説明

コネクタ

【課題】コネクタの大型化を招くことなく、ハウジング内に端子を確実に係止できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタは、イニシエータとハウジングとを備えている。イニシエータのシャントには、係止アームが備えられている。ハウジングがハウジング本体に備えた端子収容部61には、バネ9を介してスライダが組み付けられている。イニシエータに対するハウジングの装着時、係止アームは、スライダをイニシエータからのハウジングの離脱方向に押圧した後ハウジングに係止され、スライダにより係止の解除方向への移動を規制される。ハウジングには、ハウジングに収容された端子Tを係止する端子係止アーム611が設けられており、端子Tに対する係止の解除方向への変位を、スライダで規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに収容された端子をハウジングが備える端子係止アームで係止するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタは、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1のコネクタでは、ハウジング内に挿入されたリテーナでランス(端子係止アーム)を雌端子に押圧することで、ランスにクリープ変形が生じたりランスによる係止が解けるのが防止され、ハウジング内に端子が確実に係止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−282884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコネクタでは、ランスを変位させたりテーナを収容するためのスペースをハウジング内に設ける分、コネクタが大型化していた。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、コネクタの大型化を招くことなく、ハウジング内に端子を確実に係止できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明のコネクタは、イニシエータに対するハウジングの着脱方向にスライド自在に前記ハウジングに支持されて、前記イニシエータに対する前記ハウジングの装着方向に付勢されたスライダと、前記イニシエータに設けられ、前記スライダを前記イニシエータからの前記ハウジングの離脱方向に押圧した後前記ハウジングに係止され、前記スライダにより前記係止の解除が規制される係止アームと、前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングに収容される端子に乗り上げた後、係止部で前記端子を前記ハウジング内に係止する端子係止アームとを有し、前記スライダが、前記端子に乗り上げた前記端子係止アームに当接して、前記端子係止アームの変位を規制する変位規制部を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記変位規制部が、前記係止部よりも基端側で前記端子係止アームに当接し、前記端子係止アームの変位を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係止アームの係止解除規制のためのスライダで端子係止アームの変位を規制することで、コネクタの大型化を招くことなく、端子係止アームをハウジング内に確実に係止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタを上方から見た分解斜視図である。
【図2】コネクタを上方から見た斜視図であり、(a)はイニシエータに対するハウジングの組付前,(b)は組付後を示している。
【図3】イニシエータに対するハウジングの組付動作を、前後方向に沿った縦断面で示す図である。
【図4】ハウジングに対する端子の組付動作を示す図であり、前後方向に沿った縦断面でハウジングを示している。
【図5】図4の枠Aを拡大して示す図である。
【図6】ハウジングの変形例を前後方向に沿った縦断面で示す図であり、ハウジングに対する端子の組付動作を示している。
【図7】図6の枠Bを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1,2は、本実施形態のコネクタを示す図であり、図1は上方から見た分解斜視図,図2は斜視図である。図3は、イニシエータ1に対するハウジング5の組付動作を示す図である。図4は、ハウジング5に対する端子Tの組付動作を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0010】
図1,2に示すように、コネクタは、イニシエータ1とハウジング5とを備えている。イニシエータ1は、有底円筒状を呈した本体2と、円柱状を呈して本体2に収容されたシャント3とを備えている。本体2は、シャント3を収容する収容室20を前面に開口させている。収容室20の底面からは、一対のピン21が前方に向けて左右に並んで延びている。収容室20の左右の内側面には、それぞれ係止凹部23が設けられている。また、収容室20の前端開口部の上縁部及び下縁部には、それぞれ嵌合凹部22が設けられている。
【0011】
シャント3は、前端面から後端面にかけてシャント3を貫通した挿通孔30を備えている。挿通孔30には、図1に示す短絡金具4が嵌め込まれている。短絡金具4は、係止片41が挿通孔30内に係止され、挿通孔30内に延びた両ピン21にそれぞれ接触片42を弾接させている。
【0012】
