説明

コモンレール

【課題】コモンレール1のボディ12に強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管17の締結作業を煩雑化することなく、コモンレール1においてあらゆる種類の異物の除去を促進することができる異物除去手段を設定する。
【解決手段】コモンレール1によれば、フィルタ10は、濾紙からなる濾過材をホルダ25に保持させ、このホルダ25を長手方向一端の開口11aから空洞11に挿入することで蓄圧室15に配置される。これにより、従来から存在する大きな開口11aを通して空洞11にフィルタ10を挿入することができるので、締結部18からフィルタ10を挿入しなくても、蓄圧室15にフィルタ10を設けることができる。このため、ボディ12に強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管17の締結作業を煩雑化することなく、コモンレール1に異物除去手段を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関に噴射して供給すべき燃料を高圧状態で蓄圧する蓄圧容器としてのコモンレールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、直噴型の内燃機関に燃料を噴射供給する燃料供給装置では、100MPaを超える高圧の燃料をインジェクタにより噴射するものが公知である。
この燃料供給装置では、サプライポンプにより高圧化された燃料がコモンレールにおいて高圧状態で蓄圧され、コモンレールからインジェクタに高圧の燃料が分配される。そして、インジェクタの開弁または閉弁により高圧の燃料の噴射が開始したり、停止したりする。また、燃料に含まれる異物は、主に、サプライポンプの上流側に組み込まれたメインフィルタにより除去される。
【0003】
ところで、インジェクタ内には、コモンレールで蓄圧された高圧の燃料が導入される各種の空間が形成され、開閉弁に係わる各種の部品は、これらの空間を高圧状態にシールしながらインジェクタ内で移動する。このため、これらの部品は、数μmもの狭い摺動クリアランスを形成しているので、狭い摺動クリアランスに異物が進入すると、インジェクタの作動不良を引き起こす虞がある。
【0004】
そこで、摺動クリアランスへの異物の進入を抑制してインジェクタの信頼性を維持するため、サプライポンプの上流側のメインフィルタとは別に、インジェクタにおける燃料のインレットにフィルタが装備されている(以下、インジェクタのインレットに装備されたフィルタや、メインフィルタのように、燃料に含まれる異物を除去する手段を異物除去手段と呼ぶことがある。)。
【0005】
しかし、近年、更なる噴射圧の高圧化が進んでおり、インジェクタの信頼性向上に対する要請は高まる一方である。そこで、更なる噴射圧の高圧化に対応するため、燃料の流れに関してインジェクタの上流側でインジェクタに近い位置にフィルタ等を追加的に配置して異物除去手段の冗長性を高める検討が進んでいる。
【0006】
例えば、特許文献1には、インジェクタとコモンレールとを接続する燃料配管のコモンレール側の先端部と、コモンレールにボス状に設けられた燃料配管の締結部とにより、ナイロンメッシュを濾過材とするフィルタが保持され、このフィルタが蓄圧室に突出している。
また、特許文献2には、主に、鉄系の金属異物の除去を促進するため、蓄圧室において燃料が滞留しやすいと考えられる領域に磁石を配置している。
【0007】
そして、特許文献1、2の技術を採用することにより、コモンレールに異物除去手段を設定して異物除去手段の冗長性を高めることができる。
また、インジェクタとコモンレールとを接続する燃料配管にフィルタ等の異物除去手段を組み込む場合、より効果的に異物を除去することができるものの、燃料の圧力損失が大きくなる。そこで、コモンレールに異物除去手段を設定することにより、圧力損失の低下を緩和した上で異物除去手段の冗長性を高めることができる。
【0008】
しかし、特許文献1の技術によれば、ボス状の締結部からフィルタを挿入して蓄圧室に突出させる必要がある。これにより、フィルタを挿入するための穴を締結部において大きく開ける必要があり、コモンレールのボディに様々な強度上の問題が発生する虞がある。さらに、コモンレールと燃料配管との間で高圧の燃料を確実にシールするため、燃料配管の先端部、フィルタホルダ、および締結部の3つの同軸度を厳密に管理する必要があり、燃料配管の締結作業が煩雑化する虞がある。
【0009】
また、特許文献2の技術によれば、鉄系の金属異物の除去は促進されるものの、鉄系以外の金属異物や、砂、繊維またはデポジット等の金属以外の異物の除去を促進することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−303232号公報
