コラムの置換築造方法
【課題】 置換コラム同士を互いに略接して築造する方法や置換コラム同士をオーバーラップして築造しても、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの置換築造方法を提供する。
【解決手段】 先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接してまたはオーバーラップして後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造する
【解決手段】 先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接してまたはオーバーラップして後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木・建築構造物の基礎工法としてのコラムの置換築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築構造物の基礎工法として、従来、深層混合処理工法、流動化処理土工法、PIP杭工法およびRGパイル工法等が提案されている。
深層混合処理工法は、地盤中に掘削撹拌混合装置を挿入し、固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に円柱状の地盤改良体を築造する工法(例えば、特許文献1参照)であり、掘削撹拌混合装置を地盤中に掘進させる時に固化材を填充する方法と、逆に上方へ引上げるときに固化材を填充する方法がある。また、固化材は水と撹拌混合してスラリー状にして使用する方法と、固化材を粉末状のまま使用する方法とがある。
【0003】
流動化処理土工法は、連続スパイラルオーガにより掘削排土した土砂を地上のミキサーで固化材と混合し、ソイルセメントとした後、該ソイルセメントを掘削した場所に再び戻すことにより地盤改良を行うものである(例えば、特許文献2および3参照)。
【0004】
PIP杭工法は、連続したフライトをもつオーガの中空のシャフトの頭部に駆動装置を取り付け、この装置全体を櫓に吊り下げ、地中に回転させながら所定の深さまで掘削し、所定の深さに達したら、シャフト先端部よりモルタルを圧入しながら徐々に引上げることによってモルタル杭を造成し、オーガ引上げ後ただちに鉄筋篭または形鋼をモルタル杭の中に建て込むものである(例えば、特許文献4および非特許文献1参照)。
【0005】
また、RGパイル工法は、中空軸を有するアースオーガの回転により土砂を上方に排除しながら所定の深さまで掘削し、次にオーガを引上げつつ、中空軸先端オーガヘッドの噴出口からモルタルを圧入して地中に場所打ち杭を造成するものである(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−247228号公報(請求項3、段落番号0002)
【特許文献2】特開平8−260450号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3280710号公報(請求項1)
【特許文献4】特許第3306460号公報(段落番号0002)
【非特許文献1】地下連続壁工法 設計・施工ハンドブック 社団法人日本建設機械化協会編 技報堂出版株式会社発行(第427頁〜第430頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記深層混合処理工法においては、次のような課題がある。
(1)固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に地盤改良体を築造する工法であるため、改良対象地盤の土質の物性が一定でないことに起因して、改良土の品質は特に一軸圧縮強度のバラツキが大きいという欠点がある。そのため、改良する目標強度をバラツキに相応する分だけ設計強度よりも大きくしなければならず、固化材添加量が増え、不経済であった。
(2)深層混合処理工法においては、粘着力の大きな粘性土地盤では共回り現象の発生により混合不良が発生し、目標とする品質を確保出来ないことが多かった。
(3)有機質土やピート等の有機質分が多量に含まれている土層やロームや赤ボク黒ボク等の火山灰質粘性土では地盤改良体の硬化不良が発生したりして、目標とする品質を確保出来ないことが多かった。
(4)有機質分が多量に含まれている地盤では、固化材添加量を多く必要とするため、不経済であった。
【0007】
(5)地盤が複数の土層で構成されている場合は、強度発現が最も低い土層に必要な固化材添加量を全深度範囲に填充するため、他の土層部分には必要以上の量の固化材を添加しなければならず、不経済であった。また、その分だけ建設発生土(残土)量が増え、環境に対する負荷が大きかった。
(6)撹拌混合が確実に行われたとしても、ソイルセメントの発現強度は改良対象の土質に依存するため、事前に予想していない土質が出現した場合には改良土の一軸圧縮強度が目標値に達せず不良工事になる恐れがあった。
(7)深層混合処理工法では腐植土や有機質土などのように大量の固化材を添加しても発現強度が小さいことに起因して、同一荷重を支持するのにより広い面積を改良する必要があった。これに伴い、地盤改良に要する改良対象土量が増えるのみならず、基礎のフーチング体積も増えるため、建設コストが増大していた。
【0008】
また、前記流動化処理土工法にも次のような課題がある。
(1)地上のミキサーで現地の土砂と固化材を混合するため、現地発生土砂を使用するので、施工対象地盤の土質の物性や土質のバラツキに起因して、改良後の品質はバラツキが大きいという欠点がある。また、現地の土砂と固化材を混合するため、所要の一軸圧縮強度を得るために多量の固化材を必要とし、不経済となる場合がある。
(2)掘削土砂を地上へ排出し、それを地上のミキサーで固化材と混合してスラリー状の流動化処理土とし、再び元の位置へ戻す工程であるため、施工工程が増え、コストが高い。
(3)一時的とはいえ、改良すべき箇所の土砂を掘削し除去するため、それまでの上載荷重による応力バランスが崩れて支持地盤が緩む。そのため、掘削底地盤の支持力が低下する。
(4)土砂を除去した底面の処理を丁寧にしないと、構造物からの鉛直荷重が作用したときに場所打ち杭の先端スライムと同様な初期沈下の問題が発生する。
【0009】
さらに、PIP杭工法およびRGパイル工法にも次のような課題がある。
(1)モルタル製造に用いる細骨材の水分管理が必要であり、現実的に品質のバラツキが生ずる。
(2)モルタルは細骨材を含有しているため、モルタルはフロー値が18〜20秒の流動性の高いものを使用せざるを得なく、ブリージングが発生しやすくなるばかりか、モルタルの流動性が高いため、掘削土砂等がモルタル中に落ち込み、モルタル中に土砂等が混入される。
(3)砂質土層や礫質土層などでは、湧水、地下水圧に起因する孔壁崩壊が起り易いので、掘削に際しベントナイト泥水、またはこれに少量のセメントを混合したものを用いる必要がある。また、ベントナイトは汚泥となるため後の処理に莫大な費用が発生する。
(4)その結果、モルタル柱底面と支持地盤との間にスライム層が形成されるため、スライム処理工程が必要となる。
(6)また、PIP杭工法およびRGパイル工法では、孔壁崩壊を防ぐため、施工時に地表面までモルタルで充填する必要がある。また、モルタル充填後、鉄筋篭等を挿入するため、結果として根切り時の頭部整形が困難となる。
【0010】
このような課題を解決するために、本出願人は、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの置換築造方法を提供している。
即ち、このような課題を解決するために本出願人は、先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラムとすることを特徴とするコラムの置換築造方法を特願2005−109463として先に出願している。
しかしながら、前記の特願2005−109463では、単独の置換コラムの築造方法を例示しているのみで、置換コラム同士を互いに接して築造する方法や置換コラム同士をオーバーラップして築造する方法については開示しなかった。
【0011】
この発明の目的は、置換コラム同士が未硬化の内に互いに略接して築造する方法や置換コラム同士を一部オーバーラップして築造する方法を提供することである。即ち、置換コラム同士を互いに略接して築造する方法や置換コラム同士を一部オーバーラップして築造しても、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの置換築造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、以上に示したような課題を解決せんと提案されたものであり、この発明のコラムの第1の置換築造方法は、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とする。
【0013】
なお、本発明で、先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造するとの用語は、先行置換コラムと後行の置換コラムとが互いに接する場合の他に、先行置換コラムと後行の置換コラムとがほんの少し重なる場合や先行置換コラムと後行の置換コラムとがほんの少し離れているが通常の施工方法では後行コラムの築造の際に先行コラムの中に土砂が混入する虞がある場合も含む。また、填充材が未だ固まらない内にとの用語は、填充材が凝結する以前の流動性を有している状態を指しており、通常は混練から3時間程度であるが、硬化遅延剤を使用すればその時間は任意に設定することができるので、時間の概念は含まない。
【0014】
この先行置換コラムと後行の置換コラムとが互いに接する場合の例を図1に示す。
図1(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20に接する位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラムの築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、先行置換コラム20に接した後行の置換コラム21を築造する。
【0015】
この発明のコラムの第2の置換築造方法は、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムと一部オーバーラップした状態で後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とする。
【0016】
この先行置換コラムと後行の置換コラムとがオーバーラップする場合の例を図2に示す。
図2(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20に一部オーバーラップする位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、先行置換コラム20にオーバーラップした後行の置換コラム21を築造する。
【0017】
なお、図1や図2に示した例では、支持層は傾斜していないので後行の置換コラムの置換底位置は、先行の置換コラムの置換底位置とが同じ深度位置になっているが、置換コラムの底端位置を支持層内に位置させるので、例えば、図3に示したような支持層が傾斜している地盤においては、後行の置換コラム21の置換底位置は、先行の置換コラム20の置換底位置よりも深い位置になり、図3における傾斜とは逆方向に傾斜している場合は、後行の置換コラム21の置換底位置は、先行の置換コラム20の置換底位置よりも浅い位置になる。
【0018】
