説明

コネクタ

【課題】 リテーナを用いることなく端子金具を固定できるとともに、コネクタの電気的接続を十分なものにすることができるコネクタを提供する。
【解決手段】 コネクタは、端子金具との接触により変形可能な第1のランスであって、キャビティの正規位置に端子金具が収納されたときに、第1の端子係合部と係合する第1のランス係合部を有する第1のランスと、第1のランスとは異なる位置に設けられ、端子金具との接触により変形可能な第2のランスであって、キャビティの正規位置に端子金具が収納されたときに、第2の端子係合部と係合する第2のランス係合部を有する第2のランスと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リテーナを用いることなく端子金具を固定するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタは、コネクタハウジングに形成されているキャビティに端子金具を収容したあと、端子金具がキャビティから抜けにくくするために、端子金具を略垂直方向から押圧するリテーナを用いていた。コネクタは、電気的に接続するためのものであるので、端子金具に接続されているケーブルに力が加わっても端子金具がキャビティから抜けないようにする必要がある。このため、従来のコネクタでは、キャビティに端子金具を収容したときに、リテーナを用いて端子金具を押圧して、コネクタの電気的接続が的確なものにしようとしていた(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、リテーナを用いることなく端子金具をキャビティに取り付けるコネクタも考案されていた(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266497号公報
【特許文献2】特開2003−53570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のコネクタは、リテーナを用いて端子金具を押圧して端子金具をコネクタハウジングに取り付けていた。このため、コネクタハウジングと端子金具のほかに、リテーナを準備する必要があった。このため、コネクタの部品点数が増えるとともに、端子金具をコネクタハウジングに取り付けた後に、リテーナもコネクタハウジングに取り付ける必要があり、現場での組み立て作業が煩雑にならざるを得なかった。
【0006】
また、リテーナを必要としないコネクタの場合には、コネクタハウジングの隣り合うキャビティを連通させた構造にしてランスの係止力を高めていた。しかしながら、隣り合うキャビティを連通させた構造は複雑であり、コネクタハウジングの製造工程が複雑にならざるを得なかった。また、ランスの係止する部材を大きくして係止力を高めることもできるが、コネクタを大きくせざるを得ず、コネクタを小型化した場合には、係止力を維持できず、破損しやすいものとならざるを得なかった。
【0007】
さらに、コネクタの構造を変更せずに端子金具の構造を変更することで係止力を高める手法も想定されるが、新たに端子金具の構造を検討して提供する必要が生ずるとともに、従来から流通している端子金具をそのまま使えるほうが、コネクタのユーザの便宜を図ることができる。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リテーナを用いることなく端子金具を固定できるとともに、小型化した場合であっても係止力を十分に維持して端子金具をコネクタハウジングに取り付けた状態を保持できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る特徴は、
第1の端子係合部と前記第1の端子係合部とは異なる位置に設けられた第2の端子係合部とを有する端子金具を収容可能なキャビティが形成されたコネクタハウジングを有するコネクタであって、
前記端子金具との接触により変形可能な第1のランスであって、前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第1の端子係合部と係合する第1のランス係合部を有する第1のランスと、
前記第1のランスとは異なる位置に設けられ、前記端子金具との接触により変形可能な第2のランスであって、前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第2の端子係合部と係合する第2のランス係合部を有する第2のランスと、を備えることである。
【0010】
キャビティの正規位置に端子金具が収納されたときに、第1のランスは第1の端子係合部と係合し、第2のランスは第2の端子係合部と係合するので、端子金具に加えられた力を分散させることができ、リテーナを用いることなく端子金具を固定できる。
【0011】
また、本発明の実施の形態に係る特徴は、上述した構成において、
前記第2のランスは、第1の脚部と、前記第1の脚部から離隔した位置に設けられた第2の脚部と、前記第1の脚部と前記第2の脚部とを連結する連結部を有し、
前記第1の脚部と前記第2の脚部と前記連結部とによって画定される間隙は、前記第1のランスよりも大きいことである。
【0012】
第1の脚部と第2の脚部と連結部とによって画定される間隙を介して金型を通過させることができるので、第1のランスと第2のランスとを同時に金型によって成型でき、コネクタ100の製造工程を迅速かつ簡便にできる。
【0013】
また、本発明の実施の形態に係る特徴は、上述した構成において、
前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第1のランス及び前記第2のランスのうちの少なくとも一方が前記端子金具を付勢することである。
【0014】
第1のランス及び第2のランスのうちの少なくとも一方が端子金具を付勢するので、第1の端子係合部と第1のランス係合部との係合状態と、第2の端子係合部と第2のランス係合部との係合状態とのうちの少なくとも一方を向上させることができ、コネクタから端子金具を抜けにくくできる。
【発明の効果】
【0015】
リテーナを用いることなく端子金具を固定できるとともに、コネクタの電気的接続を十分なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コネクタの全体を示す斜視図である。