【特許文献2】特開2011−127552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、コモンレールのボディに強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管の締結作業を煩雑化することなく、コモンレールにおいてあらゆる種類の異物の除去を促進することができる異物除去手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、コモンレールは、長手方向に伸び、かつ、少なくとも長手方向一端が外部に開口する空洞を有する筒状のボディを備え、ボディの長手方向一端に所定の締結体を締結することで、空洞を長手方向一端側で封鎖するとともに、封鎖した空洞を燃料の蓄圧室として機能させる。また、コモンレールは、蓄圧室に収まって燃料の異物を除去するフィルタを備え、フィルタは、繊維からなる濾過材を成形して長手方向一端の開口から空洞に挿入することで設けられている。
【0013】
これにより、従来から存在する大きな開口を通して空洞に濾過材を挿入することができる。このため、ボス状の締結部からフィルタを挿入しなくても、蓄圧室に濾過材を配置してフィルタを設けることができる。この結果、コモンレールのボディに強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管の締結作業を煩雑化することなく、コモンレールに異物除去手段を設定することができる。
【0014】
また、繊維からなる濾過材を利用することで、あらゆる種類の異物の除去を促進することができる。さらに、繊維からなる濾過材は柔軟であり、様々な態様に濾過材を成形して空洞に挿入することができるので、蓄圧室における燃料の流動状態等に応じてフィルタを設けることができる。
【0015】
以上により、コモンレールのボディに強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管の締結作業を煩雑化することなく、コモンレールにおいてあらゆる種類の異物の除去を促進することができる異物除去手段を提供することができる。
なお、ボディの長手方向一端に締結される締結体は、例えば、蓄圧室の燃料圧を検出するレール圧センサ、または、蓄圧室の燃料圧を減圧する減圧弁等の機能品である。
【0016】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、濾過材は、内周側に空間を有する筒体に成形されて空洞に挿入される。
これにより、筒体の内周側に入り込んだ異物は筒体の外に流出しにくくなる。このため、濾過材による異物の捕捉能力を高めることができる。
【0017】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、濾過材は、異物除去能力が異なる複数の層が径方向に同芯状に積み重なる同芯積層体に成形されて空洞に挿入され、同芯積層体では、異物を通しにくい層ほど外周側に配置される。
これにより、蓄圧室において流速が低く異物が滞留しやすい内壁側ほど、異物を捕捉しやすくなるので、異物の捕捉効率を高めることができる。
【0018】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段によれば、ボディは、燃料配管の先端部が締結される複数の締結部を有し、複数の締結部は、空洞に垂直となるようにボス状に設けられて長手方向に並んでいる。また、濾過材は平板状であり、複数の濾過材が空洞において互いに平行かつ長手方向に平行となるように挿入され、さらに、複数の濾過材は、異物を通しにくいものほど締結部から遠くに配置される。
これにより、ボディにおいて燃料配管から蓄圧室への流出入口に近いところでは、燃料の流れを遮らないように濾過材を配置することができる。このため、蓄圧室において、燃料の流れを妨げることなくフィルタを構成することができる。
【0019】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段によれば、フィルタは、濾過材を内周側で保持する筒状のホルダを有し、ホルダは、空洞の内周壁に圧接してボディに固定される。
これにより、例えば、フィルタの圧入等により、フィルタを容易にボディに固定することができる。
【0020】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段によれば、ホルダは、板状材料を丸めて円筒状に成形することで設けられ、スプリングバックにより空洞の内周壁に圧接している。
