説明

コリオリ質量流量計

【課題】大きい力が励振に提供され、同時に火花フラッシュオーバーのリスクが低減される、コリオリ質量流量計およびコリオリ質量流量計の作動方法を提供すること
【解決手段】アクチュエータ装置は、巻き線を備えた少なくとも1つの第2の導体を含んでおり、第2の導体の巻き線は、第1の導体の巻き線に対して平行に配置されており、第1の導体と第2の導体は、少なくとも巻き線の領域において相互に絶縁されており、第1の導体と第2の導体は、作動状態において第1の導体と第2の導体とに同方向で電流が印加可能であり、これによって共通磁界が生じるように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの測定管と、少なくとも1つのアクチュエータ装置とを備えたコリオリ質量流量計に関する。ここでこのアクチュエータ装置は、巻き線を有する少なくとも1つの第1の導体と、少なくとも1つの作動体(Stellkoerper)とを含んでいる。さらに本発明は、少なくとも1つのアクチュエータ装置を備えたコリオリ質量流量計の作動方法に関する。ここでこのアクチュエータ装置は少なくとも、第1の導体の巻き線と、第2の導体の平行に延在する巻き線とを有している。ここで第1の導体と第2の導体は少なくとも、巻き線の領域において相互に絶縁されている。
【背景技術】
【0002】
コリオリ原理に従って作動する質量流量計は古くから知られており、測定管を流れる媒質の質量スループットを高い確度で測定することができる。質量スループットを求めるために、測定管は1つまたは複数の振動用アクチュエータ装置によって(殊に振動の所定の固有モードの固有周波数で)励振され、実際に生じた振動がセンサ装置によって検出され、評価される。測定管の励振と振動検出は、種々の方法で行われる。通常の方法では、アクチュエータ装置、およびしばしばセンサ装置も、作動体並びにコイルを有するように形成されている。ここでアクチュエータ装置の場合には、作動体は相応に通電されているコイルの磁界によって動かされる。これによって電気機械的な方法で測定管が偏向され、振動される。センサ装置の場合には、永久磁石が設けられた作動体が測定管運動によって偏向され、導体の巻き線によって形成されたコイル内の磁石の運動によって、電圧が誘起される。このような電圧を評価することによって、作動体の運動、ひいては測定管の振動が検出される。
【0003】
測定結果の評価は次のことによって行われる。すなわち、測定管にずらして配置された2つのセンサ装置によって検出された各振動の間の位相ずれ分が求められることによって行われる。ここでこの位相ずれ分は、測定スループットに対する尺度である。1つしか測定管を有していないコリオリ質量流量計も、複数の測定管または正確に2つの測定管を有するコリオリ質量流量計も公知である。測定管は実質的に真っ直ぐであるか、または曲がっている。このような構造的な違いは、本発明にとって重要ではない。
【0004】
コリオリ質量流量計は、共振測定システムであり、その測定管は機能的に不可欠に常に運動状態にある。従って測定管と直接的または間接的に接続されている素子は、継続的な振動に曝される。これは殊に、センサ装置と同様に、アクチュエータ装置に対して当てはまる。アクチュエータ装置の第1の導体の最終的に電気的なコイルを形成する巻き線は、電気的なエネルギー蓄積部である。コイル内またはコイルでの、継続的な振動等によって生じるケーブル破損時には、導体の破損が生じる。これは、エネルギー蓄積部であるコイル内で不断に電流が流れることによって、火花フラッシュオーバーを生じさせてしまう。従って爆発の恐れがある環境でのコリオリ質量流量計の使用時には、火花フラッシュオーバーを、コリオリ質量流量計のアクチュエータ装置のコイル領域において阻止するために、適切な措置が講じられなければならない。これによって、電流強度を低減させること(これには磁界強度の低減ひいては励振のための力の低減も伴う)の他に、このような措置は例えば、コイルの鋳込みである。しかしこれはコストがかかり、製造コストを上昇させてしまう。殊に、大きい公称幅を備えた測定管を備えたコリオリ質量流量計の場合、または強い減衰特性を備えた媒質とともにコリオリ質量流量計を使用する場合には、多くの巻き線を備えた大きいコイルが使用される。