説明

コラーゲン加水分解物

幼児における一般的健康状態を改善し、そして不穏状態、食物摂取後の嘔吐及び鼓腸を減少させるために、乳児用食品への栄養補助食品としてコラーゲン加水分解物を使用することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児のための栄養補助食品としてのコラーゲン加水分解物の新規な治療的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲン加水分解物は、脊椎動物、特に哺乳動物、家禽又は魚類のコラーゲン性物質から得られる、変性されかつ部分的に加水分解されたタンパク質である。異なる構造そしてまた異なる生物学的効果を有するペプチドが、コラーゲン加水分解から得られる。コラーゲン加水分解物は、アミノ酸、リジン、グリシン及びグルタミンを平均的な食物タンパク質の約2倍含む。コラーゲン加水分解物はまた、アミノ酸、プロリン及びヒドロキシプロリンも豊富である。ヒドロキシプロリンは、いかなる他の食物においても顕著な濃度で検出されていない。上記のアミノ酸は、ヒトコラーゲンの形成のために、すなわち、結合組織の代謝、特に骨及び軟骨の代謝のために必須である。
【0003】
したがって、ゼラチン含有製剤は、関節変性疾患の治療に採用され、そして同じように加水分解されたコラーゲンは成人における骨粗鬆症の治療に採用されてきた(米国特許第5,948,766A号を参照のこと)。
【0004】
ゼラチンを含むミルクの摂取が、乳児及び幼児における成長促進及び丈夫な成長を引き起こすことが証明された。
【0005】
DE3237077C2において、特に乳児及び幼児による紅茶の過剰消費の場合に、そうでなければ先に担体物質として使用された糖によって引き起こされたう蝕の問題を回避するように、担体物質としてシュークロース及び/又はデキストロースベースの代わりに、2,000〜10,000の分子量を有する低温で可溶性のゼラチンをベースとして、インスタント紅茶を製造することが示唆された。
【0006】
さらに、これらのインスタント紅茶が乳児及び子供の栄養補給に使用するためにいかに好適であるかが記載された。
【0007】
加水分解ゼラチンを担体物質として使用することによって、非常に低い栄養含量がインスタント紅茶中に存在し、したがって、意図的でなく且つ制御されない方法でいかなる追加の食品も体に与えられないということで特別に有利であることが強調された。
【0008】
さらなるタンパク質加水分解物、特にホエー加水分解物とともにゼラチン加水分解物を使用することは、既にDE2405589C3から知られていた。該明細書中では、ゼラチンはホエー加水分解物を得ることにおいて助剤として使用され、そして加水分解反応においては強力な苦い味を有する分解産物の形成を防ぐ。そこでは、ゼラチン加水分解物単独では、必須アミノ酸を低い含量でしか含まないために、食品としては不利であると強調されている。タンパク質産物の価値を高めるために、そこでは、ゼラチン又はゼラチン分解産物の存在下でホエー、ミルク、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、オイル、ナッツ穀粒、ヒマワリの種及び卵タンパクから成る群からのタンパク質が本発明にしたがって使用される。そして、これらの分解産物は、栄養補助食品としても推奨される。子供のための食品及び食餌療法のための食品もそこでは言及される。
【0009】
ゼラチンは、分解産物としての苦い物質を防ぐ機能のみを与えられる。
【0010】
米国特許第5,948,766A号から、1〜40kDの平均分子量を有するゼラチン、一般には動物コラーゲン性結合組織由来の味のない加水分解されたコラーゲンは、骨粗鬆症の治療のための剤の製造に使用されることができることが知られている。
【0011】
加水分解されたコラーゲン及び加水分解されたゼラチンは、本質的に同一である。加水分解されたゼラチンの場合、コラーゲン加水分解物とも呼ばれる加水分解されたコラーゲンの分子量又は鎖長に相当する分子量又は鎖長にポリペプチド鎖をさらに加水分解することによって、還元の前にゼラチンを得て単離する中間ステップを間に挟む。コラーゲン加水分解物及びゼラチン加水分解物はしたがって、同義語としてしばしば使用される。
【発明の開示】
【0012】
本発明によれば、酵素によるタンパク質分解過程において生成されたコラーゲン加水分解物が特に好ましい。
【0013】
ゼラチンそのものとしては栄養価が低く、したがってゼラチン又はコラーゲンの加水分解物の栄養価の低さも従来技術において常に指摘されているにもかかわらず、驚くべきことに、コラーゲン加水分解物が乳児用食品への栄養補助食品として驚くべき治療効果を生じることがここで見出された。
