説明

コリメータ、コリメータの製造方法、およびX線CT装置

【課題】 より精度の高い測定が可能なコリメータ、コリメータの製造方法、およびX線CT装置の提供を提供する。
【解決手段】 互いに間隔をあけて配設された第1の板状部と、前記第1の板状部と交差する方向に互いに間隔をあけて配設された第2の板状部と、を備え、前記第1の板状部は、複数の第1のスリットが形成されている第1のスリット形成部材11aと、前記第1のスリット形成部材11aと対向する側に配置され、複数の第2のスリットが形成されている第2のスリット形成部材11bと、前記第1のスリット形成部材11aと前記第2のスリット形成部材11bとの間に設けられている調整部材11cと、を有し、前記複数の第2の板状部は、複数の第3のスリットが形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コリメータ、コリメータの製造方法、およびX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computer Tomography)装置においては、検出点数を多くして空間分解能を上げるために、シンチレータを用いたX線検出器が用いられている。
【0003】
ここで、広い範囲を高速かつ高精細に撮影したいとの要求から、チャンネル方向のみならずスライス方向にも複数の光電変換素子を備えたX線検出器が用いられるようになってきている。この様なX線検出器においては、スライス方向の光電変換素子の数が増えてくると、チャンネル方向のみならずスライス方向においても散乱X線を除去する必要がある。
【0004】
そのため、平板状の基部と、基部から突出する複数の壁部と、を一体的に成形した要素を複数積層してなるコリメータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−130433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のコリメータでは、平板状の基部と、基部から突出する複数の壁部とを一体的に形成する際に、複数の壁部が基部とのかみ合わせの抵抗などで変形しやすく、不安定な状態で形成してきた。そのため、複数の壁部を設ける位置精度が低くなるため、精度の高い測定が困難となることがあった。
【0007】
そこで本発明では、より精度の高い測定が可能なコリメータ、コリメータの製造方法、およびX線CT装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、実施形態のコリメータは、互いに間隔をあけて配設された第1の板状部と、第1の板状部と交差する方向に互いに間隔をあけて配設された第2の板状部と、を備え、第1の板状部は、複数の第1のスリットが形成されている第1のスリット形成部材と、第1のスリット形成部材と対向する側に配置され、複数の第2のスリットが形成されている第2のスリット形成部材と、第1のスリット形成部材と前記第2のスリット形成部材との間に設けられている調整部材と、を有し、複数の第2の板状部は、複数の第3のスリットが形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、実施形態のコリメータの製造方法は、請求項1に記載のコリメータの製造方法であって、複数の第1のスリットが形成されている第1のスリット形成部材を、第2の板状部の複数の第3スリットへと挿入し、嵌め合わせる工程と、複数の第2のスリットが形成されている第2のスリット形成部材を、第2の板状部の複数の第3スリットへと挿入し、嵌め合わせる工程と、調整部材を第1のスリット形成部材と第2のスリット形成部材との間に挿入し、配置させる工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
また、実施形態のX線CT装置は、放射線としてのX線を放出するX線源と、請求項1に記載のコリメータと、X線を受けて蛍光を発するシンチレータと、蛍光を電気信号に変換する光電変換部と、を有する放射線検出器と、X線源と、前記放射線検出器と、を支持し、被検体の周りを回転する回転リングと、放射線検出器により検出されたX線の強度に基づいて、被検体の断層像を画像再構成する処理部と、を備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るX線CT装置を示す図で、の概略構成を例示するための模式ブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る放射線検出器を例示するための模式斜視図。
【図3】図2に示すA−A断面を表すための模式断面図。
【図4】本発明の実施形態に係るコリメータを示す図で、(a)はコリメータの外観を例示するための模式斜視図、(b)はコリメータの模式分解図。
