように、電線収容孔12の左右方向の寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。
また、ターミナルロック50は、図9及び図12に示すように、一対の半割体(本発明の「分割体」の一例)53を互いに組み付けることで構成されており、各半割体53にロック片52が一つずつ形成されている。
【0029】
両半割体53は、同一形状をなし、かしめ片44を全周に亘って包囲するように、電線40の両側から組み付けられている。すなわち、ターミナルロック50は、一種類の半割体53によって構成されている。したがって、形状の異なる複数の半割体によってターミナルロック50を構成する場合に比べて、半割体53の製造コストを低減すると共に、半割体53の部品管理を容易にすることができる。また、電線40の端末に端子金具41を接続した後にかしめ片44をかしめ付け、両半割体53を装着することで、ターミナルロック50を電線40に装着することができるので、ターミナルロック50を電線40に先通しする必要がなく、作業効率を良くすることができる。
【0030】
固定部51の内側には、図8に示すように、収容溝54が形成されている。この収容溝54の内部には、電線40の外被覆43から突出したかしめ片44が収容可能とされており、収容溝54の前側の内面は、かしめ片44の前端面45と係止可能とされ、収容溝54における後側の内面は、かしめ片44の後端面46と係止可能とされている。
【0031】
したがって、固定部51は、収容溝54内にかしめ片44が収容された状態において、収容溝54の前側の内面がかしめ片44の前端面45に前方から係止することで、電線40に対して後方に移動できないように規制され、かつ、収容溝54の後側の内面がかしめ片44の後端面46に後方から係止することで、電線40に対して前方に移動できないように規制される。これにより、固定部51を電線40に対して前後方向に移動できないように保持固定することができる。ひいては、ターミナルロック50を電線40に対して前後方向に移動できないように保持固定することができる。
【0032】
半割体53の合わせ部分には、図10及び図12に示すように、一方に保持突起55が設けられ、他方に係止孔56Aが設けられた係止片56が設けられている。保持突起55は、両半割体53を互いに組み付けた状態において、相手側の係止孔56Aに収容されて係止片56と係止する。これにより、両半割体53を組み付けた状態に保持できるようになっている。
【0033】
ロック片52は、固定部51の前端面における外周縁部から前方に突出して形成されている。また、ロック片52は、半割体53の円弧状の外周縁部における中央部分に配されており、電線40とロック片52との間に設けられた撓み空間Sに弾性変形可能とされている。すなわち、ロック片52は電線40を中心に両側に一対配され、電線40側に向かって弾性変形可能とされている。
【0034】
ロック片52の前端部には、図8及び図10に示すように、ロック爪57が形成されている。このロック爪57は、電線40の軸線と直交すようにして電線40とは反対側に突出して形成されている。また、ロック爪57は、前端から後方に向かって電線40から離れる方向に傾斜して延び、その後端からロック爪57の外面と平行に後方に向かって僅かに延びて、さらにその後端からロック片52の外面に向かって延びた形態をなしている。また、ロック爪57における前側の傾斜した面は傾斜面57Aとされ、ロック爪57における後側の面は、係止面57Bとされている。また、図8に示すように、両ロック爪57の突出端間の寸法aは、電線収容孔12の左右方向の寸法bよりも大きく設定されている。一方、電線収容孔12の前端開口部における左右方向両端には、係止凹部(本発明の「係止部」の一例)23が形成されている。この係止凹部23は、電線収容孔12の軸線と直交する左右方向に凹んで、且つ、前方に臨んだ形態とされている。
【0035】
係止凹部23の内部には、図8に示すように、ロック片52のロック爪57が収容可能とされている。また、係止凹部23の後面23Aは、電線収容孔12の軸線と直交した面とされており、係止凹部23内にロック爪57が収容された状態において、ロック爪57の係止面57Bが前方から係止可能とされている。これにより、ロック爪57は、係止凹部23に対して前方から係止し、ターミナルロック50を電線収容孔12から後方へ抜け止めすることができる。
【0036】
また、電線収容孔12の内周面における上側及び下側には、図13に示すように、内側に向かって張り出す前止まり部24が形成されている。この前止まり部24には、固定部51の前端面における上端部及び下端部が後方から当接可能とされており、図7に示すように、電線収容孔12内において電線40が正規の位置まで挿入されると、固定部51の前端面が前止まり部24と当接して固定部51が前止まりされるようになっている。
【0037】
すなわち、ターミナルロック50は、固定部51を電線40にかしめ付けたかしめ片44に前後方向に係止させることで、電線40に対して前後方向に位置ずれしないように保持固定され、かつ、ロック片52を係止凹部23に前方から係止させると共に、固定部51を前止まり部24に後方から当接させることで、電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めされている。これにより、電線収容孔12内に電線40を確実に保持固定することができるようになっている。
【0038】
また、下側に配された前止まり部24は、図13に示すように、上側に配された前止まり部24に比べて、左右方向両端部が更に内側へ張り出した形状をなしている。これにより、端子金具41を上下反転させて、バレル部41Bが接続片41Aよりも下側に張り出した反転姿勢で、電線収容孔12に端子金具41を挿入しようとしたときには、図14に示すように、端子金具41のバレル部41Bの前端面が下側に配された前止まり部24に後方から突きあたり、端子金具41を反転姿勢で電線収容孔12に挿通することができないようになっている。
【0039】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてコネクタ10の取付手順を説明する。