【0014】
発明者らにより行われた研究は、コラーゲン加水分解物の乳児用食品への添加が、乳児の一般的健康状態を高めてより良くし、そしてかなり明らかに乳児の不穏状態を減少させることを証明した。さらに、驚くべきことに、コラーゲン加水分解物の乳児用食品への添加が、乳児において鼓腸を減少させることが見出された。また、コラーゲン加水分解物が乳児用食品に添加された場合、食物摂取後の乳児における嘔吐が顕著に減少したことも見出された。
【0015】
本発明によるコラーゲン加水分解物の使用によって、骨格のミネラル化が乳児において促進された。
【0016】
さらに驚くべき結果が乳児の臀部の成熟において観察され、それが加速される。特に、大腿骨頭におけるより速い骨化が観察された。
【0017】
ゼラチンの添加が、病的/変性した軟骨構造を有する高齢者において再生を促進することがこれまで期待されてきたために、上記の結果はより大いに驚愕的である。
【0018】
しかしながら、ここで見出された結果は、コラーゲン加水分解物の乳児用食品への添加がこれとは完全に独立した効果を生じることを示唆する。
【0019】
本発明によれば、幼児におけるくる病の治療及び/又は予防における補助的手段としてのコラーゲン加水分解物の、特にビタミンDの用量と併用した使用が推奨される。
【0020】
観察された効果はあまりにも明らかであるために、例えば1日あたり0.5gのわずかな日用量で効果を生じることができる。
【0021】
一方、コラーゲン加水分解物の性質によって、1日あたり1g超の顕著に高い用量でさえ、実際に過剰投与とならない。したがって、乳児用食品の1日の必要量に基づいて2.5g以下の用量のコラーゲン加水分解物が容易に推奨されることができる。
【0022】
さらに、体の成長の増加、胃腸管における不耐性などの望ましくない結果は観察されない。
【0023】
本発明によれば、500〜15,000、好ましくは1,000〜6,000、さらに好ましくは1,500〜5,000の範囲の平均分子量Mwを有するコラーゲン加水分解物が使用される。
【0024】
酵素によるタンパク質分解法によって得られるコラーゲン加水分解物が特に好ましい。この種類のコラーゲン加水分解物においては、苦い物質の比率は最少である。
【0025】
乳児用食品への栄養補助食品としての使用のためのコラーゲン加水分解物を選択するさらに重要な基準は、水への低温での溶解性、すなわち、23℃での清澄な溶液への溶解性である。特に、これは、乳児用食品とともに使用及び投与するために有利である。
【実施例】
【0026】
試験結果の説明
最初の49人のうちの42人の乳児が最終的に二重盲検の無作為化プラセボ対照試験に参加した。これらの乳児は、生後4週〜6週目並びに14週〜16週目の予防医学的試験において、或いは診療所でのワクチン接種の際に日常のチェックを受けた。3及び5週齢の間の健康な乳児のみを選んだ。
【0027】
最初の49人のうち、7人の乳児を除外し:4人(2人はウィーラム(verum)群中、2人はプラセボ群中)は住居の変更又は不従順によって、2人(ウィーラム群中)は投与の問題により、1人(ウィーラム群中)は不耐性の訴えによる。したがって、21人の乳児がウィーラム及びプラセボ群にそれぞれ残った。
【0028】
生活年齢及び妊娠期間などの母親の基本的な個体群統計学データ、コーヒー、紅茶、アルコール及びタバコなどの刺激物、並びに社会的及び教育的地位に関しては、上記2群間に差はなかった。出生時の体重、サイズ、出生時の頭部外周、性別分布、形成不全の発生率、分娩の経過及び種類などの乳児の基本的データに関しては群間でいかなる相違もなかった。両群とも試験溶液の取り扱い及び投与の良好な受け入れを示した。
【0029】
両方の試験群において、乳児に同様の方法で摂食させ、比例的に、母乳栄養、母乳及び低アレルゲン性ベビーミルク、母乳及び最初のベビーミルクに対するフォローアップとしてのフォローオンミルク、最初のベビーミルクのみ及び低アレルゲン性ベビーミルクを同様の方法で試験を実施した様々な時点について群の間で分けた。
【0030】
異なる栄養学的概念は本試験において乳児の成長発達に対していかなる顕著な影響も有さなかったと推定できる。
【0031】
心臓、肺、腹腔内の器官、生殖器官、耳、鼻及びのどの内部の状態、皮膚、骨格、頭蓋骨、神経系及び感覚器官に関する、予備試験、試験物質の投与の5週間後の試験及び9週間後の試験における幼児の身体的試験は、試験が行われたさまざまな時点において群の中で相違を示さず、群間でも相違を示さなかった。
