説明

コネクタ

【課題】インシュレータに複数のコンタクトを並べて支持したコネクタの高周波特性を向上させることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】インシュレータ15の仕切壁21に、コンタクト25の並び方向に見たときにコンタクトの一部と重なり、かつ仕切壁によってコンタクト挿入溝20との該並び方向の空間的連通が遮断された中空部22を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPCやFFC等の薄板状の接続対象物を接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板(リジッド基板)と薄板状の接続対象物(FPCやFFC等)とを導通させるコネクタは一般的に、接続対象物を挿脱可能な溝、及び、該挿脱方向に延びかつ該挿脱方向に直交する方向に並ぶ複数のコンタクト挿入溝を有するインシュレータと、各コンタクト挿入溝に一つずつ挿入した複数のコンタクトと、を具備しており、コンタクトは回路基板の表面に形成した回路パターンに接続している。インシュレータの上記溝に対して接続対象物を挿入すると、接続対象物と各コンタクトが互いに接触するので、回路基板と接続対象物がコンタクトを介して互いに導通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4413961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコネクタ(コンタクト)に流した電気信号の高周波特性を向上させるためには、コネクタのインピーダンス(値)を、回路基板及び接続対象物のインピーダンス(値)に極力近づける必要がある。
しかし、インシュレータの隣り合うコンタクト挿入溝の間には両者を仕切る仕切壁が存在し、かつ一般的にインシュレータを構成する樹脂材の比誘電率は高い(例えば3〜4程度)。そのため従来のコネクタは隣り合うコンタクトの間の結合容量が高まり易い構造であり、コネクタのインピーダンス(値)が回路基板及び接続対象物のインピーダンス(値)に比べて大きく低下する傾向にある。
【0005】
本発明の目的は、インシュレータに複数のコンタクトを並べて支持したコネクタの高周波特性を向上させることが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、薄板状の接続対象物を挿脱可能で、該挿脱方向に延びかつ該挿脱方向に直交する方向に並ぶ複数のコンタクト挿入溝、及び、隣り合うコンタクト挿入溝どうしを区切る仕切壁、を有するインシュレータと、上記接続対象物の厚み方向に離間し両者の間に上記接続対象物が挿入される、少なくとも一方が該接続対象物に接触する第1片と第2片、及び、第1片と第2片を接続する連結片を有する、上記コンタクト挿入溝に一つずつ挿入した複数のコンタクトと、を備えるコネクタにおいて、上記仕切壁に、上記コンタクトの並び方向に見たときに該コンタクトの一部と重なり、かつ該仕切壁によって上記コンタクト挿入溝との該並び方向の空間的連通が遮断された中空部を形成したことを特徴としている。
【0007】
上記インシュレータに、上記コンタクトの上記連結片と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成するのが好ましい。
【0008】
さらに、上記インシュレータに、上記コンタクトの上記第1片及び/又は第2片と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成してもよい。
【0009】
上記第1片を上記インシュレータの底壁に固定し、上記第1片の該底壁との対向面に凹部を形成してもよい。
この場合はさらに、上記インシュレータに、上記凹部と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成してもよい。
【0010】
上記連結片が、上記第1片と第2片の長手方向の中間部どうしを接続し、上記第1片の一方の端部に、回路基板と導通するテール部を形成し、上記第2片の一方の端部に、上記接続対象物と接触する接触部を形成してもよい。
この場合はさらに、上記第2片に形成した上記連結片を挟んで上記接触部と反対側に位置する被押圧部と、上記第1片における該被押圧部との対向部との間に位置する押圧部を有し、上記挿脱方向に対して略直交するときは該押圧部が上記被押圧部を押圧せず、該挿脱方向と略平行となるまで上記接触部と反対側に倒れたときに上記被押圧部を押圧して上記接触部を上記固定片側に移動付勢するアクチュエータを、上記インシュレータに回転可能に設けてもよい。
【0011】
また、上記第1片の一方の端部に、回路基板と導通するテール部を形成し、上記第2片の上記テール部と反対側の端部に、上記接続対象物と接触する接触部を形成し、上記連結片が、上記第2片の上記テール部側の端部と上記第1片とを接続してもよい。
