説明

コネクタ

【課題】インピーダンスのバラツキが少なく、コンタクトの動きを抑制でき、しかも製造が容易なコネクタを提供すること。
【解決手段】取付対象に接続される接続部16d、接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部16bを有する複数のコンタクトを備える。コンタクトの保持部をインサートモールドにより保持部材15で一体に保持する。保持部材はロケータ13により取付対象に対し位置決めされる。さらに、コンタクトの前記中間部を誘電体18で接触的に覆い、その誘電体をロケータに結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
対をなす2本の信号線にそれぞれ逆位相の信号からなる差動信号対を伝送する差動伝送方式が知られている。その差動伝送方式はデータ伝送速度を高速にできるという特長をもつため、昨今では様々な分野において実用されている。
【0003】
例えば機器と液晶ディスプレイとの間のデータ伝送に差動伝送方式を用いる場合には、機器及び液晶ディスプレイに、ディスプレイポート規格にしたがって設計されたディスプレイポートコネクタを備える。このディスプレイポート規格としては、VESA Display Port standard 1.0やそれのVersion 1.1aが知られている。
【0004】
このディスプレイポートコネクタは差動信号用コネクタの一種であり、接続相手に接続するための第1の接続側と、機器や液晶ディスプレイの基板に接続するための第2の接続側とを有している。第1の接続側の形態は接続相手との関係があるためディスプレイポート規格により厳密に定められているが、第2の接続側の形態は比較的自由である。この種の差動信号用コネクタは特許文献1に開示されている。
【0005】
図9を参照して、特許文献1に開示されたコネクタについて簡単に説明する。図示のコネクタにおいては、合成樹脂から作られたボデイ1に多数のコンタクト2が紙面と垂直な方向に並んで保持されている。コンタクト2は水平部3と垂直部4とを有している。垂直部4の下端には、コネクタの取付対象となる基板などに接続される接続部5が形成される。
【0006】
図9の状態では、垂直部4はボデイ1の溝6に挿入された状態で外部に露出しているが、次に、ボデイ1に形成した切欠き7に樹脂部材であるスペーサ(図示せず)を装着することで、垂直部4の大部分が覆い隠される。そして、ボデイ1に設けたボス8を基板(図示せず)の位置決め穴に挿入することで位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−21165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたコネクタでは、コンタクトの外部に露出した部分をスペーサで覆い隠すにすぎないため、コンタクトの周囲に空所が残ることが想定される。この空所は、コネクタのインピーダンスにバラツキを生じる原因になる。
【0009】
また、特許文献1に開示されたコネクタのように表面実装されるコネクタにおいては、コンタクトの接続部と取付対象の回路との位置合わせに高い精度を必要とするが、上述したコンタクトの周囲の空所に起因してコンタクトが動いて接続部が位置ずれを起こす虞もある。
【0010】
また、コネクタが小型化した場合には、別部品であるスペーサの製造と組み立てが困難であるという問題もある。
【0011】
それ故に本発明の目的は、インピーダンスのバラツキが少なく、コンタクトの動きを抑制でき、しかも製造が容易なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、取付対象に搭載されるコネクタにおいて、前記取付対象に接続される接続部、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部を有する複数のコンタクトと、前記保持部をインサートモールドにより一体に保持した保持部材と、前記保持部材を前記取付対象に対し位置決めするロケータと、前記中間部を接触的に覆いかつ前記ロケータに結合された誘電体とを含むことを特徴とするコネクタが得られる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、取付対象に搭載されるコネクタにおいて、前記取付対象に接続される接続部、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部を有する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを前記取付対象に対し位置決めするロケータとを含み、前記ロケータは、前記複数のコンタクトの前記中間部を夫々受け入れた複数の溝を有し、前記中間部を覆っていることを特徴とするコネクタが得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インピーダンスのバラツキが少なく、コンタクトの動きを抑制でき、しかも製造が容易なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの外観斜視図。