【図5】本発明の実施形態に係るコリメータを構成する板状部を例示するための図で、(a)は板状部11を示す図で、(b)は板状部21を示す図。
【図6】本発明の実施形態に係るコリメータの製造方法を例示するための模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、以下においては、一例として、放射線がX線である場合を例に挙げて説明するがγ線などの他の放射線にも適用させることができる。そのため、例えば、X線検出器として例示をしたものを他の放射線に適用させる場合には、「X線」を「他の放射線(例えば、γ線)」に置き換えるようにすればよい。
【0013】
まず、本実施の形態に係るコリメータ1、およびX線CT装置100について例示をする。図1は、X線CT装置の概略構成を例示するための模式ブロック図である。
【0014】
図1に示すように、X線CT装置100には、X線管球101、回転リング102、2次元検出部103、データ収集回路(DAS)104、非接触データ伝送装置105、架台駆動部107、スリップリング108、処理部106が設けられている。
【0015】
X線を放出するX線源であるX線管球101は、X線を発生する真空管であり、回転リング102に支持されている。X線管球101には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が図示しない高電圧発生装置からスリップリング108を介して供給される。X線管球101は、供給された高電圧により加速させた電子をターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内にある被検体に向けてX線を曝射する。
【0016】
なお、X線管球101と被検体との間には、X線管球101から曝射されるX線ビームの形状をコーン状、四角錐状、ファンビーム状などに整形する図示しないX線管球側コリメータが設けられている。
【0017】
2次元検出部103は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球101に対向するようにして回転リング102に支持されている。2次元検出部103の外周側(被検体の反対側)には、放射線検出器10が取り付けられている。すなわち、2次元検出部103の外周側には、後述するコリメータ1と、X線を受けて蛍光を発するシンチレータ4と、蛍光を電気信号に変換する光電変換部12と、を有する放射線検出器10が取り付けられている。なお、コリメータ1などに関する詳細は後述する。
【0018】
X線管球101及び2次元検出部103は、回転リング102に支持されている。この回転リング102は、架台駆動部107により駆動され、被検体の回りを回転する。
【0019】
データ収集回路(DAS)104は、DASチップが配列された複数のデータ収集素子列を有し、2次元検出部103で検出されたデータ(以下、生データという)が入力される。そして、入力された生データは、増幅処理、A/D変換処理等された後、データ伝送装置105を介して処理部106に伝送される。
【0020】
架台駆動部107は、診断用開口内に挿入された被検体の体軸方向に平行な中心軸のまわりに、X線管球101と2次元検出部103とを一体的に回転させる等の駆動及びその制御を行う。
【0021】
処理部106は、生データの感度補正やX線強度補正を行うことで「投影データ」を作成する。そして、所定の再構成パラメータ(再構成領域サイズ、再構成マトリクスサイズ、関心部位を抽出するための閾値等)に基づいて、投影データを再構成処理することで所定のスライス分における再構成画像データを作成する。
【0022】
また、再構成画像データに対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、図示しない表示装置に画像として出力させる。すなわち、処理部106は、放射線検出器10により検出されたX線の強度に基づいて、被検体の断層像を画像再構成する。
【0023】
図2は、放射線検出器を例示するための模式斜視図である。図3は、図2におけるA−A断面を表すための模式断面図である。
【0024】
図2に示すように、放射線検出器10は、検出部2、コリメータ1を備えている。なお、保持部6は、放射線検出器10を保持するために2次元検出部103に設けられた部材である。
【0025】
また、図2に示すように、コリメータ1は、X線を遮蔽するX線遮蔽板(後述する板状部11、21)によって形成された格子構造となっており、この格子構造の各々の区画は、シンチレータ4の各区画に対応した構成となっている。この場合、コリメータ1の格子構造は、コリメータ1が、図1に示すX線CT装置100内の所定の位置に設けられたときに、その各区画がX線管球101(X線源)の焦点方向を向くような形状となっている。
【0026】