この場合はさらに、上記第2片と上記第1片における該第2片との対向部との間に位置する押圧部を有し、上記挿脱方向に対して略直交するときは該押圧部が上記インシュレータに挿入した上記接続対象物を押圧せず、上記挿脱方向と略平行となるまで上記接触部側に倒れたときに該押圧部が上記接続対象物を上記第1片側に押圧するアクチュエータを、上記インシュレータに回転可能に設けてもよい。
【0012】
上記凹部が上記対向部と上記底壁の間に位置し、該凹部の上記挿脱方向の両端部が上記底壁に接触してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、インシュレータの仕切壁に、コンタクトの並び方向に見たときに各コンタクトの一部と重なり、かつ仕切壁によってコンタクト挿入溝との該並び方向の空間的連通が遮断された中空部を形成してある。この中空部(空気層)の比誘電率は1であり、一般的なインシュレータ(仕切壁)の比誘電率に比べて低い。そのため本発明のコネクタは隣り合うコンタクト間で結合容量が高まり難い構造であり、中空部がない従来のコネクタに比べてインピーダンス(値)を回路基板及び接続対象物のインピーダンス(値)に近づけることが可能である。そのため、コネクタ(コンタクト)に流した電気信号の高周波特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタのアクチュエータがアンロック位置に位置するときの前方から見た斜視図である。
【図2】コネクタの後方から見た分解斜視図である。
【図3】アクチュエータがアンロック位置に位置するコネクタの正面図である。
【図4】アクチュエータがアンロック位置に位置するコネクタの底面図である。
【図5】図3のV−V矢線に沿う断面図である。
【図6】図3のVI−VI矢線に沿う断面図である。
【図7】図3のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】FFCを挿入したコネクタのアクチュエータをロック位置に位置させたときの前方から見た斜視図である。
【図10】図9と同じ状態における図5と同様の断面図である。
【図11】回路基板、コネクタ、及び、FFCに回路基板側から電気信号を流したときのインピーダンスを示すグラフである。
【図12】変形例のコネクタのアクチュエータがアンロック位置に位置するときの平面図である。
【図13】図6と同様の断面図である。
【図14】図7と同様の断面図である。
【図15】図8と同様の断面図である。
【図16】別の変形例の図12と同様の平面図である。
【図17】図6と同様の断面図である。
【図18】図7と同様の断面図である。
【図19】図8と同様の断面図である。
【図20】さらに別の変形例の図12と同様の平面図である。
【図21】図6と同様の断面図である。
【図22】図7と同様の断面図である。
【図23】図8と同様の断面図である。
【図24】上記とはさらに別の変形例の図5と同様の断面図である。
【図25】図6と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10は所謂バックロックタイプのコネクタであり、大きな構成要素としてインシュレータ15、コンタクト25、及び、アクチュエータ35を具備している。
インシュレータ15は絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形したものである。インシュレータ15の前面の左右両端部を除く部分にはインシュレータ15の前後方向の中央部まで延びるFFC挿入溝16が凹設してある。インシュレータ15の後部の左右両端部を除く部分にはアクチュエータ受入用凹部17が凹設してあり、インシュレータ15の後面の左右両側部近傍にはアクチュエータ受入用凹部17と連通する一対の軸受用凹部18が凹設してある。インシュレータ15の前面には、後方に向かって直線的に延びる計17本のコンタクト挿入溝20が所定間隔おきに左右方向に並べて形成してある。図示するように各コンタクト挿入溝20は前後両端が開口しており、その側面形状は略ユ字形である。インシュレータ15は隣り合うコンタクト挿入溝20どうしを区切る計16枚の側面視略ユ字形をなす仕切壁21を有している。そして各仕切壁21、左端のコンタクト挿入溝20の左側に位置する部分、及び、右端のコンタクト挿入溝20の右側に位置する部分には、側面視略コ字形をなす計18本の中空部22が左右方向に並べて形成してある。図示するように各仕切壁21に形成した中空部22の左右両側面は当該仕切壁21によって塞がれている。また左端の中空部22の右側面と右端の中空部22の左側面はインシュレータ15の一部によって塞がれている。
【0016】
計17本のコンタクト25は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を図示の形状に順送金型(スタンピング)により成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、金メッキを施している。