図1に示すように、シャント3の左右の側面からは、それぞれ係止片33が延びている。各係止片33は、シャント3の外側に向けて屈曲して前方に延びている。また、シャント3の上下の側面には、それぞれ嵌合凸部31が設けられている。図3に示すように、挿通孔30の上縁部の後端部からは、係止アーム32が前方に向けて延びている。
【0013】
図2に示すように、シャント3は、収容室20内に収容されて、嵌合凸部31が嵌合凹部22に嵌め合わされている。収容室20内に収容されたシャント3は、係止凹部23に係止片33が係止されている。また、図3に示すように、シャント3は、収容室20の底面に後端面を当接させており、本体2のピン21が挿通孔30内を前端側に延びている。
【0014】
図1に示すように、ハウジング5は、端子Tが装着されるハウジング本体6と、ハウジング本体6を前側から覆うカバー7とを備えている。ハウジング本体6の後面からは四角ブロック状の端子収容部61が後方に延びており、ハウジング本体6の下面からは電線収容部62が下方に延びている。端子収容部61は、端子Tを収容する端子収容室60aを左右に並べて前面に開口させている。
【0015】
図3,4に示すように、端子収容部61の延出位置の上側に位置したハウジング本体6の後面には、後述するスライダ8を収容する収容室63が開口している。また、端子収容部61の後端部の上面には係止凸部61bが設けられている。図4に示すように、各係止凸部61bの前側に位置する端子収容部61の上面には、左右に並んで一対の端子係止アーム611が設けられている。端子係止アーム611は、端子収容部61の前端から後方に延びる一対のスリットを、端子収容室60aの上壁に設けることで構成されており、前端部の下面には係止部611aが設けられている。
【0016】
図1に示すように、電線Dが接続される端子Tの前端部の上面には、被係止部T1が設けられている。本実施形態では、端子Tの上板の一部を切り欠くことで、被係止部T1が形成されている。端子係止アーム611は、係止部611aを被係止部T1に係合させて、端子Tをハウジング本体6に係止する。
【0017】
図1に示すように、電線収容部62は、ハウジング本体6の下縁部から下方に延びており、左右の側面に係止凸部62aを備えている。電線収容部62には、端子の電線Dが挿通されたフェライトHを電線Dと共に収容する電線収容室60bが設けられている。
【0018】
端子収容部61には、スライダ8が嵌め合わされる。図1に示すように、スライダ8は、バネ収容室81aを前面に開口させたバネ収容部81と、バネ収容部81の下端部から後方に延びた移動規制片82とを備えている。バネ収容部81の左右の側面からは、一対のスライド部81bが左右の側方に延びている。ハウジング本体6の左右の側面には、スライド部81bを前後方向にガイドするガイド部61aが設けられている。
【0019】
図2に示すように、スライダ8は、バネ収容部81で端子収容部61の上面及び左右の側面を覆い、前後方向にスライド自在にハウジング本体6に嵌め合わされる。図3,4に示すように、スライダ8のバネ収容部81は、収容室63内に収容されている。また、バネ9は、バネ収容室81aに一端部を収容され、他端部をバネ収容室81aから前方に突出させている。
【0020】
カバー7は、下端部に設けられた左右一対の係止部71をハウジング本体6の係止凸部62aに係止されて、ハウジング本体6に取り付けられている。ハウジング本体6に取り付けられたカバー7は、端子を前側から端子収容室60a内に押え付け、フェライトHを前側から電線収容室60bの内面に押え付けて、端子T及びフェライトHをハウジング本体6とで挟み込んでいる。
【0021】
ハウジング5は、図3(a)に示すように、端子収容部61が挿通孔30内に挿入される。シャント3の係止アーム32は、端子収容部61の係止凸部61bに乗り上げて、図3(b)に示すようにスライダ8の移動規制片82に先端を当接させ、スライダ8を後方に押圧する。これにより、スライダ8は、スライド部81bをガイド部61aにガイドされて、バネ9を圧縮しながらハウジング本体6に対して前方に移動する。その後、端子収容室60a内の端子Tにイニシエータ1のピン21が接続されて、図3(c)に示すように係止アーム32が係止凸部61bに係止されると、スライダ8がバネ9の付勢力で後方に移動し、移動規制片82が係止アーム32の上方に位置する。これにより、係止アーム32が上方への移動を移動規制片82で規制される。
【0022】
次に、このような構成を有したコネクタで、端子収容部61の端子収容室60aに端子Tを収容する作業を説明する。
【0023】
端子Tは、端子収容室60aの前端開口部に挿入される。図4(a)に示すように、端子Tが端子収容室60aに挿入されると、端子係止アーム611の係止部611aに端子Tの先端部が当接し、端子係止アーム611が端子Tに乗り上げて上方に撓む。上方に撓んだ端子係止アーム611は、図5に拡大して示すように、先端部の上面をスライダ8の下面の前縁部に当接するので、上方への移動が規制される。
【0024】
端子Tを端子収容室60aに挿入する際、スライダ8は、バネ9の付勢力で後側のスライド限に移動している。このため、スライダ8の下面の前縁部に当接した端子係止アーム611の先端は、スライダ8の前方に位置する収容室63内に進入している。
【0025】
その後、図4(b)に示すように、端子Tの先端が端子収容室60aの後端部まで移動して、端子Tが端子収容室60a内に収容されると、端子Tの被係止部T1に係止部611aが係止して、端子Tの後方への移動が規制される。これに伴い、端子係止アーム611の先端は、収容室63から退出する。
【0026】