また、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガ2の先端部から吐出する所望のタイミングとは、図4(a)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始してもよく、図4(b)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、その位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材の吐出を開始してもよく、図4(c)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始して、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(d)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材の吐出を開始し、所定の深度に達したら、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(e)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材の吐出を開始し、その状態で置換コラムを築造すべき所定の深度まで掘進し、所定の深度に達したら填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、また、図4(f)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達した後にスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した状態で填充材の吐出を開始してもよく、図4(g)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達した後にスクリューオーガを少し引き上げ、その位置で填充材の吐出を開始してスクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻し、填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(h)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始して、そのままスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、填充材の吐出を一旦停止し、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した後に填充材の吐出を開始し、填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(i)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したらスクリューオーガを少し引きげ、その状態から、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した状態で填充材の吐出を開始して、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(j)に示すように置換コラムを築造すべき所定の深度に達したら填充材の吐出を開始してスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、填充材の吐出を一旦停止し、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した後に填充材の吐出を開始し、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよい。
なお、図4(d)(e)の場合のように置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材吐出を開始する場合は、築造する置換コラム底部の品質がよりよいものになるが、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材吐出をした填充材が排土中に混ざって排土される量が多くなる虞があり、地上に排出された排土から填充材が混合された排土を分離する作業が増える虞があるので、この点では填充材の吐出開始時期は、図4(a)(b)(f)(c)(g)(h)(i)(j)の場合のように、コラムの置換低位置に達した後、スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが好ましい。さらに図4(a)(b)(f)のようにコラムの置換底位置からのスクリューオーガの引き上げ開始前にスクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが特に好ましい。
【0019】
また、この発明の置換コラムの第1の置換築造方法においてもこの発明の置換コラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムの築造の際に、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガであれば、スクリューオーガとしてケーシング付きスクリューオーガを使用しても差し支えない。
【0020】
この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合、特に好ましくは、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することである。
【0021】
この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、後行の置換コラムを築造する場合、特に好ましくは、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することである。
【0022】
勿論、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合も後行の置換コラムを築造する場合も、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが最も好ましい。
【0023】
なお、本発明ではスクリューオーガの正回転とは、掘進時および引き上げ時に掘削された土砂がスクリューオーガで地上側に移動される方向にスクリューオーガが回転する方向を指す。
【0024】
また、掘削部は下記のいずれかの部分を指す。スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼の他にスクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪を有する場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼とスクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪が掘削部であり、スクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪が存在しない場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼が掘削部である。
【0025】
また、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合も後行の置換コラムを築造する場合も、填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、コラムの置換予定上端位置まで該スクリューオーガを正回転で引上げることが更に好ましい。
【0026】
なお、先行の置換コラムを築造する場合も、後行の置換コラムを築造する場合も、填充材の吐出量は、スクリューオーガ乃至ケーシング付きスクリューオーガの引き上げに伴い生ずる空隙体積にほぼ見合う量とすればよい。これより少なければ、置換コラム中に混入する土砂の量が増えて不良コラムとなり易く、これより多ければ後工程で残土として処分する置換予定上端位置以浅に填充材が混入するため、残土が産業廃棄物となり、処分費が高くなる。
【0027】
更に、填充材をオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、図1(e)〜(f)や図2(e)〜(f)に示したように、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを逆回転させながら引上げることにすれば、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換範囲には土砂を排出せずにそのまま残置することが可能となる。
【0028】
前記填充材は、少なくとも水硬性を有する粉体と混練水との混合物からなり、該粉体はセメント単独でもよく、他に混和材や混和剤を含んでいるのでもよく、填充材は特に制限されるものではないが、土砂や骨材を含まない填充材である必要がある。なお、この発明では、骨材とはコンクリートでいう細骨材や粗骨材を意味し、高炉スラグやフライアッシュ等の粉体は骨材ではない。土砂や骨材を含む填充材を使用すると従来技術に記載したような欠点が生じる。
なお、請求項に記載したように、前記填充材は練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである必要がある。
【0029】
また、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150〜400mm、好ましくは150〜330mmに設定することで、掘削孔内における流動充填性を確保し、また孔壁崩壊を防ぎ、さらに置換範囲上方の土砂が置換されて填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。
練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150mm〜400mmとするのは、150mm未満では、配管内の抵抗(摩擦力)が大きくなり施工時に時間がかかりすぎるか、施工(吐出)不能になり、400mmを超えるとコラム中に土砂が多く混入される可能性が多くなるためである。
【0030】
なお、テーブルフロー値は、JIS R 5201のセメントの物理試験方法において規定されたフローテーブルの直径300mmの代わりに、この直径300mmのフローテーブルの上に直径500mmの板を固定して測定したテーブルフロー値である。
【0031】
このような填充材は、安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を填充材に使用することにより、填充材のコストを下げることが出来るし、填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
なお、フライアッシュまたは高炉スラグ粉体との配合比はセメント1重量部に対し、フライアッシュまたは高炉スラグ粉体が3乃至20重量部であり、加水混合された状態で前記したテーブルフロー値のコンシステンシーを有する填充材とすることができる。一般的にこの場合、セメントとフライアッシュまたは高炉スラグ粉体の合計重量に対し、含水量は30〜50%である。置換されたコラムの一軸圧縮強度を高めるには、高炉スラグ粉末を使用することが望ましい。
【0032】
また、填充材をスクリューオーガに供給する際に、スクイズ式ポンプやプランジャー式ポンプの他にスネーク式ポンプも使用できる。
なお、スネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)により填充材を該オーガ先端部に供給し、該填充材を該オーガ先端部から吐出するようにすると、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーが低いものでも施工できるので特に好ましい。例えば練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜260mmのものでも施工できる。
【0033】
そして本発明方法によれば、原地盤と填充材を撹拌混合することがないので地上のミキサーで混練した状態の品質とほぼ同じ品質のコラムを得ることができるし、深層混合処理工法による地盤改良体に比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができるし、また、填充材の配合を調整することでコラムの一軸圧縮強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来る。
【0034】
後行の置換コラムの築造の際に使用可能なスクリューオーガは、ケーシング付きスクリューオーガであり、少なくともコラム築造長に相当する長さの円筒形のケーシングにて覆われている構造のものが特に好ましい。該円筒形のケーシングは、スクリューオーガと同軸的に、かつ相対的に正逆回転可能に装着されたものや、ケーシングが独立に回転可能に装着されたものがあるが、ケーシングが回転しないように固定されたものは安価な一軸モータを使用することができる。しかしながら、施工時に予期せぬトラブルが発生したときなどに、ケーシングを回転させることが必要になる場合があるので、ケーシングを回転させることができるオーガーモータを使用することが好ましい。
また、スクリューオーガとケーシングを互いに上下方向に分離独立させて、相対的に上下可動にすれば、さらに好ましい。
【0035】
ケーシング付きスクリューオーガ1の一例を図5に示す。この例ではケーシング6が固定され、アダプタ7、下部カップリング8と上部カップリング9を介してスクリューオーガ2がオーガモータ10にて回転できる構造になっており、図5のケーシング6の外観を図6に示した。なお、図5ではスクリューオーガ2の一部しか図示していないが、掘削部を有するスクリューオーガの先端部は、図7に示す構造になっており、オーガ軸4の先端近傍に吐出口5が設けられている。即ち、オーガ軸4の中空部が填充材の直接的又は間接的な通路となり、そのオーガ軸4の先端近傍に吐出口5が設けられている。図7(a)(c)ではオーガ軸4の先端近傍の側面に開口して設けられ、図7(b)(d)ではオーガ軸4の先端が開口して吐出口となっている。なお、図7において(a)と(b)の例では、オーガ先端に位置するスパイラル翼に、複数の掘削爪3aが付けられており、(c)と(d)の例では、オーガ先端に位置するスパイラル翼の先端がナイフ状の平爪3bとなりこの部分が掘削爪に相当している。