これにより、ホルダを安価に設けることができる。
【0021】
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段によれば、板状材料は、円筒状に丸められた後に、互いに嵌まり合う凹凸を有し、凹凸が嵌まり合った状態でホルダとして機能する。
これにより、ホルダの真円度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】燃料供給装置の全体構成図である(実施例1)。
【図2】(a)はコモンレールの全体図であり、(b)はコモンレールを長手方向に沿って切断した断面図である(実施例1)。
【図3】(a)は濾過材の斜視図であり、(b)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した断面図であり、(c)は(b)のA−A断面図である(実施例1)。
【図4】(a)は板状材料の部分斜視図であり、(b)はホルダの部分斜視図である(実施例1)。
【図5】(a)は濾過材の材料となる積層体の斜視図であり、(b)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した断面図であり、(c)は(b)のB−B断面図であり、(d)は(b)のC−C断面図である(実施例2)。
【図6】(a)は濾過材の材料となる積層体の斜視図であり、(b)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した断面図であり、(c)は(b)のD−D断面図である(実施例3)。
【図7】(a)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した断面図であり、(b)は(a)のE−E断面図であり、(c)は(b)のF−F断面図であり、(d)は(b)のG−G断面図であり、(e)は(b)のH−H断面図である(実施例4)。
【図8】(a)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した断面図であり、(b)は(a)のI−I断面図である(変形例)。
【図9】(a)はホルダの要部を示す部分斜視図であり、(b)はコモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した部分断面図である(変形例)。
【図10】コモンレールの要部を示す長手方向に沿って切断した部分断面図である(変形例)。
【図11】ホルダの要部を示す部分斜視図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態1のコモンレールは、長手方向に伸び、かつ、少なくとも長手方向一端が外部に開口する空洞を有する筒状のボディを備え、ボディの長手方向一端に所定の締結体を締結することで、空洞を長手方向一端側で封鎖するとともに、封鎖した空洞を燃料の蓄圧室として機能させる。また、コモンレールは、蓄圧室に収まって燃料の異物を除去するフィルタを備え、フィルタは、繊維からなる濾過材を成形して長手方向一端の開口から空洞に挿入することで設けられている。
【0024】
また、フィルタは、濾過材を内周側で保持する筒状のホルダを有し、ホルダは、空洞の内周壁に圧接してボディに固定される。
さらに、ホルダは、板状材料を丸めて円筒状に成形することで設けられ、スプリングバックにより空洞の内周壁に圧接している。また、板状材料は、円筒状に丸められた後に、互いに嵌まり合う凹凸を有し、凹凸が嵌まり合った状態でホルダとして機能する。
【0025】
実施形態2のコモンレールによれば、濾過材は、内周側に空間を有する筒体に成形されて空洞に挿入される。
実施形態3のコモンレールによれば、濾過材は、異物除去能力が異なる複数の層が径方向に同芯状に積み重なる同芯積層体に成形されて空洞に挿入され、同芯積層体では、異物を通しにくい層ほど外周側に配置される。
【0026】
実施形態4のコモンレールによれば、ボディは、燃料配管の先端部が締結される複数の締結部を有し、複数の締結部は、空洞に垂直となるようにボス状に設けられて長手方向に並んでいる。また、濾過材は平板状であり、複数の濾過材が空洞において互いに平行かつ長手方向に平行となるように挿入され、さらに、複数の濾過材は、異物を通しにくいものほど締結部から遠くに配置される。
【実施例】
【0027】
〔実施例1の構成〕
実施例1のコモンレール1の構成を、図面に基づいて説明する。
コモンレール1は、例えば、図1に示すように、直噴型の内燃機関2に噴射して供給すべき燃料を、100MPaを超える高圧状態で蓄圧する蓄圧容器であり、コモンレール1を介して高圧の燃料を内燃機関2に噴射供給する蓄圧式の燃料供給装置3の構成要素である。