まず、端子金具41が接続された電線40を用意し、図12に示すように、外被覆43の所定の位置に、かしめ片44の内周角部44Aが外被覆43に食い込むようにかしめ片44を治具等によってかしめ付ける。かしめ片44が固定されたところで、両半割体53を電線40の両側からかしめ片44を覆うように電線40に組み付け、保持突起55と係止片56とを係止させることで、図9及び図10に示すように、電線40にターミナルロック50を装着する。このとき、固定部51の収容溝54にかしめ片44が収容されて、固定部51における収容溝54の前側の内面がかしめ片44の前端面45に前方から係止し、収容溝54の後側の内面がかしめ片44の後端面46に後方から係止することで固定部51が前後方向に係止される。これにより、電線40に対して固定部51が前後方向に移動できないように固定され、ターミナルロック50が電線40に保持固定される。
【0040】
次に、ターミナルロック50が装着された電線40をコネクタハウジング11の電線収容孔12に後方から挿入する。このとき、端子金具41のバレル部41Bが接続片41Aよりも上側に張り出した正規の姿勢で端子金具41を挿入すると共に、ターミナルロック50の両ロック片52が電線40を中心に左右方向両側に配されるようにしてターミナルロック50を挿入する。
ところが、端子金具41が上下反転した反転姿勢(バレル部41Bを接続片41Aよりも下側に張り出した姿勢)で、端子金具41を電線収容孔12に挿入しようとすると、図14に示すように、端子金具41のバレル部41Bの前端面が下側に配された前止まり部24に後方から突きあたり、端子金具41を反転姿勢で電線収容孔12に挿通することを規制できるようになっている。
【0041】
また、この電線40の挿入過程において、ターミナルロック50を電線収容孔12内に挿入する際には、ロック爪57の傾斜面57Aが電線収容孔12の後端開口縁部に当接して、傾斜面57Aが電線収容孔12の左右方向両側の内面によって押圧される。続けて電線40を電線収容孔12に挿入すると、両ロック片52は、両ロック爪57の傾斜面57Aが左右方向両側から押圧されることで電線40側に弾性変形し、ロック爪57が電線収容孔12の内面に乗り上げることで、電線収容孔12に収容される。そして、電線40が正規の挿入位置に至ると、図6及び図8に示すように、両ロック爪57が電線収容孔12の係止凹部23に収容されることで弾性復帰し、ロック爪57の係止面57Bが係止凹部23の後面23Aに後方から係止される。また、図7に示すように、固定部51の前端面が電線収容孔12に形成された前止まり部24に後方から当接する。これにより、固定部51が電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めされ、電線40が電線収容孔12内において確実に保持固定される。
【0042】
最後に、電線40に先通ししておいたゴム栓13を電線収容孔12の後端開口部に挿入してゴム栓押さえ15を装着し、更にその後方からシールドシェル21を取り付けることで、コネクタ10が完成する。
【0043】
以上のように、本実施形態によると、固定部51を電線40にかしめ付けたかしめ片44に前後方向に係止させることで、ターミナルロック50を電線40に対して前後方向に位置ずれしないように固定することができる。また、ロック片52を係止凹部23に前方から係止させると共に、固定部51が前止まり部24によって前止まりされることで、固定部51を電線収容孔12内において前後方向に位置ずれしないように抜け止めすることができる。これにより、電線収容孔12内に電線40を確実に保持固定することができる。
【0044】
また、本実施形態によると、電線40の外被覆43に強固にかしめ付けられた金属製のかしめ片44に固定部51を前後方向に係止させて、固定部51を保持固定することができるので、従来のように電線40の外被覆43に合成樹脂製の突起を食い込ませることで固定部を電線40に固定させるよりも、電線40に対する固定部51の保持力を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態によると、ロック片52が電線40の挿入過程において電線40側に弾性変形し、弾性復帰することで電線収容孔12の係止凹部23に前方から係止するので、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めする場合に比べて、係止凹部23とロック爪57との係止代を小さくする必要がない。また、従来のように凸部と凹部とを無理嵌めすると、ロック爪が潰れることで係止代が小さくなる虞があるが、本実施形態によると、ロック爪57が潰れることがないので、係止代が小さくなることを防止することができる。これにより、ロック片52が前方から係止凹部23に係止する係止代を大きくすることができ、係止凹部23とロック片52との係止力を向上させることができる。
【0046】
すなわち、本実施形態によると、電線40に対するターミナルロック50の保持力を向上させ、かつ、コネクタハウジング11に対するターミナルロック50の係止力を向上させることができるので、従来のものに比べて、コネクタハウジング11に対する電線40の保持力を向上させることができる。
【0047】
また、電線収容孔12の前後方向中央付近に収容凹部を形成して、ロック片52と係止凹部とを電線収容孔12の前後方向中央付近において係止させる構成も考えられるが、その場合には、メンテナンスなどでコネクタハウジング11から電線40を離脱させる際に、電線収容孔12の中央付近まで治具などを差し込むなどして、ロック片52を弾性変形させ、ロック片52と係止凹部との係止状態を解除することになる。
それに対して、本実施形態によると、係止凹部23は電線収容孔12の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んだ形態となっているので、コネクタハウジング11から電線40を離脱させる際に、治具などを電線収容孔12の奥部に差し込むことなく前方からロック片52を弾性変形させて、ロック片52と係止凹部23との係止状態を容易に解除することができる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線収容孔12の内面に前止まり部24を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子金具41を締結する端子台側において端子金具41を前止まりさせることで、電線収容孔12の内面に前止まり部24を形成しない構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、コネクタハウジング11をアルミダイキャスト製としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、コネクタハウジング11を合成樹脂などによって構成してもよい。