【0036】
また、後行の置換コラムの築造の際は、スクリューオーガのケーシングを回転させるとケーシング外周面に付着した周辺の土砂が先行置換コラム中に巻き込まれる虞があるので、ケーシングの回転を停止し、又は無回転とした方が、先行の置換コラムに土砂等の土塊混入等の悪影響を及ぼさないようにすることができるので特に好ましい。なお、実質的に無回転状態といえるほんの少しケーシングが回転する場合では、先行置換コラムへの土砂の混入は微少であり、あるいは土砂の混入が殆どないので、実質的に無回転状態といえる状態は無回転ということもできる。
【0037】
なお、先行のコラムを築造する場合は、上述したケーシング付きスクリューオーガの他に下記のスクリューオーガを使用することができる。
即ち、この先行のコラムの置換築造方法で使用可能なスクリューオーガとして、スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガ、スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガ、連続するスパイラルスクリューのスクリュー縁部に縁板が付いているオーガおよびスパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガ、等を挙げることができる。勿論、スパイラル翼が同一高さに180度の位相差で2枚設けられたオーガでもよい。
【0038】
スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガによれば、汎用的なスパイラルスクリューオーガを使用することにより、容易に置換作業が出来る。
スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガによれば、砂質地盤や礫質地盤のような崩壊性の地盤では、連続スパイラルスクリューで掘進すると、必要以上に掘削土を排出する可能性があるので、断続スパイラルスクリューオーガを使用することにより、排土量を低下させ、周辺地盛の乱れによる緩みを少なくすることが出来る。その結果として支持地盤の乱れを少なくすることができる。また、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径と同一であってもよいが、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径より小径にすればさらに排土量を低下させることが可能になる。
【0039】
また、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼と同一であってもよいが、断続スパイラルスクリューの外径を掘削翼より小径にすれば、地盤の掘進抵抗が更に緩和される。
さらに、スパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガやスパイラルスクリュー外周に縁板が付いているオーガによれば、孔壁崩壊を防ぐ作用があり、簡便な装置でケーシングを使用するときと同様に確実な原地盤との置換ができる。また、地上に引上げたオーガの土砂落とし作業がケーシングを使用するときに比べて容易に出来る。
【0040】
なお、上記した他に、スパイラルスクリューに縁板が付いているスクリューオーガの場合は、スクリュー部に沿って排出されつつある掘削土がスクリュ−端部からこぼれ落ちる可能性が一番低くなる。
また、スクリューオーガの先端に有する掘削部として、スクリューオーガの軸先端に設けられた掘削爪及びスパイラル翼の先端に設けられた掘削爪を例示できる。この掘削翼の掘削爪およびスパイラルオーガ軸先端の掘削爪は、掘削(特に硬質地盤)において威力を発揮するが、このスパイラル翼の先端に設けられた掘削爪は地盤状況等によっては平爪であってもよい。
【0041】
掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、置換コラム築造終了後に掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
【発明の効果】
【0042】
この発明のコラムの置換築造方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)置換コラム同士を互いに略接して築造する方法や置換コラム同士をオーバーラップして築造しても、対象地盤の性状に左右されず、先行および後行置換コラム内や互いのコラムの接触部やオーバーラップ部分に土塊混入のない安定した品質のコラムを置換築造することができる。
なお、置換コラム同士をオーバーラップして築造すると、コラム同士間の隙間を確実に無くすとともに、コラム同士を一体化することができる。
(2)少なくとも後行の置換コラムの築造の際にケーシング付きスクリューオーガを使用しているので、先行置換コラムと、施工中の後行コラムは常にケーシングにより遮断されているので、後行の置換コラムの築造の際の掘進時に生じる掘削土が未硬化の先行の置換コラム中に混入することなく、先行置換コラムの未だ固まらない填充材が後行置換コラム側に引き込まれることもないし、また後行のコラムにも掘削土が混合することもない。この結果、連接して築造された一連の置換コラムには土砂が混合されておらず、所望した形状寸法が確保され、特に掘削土が混入しない状態でコラムの置換が確実に行えて、地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質で、一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
【0043】
(3)後行の置換コラム施工中に先行置換コラムの填充材の後行置換コラムへの移動がケーシングによって遮断されるので、先行置換コラムから後行置換コラムへの移動が起こらないため、置換コラム天端の上下移動は発生しない。
(4)その結果、置換コラム同士を接円状態やオーバーラップさせて施工することが可能になり、かつ効果的に所望の形状寸法を確保した一連の複数の置換コラムを一体化して築造することができる。
(5)ケーシング付きスクリューオーガを使用していると周辺地盤と施工中の置換コラムがケーシングにより遮断されているので、崩壊性の高い地下水位の高い砂質系地盤中でも、孔壁の崩壊が防止でき、かつ填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmであるので、填充材が周辺地盤に流出(浸出)する虞が無く、所望の形状寸法を確保した一連の置換コラムを築造することができる。
【0044】
(6)この発明のコラムの置換築造方法によれば、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換された填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果、地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質で一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
(7)また、この発明のコラムの置換築造方法によれば、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換されて填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果所定の置換範囲内を置換しその上方の非置換範囲の土砂を地上に排出せずにそのまま残置することが可能となる。
【0045】
(8)(2)や(3)と同様の理由から、深層混合処理工法による地盤改良体に比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができる。
(9)また、同様の理由から、置換コラムの強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来る。
(10)填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
(11)安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を混和材として填充材に使用した場合は、填充材のコストを下げることが出来る。
【0046】
(12)スパイラルオーガは掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、掘削爪を設けたスパイラル翼先端または掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
(13)この発明によって得られた置換コラムは高い品質のものとすることができるので、従来の地盤改良体に比して同一荷重を支持するために少ない面積のコラムで充分となる。そのため構造物の基礎のフーチング体積も小さくなり、フーチングのコンクリート量の低減のみならず、フーチング構築に伴う建設発生土の減少を図ることが可能となり、建設コストを大幅に縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明方法による実施例と比較例を示しながらこの発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
なお、実施例で使用した材料としては、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメントの密度3.15g/cm3:表1ではCと表記する。)とフライアッシュJIS II種(株式会社ジェイペックの密度2.25g/cm3:表1ではFと表記する。)であり、これらを水(表1ではWと表記する。)と共に、表1に示す填充材1m3当たりの示方配合で、二軸強制練りミキサーで撹拌混合して実験に使用する填充材とした。表1に示すように、練上りの填充材量は1,000リットルで、テーブルフロー値は当初の計画どおり188〜193mmであった。
なお、テーブルフロー値が150〜260mmとなる配合、特にテーブルフロー値が150〜200mmとなる配合の場合は、パン式強制練りミキサーや二軸式練りミキサーを使用して混練することが好ましく、この例ではコンクリート用の二軸強制練りミキサーを使用した。なお、テーブルフロー値が260〜400mmとする場合は、グラウトミキサーも使用可能である。
【0048】
【表1】
【0049】
先ず、図8に示すように、実施例1として、使用したケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1は、外側ケーシング6の外径が750mm、内側スパイラルスクリュー2の直径が700mmであり、地盤中に直径750mmの掘削孔を造ることができるオーガである。施工機11はベースマシン12として80トン級の三点支持式杭打ち機、ミキサー13はコンクリート用の二軸強制練りミキサー、ポンプ14はスネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)を使用した。
【0050】
図2に示したように、先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20にオーバーラップする位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながらケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1の引上げ体積に見合う量の填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20にオーバーラップした後行の置換コラム21を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が混入していなかった。
【0051】
築造した先行置換コラム20及び後行の置換コラム21は、いずれも直径750mmであり、空掘り部の長さは0.5mとし、置換コラム長は、2.0mとし、置換コラム同士20、21の中心間隔を55cmとして築造した。
この後行の置換コラム21を築造するために、ケーシング付きスクリューオーガ1にて掘進する状態を図9(a)(b)(c)に示す。掘進時に先行置換コラム20の填充材が削り取られるが、ケーシング6が存在しているために、先行置換コラム20から後行置換コラム21への填充材の移動が遮られているので先行置換コラム20の天端位置は変化しない。
また、スクリューオーガ2の下端部近傍の吐出口5から填充材を吐出しながら後行の置換コラム21を築造する途中の状態を図10(a)(b)(c)に示す。このスクリューオーガの引き上げにより、先行置換コラム20にも後行置換コラム21にも土砂が混入していない置換コラムが互いにオーバーラップした状態で築造できた。
【0052】
なお、図1に(a)で示したように、既に築造し未硬化の先行置換コラム20に接する位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20と互いに接する後行の置換コラム21を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が混入していなかった。