【0028】
すなわち、燃料供給装置3は、燃料を高圧状態で蓄圧するコモンレール1と、燃料タンク4から燃料を汲み上げ高圧化してコモンレール1に圧送するサプライポンプ5と、内燃機関2の気筒ごとに搭載され、コモンレール1から燃料の分配を受けて気筒内に燃料を噴射するインジェクタ6と、各種センサから内燃機関2の運転状態を示す検出信号の入力を受けるとともに、これらの検出信号に基づいてサプライポンプ5やインジェクタ6等の動作を制御する電子制御装置(以下、ECU7と呼ぶ。)とを備える。
【0029】
燃料供給装置3によれば、サプライポンプ5により高圧化された燃料がコモンレール1において高圧状態で蓄圧され、コモンレール1からそれぞれのインジェクタ6に高圧の燃料が分配される。そして、インジェクタ6の開弁または閉弁により高圧の燃料の噴射が開始したり、停止したりする。
また、燃料に含まれる異物は、主に、サプライポンプ5の上流側に組み込まれたメインフィルタ8により除去される。
【0030】
ところで、インジェクタ6内には、コモンレール1で蓄圧された高圧の燃料が導入される各種の空間が形成され、開閉弁に係わる各種の部品は、これらの空間を高圧状態にシールしながらインジェクタ6内で移動する。このため、これらの部品は、数μmもの狭い摺動クリアランスを形成しているので、狭い摺動クリアランスに異物が進入すると、インジェクタ6の作動不良を引き起こす虞がある。
【0031】
そこで、摺動クリアランスへの異物の進入を抑制してインジェクタ6の信頼性を維持するため、メインフィルタ8とは別に、インジェクタ6における燃料のインレットにフィルタ(図示せず)が装備されている(以下、インジェクタ6のインレットに装備されたフィルタや、メインフィルタ8のように、燃料に含まれる異物を除去する手段を異物除去手段と呼ぶことがある。)。
【0032】
また、近年の更なる噴射圧の高圧化に対応してインジェクタ6の信頼性を向上するため、コモンレール1に異物除去手段としてのフィルタ10が設けられ、異物除去手段の冗長性が高められている。
以下、コモンレール1およびフィルタ10に関して詳述する。
【0033】
コモンレール1は、図2に示すように、長手方向に伸びる空洞11を有する筒状のボディ12と、空洞11に挿入されて燃料の異物を除去するフィルタ10とを備える。
ここで、空洞11は、長手方向両端で外部に開口するように設けられている。そして、空洞11は、ボディ12の長手方向一端、他端にそれぞれ減圧弁13、レール圧センサ14がネジ締結されて長手方向両端で封鎖されている。これにより、空洞11は、コモンレール1の内部において高圧の燃料が蓄圧される蓄圧室15として機能する。
【0034】
なお、減圧弁13は、蓄圧室15から燃料を逃して蓄圧室15の燃料圧を減圧するものであり、ECU7からの指令に応じて開閉弁する。また、レール圧センサ14は、蓄圧室15の燃料圧を検出するものであり、レール圧センサ14で発生する信号は、ECU7に入力されてサプライポンプ5等の制御に利用される。
【0035】
ボディ12は、燃料配管17のコモンレール1側の先端部17aが締結される複数の締結部18を有する。複数の締結部18は、空洞11に垂直となるようにボス状に設けられて長手方向に並んでいる(以下、複数の締結部18を長手方向他端側に向かって順次に締結部18a、18b、18c、18d、18e、18fと呼ぶことがある。)。
【0036】
そして、複数の締結部18a〜18fの内、最も長手方向一端側にある締結部18aには、減圧弁13により蓄圧室15から逃された燃料を通すための燃料配管17が接続される。また、締結部18b、18c、18e、18fには、コモンレール1とインジェクタ6とを接続する燃料配管17の先端部17aが接続され、締結部18dには、コモンレール1とサプライポンプ5とを接続する燃料配管17の先端部17aが接続される。
【0037】
また、締結部18b〜18fには、燃料配管17内の流路と蓄圧室15との間で燃料を流出入させるための流路19が設けられ、流路19の一端側は、絞り20を形成して蓄圧室15に垂直に接続している。さらに、流路19の他端側は、先端部17aが着座するテーパ状の着座面21を形成して外部に開口している。
【0038】
また、締結部18の外周面には雄ネジが設けられている。そして、先端部17aを袋ナット22に収容するとともに、袋ナット22の雌ネジと締結部18の雄ネジとを締結する。これにより、先端部17aを着座面21に圧接させて流路19の他端側を外部に対して封鎖するとともに、流路19を燃料配管17内の流路と連通させている。
【0039】