本実施形態によれば、係止アーム32の係止解除を規制するためのスライダ8に端子係止アーム611を当接させて、端子係止アーム611の変位を規制することで、端子係止アーム611の変位を規制するための部材やその部材の収納スペースを設けることなく、端子係止アーム611にクリープ変形が生じたり端子係止アーム611による係止が解けるのが防止され、端子収容室60a内に端子Tを確実に係止することができる。従って、コネクタの大型化を招くことなく、端子係止アーム611を端子収容室60a内に確実に係止できる。しかも、コネクタの小型化を図ることで、製造コストも低減することが可能となる。
【0027】
なお、上記実施形態では、スライダ8の下面の前縁部を変位規制部とした場合について説明したが、変位規制部はスライダ8の前縁部には限定されない。例えば、バネ収容部81等のスライダ8の下面に設けた突起等を変位規制部としてもよい。また、端子係止アーム611の形成位置も任意であり、端子収容部61の左右の側面に形成されていてもよい。この場合、スライダ8のスライド部81bを端子係止アーム611に当接させて、端子係止アーム611の変位を規制することができる。
【0028】
また、スライダ8は、必ずしも端子係止アーム611の先端に当接させる必要はなく、
端子係止アーム611の基端側に当接させてもよい。例えば、図6に示すように、係止部611aの形成位置よりも後側に位置した端子係止アーム611の上面にスライダ8を当接させてもよい。
【0029】
図6に示す例では、スライダ8が備える移動規制片82に移動規制部82aを設け、この移動規制部82aに端子係止アーム611の上面を当接させて、端子係止アーム611の上方への移動を規制するようになっている。図7に拡大して示すように、移動規制部82aは、移動規制片82の下面から矩形の断面形状を有して下方に延びており、下端面の後縁部を端子係止アーム611の上面に当接させるよう構成されている。
【0030】
この構成によっても、端子係止アーム611をスライダ8に当接させて、端子係止アーム611の変位を規制することで、端子係止アームの変位を規制するための部材やその部材の収納スペースを設けることなく、端子係止アーム611にクリープ変形が生じたり端子係止アーム611による係止が解けるのを防止でき、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
しかも、係止部611aの形成位置よりも後側に位置した端子係止アーム611の上面にスライダ8を当接させることで、端子Tに乗り上げた端子係止アーム611の先端部とスライダ8とが干渉するのを避けながら、端子Tに係止した端子係止アーム611をスライダ8で端子Tに常時押し付けることができる。このため、端子Tを係止するのに必要な反力を端子係止アーム611のみで確保する必要がなくなり、端子係止アーム611の小型化を図ることもできる。
【0032】
また、上記実施形態では、端子Tの上板を切り欠くことで被係止部T1が形成されている場合について説明したが、端子係止アーム611で端子Tを係止できるのであれば被係止部T1の構成は任意であり、上板に突起や凹部を設ける等して構成してもよい。また、ハウジング5をイニシエータ1に係止できるのであれば、係止アーム32の構成も任意であり、例えば、本体2に備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 イニシエータ
2 本体
20 収容室
21 ピン
22 嵌合凹部
23 係止凹部
3 シャント
30 挿通孔
31 嵌合凸部
32 係止アーム
33 係止片
4 短絡金具
41 係止片
42 接触片
5 ハウジング
6 ハウジング本体
60a 端子収容室
60b 電線収容室
61 端子収容部
611 端子係止アーム
611a 係止部
61a ガイド部
61b 係止凸部
62 電線収容部
62a 係止凸部
63 収容室
7 カバー
71 係止部
8 スライダ
81 バネ収容部
81a バネ収容室
81b スライド部
82 移動規制片
82a 移動規制部
9 バネ
D 電線
T 端子
T1 被係止部
H フェライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イニシエータに対するハウジングの着脱方向にスライド自在に前記ハウジングに支持されて、前記イニシエータに対する前記ハウジングの装着方向に付勢されたスライダと、
前記イニシエータに設けられ、前記スライダを前記イニシエータからの前記ハウジングの離脱方向に押圧した後前記ハウジングに係止され、前記スライダにより前記係止の解除が規制される係止アームと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングに収容される端子に乗り上げた後、係止部で前記端子を前記ハウジング内に係止する端子係止アームとを有し、
前記スライダは、前記端子に乗り上げた前記端子係止アームに当接して、前記端子係止アームの変位を規制する変位規制部を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記変位規制部は、前記係止部よりも基端側で前記端子係止アームに当接し、前記端子係止アームの変位を規制することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84252(P2012−84252A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227322(P2010−227322)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】