【図2】図1のコネクタの正面図。
【図3】図1のコネクタの一方向から見た分解斜視図。
【図4】図1のコネクタの他方向から見た分解斜視図。
【図5】図1のコネクタの製造における一工程を説明するための図。
【図6】図1のコネクタの内部部品を組み立てた状態を示す斜視図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るコネクタの分解斜視図。
【図8】図7のコネクタの内部部品を組み立てた状態を示す斜視図。
【図9】特許文献1(特開2009−21165号公報)に開示されているコネクタを説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図4を参照して、本発明の一実施形態に係るコネクタについて説明する。
【0017】
図示のコネクタ10はプリント基板などの取付対象(図示せず)に搭載される差動信号用コネクタであり、上側コンタクト組立体11と、下側コンタクト組立体12と、コネクタ10を取付対象物に位置決めするためのロケータ13と、上側及び下側コンタクト組立体11,12とロケータ13とを纏めて囲った導電性のコネクタシェル14とを含んでいる。
【0018】
上側コンタクト組立体11は、保持部材としての絶縁性の上側ハウジング15と、上側ハウジング15に配列保持された多数の導電性の上側コンタクト16とを含んでいる。上側ハウジング15は、前方にのびた嵌合突起17を有している。
【0019】
上側コンタクト16の各々は、嵌合突起17の上面に配列された水平部16aと、水平部16aの後端から上側ハウジング15の後方に露出して下方に折れ曲がった折曲部16bと、折曲部16bから垂直下方にのびた垂直部16cと、垂直部16cの下端から直角に折れ曲がり、取付対象の上面の配線パターンにSMT構造により半田付けされる接続部16dとを有している。以下、多数の上側コンタクト16を纏めてコンタクト群と呼ぶことがある。
【0020】
多数の上側コンタクト16は、水平部16aの一部を上側ハウジング15にインサートモールドにより保持されている。なお、水平部16aのうち、上側ハウジング15に保持された部分を、ここでは保持部と呼ぶ。
【0021】
また多数の上側コンタクト16の垂直部16cには、ほぼ直方体状の誘電体18がインサートモールドにより付設されている。誘電体18は垂直部16cの大部分を外側から接触的に覆い、上側コンタクト16と一体化している。この結果、コンタクト群は誘電体18により配列状態を保持される。さらに、誘電体18には、コンタクト群の配列方向におけるの両端には、係合用突起18aがそれぞれ形成されている。なお、垂直部16cのうち、誘電体18で覆われた部分を、ここでは中間部と呼ぶ。
【0022】
下側コンタクト組立体12は、絶縁性の下側ハウジング21と、下側ハウジング21に配列保持された多数の導電性の下側コンタクト22とを含んでいる。
【0023】
下側ハウジング21は、上側ハウジング15との位置合わせを行うための対のポスト21aを有している。下側コンタクト22の各々は、上側ハウジング15の嵌合突起17の下面に沿って配列される水平部22aと、下側ハウジング21の後方に露出して垂直下方にのびた垂直部22bとを有している。下側コンタクト22の垂直部22bの下端部は、取付対象に形成したスルーホールに挿入されて半田付け固定される端子部22cとされている。
【0024】
ロケータ13は、取付対象の位置決め穴(図示せず)に嵌合する対の位置決めボス23を下面に備えている。ロケータ13の後面には、誘電体18の形状及び寸法に符合する凹部24が形成されている。凹部24の互いに対向した側面には、誘電体18の係合用突起18aに対応する係合用突起24aが形成されている。また、凹部24の底面には、キー溝24bが形成されている。
【0025】
コネクタシェル14は複数の固定用脚部14a,14bを有している。これらの固定用脚部14a,14bが取付対象に係合することにより、差動信号用コネクタ10は取付対象にしっかりと固定される。
【0026】
ここで図5をも参照して、上側コンタクト組立体11の製造方法に言及する。上側コンタクト16に折曲部16bを形成する前に、上側ハウジング15と誘電体18とをコンタクト群に対し同時にインサートモールドし、図5(a)に示すような形態を得る。しかる後にコンタクト群を折り曲げ、図5(b)に示すように折曲部16bを形成する。このとき、折曲部16bの両側が上側ハウジング15と誘電体18とで一体的に保持されているので、コンタクト群を不揃いにすることなく、所定の形状に容易に折り曲げることができる。なお、18bは、キー溝24bに対応するキーである。