図示するようにコンタクト25は側面視略エ字形状であり、略前後方向に延びる固定片(第1片)26と、固定片26より短寸で略前後方向に延びる可動片(第2片)27と、固定片26と可動片27の中間部同士を接続する弾性変形可能な変形接続部(連結片)28と、を具備している。固定片26の後端部には鉤状係止部(テール部)29が突設してあり、固定片26の上面の前端と後端部近傍には接触突部30と抜止用突部31がそれぞれ上向きに突設してある。可動片27の前端部には接触突部32が下向きに突設してあり、可動片27の下面の後端部には係止凹部(被押圧部)33が凹設してある。
【0017】
コンタクト25はインシュレータ15の後方から各コンタクト挿入溝20に挿入してある。図5及び図10に示すように、各コンタクト25をコンタクト挿入溝20に挿入すると、固定片26の下面は対応するコンタクト挿入溝20の底面に接触し、可動片27の上面は対応するコンタクト挿入溝20の天井面から下方に離間し、鉤状係止部29がコンタクト挿入溝20の底部の後縁部に係合する。さらに固定片26の側面に形成した係止突起(図示略)が対応するコンタクト挿入溝20の側面に食い込むので(図示略)、固定片26はコンタクト挿入溝20の底面(インシュレータ15の底壁20a)に対して固定されている。
【0018】
左右方向に延びる板状部材である回転式のアクチュエータ35は耐熱性の合成樹脂材料を金属製の成形型を利用して射出成形したものである。左右両側面の下端部には左方と右方に向かってそれぞれ延び、かつ互いに同軸をなす回転支持軸36が突設してある。アクチュエータ35の表面(図1、図5等では前面、図9、図10では上面をなす面)の下端部近傍には計17個の逃げ用凹部37が左右方向に並べて凹設してあり、アクチュエータ35の左右両側部を除く下端部には左右方向に向かって延びるカム部(押圧部)38が形成してある。また、アクチュエータ35の裏面(図1、図5等では後面、図9、図10では下面をなす面)には計17個の抜止用凹部39が左右方向に並べて凹設してある。
【0019】
アクチュエータ35は、その下端部(回転支持軸36を除く部分)をインシュレータ15のアクチュエータ受入用凹部17内に位置させ、かつ左右の回転支持軸36を左右の軸受用凹部18に回転可能に嵌合することにより、インシュレータ15に対して回転支持軸36回りに回転可能に取り付けてある。アクチュエータ35はインシュレータ15に対して略直交するアンロック位置(図1、図3、図5、図6に示す位置)と、略水平となるまで後方に倒れたロック位置(図9、図10に示す位置)との間を回転可能である。
図1及び図5に示すように、アクチュエータ35がアンロック位置に位置するとき、可動片27の後端部がアクチュエータ35の対応する逃げ用凹部37内に遊嵌し、カム部38は可動片27の係止凹部33を押圧しない。一方、図9及び図10に示すようにアクチュエータ35がロック位置まで回転すると、アクチュエータ35のカム部38がコンタクト25の可動片27の係止凹部33を上方に押圧するので、変形接続部28が弾性変形して可動片27の前端部が下方に回転する。さらに、各抜止用凹部39に各コンタクト25の抜止用突部31が嵌合する。
以上の構成であるコネクタ10は、各コンタクト25の鉤状係止部29を回路基板CB(図1参照)の上面に形成した回路パターン(図示略)に半田付けすることにより、回路基板CBの上面に実装してある。
【0020】
アクチュエータ35がアンロック位置に位置するとき、インシュレータ15のFFC挿入溝16には前方から接続対象物であるFFC(フレキシブルフラットケーブル)45を挿入可能である。FFC45は弾性変形可能な薄板状の長尺物であり、その厚みは自由状態にあるコンタクト25の接触突部30と接触突部32の間隔より短い。FFC45は複数の薄膜材を互いに接着して構成した積層構造であり、その中間層の上面には計17本の回路パターン46が形成してあり、その上面の長手方向の両端部を除く部分は絶縁カバー層47によって覆ってある。
FFC45の一方の端部をFFC挿入溝16に挿入すると、図10に示すようにFFC45の端部が固定片26の前半部と可動片27の前半部の間に位置する。この状態でアクチュエータ35をロック位置まで回転させると、可動片27の前端部が下方に回転し接触突部32が対応する回路パターン46に強い圧力で接触し、かつ、FFC45の端部の下面に各コンタクト25の接触突部30が強い力で接触する。従って、各コンタクト25を介して回路基板CBの上記回路パターンとFFC45の回路パターン46が電気的に導通する。
一方、アクチュエータ35をアンロック位置まで戻してコンタクト25からFFC45への接触圧力を解放すれば、FFC45をFFC挿入溝16から前方に引き抜くことが可能になる。
【0021】