これは、作動時に高いエネルギーを有し、これによって、火花フラッシュオーバーの危険が高まってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術を背景にして、本発明の課題は、通常の、またはむしろ大きい力が、励振に提供され、同時に火花フラッシュオーバーのリスクが低減される、コリオリ質量流量計およびコリオリ質量流量計の作動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題はアクチュエータ装置が、巻き線を備えた少なくとも1つの第2の導体を含んでおり、第2の導体の巻き線は、第1の導体の巻き線に対して平行に配置されており、第1の導体と第2の導体は、少なくとも巻き線の領域において相互に絶縁されており、第1の導体と第2の導体は次のように接続されている、すなわち作動状態において第1の導体と第2の導体とに同方向で電流の印加が可能であり、共通の磁界が生じるように接続されている、ことを特徴とするコリオリ質量流量計によって解決される。
【0007】
さらに上述の課題は、作動状態において第1の導体と第2の導体に、少なくとも時おり、同方向で電流を印加して、共通の磁界を生じさせる、ことを特徴とする、コリオリ質量流量計を作動する方法によって解決される。
【0008】
さらに上述の課題は、巻き線を備えた少なくとも1つの第2の導体を含んでおり、第2の導体の巻き線は、第1の導体の巻き線に対して平行に配置されており、第1の導体と第2の導体は、少なくとも巻き線の領域において相互に絶縁されている、ことを特徴とする、コイルによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のコリオリ質量流量計の実施例の斜視側面図
【図2】コリオリ質量流量計用のアクチュエータ装置の実施例の斜視側面図
【図3】作動体を伴う、第1の導体と第2の導体を有するコイルの実施例
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の課題は、少なくとも1つの測定管と少なくとも1つのアクチュエータ装置とを備えており、アクチュエータ装置が、巻き線を備えた少なくとも1つの第1の導体と、少なくとも1つの作動体とを含んでいるコリオリ質量流量計において、次のことによって解決される。すなわちアクチュエータ装置が巻き線を備えた少なくとも1つの第2の導体を含んでおり、当該第2の導体の巻き線が第1の導体の巻き線に対して平行に配置されており、第1の導体と第2の導体が少なくとも巻き線の領域において相互に絶縁されており、第1の導体と第2の導体に作動状態において同じ方向で電流が印加されるように第1の導体と第2の導体が接続されており、これによって共通磁界が生じることによって解決される。この装置の利点は、少なくとも2つの電流経路が形成され、1つの電流経路のみの故障、すなわち導体破損時に、別の電流経路が火花オーバーフラッシュを阻止することができる、ということである。
【0011】
従って第1の導体および第2の導体が、自身の巻き線と共に、アクチュエータ装置用のコイルを形成する。このアクチュエータ装置によって、1つの測定管または複数の測定管が励振される。第1の導体は有利には実質的に円形であり、かつ螺旋状に延在する巻き線を有している。従ってこの巻き線によって、縦長の、かつ実質的に円形のコイルチャネルが規定される。このコイルチャネル内には、作動体が収容可能である。第2の導体の巻き線は、第1の導体の巻き線に対して平行に配置されている。ここで「平行」とは必ずしも、2つの導体の恒常的な平行性を要求しているのではなく、単に、第2の導体の巻き線が、第1の導体の巻き線と、実質的に類似した配向を有していることを意味しているだけである。従って「平行」には、巻き線の長手方向延在部(コイルチャネルの長手方向延在部)において、第1の導体の2つの巻き線に、第2の導体の1つの巻き線のみが続くこと、またはその逆も含まれている。第1の導体の巻き線および第2の導体の巻き線は、単に一層に構成されているか、または、複数の巻き線を伴う多層構造を有している。ここで巻き線の数は励振に必要な磁界強度ないしは励振に必要な力に、合わせられる。しかし常に、第1の導体と第2の導体が、少なくとも巻き線の領域内で、すなわち共通の磁界が生じている箇所で、相互に絶縁されていることが保証されている。
【0012】
第1の導体の巻き線および第2の導体の巻き線は一方では自由に構成され、巻き線は、自身の固有の頑強性によって支えられる。また他方では、第1の導体の巻き線および/または第2の導体の巻き線は、巻き付け体上に巻き付けられる。この巻き付け体は巻き線を支持し、場合によっては第1の導体および/または第2の導体をガイドおよび、ポジショニングし、および/または個々の巻き線層の間の絶縁を安定させる。この巻き付け体は例えばプラスチックまたはセラミックから成る。