【図2】コネクタハウジングに形成されたキャビティの内部の概要を示す斜視図である。
【図3】コネクタハウジングに形成されたキャビティの内部の概要を示す斜視図である。
【図4】キャビティの内部の概要を示す断面図である。
【図5】端子金具がキャビティに挿入されてランスが変形したときの状態を示す断面図である。
【図6】端子金具がキャビティに収納されて端子金具が取り付けられたときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
<<<コネクタ100の構成>>>
図1は、コネクタ100の概略を示す外観斜視図である。
<<コネクタハウジング110>>
【0019】
コネクタ100は、コネクタハウジング110からなる。コネクタハウジング110は、非導電性かつ弾性変形可能な合成樹脂、例えば、PBT(polybutylene terephthalate(ポリブチレンテレフタレート))からなる。コネクタハウジング110には、複数の、例えば12個のキャビティ120が形成されている。12個のキャビティ120は、互いに平行に形成されている。キャビティ120の各々は、長尺な形状を有する。1つのキャビティ120には、1つの端子金具200(図6(a)参照)が取り付けられる。
【0020】
<<コネクタ100の使用状態>>
本実施の形態で説明するコネクタ100は、雌型コネクタであり、雄型コネクタ(図示せず)と着脱可能な構造となっている。コネクタ100の使用状態においては、後述する端子金具200が取り付けられている。端子金具にも、雌型端子金具と雄型端子金具とがある。雌型端子金具は、雌型コネクタに取り付けられる端子金具である。雄型端子金具は、雄型コネクタに取り付けられる端子金具である。端子金具200は、雌型コネクタであるコネクタ100に取り付けられる雌型端子金具である。端子金具200が取り付けられたコネクタ100に、端子金具200が取り付けられた雄型コネクタを連結することによって、電気的接続が形成される。
【0021】
<<端子金具200>>
端子金具200は、導電性を有する金属からなる。端子金具200は、金属板を所定の形状に打ち抜いたあとに折り曲げ加工等を施すことで形成される。図6(a)に示すように、端子金具200は、端子金具200の前後方向に開口する略箱型をなす接続部230と、電線(図示せず)の端末に圧着接続可能なバレル部240とを連ねて構成されている。なお、本明細書において、端子金具200の前側とは、後述するキャビティ120の挿入孔130に対応する側をいい、端子金具200の後側とは、後述するキャビティ120の終端部132に対応する側をいう。
【0022】
上述したように、本実施の形態で説明する端子金具200は雌型端子金具であり、雌型コネクタであるコネクタ100に取り付けられる。雌型端子金具である端子金具200は、雄型端子金具と電気的に接続できる構造となっている。雌型端子金具は雌型コネクタに取り付けられ、雄型端子金具は雄型コネクタに取り付けられる。雌型コネクタと雄型コネクタとが連結されることによって、雌型端子金具と雄型端子金具とが電気的に接続される。
【0023】
バレル部240はかしめ片242を有する。かしめ片242が電線の芯線部(図示せず)にかしめ付けられる。このようにして、電線と端子金具200とが電気的に接続される。
【0024】
接続部230内には、端子金具200を構成する金属板を折り曲げて後方に延出する弾性接触片(図示せず)が形成されている。弾性接触片は、撓み可能な片持ち状をなし、接続部230の前方から挿入される雄型端子金具のタブ(図示せず)と弾性的に接触して電気的に接続される。
【0025】
接続部230は、略直角に形成された2つの角部232及び234を有し、略四角形状に形成されている。2つの角部232と234との間に略直線状の案内辺236が形成されている。角部232は、案内辺236に対して略垂直に形成された立設部238を有する。
【0026】
後述するように、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、角部232は、第1のランス140の屈曲部156に位置する。また、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、立設部238は、第1のランス140の係止面154と係合する。
【0027】
端子金具200の長手方向に沿った略中央には、スタビライザ250が形成されている。端子金具200がキャビティ120に収容されたときに、後述する内壁下面122に向かって突出するように形成されている。スタビライザ250は、略直角に形成された2つの角部252及び254を有し、略四角形状に形成されている。2つの角部252と254との間に略直線状の案内辺256が形成されている。角部252は、案内辺256に対して略垂直に形成された立設部260を有する。
【0028】
後述するように、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、角部252は、第2のランス170の屈曲部186に位置する。また、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、立設部260は、第2のランス170の係止面184と係合する。
【0029】
スタビライザ250は、端子金具200をキャビティ120に、逆向き(スタビライザ250が内壁上面124(後述)に向かう向き)で挿入されてしまうことを防止するために設けられている。また、スタビライザ250は、端子金具200をキャビティ120に、適正な向きに挿入されたときには、内壁側面126a及び126bや内壁下面122によって案内されて、端子金具200の挿入姿勢を適切なものにして、端子金具200の取り付け作業を簡便かつ安定にするためのものである。端子金具200をキャビティ120に逆向きに挿入しようとしたときには、スタビライザ250はキャビティ120の挿入孔130によって妨げられ、端子金具200をキャビティ120に挿入することができない。
【0030】