【0053】
また、図11に示すように、先行の置換コラムの築造の際にケーシングがないスパイラルスクリューを使用することもできる。
【0054】
図11では、(a)に示すように先行置換コラム20築造する位置にスクリューオーガ2を位置決めし、(b)に示すように、スパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が置換コラム20を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、スパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ置換コラムの築造予定上端部までスクリューオーガ2を引き上げて、その後(e)〜(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が含まれていなかった。
【0055】
勿論、図12のように先行の置換コラム20の築造の際にケーシング付きのスパイラルスクリュー1を使用することもできる。
図12では、(a)に示すように先行置換コラム20を築造する位置にケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。このとき先行置換コラム20がその施工時に単独して施工される場合は、ケーシング6は逆回転させた方が施工性がよい。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ置換コラムの築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が含まれていなかった。
【0056】
このように築造した先行の置換コラム20が未硬化の間に、図2に示し前述したケーシング付きスクリューオーガ1のケーシング6を無回転で後行の置換コラム21を築造し、置換コラムが硬化した段階で置換コラムを掘り出して調べた状態を図13に示す。図13に示されるように、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は土塊の混入もなく完全に一体化されていた。又、図14に示されるように、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は全長に亘り確実にオーバーラップしており、その直径はいずれも設計径の750mmを満足しており、コラム同士の中心間隔も設計時の55cmと同等であった。また、いずれの置換コラムの一軸圧縮強度の平均値は、6.8N/mm2であり、一軸圧縮強度の変動係数は8.2%であった。
【0057】
なお、ケーシング付きスクリューオーガ1のケーシング6を無回転で実施する代わりにケーシング6を逆回転で実施した場合のコラムを掘り起こすと、図15に示すように、先行置換コラム20の後行置換コラム21と接する面側近辺に土砂がわずかに残っていたが、先行置換コラム20の一軸圧縮強度の平均値は、6.2N/mm2であり、一軸圧縮強度の変動係数は7.9%であり、充分な強度を発揮していた。
【0058】
図16はケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1を用いて先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造する施工手順の特に好ましい例を示したものである。
図16(a)に示すように先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、外側ケーシング6を無回転とし、内側スパイラルスクリュー2を正回転させながら掘進し、図16(b)に示すように、該スクリューオーガ2の先端が置換底位置に到達したら該スクリューオーガ2の下端部近傍の吐出口5から填充材の吐出を開始し、図16(c)に示すように填充材を吐出しつつ、外側ケーシング6は無回転とし引き上げず、内側スパイラルスクリュー2のみを正回転させながら引き上げ、内側スパイラルスクリュー2の下端位置を外側ケーシング6の下端位置より上方に位置させる。その後、図16(d)に示したように、内側のスパイラルスクリュー2の下端位置を外側ケーシング6の下端位置より上側に位置させたまま、かつ填充材を吐出しつつ、外側ケーシング6を無回転のまま、内側スパイラルスクリュー2を正回転させながら、外側ケーシング6と内側スパイラルスクリュー2を一体的に引き上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20とオーバーラップした後行の置換コラム21を築造しても、置換コラム中には土砂が混入していなかった。
なお、図示していないが後行置換コラム築造時に、図16(c)(d)に示した姿と同様に、スクリューオーガ2の掘削爪よりもケーシング6の下端位置を若干下方に突出させた状態で掘進すると先行置換コラム20への悪影響をさらに抑えることができ、さらに好ましい。
【0059】
比較のために、先行置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、ケーシング付きスクリューオーガ1の代わりに、ケーシングがないスクリューオーガを使用して実験した。この点以外は、図2に示した本発明の築造条件と同条件で実験した。
図17の(a)(b)(c)に示すように、後行の置換コラム21を築造するために、スクリューオーガ2で掘進する段階で、掘削中の土砂が未硬化の先行置換コラム20中に混入する(例えば、図17では22と示したように土塊が混入する)と共に、先行置換コラム20の填充材(例えば、図17では23と示した填充材塊)が後行置換コラム21中に吸い込まれて先行置換コラム20の天端面が低下した。そして図18の(a)(b)(c)に示すように、スクリューオーガ2の下部近傍の吐出口5から填充材を吐出しながらスクリューオーガ2を引き上げても先行コラム20の後行置換コラム21側には多量の土砂が残存した状態となり、図19に示すように、この置換コラムを掘り上げて調査したところ、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は一体化されていなかった。
【0060】
また、スパイラルスクリュー外周に縁板が付いているスクリューオーガを後行の置換コラムの築造時に使用した場合も、先行コラムの後行置換コラム側には多量の土砂が残存した状態となり、この置換コラムを掘り上げて調査したところ、後行の置換コラムと先行の置換コラムは一体化されていなかった。
【0061】
なお、以上の例では先行置換コラム20と後行置換コラム21を一つずつ築造した例で示したが、次々に後行の置換コラム21を築造し、置換コラムを壁状に築造する場合も本発明の構築方法を適用できる。
また、互いに間隔をおいて二つの先行置換コラム20、20を築造した後、この二つの先行置換コラム20、20が未硬化の状態で、二つの先行置換コラム20、20の間に後行の置換コラム21を築造する場合に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の後行の置換コラムの築造工程の一例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図2】本発明の後行の置換コラムの築造工程の図1とは異なる他の工程例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図3】傾斜した支持層がある地盤における後行の置換コラムの築造工程の一例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図4】本発明における填充材の吐出時期を時間軸と深度軸で示す説明図(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)(i)(j)である。
【図5】本発明における後行の置換コラム築造用のケーシング付きスクリューオーガの一例を説明する一部破断の正面図である。
【図6】図5のケーシングの外観を示す一部を破断で示した正面図である。
【図7】図5の先端部近辺を示す一例をケーシングのみを破断して示す正面図である。
【図8】本発明の施工に使用する装置の一例をケーシングのみを破断して示す正面図である。
【図9】本発明の施工例における後行置換コラムの施工状態を示す正面図(a)、(a)のA−A線断面図(b)、(a)のB−B線断面図(c)である。
【図10】図9に続く後行置換コラムの施工状態を示す正面図(a)、(a)のA’−A’線断面図(b)(a)のB’−B’線断面図(c)である。
【図11】先行置換コラムの施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す説明図である。
【図12】図11とは異なる先行置換コラムの施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す説明図である。
【図13】本発明により築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図14】本発明により図13とは異なる条件で築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図15】本発明によりまた図13や図14とは異なる条件で築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図16】本発明の施工例における後行置換コラム築造時のケーシングの掘進・引き上げ状況を工程順(a)(b)(c)(d)に示す断面説明図である。
【図17】比較例における置換コラムの築造状態を示す正面模式図(a)、(a)のA−A線断面図(b)、(a)のB−B線断面図(c)である。
【図18】図17に続く置換コラムの築造状態を示す正面模式図(a)、(a)のA’−A’線断面図(b)、(a)のB’−B’線断面図(c)である。
【図19】比較例により築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ケーシング付きスパイラルスクリューオーガ
2 スクリューオーガ
3 掘削部
3a 掘削爪
3b 平爪
4 オーガ軸
5 吐出口
6 ケーシング
7 アダプタ
8 下部カップリング
9 上部カップリング
10 オーガモータ
11 施工機
12 ベースマシン
13 ミキサ
14 ポンプ
20 先行置換コラム
21 後行置換コラム
22 土塊
23 填充材塊
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木・建築構造物の基礎工法としてのコラムの置換築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築構造物の基礎工法として、従来、深層混合処理工法、流動化処理土工法、PIP杭工法およびRGパイル工法等が提案されている。
深層混合処理工法は、地盤中に掘削撹拌混合装置を挿入し、固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に円柱状の地盤改良体を築造する工法(例えば、特許文献1参照)であり、掘削撹拌混合装置を地盤中に掘進させる時に固化材を填充する方法と、逆に上方へ引上げるときに固化材を填充する方法がある。また、固化材は水と撹拌混合してスラリー状にして使用する方法と、固化材を粉末状のまま使用する方法とがある。
【0003】
流動化処理土工法は、連続スパイラルオーガにより掘削排土した土砂を地上のミキサーで固化材と混合し、ソイルセメントとした後、該ソイルセメントを掘削した場所に再び戻すことにより地盤改良を行うものである(例えば、特許文献2および3参照)。
【0004】
PIP杭工法は、連続したフライトをもつオーガの中空のシャフトの頭部に駆動装置を取り付け、この装置全体を櫓に吊り下げ、地中に回転させながら所定の深さまで掘削し、所定の深さに達したら、シャフト先端部よりモルタルを圧入しながら徐々に引上げることによってモルタル杭を造成し、オーガ引上げ後ただちに鉄筋篭または形鋼をモルタル杭の中に建て込むものである(例えば、特許文献4および非特許文献1参照)。
【0005】
また、RGパイル工法は、中空軸を有するアースオーガの回転により土砂を上方に排除しながら所定の深さまで掘削し、次にオーガを引上げつつ、中空軸先端オーガヘッドの噴出口からモルタルを圧入して地中に場所打ち杭を造成するものである(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−247228号公報(請求項3、段落番号0002)
【特許文献2】特開平8−260450号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3280710号公報(請求項1)
【特許文献4】特許第3306460号公報(段落番号0002)
【非特許文献1】地下連続壁工法 設計・施工ハンドブック 社団法人日本建設機械化協会編 技報堂出版株式会社発行(第427頁〜第430頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記深層混合処理工法においては、次のような課題がある。