フィルタ10は、図2〜図4に示すように、燃料の異物を捕捉する濾過エレメント24と、濾過エレメント24を自身の内周側で保持する筒状のホルダ25とを有し、蓄圧室15に収まって燃料の異物を除去する。
濾過エレメント24は、平板状の濾過材26を渦巻状に丸めて成形したものであり(図3(c)参照。)、隣り合う締結部18の流路19間の長手方向距離よりも短くなるように設けられている。また、濾過材26は、例えば、蛇腹状に折りたたまれた濾紙27aを平面状の2つ濾紙27bで挟み、濾紙27aの蛇腹頂部と濾紙27bの表面とをホットメルト系接着剤により接着して設けられている。
【0040】
ホルダ25は、例えば、内周側で濾過エレメント24を保持する複数の筒部29と、筒部29同士を長手方向に接続する複数本の接続部30とを有する。複数の筒部29の内、長手方向の一端にある筒部29aには、空洞11の内周壁に圧接する線状の凸部31が設けられている。また、それぞれの筒部29の内周壁には、例えば、ホットメルト系接着剤により濾過エレメント24が接着されて保持されている。
【0041】
そして、フィルタ10は、例えば、筒部29aが空洞11において長手方向一端に配されるように、長手方向一端の開口11aから空洞11に挿入される。このとき、フィルタ10の外周は、凸部31の存在により、空洞11の内径よりも大きくなっているので、フィルタ10は、圧入により空洞11に挿入される。そして、フィルタ10は、凸部31が空洞11の内周壁に圧接することでボディ12に固定される。
【0042】
また、ホルダ25は、例えば、金属製の板状材料32を丸めて円筒状に成形することで設けられ、スプリングバックにより空洞11の内周壁に圧接している。ここで、板状材料32は、予め、ホルダ25を長手方向に対して垂直に展開した形状となるようにプレス等により成形されている。また、板状材料32は、円筒状に丸められた後に、互いに嵌まり合う凹部33および凸部34を有し、凹部33と凸部34とが嵌まり合った状態でホルダ25として機能する。なお、凹部33および凸部34は、板状材料32において筒部29をなす部分に設けられている。
【0043】
〔実施例1の効果〕
実施例1のコモンレール1は、蓄圧室15に収まって燃料の異物を除去するフィルタ10を備え、フィルタ10は、濾紙27a、27bからなる平板状の濾過材26を渦巻き状に成形してホルダ25に保持させ、このホルダ25を長手方向一端の開口11aから空洞11に挿入することで蓄圧室15に配置される。
【0044】
これにより、従来から存在する大きな開口11aを通して空洞11にフィルタ10を挿入することができる。このため、締結部18a〜18fからフィルタ10を挿入しなくても、蓄圧室15にフィルタ10を設けることができる。この結果、ボディ12に強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管17の締結作業を煩雑化することなく、コモンレール1に異物除去手段を設定することができる。
【0045】
また、濾紙27a、27bからなる平板状の濾過材26を利用することで、鉄系の金属異物に係わらず、あらゆる種類の異物の除去を促進することができる。さらに、濾紙27a、27bからなる濾過材26は柔軟であり、渦巻き状に限定されず様々な態様に濾過材26を成形して空洞11に挿入することができるので、蓄圧室15における燃料の流動状態等に応じたフィルタ10を設けることができる。
以上により、コモンレール1のボディ12に強度上の問題を発生させることなく、また、燃料配管17の締結作業を煩雑化することなく、コモンレール1においてあらゆる種類の異物の除去を促進することができる異物除去手段を提供することができる。
【0046】
また、フィルタ10は、濾過材26を自身の内周側で保持する筒状のホルダ25を有し、ホルダ25は、空洞11の内周壁に圧接してボディ12に固定される。
これにより、フィルタ10の圧入により、フィルタ10を容易にボディ12に固定することができる。
【0047】
また、ホルダ25は、板状材料32を丸めて円筒状に成形することで設けられ、スプリングバックにより空洞11の内周壁に圧接している。
これにより、ホルダ25を安価に設けることができる。
さらに、板状材料32は、円筒状に丸められた後に、互いに嵌まり合う凹部33および凸部34を有し、凹部33と凸部34とが嵌まり合った状態でホルダ25として機能する。
これにより、ホルダ25の真円度を高めることができる。
【0048】
〔実施例2〕