例えば、図2に示すように、平面視において矩形状の各々の区画部が四角錐台の形状を有するような構成にして設けることができる。このような格子構造は、コリメータ1のチャンネル方向、及びスライス方向の2方向において、その各区画部を構成する各々のX線遮蔽板を、コリメータ1が、図1に示すX線CT装置100内の所定の位置に設けられたときに、X線管球101の焦点方向に向くような所定の角度に傾けることで形成することができる。なお、コリメータ1に関する詳細は後述する。
【0027】
また、図3に示すように、検出部2には、シンチレータ4、光反射部17、接着層3、光電変換部12、回路基板18、基部7が設けられている。
【0028】
シンチレータ4は、光電変換部12に設けられた光電変換素子12aの検出区画に対応して区画され、各検出区画間には溝16が形成されている。すなわち、各シンチレータ4が溝16により分割された構成となっている。そして、シンチレータ4と光電変換部12とが、互いの区画を対応させるようにして接合されている。
【0029】
シンチレータ4は、コリメータ1と対向させて設けられ、X線などの放射線を受けて蛍光を発する。蛍光は、例えば、可視光線などの光である。シンチレータ4は、その材質により、最大発光波長、減衰時間、反射係数、密度、光出力比や蛍光効率の温度依存性等が異なるので、それぞれの用途に応じてその材質を選択することができる。例えば、X線CT装置に用いるものとしては、希土類酸硫化物の焼結体からなるセラミックシンチレータを例示することができる。ただし、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0030】
また、シンチレータ4同士の間の溝16には、シンチレータ4の発光波長付近の波長の光を反射する機能を有するもの(例えば、白色の板状体など)を挿入、接着したものなどからなる光反射部17が設けられている。
【0031】
光電変換素子12a毎にシンチレータ4を区画する光反射部17は、各シンチレータ4の区画間における光学的分離と反射とを行わせることで、各区画間における光学的クロストークを抑制する役割を果たす。
【0032】
光電変換部12は、シンチレータ4からの蛍光を電気信号に変換する光電変換素子12aを有している。光電変換素子12aとしては、例えば、pin構造のシリコンフォトダイオードなどを例示することができる。
【0033】
接着層3は、例えば、透明接着剤からなり、シンチレータ4と光電変換部12との間の光の透過を良好にしつつ両者を接合する。
【0034】
光電変換部12のシンチレータ4が接合される側の面と反対側の面には、回路基板18が設けられている。回路基板18も、シンチレータ4の区画に対応するように区画されており、各区画毎の電気信号を取り込むことができるようになっている。
【0035】
基部7は、平板状を呈し、その主面には回路基板18、光電変換部12、接着層3、光反射部17が設けられたシンチレータ4が積層されるようにして設けられている。また、図示しないネジなどの締結手段を用いて、保持部6に取り付けることができるようになっている。そのため、基部7を保持部6に取り付けることで、積層されるようにして設けられたシンチレータ4などが保持部6に保持されるようになっている。
【0036】
放射線検出器10を保持するために2次元検出部103に設けられている保持部6は、各シンチレータ4がX線源(X線管球101)の焦点を向くように円弧形状を呈するものとすることができる。そして、一対の保持部6が所定の間隔をあけて対向するように設けられ、保持部6同士の間にはコリメータ1が保持される。この場合、例えば、保持部6同士の間に接着剤を用いてコリメータ1を接着することで、コリメータ1を保持部6に保持させるようにすることができる。ただし、コリメータ1の保持方法は接着剤を用いた接着に限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、保持部6に設けられた図示しない溝などにコリメータ1を嵌合させることで、コリメータ1が保持部6に保持されるようにすることもできる。
【0037】
また、一対の保持部6の外周側(円弧形状の凸側)には検出部2に設けられた基部7が保持される。また、基部7は、保持部6の外周側形状に適応できるように外周面に沿って複数設けられる。
【0038】
次に、コリメータ1についてさらに例示する。図2に示すように、コリメータ1は、X線管球101から発せられたX線が通過する方向と交差する断面において、格子構造を有している。また、この格子構造は、X線管球101の位置から遠ざかるにつれて、その断面の面積が大きくなるように、矩形状の区画部が形成されている。ここでは、格子構造は、例えば、図2のように、各々の矩形状の区画部が四角錐台の形状を有するような構成にして設けることができる。
【0039】
また、図3に示すように、コリメータ1は、各シンチレータ4に入射するX線を制御するとともに散乱X線を吸収してこの散乱X線によるクロストークを低減させる。