(1)固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に地盤改良体を築造する工法であるため、改良対象地盤の土質の物性が一定でないことに起因して、改良土の品質は特に一軸圧縮強度のバラツキが大きいという欠点がある。そのため、改良する目標強度をバラツキに相応する分だけ設計強度よりも大きくしなければならず、固化材添加量が増え、不経済であった。
(2)深層混合処理工法においては、粘着力の大きな粘性土地盤では共回り現象の発生により混合不良が発生し、目標とする品質を確保出来ないことが多かった。
(3)有機質土やピート等の有機質分が多量に含まれている土層やロームや赤ボク黒ボク等の火山灰質粘性土では地盤改良体の硬化不良が発生したりして、目標とする品質を確保出来ないことが多かった。
(4)有機質分が多量に含まれている地盤では、固化材添加量を多く必要とするため、不経済であった。
【0007】
(5)地盤が複数の土層で構成されている場合は、強度発現が最も低い土層に必要な固化材添加量を全深度範囲に填充するため、他の土層部分には必要以上の量の固化材を添加しなければならず、不経済であった。また、その分だけ建設発生土(残土)量が増え、環境に対する負荷が大きかった。
(6)撹拌混合が確実に行われたとしても、ソイルセメントの発現強度は改良対象の土質に依存するため、事前に予想していない土質が出現した場合には改良土の一軸圧縮強度が目標値に達せず不良工事になる恐れがあった。
(7)深層混合処理工法では腐植土や有機質土などのように大量の固化材を添加しても発現強度が小さいことに起因して、同一荷重を支持するのにより広い面積を改良する必要があった。これに伴い、地盤改良に要する改良対象土量が増えるのみならず、基礎のフーチング体積も増えるため、建設コストが増大していた。
【0008】
また、前記流動化処理土工法にも次のような課題がある。
(1)地上のミキサーで現地の土砂と固化材を混合するため、現地発生土砂を使用するので、施工対象地盤の土質の物性や土質のバラツキに起因して、改良後の品質はバラツキが大きいという欠点がある。また、現地の土砂と固化材を混合するため、所要の一軸圧縮強度を得るために多量の固化材を必要とし、不経済となる場合がある。
(2)掘削土砂を地上へ排出し、それを地上のミキサーで固化材と混合してスラリー状の流動化処理土とし、再び元の位置へ戻す工程であるため、施工工程が増え、コストが高い。
(3)一時的とはいえ、改良すべき箇所の土砂を掘削し除去するため、それまでの上載荷重による応力バランスが崩れて支持地盤が緩む。そのため、掘削底地盤の支持力が低下する。
(4)土砂を除去した底面の処理を丁寧にしないと、構造物からの鉛直荷重が作用したときに場所打ち杭の先端スライムと同様な初期沈下の問題が発生する。
【0009】
さらに、PIP杭工法およびRGパイル工法にも次のような課題がある。
(1)モルタル製造に用いる細骨材の水分管理が必要であり、現実的に品質のバラツキが生ずる。
(2)モルタルは細骨材を含有しているため、モルタルはフロー値が18〜20秒の流動性の高いものを使用せざるを得なく、ブリージングが発生しやすくなるばかりか、モルタルの流動性が高いため、掘削土砂等がモルタル中に落ち込み、モルタル中に土砂等が混入される。
(3)砂質土層や礫質土層などでは、湧水、地下水圧に起因する孔壁崩壊が起り易いので、掘削に際しベントナイト泥水、またはこれに少量のセメントを混合したものを用いる必要がある。また、ベントナイトは汚泥となるため後の処理に莫大な費用が発生する。
(4)その結果、モルタル柱底面と支持地盤との間にスライム層が形成されるため、スライム処理工程が必要となる。
(6)また、PIP杭工法およびRGパイル工法では、孔壁崩壊を防ぐため、施工時に地表面までモルタルで充填する必要がある。また、モルタル充填後、鉄筋篭等を挿入するため、結果として根切り時の頭部整形が困難となる。
【0010】
このような課題を解決するために、本出願人は、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの置換築造方法を提供している。
即ち、このような課題を解決するために本出願人は、先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラムとすることを特徴とするコラムの置換築造方法を特願2005−109463として先に出願している。
しかしながら、前記の特願2005−109463では、単独の置換コラムの築造方法を例示しているのみで、置換コラム同士を互いに接して築造する方法や置換コラム同士をオーバーラップして築造する方法については開示しなかった。
【0011】
この発明の目的は、置換コラム同士が未硬化の内に互いに略接して築造する方法や置換コラム同士を一部オーバーラップして築造する方法を提供することである。即ち、置換コラム同士を互いに略接して築造する方法や置換コラム同士を一部オーバーラップして築造しても、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの置換築造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、以上に示したような課題を解決せんと提案されたものであり、この発明のコラムの第1の置換築造方法は、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とする。
【0013】
なお、本発明で、先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造するとの用語は、先行置換コラムと後行の置換コラムとが互いに接する場合の他に、先行置換コラムと後行の置換コラムとがほんの少し重なる場合や先行置換コラムと後行の置換コラムとがほんの少し離れているが通常の施工方法では後行コラムの築造の際に先行コラムの中に土砂が混入する虞がある場合も含む。また、填充材が未だ固まらない内にとの用語は、填充材が凝結する以前の流動性を有している状態を指しており、通常は混練から3時間程度であるが、硬化遅延剤を使用すればその時間は任意に設定することができるので、時間の概念は含まない。
【0014】
この先行置換コラムと後行の置換コラムとが互いに接する場合の例を図1に示す。
図1(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20に接する位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラムの築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、先行置換コラム20に接した後行の置換コラム21を築造する。
【0015】
この発明のコラムの第2の置換築造方法は、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムと一部オーバーラップした状態で後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とする。
【0016】
この先行置換コラムと後行の置換コラムとがオーバーラップする場合の例を図2に示す。
図2(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20に一部オーバーラップする位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、先行置換コラム20にオーバーラップした後行の置換コラム21を築造する。
【0017】
なお、図1や図2に示した例では、支持層は傾斜していないので後行の置換コラムの置換底位置は、先行の置換コラムの置換底位置とが同じ深度位置になっているが、置換コラムの底端位置を支持層内に位置させるので、例えば、図3に示したような支持層が傾斜している地盤においては、後行の置換コラム21の置換底位置は、先行の置換コラム20の置換底位置よりも深い位置になり、図3における傾斜とは逆方向に傾斜している場合は、後行の置換コラム21の置換底位置は、先行の置換コラム20の置換底位置よりも浅い位置になる。
【0018】
また、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガ2の先端部から吐出する所望のタイミングとは、図4(a)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始してもよく、図4(b)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、その位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材の吐出を開始してもよく、図4(c)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始して、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(d)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材の吐出を開始し、所定の深度に達したら、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(e)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材の吐出を開始し、その状態で置換コラムを築造すべき所定の深度まで掘進し、所定の深度に達したら填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、また、図4(f)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達した後にスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した状態で填充材の吐出を開始してもよく、図4(g)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達した後にスクリューオーガを少し引き上げ、その位置で填充材の吐出を開始してスクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻し、填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(h)に示したように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、填充材の吐出を開始して、そのままスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、填充材の吐出を一旦停止し、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した後に填充材の吐出を開始し、填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(i)に示すように、置換コラムを築造すべき所定の深度に達したらスクリューオーガを少し引きげ、その状態から、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した状態で填充材の吐出を開始して、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよく、図4(j)に示すように置換コラムを築造すべき所定の深度に達したら填充材の吐出を開始してスクリューオーガを少し引き上げ、その状態から、填充材の吐出を一旦停止し、スクリューオーガを置換コラムを築造すべき所定の深度に戻した後に填充材の吐出を開始し、その状態でその位置でスクリューオーガを暫くの間回転させた後に填充材を吐出しつつスクリューオーガを引き上げてもよい。
なお、図4(d)(e)の場合のように置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材吐出を開始する場合は、築造する置換コラム底部の品質がよりよいものになるが、置換コラムを築造すべき所定の深度に達する少し前に填充材吐出をした填充材が排土中に混ざって排土される量が多くなる虞があり、地上に排出された排土から填充材が混合された排土を分離する作業が増える虞があるので、この点では填充材の吐出開始時期は、図4(a)(b)(f)(c)(g)(h)(i)(j)の場合のように、コラムの置換低位置に達した後、スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが好ましい。さらに図4(a)(b)(f)のようにコラムの置換底位置からのスクリューオーガの引き上げ開始前にスクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが特に好ましい。
【0019】