【0027】
このように、上側ハウジング15と誘電体18は、コンタクト群に対し同時にインサートモールドすることは製造工程上有利である。しかし、これに限らず、上側ハウジング15と誘電体18とを別々に形成してもよい。
【0028】
図6は、ロケータ13に上側コンタクト組立体11及び下側コンタクト組立体12を組み付けた状態を示している。上側コンタクト組立体11をロケータ13に組み付ける際に、キー溝24bにキー18bを嵌合させつつ誘電体18をロケータ13の凹部24に挿入する。挿入後には、係合用突起18aが係合用突起24aに係合することで、誘電体18は凹部24に嵌合結合される。
【0029】
さらに上側及び下側コンタクト組立体11,12とロケータ13とを纏めてコネクタシェル14で囲むことにより、図1のコネクタ10が得られる。ただし、コネクタ10の側面にはロケータ13の一部がコネクタシェル14の外部に突出して露出した状態にある。
【0030】
図1から図6を用いて説明したコネクタによると、上側コンタクト16の上側ハウジング15から露出した部分を誘電体18のインサートモールドにより接触的に覆い、取付対象に位置決めされるロケータ13にその誘電体18を嵌合結合させた構造であるので、インピーダンスが整合すると共に上側コンタクト16の接続部16dの位置ずれを防止できる。また、ロケータ13の一部がコネクタシェル14の外部に突出しているので、その突出した部分の画像認識により、位置精度の高いコネクタの表面実装が可能となる。
【0031】
図7及び図8を参照して、本発明の他の実施形態に係るコネクタについて説明する。同様な部分については、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0032】
図7において、上側コンタクト組立体11の組み付け前には、上側コンタクト16の垂直部16cの全体が外部に露出した状態にある。一方、ロケータ13の後面には、垂直部16cと同じピッチをもって垂直に長くのびた平行な複数の溝26が形成されている。これらの溝26は、上側コンタクト16の垂直部16cのほぼ全体を少しの隙間をもってそれぞれ受け入れ得る寸法を有している。したがって、垂直部16cを溝26に挿入する作業は容易である。
【0033】
図8は、ロケータ13に上側コンタクト組立体11及び下側コンタクト組立体12を組み付けた状態を示している。上側コンタクト組立体11をロケータ13に組み付ける際に、上側コンタクト16の垂直部16cをロケータ13の溝26にそれぞれ挿入する。この結果、図1から図6を用いて説明したコネクタ10の誘電体18と同様な作用を果たすことになる。その後、上側コンタクト16の垂直部16cのほぼ全体を覆うように溝26の部分に誘電体材料である樹脂を充填して硬化するとにより、高い効果が得られる。また、充填する樹脂はロケータ13とは異なる誘電率を有する樹脂を用いることでインピーダンス調整の自由度も高くなる。なお、垂直部16cのうち、硬化した樹脂で覆われた部分を、ここでは中間部と呼ぶ。
【0034】
この実施形態においても、図1のコネクタ10と外観上は同じコネクタが得られる。
【0035】
図7及び図8を用いて説明したコネクタによると、樹脂が硬化してなる誘電体が、上側コンタクト16の上側ハウジング15から露出した部分を接触的に覆うと共に、取付対象に位置決めされるロケータ13に結合した構造であるので、インピーダンスが整合すると共に上側コンタクト16の接続部16dの位置ずれを防止できる。また、ロケータ13の一部がコネクタシェル14の外部に突出しているので、その突出した部分の画像認識により、位置精度の高いコネクタの表面実装が可能となる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、またその一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るがそれらには限られない。
【0037】
(付記1)
取付対象に搭載されるコネクタ10において、前記取付対象に接続される接続部16d、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部16bを有する複数のコンタクト16と、前記保持部をインサートモールドにより一体に保持した保持部材15と、前記保持部材を前記取付対象に対し位置決めするロケータ13と、前記中間部を接触的に覆いかつ前記ロケータに結合された誘電体18とを含むことを特徴とするコネクタ。