【0040】
コリメータ1の材質としては、例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Pb(鉛)、少なくともこれらの重金属の1つを含む合金などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなくX線の遮蔽特性に優れた材料を適宜選択することができる。
【0041】
また、後述するように、コリメータ1の格子構造は、モジュール単位(あるいはブロック単位ともいう)の格子構造を複数用意し、これらのモジュール単位の格子構造を組み合わせて構成することもできる。この場合、モジュール単位の格子構造は、その格子構造の各区画部がX線管球101(X線源)の焦点方向を向くように位置合わせを行いながら、保持部6(サポート部材)に並べるようにして取り付けることになる。
【0042】
なお、モジュール単位の格子構造は、保持部6に対して着脱自在となるように構成することができる。
【0043】
図4は、コリメータを例示するための模式斜視図である。図4(a)はコリメータの外観を例示するための模式斜視図、図4(b)はコリメータの模式分解図である。なお、煩雑となることを避けるために板状部11、21をそれぞれ1つだけ描いている。図5はコリメータを構成する板状部を例示するための模式図であり、(a)は板状部11を示す図で、(b)は板状部21を示す図である。
【0044】
図4、図5に示すように、コリメータ1は、互いに間隔をあけて配設された複数の板状部11(第1の板状部の一例に相当する)と、板状部11と交差する方向に互いに間隔をあけて配設された複数の板状部21(第2の板状部の一例に相当する)と、を備えている。
【0045】
板状部11は、間隔をあけて複数のスリットS1(第1のスリットの一例に相当する)が形成されている第1のスリット形成部材11aと、スリット形成部材11aと対向する側に配置され、間隔をあけて複数のスリットS2(第2のスリットの一例に相当する)が形成されている第2のスリット形成部材11bと、第1のスリット形成部材11aと第2のスリット形成部材11bとの間に設けられている調整部材11cと、で構成されている。
【0046】
また、板状部11は、板状部11の幅寸法W1とした場合、板状部21の幅寸法W2とが同じとなるようにすることができる。
【0047】
第1、第2のスリット形成部材11a、11bに形成されている複数のスリットS1、S2の数は、嵌め合わされる板状部21の数とすることができる。
【0048】
第1、第2のスリット形成部材11a、11bの複数のスリットS1、S2の幅寸法WS1、WS2は、板状部21の厚み寸法よりも僅かに大きくなっている。また、複数のスリットS1、S2の長さ寸法L1、L2は、例えば、第1、第2のスリット形成部材11a、11bの幅寸法W1a、W1bの半分程度とすることができる。なお、本実施形態では複数のスリットS1,S2の長さ寸法L1、L2が第1、第2のスリット形成部材11a、11bの幅寸法W1a、W1bの半分程度となっているが、これに限られることはなく、嵌め合わせる際に第1、第2のスリット形成部材11a、11bが破損しない程度の強度が保てる程度であれば、これよりも長く形成されてもよい。また、嵌め合わせる事が可能であればこれよりも短く形成されてもよい。
【0049】
また、複数のスリットS1、S2は、X線源(X線管球101)の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜して形成されている。そのため、複数のスリットS1、S2に板状部21を嵌め入れることで、板状部21をX線源の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜させることができる。
【0050】
調整部材11cは、第1、第2のスリット形成部材11a、11bとの間に設けられ、第1、第2のスリット形成部材11a、11bと板状部21との嵌め合わせを保持する役割を果たしている。そのため、調整部材11cの幅寸法W1cは、第1、第2のスリット形成部材11a、11bと接するような幅寸法に形成されている。すなわち、後述する板状部21のスリットS3に、第1、第2のスリット形成部材11a、11bとを嵌め合わせた際に形成される隙間と、調整部材11cの幅寸法W1cは、ほぼ同じとなるように形成されている。なお、本実施形態の調整部材11cは1つであるが、複数設けていても良い。
【0051】
板状部21は、間隔をあけて複数のスリットS3(第3のスリットの一例に相当する)が形成されている。複数のスリットS3は、板状部21の周縁eと一定の間隔を設けて形成されている。なお、複数のスリットS3の数は、嵌め合わされる板状部11の数とすることができる。
【0052】