【0013】
本発明は、コリオリ質量流量計の測定管の数に依存しておらず、例えば1つの測定管、2つの測定管、4つの測定管またはそれよりも多くの測定管が含まれ得る。さらにアクチュエータ装置ないしはセンサ装置の数も、その時々の使用条件および測定管の数に依存する。ここで例えば、2つの平行に延在する測定管を備えたコリオリ質量流量計の場合には通常、1つのアクチュエータ装置と、アクチュエータ装置の右側および左側に配置された2つのセンサ装置が含まれている。
【0014】
第1の導体および第2の導体は、コリオリ質量流量計が取り付けられている状態において次のように接続されている。すなわち第1の導体と第2の導体に、コリオリ質量流量計の動作状態において、同方向で電流印加可能であるように接続されている。「同方向で電流印加可能である」とはここで次のことを意味している。すなわち、第1の導体および第2の導体の供給側終端部で、および第1の導体および第2の導体の出力側終端部に、常に電圧が、1つまたは複数の電圧源から、同じ向きで印加されることを意味している。従って、第1の導体と第2の導体における電流方向は常に同じ向きである。第1の導体における電流ないしは第2の導体における電流によって、各導体に対して、部分磁界が生じる。第1の導体および第2の導体を平行かつ同じ向きに配置することによって、第1の導体の巻き線の部分磁界と、第2の導体の巻き線の部分磁界とが構造的に重畳し、従って共通の磁界が生じる。従ってこれは、第1の導体と第2の導体の2つの部分磁界よりも強い。
【0015】
本発明の構成は、次の利点を有している。すなわち、平行に延在し、かつ本発明の意味で同じ向きの巻き線を有する平行に延在する導体によって、全体としてより大きい配線横断面が実現され、これによって比較的大きい総電流が、第1および第2の導体の巻き線によって規定されたコイル内で得られるという利点である。ここで、この大きい総電流によって、比較的大きい磁界が得られる。これによって、大きい定格直径を有する測定管も、またはより強く減衰する媒質も確実に励振される。また同時に、器具故障時の火花フラッシュオーバーの危険がかなり低減される。なぜなら、磁界強度を上げるために、導体内の個別電流を上げる必要がないからである。少なくとも2つの導体のうちの1つの導体のみが故障した場合に、電流の流れが完全に遮断されることはない。従って、火花は形成されない。
【0016】
平行に延在する2つの導体を設けることによって、コイルのカプセル封入ないしは鋳込みを省くことができる。それにもかかわらず、爆発の危険がある環境においてこのコリオリ質量流量計を使用することが可能である。なぜなら、これらの導体のうちの1つの導体の故障時に、火花フラッシュが生じないからである。さらに、本発明は次の利点を有している。すなわち、特別な材料を導体に使う必要が無く、標準的な材料、例えば通常の銅合金を高い温度に対しても使用することができる、という利点を有している。導体の直径も通常の程度であり、任意の数の巻き線が実現可能である。ここで同時に高い磁気的な力作用および火花フラッシュオーバーに対する確実な保護が保証される。
【0017】
磁界強度をさらに高めるために、および火花フラッシュオーバーに対する脆弱性を付加的に低減させるために、有利な構成では、少なくとも1つの別の第3の導体が設けられる。これは第1の導体の巻き線および第2の導体の巻き線に対して平行な巻き線を備えている。この第3の巻き線は、少なくとも巻き線の領域において、第1の導体および第2の導体から絶縁されている。
【0018】
第3の導体も次のように接続されている。すなわち、作動状態において、第1の導体および第2の導体と同じ方向で電流印加可能であるように接続されている。これによって、第1、第2および第3の導体の3つの部分磁界が構造的に重畳して、1つの共通磁界が生じる。第3の導体の巻き線は、さらに、第1の導体および第2の導体の巻き線の隣に配置されている。ここでも、導体の平行性は必ずしも、これらの導体が完全に相互に平行に延在していることを意味しているのではなく、1つまたは複数の導体の巻き線が、1つのまたは複数の別の導体の巻き線とは異なる直径を有していてもよい。または、第1の導体および第2の導体のそれぞれ2つの巻き線に、第3の導体の1つの巻き線が続くこと、またはその逆もあり得る。このような構成は次の利点を有する。すなわち全体として、非常に大きい、総横断面が得られるという利点を有する。ここで大きい総電流が生じるが、同時に、複数の導体のうちの1つの導体が故障した時の火花フラッシュオーバーのリスクも低減される。
【0019】