接続部230とスタビライザ250との間には、リテーナ係止部258が形成されている。リテーナ(図示せず)を用いて端子金具200をコネクタ100に取り付ける場合には、リテーナをリテーナ係止部258に押入することにより、端子金具200をリテーナによって係止することができる。後述するように、本願のコネクタ100は、リテーナを用いることなく端子金具200をコネクタ100に取り付けることができる。したがって、端子金具200の構造を変えることなく、従来の構造のまま、リテーナを用いずに端子金具200をコネクタ100に取り付けることができる。すなわち、取り付け作業で用いる部品である端子金具を変更することなく、端子金具200のコネクタ100への取り付け作業を行うことができる。
【0031】
スタビライザ250とバレル部240との間には、凹部262が形成されている。後述するように、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、第2のランス170の第1の突出部180が凹部262に向かって突出する(図6(a))。
【0032】
端子金具200は、図6(a)に示すように、端子金具200は、長尺な形状を有する。端子金具200は、第1の端部210と第2の端部220とからなる。端子金具200がキャビティ120に取り付けられたときに、第1の端部210は、後述するキャビティ120の終端部132に位置する。第2の端部220には、電線が電気的に接続される。端子金具200がキャビティ120に取り付けられたときには、第2の端部220は、ケーブルとともに挿入孔130から突出する(図6(a)参照)。
【0033】
<<キャビティ120>>
図2及び図3は、キャビティ120の内部を示す斜視図である。図4は、キャビティ120の内部を示す断面図である。
【0034】
上述したように、コネクタハウジング110には、上段に6個及び下段に6個の合計で12個のキャビティ120が並列して形成されている。上述したように、キャビティ120の各々は、長尺な形状を有する。キャビティ120の各々は、主として、内壁下面122と内壁上面124と2つの内壁側面126a及び126bと挿入孔130と終端部132とによって構成される。内壁下面122と内壁上面124と2つの内壁側面126a及び126bが、「キャビティを構成する壁面」に対応する。
【0035】
なお、本明細書においては、挿入孔130側を、コネクタハウジング110やキャビティ120などの前側と称する場合がある。また、終端部132側を、コネクタハウジング110やキャビティ120などの後側と称する場合がある。
【0036】
また、終端部132には、貫通孔138が形成されている。雄型端子金具が端子金具200(雌型端子金具)に取り付けられたときには、雄型端子金具のタブ(図示せず)は、貫通孔138を介して、端子金具200の接続部230に電気的に接続される(図6(a))。
【0037】
<内壁下面122>
内壁下面122は、一のキャビティ120の底面を構成する。内壁下面122は、キャビティ120の長手方向に沿って形成されている。上述したように、端子金具200がキャビティ120に挿入されたときに、端子金具200は、内壁下面122によって案内される。
【0038】
<内壁上面124>
内壁上面124は、内壁下面122と互いに向かい合うように、具体的には、略平行に形成されている。内壁上面124は、一のキャビティ120の天部を構成する。内壁上面124は、キャビティ120の長手方向に沿って形成されている。内壁上面124は、略平坦に形成されている。端子金具200がキャビティ120に挿入されたときに、端子金具200は内壁上面124によって案内される。
<内壁側面126a及び126b>
内壁側面126a及び126bは、互いに向かい合うように、具体的には、略平行に形成されている。内壁側面126a及び126bは、キャビティ120の長手方向に沿って形成されている。内壁側面126a及び126bは、一のキャビティ120の側面を構成する。
【0039】
<中間部128a及び128b>
内壁下面122と内壁上面124との間には、中間部128a及び128bが形成されている。中間部128a及び128bは、長尺な柱体の形状を有する。中間部128aは、キャビティ120の長手方向に沿って内壁側面126aに形成されている。中間部128bは、キャビティ120の長手方向に沿って内壁側面126bに形成されている。中間部128a及び128bは、内壁下面122と内壁上面124とに略平行に形成されている。
【0040】
端子金具200が、キャビティ120の終端部132に到達して当接するまで押入される(図6(a)参照)ときには、端子金具200の第1の端部210は、内壁下面122と内壁上面124と中間部128a及び128bとによって囲まれる空間に挿入され、内壁下面122と内壁上面124と中間部128a及び128bとにより保持される。端子金具200が取り付けられたときの端子金具200の姿勢を安定化させることできる。
【0041】
中間部128a及び128bは、キャビティ120の長手方向に沿って長尺な形状を有する。中間部128a及び128bは、キャビティ120の長手方向の長さよりも短い長さを有する。
【0042】
<間隙136>
後述する第1のランス140の下方には、間隙136が形成されている。間隙136を設けたことにより、第1のランス140が内壁下面122に向かって変形したときに、第1のランス140を収容できる空間を確保できる。
【0043】
後述するように、間隙136を設ける構成にしたことにより、第1のランス140を金型によって形成することができる。金型で成型することによって、後述する第1のランス140に後面部160を形成することができる。
【0044】
<間隙196a及び196b>
同様に、第2のランス170の下方には、間隙196a及び196bが形成されている。具体的には、第2のランス170の脚部190aの下方に間隙196aが形成され、第2のランス170の脚部190bの下方に間隙196bが形成されている。間隙196a及び196bを設けたことにより、第2のランス170が内壁下面122に向かって変形したときに、第2のランス170を収容できる空間を確保できる。
【0045】