複数のスリットS3の幅寸法WS3は、板状部11の厚み寸法よりも僅かに大きくなっている。複数のスリットS3の長さ寸法L3は、例えば、板状部11の幅寸法W1から第1、第2のスリット形成部材11a、11bの複数のスリットS1、S2の長さ寸法L1、L2を差し引いた長さとすることができる。
【0053】
また、複数のスリットS3は、X線源の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜して形成されている。そのため、複数のスリットS3に板状部11を嵌め入れることで、板状部11をX線源の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜させることができる。
【0054】
この場合、板状部11と板状部21とが交差する位置において、複数のスリットS1、S2と複数のスリットS3とが対峙している。すなわち、スリットS1には板状部21のスリットS3が設けられていない一方の周縁e側で嵌め合わされ、スリットS2には板状部21のスリットS3が設けられていない他方の周縁e側で嵌め合わされており、板状部11と板状部21とが交差している状態となる。
【0055】
このように、板状部21の複数のスリットS3を、板状部21の周縁eと一定の間隔を設けて形成することにより、板状部11と嵌め合わせる際に、板状部11の位置決めを行うことが可能となる。そのため、板状部11の変形を抑制させ、安定させて嵌め合わせることができ、精度の高い組立を行うことが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態では板状部11と板状部21とを相互に固定して設けているが、これに限られることはない。ただし、板状部11と板状部21とを相互に固定するように設けることで、振動などの影響を受けにくくすることができる。
【0057】
次に、本実施の形態に係るコリメータの製造方法について例示する。まず、板状部11と板状部21とを形成する。すなわち、X線源の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜した複数のスリットS1、S2を有する第1、第2のスリット形成部材11a、11bと、調整部材11cを形成する。また、X線源の焦点の位置に対応して所定の角度で傾斜した複数のスリットS3を有する板状部21を形成する。
【0058】
X線の遮蔽特性に優れた材料を用いた平板材から、板状部11の第1、第2のスリット形成部材11a、11bと板状部21のブランクを切り出す。
【0059】
そして、板状部11のブランクに所定の形状寸法を有する複数のスリットS1、S2を形成し、板状部21のブランクに所定の形状寸法を有するスリットS3を形成する。
【0060】
コリメータには、板状部11、21によって格子構造が形成される。ここでは、X線CT装置内の所定の位置に設けられたときに、その格子構造の区画部が、X線管球101(X線源)の焦点方向に向くように構成されていなければならない。従って、板状部11のスリットS1、S2、及び板状部21のスリットS3は、そのような構成のコリメータとなるように、所定の形状寸法で形成する必要がある。
【0061】
この場合、X線の遮蔽特性に優れた材料としては、例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Pb(鉛)、少なくともこれらの重金属の1つを含む合金などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなくX線の遮蔽特性に優れた材料を適宜選択することができる。
【0062】
また、スリットS1、S2、S3の形成は、例えば、エッチング法を用いて行うようにすることができるが、これに限られることは無い。
【0063】
次に、板状部11と板状部21とが交差するように組み付ける。まず、図6(a)に示すように、板状部21の複数のスリットS3へと板状部11の第1のスリット形成部材11aをそれぞれC方向に向けて挿入していく。この際に、第1のスリット形成部材11aの複数のスリットS1を、板状部21のスリットS3が設けられていない一方の周縁e側へと向くようにさせる。その後、複数のスリットS1とS3の位置を合わせ、第1のスリット形成部材11aをそれぞれD方向に向けて移動させ、第1のスリット形成部材11aと板状部21を嵌め合わせる。
【0064】
そして、図6(b)に示すように、板状部21の複数のスリットS3へと板状部11の第2のスリット形成部材11bをそれぞれE方向に向けて挿入していく。この際に、第2のスリット形成部材11bの複数のスリットS2を、板状部21のスリットS3が設けられていない他方の周縁e側へと向くようにさせる。その後、複数のスリットS2とS3の位置を合わせ、第2のスリット形成部材11bをそれぞれF方向に向けて移動させ、第1のスリット形成部材11bと板状部21を嵌め合わせる。
【0065】