実施例2のコモンレール1によれば、図5に示すように、濾過材26は、内周側に空間を有する筒体に成形されて濾過エレメント24となっている。すなわち、濾過エレメント24は、内周側に空間を有する筒体をなしている。また、実施例2の濾過エレメント24は、長手方向に関してすべての筒部29に保持されるように長く設けられている。さらに、実施例2の濾過材26は、例えば、蛇腹状の濾紙27aを平面状の2つ濾紙27bで挟んだ層を複数積層した後(図5(a)参照。)、蛇腹の波形が切断面に現れるように切断することで設けられている。そして、蛇腹の波形が内周側および外周側の両側で現れるように、濾過材26を筒状に丸めて濾過エレメント24を設ける(図5(d)参照。)。
【0049】
これにより、濾過エレメント24の内周側に入り込んだ異物は外周側に流出しにくくなるので、異物の捕捉能力を高めることができる。
なお、濾紙27aの蛇腹頂部と濾紙27bの表面とは、例えば、ホットメルト系接着剤により接着されている。
【0050】
〔実施例3〕
実施例3のコモンレール1によれば、図6に示すように、濾過材26は、異物除去能力が異なる複数の層が径方向に同芯状に積み重なる同芯積層体に成形されて濾過エレメント24となっている。すなわち、濾過エレメント24は、異物除去能力が異なる複数種の層が同芯状に積み重なって同芯積層体をなしている。そして、濾過エレメント24では、異物を通しにくい層ほど外周側に配置される。さらに、濾過エレメント24は、長手方向の両側で内周側ほど径小となるようにテーパ状に窪んでいる。
【0051】
また、実施例3の濾過材26は、例えば、蛇腹状の濾紙27aを平面状の2つ濾紙27bで挟んだ層を複数積層することで設けられている。ここで、例えば、図6(a)に示すように上下を定義すると、蛇腹の振幅および蛇腹の周期は、上側の層ほど小さくなるように設けられている。そして、濾過材26の下面側が内周側となるように、かつ、濾過材26の上面側が外周側となるように濾過材26を丸めて濾過エレメント24を設ける。
【0052】
これにより、濾過エレメント24において、異物を通しにくい層ほど外周側に配置することができるので、蓄圧室15において流速が低く異物が滞留しやすい内壁側ほど、異物を捕捉しやすくなり、異物の捕捉効率を高めることができる。
なお、濾紙27aの蛇腹頂部と濾紙27bの表面とは、例えば、ホットメルト系接着剤により接着されている。
【0053】
〔実施例4〕
実施例4のコモンレール1によれば、図7に示すように、筒部29により、複数の平板状の濾過材26が互いに平行かつ長手方向に平行となるように保持されている。すなわち、濾過エレメント24は、ホルダ25の内周側で互いに所定の距離だけ離れて保持される複数の濾過材26である。また、濾過材26は、実施例2の濾過材26と同様に、蛇腹状の濾紙27aを平面状の2つ濾紙27bで挟んだ層を複数積層した後、蛇腹の波形が切断面に現れるように切断することで設けられている。
【0054】
ここで、それぞれの濾過材26は、蛇腹の振幅および蛇腹の周期が互いに異なるように設けられて異物捕捉能力が異なっている。そして、濾過エレメント24では、例えば、蛇腹の振幅および蛇腹の周期が大きいものから順に並ぶように複数の濾過材26がホルダ25に保持される。そして、フィルタ10は、それぞれの濾過材26が締結部18の流路19と垂直となるように、かつ、異物を通しにくい濾過材26ほど締結部18から遠くに配置されるように空洞11に挿入される。
【0055】
これにより、ボディ12において燃料配管17から蓄圧室15への流出入口に近いところには、燃料の流れを遮らないように、蛇腹の振幅および蛇腹の周期が大きい濾過材26を配置することができる。このため、蓄圧室15において、燃料の流れを妨げることなくフィルタ10を配置することができる。
なお、濾紙27aの蛇腹頂部と濾紙27bの表面とは、例えば、ホットメルト系接着剤により接着されている。
【0056】
〔変形例〕
コモンレール1の態様は実施例1〜4に限定されず、様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例1〜4のコモンレール1によれば、濾過エレメント24は、ホルダ25に保持されていたが、図8に示すように、ホルダ25を用いることなく、濾過エレメント24を、直接、空洞11に挿入して蓄圧室15にフィルタ10を設けてもよい。このとき、濾過エレメント24には接着剤を含浸させて乾かしておく。そして、接着剤を含んだ濾過エレメント24を空洞11へ挿入した後に加熱することで、接着剤により濾過エレメント24を空洞11の内周壁に固定することができる。
【0057】
また、実施例1〜4のコモンレール1によれば、フィルタ10は、線状の凸部31が空洞11の内周壁に圧接することでボディ12に固定されていたが、図9に示すように、例えば、筒部29aに濾過エレメント24を保持させることなくフィルタ10を設けて空洞11に挿入した後、筒部29aを部分的に内側から外側に向けて打ち出すことで隆起36を設けてフィルタ10を固定してもよい。
【0058】