第1の導体および第2の導体の部分磁界の形成を保証するために、第1の導体と第2の導体は少なくとも、巻き線の領域において相互に絶縁されている。有利な構成では、第1の導体または第2の導体は絶縁部を有する。これに対して択一的に第1の導体および第2の導体は絶縁部を有する。アクチュエータ装置の構造に依存して、2つの導体のうちの1つの導体のみが絶縁部を有していればよい。従って第1の導体と第2の導体は、巻き線の領域において相互に絶縁されている。これは殊に、次のような構成の場合に考えられる。すなわち、交互に、第1の導体の巻き線に第2の導体の巻き線が続き、2つの導体のうちの1つの導体を絶縁すればよい場合である。上下に重なって配置されている個々の巻き線層の間に、有利には別の絶縁体が設けられる。この絶縁体はこれらの層を電気的に相互に絶縁する。殊に電流強度が高い場合および巻き線の別のシーケンスの場合には、有利には、2つの導体、すなわち第1の導体と第2の導体が絶縁部を有する。このような構成によって、常に、導体相互の確実な絶縁が保証される。
【0020】
第1の導体と第2の導体の特に有利な重畳は、有利な構成に従って、第1の導体の巻き線の数が第2の導体の巻き線の数に相当する場合に得られる。従って、第1の導体の各巻き線に対しては、第2の導体の対応する巻き線が存在する。従って、第1の導体の部分磁界と第2の導体の部分磁界が特に有利には相互に補い合う。この構成に対して択一的に、別の構成では、第1の導体の巻き線の数と第2の導体の巻き線の数とが異なっている。基本的に完全に同一の導体によってこのような構成が可能であるが、第1の導体および第2の導体が異なる材料から製造される、および/または異なる幾何学的形状を有する場合が特に有利であることが判明している。これは例えば第2の導体が第1の導体よりも大きい横断面を有する場合である。第1の導体および第2の導体の幾何学的形状がこのように異なる場合には、例えばより小さい断面を有する導体には、より大きい直径を有する導体によりも、比例して多い巻き線が設けられている。
【0021】
第1の導体と第2の導体は少なくとも、巻き線の領域において、相互に絶縁されており、例えば共通の電圧源に接続されているか、または、2つの別個の電圧源に接続されている。従って等しい電圧、または異なる電圧も、第1の導体ないしは第2の導体に印加される。
【0022】
次のような別の構成が特に有利であることが判明している。すなわち、少なくとも、第1の導体および第2の導体の入力側終端部と第1の導体および第2の導体の出力側終端部とが相互に導電性に接続されている別の構成が特に有利であることが判明している。供給側終端部および出力側終端部はここで絶対的なものではない。なぜなら、電流が流れる方向は作動状態に応じて、作動の間に変化するからである。この構成では、第1の導体および第2の導体の入力側終端部および、第1の導体および第2の導体の出力側終端部も、共通の電圧源に接続されている。従って、殊に空間的な幾何学的形状構成が同じである場合、および第1の導体と第2の導体の配置が同じである場合には、2つの同一の部分磁界が生じる。これらは構造的に重畳している。このような形態では、第1の導体と第2の導体の直流電気的な結合によって、2つの導体または複数の導体のうちの1つの導体だけが破損した場合の火花形成に対して特に容易かつ確実な保護が保証される。
【0023】
冒頭に記載した課題はさらに、上位概念に記載されたコリオリ質量流量計の作動方法によって解決される。これは、第1の導体および第2の導体に作動状態において、少なくとも時おり、同方向で電流が印加されて、共通の磁界が生じることによって行われる。第1の導体および第2の導体にはここで次のように、1つの電圧または異なる電圧が印加される。従って、第1の導体および第2の導体においてそれぞれ電流が形成される。ここで第1の導体内で電流が流れる方向は、常に、第2の導体内で電流が流れる方向と同一である。従って、第1の導体および第2の導体内で生じる部分磁界は構造的に重畳し、共通の磁界が形成される。第1の導体および第2の導体に「少なくとも時おり」同方向で電流が印加されるとは次のことを意味している。すなわち、常に2つの導体に1つの電流が流れるのではなく、複数の導体のうちの1つの導体のみが磁界形成に使用される作動状態も存在するということを意味している。しかし2つの導体に、(同じ強度または異なる強度の)1つの電流が流される場合には常に電流方向は同じである。すなわち、第1の導体および第2の導体の入力側終端部および出力側終端部は、その時々の作動状態における電流が流れる実際の方向に依存せずに、常にコイルのその時々の同一の終端部にある。