(3)上記実施形態では、ターミナルロック50を一対の半割体53よって構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、3つや4つの分割体によって構成してもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、固定部51の収容溝54にかしめ片44を収容して、固定部51とかしめ片44とを係止させる構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、かしめ片に凹部を形成し、固定部に凹部に係止する凸部を形成することで、固定部とかしめ片とを係止させる構成としてもよい。
(5)上記実施形態では、固定部51に一対のロック片52を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、固定部51に1つや3つ以上のロック片を設ける構成としてもよい。
(6)上記実施形態では、かしめ部材を金属板状のかしめ片44として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、かしめ部材をリング状のかしめリングとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:コネクタ
11:コネクタハウジング
12:電線収容孔
23:係止凹部(係止部)
24:前止まり部
40:電線
44:かしめ片(かしめ部材)
51:固定部
52:ロック片
53:半割体(分割体)
54:収容溝
57:ロック爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの内部に電線が保持固定されたコネクタであって、
前記コネクタハウジングの内部を前後方向に貫通して設けられた電線収容孔と、
前記電線収容孔の内面に設けられた係止部と、
前記電線の外被覆に食い込むようにかしめ付けられる金属製のかしめ部材と、
前記電線収容孔の内面と前記かしめ部材との間に配され、前記かしめ部材に保持固定される固定部と、
前記固定部に前記電線側へ弾性変形可能に設けられ、前記電線を後方から前記電線収容孔に挿入する際に前記電線収容孔の内面に押圧されることで前記電線側に弾性変形し、前記電線が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前方から前記係止部に係止するロック片とを備えて構成されているコネクタ。
【請求項2】
前記固定部には、前記かしめ部材を収容することで前記かしめ部材と前後方向に係止可能な収容溝が形成されており、
前記係止部は、前記電線収容孔の軸線方向と交差する方向に凹んで形成されており、
前記ロック片の先端には、前記電線から離れる方向に突出して、前記係止部に前方から係止可能なロック爪が形成されており、
前記電線収容孔の内面には、前記固定部が後方から当接する前止まり部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記固定部は、複数の分割体によって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記複数の分割体は、同一形状をなしていることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記係止部は、前記電線収容孔の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項1】
コネクタハウジングの内部に電線が保持固定されたコネクタであって、
前記コネクタハウジングの内部を前後方向に貫通して設けられた電線収容孔と、
前記電線収容孔の内面に設けられた係止部と、
前記電線の外被覆に食い込むようにかしめ付けられる金属製のかしめ部材と、
前記電線収容孔の内面と前記かしめ部材との間に配され、前記かしめ部材に保持固定される固定部と、
前記固定部に前記電線側へ弾性変形可能に設けられ、前記電線を後方から前記電線収容孔に挿入する際に前記電線収容孔の内面に押圧されることで前記電線側に弾性変形し、前記電線が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前方から前記係止部に係止するロック片とを備えて構成されているコネクタ。
【請求項2】
前記固定部には、前記かしめ部材を収容することで前記かしめ部材と前後方向に係止可能な収容溝が形成されており、
前記係止部は、前記電線収容孔の軸線方向と交差する方向に凹んで形成されており、
前記ロック片の先端には、前記電線から離れる方向に突出して、前記係止部に前方から係止可能なロック爪が形成されており、
前記電線収容孔の内面には、前記固定部が後方から当接する前止まり部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記固定部は、複数の分割体によって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記複数の分割体は、同一形状をなしていることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記係止部は、前記電線収容孔の前端開口縁部に形成され、且つ、前方に臨んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−252919(P2012−252919A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125559(P2011−125559)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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