【0032】
不穏状態、鼓腸、嘔吐及び便通などの一般的健康状態に関連するパラメーターに関して上記の測定時にわたって2つの群について見出されたのは、以下のとおりである:便通に関しては、測定時全体にわたって愁訴のわずかな減少を示し;群間で違いはなかった。図1に示すとおり、試験の開始時において不穏状態及び鼓腸のパラメーターに関しては2の群は顕著に相違し:どちらの面においても、ウィーラム群は顕著に高い(悪い)初期レベルを示した。試験物質の投与の開始後は、2つの群において明らかに異なる展開が起こった:プラセボ群が不穏状態、鼓腸及び嘔吐に関して測定時間にわたって変化を示さなかったにもかかわらず、ウィーラム群の値は、非常に顕著な程度まで改善した。同様に、4週間後及び9週間後の間の、試験物質の投与を比較すると、それぞれ、非常に顕著であった:ウィーラム群の乳児は、不穏状態及び鼓腸のパラメーターについて顕著により良好であると評価された。
【0033】
健康状態と関係のある上記のパラメーターについては、ニコチン濫用を伴うか又は伴わない母乳栄養によって形成された亜群における健康状態は、他の形態の栄養補給よるものと比較して相違がみいだされなかった。
【0034】
乳児の一般的健康状態を評価するために、親に質問して、各パラメーターを1〜5のスケールで評価した。
【0035】
以下の有意性を数字に割り当てた:1=なし、2=わずか、3=平均、4=重症、5=非常に重症。
【0036】
Grafによる国際的な基準にしたがって、臀部の超音波検査を実施した(Graf, R. "Kursus der Huftsonographie beim Saugling", Fishcer-Verlag, Stuttgart, 1995)。
【0037】
臀部の超音波検査をGrafのガイドライン[11、11]にしたがって、位置決め用の洗面器中で標準的なやり方で行った。7.5MHzのリニアスキャン(Ultramark II+)をトランスデューサーとして使用し;各ケースで2つの画像をフリーズし、そして2:1のスケールでビデオプリンター上にプリントし、所見を翻訳した。Grafによる基準と類似して、アルファ及びベータ角並びに以下の記述的特徴を決定した:骨形成、骨性寛骨臼縁、臼蓋、軟骨蓋、大腿骨頭の位置及び大腿骨頭コア。臀部のタイプをこうして決定した。超音波によって判定可能な大腿骨頭コアの骨化の発生時点は、幼児の臀部の成熟についてのさらなる基準として含めた。
【0038】
臀部の超音波検査の結果は、右側及び左側のアルファ及びベータ角(図2を参照のこと)又は形態に関する記述の質、骨形成、骨性寛骨臼縁、臼蓋及び軟骨蓋の形成についてのいずれについても群間でいかなる顕著な相違も示さなかった。右及び左の臀部のタイプのIaの臀部タイプへの発達は、どちらの群においても明らかであった。臀部のタイプによる分類においては、いかなる時点においても2つの試験群におけるIa、Ib及び他の臀部タイプの発生頻度の間にいかなる顕著な差もなかった。
【0039】
【表1】

【0040】
しかしながら、証明された大腿骨頭コアの数及び大腿骨頭コアの形成された時点の両方に関して群間に相違が生じた。試験物質の投与の5週間後、プラセボ群よりもウィーラム群において顕著により多くの大腿骨頭コアが生じた。この効果は、試験物質の投与の9週間後にも残存する傾向にある。左側及び右側を関節評価に供した場合に、この効果は数字としてより明らかに現れる。この相違の有意性のレベルは、6%である。同様に、大腿骨頭コアの成長は、プラセボ群よりもウィーラム群において顕著に大きかった。
【0041】
さらに5週間後、臀部の超音波検査を含む第二の身体検査並びに成長及び一般的健康状態に関する第二の調査をワクチン接種時に実施した。およそ14〜16週齢で、身体検査及び臀部の超音波検査をすべての患者について実施し、そして包括的な既往歴を許容性、副作用、及び発達に関して記録した。
【0042】
成熟した臀部の関節の模式的構造は、上記のアルファ及びベータ角の定義を含む図2の断面表示に含まれる。
【0043】
図3及び4は、以下の:
a)大腿骨頭コアが形成された乳児、及び
b)大腿骨頭コアがまだ形成されていない乳児
における超音波所見を示す。
【0044】
最後に、表1のデータを模式的に図5に示す。
【0045】