【0024】
第1の導体および第2の導体の構造的に重畳する部分磁界の柔軟な整合は、有利には、この方法の別の形態に従って、次のことによって実行される。すなわち、第1の導体内の電流が、第2の導体内の電流に依存しないで調整されることによって実行される。第1の導体と第2の導体はここで、異なる電圧源によって駆動制御される。従って、2つの導体において、相互に依存しないで、同じまたは異なる電流強度が調整される。第1の導体および第2の導体のこのような柔軟な駆動制御によって、アクチュエータ装置の特徴が、コリオリ質量流量計の作動時にも常に、外部の状況、殊に1つまたは複数の測定管を流れる媒質に適応され、磁界によって形成された振動形成のための力が必要に応じて整合される。
【0025】
個々の部分磁界の磁界強度を整合するため、殊に、これらの部分磁界から共同で重畳された共通磁界を調整するために、この方法の別の形態では、第1の導体および第2の導体内で、異なる電流強度が設定される。第1の導体および第2の導体はこのために、2つの別個の電圧源に接続される。従って、異なる電流強度が導体内で設定される。異なる強度の生じた部分磁界は構造的に重畳されて、1つの共通磁界が形成される。
【0026】
どちらの力作用が、コリオリ質量流量計の作動に必要であるのかに依存せずに、かつ、測定管内を流れる媒質の特徴が、コリオリ質量流量計の作動中に変化するか否かに依存せずに、別の構成に従って、第1の導体と第2の導体に時間的にずらして電流が印加されることが有利であることが判明している。従って、コリオリ質量流量計の作動開始時から、合成された共通磁界の全ての作用が必要なのではなく、まずは、1つの導体のみによる磁界の形成で足りることがある。次に、付加的な力作用が必要な場合には、第2の導体にも電流が印加される。さらに、コリオリ質量流量計の作動中に媒質の特徴が変化し得る。これによって、第2の導体に付加的に電流が印加されることが必要になり、この結果、2つの部分磁界が構造的に重畳して、より大きい強度を有する全体磁界が生じる、または例えば導体が無電流にスイッチングされる。さらに、電流方向が周期的に変化する場合には、これらの導体のうちの1つの導体が僅かに遅れて切り換えられる、または後で切り換えられ、これによって、必要に応じて減衰が実現される。
【0027】
測定管内を流れる媒質の特徴の変化に対するコリオリ質量流量計の柔軟性を高めるために、別の有利な構成では、第1の導体内の電流強度と、第2の導体内の電流強度が、測定管内を流れる媒質に依存して、および/または媒質の状態に依存して、調整される。異なる媒質によるコリオリ質量流量計の異なる減衰特性、または異なる状態における、殊に二相流動の場合の同じ媒質の異なる減衰特性は、導体内の電流強度が、流れている媒質に依存して、または流れている媒質の状態に依存して調整されることによって考慮される。従って、測定管の励振に必要な力の柔軟な整合が容易に行われる。これは、2つの導体内の電流強度が整合され、従って、常に一定であり、定められた、複数または1つの測定管の励振が保証されることによって実現される。媒質特性の評価および、第1および第2の導体内での電流強度の整合は、いずれにせよコリオリ質量流量計に設けられている測定および評価エレクトロニクスによって実行される。
【0028】
アクチュエータ装置およびセンサ装置は基本的に、自身の実際のエレメントに関して実質的に等しく構成されている。従って、基本的に各アクチュエータ装置は作動時に、センサ装置として使用されるように、切り換えられる。従って別の形態では有利には、アクチェータ装置が時おり、センサ装置として使用され、アクチュエータをセンサ装置として使用する場合には、第1の導体の巻き線のみ、または第2の導体の巻き線のみが使用される。アクチュエータ装置をアクチュエータ装置として使用する場合、すなわち測定管を励振するために使用する場合には、しばしば、殊に強く減衰する媒質の場合には、アクチュエータ装置の高い力作用が必要である。従って、それらの磁界が共通の磁界を形成するために補い合う、平行に延在する2つの導体を使用するのは有利である。しかし1つまたは複数の測定管の振動を検出するのには、単に、2つの導体の1つの導体だけによる振動を評価すればよい。
【0029】
センサ装置の評価の確実性をさらに高めるために、この方法の最後の形態では、第1の導体の巻き線または、第2の導体の巻き線が交互に使用される。アクチュエータ装置をセンサ装置として使用するときには、常に、1つの導体の巻き線のみが評価に使用されるのではなく、交互に、第1の導体の巻き線または第2の導体の巻き線が使用される。方法のこのような形態は次のような利点を有している。すなわち、規則的に、相対的に相互に検査および評価される独立した2つの測定結果が得られ、これによって、コリオリ質量流量計の信用性が上がる、という利点を有している。