【0038】
(付記2)
前記ロケータは凹部24を有し、前記誘電体は、前記複数のコンタクトの前記中間部とインサートモールドにより一体形成されかつ前記凹部に嵌合結合されている、付記1に記載のコネクタ。
【0039】
(付記3)
取付対象に搭載されるコネクタ10において、前記取付対象に接続される接続部16d、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部16bを有する複数のコンタクト16と、前記複数のコンタクトを前記取付対象に対し位置決めするロケータ13とを含み、前記ロケータは、前記複数のコンタクトの前記中間部を夫々受け入れた複数の溝26を有し、前記中間部を覆っていることを特徴とするコネクタ。
【0040】
(付記4)
前記溝内には誘電体樹脂が充填されていることを特徴とする、付記3に記載のコネクタ。
【0041】
(付記5)
前記保持部材は前記ロケータにボス嵌合により位置決めされている、付記1から4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【0042】
(付記6)
前記保持部材及び前記ロケータの大部分を外側から覆ったシェル14をさらに含み、前記ロケータの一部が前記シェルから突出している、付記1から5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【符号の説明】
【0043】
1 ボデイ
2 コンタクト
3 水平部
4 垂直部
5 接続部
6 溝
7 切欠き
8 ボス
10 コネクタ
11 上側コンタクト組立体
12 下側コンタクト組立体
13 ロケータ
13a ポスト
14 コネクタシェル
14a,14b 固定用脚部
15 上側ハウジング(保持部材)
16 上側コンタクト(コンタクト群)
16a 水平部
16b 折曲部
16c 垂直部
16d 接続部
17 嵌合突起
18 誘電体
18a 係合用突起
18b キー
21 下側ハウジング
21a ポスト
22 下側コンタクト
22a 水平部
22b 垂直部
22c 端子部
23 位置決めボス
24 凹部
24a 係合用突起
24b キー溝
25 貫通孔
26 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に搭載されるコネクタにおいて、前記取付対象に接続される接続部、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部を有する複数のコンタクトと、前記保持部をインサートモールドにより一体に保持した保持部材と、前記保持部材を前記取付対象に対し位置決めするロケータと、前記中間部を接触的に覆いかつ前記ロケータに結合された誘電体とを含むことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロケータは凹部を有し、前記誘電体は、前記複数のコンタクトの前記中間部とインサートモールドにより一体形成されかつ前記凹部に嵌合結合されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
取付対象に搭載されるコネクタにおいて、前記取付対象に接続される接続部、前記接続部から離間した保持部、前記接続部及び前記保持部の間の中間部、及び前記保持部と前記中間部との間で折り曲げられた折曲部を有する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを前記取付対象に対し位置決めするロケータとを含み、前記ロケータは、前記複数のコンタクトの前記中間部を夫々受け入れた複数の溝を有し、前記中間部を覆っていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
前記溝内には誘電体樹脂が充填されていることを特徴とする、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記保持部材は前記ロケータにボス嵌合により位置決めされている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記保持部材及び前記ロケータの大部分を外側から覆ったシェルをさらに含み、前記ロケータの一部が前記シェルから突出している、請求項1から5のいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84464(P2013−84464A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224075(P2011−224075)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】