また、この発明の置換コラムの第1の置換築造方法においてもこの発明の置換コラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムの築造の際に、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガであれば、スクリューオーガとしてケーシング付きスクリューオーガを使用しても差し支えない。
【0020】
この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合、特に好ましくは、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することである。
【0021】
この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、後行の置換コラムを築造する場合、特に好ましくは、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することである。
【0022】
勿論、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合も後行の置換コラムを築造する場合も、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該スクリューオーガの先端部から吐出を開始するするタイミングは、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、遅くともコラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することが最も好ましい。
【0023】
なお、本発明ではスクリューオーガの正回転とは、掘進時および引き上げ時に掘削された土砂がスクリューオーガで地上側に移動される方向にスクリューオーガが回転する方向を指す。
【0024】
また、掘削部は下記のいずれかの部分を指す。スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼の他にスクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪を有する場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼とスクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪が掘削部であり、スクリューオーガ軸先端に突設された掘削爪が存在しない場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼が掘削部である。
【0025】
また、この発明のコラムの第1の置換築造方法においてもこの発明のコラムの第2の置換築造方法においても、先行の置換コラムを築造する場合も後行の置換コラムを築造する場合も、填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、コラムの置換予定上端位置まで該スクリューオーガを正回転で引上げることが更に好ましい。
【0026】
なお、先行の置換コラムを築造する場合も、後行の置換コラムを築造する場合も、填充材の吐出量は、スクリューオーガ乃至ケーシング付きスクリューオーガの引き上げに伴い生ずる空隙体積にほぼ見合う量とすればよい。これより少なければ、置換コラム中に混入する土砂の量が増えて不良コラムとなり易く、これより多ければ後工程で残土として処分する置換予定上端位置以浅に填充材が混入するため、残土が産業廃棄物となり、処分費が高くなる。
【0027】
更に、填充材をオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、図1(e)〜(f)や図2(e)〜(f)に示したように、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを逆回転させながら引上げることにすれば、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換範囲には土砂を排出せずにそのまま残置することが可能となる。
【0028】
前記填充材は、少なくとも水硬性を有する粉体と混練水との混合物からなり、該粉体はセメント単独でもよく、他に混和材や混和剤を含んでいるのでもよく、填充材は特に制限されるものではないが、土砂や骨材を含まない填充材である必要がある。なお、この発明では、骨材とはコンクリートでいう細骨材や粗骨材を意味し、高炉スラグやフライアッシュ等の粉体は骨材ではない。土砂や骨材を含む填充材を使用すると従来技術に記載したような欠点が生じる。
なお、請求項に記載したように、前記填充材は練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである必要がある。
【0029】
また、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150〜400mm、好ましくは150〜330mmに設定することで、掘削孔内における流動充填性を確保し、また孔壁崩壊を防ぎ、さらに置換範囲上方の土砂が置換されて填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。
練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150mm〜400mmとするのは、150mm未満では、配管内の抵抗(摩擦力)が大きくなり施工時に時間がかかりすぎるか、施工(吐出)不能になり、400mmを超えるとコラム中に土砂が多く混入される可能性が多くなるためである。
【0030】
なお、テーブルフロー値は、JIS R 5201のセメントの物理試験方法において規定されたフローテーブルの直径300mmの代わりに、この直径300mmのフローテーブルの上に直径500mmの板を固定して測定したテーブルフロー値である。
【0031】
このような填充材は、安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を填充材に使用することにより、填充材のコストを下げることが出来るし、填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
なお、フライアッシュまたは高炉スラグ粉体との配合比はセメント1重量部に対し、フライアッシュまたは高炉スラグ粉体が3乃至20重量部であり、加水混合された状態で前記したテーブルフロー値のコンシステンシーを有する填充材とすることができる。一般的にこの場合、セメントとフライアッシュまたは高炉スラグ粉体の合計重量に対し、含水量は30〜50%である。置換されたコラムの一軸圧縮強度を高めるには、高炉スラグ粉末を使用することが望ましい。
【0032】
また、填充材をスクリューオーガに供給する際に、スクイズ式ポンプやプランジャー式ポンプの他にスネーク式ポンプも使用できる。
なお、スネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)により填充材を該オーガ先端部に供給し、該填充材を該オーガ先端部から吐出するようにすると、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーが低いものでも施工できるので特に好ましい。例えば練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜260mmのものでも施工できる。
【0033】
そして本発明方法によれば、原地盤と填充材を撹拌混合することがないので地上のミキサーで混練した状態の品質とほぼ同じ品質のコラムを得ることができるし、深層混合処理工法による地盤改良体に比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができるし、また、填充材の配合を調整することでコラムの一軸圧縮強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来る。
【0034】
後行の置換コラムの築造の際に使用可能なスクリューオーガは、ケーシング付きスクリューオーガであり、少なくともコラム築造長に相当する長さの円筒形のケーシングにて覆われている構造のものが特に好ましい。該円筒形のケーシングは、スクリューオーガと同軸的に、かつ相対的に正逆回転可能に装着されたものや、ケーシングが独立に回転可能に装着されたものがあるが、ケーシングが回転しないように固定されたものは安価な一軸モータを使用することができる。しかしながら、施工時に予期せぬトラブルが発生したときなどに、ケーシングを回転させることが必要になる場合があるので、ケーシングを回転させることができるオーガーモータを使用することが好ましい。
また、スクリューオーガとケーシングを互いに上下方向に分離独立させて、相対的に上下可動にすれば、さらに好ましい。
【0035】
ケーシング付きスクリューオーガ1の一例を図5に示す。この例ではケーシング6が固定され、アダプタ7、下部カップリング8と上部カップリング9を介してスクリューオーガ2がオーガモータ10にて回転できる構造になっており、図5のケーシング6の外観を図6に示した。なお、図5ではスクリューオーガ2の一部しか図示していないが、掘削部を有するスクリューオーガの先端部は、図7に示す構造になっており、オーガ軸4の先端近傍に吐出口5が設けられている。即ち、オーガ軸4の中空部が填充材の直接的又は間接的な通路となり、そのオーガ軸4の先端近傍に吐出口5が設けられている。図7(a)(c)ではオーガ軸4の先端近傍の側面に開口して設けられ、図7(b)(d)ではオーガ軸4の先端が開口して吐出口となっている。なお、図7において(a)と(b)の例では、オーガ先端に位置するスパイラル翼に、複数の掘削爪3aが付けられており、(c)と(d)の例では、オーガ先端に位置するスパイラル翼の先端がナイフ状の平爪3bとなりこの部分が掘削爪に相当している。
【0036】
また、後行の置換コラムの築造の際は、スクリューオーガのケーシングを回転させるとケーシング外周面に付着した周辺の土砂が先行置換コラム中に巻き込まれる虞があるので、ケーシングの回転を停止し、又は無回転とした方が、先行の置換コラムに土砂等の土塊混入等の悪影響を及ぼさないようにすることができるので特に好ましい。なお、実質的に無回転状態といえるほんの少しケーシングが回転する場合では、先行置換コラムへの土砂の混入は微少であり、あるいは土砂の混入が殆どないので、実質的に無回転状態といえる状態は無回転ということもできる。
【0037】
なお、先行のコラムを築造する場合は、上述したケーシング付きスクリューオーガの他に下記のスクリューオーガを使用することができる。
即ち、この先行のコラムの置換築造方法で使用可能なスクリューオーガとして、スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガ、スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガ、連続するスパイラルスクリューのスクリュー縁部に縁板が付いているオーガおよびスパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガ、等を挙げることができる。勿論、スパイラル翼が同一高さに180度の位相差で2枚設けられたオーガでもよい。
【0038】
スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガによれば、汎用的なスパイラルスクリューオーガを使用することにより、容易に置換作業が出来る。
スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガによれば、砂質地盤や礫質地盤のような崩壊性の地盤では、連続スパイラルスクリューで掘進すると、必要以上に掘削土を排出する可能性があるので、断続スパイラルスクリューオーガを使用することにより、排土量を低下させ、周辺地盛の乱れによる緩みを少なくすることが出来る。その結果として支持地盤の乱れを少なくすることができる。また、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径と同一であってもよいが、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径より小径にすればさらに排土量を低下させることが可能になる。
【0039】
また、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼と同一であってもよいが、断続スパイラルスクリューの外径を掘削翼より小径にすれば、地盤の掘進抵抗が更に緩和される。
さらに、スパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガやスパイラルスクリュー外周に縁板が付いているオーガによれば、孔壁崩壊を防ぐ作用があり、簡便な装置でケーシングを使用するときと同様に確実な原地盤との置換ができる。また、地上に引上げたオーガの土砂落とし作業がケーシングを使用するときに比べて容易に出来る。
【0040】
なお、上記した他に、スパイラルスクリューに縁板が付いているスクリューオーガの場合は、スクリュー部に沿って排出されつつある掘削土がスクリュ−端部からこぼれ落ちる可能性が一番低くなる。