【0030】
さらに本発明は、巻き線を有する第1の導体を有するコイルに関する。このコイルは、次のような特徴を有している。すなわち、巻き線を有する第2の導体を含んでおり、第2の導体の巻き線は、第1の導体の巻き線に対して平行に配置されており、第1の導体と第2の導体は、少なくとも巻き線の領域において相互に絶縁されている。このコイルは殊に、上述したコリオリ質量流量計内での使用および、上述した方法の実行に適している。全体的に、本発明のコリオリ質量流量計に対して記載された利点は、このようなコイルを使用することによって得られる。このようなコイルは、請求項2〜6のいずれか1項記載の特徴部分の構成を有している。
【0031】
コイルの1つの形態では、第1の導体と第2の導体は、導体の入力側終端部および出力側終端部でもそれぞれ絶縁される。従って、コイルは2つの別個の電圧源に接続可能であり、第1の導体内の電流が、第2の導体内の電流と別個に調整される。
【0032】
上述した形態と択一的にさらに、第1の導体と第2の導体が入力側終端部および出力側終端部で相互に電気的に接触接続されている。このような構成は殊に、第1の導体および第2の導体が共通の電圧源に接続されるべき場合に適している。従って、幾何学的形状が同じ場合、かつ巻き線の数が同じ場合には2つの同一の部分磁界が形成される。これらの部分磁界は構造的に重なり、共通の磁界を形成する。
【0033】
詳細には、本発明に相応したコリオリ質量流量計および、コリオリ質量流量計を作動させる本発明の方法を構成し、改良する多くの方法がある。これに関しては請求項1および請求項7に従属する請求項および、図面と関連した有利な実施例の以下の説明を参照されたい。
【実施例】
【0034】
図1は、直線状かつ平行に延在する4つの測定管2を備えたコリオリ質量流量計1を示している。このコリオリ質量流量計1では、それぞれ2つの測定管2が、保持装置3によってまとめられ、振動ユニットが形成されている。この振動ユニットは、作動状態において、相互に励振される。2つの振動ユニットの励振は、アクチュエータ装置4によって行われる。ここでこのアクチュエータ装置は、相互に対向して配置された2つの保持装置3を有しており、アクチュエータ装置4の別の構成部分を担う。測定管2ないしは振動ユニットの振動の検出は、2つのセンサ装置5によって行われる。これらは、アクチュエータ装置4の上流側および下流側に配置されており、それぞれ2つの、相互に対向して配置されている保持装置3も含んでいる。これらは、センサ装置5の別の構成部分を担っている。
【0035】
図2は、2つの保持装置3を備えたアクチュエータ装置4の実施例を示している。保持装置3は空白部6によって測定管2上でスライドされ、測定管2に固定される。ここで各保持装置3は2つの、図1に示された測定管2を結合して、1つの振動ユニットにする。測定管2の相互の励振のために、ないしは振動ユニットの相互の励振のために、測定管2の上方および下方にそれぞれ1つの、コイルケーシング7内に配置され、図3に示された作動体8と作動状態において共働する、図3に示されたコイル10が設けられている。ここでこの作動体は、外被9内に配置されている。
【0036】
図3は、コイル10の概略的に示された実施例を示している。これは、巻き線12を備えた第1の導体11と、巻き線14を備えた第2の導体13とを、作動体8とともに有している。より良く区別するために、第1の導体11は図3において実線として示されており、第2の導体12は一点鎖線として示されている;しかし第1の導体11および第2の導体13はこの実施例では幾何学形状的に完全に同一であり、かつ同じ材料から形成されている。
【0037】