図11は回路基板CBの上記回路パターン側からFFC45側に向けて電気信号を流したときの時間とインピーダンス(値)の関係を表すグラフである。時間を表す横軸は、鉤状係止部29(回路基板CBの回路パターンとの接合部)に電気信号が入ったときの時間を基準時(ゼロ)としている。電気信号は時間が進むにつれてFFC45側に進むので、当該横軸は実質的に回路基板CB、コネクタ10(コンタクト25)、及び、FFC45を通る信号経路の各位置を表している(0[ps]がコネクタ10と回路基板10の接合部であり、130[ps]までが「コネクタ10」、130[ps]〜が「FFC45」である)。解析は、Agilent Technologies社製のベクトルネットワークアナライザ(E5071C)、坂東電線株式会社製の0.4mmピッチ・インピーダンス調整FFCを用いて、Tr(ライズタイム・立ち上がり時間)を70ps、コンタクトピッチを0.4mmとして実施した。
図11中には計5本の折れ線グラフが記入してある。このうち、*で表したグラフは、コネクタ10から中空部22を省略した構造のコネクタ(即ち従来構造のコネクタ)をFFC45と回路基板CBに接続したときのグラフである。当該グラフから明らかなように、この場合は回路基板CBとFFC45のインピーダンスは共に約100Ω程度であるが、コネクタ(コンタクト)のインピーダンスは最も小さい部分が約84Ω程度であり、回路基板CB及びFFC45との差が大きい。
一方、黒塗りの四角(■)で表したグラフは本実施形態の場合を表している。このグラフから明らかなように、この場合も回路基板CBとFFC45のインピーダンスは共に約100Ω程度である。しかしコネクタ10(コンタクト25)のインピーダンスは最も小さい部分でも約88Ω程度あり、回路基板CB及びFFC45との差がかなり小さくなっていることが分かる。この結果は、インシュレータ15の仕切壁21に側方から見たときに各コンタクト25の変形接続部28、固定片26の約3/4(後半1/4程度を除いた部分)、及び、可動片27の約2/3(後半1/3程度を除いた部分)と重なり、かつ仕切壁21によってコンタクト挿入溝20との左右方向の空間的連通が遮断された中空部22を形成していることに起因している。この中空部22(空気層)の比誘電率は1であり、インシュレータ15を構成する樹脂材の比誘電率(3〜4程度)に比べてかなり低いため、中空部22を形成した部分では隣り合うコンタクト25間で結合容量が高まり難く、それ故、中空部22がない構造のコネクタに比べてインピーダンス(値)が高くなっている。そのためコネクタ10を回路基板CBとFFC45に接続した場合は、従来構造のコネクタを接続した場合に比べて電気信号の高周波特性が向上する。
【0022】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、仕切壁21に形成する中空部22は側方から見たときに各コンタクト25の少なくとも一部と重なるのであれば、その形状(設定範囲)を変えても良い。例えば、上記実施形態の中空部22から〈1〉固定片26と重なる部分を省略、〈2〉可動片27と重なる部分を省略、〈3〉固定片26及び可動片27と重なる部分を省略(変形接続部28と重なる部分のみ形成)、のように変更してもよい。図11中の○で表したグラフは〈1〉の場合を示しており、▲で表したグラフは〈2〉の場合を示しており、□で表したグラフは〈3〉の場合を示している。これらのグラフから明らかなように、これらの変更を施した場合もコネクタ10のインピーダンスは中空部22を形成しない場合に比べて大きくなる。なお出願人の実証研究によれば、中空部22は変形接続部28と重なる部分が最も大きな効果(隣り合うコンタクト25間で結合容量が高まるのを防止する効果)を発揮するため、中空部22をどのような形状にする場合も変形接続部28と重なる部分を有する形状とするのが好ましい。
【0023】
図12〜図23は別の変形例を表している。
図12〜図15の変形例のコネクタ10’(基本構成はコネクタ10と同じであり、同じ構成(具体的な形状は若干異なるが機能的に見れば実質的に同一のものも含む)の部材には同じ符号を付してある。後述する他の変形例も同様)のインシュレータ15には、中空部22とは異なる形状の中空部50を形成してある。中空部50はインシュレータ15の上面から下向きに延びる形状であり、その前端面はFFC挿入溝16の後端と同じ位置である。この中空部50は側方から見たときに変形接続部28全体と可動片27の一部(長手方向の中央部)と重なることになる。
図16〜図19の変形例のコネクタ10’’のインシュレータ15にも中空部22とは異なる形状の中空部51が形成してある。中空部51はインシュレータ15の前方から後方に向かって直線的に延びる形状であり、その後端面はFFC挿入溝16の後端と同じ位置である。この中空部51は側方から見たときに固定片26の前半部と重なることになる。
図20〜図23の変形例のコネクタ10’’’のインシュレータ15にも中空部22とは異なる形状の中空部52が形成してある。中空部51はインシュレータ15の前方から後方に向かって直線的に延びる形状であり、その後端面はFFC挿入溝16の後端と同じ位置である。この中空部51は側方から見たときに可動片27の前半部と重なることになる。
【0024】