また、スクリューオーガの先端に有する掘削部として、スクリューオーガの軸先端に設けられた掘削爪及びスパイラル翼の先端に設けられた掘削爪を例示できる。この掘削翼の掘削爪およびスパイラルオーガ軸先端の掘削爪は、掘削(特に硬質地盤)において威力を発揮するが、このスパイラル翼の先端に設けられた掘削爪は地盤状況等によっては平爪であってもよい。
【0041】
掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、置換コラム築造終了後に掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
【発明の効果】
【0042】
この発明のコラムの置換築造方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)置換コラム同士を互いに略接して築造する方法や置換コラム同士をオーバーラップして築造しても、対象地盤の性状に左右されず、先行および後行置換コラム内や互いのコラムの接触部やオーバーラップ部分に土塊混入のない安定した品質のコラムを置換築造することができる。
なお、置換コラム同士をオーバーラップして築造すると、コラム同士間の隙間を確実に無くすとともに、コラム同士を一体化することができる。
(2)少なくとも後行の置換コラムの築造の際にケーシング付きスクリューオーガを使用しているので、先行置換コラムと、施工中の後行コラムは常にケーシングにより遮断されているので、後行の置換コラムの築造の際の掘進時に生じる掘削土が未硬化の先行の置換コラム中に混入することなく、先行置換コラムの未だ固まらない填充材が後行置換コラム側に引き込まれることもないし、また後行のコラムにも掘削土が混合することもない。この結果、連接して築造された一連の置換コラムには土砂が混合されておらず、所望した形状寸法が確保され、特に掘削土が混入しない状態でコラムの置換が確実に行えて、地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質で、一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
【0043】
(3)後行の置換コラム施工中に先行置換コラムの填充材の後行置換コラムへの移動がケーシングによって遮断されるので、先行置換コラムから後行置換コラムへの移動が起こらないため、置換コラム天端の上下移動は発生しない。
(4)その結果、置換コラム同士を接円状態やオーバーラップさせて施工することが可能になり、かつ効果的に所望の形状寸法を確保した一連の複数の置換コラムを一体化して築造することができる。
(5)ケーシング付きスクリューオーガを使用していると周辺地盤と施工中の置換コラムがケーシングにより遮断されているので、崩壊性の高い地下水位の高い砂質系地盤中でも、孔壁の崩壊が防止でき、かつ填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmであるので、填充材が周辺地盤に流出(浸出)する虞が無く、所望の形状寸法を確保した一連の置換コラムを築造することができる。
【0044】
(6)この発明のコラムの置換築造方法によれば、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換された填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果、地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質で一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
(7)また、この発明のコラムの置換築造方法によれば、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換されて填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果所定の置換範囲内を置換しその上方の非置換範囲の土砂を地上に排出せずにそのまま残置することが可能となる。
【0045】
(8)(2)や(3)と同様の理由から、深層混合処理工法による地盤改良体に比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができる。
(9)また、同様の理由から、置換コラムの強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来る。
(10)填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
(11)安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を混和材として填充材に使用した場合は、填充材のコストを下げることが出来る。
【0046】
(12)スパイラルオーガは掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、掘削爪を設けたスパイラル翼先端または掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
(13)この発明によって得られた置換コラムは高い品質のものとすることができるので、従来の地盤改良体に比して同一荷重を支持するために少ない面積のコラムで充分となる。そのため構造物の基礎のフーチング体積も小さくなり、フーチングのコンクリート量の低減のみならず、フーチング構築に伴う建設発生土の減少を図ることが可能となり、建設コストを大幅に縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明方法による実施例と比較例を示しながらこの発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
なお、実施例で使用した材料としては、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメントの密度3.15g/cm3:表1ではCと表記する。)とフライアッシュJIS II種(株式会社ジェイペックの密度2.25g/cm3:表1ではFと表記する。)であり、これらを水(表1ではWと表記する。)と共に、表1に示す填充材1m3当たりの示方配合で、二軸強制練りミキサーで撹拌混合して実験に使用する填充材とした。表1に示すように、練上りの填充材量は1,000リットルで、テーブルフロー値は当初の計画どおり188〜193mmであった。
なお、テーブルフロー値が150〜260mmとなる配合、特にテーブルフロー値が150〜200mmとなる配合の場合は、パン式強制練りミキサーや二軸式練りミキサーを使用して混練することが好ましく、この例ではコンクリート用の二軸強制練りミキサーを使用した。なお、テーブルフロー値が260〜400mmとする場合は、グラウトミキサーも使用可能である。
【0048】
【表1】
【0049】
先ず、図8に示すように、実施例1として、使用したケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1は、外側ケーシング6の外径が750mm、内側スパイラルスクリュー2の直径が700mmであり、地盤中に直径750mmの掘削孔を造ることができるオーガである。施工機11はベースマシン12として80トン級の三点支持式杭打ち機、ミキサー13はコンクリート用の二軸強制練りミキサー、ポンプ14はスネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)を使用した。
【0050】
図2に示したように、先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、(a)に示すように既に築造し未硬化の先行置換コラム20にオーバーラップする位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながらケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1の引上げ体積に見合う量の填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20にオーバーラップした後行の置換コラム21を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が混入していなかった。
【0051】
築造した先行置換コラム20及び後行の置換コラム21は、いずれも直径750mmであり、空掘り部の長さは0.5mとし、置換コラム長は、2.0mとし、置換コラム同士20、21の中心間隔を55cmとして築造した。
この後行の置換コラム21を築造するために、ケーシング付きスクリューオーガ1にて掘進する状態を図9(a)(b)(c)に示す。掘進時に先行置換コラム20の填充材が削り取られるが、ケーシング6が存在しているために、先行置換コラム20から後行置換コラム21への填充材の移動が遮られているので先行置換コラム20の天端位置は変化しない。
また、スクリューオーガ2の下端部近傍の吐出口5から填充材を吐出しながら後行の置換コラム21を築造する途中の状態を図10(a)(b)(c)に示す。このスクリューオーガの引き上げにより、先行置換コラム20にも後行置換コラム21にも土砂が混入していない置換コラムが互いにオーバーラップした状態で築造できた。
【0052】
なお、図1に(a)で示したように、既に築造し未硬化の先行置換コラム20に接する位置に後行の置換コラム21を築造するためケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、例えば外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして例えば(c)に示すように、スクリューオーガ2が後行の置換コラム21を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、例えば(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ後行コラム21の築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20と互いに接する後行の置換コラム21を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が混入していなかった。
【0053】
また、図11に示すように、先行の置換コラムの築造の際にケーシングがないスパイラルスクリューを使用することもできる。
【0054】
図11では、(a)に示すように先行置換コラム20築造する位置にスクリューオーガ2を位置決めし、(b)に示すように、スパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が置換コラム20を築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、スパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ置換コラムの築造予定上端部までスクリューオーガ2を引き上げて、その後(e)〜(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が含まれていなかった。
【0055】
勿論、図12のように先行の置換コラム20の築造の際にケーシング付きのスパイラルスクリュー1を使用することもできる。
図12では、(a)に示すように先行置換コラム20を築造する位置にケーシング付きスクリューオーガ1を位置決めし、(b)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら掘進する。このとき先行置換コラム20がその施工時に単独して施工される場合は、ケーシング6は逆回転させた方が施工性がよい。そして(c)に示すように、スクリューオーガ2が置換コラムを築造すべき所定の深度に達したならば、スクリューオーガ2先端部近くに設けられた吐出口5から填充材の吐出を開始し、(d)に示すように、外側のケーシング6を無回転で内側のスパイラルスクリューオーガ2を正回転させながら填充材の吐出を継続しつつ置換コラムの築造予定上端部までケーシング付きスクリューオーガ1を引き上げて、その後(f)に示したように、填充材の吐出を停止させ、オーガ2を逆回転させながら引上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20を築造した。空掘り部を形成しても置換コラム中には土砂が含まれていなかった。
【0056】