第1の導体11の巻き線12および第2の導体13の巻き線14は相互に平行に延在し、かつ円型であり、かつコイルチャネルを規定する。このコイルチャネル内で、作動体8が作動状態において、第1の導体11および第2の導体13の共通磁界によって動かされる。第1の導体11および第2の導体13は、コリオリ質量流量計が取り付けられている状態において接続され、第1の導体11の入力側終端部15および第2の導体13の入力側終端部16に、ないしは第1の導体の出力側終端部17ないしは第2の導体13の出力側終端部18に電圧源が接続され、第1の導体11に入力側終端部15から、出力側終端部17の方向で電流が流れ、かつ第2の導体13に入力側終端部16から、出力側終端部18の方向で電流が流れ、すなわち、第1の導体11および第2の導体13に同方向で、電流が流される。ここで、第1の導体11の巻き線12の領域および第2の導体13の巻き線14の領域でそれぞれ部分磁界が生じ、第1の導体11および第2の導体13の2つの部分磁界が、構造的に重なって、共通の磁界を形成する。この磁界は、2つの部分磁界よりも強い。磁界の作用によって、作動体8がコイル10のコイルチャネル内を動く。これによって測定管相互の相対運動が生起される。なぜならコイル10は、図2に示されているように保持装置3に支承されており、作動体8はそれぞれ対向している保持装置3に支承されているからである。
【0038】
導体11の入力側終端部15ないしは第2の導体13の入力側終端部16ないしは、第1の導体11の出力側終端部17および第2の導体13の出力側終端部18は絶対的なものではない。なぜなら、コリオリ質量流量計1の作動時には、電流が流れる方向が周期的に変化し、これによって測定管2の振動が相対的に生起されるからである。
【0039】
図1に示されたコリオリ質量流量計1の実施例はさらに、流入側および流出側でそれぞれ2つの結合プレート19を有している。これらは4つの全ての測定管2を接続し、測定管2の振動のデカップリングを、コリオリ質量流量計1を取り囲んでいる、図示されていない、管線路システム上で阻止し、逆に、コリオリ質量流量計1上での管線路システムから発する振動の入力も阻止する。さらに流入側および流出側にフランジ装置20が設けられている。これは、一方では収集器として用いられ、かつコリオリ質量流量計1を管線路システムに固定するためにも設けられる。
【符号の説明】
【0040】
1 コリオリ質量流量計、 2 測定管、 3 保持装置、 4 アクチュエータ装置、 5 センサ装置、 6 空白部分、 7 コイルケーシング、 8 作動体、 9 外被、 10 コイル、 11 第1の導体、 12、14 巻き線、 13 第2の導体、 15、16 入力側終端部、 17、18 出力側終端部、 19 結合プレート、 20 フランジ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの測定管(2)と、少なくとも1つのアクチュエータ装置(4)とを備えているコリオリ質量流量計(1)であって、
前記アクチュエータ装置(4)は、巻き線(12)を備えた少なくとも1つの第1の導体(11)と、少なくとも1つの作動体(8)とを含んでいるものにおいて、
前記アクチュエータ装置(4)は、巻き線(14)を備えた少なくとも1つの第2の導体(13)を含んでおり、
当該第2の導体(13)の巻き線(14)は、前記第1の導体(13)の巻き線(12)に対して平行に配置されており、
前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)は、少なくとも前記巻き線(12、14)の領域において相互に絶縁されており、
前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)は次のように接続されている、すなわち作動状態において、当該第1の導体(11)および当該第2の導体(13)に、同方向で電流の印加が可能であり、共通磁界が生じるように接続されている、
ことを特徴とするコリオリ質量流量計(1)。
【請求項2】
巻き線を備えた少なくとも1つの第3の導体が、前記第1の導体(11)の巻き線(12)および前記第2の導体(13)の巻き線(14)と平行に設けられている、請求項1記載のコリオリ質量流量計(1)。
【請求項3】
前記第1の導体(11)または前記第2の導体(13)は絶縁部を有しており、これに対して択一的に、前記第1の導体(11)および前記第2の導体(13)が絶縁部を有している、請求項1または2記載のコリオリ質量流量計(1)。
【請求項4】
前記第1の導体(11)の巻き線(12)の数は、前記第2の導体(13)の巻き線(14)の数に相当する、請求項1から3までのいずれか1項記載のコリオリ質量流量計(1)。
【請求項5】
前記第1の導体(11)の巻き線(12)の数と、前記第2の導体(13)の巻き線(14)の数は異なる、請求項1から3までのいずれか1項記載のコリオリ質量流量計(1)。
【請求項6】
少なくとも、前記第1の導体(11)および前記第2の導体(13)の入力側終端部(15、16)と前記第1の導体(11)および前記第2の導体(13)の出力側終端部(17、18)とが相互に導電性に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のコリオリ質量流量計(1)。