親は、栄養補助食品として番号付けされた試験物質を粉末形態、すなわちGelitasol Dタイプのゼラチン加水分解物(Gelita Deutschland GmbH, Eberbach, Germany)、又はラクトース一水和物/アエロシルの形態のプラセボを受けとった。親に、10週間の間、1日1回、1gの軽量スプーン一杯分をベビーフードに追加するように依頼した。投与の形態として、粉末を水またはミルクに溶解し、そしてビタミンD予防薬の用量(500IU.(Vitamin D-Fluoretten))と同時にピペットから経口で直接分配することを示唆した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、プラセボ及びウィーラム群についての一般的健康状態を示す棒グラフである。
【図2】図2は、成熟した臀部の関節の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、大腿骨頭コアが形成された乳児における超音波所見を示す。
【図4】図4は、大腿骨頭コアがまだ形成されていない乳児における超音波所見を示す。
【図5】図5は、表1のデータを模式的に表した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児用食品への栄養補助食品としてのコラーゲン加水分解物。
【請求項2】
分子量Mwが、500〜15,000、好ましくは1,000〜6,000の範囲である、請求項1に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項3】
分子量Mwが、1,500〜5,000である、請求項2に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項4】
上記コラーゲン加水分解物が23℃で水に溶解可能であり、清澄な溶液を形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項5】
酵素によるタンパク質分解過程において生成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項6】
乳児の一般的健康を増進するための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項7】
乳児における不穏状態を減少させるための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項8】
乳児における鼓腸を減少させるための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項9】
乳児における嘔吐の傾向を減少させるための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項10】
乳児における骨格のミネラル化を促進するための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項11】
乳児における臀部の成熟を促進するための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項12】
乳児における大腿骨頭の骨化を促進するための栄養補助食品としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項13】
乳児におけるくる病の治療及び/又は予防における補助的手段としての、特にビタミンDの用量と併用した、栄養補助食品としてのコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項14】
上記コラーゲン加水分解物が乳児用食品に添加される、請求項6〜13のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項15】
上記乳児用食品に添加されるコラーゲン加水分解物の量が、乳児用食品の1日の必要量に基づいて少なくとも0.5gである、請求項14に記載のコラーゲン加水分解物の使用。
【請求項16】
上記乳児用食品に添加されるコラーゲン加水分解物の量が、乳児用食品の1日の必要量に基づいて2.5g以下である、請求項15に記載のコラーゲン加水分解物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−502607(P2007−502607A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523564(P2006−523564)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008864
【国際公開番号】WO2005/021027
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】