最後に、図6(c)に示すように、板状部21の複数のスリットS3へと板状部11の調整部材11cをそれぞれG方向に向けて挿入していき、第1、第2のスリット形成部材11a、11bとの間に配置させる。
【0066】
この様にすれば、板状部21の所定の角度で傾斜した複数のスリットS3へと板状部11の所定の角度で傾斜した複数のスリットS1、S2とを嵌め合わせる際に、位置決めを行いながら嵌め合わせることが可能となる。そのため、板状部11の変形を抑制させ、安定させて嵌め合わせることができ、精度の高い組立を行うことが可能となる。
【0067】
以上に例示をしたコリメータ、コリメータの製造方法、およびX線CT装置の実施形態によれば、板状部11の変形を抑制させ、安定させて嵌め合わせることができるため、精度の高い組立を行うことが可能となる。その結果、複数のスリットS1、S2、S3の隙間からX線が通過することを抑制させる事が出来るため、各区画に設けられたシンチレータ4に所望のX線を入射させる事ができるため、より精度の高い測定が可能となる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。例えば、コリメータ1、X線CT装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…コリメータ
2…検出部
3…接着層
4…シンチレータ
6…保持部
7…基部
10…放射線検出器
11、21…板状部
11a…第1のスリット形成部材
11b…第2のスリット形成部材
11c…調整部材
12…光電変換部
17…光反射部
18…回路基板
100…X線CT装置
101…X線管球
102…回転リング
103…2次元検出部
104…データ収集回路(DAS)
105…非接触データ伝送装置
106…処理部
107…架台駆動部
108…スリップリング
S1、S2、S3…複数のスリット
e…周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配設された第1の板状部と、
前記第1の板状部と交差する方向に互いに間隔をあけて配設された第2の板状部と、
を備え、
前記第1の板状部は、複数の第1のスリットが形成されている第1のスリット形成部材と、前記第1のスリット形成部材と対向する側に配置され、複数の第2のスリットが形成されている第2のスリット形成部材と、前記第1のスリット形成部材と前記第2のスリット形成部材との間に設けられている調整部材と、を有し、
前記複数の第2の板状部は、複数の第3のスリットが形成されていることを特徴とするコリメータ。
【請求項2】
前記複数の第3のスリットは、前記第2の板状部の周縁と一定の間隔を設けて形成されていることを特徴とする請求項1記載のコリメータ。
【請求項3】
前記複数の第1のスリットは前記第2の板状部の前記複数の第3スリットが設けられていない一方の前記周縁で嵌め合わされ、前記複数の第2のスリットは前記第2の板状部の前記第3のスリットが設けられていない他方の前記周縁で嵌め合わされていることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のコリメータ。
【請求項4】
前記調整部材は、前記第1、第2のスリット形成部材と接するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のコリメータ。
【請求項5】
請求項1に記載のコリメータの製造方法であって、
前記複数の第1のスリットが形成されている前記第1のスリット形成部材を、前記第2の板状部の前記複数の第3スリットへと挿入し、嵌め合わせる工程と、
前記複数の第2のスリットが形成されている前記第2のスリット形成部材を、前記第2の板状部の前記複数の第3スリットへと挿入し、嵌め合わせる工程と、
前記調整部材を前記第1のスリット形成部材と前記第2のスリット形成部材との間に挿入し、配置させる工程と、
を有することを特徴とするコリメータの製造方法。
【請求項6】
放射線としてのX線を放出するX線源と、
請求項1に記載のコリメータと、前記X線を受けて蛍光を発するシンチレータと、前記蛍光を電気信号に変換する光電変換部と、を有する放射線検出器と、
前記X線源と、前記放射線検出器と、を支持し、被検体の周りを回転する回転リングと、
前記放射線検出器により検出されたX線の強度に基づいて、前記被検体の断層像を画像再構成する処理部と、
を備えたことを特徴とするX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68435(P2013−68435A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205392(P2011−205392)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】