図24、図25の変形例のコネクタ10’’’’では、コンタクト25’の固定片26の下面の後端近傍部に凹部25aを形成してある。凹部25aは側面視台形であり、固定片26の左右幅全体に渡って凹設してある。固定片26の下面は、凹部25aを形成した部分を除く全体がコンタクト挿入溝20の底面(インシュレータ15の底壁20a)に接触しており、凹部25aの直前に位置する部分と直後に位置する部分(鉤状係止部29の前端部の直上に位置する部分)の双方がコンタクト挿入溝20の底面に接触している。このように各固定片26に凹部25aを形成することにより隣り合う固定片26の対向面積(仕切壁21を省略した場合に互いに対向する部分の面積)を減少させ、かつ凹部25aとコンタクト挿入溝20の底面との間に中空部(空間)を形成しているので、各コンタクト25’の高周波特性を向上させることができる。
また、インシュレータ15に形成した中空部53は側面視略ユ字形をなしている。中空部53の後端部54はカム部38の直下に位置する部分にまで延びており、後端部54の少なくとも一部が側方から見たときに固定片26の凹部25aと重なる。その結果、中空部53のコンタクト挿入溝20(コンタクト25’)と重なり合う領域が広くなり、隣り合うコンタクト25’間の結合容量がより一層高まり難くなっているので、凹部25a及び後端部54を形成しない場合に比べてコネクタ10’’’’のインピーダンス(値)は高くなる。
しかも、固定片26上面の凹部25aの直上に位置する部分(後端近傍部)には、アクチュエータ35を回転させるときにカム部38から下向きの力が掛かるものの、固定片26の下面は凹部25aの前後両側がコンタクト挿入溝20の底面に接触しているため、回転するカム部38から固定片26上面の後端近傍部に及ぶ力は底壁20aによって確実に受け止められる。そのため固定片26の後端近傍部が大きく撓むことはなく、それ故、ケーブル接続用コネクタとして必要な基本的な要件(機能)である、アクチュエータ35の回転操作性や、コンタクト25’の姿勢の安定性(固定片26のインシュレータ15の底壁20aに対する固定力の確保)を損うことなく、伝送特性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、薄板状の接続対象物はFFC以外のケーブル、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)であってもよい。
またコンタクト25、25’のうちの一部(複数)をグランドコンタクトとし、残りをシグナルコンタクトとして利用してもよい。この場合はグランドコンタクトとグランドコンタクトの間にシグナルコンタクトを位置させ、グランドコンタクトを回路基板CBに形成したグランド用パターンと接続対象物に形成したグランド用パターンに接続し、シグナルコンタクトを回路基板CBに形成したシグナル用パターンと接続対象物に形成したシグナル用パターンに接続する。
さらに接続対象物の表裏両面に回路パターンを形成し、表裏の回路パターンをコンタクト25、25’の接触突部30と接触突部32に接触させてもよい。
また鉤状係止部(テール部)を固定片26の前端部に形成してもよい。
【0026】
さらにコンタクト25、25’の形状を、可動片27の後半部(変形接続部28との接続部より後方に位置する部分)を省略した側面視略ユ字形としたり、固定片26の後半部(変形接続部28との接続部より後方に位置する部分)及び可動片27の後半部を省略した側面視略コ字形(固定片26の前後いずれかの端部に鉤状係止部(テール部)を形成する)としてもよい。
さらにコンタクトがエ字形、ユ字形、コ字形のいずれであっても、回転式アクチュエータをインシュレータの前半部に回転可能に支持し、該アクチュエータをインシュレータ15に対して略直交するアンロック位置と、略水平となるまで前方に倒れたロック位置との間を回転可能とすることにより、コネクタを所謂フロントロックタイプとしてもよい。この場合は、アクチュエータの一部に形成したカム部(押圧部)が固定片26と可動片27の間に位置し、インシュレータに挿入した接続対象物は該カム部の直下に位置する。当該アクチュエータがアンロック位置に位置するときは接続対象物の直上に位置する該押圧部は接続対象物を下方に押圧せず、ロック位置に位置するときは該押圧部が接続対象物を下方に押圧して、接続対象物の下面に形成した回路パターン(図示略)をコンタクト25、25’の接触突部30に接触させる。
【0027】
またコンタクトをユ字形やコ字形にした場合に、コンタクトの固定片の下面(底壁20aとの対向面)に凹部25aを形成してもよい。この場合も固定片の下面は凹部25aの前後両側を底壁20aに接触させるのが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
10 10’ 10’’ 10’’’ コネクタ
15 インシュレータ
16 FFC挿入溝
17 アクチュエータ受入用凹部
18 軸受用凹部
20 コンタクト挿入溝
20a 底壁
21 仕切壁
22 中空部
25 25’ コンタクト
25a 凹部
26 固定片(第1片)
27 可動片(第2片)
28 変形接続部(連結片)
29 鉤状係止部(テール部)
30 接触突部