後述するように、間隙196a及び196bを設ける構成にしたことにより、第2のランス170を金型によって形成することができる。金型で成型することによって、後述する第2のランス170に後面部194a及び194bを形成することができる。
【0046】
<第1のランス140>
第1のランス140は、側面視で略L字状の形状を有する。なお、第1のランス140について、側面視とは内壁側面126a又は126bから第1のランス140を見た状態をいう。具体的は、内壁側面126aから内壁側面126bに向かって第1のランス140を見たり、内壁側面126bから内壁側面126aに向かって第1のランス140を見たりする状態をいう。
【0047】
第1のランス140は、後述する第2のランス170よりもキャビティ120の終端部132側に位置する。第1のランス140は、従来、使用していたリテーナが取り付けられる位置におおよそ形成されている。
【0048】
第1のランス140は、内壁下面122に固設されている。内壁下面122に固設されている箇所が、第1のランス140の固定端として機能する。
【0049】
第1のランス140は、内壁下面122に立設し、かつ、内壁下面122から内壁上面124に向かって延在する第1の延在部142を有する。第1のランス140は、第1の延在部142からキャビティ120の終端部132に湾曲する湾曲部144を有する。第1のランス140は、湾曲部144からキャビティ120の終端部132に向かって延在する第2の延在部146を有する。第1のランス140は、キャビティ120の終端部132に向かって形成された先端部148と、を有する。
【0050】
先端部148は、内壁上面124に向かって突出する第1の突出部150を有する。先端部148は、キャビティ120の終端部132に向かって突出する第2の突出部152を有する。先端部148は、キャビティ120の長手方向に対して略垂直に形成され、かつ、キャビティ120の終端部132に向かい合う係止面154を有する。第2の突出部152と係止面154との間には、屈曲部156が係止されている。
【0051】
後述するように、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、屈曲部156に、端子金具200の角部232が位置する。また、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、係止面154に、端子金具200の立設部238が係合する。端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、第1の突出部150は、リテーナ係止部258に向かって突出する(図6(a))。
【0052】
第1のランス140の先端部148は、第1のランス140の自由端として機能する。第1のランス140の第2の延在部146は、端子金具200との接触に応じて、第1の延在部142や湾曲部144の周りに揺動でき、先端部148は、内壁下面122や内壁上面124に向かって変位できる。第1のランス140の第2の延在部146が、第1の延在部142や湾曲部144の周りに揺動することで、第1のランス140は撓んで弾性変形できる。
【0053】
図3及び図4などに示すように、第1のランス140の挿入孔130側(前側)には、前面部158が形成されている。前面部158は、主に、第1の延在部142の前面側の表面と、湾曲部144の前面側の表面と、第2の延在部146の前面側の表面とによって構成される。また、図2及び図4などに示すように、第1のランス140の終端部132側(後側)には、後面部160が形成されている。後面部160も、主に、第1の延在部142の後面側の表面と、湾曲部144の後面側の表面と、第2の延在部146の後面側の表面とによって構成される。
【0054】
<第2のランス170>
第2のランス170は、側面視で略L字状の形状を有する。なお、第2のランス170についても、側面視とは内壁側面126a又は126bから第2のランス170を見た状態をいう。具体的は、内壁側面126aから内壁側面126bに向かって第2のランス170を見たり、内壁側面126bから内壁側面126aに向かって第2のランス170を見たりする状態をいう。
【0055】
第2のランス170は、上述した第1のランス140よりもキャビティ120の挿入孔130側に位置する。第2のランス170は、端子金具200の凹部262の位置に、おおよそ対応するように形成されている。
【0056】
第2のランス170は、内壁下面122に固設されている。内壁下面122に固設されている箇所が、第2のランス170の固定端として機能する。
【0057】
図3に示すように、第2のランス170は、2つの脚部190a及び190bを有する。第2のランス170は、2つの脚部190a及び190bが連結され、キャビティ120の終端部132に向かって形成された先端部178と、を有する。
【0058】
脚部190aは、内壁下面122に立設し、かつ、内壁下面122から内壁上面124に向かって延在する第1の延在部172aを有する。脚部190aは、第1の延在部172aからキャビティ120の終端部132に湾曲する湾曲部174aを有する。脚部190aは、湾曲部174aからキャビティ120の終端部132に向かって延在する第2の延在部176aを有する。
【0059】
同様に、脚部190bは、内壁下面122に立設し、かつ、内壁下面122から内壁上面124に向かって延在する第1の延在部172bを有する。脚部190bは、第1の延在部172bからキャビティ120の終端部132に湾曲する湾曲部174bを有する。脚部190bは、湾曲部174bからキャビティ120の終端部132に向かって延在する第2の延在部176bを有する。
【0060】
先端部178は、内壁上面124に向かって突出する第1の突出部180を有する。先端部178は、キャビティ120の終端部132に向かって突出する第2の突出部182を有する。先端部178は、キャビティ120の長手方向に対して略垂直に形成され、かつ、キャビティ120の終端部132に向かい合う係止面184を有する。第2の突出部182と係止面184との間には、屈曲部186が係止されている。
【0061】