また、図10に示すように、筒部29aを長手方向一端側ほど径大となるテーパ状に設けて筒部29aを空洞11に圧入することで、フィルタ10をボディ12に固定してもよい。また、図11に示すように、接続部30を板バネとして機能するように外側に膨らませることで、接続部30を空洞11の内周壁に圧接させてフィルタ10をボディ12に固定してもよい。
さらに、実施例1〜4のコモンレール1によれば、濾過材26は、濾紙27a、27bを材料として設けられていたが、紙以外の繊維(例えば、合成繊維、炭素繊維やガラス繊維等)を材料として濾過材26を設けてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 コモンレール
10 フィルタ
11 空洞
11a 開口
12 ボディ
13 減圧弁(締結体)
14 レール圧センサ(締結体)
15 蓄圧室
17 燃料配管
17a 先端部
18、18a〜18f 締結部
25 ホルダ
26 濾過材
32 板状材料
33 凹部(凹)
34 凸部(凸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸び、かつ、少なくとも長手方向一端が外部に開口する空洞(11)を有する筒状のボディ(12)を備え、
このボディ(12)の長手方向一端に所定の締結体(13、14)を締結することで、前記空洞(11)を長手方向一端側で封鎖するとともに、封鎖した前記空洞(11)を燃料の蓄圧室(15)として機能させるコモンレール(1)において、
前記蓄圧室(15)に収まって燃料の異物を除去するフィルタ(10)を備え、
このフィルタ(10)は、繊維からなる濾過材(26)を成形して長手方向一端の開口(11a)から前記空洞(11)に挿入することで設けられていることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のコモンレール(1)において、
前記濾過材(26)は、内周側に空間を有する筒体に成形されて前記空洞(11)に挿入されることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコモンレール(1)において、
前記濾過材(26)は、異物除去能力が異なる複数の層が径方向に同芯状に積み重なる同芯積層体に成形されて空洞(11)に挿入され、
前記同芯積層体では、異物を通しにくい層ほど外周側に配置されることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項4】
請求項1に記載のコモンレール(1)において、
前記ボディ(12)は、燃料配管(17)の先端部(17a)が締結される複数の締結部(18、18a〜18f)を有し、
この複数の締結部(18、18a〜18f)は、前記空洞(11)に垂直となるようにボス状に設けられて長手方向に並んでおり、
前記濾過材(26)は平板状であり、複数の前記濾過材(26)が前記空洞(11)において互いに平行かつ長手方向に平行となるように挿入され、
さらに、複数の前記濾過材(26)は、異物を通しにくいものほど前記締結部(18、18a〜18f)から遠くに配置されることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載のコモンレール(1)において、
前記フィルタ(10)は、前記濾過材(26)を内周側で保持する筒状のホルダ(25)を有し、
このホルダ(25)は、前記空洞(11)の内周壁に圧接して前記ボディ(12)に固定されることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項6】
請求項5に記載のコモンレール(1)において、
前記ホルダ(25)は、板状材料(32)を丸めて円筒状に成形することで設けられ、スプリングバックにより前記空洞(11)の内周壁に圧接していることを特徴とするコモンレール(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のコモンレール(1)において、
前記板状材料(32)は、円筒状に丸められた後に、互いに嵌まり合う凹凸(33、34)を有し、この凹凸(33、34)が嵌まり合った状態で前記ホルダ(25)として機能することを特徴とするコモンレール(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−108371(P2013−108371A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252135(P2011−252135)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】