このように築造した先行の置換コラム20が未硬化の間に、図2に示し前述したケーシング付きスクリューオーガ1のケーシング6を無回転で後行の置換コラム21を築造し、置換コラムが硬化した段階で置換コラムを掘り出して調べた状態を図13に示す。図13に示されるように、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は土塊の混入もなく完全に一体化されていた。又、図14に示されるように、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は全長に亘り確実にオーバーラップしており、その直径はいずれも設計径の750mmを満足しており、コラム同士の中心間隔も設計時の55cmと同等であった。また、いずれの置換コラムの一軸圧縮強度の平均値は、6.8N/mm2であり、一軸圧縮強度の変動係数は8.2%であった。
【0057】
なお、ケーシング付きスクリューオーガ1のケーシング6を無回転で実施する代わりにケーシング6を逆回転で実施した場合のコラムを掘り起こすと、図15に示すように、先行置換コラム20の後行置換コラム21と接する面側近辺に土砂がわずかに残っていたが、先行置換コラム20の一軸圧縮強度の平均値は、6.2N/mm2であり、一軸圧縮強度の変動係数は7.9%であり、充分な強度を発揮していた。
【0058】
図16はケーシング付きスパイラルスクリューオーガ1を用いて先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造する施工手順の特に好ましい例を示したものである。
図16(a)に示すように先行の置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、外側ケーシング6を無回転とし、内側スパイラルスクリュー2を正回転させながら掘進し、図16(b)に示すように、該スクリューオーガ2の先端が置換底位置に到達したら該スクリューオーガ2の下端部近傍の吐出口5から填充材の吐出を開始し、図16(c)に示すように填充材を吐出しつつ、外側ケーシング6は無回転とし引き上げず、内側スパイラルスクリュー2のみを正回転させながら引き上げ、内側スパイラルスクリュー2の下端位置を外側ケーシング6の下端位置より上方に位置させる。その後、図16(d)に示したように、内側のスパイラルスクリュー2の下端位置を外側ケーシング6の下端位置より上側に位置させたまま、かつ填充材を吐出しつつ、外側ケーシング6を無回転のまま、内側スパイラルスクリュー2を正回転させながら、外側ケーシング6と内側スパイラルスクリュー2を一体的に引き上げ、所定の置換範囲内を該填充材で置換しその上方の非置換部である空掘り部を形成することにより、先行置換コラム20とオーバーラップした後行の置換コラム21を築造しても、置換コラム中には土砂が混入していなかった。
なお、図示していないが後行置換コラム築造時に、図16(c)(d)に示した姿と同様に、スクリューオーガ2の掘削爪よりもケーシング6の下端位置を若干下方に突出させた状態で掘進すると先行置換コラム20への悪影響をさらに抑えることができ、さらに好ましい。
【0059】
比較のために、先行置換コラム20にオーバーラップして後行の置換コラム21を築造するために、ケーシング付きスクリューオーガ1の代わりに、ケーシングがないスクリューオーガを使用して実験した。この点以外は、図2に示した本発明の築造条件と同条件で実験した。
図17の(a)(b)(c)に示すように、後行の置換コラム21を築造するために、スクリューオーガ2で掘進する段階で、掘削中の土砂が未硬化の先行置換コラム20中に混入する(例えば、図17では22と示したように土塊が混入する)と共に、先行置換コラム20の填充材(例えば、図17では23と示した填充材塊)が後行置換コラム21中に吸い込まれて先行置換コラム20の天端面が低下した。そして図18の(a)(b)(c)に示すように、スクリューオーガ2の下部近傍の吐出口5から填充材を吐出しながらスクリューオーガ2を引き上げても先行コラム20の後行置換コラム21側には多量の土砂が残存した状態となり、図19に示すように、この置換コラムを掘り上げて調査したところ、後行の置換コラム21と先行の置換コラム20は一体化されていなかった。
【0060】
また、スパイラルスクリュー外周に縁板が付いているスクリューオーガを後行の置換コラムの築造時に使用した場合も、先行コラムの後行置換コラム側には多量の土砂が残存した状態となり、この置換コラムを掘り上げて調査したところ、後行の置換コラムと先行の置換コラムは一体化されていなかった。
【0061】
なお、以上の例では先行置換コラム20と後行置換コラム21を一つずつ築造した例で示したが、次々に後行の置換コラム21を築造し、置換コラムを壁状に築造する場合も本発明の構築方法を適用できる。
また、互いに間隔をおいて二つの先行置換コラム20、20を築造した後、この二つの先行置換コラム20、20が未硬化の状態で、二つの先行置換コラム20、20の間に後行の置換コラム21を築造する場合に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の後行の置換コラムの築造工程の一例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図2】本発明の後行の置換コラムの築造工程の図1とは異なる他の工程例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図3】傾斜した支持層がある地盤における後行の置換コラムの築造工程の一例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。
【図4】本発明における填充材の吐出時期を時間軸と深度軸で示す説明図(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)(i)(j)である。
【図5】本発明における後行の置換コラム築造用のケーシング付きスクリューオーガの一例を説明する一部破断の正面図である。
【図6】図5のケーシングの外観を示す一部を破断で示した正面図である。
【図7】図5の先端部近辺を示す一例をケーシングのみを破断して示す正面図である。
【図8】本発明の施工に使用する装置の一例をケーシングのみを破断して示す正面図である。
【図9】本発明の施工例における後行置換コラムの施工状態を示す正面図(a)、(a)のA−A線断面図(b)、(a)のB−B線断面図(c)である。
【図10】図9に続く後行置換コラムの施工状態を示す正面図(a)、(a)のA’−A’線断面図(b)(a)のB’−B’線断面図(c)である。
【図11】先行置換コラムの施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す説明図である。
【図12】図11とは異なる先行置換コラムの施工例を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す説明図である。
【図13】本発明により築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図14】本発明により図13とは異なる条件で築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図15】本発明によりまた図13や図14とは異なる条件で築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【図16】本発明の施工例における後行置換コラム築造時のケーシングの掘進・引き上げ状況を工程順(a)(b)(c)(d)に示す断面説明図である。
【図17】比較例における置換コラムの築造状態を示す正面模式図(a)、(a)のA−A線断面図(b)、(a)のB−B線断面図(c)である。
【図18】図17に続く置換コラムの築造状態を示す正面模式図(a)、(a)のA’−A’線断面図(b)、(a)のB’−B’線断面図(c)である。
【図19】比較例により築造した置換コラムの状態を示す写真図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ケーシング付きスパイラルスクリューオーガ
2 スクリューオーガ
3 掘削部
3a 掘削爪
3b 平爪
4 オーガ軸
5 吐出口
6 ケーシング
7 アダプタ
8 下部カップリング
9 上部カップリング
10 オーガモータ
11 施工機
12 ベースマシン
13 ミキサ
14 ポンプ
20 先行置換コラム
21 後行置換コラム
22 土塊
23 填充材塊
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とするコラムの置換築造方法。
【請求項2】
少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムと一部オーバーラップした状態で後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とするコラムの置換築造方法。
【請求項3】
先行の置換コラムを築造する際に、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコラムの置換築造方法。
【請求項4】
後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガのスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコラムの置換築造方法。
【請求項5】
填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、コラムの置換予定上端位置まで該スクリューオーガを正回転で引上げることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコラムの置換築造方法。
【請求項6】
填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該スクリューオーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら引上げることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコラムの置換築造方法。
【請求項1】
少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムに略接して後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とするコラムの置換築造方法。
【請求項2】
少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換されたコラム(以下、置換コラムという)を築造する方法であって、先行の置換コラムの築造後の填充材が未だ固まらない内に、該先行置換コラムと一部オーバーラップした状態で後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガを使用してスクリューオーガを正回転させてケーシング部分を無回転または逆回転で掘進し、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を所望のタイミングで該スクリューオーガの先端部から吐出することによりコラムの置換底位置から上方の地盤土が填充材で置換された後行コラムを築造することを特徴とするコラムの置換築造方法。
【請求項3】
先行の置換コラムを築造する際に、少なくとも先端にスパイラルスクリュー状の掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコラムの置換築造方法。
【請求項4】
後行の置換コラムを築造する際に、ケーシング付きスクリューオーガのスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガの先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコラムの置換築造方法。
【請求項5】
填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、コラムの置換予定上端位置まで該スクリューオーガを正回転で引上げることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコラムの置換築造方法。
【請求項6】
填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該スクリューオーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら引上げることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコラムの置換築造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−115652(P2008−115652A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301956(P2006−301956)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】
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