後述するように、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、屈曲部186に、端子金具200のスタビライザ250の角部252が位置する。また、端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、係止面154に、端子金具200のスタビライザ250の立設部260が係合する。端子金具200が正規位置に位置づけられたときには、第2のランス170は、凹部262に向かって突出する(図6(a))。
【0062】
第2のランス170の先端部178は、第2のランス170の自由端として機能する。第2のランス170の第2の延在部176a及び176bは、端子金具200との接触に応じて、第1の延在部172a及び172bや湾曲部174a及び174bの周りに揺動でき、先端部178は、内壁下面122や内壁上面124に向かって変位できる。第2のランス170の第2の延在部176a及び176bが、第1の延在部172a及び172bや湾曲部174a及び174bの周りに揺動することで、第2のランス170は撓んで弾性変形できる。
【0063】
上述したように、第2のランス170は、2つの脚部190a及び190bを有する。図3に示すように、2つの脚部190a及び190bの間には、間隙188が形成されている。間隙188は、キャビティ120の長手方向に沿って形成されている。第2のランス170の間隙188の高さは、第1のランス140の高さよりも高く、第2のランス170の間隙188の幅は、第1のランス140の幅よりも広くなるように、間隙188は形成されている。
【0064】
すなわち、金型でコネクタ100を成型する場合に、第2のランス170の間隙188を介して前側金型を通過させて、第1のランス140の前面部158を形成することができる。後側金型によって第1のランス140の後面部160を形成することができる。なお、金型による成型は、後で詳述する。
【0065】
本実施の形態では、第2のランス170の2つの脚部190a及び190bとが先端部178で連結した構成のものを示したが、2つの脚部190a及び190bが互いに独立して別個に変形できるようにしてもよい。端子金具200が特殊な形状を有する場合であっても、対応することができる。また、2つの脚部190a及び190bとが離隔しているので、金型による形成を容易にすることができる。
【0066】
図3及び図4などに示すように、第2のランス170の2つの脚部190a及び190bの挿入孔130側(前側)には、前面部192a及び192bが形成されている。
【0067】
脚部190aの前面部192aは、主に、第1の延在部172aの前面側の表面と、湾曲部174aの前面側の表面と、第2の延在部176aの前面側の表面とによって構成される。脚部190bの前面部192bは、主に、第1の延在部172bの前面側の表面と、湾曲部174bの前面側の表面と、第2の延在部176bの前面側の表面とによって構成される。
【0068】
また、図2及び図4などに示すように、第2のランス170の2つの脚部190a及び190bの終端部132側(後側)には、後面部194a及び194bが形成されている。
【0069】
脚部190aの後面部194aは、主に、第1の延在部172aの後面側の表面と、湾曲部174aの後面側の表面と、第2の延在部176aの後面側の表面とによって構成される。脚部190bの後面部194bは、主に、第1の延在部172bの後面側の表面と、湾曲部174bの後面側の表面と、第2の延在部176bの後面側の表面とによって構成される。
【0070】
<<第1のランス140と第2のランス170と位置及び間隔>>
上述したように、第1のランス140は、キャビティ120の終端部132側に位置し、第2のランス170は、キャビティ120の挿入孔130側に位置する。
【0071】
第1のランス140と第2のランス170と位置及び間隔は、端子金具200の接続部230の立設部238と、スタビライザ250の立設部260との位置及び間隔と一致するように定めればよい。
【0072】
第1のランス140の形状は、端子金具200の接続部230の立設部238の形状に対応するように定めればよい。たとえば、たとえば、第1のランス140のが係止面154が、端子金具200の接続部230の立設部238と当接して係合できるように、係止面154と立設部238とが接触する面積がなるべく大きくなる形状にするのが好ましい。接触する面積を大きくすることでより確実に係止することができる。
【0073】
第2のランス170の形状は、端子金具200のスタビライザ250の立設部260の形状に対応するように定めればよい。たとえば、第2のランス170のが係止面184が、端子金具200のスタビライザ250の立設部260と当接して係合できるように、係止面184と立設部260とが接触する面積がなるべく大きくなる形状にするのが好ましい。接触する面積を大きくすることでより確実に係止することができる。
【0074】
すなわち、端子金具200が正規位置(図6(a)参照)に位置づけられたときに、第1のランス140は、端子金具200の立設部238と係合し、第2のランス170は、端子金具200の立設部260と係合するように定めればよい。特に、従来から使用されている端子金具200の構造に応じて、第1のランス140と第2のランス170との位置及び間隔を定めれば、端子金具200の構造を変えることなく、従来の構造のまま、端子金具200をそのまま使用できる。
【0075】
<第1のランス140と第2のランス170との自然状態>
図4は、第1のランス140及び第2のランス170の自然状態を示す。第1のランス140の自然状態とは、端子金具200などによって第1のランス140に力がなんら加えられておらず、第1のランス140の第1の延在部142や湾曲部144が撓んでおらず弾性変形していない状態をいう。第2のランス170の自然状態とは、端子金具200などによって第2のランス170に力がなんら加えられておらず、第2のランス170の第1の延在部172a及び172bや湾曲部174a及び174bが撓んでおらず弾性変形していない状態をいう。
【0076】