31 抜止用突部
32 接触突部
33 係止凹部(被押圧部)
35 回転式アクチュエータ
36 回転支持軸
37 逃げ用凹部
38 カム部(押圧部)
39 抜止用凹部
45 FFC(接続対象物)
46 回路パターン
47 絶縁カバー層
50 51 52 53 中空部
54 後端部
CB 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の接続対象物を挿脱可能で、該挿脱方向に延びかつ該挿脱方向に直交する方向に並ぶ複数のコンタクト挿入溝、及び、隣り合うコンタクト挿入溝どうしを区切る仕切壁、を有するインシュレータと、
上記接続対象物の厚み方向に離間し両者の間に上記接続対象物が挿入される、少なくとも一方が該接続対象物に接触する第1片と第2片、及び、第1片と第2片を接続する連結片を有する、上記コンタクト挿入溝に一つずつ挿入した複数のコンタクトと、
を備えるコネクタにおいて、
上記仕切壁に、上記コンタクトの並び方向に見たときに該コンタクトの一部と重なり、かつ該仕切壁によって上記コンタクト挿入溝との該並び方向の空間的連通が遮断された中空部を形成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
上記インシュレータに、上記コンタクトの上記連結片と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成したコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、
上記インシュレータに、上記コンタクトの上記第1片及び/又は第2片と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成したコネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記第1片を上記インシュレータの底壁に固定し、
上記第1片の該底壁との対向面に凹部を形成したコネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタにおいて、
上記インシュレータに、上記凹部と少なくとも一部が重なる上記中空部を形成したコネクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記連結片が、上記第1片と第2片の長手方向の中間部どうしを接続し、
上記第1片の一方の端部に、回路基板と導通するテール部を形成し、
上記第2片の一方の端部に、上記接続対象物と接触する接触部を形成したコネクタ。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタにおいて、
上記第2片に形成した上記連結片を挟んで上記接触部と反対側に位置する被押圧部と、上記第1片における該被押圧部との対向部との間に位置する押圧部を有し、上記挿脱方向に対して略直交するときは該押圧部が上記被押圧部を押圧せず、該挿脱方向と略平行となるまで上記接触部と反対側に倒れたときに上記被押圧部を押圧して上記接触部を上記固定片側に移動付勢するアクチュエータを、上記インシュレータに回転可能に設けたコネクタ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記第1片の一方の端部に、回路基板と導通するテール部を形成し、
上記第2片の上記テール部と反対側の端部に、上記接続対象物と接触する接触部を形成し、
上記連結片が、上記第2片の上記テール部側の端部と上記第1片とを接続したコネクタ。
【請求項9】
請求項8記載のコネクタにおいて、
上記第2片と上記第1片における該第2片との対向部との間に位置する押圧部を有し、上記挿脱方向に対して略直交するときは該押圧部が上記インシュレータに挿入した上記接続対象物を押圧せず、上記挿脱方向と略平行となるまで上記接触部側に倒れたときに該押圧部が上記接続対象物を上記第1片側に押圧するアクチュエータを、上記インシュレータ
に回転可能に設けたコネクタ。
【請求項10】
請求項4または5に従属する請求項7または9記載のコネクタにおいて、
上記凹部が上記対向部と上記底壁の間に位置し、
該凹部の上記挿脱方向の両端部が上記底壁に接触するコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−74341(P2012−74341A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248736(P2010−248736)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【特許番号】特許第4897917号(P4897917)
【特許公報発行日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000128407)京セラエルコ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】