【請求項7】
殊に請求項1から6のいずれか1項に記載されている、少なくとも1つのアクチュエータ装置(4)を備えているコリオリ質量流量計(1)を作動する方法であって、
前記アクチュエータ装置(4)は少なくとも、第1の導体(11)の巻き線(12)と、平行に延在する、第2の導体(13)の巻き線(14)とを含んでおり、
前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)とを、少なくとも前記巻き線(12、14)の領域において相互に絶縁する方法において、
作動状態において前記第1の導体(11)および前記第2の導体(13)に、少なくとも時おり、同方向で電流を印加して、共通磁界を生じさせる、
ことを特徴とする、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項8】
第1の導体(11)内の電流を、第2の導体(13)内の電流に依存せずに調整する、請求項7記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項9】
第1の導体(11)内と第2の導体(13)内で、異なる電流強度を調整する、請求項7記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項10】
前記第1の導体(11)および前記第2の導体(13)に、時間的にずらして電流を印加する、請求項7から9までのいずれか1項記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項11】
第1の導体(11)内の電流強度と、第2の導体(13)内の電流強度を、前記測定管(2)内を流れる媒質に依存して、および/または当該媒質の状態に依存して調整する、請求項7から10までのいずれか1項記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ装置(4)を少なくとも時おり、センサ装置(5)として使用し、アクチュエータ装置(4)をセンサ装置(5)として使用する場合には、前記第1の導体(11)の巻き線(12)または前記第2の導体(13)の巻き線(14)のみを使用する、請求項7から11までのいずれか1項記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項13】
前記第1の導体(11)の巻き線(12)または前記第2の導体(13)の巻き線(14)を交互に使用する、請求項12記載の、コリオリ質量流量計(1)を作動する方法。
【請求項14】
殊に、請求項1から7までのいずれか1項記載のコリオリ質量流量計(1)用のコイル(10)であって、巻き線(12)を備えた第1の導体(11)を有しているものにおいて、
巻き線(14)を備えた少なくとも1つの第2の導体(13)を含んでおり、前記第2の導体(13)の巻き線(14)は、前記第1の導体(11)の巻き線(12)に対して平行に配置されており、前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)は、少なくとも前記巻き線(12、14)の領域において相互に絶縁されている、
ことを特徴とするコイル(10)。
【請求項15】
前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)は、前記入力側終端部(15、16)および前記出力側終端部(17、18)でそれぞれ相互に絶縁されている、請求項14記載のコイル(10)。
【請求項16】
前記第1の導体(11)と前記第2の導体(13)は、前記入力側終端部(15、16)および前記出力側終端部(17、18)で電気的に相互に接触接続されている、請求項14記載のコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−185163(P2012−185163A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50859(P2012−50859)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(591168600)クローネ アクチェンゲゼルシャフト (28)
【氏名又は名称原語表記】Krohne A.G.
【住所又は居所原語表記】Uferstrasse 90, Basel, Switzerland
【Fターム(参考)】