後述するように、端子金具200がキャビティ120に取り付けられる過程や取り付けられた状態では、端子金具200の接続部230によって第1のランス140が押圧され、第1のランス140の第2の延在部146は撓んで弾性変形する。同様に、端子金具200がキャビティ120に取り付けられる過程や取り付けられた状態では、端子金具200の接続部230やスタビライザ250によって第2のランス170が押圧され、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bは撓んで弾性変形する。
【0077】
第1のランス140の第2の延在部146が弾性変形した状態では、第2の延在部146には、第2の延在部146が自然状態に戻ろうとする復元力が生ずる。同様に、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bが弾性変形した状態では、第2の延在部176a及び176bには、第2の延在部176a及び176bが自然状態に戻ろうとする復元力が生ずる。したがって、端子金具200がキャビティ120に取り付けられたときには、第1のランス140及び第2のランス170に生ずる復元力が、端子金具200に加えられ、端子金具200をより的確に係止できる。さらに、端子金具200がキャビティ120から取り外された場合には、これらの復元力によって第1のランス140及び第2のランス170は自然状態に戻ることができる。
【0078】
<<<端子金具200の取り付けと第1のランス140及び第2のランス170の変位>>>
図5(a)及び(b)並びに図6(a)及び(b)を用いて端子金具200をコネクタ100に取り付ける過程について説明する。端子金具200は、操作者によって、端子金具200の第1の端部210を先頭にして、キャビティ120の挿入孔130から挿入されて(図5(a)参照)、第1の端部210がキャビティ120の終端部132に到達して当接するまで押入される(図6(a)参照)。第1の端部210がキャビティ120の終端部132に到達したときに、端子金具200はキャビティ120の正規位置に位置づけられて、端子金具200の取り付けが完了する。
【0079】
<<端子金具200が第2のランス170と接触する状態>>
図5(a)は、端子金具200を挿入孔130からキャビティ120に挿入してコネクタ100に取り付ける途中の状態を示す断面図である。この状態は、端子金具200の接続部230が第2のランス170の第1の突出部180と接触し、第2の突出部182が内壁下面122に向かって変位して、第2のランス170が変形した状態である。
【0080】
図5(a)の黒い矢印に示すように、端子金具200がキャビティ120の終端部132に向かって挿入されると、端子金具200の第1の端部210は、第2のランス170の第1の突出部180を押圧する。第1の突出部180が押圧されることにより、図5(a)の白い矢印に示すように、第2のランス170が弾性変形して内壁下面122に向かって撓む。
【0081】
端子金具200が終端部132に向かって進むにしたがって、端子金具200の接続部230(図6(a)参照)は、第1の突出部180と接触しながら終端部132に向かって徐々に移動しつつ、第1の突出部180を内壁下面122に向かって徐々に押し下げる。第1の突出部180が押し下げられることによって、第2のランス170の第2の突出部182は、徐々に内壁下面122に向かって撓む。第2のランス170が撓むことによって、第2の突出部182は内壁下面122に向かって変位する。
【0082】
上述したように、第2のランス170の下方には、間隙196a及び196bが形成されている。第2のランス170が内壁下面122に向かって変位したときには、第2のランス170は間隙196a及び196bに収容される。また、間隙196a及び196bには、撓んだ第2のランス170も収容できる。
【0083】
<<端子金具200の接続部230が第2のランス170の第2の突出部182と接触しなくなる状態>>
端子金具200が終端部132に向かってさらに進み、端子金具200の接続部230が、第2のランス170の第2の突出部182から離隔し、第2の突出部182と接触しなくなったときには、第2のランス170は端子金具200による押圧状態から解放される。すなわち、第2のランス170は、第2の延在部176a及び176bの弾性変形により生じていた復元力によって、元の自然状態に戻るように、内壁上面124に向かって変位する。
【0084】
<<端子金具200が第1のランス140及び第2のランス170と接触する状態>>
図5(b)は、端子金具200をコネクタ100に取り付ける途中の状態であり、端子金具200が終端部132に向かってさらに進んだ状態を示す断面図である。
【0085】
図5(b)に示すように、端子金具200の接続部230は、第1のランス140の第1の突出部150と接触しながら終端部132に向かって徐々に移動しつつ、第1のランス140を内壁下面122に向かって徐々に押し下げる。同時に、端子金具200のスタビライザ250は、第2のランス170の第1の突出部180と接触しながら終端部132に向かって徐々に移動しつつ、第2のランス170を内壁下面122に向かって徐々に押し下げる。
【0086】
端子金具200の接続部230によって第1のランス140の第1の突出部150が押し下げられることにより、第1のランス140の第2の延在部146は、徐々に内壁下面122に向かって撓む。第1のランス140が撓むことによって、第1のランス140の先端部148は内壁下面122に向かって変位する。
【0087】
同様に、端子金具200のスタビライザ250によって第2のランス170の第1の突出部180が押し下げられることにより、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bは、徐々に内壁下面122に向かって撓む。第2のランス170が撓むことによって、第2のランス170の先端部178は内壁下面122に向かって変位する。
【0088】
<<端子金具200が正規位置に位置づけられる状態>>
図6(a)は、端子金具200の第1の端部210がキャビティ120の終端部132に到達して端子金具200が正規位置に位置づけられた状態を示す断面図である。
【0089】
図6(a)に示すように、端子金具200の第1の端部210がキャビティ120の終端部132に到達すると、端子金具200のコネクタ100への取り付けは完了する。この状態で、終端部132に向かう力を端子金具200にさらに加えたとしても、端子金具200の第1の端部210がキャビティ120の終端部132に当接するので、端子金具200は、さらに移動することはできない。このときのキャビティ120内における端子金具200の位置が、端子金具200の正規位置である。
【0090】
なお、図6(b)は、端子金具200の第1の端部210がキャビティ120の終端部132に到達した状態であり、第1のランス140及び第2のランス170の変位の状態を示す図である。端子金具200が正規位置に到達した状態では、第1のランス140及び第2のランス170は、自然状態から変形した状態であり、第1のランス140の第2の延在部146並びに、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bが弾性変形した状態である。したがって、第1のランス140の第2の延在部146と、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bとに復元力が生じる。生じた復元力によって端子金具200は押圧される。
【0091】
以上のような過程を経て、キャビティ120の挿入孔130から挿入された端子金具200を、キャビティ120の正規位置に位置づけて取り付けを完了することができる。
【0092】
<<端子金具200と第1のランス140及び第2のランス170との係合>>
上述したように、端子金具200の第1の端部210が、キャビティ120の終端部132に到達したときに、端子金具200はキャビティ120内の正規位置に至る。端子金具200がキャビティ120内の正規位置に到達したときには、端子金具200の接続部230の立設部238は、第1のランス140の係止面154と係合する(図6(a)に示す矢印A参照)。同時に、端子金具200のスタビライザ250の立設部260は、第2のランス170の係止面184と係合する(図6(a)に示す矢印B参照)。すなわち、端子金具200の正規位置とは、端子金具200の第1の端部210が、キャビティ120の終端部132に到達し、端子金具200の接続部230の立設部238が、第1のランス140の係止面154と係合するとともに、端子金具200のスタビライザ250の立設部260が、第2のランス170の係止面184と係合する状態となった位置である。
【0093】
より具体的には、端子金具200がキャビティ120内の正規位置に到達したときには、第1のランス140及び第2のランス170は弾性変形した状態となっている。この第1のランス140の弾性変形によって生ずる復元力により、第1のランス140は接続部230を付勢し、接続部230の立設部238が第1のランス140の係止面154と係合する。また、第2のランス170の弾性変形によって生ずる復元力により、第2のランス170はスタビライザ250を付勢し、スタビライザ250の立設部260が第2のランス170の係止面184と係合する。
【0094】
上述したように、第1のランス140と第2のランス170と位置及び間隔が、端子金具200の接続部230の立設部238と、スタビライザ250の立設部260との位置及び間隔と一致するように定めている。第1のランス140の形状は、端子金具200の接続部230の立設部238の形状に対応するように定めている。第2のランス170の形状は、端子金具200のスタビライザ250の立設部260の形状に対応するように定めている。
【0095】
このようにすることで、端子金具200がキャビティ120内の正規位置に到達したときに、端子金具200の接続部230の立設部238を、第1のランス140の係止面154と係合させることができ、端子金具200のスタビライザ250の立設部260を、第2のランス170の係止面184と係合させることができる。
【0096】
このように、端子金具200の接続部230が第1のランス140の係止面154と係合し、端子金具200のスタビライザ250が第2のランス170の係止面184と係合し、第1のランス140と第2のランス170とに生ずる復元力によって端子金具200を付勢するので、第1のランス140と第2のランス170とによって、端子金具200のキャビティ120への取り付け状態を維持することができる。
【0097】
<<端子金具200への力の印加>>
したがって、端子金具200が挿入孔130から引き抜かれる方向に、端子金具200に力が加えられた場合でも、第1のランス140の係止面154が、端子金具200の接続部230を係止し、第2のランス170の係止面184が、端子金具200のスタビライザ250を係止する。第1のランス140と第2のランス170との係止により、端子金具200が挿入孔130から抜け出ることを防止できる。このように、リテーナを用いることなく、端子金具200をコネクタ100に取り付けた状態を安定して維持することができる。
【0098】
また、第1のランス140と第2のランス170との二つのランスを設けたことにより、端子金具200に力が加えられた場合に、端子金具200に加えられた力は、第1のランス140と、第2のランス170との双方に分散できる。すなわち、本実施の形態では、第1のランス140及び第2のランス170は、撓むことができる片持ち状の形状を有する。

したがって、第1のランス140と第2のランス170との双方によって端子金具200をキャビティ120に保持することができる。
【0099】
<<コネクタ100からの端子金具200の取り外し>>
端子金具200をコネクタ100から取り外す必要が生じた場合には、所定の治具(図示せず)をキャビティ120に挿入して、端子金具200と第1のランス140と第2のランス170との係止を解除することによって端子金具200を取り外すことができる。
【0100】
<<<金型によるコネクタハウジング110の成型>>>
コネクタ100の製造工程を迅速かつ簡便にするために、コネクタハウジング110を金型によって形成するのが好ましい。具体的には、前側金型(挿入孔130側から成型するための金型)(図示せず)と、後側金型(終端部132側から成型するための金型)(図示せず)との2つの金型によってコネクタ100を成型するのが好ましい。このように2つの金型のみでコネクタ100を成型することができ、安価かつ大量に製造することも可能になる。
【0101】
<<第1のランス140及び第2のランス170の金型による成型>>
コネクタ100を金型で成型して作った場合には、第1のランス140と第2のランス170との自然状態は、金型で成型されたときの状態である。
【0102】
上述したように、第1のランス140の挿入孔130側(前側)には、前面部158が形成されている。第1のランス140の前面部158は、挿入孔130側から成型する前側金型によって形成される。第1のランス140の終端部132側(後側)には、後面部160が形成されている。第1のランス140の後面部160は、終端部132側から成型する後側金型によって形成される。
【0103】
終端部132側から成型する後側金型によって第1のランス140を形成することで、第1のランス140を片持ち状の形状にできる。片持ち状の形状にすることで、端子金具200との接触に応じて、第1のランス140の第2の延在部146を、第1の延在部142や湾曲部144の周りに揺動させることができ、第1のランス140を撓みやすくできる。
【0104】
また、上述したように、第2のランス170の挿入孔130側(前側)には、前面部192a及び192bが形成されている。第2のランス170の前面部192a及び192bは、挿入孔130側から成型する前側金型によって形成される。第2のランス170の終端部132側(後側)には、後面部194a及び194bが形成されている。第2のランス170の後面部194a及び194bは、終端部132側から成型する後側金型によって形成される。
【0105】
終端部132側から成型する後側金型によって第2のランス170を形成することで、第2のランス170を片持ち状の形状にできる。片持ち状の形状にすることで、端子金具200との接触に応じて、第2のランス170の第2の延在部176a及び176bを、第1の延在部172a及び172bや湾曲部174a及び174bの周りに揺動させることができ、第2のランス170を撓みやすくできる。
【0106】
上述したように、第2のランス170は、2つの脚部190a及び190bを有する。2つの脚部190a及び190bの間には、間隙188が形成されている。間隙188は、キャビティ120の長手方向に沿って形成されている。第2のランス170の間隙188の高さが第1のランス140の高さよりも高く、かつ、第2のランス170の間隙188の幅が第1のランス140の幅よりも広くなるように、間隙188は形成されている。
【0107】
すなわち、前側金型と後側金型との2つの金型によってコネクタ100を成型する場合に、第2のランス170の2つの脚部190a及び190bの間(間隙188)に前側金型を通過させることで、第1のランス140の前面部158を形成することができる。また、後側金型によって第1のランス140の後面部160を形成することができる。
【0108】
第2のランス170の2つの脚部190a及び190bの間に間隙188を設けて、前側金型を通過させることができるようにしたことで、キャビティ120の長手方向に沿った異なる位置に、第1のランス140と第2のランス170とを形成し、第1のランス140と第2のランス170とを並設することができる。
【0109】
<<<他の実施の形態>>>
上述した実施の形態では、第1のランス140と第2のランス170との二つのランスによって、端子金具200を係止するコネクタを示した。ランスの数は、二つに限られることなく、複数のランスをキャビティ120内に設けて、端子金具200を係止できるものであればよい。
【符号の説明】
【0110】
100 コネクタ
120 キャビティ
140 第1のランス
170 第2のランス
178 先端部(連結部)
200 端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子係合部と前記第1の端子係合部とは異なる位置に設けられた第2の端子係合部とを有する端子金具を収容可能なキャビティが形成されたコネクタハウジングを有するコネクタであって、
前記端子金具との接触により変形可能な第1のランスであって、前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第1の端子係合部と係合する第1のランス係合部を有する第1のランスと、
前記第1のランスとは異なる位置に設けられ、前記端子金具との接触により変形可能な第2のランスであって、前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第2の端子係合部と係合する第2のランス係合部を有する第2のランスと、を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記第2のランスは、第1の脚部と、前記第1の脚部から離隔した位置に設けられた第2の脚部と、前記第1の脚部と前記第2の脚部とを連結する連結部を有し、
前記第1の脚部と前記第2の脚部と前記連結部とによって画定される間隙は、前記第1のランスよりも大きい請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記キャビティの正規位置に前記端子金具が収納されたときに、前記第1のランス及び前記第2のランスのうちの少なくとも一方が前記端子金具を付勢する請求項1又は2に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69488(P2013−69488A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206115(P2011−206115)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(511049509)日本デルファイ・オートモーティブ・システムズ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】